説明

無線通信システム、基地局装置、無線通信方法、及びプログラム

【課題】予め許可された第1端末装置のみが接続できる第1基地局装置に、接続が許可されていない第2端末装置が近接していることを検出することができる無線通信システムを提供する。
【解決手段】第1基地局装置は、第2端末装置との接続を要求するハンドオフ要求を第2基地局装置から受信すると、第2基地局装置にハンドオフ要求を拒絶するメッセージを送信するハンドオフ制御部と、直近の予め定められた期間内において、ハンドオフ制御部がメッセージを送信した回数を検出し、検出した送信の回数が予め定められたしきい値以上の場合、第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定し、検出した送信の回数がしきい値未満の場合、第2端末装置が通信エリア内に位置していないと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、基地局装置、無線通信方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)や3GPP2(3rd Generation Partnership Project 2)、IEEE802.16などの無線インターフェースの標準化団体では、広域な通信エリアをカバーする一般的なマクロ基地局や、送信電力が小さくカバーする通信エリアがマクロ基地局に比べると狭いマイクロ基地局、ピコ基地局(以下、まとめてマクロ基地局装置(Macro e-Node B;MeNB)という)のみならず、マイクロ基地局及びピコ基地局よりカバーする通信エリアが狭く、小容量だが小型で廉価なフェムト基地局の検討が進められている(非特許文献1、2、3)。
【0003】
フェムト基地局は、無線LANのアクセスポイントのように、家庭や店舗、オフィスなどで設置することが想定されている。通信事業者によって、マクロ基地局装置とセルラネットワークとの間の回線を設置及び管理がなされるのに対し、フェムト基地局とセルラネットワークとの間は、フェムト基地局を設置する設置主が契約しているネットワークプロバイダとの固定アクセス回線を経由して接続され、通信事業者以外によって設置及び管理がなされることが特徴である。
【0004】
また、フェムト基地局では、当該基地局の設置主が認めた端末装置(以下、CSG(Closed Subscriber Group)端末装置のみ当該基地局への接続を許可する、という仕組みがある。この場合、設置主が認めていない端末装置(以下、非CSG端末装置)は、フェムト基地局がカバーする通信エリア(フェムトセルカバレッジエリア)内に入っても、フェムト基地局に接続されない。フェムト基地局以外でもこのような設定ができる基地局もあるため、以下、このような設定が可能な基地局をCSG基地局装置(CSG e-Node B;CSG eNB)という。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TS36.331, “Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Radio Resource Control (RRC)”
【非特許文献2】3GPP TS36.413, “Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN); S1 Application Protocol (S1AP)”
【非特許文献3】3GPP TS36.423, “Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN); X2 Application Protocol (X2AP)”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなCSG基地局装置は、マクロ基地局装置と同一の周波数帯を用いて運用されるため、マクロ基地局装置と接続している非CSG端末装置がCSG基地局装置に近接した場合、非CSG端末装置は、CSG基地局装置にハンドオフされず、CSG基地局装置から強い干渉を受け、マクロ基地局装置との通信断を引き起こす可能性がある。
【0007】
上述のような通信断を回避するためには、まず、非CSG端末装置がCSG基地局装置に近接したがハンドオフできない状況にあることを検出し、当該非CSG端末装置が接続しているマクロ基地局装置や、CSG基地局装置に通知する必要がある。
すなわち、予め許可された特定の端末装置のみが接続できる基地局装置に、接続が許可されていない端末装置が近接していることを検出する必要がある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、予め許可された特定の端末装置のみが接続できる基地局装置に、接続が許可されていない端末装置が近接していることを検出することができる無線通信システム、無線基地局装置、無線通信方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記問題を解決するために、本発明は、第1基地局装置と、該第1基地局装置に接続が予め許可されている第1端末装置と、該第1基地局装置に接続が許可されていない第2端末装置と、該第1基地局装置が該第1端末装置との接続に用いる周波数帯と同一の周波数帯を用いて該第2端末装置と接続する第2基地局装置とを具備する無線通信システムであって、前記第1基地局装置は、前記第2端末装置との接続を要求するハンドオフ要求を前記第2基地局装置から受信すると、前記第2基地局装置にハンドオフ要求を拒絶するメッセージを送信するハンドオフ制御部と、直近の予め定められた期間内において、前記ハンドオフ制御部が前記メッセージを送信した回数を検出し、検出した送信の回数が予め定められたしきい値以上の場合、前記第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定し、前記検出した送信の回数が前記しきい値未満の場合、前記第2端末装置が前記通信エリア内に位置していないと判定する近接判定部とを備えていることを特徴とする無線通信システムである。
【0010】
(2)また、本発明は、上記に記載の発明において、前記第1基地局装置は、更に、前記第2端末装置を識別するインデックスを記憶する接続不許可リスト記憶部を備え、前記近接判定部は、前記第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定すると、該第2端末装置のインデックスを前記接続不許可リスト記憶部に記憶させ、前記ハンドオフ制御部がハンドオフ要求を拒絶するメッセージを送信するたびに、該メッセージによりハンドオフが拒絶された第2端末装置のインデックスが前記接続不許可リスト記憶部に記憶されているか否かを判定し、該第2端末装置のインデックスが前記接続不許可リスト記憶部に記憶されている場合、該第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定することを特徴とする。
【0011】
(3)また、本発明は、基地局装置と、該基地局装置に接続が予め許可されている第1端末装置と、該基地局装置に接続が許可されていない第2端末装置と、該基地局装置が該第1端末装置との接続に用いる周波数帯と同一の周波数帯を用いて該第2端末装置と接続する第1基地局装置とを具備する無線通信システムにおける基地局装置であって、前記第2端末装置との接続を要求するハンドオフ要求を前記第1基地局装置から受信すると、前記第1基地局装置にハンドオフ要求を拒絶するメッセージを送信するハンドオフ制御部と、直近の予め定められた期間内において、前記ハンドオフ制御部が前記メッセージを送信した回数を検出し、検出した送信の回数が予め定められたしきい値以上の場合、前記第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定し、前記検出した送信の回数が前記しきい値未満の場合、前記第2端末装置が前記通信エリア内に位置していないと判定する近接判定部とを備えていることを特徴とする基地局装置である。
【0012】
(4)また、本発明は、第1基地局装置と、該第1基地局装置に接続が予め許可されている第1端末装置と、該第1基地局装置に接続が許可されていない第2端末装置と、該第1基地局装置が該第1端末装置との接続に用いる周波数帯と同一の周波数帯を用いて該第2端末装置と接続する第2基地局装置とを具備する無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記第1基地局装置が、前記第2端末装置との接続を要求するハンドオフ要求を前記第2基地局装置から受信すると、前記第2基地局装置にハンドオフ要求を拒絶するメッセージを送信するハンドオフ制御ステップと、前記第1基地局装置が、直近の予め定められた期間内において、前記ハンドオフ制御ステップにおいて前記メッセージを送信した回数を検出し、検出した送信の回数が予め定められたしきい値以上の場合、前記第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定し、前記検出した送信の回数が前記しきい値未満の場合、前記第2端末装置が前記通信エリア内に位置していないと判定する近接判定ステップとを有していることを特徴とする無線通信方法である。
【0013】
(5)また、本発明は、第1基地局装置と、該第1基地局装置に接続が予め許可されている第1端末装置と、該第1基地局装置に接続が許可されていない第2端末装置と、該第1基地局装置が該第1端末装置との接続に用いる周波数帯と同一の周波数帯を用いて該第2端末装置と接続する第2基地局装置とを具備する無線通信システムにおける第1基地局装置に備えられているコンピュータに、前記第1基地局装置が、前記第2端末装置との接続を要求するハンドオフ要求を前記第2基地局装置から受信すると、前記第2基地局装置にハンドオフ要求を拒絶するメッセージを送信するハンドオフ制御ステップと、前記第1基地局装置が、直近の予め定められた期間内において、前記ハンドオフ制御ステップにおいて前記メッセージを送信した回数を検出し、検出した送信の回数が予め定められたしきい値以上の場合、前記第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定し、前記検出した送信の回数が前記しきい値未満の場合、前記第2端末装置が前記通信エリア内に位置していないと判定する近接判定ステップとを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、予め許可された特定の端末装置のみが接続できる基地局装置に、接続が許可されていない端末装置が近接していることを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態における無線通信システム1の構成例を示す概略図である。
【図2】同実施形態におけるCSG基地局装置100の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】同実施形態におけるマクロ基地局装置200の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】同実施形態の無線通信システム1の動作例を示すシーケンス図である。
【図5】第2実施形態におけるCSG基地局装置110の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における無線通信システム、無線基地局装置、無線通信方法、及びプログラムを説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における無線通信システム1の構成例を示す概略図である。なお、無線通信システム1は、非特許文献1〜3のLTEシステムを適用した例を用いて説明する。無線通信システム1は、同図に示すように、非CSG(closed subscriber Group)端末装置300と、CSG端末装置301と、非CSG端末装置300及びCSG端末装置301と接続して通信をするマクロ基地局装置200と、CSG端末装置301と接続して通信するCSG基地局装置100と、CSG基地局装置100とマクロ基地局装置200とを有線により接続するネットワーク5とを具備している。
【0018】
同図において、破線にて示されている通信エリア100A、200Aは、CSG基地局装置100、マクロ基地局装置200の通信エリアを示している。また、CSG基地局装置100は、マクロ基地局装置200の通信エリア内に配置されている。
CSG基地局装置100は、マクロ基地局装置200が非CSG端末装置300及びCSG端末装置301と通信に用いる周波数帯と同じ周波数帯を用いて、CSG端末装置301と通信をする。
また、CSG基地局装置100は、例えば、送信電力が小さくカバーする通信エリアが小さいピコ基地局やフェムト基地局などである。また、マクロ基地局装置200は、例えば、広域な通信エリアをカバーするマクロ基地局である。
【0019】
非CSG端末装置300は、マクロ基地局装置200と接続することにより、他の端末装置などと通信を行う。また、非CSG端末装置300は、CSG基地局装置100に接続が許可されていない端末装置である。
CSG端末装置301は、CSG基地局装置100、又はマクロ基地局装置200と接続することにより他の端末装置などと通信を行う。CSG端末装置301は、CSG基地局装置100に接続することが許可されている点が、非CSG端末装置300と異なる。
【0020】
以下、マクロ基地局装置200と接続している非CSG端末装置300が、CSG基地局装置100に近接していることを検出してマクロ基地局装置200に通知するための具体的な構成、及び処理を説明する。
【0021】
図2は、本実施形態におけるCSG基地局装置100の構成を示す概略ブロック図である。CSG基地局装置100は、同図に示すように、接続許可リスト記憶部101、ハンドオフ制御部102、通信ログ記憶部103、非CSG端末装置近接判定部104、無線通信部105を備えている。
【0022】
接続許可リスト記憶部101は、自装置との接続が許可されている端末装置のインデックスのリスト(ホワイト・リスト)が予め記憶されている。端末装置のインデックスは、予め端末装置に付与され、当該端末装置を一意に識別するための識別子である。
ハンドオフ制御部102は、ネットワーク5を介して、端末装置を識別するインデックスと、自装置に対する当該端末装置のハンドオフ要求(HO(Hand-Off)Request)とを含むメッセージを他の基地局装置から受信し、受信したメッセージに含まれるインデックスが接続許可リスト記憶部101に記憶されているか否かを判定する。
【0023】
そして、ハンドオフ制御部102は、端末装置のインデックスが接続許可リスト記憶部101に記憶されている場合、ネットワーク5を介して、自装置に対するハンドオフ要求に応じるメッセージを当該ハンドオフ要求の送信元に送信し、端末装置のインデックスが接続許可リスト記憶部101に記憶されていない場合、ネットワーク5を介して、自装置に対するハンドオフ要求を拒絶するメッセージ(HO Preparation Failure)を当該ハンドオフ要求の送信元に送信する。また、ハンドオフ制御部102は、送信したメッセージを通信ログ記憶部103に記憶させる。
【0024】
通信ログ記憶部103には、ハンドオフ制御部102が送信するメッセージが記憶されている。
非CSG端末装置近接判定部104は、通信ログ記憶部103に記憶されているメッセージの履歴に基づいて、自装置に接続が許可されていない非CSG端末装置300が、自装置に近接しているか否かを判定する。また、非CSG端末装置近接判定部104は、自装置に近接していると判定すると、ネットワーク5を介して、非CSG端末装置300が接続しているマクロ基地局装置200に通知する。
【0025】
ここで、非CSG端末装置300が自装置に近接しているとは、非CSG端末装置300において、自装置が送信した信号の受信電力が、他の基地局装置が送信した信号の受信電力より大きくなる状態となる位置(通信エリア100A内)に非CSG端末装置300が位置することをいう。換言すると、CSG基地局装置100が形成する通信エリア100A内に非CSG端末装置300が位置することをいう。
【0026】
自装置に接続が許可されていない非CSG端末装置300が近接しているか否かの判定は、以下のようにして行う。非CSG端末装置近接判定部104は、通信ログ記憶部103に記憶されているメッセージのうち、直近の予め定められた期間内に送信されたハンドオフを拒絶するメッセージの数を検出し、検出した数が予め定められたしきい値以上であるか否かを判定する。
そして、非CSG端末装置近接判定部104は、検出した数がしきい値以上である場合、自装置に非CSG端末装置300が近接していると判定する。逆に、検出した数がしきい値未満である場合、非CSG端末装置近接判定部104は、自装置に非CSG端末装置300が近接していない、すなわち、自装置から非CSG端末装置300が離れていると判定する。
【0027】
無線通信部105は、自装置の通信エリア内に位置するCSG端末装置301と無線通信を行う。また、無線通信部105は、非CSG端末装置300が自装置に近接していると非CSG端末装置近接判定部104が判定した場合、非CSG端末装置300に対する干渉を低減させる。例えば、接続しているCSG端末装置301に対する送信を、通信が維持できる最小の送信電力により行う。
【0028】
図3は、本実施形態におけるマクロ基地局装置200の構成を示す概略ブロック図である。マクロ基地局装置200は、同図に示すように、ハンドオフ制御部202、無線通信部205を備えている。
ハンドオフ制御部202は、無線通信部205を介して、自装置と接続をしている非CSG端末装置300及びCSG端末装置301から無線品質の劣化を示す情報を受信すると、ネットワーク5を介して、ハンドオフ要求のメッセージを送信する。このハンドオフ要求のメッセージは、ハンドオフの対象となる無線品質が劣化している端末装置のインデックスと、当該端末装置のハンドオフ要求とを含むメッセージであり、当該端末装置が近接している基地局装置に対して送信されるメッセージである。
【0029】
無線通信部205は、自装置の通信エリア内に位置する非CSG端末装置300及びCSG端末装置301と無線通信を行う。また、無線通信部205は、自装置と接続している非CSG端末装置300がCSG基地局装置100に近接していることを、当該CSG基地局装置100から通知されると、当該非CSG端末装置300の無線品質を向上させるようにして送信を行う。例えば、無線通信部205は、無線品質を向上させるために、受信される信号の誤り率が低下するように符号化率を下げて信号を送信したり、送信に用いる周波数帯域幅を広くして信号を送信したりする。
【0030】
続いて、マクロ基地局装置200に接続されている非CSG端末装置300が、CSG基地局装置100に近づいて、CSG基地局装置100の通信エリア100A内に位置した後に、通信エリア100Aの外へ移動した場合におけるCSG基地局装置100と、マクロ基地局装置200との処理について説明する。
図3は、本実施形態の無線通信システム1の動作例を示すシーケンス図である。
【0031】
非CSG端末装置300がCSG基地局装置100に近接すると、接続しているマクロ基地局装置200から送信される信号が、CSG基地局装置100から送信される信号により干渉を受けて、非CSG端末装置300の無線品質が劣化する(ステップS10)。
非CSG端末装置300は、無線品質が劣化したことを示すメッセージをマクロ基地局装置200に送信する(ステップS15)。
【0032】
このメッセージは、例えば、Measurement ReportのTriggerA3や、TriggerA5である。TriggerA3は、接続しているマクロ基地局装置200(サービングセクタ)からの受信電力と、近づいているCSG基地局装置100(ネイバーセクタ)からの受信電力との大小関係に基づいて送信される。また、TriggerA5は、接続しているマクロ基地局装置200(サービングセクタ)からの受信電力が閾値未満になり、かつ、近づいているCSG基地局装置100(ネイバーセクタ)からの受信電力が閾値以上になったときに送信される。
【0033】
マクロ基地局装置200は、接続している非CSG端末装置300から無線品質が劣化していることを示すメッセージを受信すると、非CSG端末装置300が近づいているCSG基地局装置100に対して、非CSG端末装置300のインデックスと、非CSG端末装置300のハンドオフ要求とを含むメッセージを送信する(ステップS20)。
CSG基地局装置100のハンドオフ制御部102は、マクロ基地局装置200から受信したメッセージに含まれるインデックスが接続許可リスト記憶部101に記憶されていないと判定し、ハンドオフを拒絶するメッセージをマクロ基地局装置200に送信する(ステップS25)。
【0034】
非CSG端末装置300がマクロ基地局装置200に近接し続けると、上記のステップS15、S20、S25の処理が繰り返して行われる。すなわち、CSG基地局装置100に備えられているハンドオフ制御部102は、ハンドオフの要求を拒絶するメッセージ(HO Preparation Failure)を送信し続ける。その結果、CSG基地局装置100の通信ログ記憶部103に記憶されるハンドオフを拒絶するメッセージの数が増加する。
【0035】
そして、CSG基地局装置100において、直近の予め定められた期間内における通信ログ記憶部103に記憶されているハンドオフを拒絶するメッセージの数がしきい値以上になり、非CSG端末装置300が近接していると非CSG端末装置近接判定部104が判定し(ステップS30)、無線通信部105が非CSG端末装置300に対する干渉を低減させる。
【0036】
また、非CSG端末装置近接判定部104は、非CSG端末装置300が近接していることをマクロ基地局装置200に通知する(ステップS35)。マクロ基地局装置200に備えられている無線通信部205は、CSG基地局装置100からの通知を受けて、自装置と接続している非CSG端末装置300に対する無線品質を向上させる。
【0037】
非CSG端末装置300がCSG基地局装置100から離れて通信エリア100Aから外に出ると、無線品質が回復する。そして、非CSG端末装置300は、無線品質が劣化したことを示すメッセージをマクロ基地局装置200に送信しなくなる(ステップS40)。
マクロ基地局装置200は、ハンドオフの要求メッセージ(HO Preparation Failure)をCSG基地局装置100に送信しなくなる。その結果、直近の予め定められた期間内における、CSG基地局装置100の通信ログ記憶部103に記憶されるハンドオフを拒絶するメッセージの数が減少する。
【0038】
CSG基地局装置100において、通信ログ記憶部103に記憶されているハンドオフを拒絶するメッセージのうち、直近の予め定められた期間内におけるメッセージの数がしきい値未満になり、非CSG端末装置300が近接していないと非CSG端末装置近接判定部104が判定する(ステップS45)。
非CSG端末装置近接判定部104は、非CSG端末装置300が近接していないことをマクロ基地局装置200に通知する(ステップS50)。
【0039】
(第2実施形態)
第2実施形態における無線通信システムは、CSG基地局装置の構成が、上述の第1実施形態における無線通信システム1と異なるので、以下、CSG基地局装置について説明し、他の構成の説明を省略する。
図5は、本実施形態におけるCSG基地局装置110の構成を示す概略ブロック図である。CSG基地局装置110は、同図に示すように、接続不許可リスト記憶部106、及び非CSG端末装置近接判定部107を備えている点が、第1実施形態のCSG基地局装置100と異なる。また、CSG基地局装置110において、第1実施形態のCSG基地局装置100と同じ構成については、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
接続不許可リスト記憶部106には、非CSG端末装置300のインデックスが記憶される。
非CSG端末装置近接判定部107は、第1実施形態の非CSG端末装置近接判定部104と同様に、通信ログ記憶部103に記憶されているメッセージの履歴に基づいて、自装置に接続が許可されていない非CSG端末装置300が、自装置に近接しているか否かを判定する。また、非CSG端末装置近接判定部107は、自装置に近接していると判定すると、ネットワーク5を介して、非CSG端末装置300が接続しているマクロ基地局装置200に通知する。
【0041】
更に、非CSG端末装置近接判定部107は、自装置の通信エリア内に位置し、近接していると判定した非CSG端末装置300のインデックスを接続不許可リスト記憶部106に記憶させる。
また、非CSG端末装置近接判定部107は、ハンドオフを拒絶するメッセージが新たに記憶されるたびに、当該メッセージにより拒絶された非CSG端末装置300のインデックスが、接続不許可リスト記憶部106に記憶されているか否かを判定する。そして、非CSG端末装置近接判定部107は、非CSG端末装置300のインデックスが接続不許可リスト記憶部106に記憶されている場合、非CSG端末装置300が自装置に近接していると判定する。すなわち、非CSG端末装置近接判定部107は、自装置に接続が許可されていない非CSG端末装置300のリスト(ブラック・リスト)を接続不許可リスト記憶部106に生成し、ハンドオフ制御部101がハンドオフを拒絶するメッセージを送信するたびに、当該リストに基づいた、非CSG端末装置300が自装置に近接しているか否かの判定を行う。
【0042】
上述の第1及び第2実施形態の無線通信システムにおいて、マクロ基地局装置200と接続している非CSG端末装置300がCSG基地局装置100に近接していることを、CSG基地局装置100の非CSG端末装置近接判定部104が検出し、非CSG端末装置300が自装置に近接していることをマクロ基地局装置200に通知することができる。
【0043】
また、非CSG端末装置300が自装置に近接していることを検出することにより、CSG基地局装置100、及びマクロ基地局装置200は、非CSG端末装置300の無線品質の劣化を抑制する動作をすることができる。例えば、非CSG基地局装置100が、CSG端末装置301に対する送信電力を低くしたり、送信に用いる周波数帯域幅を狭くしたりするなどの動作をすることができる。また、マクロ基地局装置200は、非CSG端末装置300に送信する信号の符号化率を低くしたり、送信に用いる周波数帯域幅を広くしたりするなどの動作をすることができる。
【0044】
また、第2実施形態におけるCSG基地局装置100は、接続不許可リスト記憶部106を備えることにより、自装置に近接したことがある非CSG端末装置300が再度近接したとき、ステップS35の処理を実行し、当該非CSG端末装置300が自装置に近接していることをマクロ基地局装置200に速やかに通知することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、CSG基地局装置100、マクロ基地局装置200、非CSG端末装置300、CSG端末装置301それぞれが、1つの場合について説明したが、これに限ることなく、それぞれが2つ以上であってもよい。このとき、複数の非CSG端末装置300がCSG基地局装置100に近接しているか否かの判定は、非CSG端末装置300それぞれを識別するUEインデックスを用いて、非CSG端末装置300ごとに行う。また、1つのマクロ基地局装置200の通信エリア200A内に複数のCSG基地局装置100が配置されていてもよい。また、CSG基地局装置100に接続が許可されているCSG端末装置301は、複数であってもよい。
【0046】
また、非CSG端末装置近接判定部104(107)は、ハンドオフを拒絶するメッセージの数がしきい値以上になったときに、非CSG端末装置300が近接していると判定する構成について説明した。ここで、しきい値に「1」を設定することにより、ハンドオフを拒絶するメッセージを検出すると、非CSG端末装置300が近接していると判定するようにしてもよい。これにより、非CSG端末装置近接判定部104(107)は、非CSG端末装置300が自装置に近接すると、ステップS35の処理を速やかに実行することができ、非CSG端末装置300の無線品質が劣化している時間を短縮することができる。
【0047】
また、接続不許可リスト記憶部106には、接続及びハンドオフを拒絶する対象となる非CSG端末装置300のインデックスを予め記憶させておき、ハンドオフを拒絶するメッセージの数に関わらず、非CSG端末装置近接判定部107は、非CSG端末装置300が近接していると判定するようにしてもよい。
【0048】
また、CSG基地局装置100が、接続が許可されているCSG端末装置301のUEインデックスが記憶されている接続許可リスト記憶部101を備える構成について説明したが、これに限らずに、CSG基地局装置100に接続が許可されているCSG端末装置301のインデックスのリストを管理するサーバー装置を設けるようにしてもよい。この場合、CSG基地局装置100に備えられているハンドオフ制御部102は、ハンドオフ要求と共に受信するUEインデックスを用いて、サーバー装置に問い合わせて接続の可否を判定するようにしてもよい。
【0049】
上述のCSG基地局装置100は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。その場合、上述した接続許可リスト記憶部、ハンドオフ制御部、通信ログ記憶部、非CSG端末装置近接判定部、無線通信部の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われることになる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0050】
1…無線通信システム
5…ネットワーク
100,110…CSG基地局装置
101…接続許可リスト記憶部
102,202…ハンドオフ制御部
103…通信ログ記憶部
104,107…非CSG端末装置近接判定部
105,205…無線通信部
106…接続不許可リスト記憶部
200…マクロ基地局装置
300…非CSG端末装置
301…CSG端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基地局装置と、該第1基地局装置に接続が予め許可されている第1端末装置と、該第1基地局装置に接続が許可されていない第2端末装置と、該第1基地局装置が該第1端末装置との接続に用いる周波数帯と同一の周波数帯を用いて該第2端末装置と接続する第2基地局装置とを具備する無線通信システムであって、
前記第1基地局装置は、
前記第2端末装置との接続を要求するハンドオフ要求を前記第2基地局装置から受信すると、前記第2基地局装置にハンドオフ要求を拒絶するメッセージを送信するハンドオフ制御部と、
直近の予め定められた期間内において、前記ハンドオフ制御部が前記メッセージを送信した回数を検出し、検出した送信の回数が予め定められたしきい値以上の場合、前記第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定し、前記検出した送信の回数が前記しきい値未満の場合、前記第2端末装置が前記通信エリア内に位置していないと判定する近接判定部と
を備えていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記第1基地局装置は、更に、
前記第2端末装置を識別するインデックスを記憶する接続不許可リスト記憶部を備え、
前記近接判定部は、
前記第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定すると、該第2端末装置のインデックスを前記接続不許可リスト記憶部に記憶させ、
前記ハンドオフ制御部がハンドオフ要求を拒絶するメッセージを送信するたびに、該メッセージによりハンドオフが拒絶された第2端末装置のインデックスが前記接続不許可リスト記憶部に記憶されているか否かを判定し、該第2端末装置のインデックスが前記接続不許可リスト記憶部に記憶されている場合、該第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
基地局装置と、該基地局装置に接続が予め許可されている第1端末装置と、該基地局装置に接続が許可されていない第2端末装置と、該基地局装置が該第1端末装置との接続に用いる周波数帯と同一の周波数帯を用いて該第2端末装置と接続する第1基地局装置とを具備する無線通信システムにおける基地局装置であって、
前記第2端末装置との接続を要求するハンドオフ要求を前記第1基地局装置から受信すると、前記第1基地局装置にハンドオフ要求を拒絶するメッセージを送信するハンドオフ制御部と、
直近の予め定められた期間内において、前記ハンドオフ制御部が前記メッセージを送信した回数を検出し、検出した送信の回数が予め定められたしきい値以上の場合、前記第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定し、前記検出した送信の回数が前記しきい値未満の場合、前記第2端末装置が前記通信エリア内に位置していないと判定する近接判定部と
を備えていることを特徴とする基地局装置。
【請求項4】
第1基地局装置と、該第1基地局装置に接続が予め許可されている第1端末装置と、該第1基地局装置に接続が許可されていない第2端末装置と、該第1基地局装置が該第1端末装置との接続に用いる周波数帯と同一の周波数帯を用いて該第2端末装置と接続する第2基地局装置とを具備する無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記第1基地局装置が、前記第2端末装置との接続を要求するハンドオフ要求を前記第2基地局装置から受信すると、前記第2基地局装置にハンドオフ要求を拒絶するメッセージを送信するハンドオフ制御ステップと、
前記第1基地局装置が、直近の予め定められた期間内において、前記ハンドオフ制御ステップにおいて前記メッセージを送信した回数を検出し、検出した送信の回数が予め定められたしきい値以上の場合、前記第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定し、前記検出した送信の回数が前記しきい値未満の場合、前記第2端末装置が前記通信エリア内に位置していないと判定する近接判定ステップと
を有していることを特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
第1基地局装置と、該第1基地局装置に接続が予め許可されている第1端末装置と、該第1基地局装置に接続が許可されていない第2端末装置と、該第1基地局装置が該第1端末装置との接続に用いる周波数帯と同一の周波数帯を用いて該第2端末装置と接続する第2基地局装置とを具備する無線通信システムにおける第1基地局装置に備えられているコンピュータに、
前記第1基地局装置が、前記第2端末装置との接続を要求するハンドオフ要求を前記第2基地局装置から受信すると、前記第2基地局装置にハンドオフ要求を拒絶するメッセージを送信するハンドオフ制御ステップと、
前記第1基地局装置が、直近の予め定められた期間内において、前記ハンドオフ制御ステップにおいて前記メッセージを送信した回数を検出し、検出した送信の回数が予め定められたしきい値以上の場合、前記第2端末装置が自装置の通信エリア内に位置していると判定し、前記検出した送信の回数が前記しきい値未満の場合、前記第2端末装置が前記通信エリア内に位置していないと判定する近接判定ステップと
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−50039(P2012−50039A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192867(P2010−192867)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】