無線通信システム、無線基地局装置、ユーザ端末及び無線通信方法
【課題】アンテナの設置スペースを低減しつつ、セル内におけるユーザ端末の分布状態に拘わらずシステム容量を増加すること。
【解決手段】本発明の無線通信方法は、無線基地局装置において、前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択し、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算し、前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信し、前記ユーザ端末において、前記無線基地局装置からの信号を受信し、受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定し、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする。
【解決手段】本発明の無線通信方法は、無線基地局装置において、前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択し、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算し、前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信し、前記ユーザ端末において、前記無線基地局装置からの信号を受信し、受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定し、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次世代の無線通信システム、無線基地局装置、ユーザ端末及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)ネットワークにおいては、周波数利用効率の向上、データレートの向上を目的として、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)やHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)を採用することにより、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)をベースとしたシステムの特徴を最大限に引き出すことが行われている。このUMTSネットワークについては、更なる高速データレート、低遅延などを目的としてロングタームエボリューション(LTE:Long Term Evolution)が検討されている。
【0003】
第3世代のシステムは、概して5MHzの固定帯域を用いて、下り回線で最大2Mbps程度の伝送レートを実現できる。一方、LTE方式のシステムにおいては、1.4MHz〜20MHzの可変帯域を用いて、下り回線で最大300Mbps及び上り回線で75Mbps程度の伝送レートを実現できる。また、UMTSネットワークにおいては、更なる広帯域化及び高速化を目的として、LTEの後継のシステムも検討されている(例えば、LTEアドバンスト(LTE−A))。例えば、LTE−Aにおいては、LTE仕様の最大システム帯域である20MHzを、100MHz程度まで拡張することが予定されている。また、LTE−Aにおいては、LTE仕様の最大送信アンテナ数である4アンテナを、8アンテナまで拡張することが予定されている。
【0004】
また、LTE方式のシステムにおいては、複数のアンテナでデータを送受信し、データレート(周波数利用効率)を向上させる無線通信技術としてMIMO(Multi Input Multi Output)システムが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。MIMOシステムにおいては、送受信機に複数の送信/受信アンテナを用意し、異なる送信アンテナから同時に異なる送信情報系列を送信する。一方、受信機側では、送信/受信アンテナ間で異なるフェージング変動が生じることを利用して、同時に送信された情報系列を分離して検出することにより、データレート(周波数利用効率)を増大することが可能である。
【0005】
LTE方式のシステムにおいては、異なる送信アンテナから同時に送信する送信情報系列が、全て同一のユーザのものであるシングルユーザMIMO(SU−MIMO(Single User MIMO))伝送と、異なるユーザのものであるマルチユーザMIMO(MU−MIMO(Multiple User MIMO))伝送とが規定されている。これらのSU−MIMO伝送及びMU−MIMO伝送においては、受信機側で送信機のアンテナに設定すべき位相・振幅制御量(プリコーディング行列(プリコーディングウェイトあるいはプリコーディングベクトル))と、このプリコーディング行列に対応づけられるPMI(Precoding Matrix Indicator)とを複数定めたコードブックから最適なPMIを選択し、これをチャネル情報(CSI:Channel State Information)として送信機にフィードバックする。送信機側では、受信機からフィードバックされたPMIに基づいて各送信アンテナに対するプリコーディングを行って送信情報系列を送信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TR 25.913“Requirements for Evolved UTRA and Evolved UTRAN”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LTEの後継システムとして検討されているLTE−A方式のシステムにおいては、8アンテナを用いたMIMO伝送が検討されている。一方で、LTE方式のシステムで採用されるMIMO伝送(例えば、2アンテナを用いたSU−MIMO伝送や4アンテナを用いたMU−MIMO伝送等)にも対応することが要請される。このため、次世代無線通信システムのMIMO伝送では、利用されるアンテナ数が異なる複数の通信タイプに対応することが必要となる。一方、LTE−A方式に代表される次世代無線通信システムにおいては、8アンテナの設置が検討されている。送受信機の小型化の観点から、これらのアンテナの設置スペースを低減することも要請される。
【0008】
一方で、複数のアンテナを水平方向に並設した構成のアンテナ装置を用いた場合においては、ユーザが密集したセルに対してMIMO伝送すると、ユーザ端末の密集の程度(分布状態)によってはシステム容量を増加できないことが考えられる。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、アンテナの設置スペースを低減しつつ、セル内におけるユーザ端末の分布状態に拘わらずシステム容量を増加することができる無線通信システム、無線基地局装置、ユーザ端末及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無線通信システムは、セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムであって、前記無線基地局装置は、一方向に配列された複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、前記セル内のユーザ端末からフィードバックされた通信品質情報に基づいて、前記アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する選択部と、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算するプリコーディング乗算部と、前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する送信部と、を具備し、前記ユーザ端末は、前記無線基地局装置からの信号を受信する受信部と、受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定するチャネル品質測定部と、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする送信部と、を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の無線基地局装置は、セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線基地局装置であって、一方向に配列された複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、前記アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する選択部と、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算するプリコーディング乗算部と、前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する送信部と、を具備することを特徴とする。
【0012】
本発明のユーザ端末は、セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおけるユーザ端末であって、前記無線基地局装置において前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックを用いて前記無線基地局装置から送信された信号を受信する受信部と、受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定するチャネル品質測定部と、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする送信部と、を具備することを特徴とする。
【0013】
本発明の無線通信方法は、セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記無線基地局装置において、前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する工程と、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算する工程と、前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する工程と、前記ユーザ端末において、前記無線基地局装置からの信号を受信する工程と、受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定する工程と、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンテナの設置スペースを低減しつつ、セル内におけるユーザ端末の分布状態に拘わらずシステム容量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る無線基地局装置が備えるアレーアンテナによって提供されるN個の通信タイプを説明するための模式図である。
【図2】アレーアンテナを構成するアンテナ素子に対するウェイト制御を説明するための模式図である。
【図3】第1の通信タイプのためのウェイト制御を説明するための模式図である。
【図4】第2の通信タイプのためのウェイト制御を説明するための模式図である。
【図5】第3の通信タイプのためのウェイト制御を説明するための模式図である。
【図6】実施の形態に係る無線通信システムにおけるウェイト制御を説明するための模式図である。
【図7】実施の形態に係る無線通信システムにおける複数のプリコーディングベクトルを説明するための図である。
【図8】ユーザ端末の分布状態を説明するための図である。
【図9】実施の形態に係る無線通信システムのネットワーク構成を示す図である。
【図10】実施の形態に係る無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態に係る移動局の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般に、MIMO伝送で用いられる複数のアンテナは、無線基地局装置における同一の高さの位置に設置されている。そして、MIMO伝送では、各セルに位置するユーザ端末のデータレートが最も向上するようにプリコーディングウェイト(以下、「ウェイト」という)を選択し、主に水平方向に指向性を設定可能な送信ビームを形成する。複数のアンテナが同一の高さの位置に設置されることから、例えば、LTE−A方式のシステムにおいては、最大で8本分のアンテナの設置スペースが必要となる。一方、複数のアンテナの設置スペースの低減という観点からは、主に垂直方向に指向性を設定可能な送信ビームを採用することが考えられる。この場合には、複数のアンテナを無線基地局装置における同一の高さの位置に設置する必要がなくなる。このため、複数のアンテナを上下に配置でき、アンテナの設置スペースを低減できる。
【0017】
以下、本発明の一実施の形態に係る無線通信システムの構成について説明する。
本実施の形態に係る無線通信システムは、垂直方向に指向性を設定可能な送信ビームを形成できる無線基地局装置(以下、「無線基地局装置」という)を備える。この無線基地局装置は、Nを2以上の整数として、N個の通信タイプのそれぞれに対応して少なくとも1つのグループに分けられる複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナを備える。以下、この無線基地局装置が備えるアレーアンテナによって提供されるN個の通信タイプについて図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る無線基地局装置が備えるアレーアンテナによって提供されるN個の通信タイプを説明するための模式図である。
【0018】
図1Aに示すように、アレーアンテナ10は、一方向、例えば、垂直方向に1列に配列された複数のアンテナ素子11から構成されている(図1Aには16個のアンテナ素子11が例示されている)。本実施の形態では、アレーアンテナ10は、垂直偏波アンテナ10aと水平偏波アンテナ10bとを組み合わせた偏波アンテナで構成される。ただし、本発明は偏波アンテナ構成に限定されない。図1Bは、垂直偏波アンテナ10aを単独で示した概念図であり、図1Cは、水平偏波アンテナ10bを単独で示した概念図である。偏波アンテナが適用される場合、個々のアンテナ素子11は、それぞれ垂直偏波素子11Vと水平偏波素子11Hのセットで構成される。以下の説明では、無線基地局のアレーアンテナ10が、垂直に立設されている場合について説明するが、環境によってはアレーアンテナ10が斜め(横向きを含む)に配置されてもよい。
【0019】
第1の通信タイプは、アレーアンテナ10を構成するアンテナ素子11の全体で1つのグループAを形成し、アンテナ全体で1つのアンテナブランチを構成するタイプである。第2の通信タイプは、アレーアンテナ10を構成するアンテナ素子11を上下に2分割し、アンテナ素子11を2つのグループB1,B2に分けて2つのアンテナブランチを構成するタイプである。第3の通信タイプは、アレーアンテナ10を構成するアンテナ素子11を上下に4分割し、アンテナ素子11を4つのグループC1,C2,C3,C4に分けて4つのアンテナブランチを構成するタイプである。本実施の形態では、第1から第3の通信タイプ(アンテナブランチ数と呼ぶこともできる)を例示するが、アレーアンテナ10を構成するアンテナ素子11の垂直方向の分割数に応じて適宜任意の数の通信タイプを設定可能である。また、最大ブランチ数はアンテナ素子11に応じて適宜選択可能である。
【0020】
第1から第3の通信タイプの中では、第1の通信タイプが1ブランチを構成するアンテナ長(アンテナ素子数)が最も長い。アンテナブランチ数が増えるのに従って1ブランチ当たりのアンテナ長が短くなる。一般的に、アレーアンテナを用いてビーム形成する場合、1ブランチ当たりのアンテナ素子数が多くなるのに従って、アンテナ利得が増大し、かつビーム幅を小さくできる。したがって、第1の通信タイプは、アンテナ全体を1アンテナブランチで構成するので、セル端に向けたシャープなビームを形成できる。
【0021】
アレーアンテナ10にはグループ毎にウェイトが掛けられた送信信号がアンテナ素子11に入力される。ウェイトを制御することによってアレーアンテナ10で任意のアンテナブランチを構成できる。図2に示すように、アレーアンテナ10を構成する16個のアンテナ素子11は、最小アンテナブランチ単位(アンテナ素子数=4)で、同一のウェイトが掛けられた送信信号が供給される。図2には2つの送信信号S1,S2を合成可能な構成が示されているが、最大合成数はこれに限定されない。例えば、8多重MIMOを提供する場合は、4つの送信信号S1,S2,S3,S4を合成可能な構成が望ましい(図5参照)。アレーアンテナ10は、送信信号数×構成ブランチ数に相当する数のビームを同時に形成できる。
【0022】
第1の通信タイプでは、図3に示すように、アレーアンテナ10は、1つのグループAを構成する各アンテナ素子11に入力する送信信号S1に同一のウェイトW(例えば、W11、W12、W13、W14=1,1,1,1)を掛ける。これにより、高いアンテナ利得で、かつビーム幅の小さい1つのビームを形成することができる。なお、図3においては、説明の便宜上、水平偏波アンテナ10bに入力される送信信号S1を省略している。垂直偏波アンテナ10aと水平偏波アンテナ10bとでそれぞれ1つのビームを形成するので、アレーアンテナ10としては2つのビームが形成される。したがって、第1の通信タイプは、2多重MIMO伝送を提供できる。受信機が2×2のMIMO伝送をサポートしていれば、2×2のMIMO伝送が実現できる。また、1アンテナ構成の受信機であれば、2アンテナによるSFBC(Space-Frequency Block Coding)による空間周波数送信ダイバーシチを実現できる。なお、SFBCは、アンテナ/周波数領域で符号化が行われる。
【0023】
第2の通信タイプでは、図4に示すように、アレーアンテナ10は、グループB1を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S1にウェイトW(例えば、W11、W12、W13、W14=1,1,0,0)を掛け、かつ、グループB2を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S2にウェイトW(例えば、W21、W22、W23、W24=0,0,1,1)を掛ける。これにより、グループB1及びB2に対応した2つのアンテナブランチによりビーム1、ビーム2を形成できる。なお、図4においては、説明の便宜上、水平偏波アンテナ10bに入力される送信信号S1、S2を省略している。垂直偏波アンテナ10aがビーム1、ビーム2を形成し、同時に水平偏波アンテナ10bがビーム1、ビーム2を形成するので、アレーアンテナ10は合計で4つのビームを並列に形成することができる。並列に形成される4つのビームをセル内の同一エリアに向けることにより、4多重MIMO伝送が提供される。
【0024】
第3の通信タイプでは、図5に示すように、アレーアンテナ10は、グループC1を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S1にウェイトW(例えば、W11、W12、W13、W14=1,0,0,0)を掛け、かつ、グループC2を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S2にウェイトW(例えば、W21、W22、W23、W24=0,1,0,0)を掛ける。さらに、アレーアンテナ10は、グループC3を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S3にウェイトW(例えば、W31、W32、W33、W34=0,0,1,0)を掛け、かつ、グループC4を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S4にウェイトW(例えば、W41、W42、W43、W44=0,0,0,1)を掛ける。これにより、グループC1〜C4に対応した4つのアンテナブランチによりビーム1〜ビーム4を形成できる。なお、図5においては、説明の便宜上、水平偏波アンテナ10bに入力される送信信号S1〜S4を省略している。垂直偏波アンテナ10aが4ビームを形成し、同時に水平偏波アンテナ10bが4ビームを形成するので、アレーアンテナ10は合計で8つのビームを並列に形成することができる。並列に形成される8つのビームをセル内の同一エリアに向けることにより、8多重MIMO伝送が提供される。
【0025】
本実施の形態に係る無線通信システムにおいては、アンテナ素子11に入力される送信信号に対するウェイトを制御することにより、アレーアンテナ10を1又は複数のグループに分割できる。これにより、所望の通信タイプを切り替えてユーザ端末UEに対して信号送信を行うことが可能となる。
【0026】
次に、本実施の形態に係る無線通信システムにおけるシグナリングについて説明する。LTE方式及びLTE−A方式のシステムは、下り参照信号として、CRS(Cell-specific Reference Signal)、CSI−RS(Channel State Information-Reference Signal)、ユーザ固有のDM−RS(Demodulation-Reference Signal)等を規定している。CRSは、全ての下りリンクサブフレームで送信され、下りリンクの周波数帯域全体にまたがって配置される。CRSは、下りリンクの同期検波用のチャネル推定に用いられる。CSI−RSは、チャネル情報測定用の参照信号であり、CSI(CQI,PMI,ランク数)の測定に用いられる。ユーザ固有のDM−RSは、個別のユーザ端末UEへの下り共用チャネル(DL−SCH)伝送に割り当てられるリソースブロックで送信される。ユーザ固有のDM−RSは、下り共用チャネルの同期検波用チャネル推定に用いることができるユーザ固有の復調用の参照信号である。
【0027】
また、LTE方式及びLTE−A方式のシステムは、ユーザ端末UEが接続すべきセルを検出するセルサーチに使用する同期信号(SS)、セルサーチ後に必要なシステム情報(SIB(System Information Block),MIB(Master Information Block))を送信する物理報知チャネル(PBCH)を規定している。さらに、LTE方式及びLTE−A方式のシステムは、下り制御信号の送信用にPDCCH(Physical Downlink Control Channel)を規定し、上り制御信号の送信用にPUCCH(Physical Uplink Control Channel)を規定している。さらに、LTE方式及びLTE−A方式のシステムは、下りのデータ(一部の制御信号を含む)送信用にPDSCH(Physical Uplink Control Channel)を規定し、上りのデータ(一部の制御信号を含む)送信用にPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)を規定している。
【0028】
本実施の形態に係る無線通信システムを構成する無線基地局装置は、これらのようなユーザ端末UEに対して送信する信号の種別、並びに、ユーザ端末UEの機能に応じて通信タイプを切り替える。通信タイプを切り替える際に判定されるユーザ端末UEの機能については、例えば、ユーザ端末UEが、Release8(Rel.8)、Release9(Rel.9)、Release10(Rel.10)又はRelease11(Rel.11)のLTE対応の端末か否かなどが該当する。
【0029】
例えば、無線基地局装置は、第1の通信タイプにより、Rel.8、Rel.9、Rel.10又はRel.11のLTEに対応するユーザ端末向けのCRS及びPDCCH、並びに、MIB/SIB/ページング情報を送信する。セル接続を希望するユーザ端末UEは、必ず同期信号(SS)及び物理報知チャネル(PBCH)を受信する必要が有るので、同期信号(SS)及び物理報知チャネル(PBCH)はエリア内の全てをカバレッジとすることが求められる。このため、無線基地局装置は、これらの信号を通信タイプ1に対応したビームにより送信する。また、無線基地局装置は、第1の通信タイプにより、Rel.8のLTEに対応し、2×2のMIMO伝送をサポートするユーザ端末向けのPDSCHを送信する。
【0030】
また、無線基地局装置は、第2の通信タイプにより、Rel.10のLTEに対応し、トランスミッションモード9をサポートするユーザ端末向けの4つのアンテナポートに対応するCSI−RSを送信する。また、無線基地局装置は、第2の通信タイプにより、Rel.10のLTEに対応し、トランスミッションモード9をサポートするユーザ端末向けのPDSCH及びDM−RSを送信する。
【0031】
さらに、無線基地局装置は、第3の通信タイプにより、例えば、Rel.10のLTEに対応し、8×8のMIMO伝送をサポートするユーザ端末向けの8つのアンテナポートに対応するCSI−RSを送信する。また、無線基地局装置は、第3の通信タイプにより、Rel.10のLTEに対応し、トランスミッションモード9をサポートするユーザ端末向けのPDSCH及びDM−RSを送信する。
【0032】
同一の素子指向性を持つアレーを用いた既存のシステム(水平方向に指向性を設定可能な複数の送信ビームを形成できる無線基地局装置)では、コードブックは空間内を複数(例えば、M個)に均一に分割するようなプリコーディングベクトル(プリコーディングウェイト)で構成されることが一般的である(3GPP TS36.211 ver10.1.0 6.3.4.2.3)。コードブックCODEVOOKV[0,1,...,M-1]から、それぞれのプリコーディングベクトルを選んでプリコーディングを行う処理は、M通りの指向性ビームを用いてユーザ端末と通信することと関連付けて考えることができる。このとき、ユーザ端末は、それぞれに最適なプリコーディングベクトルを選択する。この場合においては、異なるプリコーディングベクトルを用いて通信するユーザ端末同士は、指向性ビーム(送信ビーム)が異なることから信号の干渉を受けにくい。つまり、異なるプリコーディングベクトルを用いて通信するユーザ端末が多いほど、異なるユーザ端末間で空間的にデータを多重できるためシステムの容量が増加する。
【0033】
しかしながら、垂直方向のアレーアンテナ構成を用いた場合(垂直セクタ化が可能な複数の送信ビームを形成できる無線基地局装置を用いた場合)には、ユーザ端末がサービスされるエリア(セル)内に偏りをもって存在するために、同一のプリコーディングベクトルを選択する確率が高くなり、上記空間内を複数(例えば、M個)に均一に分割するようなコードブックは最適にはならない。本発明者らは、この問題を解決するために新たなコードブックを提案する。この提案は、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に設定されたプリコーディングベクトルを含むコードブックを用いることでシステム容量を増加するものである。これによれば、ユーザ端末の密度が大きいところのプリコーディングベクトルの密度を増やすことができ、空間的にデータを多重できる効率が高くなる。ここで、プリコーディングベクトルを、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に設定するとは、プリコーディングベクトルに対応する送信ビームのアンテナ素子の配列方向に対する角度を、一定角度間隔ではなくユーザ端末の分布の偏り等を考慮した角度間隔で選択したプリコーディングベクトルを用いることである。
【0034】
本発明においては、アレーアンテナを含む無線通信システムにおいて、位相・振幅制御量(プリコーディング行列)と、このプリコーディング行列に対応づけられるPMI(Precoding Matrix Indicator)とを複数定めたコードブックを設定する。このコードブックは、ユーザ端末の分布の偏りを考慮したものであり、セル内のユーザ端末の分布の状態により無線基地局装置毎に異なるように設定される。
【0035】
なお、セル内のユーザ端末の分布状態は、セル設計の際に予め仮定したり、予測して求める。そのように求められた分布状態に基づいてコードブックを決定する。すなわち、ユーザ端末の分布状態を予め予測して、一つの分布状態を決定し、その分布状態に対応するコードブックを決定する。
【0036】
この場合において、カバーエリア(セル)内のユーザ端末の分布の偏りを考慮した具体的なコードブックとしては以下のようなものが考えられる。このコードブックにおけるプリコーディングベクトルは、ユーザ端末の密度の逆数で均一になるように設定されている。
ρ(L)を無線基地局装置からの距離に応じたユーザ端末の分布関数とし、L[m]を無線基地局装置からの距離としたときに、
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(ρ(L・[0,1,...M-1])))
となる。
ここで、図6に示すように、hは無線基地局装置の高さであり、dはブランチ間隔であり、αは水平方向に対してユーザ端末UEに向けた送信ビームのチルト角であり、Nはブランチ数である。また、θは水平方向に対してセル端に向けた送信ビームのチルト角である。
【0037】
具体的なセル内のユーザ端末の分布状態としては、例えば、図7Aに示すように、ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて一様に分布している場合(均等)や、図7Bに示すように、ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて2乗倍で分布している場合(セル端密)が挙げられる。例えば、図7Bに示す分布状態である場合には、コードブックは、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に設定された複数のプリコーディングベクトルで構成される。
【0038】
このような場合におけるコードブック(プリコーディングベクトルグループ)は、以下のようになる。
(1)CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(Lmax/M)・[0,1,...M-1]))
(ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて一様に分布している場合:図7A)
(2)CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(Lmax/sqrt(2)^[M-1,...1,0]))
(ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて2乗倍で分布している場合:図7B)
【0039】
このような複数のプリコーディングベクトルは、図8に示すように、無線基地局装置からの距離に応じてそれぞれ適切なプリコーディングベクトルとして設定される。例えば、図8においては、無線基地局装置から最も近いユーザ端末UE#1に最適なプリコーディングベクトルPV#1が設定され、無線基地局装置から次に近いユーザ端末UE#2に最適なプリコーディングベクトルPV#2が設定される。そして、同様にして、無線基地局装置から次に近いユーザ端末UE#3〜UE#10に最適なプリコーディングベクトルPV#3〜PV#10がそれぞれ設定される。なお、プリコーディングベクトル数Mには特に制限はない。例えば、無線基地局装置のアンテナの指向性のビーム幅に応じて、隣接するプリコーディングベクトルに該当するエリアへヌルが向くようにプリコーディングベクトル数Mを決定しても良い。
【0040】
セル内のユーザ端末の分布状態は、上りリンク信号を用いて求めるようにしても良い。例えば、上りリンク信号を用いて分布状態を求める場合、例えば、各ユーザ端末の上りリンク信号(PUCCH(Physical Uplink Control Channel)あるいはPUSCH(Physical Uplink Shard Channel))の信号を用いて推定した無線基地局装置からの距離や、上り信号(PUCCHあるいはPUSCH)を用いて推定した無線基地局装置からユーザ端末に対する角度や、別途ユーザ端末においてGPS等により推定した位置情報を取得し、それを上り信号(PUCCHあるいはPUSCH)で取得した位置情報から割り出した無線基地局装置からの距離や、信号の遅延時間等の方法を用いて推定した無線基地局装置からの距離を用いて求める。
【0041】
このように設定されたコードブックを用いたプリコーディングベクトルの選択について説明する。上述したように、これらのコードブックは無線基地局装置及びユーザ端末で有している。また、このコードブックは、ユーザ端末の分布の偏りを考慮したコードブックであり、ρ(L)を無線基地局装置からの距離に応じたユーザ端末の分布関数とし、L[m]を無線基地局装置からの距離としたときに、
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(ρ(L・[0,1,...M-1])))
で示されるM個のプリコーディングベクトルより構成される。
【0042】
まず、ユーザ端末は、無線基地局装置より送られてくる参照信号CRS(Cell-specific Reference Signal)、CSI−RS(Channel State Information-Reference Signal))に基づいてSIR(Signal to Interference Ratio)及びチャネル行列の推定値H’を算出する。CQI(Channel Quality Indicator)及びRI(Rank Indicator)は、H’やSIR、RSRQ等の通信品質情報に基づいて、ブロックエラーレートが所定の誤り率を超えないように選択される。PMI(Precoding Matrix Indicator)は、位相・振幅制御量(プリコーディング行列)と、このプリコーディング行列に対応づけられるPMIとを複数定めたM個のプリコーディングベクトル(上記複数のプリコーディングベクトル)からH’に最も近いものが選択される。ユーザ端末は、これらの通信品質情報CSI(CQI、PMI、RI)を無線基地局装置へ通知する。
【0043】
次いで、無線基地局装置は、ユーザ端末より通知された通信品質情報CSIに基づいて、そのユーザ端末のデータ信号(PDSCH(Physical Downlink Shard Channel))を送信するためのリソース割り当て、及びMIMO伝送のレイヤ数やプリコーディングの設定、符号化レートなどを随時更新し、その情報とともにデータ信号(PDSCH)に参照信号(DM−RS(Demodulation-Reference Signal))を付与して送信する。したがって、無線基地局装置においては、ユーザ端末からフィードバックされたCSI情報からPMIを抽出し、このPMIに基づいて、セル内のユーザ端末の分布状態に基づいて予め設定されたコードブックから最適なプリコーディングベクトルを選択する。
【0044】
あるいは、無線基地局装置において、ユーザ端末からのシグナリングがない状態で、上りリンク信号のRSRP(Reference Signal Received Power)、RSRQ(Reference Signal Received Quality)、SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)といった通信品質情報を用いて、セル内のユーザ端末の分布状態に基づいて予め設定されたコードブックから最適なプリコーディングベクトルを選択しても良い。
【0045】
次いで、無線基地局装置は、ユーザ端末のデータ信号(PDSCH)を送信するためのリソース割り当て、MIMO伝送のレイヤ数やプリコーディングの設定、符号化レート等を随時更新し、アンテナ装置へ反映する。そして、無線基地局装置は、これらの情報とともに、選択されたプリコーディングベクトルを用いてデータ信号(PDSCH)に参照信号(DM−RS)を付与して送信する。
【0046】
このように、サービスエリア内でのユーザ端末の偏りを考慮したコードブックを設定し、ユーザ端末の通信品質情報に基づいてプリコーディングベクトルを選択するので、システムの容量が増加する。
【0047】
無線基地局装置においてMIMO送信する場合には、プリコーディングベクトルが生成される。このプリコーディングベクトルは、リソースエレメント(RE)毎に乗算する。したがって、システム情報(SS(Synchronized Signal)、PBCH(Primary Broadcast Channel))や参照信号(CRS、CSI−RS)を送信するときのプリコーディングベクトルと、制御信号(PDCCH、PCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)、PHICH(Physical Hybrid-ARQ Indicator Channel))を送信するときのプリコーディングベクトルとを変えることにより、それぞれの信号の送信エリアを変えることが可能である。
【0048】
例えば、CRS、CSI−RS、PDCCHは、exp(2πd・j・cos(θ+π/2)・[0,1,2,,…,N-1])のコードブックのプリコーディングベクトルを用い、DM−RS、PDSCHは、CSI−RSを用いてユーザ端末側でPMIを選択し、通知されたそのPMIで選択されたコードブックのプリコーディングベクトルを用いることができる。
【0049】
上記説明においては、垂直方向のコードブックCODEBOOKVのみを用いる場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、ユーザ端末の分布状態を考慮して、従来の水平方向のコードブックCODEBOOKHと垂直方向のコードブックCODEBOOKVとを組み合わせて新たなコードブックCODEBOOK3Dを用いても良い。
CODEBOOK3D[0,1,...M×P-1]
=CODEBOOKV[0,1,...M-1]×CODEBOOKH[0,1,...P-1]
【0050】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、LTE−Aシステムに対応する無線基地局装置及び移動局装置を用いる場合について説明する。
【0051】
図9を参照しながら、本発明の一実施の形態に係るユーザ端末としての移動局装置(以下、「移動局」という)100及び無線基地局装置(eNodeB)200を有する無線通信システム1について説明する。図9は、本発明の一実施の形態に係るユーザ100及び無線基地局装置200を有する無線通信システム1の構成を説明するための図である。なお、図9に示す無線通信システム1は、例えば、LTEシステム又はSUPER 3Gが包含されるシステムである。また、この移動通信システム1は、IMT−Advancedと呼ばれても良いし、4Gと呼ばれても良い。
【0052】
図9に示すように、無線通信システム1は、無線基地局装置200と、この無線基地局装置200と通信する複数の移動局100(1001、1002、1003、・・・100n、nはn>0の整数)とを含んで構成されている。無線基地局装置200は、上位局装置300と接続され、この上位局装置300は、コアネットワーク400と接続される。ユーザ端末100は、セル500において無線基地局装置200と通信を行っている。なお、上位局装置300には、例えば、アクセスゲートウェイ装置、無線ネットワークコントローラ(RNC)、モビリティマネジメントエンティティ(MME)等が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0053】
各移動局(1001、1002、1003、・・・100n)は、同一の構成、機能、状態を有するので、以下においては、特段の断りがない限り移動局100として説明を進める。また、説明の便宜上、無線基地局装置200と無線通信するのは移動局装置100であるものとして説明するが、より一般的には移動端末装置も固定端末装置も含むユーザ装置(UE:User Equipment)でよい。
【0054】
無線通信システム1においては、無線アクセス方式として、下りリンクについてはOFDMA(直交周波数分割多元接続)が、上りリンクについてはSC−FDMA(シングルキャリア−周波数分割多元接続)が適用される。OFDMAは、周波数帯域を複数の狭い周波数帯域(サブキャリア)に分割し、各サブキャリアにデータをマッピングして通信を行うマルチキャリア伝送方式である。SC−FDMAは、システム帯域を端末毎に1つ又は連続したリソースブロックからなる帯域に分割し、複数の端末が互いに異なる帯域を用いることで、端末間の干渉を低減するシングルキャリア伝送方式である。
【0055】
ここで、LTEシステムにおける通信チャネルについて説明する。下りリンクについては、各移動局10で共有されるPDSCHと、下りL1/L2制御チャネル(PDCCH、PCFICH、PHICH)とが用いられる。このPDSCHにより、ユーザデータ、すなわち、通常のデータ信号が伝送される。送信データは、このユーザデータに含まれる。なお、無線基地局装置200で移動局100に割り当てたコンポーネントキャリア(CC)」やスケジューリング情報は、L1/L2制御チャネルにより移動局100に通知される。
【0056】
上りリンクについては、各移動局100で共有して使用されるPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)と、上りリンクの制御チャネルであるPUCCH(Physical Uplink Control Channel)とが用いられる。このPUSCHにより、ユーザデータが伝送される。また、PUCCHにより、下りリンクの無線品質情報(CQI:Channel Quality Indicator)等が伝送される。
【0057】
図10は、本実施の形態に係る無線基地局装置200の構成を示すブロック図である。図11は、本実施の形態に係る移動局100の構成を示すブロック図である。なお、図10及び図11に示す無線基地局装置200及び移動局100の構成は、本発明を説明するために簡略化したものであり、それぞれ通常の無線基地局装置及び移動局が有する構成は備えているものとする。
【0058】
図10に示す無線基地局装置200において、不図示のスケジューラは、後述するチャネル推定部215#1〜215#Kから与えられるチャネル推定値に基づいて多重するユーザ数(多重ユーザ数)を決定する。そして、各ユーザに対する上下リンクのリソース割り当て内容(スケジューリング情報)を決定し、ユーザ#1〜#Kに対する送信データ#1〜#Kを対応するチャネル符号化部201#1〜201#Kに送出する。
【0059】
送信データ#1〜#Kは、チャネル符号化部202#1〜202#Kでチャネル符号化された後、データ変調部202#1〜202#Kに出力され、データ変調される。この際、チャネル符号化及びデータ変調は、後述するMIMO切替部221#1〜221#Kから与えられるチャネル符号化率及び変調方式に基づいて行われる。データ変調部202#1〜202#Kでデータ変調された送信データ#1〜#Kは、不図示の離散フーリエ変換部で逆フーリエ変換され、時系列の信号から周波数領域の信号に変換されてサブキャリアマッピング部203に出力される。
【0060】
サブキャリアマッピング部203においては、送信データ#1〜#Kを、後述するリソース割当制御部220から与えられるリソース割当情報に応じてサブキャリアにマッピングする。このとき、サブキャリアマッピング部203は、不図示の参照信号生成部から入力される参照信号#1〜#K、報知情報生成部及びシステム情報生成部から入力される報知情報及びシステム情報を、送信データ#1〜#Kと共にサブキャリアにマッピング(多重)する。このようにしてサブキャリアにマッピングされた送信データ#1〜#Kがプリコーディング乗算部204#1〜204#Kに出力される。
【0061】
プリコーディング乗算部204#1〜204#Kは、後述するプリコーディングベクトル生成部219から与えられるプリコーディングベクトルに基づいて、送信アンテナTX#1〜TX#N毎に送信データ#1〜#Kを位相及び/又は振幅シフトする(プリコーディングによる送信アンテナTX#1〜送信アンテナTX#Nの重み付け)。プリコーディング乗算部204#1〜204#Kにより位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#1〜#Kは、マルチプレクサ(MUX)205に出力される。なお、このプリコーディングベクトルは、セル内のユーザ端末の分布状態を考慮して予め設定されたコードブックから選択されたものである。
【0062】
マルチプレクサ(MUX)205においては、位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#1〜#Kを合成し、送信アンテナTX#1〜TX#N毎の送信信号を生成する。マルチプレクサ(MUX)205により生成された送信信号は、逆高速フーリエ変換部(IFFT部)206#1〜206#Nにて逆高速フーリエ変換して周波数領域の信号から時間領域の信号に変換される。そして、サイクリックプレフィクス(CP)付加部207#1〜207#NにてCPが付加された後、RF送信回路208#1〜208#Nへ出力される。そして、RF送信回路208#1〜208#Nで無線周波数帯に変換する周波数変換処理が施された後、デュプレクサ(Duplexer)209#1〜209#Nを介して送信アンテナTX#1〜TX#Nに出力され、送信アンテナTX#1〜TX#Nから下りリンクで移動局100に送出される。
【0063】
一方、移動局100から上りリンクで送出された送信信号は、送信アンテナTX#1〜TX#Nにより受信され、デュプレクサ(Duplexer)209#1〜209#Nにて送信経路と受信経路とに電気的に分離された後、RF受信回路210#1〜210#Nに出力される。そして、RF受信回路210#1〜210#Nにて、無線周波数信号からベースバンド信号に変換する周波数変換処理が施される。周波数変換処理が施されたベースバンド信号は、CP除去部211#1〜211#NにてCPが除去された後、高速フーリエ変換部(FFT部)212#1〜212#Nに出力される。受信タイミング推定部213は、受信信号に含まれるリファレンス信号から受信タイミングを推定し、その推定結果をCP除去部211#1〜211#Nに通知する。FFT部212#1〜212#Nは、入力された受信信号にフーリエ変換を施し、時系列の信号から周波数領域の信号に変換する。これらの周波数領域の信号に変換された受信信号は、データチャネル信号分離部214#1〜214#Kに出力される。
【0064】
データチャネル信号分離部214#1〜214#Kは、FFT部212#1〜212#Kから入力された受信信号を、例えば、平均2乗誤差最小(MMSE:Minimum Mean Squared Error)や最尤推定検出(MLD:Maximum Likelihood Detection)信号分離法により分離する。これにより、移動局100から到来した受信信号は、ユーザ#1〜ユーザ#Kに関する受信信号に分離される。チャネル推定部215#1〜215#Kは、データチャネル信号分離部214#1〜214#Kで分離された受信信号に含まれるリファレンス信号からチャネル状態を推定し、推定したチャネル状態を制御チャネル復調部216#1〜216#Kに通知する。
【0065】
データチャネル信号分離部214#1〜214#Kにより分離されたユーザ#1〜ユーザ#Kに関する受信信号は、不図示のサブキャリアデマッピング部にてデマッピングされて時系列の信号に戻された後、データ復調部217#1〜217#Kでデータ復調される。そして、図示しないチャネル復号部#1〜#Kにてチャネル復号処理が施されることで受信データが得られる。
【0066】
制御チャネル復調部216#1〜216#Kは、データチャネル信号分離部214#1〜214#Kで分離された受信信号に含まれる制御チャネル信号(例えば、PDCCH)を復調する。この際、制御チャネル復調部216#1〜216#Kにおいては、チャネル推定部215#1〜215#Kから通知されたチャネル状態に基づいて、それぞれユーザ#1〜ユーザ#Kに対応する制御チャネル信号を復調する。制御チャネル復調部216#1〜216#Kにより復調された各制御チャネル信号は、CQI情報更新部219#1〜219#Kに出力される。
【0067】
CQI情報更新部218#1〜218#Kは、制御チャネル復調部216#1〜216#Kから入力された各制御チャネル信号(例えば、PUCCH)に含まれるチャネル状態情報(CSI)を抽出し、常にCSIを最新の状態に更新する。例えば、CSIには、PMI、RI及びCQIが含まれる。CSI情報更新部218#1〜218#Kに更新されるCSIは、それぞれプリコーディングベクトル生成部219、リソース割当制御部220、MIMO切替部221#1〜221#K及びコードブック選択部222に出力される。
【0068】
コードブック選択部222は、CSI情報更新部218#1〜218#KからのCSI情報からPMIを抽出し、そのPMIに基づいてアンテナ素子の配列方向に対して非均一に設定されたコードブック中のM種類のプリコーディングベクトルの中からのうちの最適なプリコーディングベクトルを選択する。なお、予め設定されるアンテナ素子の配列方向に対して非均一に設定されたコードブックは、ρ(L)を無線基地局装置からの距離に応じたユーザ端末の分布関数とし、L[m]を無線基地局装置からの距離としたときに、以下の式により求められる(ユーザ端末の密度の逆数で均一になるように設定される)。
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(ρ(L・[0,1,...M-1])))
ここで、hは無線基地局装置の高さであり、dはブランチ間隔であり、αは水平方向に対してユーザ端末UEに向けた送信ビームのチルト角であり、Nはブランチ数である。
【0069】
また、無線基地局装置からの距離に応じたユーザ端末の分布関数ρ(L)は、例えば、各ユーザ端末の上りリンク信号(PUCCHあるいはPUSCH)の信号を用いて推定した無線基地局装置からの距離や、上り信号(PUCCHあるいはPUSCH)を用いて推定した無線基地局装置からユーザ端末に対する角度や、別途ユーザ端末においてGPS等により推定した位置情報を取得し、それを上り信号(PUCCHあるいはPUSCH)で取得した位置情報から割り出した無線基地局装置からの距離や、信号の遅延時間等の方法を用いて推定した無線基地局装置からの距離により求めることができる。
【0070】
プリコーディングベクトル生成部219は、CSI情報更新部218#1〜218#Kから入力されたCSIに基づいて、送信データ#1〜#Kに対する位相及び/又は振幅シフト量を示すプリコーディングベクトルを生成する。このプリコーディングベクトルは、コードブック選択部222で選択されたコードブックから生成される。生成された各プリコーディングベクトルは、プリコーディング乗算部204#1〜204#Kに出力され、送信データ#1〜送信データ#Kのプリコーディングに利用される。
【0071】
リソース割当制御部220は、CSI情報更新部218#1〜218#Kから入力されたCSIに基づいて、各ユーザに割り当てるリソース割当情報を決定する。リソース割当制御部220により決定されたリソース割当情報は、サブキャリアマッピング部203に出力され、送信データ#1〜送信データ#Kのマッピングに利用される。
【0072】
MIMO切替部221#1〜221#Kは、CSI情報更新部218#1〜218#Kから入力されたCSIに基づいて、送信データ#1〜送信データ#Kに用いるMIMO伝送方式を選択する。そして、選択したMIMO伝送方式に応じた送信データ#1〜送信データ#Kに対するチャネル符号化率及び変調方式を決定する。決定されたチャネル符号化率は、それぞれチャネル符号化部201#1〜201#Kに出力され、決定された変調方式は、それぞれデータ変調部202#1〜202#Kに出力される。
【0073】
一方、図11に示す移動局100において、無線基地局装置200から送出された送信信号は、受信アンテナRX#1〜RX#Nにより受信され、デュプレクサ(Duplexer)101#1〜101#Nにて送信経路と受信経路とに電気的に分離された後、RF受信回路102#1〜102#Nに出力される。そして、RF受信回路102#1〜102#Nにて、無線周波数信号からベースバンド信号に変換する周波数変換処理が施される。周波数変換処理が施されたベースバンド信号は、サイクリックプレフィクス(CP)除去部103#1〜103#NにてCPが除去された後、高速フーリエ変換部(FFT部)104#1〜104#Nに出力される。受信タイミング推定部105は、受信信号に含まれるリファレンス信号から受信タイミングを推定し、その推定結果をCP除去部103#1〜103#Nに通知する。FFT部104#1〜104#Nは、入力された受信信号にフーリエ変換を施し、時系列の信号から周波数領域の信号に変換する。周波数領域の信号に変換された受信信号は、データチャネル信号分離部106に出力される。
【0074】
データチャネル信号分離部106は、FFT部104#1〜104#Nから入力された受信信号を、例えば、平均2乗誤差最小(MMSE:Minimum Mean Squared Error)や最尤推定検出(MLD:Maximum Likelihood Detection)信号分離法により分離する。これにより、無線基地局装置200から到来した受信信号は、ユーザ#1〜ユーザ#Kに関する受信信号に分離され、移動局100のユーザ(ここでは、ユーザKとする)に関する受信信号が抽出される。チャネル推定部107は、データチャネル信号分離部106で分離された受信信号に含まれるリファレンス信号からチャネル状態を推定し、推定したチャネル状態を制御チャネル復調部108に通知する。
【0075】
データチャネル信号分離部106により分離されたユーザ#Kに関する受信信号は、不図示のサブキャリアデマッピング部にてデマッピングされて時系列の信号に戻された後、データ復調部109で復調される。そして、図示しないチャネル復号部にてチャネル復号処理が施されることで受信データが得られる。
【0076】
制御チャネル復調部108は、データチャネル信号分離部106で分離された受信信号に含まれる制御チャネル信号(例えば、PDCCH)を復調する。この際、制御チャネル復調部108においては、チャネル推定部107から通知されたチャネル状態に基づいて、ユーザ#Kに対応する制御チャネル信号を復調する。制御チャネル復調部108により復調された各制御チャネル信号は、チャネル品質測定部110に出力される。
【0077】
チャネル品質測定部110は、制御チャネル復調部108から入力された制御チャネル信号に基づいてチャネル品質(CQI)を測定する。また、チャネル品質測定部110は、測定したCQIに基づいてPMI及びRIを選択する。このとき、PMIは、セル内のユーザ端末の分布状態に基づいて予め設定されたコードブックから選択される。そして、CQI、PMI及びRIをCSIフィードバック信号生成部111及びMIMO切替部112に通知する。
【0078】
CSIフィードバック信号生成部111においては、無線基地局装置200にフィードバックするCSIフィードバック信号(例えば、PUCCH)が生成される。この場合、CSIフィードバック信号には、チャネル品質測定部110から通知されたCQI、PMI及びRIが含まれる。CSIフィードバック信号生成部111で生成されたCSIフィードバック信号は、マルチプレクサ(MUX)113に出力される。
【0079】
MIMO切替部112は、チャネル品質測定部110から入力されたCQI、PMI及びRIに基づいて、送信データ#Kに用いるMIMO伝送方式を選択する。そして、選択したMIMO伝送方式に応じた送信データ#Kに対するチャネル符号化率及び変調方式を決定する。決定されたチャネル符号化率は、それぞれチャネル符号化部114に出力され、決定された変調方式は、それぞれデータ変調部115に出力される。
【0080】
一方、上位レイヤから送出されたユーザ#Kに関する送信データ#Kは、チャネル符号化部114によりチャネル符号化された後、データ変調部115にてデータ変調される。データ変調部115にてデータ変調された送信データ#Kは、不図示の直並列変換部で、時系列の信号から周波数領域の信号に変換されてサブキャリアマッピング部116に出力される。
【0081】
サブキャリアマッピング部116においては、送信データ#Kを、無線基地局装置200から指示されたスケジュール情報に応じてサブキャリアにマッピングする。このとき、サブキャリアマッピング部116は、不図示の参照信号生成部により生成された参照信号#Kを、送信データ#Kと共にサブキャリアにマッピング(多重)する。このようにしてサブキャリアにマッピングされた送信データ#Kがプリコーディング乗算部117に出力される。
【0082】
プリコーディング乗算部117は、受信アンテナRX#1〜RX#N毎に送信データ#Kを位相及び/又は振幅シフトする。このとき、プリコーディング乗算部117は、制御チャネル復調部108で復調された制御チャネル信号で指定されるPMIに対応するプリコーディングベクトルに応じて位相及び/又は振幅シフトする。プリコーディング乗算部117により位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#Kは、マルチプレクサ(MUX)113に出力される。
【0083】
マルチプレクサ(MUX)113においては、位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#Kと、CSIフィードバック信号生成部111により生成された制御信号とを合成し、受信アンテナRX#1〜RX#N毎の送信信号を生成する。マルチプレクサ(MUX)113により生成された送信信号は、逆高速フーリエ変換部(IFFT部)118#1〜118#Nにて逆高速フーリエ変換して周波数領域の信号から時間領域の信号に変換された後、CP付加部119#1〜119#NでCPが付加されてRF送信回路120#1〜120#Nへ出力される。そして、RF送信回路120#1〜120#Nで無線周波数帯に変換する周波数変換処理が施された後、デュプレクサ(Duplexer)101#1〜101#Nを介して受信アンテナRX#1〜RX#Nに出力され、受信アンテナRX#1〜RX#Nから上りリンクで無線基地局装置200に送出される。
【0084】
このようなセルを形成する無線基地局装置と、この無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線通信方法においては、無線基地局装置で、上りリンク信号を用いて、前記セル内のユーザ端末の分布状態に基づいて予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択し、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算する。そして、プリコーディングベクトルが乗算された信号がユーザ端末に送信される。
【0085】
ユーザ端末においては、無線基地局装置からのビームを受信し、受信したビームから参照信号を取り出してチャネル品質を測定し、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする。
【0086】
このように、サービスエリア内でのユーザ端末の偏りを考慮したコードブックを設定し、ユーザ端末からフィードバックされた通信品質情報、あるいは、無線基地局装置において上りリンク信号から求められた通信品質情報に基づいてコードブック内のプリコーディングベクトルを選択するので、システムの容量が増加する。
【0087】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。例えば、上述の実施形態において、ユーザ数や装置における処理部数については、これに限定されず、装置構成に応じて適宜変更することが可能である。また、本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0088】
1 無線通信システム
10 アレーアンテナ
10a 垂直偏波アンテナ
10b 水平偏波アンテナ
11 アンテナ素子
11V 垂直偏波素子
11H 水平偏波素子
100 移動局
TRX#1〜TRX#N 送受信アンテナ
101#1〜101#N デュプレクサ
102#1〜102#N RF受信回路
108 制御チャネル復調部
109 データ復調部
110 チャネル品質測定部
111 CSIフィードバック信号生成部
112 MIMO切替部
114 チャネル符号化部
115 データ変調部
116 サブキャリアマッピング部
117 プリコーディング乗算部
200 無線基地局装置
201#1〜201#K チャネル符号化部
202#1〜202#K データ変調部
203 サブキャリアマッピング部
204#1〜204#K プリコーディング乗算部
215#1〜215#K チャネル推定部
216#1〜216#K 制御チャネル復調部
217#1〜217#K データ復調部
218#1〜218#K CQI情報更新部
219 プリコーディングベクトル生成部
220 リソース割当制御部
222 コードブック選択部
300 上位局装置
400 コアネットワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、次世代の無線通信システム、無線基地局装置、ユーザ端末及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)ネットワークにおいては、周波数利用効率の向上、データレートの向上を目的として、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)やHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)を採用することにより、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)をベースとしたシステムの特徴を最大限に引き出すことが行われている。このUMTSネットワークについては、更なる高速データレート、低遅延などを目的としてロングタームエボリューション(LTE:Long Term Evolution)が検討されている。
【0003】
第3世代のシステムは、概して5MHzの固定帯域を用いて、下り回線で最大2Mbps程度の伝送レートを実現できる。一方、LTE方式のシステムにおいては、1.4MHz〜20MHzの可変帯域を用いて、下り回線で最大300Mbps及び上り回線で75Mbps程度の伝送レートを実現できる。また、UMTSネットワークにおいては、更なる広帯域化及び高速化を目的として、LTEの後継のシステムも検討されている(例えば、LTEアドバンスト(LTE−A))。例えば、LTE−Aにおいては、LTE仕様の最大システム帯域である20MHzを、100MHz程度まで拡張することが予定されている。また、LTE−Aにおいては、LTE仕様の最大送信アンテナ数である4アンテナを、8アンテナまで拡張することが予定されている。
【0004】
また、LTE方式のシステムにおいては、複数のアンテナでデータを送受信し、データレート(周波数利用効率)を向上させる無線通信技術としてMIMO(Multi Input Multi Output)システムが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。MIMOシステムにおいては、送受信機に複数の送信/受信アンテナを用意し、異なる送信アンテナから同時に異なる送信情報系列を送信する。一方、受信機側では、送信/受信アンテナ間で異なるフェージング変動が生じることを利用して、同時に送信された情報系列を分離して検出することにより、データレート(周波数利用効率)を増大することが可能である。
【0005】
LTE方式のシステムにおいては、異なる送信アンテナから同時に送信する送信情報系列が、全て同一のユーザのものであるシングルユーザMIMO(SU−MIMO(Single User MIMO))伝送と、異なるユーザのものであるマルチユーザMIMO(MU−MIMO(Multiple User MIMO))伝送とが規定されている。これらのSU−MIMO伝送及びMU−MIMO伝送においては、受信機側で送信機のアンテナに設定すべき位相・振幅制御量(プリコーディング行列(プリコーディングウェイトあるいはプリコーディングベクトル))と、このプリコーディング行列に対応づけられるPMI(Precoding Matrix Indicator)とを複数定めたコードブックから最適なPMIを選択し、これをチャネル情報(CSI:Channel State Information)として送信機にフィードバックする。送信機側では、受信機からフィードバックされたPMIに基づいて各送信アンテナに対するプリコーディングを行って送信情報系列を送信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TR 25.913“Requirements for Evolved UTRA and Evolved UTRAN”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LTEの後継システムとして検討されているLTE−A方式のシステムにおいては、8アンテナを用いたMIMO伝送が検討されている。一方で、LTE方式のシステムで採用されるMIMO伝送(例えば、2アンテナを用いたSU−MIMO伝送や4アンテナを用いたMU−MIMO伝送等)にも対応することが要請される。このため、次世代無線通信システムのMIMO伝送では、利用されるアンテナ数が異なる複数の通信タイプに対応することが必要となる。一方、LTE−A方式に代表される次世代無線通信システムにおいては、8アンテナの設置が検討されている。送受信機の小型化の観点から、これらのアンテナの設置スペースを低減することも要請される。
【0008】
一方で、複数のアンテナを水平方向に並設した構成のアンテナ装置を用いた場合においては、ユーザが密集したセルに対してMIMO伝送すると、ユーザ端末の密集の程度(分布状態)によってはシステム容量を増加できないことが考えられる。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、アンテナの設置スペースを低減しつつ、セル内におけるユーザ端末の分布状態に拘わらずシステム容量を増加することができる無線通信システム、無線基地局装置、ユーザ端末及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無線通信システムは、セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムであって、前記無線基地局装置は、一方向に配列された複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、前記セル内のユーザ端末からフィードバックされた通信品質情報に基づいて、前記アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する選択部と、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算するプリコーディング乗算部と、前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する送信部と、を具備し、前記ユーザ端末は、前記無線基地局装置からの信号を受信する受信部と、受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定するチャネル品質測定部と、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする送信部と、を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の無線基地局装置は、セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線基地局装置であって、一方向に配列された複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、前記アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する選択部と、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算するプリコーディング乗算部と、前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する送信部と、を具備することを特徴とする。
【0012】
本発明のユーザ端末は、セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおけるユーザ端末であって、前記無線基地局装置において前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックを用いて前記無線基地局装置から送信された信号を受信する受信部と、受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定するチャネル品質測定部と、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする送信部と、を具備することを特徴とする。
【0013】
本発明の無線通信方法は、セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記無線基地局装置において、前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する工程と、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算する工程と、前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する工程と、前記ユーザ端末において、前記無線基地局装置からの信号を受信する工程と、受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定する工程と、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンテナの設置スペースを低減しつつ、セル内におけるユーザ端末の分布状態に拘わらずシステム容量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る無線基地局装置が備えるアレーアンテナによって提供されるN個の通信タイプを説明するための模式図である。
【図2】アレーアンテナを構成するアンテナ素子に対するウェイト制御を説明するための模式図である。
【図3】第1の通信タイプのためのウェイト制御を説明するための模式図である。
【図4】第2の通信タイプのためのウェイト制御を説明するための模式図である。
【図5】第3の通信タイプのためのウェイト制御を説明するための模式図である。
【図6】実施の形態に係る無線通信システムにおけるウェイト制御を説明するための模式図である。
【図7】実施の形態に係る無線通信システムにおける複数のプリコーディングベクトルを説明するための図である。
【図8】ユーザ端末の分布状態を説明するための図である。
【図9】実施の形態に係る無線通信システムのネットワーク構成を示す図である。
【図10】実施の形態に係る無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態に係る移動局の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般に、MIMO伝送で用いられる複数のアンテナは、無線基地局装置における同一の高さの位置に設置されている。そして、MIMO伝送では、各セルに位置するユーザ端末のデータレートが最も向上するようにプリコーディングウェイト(以下、「ウェイト」という)を選択し、主に水平方向に指向性を設定可能な送信ビームを形成する。複数のアンテナが同一の高さの位置に設置されることから、例えば、LTE−A方式のシステムにおいては、最大で8本分のアンテナの設置スペースが必要となる。一方、複数のアンテナの設置スペースの低減という観点からは、主に垂直方向に指向性を設定可能な送信ビームを採用することが考えられる。この場合には、複数のアンテナを無線基地局装置における同一の高さの位置に設置する必要がなくなる。このため、複数のアンテナを上下に配置でき、アンテナの設置スペースを低減できる。
【0017】
以下、本発明の一実施の形態に係る無線通信システムの構成について説明する。
本実施の形態に係る無線通信システムは、垂直方向に指向性を設定可能な送信ビームを形成できる無線基地局装置(以下、「無線基地局装置」という)を備える。この無線基地局装置は、Nを2以上の整数として、N個の通信タイプのそれぞれに対応して少なくとも1つのグループに分けられる複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナを備える。以下、この無線基地局装置が備えるアレーアンテナによって提供されるN個の通信タイプについて図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る無線基地局装置が備えるアレーアンテナによって提供されるN個の通信タイプを説明するための模式図である。
【0018】
図1Aに示すように、アレーアンテナ10は、一方向、例えば、垂直方向に1列に配列された複数のアンテナ素子11から構成されている(図1Aには16個のアンテナ素子11が例示されている)。本実施の形態では、アレーアンテナ10は、垂直偏波アンテナ10aと水平偏波アンテナ10bとを組み合わせた偏波アンテナで構成される。ただし、本発明は偏波アンテナ構成に限定されない。図1Bは、垂直偏波アンテナ10aを単独で示した概念図であり、図1Cは、水平偏波アンテナ10bを単独で示した概念図である。偏波アンテナが適用される場合、個々のアンテナ素子11は、それぞれ垂直偏波素子11Vと水平偏波素子11Hのセットで構成される。以下の説明では、無線基地局のアレーアンテナ10が、垂直に立設されている場合について説明するが、環境によってはアレーアンテナ10が斜め(横向きを含む)に配置されてもよい。
【0019】
第1の通信タイプは、アレーアンテナ10を構成するアンテナ素子11の全体で1つのグループAを形成し、アンテナ全体で1つのアンテナブランチを構成するタイプである。第2の通信タイプは、アレーアンテナ10を構成するアンテナ素子11を上下に2分割し、アンテナ素子11を2つのグループB1,B2に分けて2つのアンテナブランチを構成するタイプである。第3の通信タイプは、アレーアンテナ10を構成するアンテナ素子11を上下に4分割し、アンテナ素子11を4つのグループC1,C2,C3,C4に分けて4つのアンテナブランチを構成するタイプである。本実施の形態では、第1から第3の通信タイプ(アンテナブランチ数と呼ぶこともできる)を例示するが、アレーアンテナ10を構成するアンテナ素子11の垂直方向の分割数に応じて適宜任意の数の通信タイプを設定可能である。また、最大ブランチ数はアンテナ素子11に応じて適宜選択可能である。
【0020】
第1から第3の通信タイプの中では、第1の通信タイプが1ブランチを構成するアンテナ長(アンテナ素子数)が最も長い。アンテナブランチ数が増えるのに従って1ブランチ当たりのアンテナ長が短くなる。一般的に、アレーアンテナを用いてビーム形成する場合、1ブランチ当たりのアンテナ素子数が多くなるのに従って、アンテナ利得が増大し、かつビーム幅を小さくできる。したがって、第1の通信タイプは、アンテナ全体を1アンテナブランチで構成するので、セル端に向けたシャープなビームを形成できる。
【0021】
アレーアンテナ10にはグループ毎にウェイトが掛けられた送信信号がアンテナ素子11に入力される。ウェイトを制御することによってアレーアンテナ10で任意のアンテナブランチを構成できる。図2に示すように、アレーアンテナ10を構成する16個のアンテナ素子11は、最小アンテナブランチ単位(アンテナ素子数=4)で、同一のウェイトが掛けられた送信信号が供給される。図2には2つの送信信号S1,S2を合成可能な構成が示されているが、最大合成数はこれに限定されない。例えば、8多重MIMOを提供する場合は、4つの送信信号S1,S2,S3,S4を合成可能な構成が望ましい(図5参照)。アレーアンテナ10は、送信信号数×構成ブランチ数に相当する数のビームを同時に形成できる。
【0022】
第1の通信タイプでは、図3に示すように、アレーアンテナ10は、1つのグループAを構成する各アンテナ素子11に入力する送信信号S1に同一のウェイトW(例えば、W11、W12、W13、W14=1,1,1,1)を掛ける。これにより、高いアンテナ利得で、かつビーム幅の小さい1つのビームを形成することができる。なお、図3においては、説明の便宜上、水平偏波アンテナ10bに入力される送信信号S1を省略している。垂直偏波アンテナ10aと水平偏波アンテナ10bとでそれぞれ1つのビームを形成するので、アレーアンテナ10としては2つのビームが形成される。したがって、第1の通信タイプは、2多重MIMO伝送を提供できる。受信機が2×2のMIMO伝送をサポートしていれば、2×2のMIMO伝送が実現できる。また、1アンテナ構成の受信機であれば、2アンテナによるSFBC(Space-Frequency Block Coding)による空間周波数送信ダイバーシチを実現できる。なお、SFBCは、アンテナ/周波数領域で符号化が行われる。
【0023】
第2の通信タイプでは、図4に示すように、アレーアンテナ10は、グループB1を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S1にウェイトW(例えば、W11、W12、W13、W14=1,1,0,0)を掛け、かつ、グループB2を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S2にウェイトW(例えば、W21、W22、W23、W24=0,0,1,1)を掛ける。これにより、グループB1及びB2に対応した2つのアンテナブランチによりビーム1、ビーム2を形成できる。なお、図4においては、説明の便宜上、水平偏波アンテナ10bに入力される送信信号S1、S2を省略している。垂直偏波アンテナ10aがビーム1、ビーム2を形成し、同時に水平偏波アンテナ10bがビーム1、ビーム2を形成するので、アレーアンテナ10は合計で4つのビームを並列に形成することができる。並列に形成される4つのビームをセル内の同一エリアに向けることにより、4多重MIMO伝送が提供される。
【0024】
第3の通信タイプでは、図5に示すように、アレーアンテナ10は、グループC1を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S1にウェイトW(例えば、W11、W12、W13、W14=1,0,0,0)を掛け、かつ、グループC2を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S2にウェイトW(例えば、W21、W22、W23、W24=0,1,0,0)を掛ける。さらに、アレーアンテナ10は、グループC3を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S3にウェイトW(例えば、W31、W32、W33、W34=0,0,1,0)を掛け、かつ、グループC4を構成するアンテナ素子11に入力する送信信号S4にウェイトW(例えば、W41、W42、W43、W44=0,0,0,1)を掛ける。これにより、グループC1〜C4に対応した4つのアンテナブランチによりビーム1〜ビーム4を形成できる。なお、図5においては、説明の便宜上、水平偏波アンテナ10bに入力される送信信号S1〜S4を省略している。垂直偏波アンテナ10aが4ビームを形成し、同時に水平偏波アンテナ10bが4ビームを形成するので、アレーアンテナ10は合計で8つのビームを並列に形成することができる。並列に形成される8つのビームをセル内の同一エリアに向けることにより、8多重MIMO伝送が提供される。
【0025】
本実施の形態に係る無線通信システムにおいては、アンテナ素子11に入力される送信信号に対するウェイトを制御することにより、アレーアンテナ10を1又は複数のグループに分割できる。これにより、所望の通信タイプを切り替えてユーザ端末UEに対して信号送信を行うことが可能となる。
【0026】
次に、本実施の形態に係る無線通信システムにおけるシグナリングについて説明する。LTE方式及びLTE−A方式のシステムは、下り参照信号として、CRS(Cell-specific Reference Signal)、CSI−RS(Channel State Information-Reference Signal)、ユーザ固有のDM−RS(Demodulation-Reference Signal)等を規定している。CRSは、全ての下りリンクサブフレームで送信され、下りリンクの周波数帯域全体にまたがって配置される。CRSは、下りリンクの同期検波用のチャネル推定に用いられる。CSI−RSは、チャネル情報測定用の参照信号であり、CSI(CQI,PMI,ランク数)の測定に用いられる。ユーザ固有のDM−RSは、個別のユーザ端末UEへの下り共用チャネル(DL−SCH)伝送に割り当てられるリソースブロックで送信される。ユーザ固有のDM−RSは、下り共用チャネルの同期検波用チャネル推定に用いることができるユーザ固有の復調用の参照信号である。
【0027】
また、LTE方式及びLTE−A方式のシステムは、ユーザ端末UEが接続すべきセルを検出するセルサーチに使用する同期信号(SS)、セルサーチ後に必要なシステム情報(SIB(System Information Block),MIB(Master Information Block))を送信する物理報知チャネル(PBCH)を規定している。さらに、LTE方式及びLTE−A方式のシステムは、下り制御信号の送信用にPDCCH(Physical Downlink Control Channel)を規定し、上り制御信号の送信用にPUCCH(Physical Uplink Control Channel)を規定している。さらに、LTE方式及びLTE−A方式のシステムは、下りのデータ(一部の制御信号を含む)送信用にPDSCH(Physical Uplink Control Channel)を規定し、上りのデータ(一部の制御信号を含む)送信用にPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)を規定している。
【0028】
本実施の形態に係る無線通信システムを構成する無線基地局装置は、これらのようなユーザ端末UEに対して送信する信号の種別、並びに、ユーザ端末UEの機能に応じて通信タイプを切り替える。通信タイプを切り替える際に判定されるユーザ端末UEの機能については、例えば、ユーザ端末UEが、Release8(Rel.8)、Release9(Rel.9)、Release10(Rel.10)又はRelease11(Rel.11)のLTE対応の端末か否かなどが該当する。
【0029】
例えば、無線基地局装置は、第1の通信タイプにより、Rel.8、Rel.9、Rel.10又はRel.11のLTEに対応するユーザ端末向けのCRS及びPDCCH、並びに、MIB/SIB/ページング情報を送信する。セル接続を希望するユーザ端末UEは、必ず同期信号(SS)及び物理報知チャネル(PBCH)を受信する必要が有るので、同期信号(SS)及び物理報知チャネル(PBCH)はエリア内の全てをカバレッジとすることが求められる。このため、無線基地局装置は、これらの信号を通信タイプ1に対応したビームにより送信する。また、無線基地局装置は、第1の通信タイプにより、Rel.8のLTEに対応し、2×2のMIMO伝送をサポートするユーザ端末向けのPDSCHを送信する。
【0030】
また、無線基地局装置は、第2の通信タイプにより、Rel.10のLTEに対応し、トランスミッションモード9をサポートするユーザ端末向けの4つのアンテナポートに対応するCSI−RSを送信する。また、無線基地局装置は、第2の通信タイプにより、Rel.10のLTEに対応し、トランスミッションモード9をサポートするユーザ端末向けのPDSCH及びDM−RSを送信する。
【0031】
さらに、無線基地局装置は、第3の通信タイプにより、例えば、Rel.10のLTEに対応し、8×8のMIMO伝送をサポートするユーザ端末向けの8つのアンテナポートに対応するCSI−RSを送信する。また、無線基地局装置は、第3の通信タイプにより、Rel.10のLTEに対応し、トランスミッションモード9をサポートするユーザ端末向けのPDSCH及びDM−RSを送信する。
【0032】
同一の素子指向性を持つアレーを用いた既存のシステム(水平方向に指向性を設定可能な複数の送信ビームを形成できる無線基地局装置)では、コードブックは空間内を複数(例えば、M個)に均一に分割するようなプリコーディングベクトル(プリコーディングウェイト)で構成されることが一般的である(3GPP TS36.211 ver10.1.0 6.3.4.2.3)。コードブックCODEVOOKV[0,1,...,M-1]から、それぞれのプリコーディングベクトルを選んでプリコーディングを行う処理は、M通りの指向性ビームを用いてユーザ端末と通信することと関連付けて考えることができる。このとき、ユーザ端末は、それぞれに最適なプリコーディングベクトルを選択する。この場合においては、異なるプリコーディングベクトルを用いて通信するユーザ端末同士は、指向性ビーム(送信ビーム)が異なることから信号の干渉を受けにくい。つまり、異なるプリコーディングベクトルを用いて通信するユーザ端末が多いほど、異なるユーザ端末間で空間的にデータを多重できるためシステムの容量が増加する。
【0033】
しかしながら、垂直方向のアレーアンテナ構成を用いた場合(垂直セクタ化が可能な複数の送信ビームを形成できる無線基地局装置を用いた場合)には、ユーザ端末がサービスされるエリア(セル)内に偏りをもって存在するために、同一のプリコーディングベクトルを選択する確率が高くなり、上記空間内を複数(例えば、M個)に均一に分割するようなコードブックは最適にはならない。本発明者らは、この問題を解決するために新たなコードブックを提案する。この提案は、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に設定されたプリコーディングベクトルを含むコードブックを用いることでシステム容量を増加するものである。これによれば、ユーザ端末の密度が大きいところのプリコーディングベクトルの密度を増やすことができ、空間的にデータを多重できる効率が高くなる。ここで、プリコーディングベクトルを、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に設定するとは、プリコーディングベクトルに対応する送信ビームのアンテナ素子の配列方向に対する角度を、一定角度間隔ではなくユーザ端末の分布の偏り等を考慮した角度間隔で選択したプリコーディングベクトルを用いることである。
【0034】
本発明においては、アレーアンテナを含む無線通信システムにおいて、位相・振幅制御量(プリコーディング行列)と、このプリコーディング行列に対応づけられるPMI(Precoding Matrix Indicator)とを複数定めたコードブックを設定する。このコードブックは、ユーザ端末の分布の偏りを考慮したものであり、セル内のユーザ端末の分布の状態により無線基地局装置毎に異なるように設定される。
【0035】
なお、セル内のユーザ端末の分布状態は、セル設計の際に予め仮定したり、予測して求める。そのように求められた分布状態に基づいてコードブックを決定する。すなわち、ユーザ端末の分布状態を予め予測して、一つの分布状態を決定し、その分布状態に対応するコードブックを決定する。
【0036】
この場合において、カバーエリア(セル)内のユーザ端末の分布の偏りを考慮した具体的なコードブックとしては以下のようなものが考えられる。このコードブックにおけるプリコーディングベクトルは、ユーザ端末の密度の逆数で均一になるように設定されている。
ρ(L)を無線基地局装置からの距離に応じたユーザ端末の分布関数とし、L[m]を無線基地局装置からの距離としたときに、
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(ρ(L・[0,1,...M-1])))
となる。
ここで、図6に示すように、hは無線基地局装置の高さであり、dはブランチ間隔であり、αは水平方向に対してユーザ端末UEに向けた送信ビームのチルト角であり、Nはブランチ数である。また、θは水平方向に対してセル端に向けた送信ビームのチルト角である。
【0037】
具体的なセル内のユーザ端末の分布状態としては、例えば、図7Aに示すように、ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて一様に分布している場合(均等)や、図7Bに示すように、ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて2乗倍で分布している場合(セル端密)が挙げられる。例えば、図7Bに示す分布状態である場合には、コードブックは、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に設定された複数のプリコーディングベクトルで構成される。
【0038】
このような場合におけるコードブック(プリコーディングベクトルグループ)は、以下のようになる。
(1)CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(Lmax/M)・[0,1,...M-1]))
(ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて一様に分布している場合:図7A)
(2)CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(Lmax/sqrt(2)^[M-1,...1,0]))
(ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて2乗倍で分布している場合:図7B)
【0039】
このような複数のプリコーディングベクトルは、図8に示すように、無線基地局装置からの距離に応じてそれぞれ適切なプリコーディングベクトルとして設定される。例えば、図8においては、無線基地局装置から最も近いユーザ端末UE#1に最適なプリコーディングベクトルPV#1が設定され、無線基地局装置から次に近いユーザ端末UE#2に最適なプリコーディングベクトルPV#2が設定される。そして、同様にして、無線基地局装置から次に近いユーザ端末UE#3〜UE#10に最適なプリコーディングベクトルPV#3〜PV#10がそれぞれ設定される。なお、プリコーディングベクトル数Mには特に制限はない。例えば、無線基地局装置のアンテナの指向性のビーム幅に応じて、隣接するプリコーディングベクトルに該当するエリアへヌルが向くようにプリコーディングベクトル数Mを決定しても良い。
【0040】
セル内のユーザ端末の分布状態は、上りリンク信号を用いて求めるようにしても良い。例えば、上りリンク信号を用いて分布状態を求める場合、例えば、各ユーザ端末の上りリンク信号(PUCCH(Physical Uplink Control Channel)あるいはPUSCH(Physical Uplink Shard Channel))の信号を用いて推定した無線基地局装置からの距離や、上り信号(PUCCHあるいはPUSCH)を用いて推定した無線基地局装置からユーザ端末に対する角度や、別途ユーザ端末においてGPS等により推定した位置情報を取得し、それを上り信号(PUCCHあるいはPUSCH)で取得した位置情報から割り出した無線基地局装置からの距離や、信号の遅延時間等の方法を用いて推定した無線基地局装置からの距離を用いて求める。
【0041】
このように設定されたコードブックを用いたプリコーディングベクトルの選択について説明する。上述したように、これらのコードブックは無線基地局装置及びユーザ端末で有している。また、このコードブックは、ユーザ端末の分布の偏りを考慮したコードブックであり、ρ(L)を無線基地局装置からの距離に応じたユーザ端末の分布関数とし、L[m]を無線基地局装置からの距離としたときに、
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(ρ(L・[0,1,...M-1])))
で示されるM個のプリコーディングベクトルより構成される。
【0042】
まず、ユーザ端末は、無線基地局装置より送られてくる参照信号CRS(Cell-specific Reference Signal)、CSI−RS(Channel State Information-Reference Signal))に基づいてSIR(Signal to Interference Ratio)及びチャネル行列の推定値H’を算出する。CQI(Channel Quality Indicator)及びRI(Rank Indicator)は、H’やSIR、RSRQ等の通信品質情報に基づいて、ブロックエラーレートが所定の誤り率を超えないように選択される。PMI(Precoding Matrix Indicator)は、位相・振幅制御量(プリコーディング行列)と、このプリコーディング行列に対応づけられるPMIとを複数定めたM個のプリコーディングベクトル(上記複数のプリコーディングベクトル)からH’に最も近いものが選択される。ユーザ端末は、これらの通信品質情報CSI(CQI、PMI、RI)を無線基地局装置へ通知する。
【0043】
次いで、無線基地局装置は、ユーザ端末より通知された通信品質情報CSIに基づいて、そのユーザ端末のデータ信号(PDSCH(Physical Downlink Shard Channel))を送信するためのリソース割り当て、及びMIMO伝送のレイヤ数やプリコーディングの設定、符号化レートなどを随時更新し、その情報とともにデータ信号(PDSCH)に参照信号(DM−RS(Demodulation-Reference Signal))を付与して送信する。したがって、無線基地局装置においては、ユーザ端末からフィードバックされたCSI情報からPMIを抽出し、このPMIに基づいて、セル内のユーザ端末の分布状態に基づいて予め設定されたコードブックから最適なプリコーディングベクトルを選択する。
【0044】
あるいは、無線基地局装置において、ユーザ端末からのシグナリングがない状態で、上りリンク信号のRSRP(Reference Signal Received Power)、RSRQ(Reference Signal Received Quality)、SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)といった通信品質情報を用いて、セル内のユーザ端末の分布状態に基づいて予め設定されたコードブックから最適なプリコーディングベクトルを選択しても良い。
【0045】
次いで、無線基地局装置は、ユーザ端末のデータ信号(PDSCH)を送信するためのリソース割り当て、MIMO伝送のレイヤ数やプリコーディングの設定、符号化レート等を随時更新し、アンテナ装置へ反映する。そして、無線基地局装置は、これらの情報とともに、選択されたプリコーディングベクトルを用いてデータ信号(PDSCH)に参照信号(DM−RS)を付与して送信する。
【0046】
このように、サービスエリア内でのユーザ端末の偏りを考慮したコードブックを設定し、ユーザ端末の通信品質情報に基づいてプリコーディングベクトルを選択するので、システムの容量が増加する。
【0047】
無線基地局装置においてMIMO送信する場合には、プリコーディングベクトルが生成される。このプリコーディングベクトルは、リソースエレメント(RE)毎に乗算する。したがって、システム情報(SS(Synchronized Signal)、PBCH(Primary Broadcast Channel))や参照信号(CRS、CSI−RS)を送信するときのプリコーディングベクトルと、制御信号(PDCCH、PCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)、PHICH(Physical Hybrid-ARQ Indicator Channel))を送信するときのプリコーディングベクトルとを変えることにより、それぞれの信号の送信エリアを変えることが可能である。
【0048】
例えば、CRS、CSI−RS、PDCCHは、exp(2πd・j・cos(θ+π/2)・[0,1,2,,…,N-1])のコードブックのプリコーディングベクトルを用い、DM−RS、PDSCHは、CSI−RSを用いてユーザ端末側でPMIを選択し、通知されたそのPMIで選択されたコードブックのプリコーディングベクトルを用いることができる。
【0049】
上記説明においては、垂直方向のコードブックCODEBOOKVのみを用いる場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、ユーザ端末の分布状態を考慮して、従来の水平方向のコードブックCODEBOOKHと垂直方向のコードブックCODEBOOKVとを組み合わせて新たなコードブックCODEBOOK3Dを用いても良い。
CODEBOOK3D[0,1,...M×P-1]
=CODEBOOKV[0,1,...M-1]×CODEBOOKH[0,1,...P-1]
【0050】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、LTE−Aシステムに対応する無線基地局装置及び移動局装置を用いる場合について説明する。
【0051】
図9を参照しながら、本発明の一実施の形態に係るユーザ端末としての移動局装置(以下、「移動局」という)100及び無線基地局装置(eNodeB)200を有する無線通信システム1について説明する。図9は、本発明の一実施の形態に係るユーザ100及び無線基地局装置200を有する無線通信システム1の構成を説明するための図である。なお、図9に示す無線通信システム1は、例えば、LTEシステム又はSUPER 3Gが包含されるシステムである。また、この移動通信システム1は、IMT−Advancedと呼ばれても良いし、4Gと呼ばれても良い。
【0052】
図9に示すように、無線通信システム1は、無線基地局装置200と、この無線基地局装置200と通信する複数の移動局100(1001、1002、1003、・・・100n、nはn>0の整数)とを含んで構成されている。無線基地局装置200は、上位局装置300と接続され、この上位局装置300は、コアネットワーク400と接続される。ユーザ端末100は、セル500において無線基地局装置200と通信を行っている。なお、上位局装置300には、例えば、アクセスゲートウェイ装置、無線ネットワークコントローラ(RNC)、モビリティマネジメントエンティティ(MME)等が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0053】
各移動局(1001、1002、1003、・・・100n)は、同一の構成、機能、状態を有するので、以下においては、特段の断りがない限り移動局100として説明を進める。また、説明の便宜上、無線基地局装置200と無線通信するのは移動局装置100であるものとして説明するが、より一般的には移動端末装置も固定端末装置も含むユーザ装置(UE:User Equipment)でよい。
【0054】
無線通信システム1においては、無線アクセス方式として、下りリンクについてはOFDMA(直交周波数分割多元接続)が、上りリンクについてはSC−FDMA(シングルキャリア−周波数分割多元接続)が適用される。OFDMAは、周波数帯域を複数の狭い周波数帯域(サブキャリア)に分割し、各サブキャリアにデータをマッピングして通信を行うマルチキャリア伝送方式である。SC−FDMAは、システム帯域を端末毎に1つ又は連続したリソースブロックからなる帯域に分割し、複数の端末が互いに異なる帯域を用いることで、端末間の干渉を低減するシングルキャリア伝送方式である。
【0055】
ここで、LTEシステムにおける通信チャネルについて説明する。下りリンクについては、各移動局10で共有されるPDSCHと、下りL1/L2制御チャネル(PDCCH、PCFICH、PHICH)とが用いられる。このPDSCHにより、ユーザデータ、すなわち、通常のデータ信号が伝送される。送信データは、このユーザデータに含まれる。なお、無線基地局装置200で移動局100に割り当てたコンポーネントキャリア(CC)」やスケジューリング情報は、L1/L2制御チャネルにより移動局100に通知される。
【0056】
上りリンクについては、各移動局100で共有して使用されるPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)と、上りリンクの制御チャネルであるPUCCH(Physical Uplink Control Channel)とが用いられる。このPUSCHにより、ユーザデータが伝送される。また、PUCCHにより、下りリンクの無線品質情報(CQI:Channel Quality Indicator)等が伝送される。
【0057】
図10は、本実施の形態に係る無線基地局装置200の構成を示すブロック図である。図11は、本実施の形態に係る移動局100の構成を示すブロック図である。なお、図10及び図11に示す無線基地局装置200及び移動局100の構成は、本発明を説明するために簡略化したものであり、それぞれ通常の無線基地局装置及び移動局が有する構成は備えているものとする。
【0058】
図10に示す無線基地局装置200において、不図示のスケジューラは、後述するチャネル推定部215#1〜215#Kから与えられるチャネル推定値に基づいて多重するユーザ数(多重ユーザ数)を決定する。そして、各ユーザに対する上下リンクのリソース割り当て内容(スケジューリング情報)を決定し、ユーザ#1〜#Kに対する送信データ#1〜#Kを対応するチャネル符号化部201#1〜201#Kに送出する。
【0059】
送信データ#1〜#Kは、チャネル符号化部202#1〜202#Kでチャネル符号化された後、データ変調部202#1〜202#Kに出力され、データ変調される。この際、チャネル符号化及びデータ変調は、後述するMIMO切替部221#1〜221#Kから与えられるチャネル符号化率及び変調方式に基づいて行われる。データ変調部202#1〜202#Kでデータ変調された送信データ#1〜#Kは、不図示の離散フーリエ変換部で逆フーリエ変換され、時系列の信号から周波数領域の信号に変換されてサブキャリアマッピング部203に出力される。
【0060】
サブキャリアマッピング部203においては、送信データ#1〜#Kを、後述するリソース割当制御部220から与えられるリソース割当情報に応じてサブキャリアにマッピングする。このとき、サブキャリアマッピング部203は、不図示の参照信号生成部から入力される参照信号#1〜#K、報知情報生成部及びシステム情報生成部から入力される報知情報及びシステム情報を、送信データ#1〜#Kと共にサブキャリアにマッピング(多重)する。このようにしてサブキャリアにマッピングされた送信データ#1〜#Kがプリコーディング乗算部204#1〜204#Kに出力される。
【0061】
プリコーディング乗算部204#1〜204#Kは、後述するプリコーディングベクトル生成部219から与えられるプリコーディングベクトルに基づいて、送信アンテナTX#1〜TX#N毎に送信データ#1〜#Kを位相及び/又は振幅シフトする(プリコーディングによる送信アンテナTX#1〜送信アンテナTX#Nの重み付け)。プリコーディング乗算部204#1〜204#Kにより位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#1〜#Kは、マルチプレクサ(MUX)205に出力される。なお、このプリコーディングベクトルは、セル内のユーザ端末の分布状態を考慮して予め設定されたコードブックから選択されたものである。
【0062】
マルチプレクサ(MUX)205においては、位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#1〜#Kを合成し、送信アンテナTX#1〜TX#N毎の送信信号を生成する。マルチプレクサ(MUX)205により生成された送信信号は、逆高速フーリエ変換部(IFFT部)206#1〜206#Nにて逆高速フーリエ変換して周波数領域の信号から時間領域の信号に変換される。そして、サイクリックプレフィクス(CP)付加部207#1〜207#NにてCPが付加された後、RF送信回路208#1〜208#Nへ出力される。そして、RF送信回路208#1〜208#Nで無線周波数帯に変換する周波数変換処理が施された後、デュプレクサ(Duplexer)209#1〜209#Nを介して送信アンテナTX#1〜TX#Nに出力され、送信アンテナTX#1〜TX#Nから下りリンクで移動局100に送出される。
【0063】
一方、移動局100から上りリンクで送出された送信信号は、送信アンテナTX#1〜TX#Nにより受信され、デュプレクサ(Duplexer)209#1〜209#Nにて送信経路と受信経路とに電気的に分離された後、RF受信回路210#1〜210#Nに出力される。そして、RF受信回路210#1〜210#Nにて、無線周波数信号からベースバンド信号に変換する周波数変換処理が施される。周波数変換処理が施されたベースバンド信号は、CP除去部211#1〜211#NにてCPが除去された後、高速フーリエ変換部(FFT部)212#1〜212#Nに出力される。受信タイミング推定部213は、受信信号に含まれるリファレンス信号から受信タイミングを推定し、その推定結果をCP除去部211#1〜211#Nに通知する。FFT部212#1〜212#Nは、入力された受信信号にフーリエ変換を施し、時系列の信号から周波数領域の信号に変換する。これらの周波数領域の信号に変換された受信信号は、データチャネル信号分離部214#1〜214#Kに出力される。
【0064】
データチャネル信号分離部214#1〜214#Kは、FFT部212#1〜212#Kから入力された受信信号を、例えば、平均2乗誤差最小(MMSE:Minimum Mean Squared Error)や最尤推定検出(MLD:Maximum Likelihood Detection)信号分離法により分離する。これにより、移動局100から到来した受信信号は、ユーザ#1〜ユーザ#Kに関する受信信号に分離される。チャネル推定部215#1〜215#Kは、データチャネル信号分離部214#1〜214#Kで分離された受信信号に含まれるリファレンス信号からチャネル状態を推定し、推定したチャネル状態を制御チャネル復調部216#1〜216#Kに通知する。
【0065】
データチャネル信号分離部214#1〜214#Kにより分離されたユーザ#1〜ユーザ#Kに関する受信信号は、不図示のサブキャリアデマッピング部にてデマッピングされて時系列の信号に戻された後、データ復調部217#1〜217#Kでデータ復調される。そして、図示しないチャネル復号部#1〜#Kにてチャネル復号処理が施されることで受信データが得られる。
【0066】
制御チャネル復調部216#1〜216#Kは、データチャネル信号分離部214#1〜214#Kで分離された受信信号に含まれる制御チャネル信号(例えば、PDCCH)を復調する。この際、制御チャネル復調部216#1〜216#Kにおいては、チャネル推定部215#1〜215#Kから通知されたチャネル状態に基づいて、それぞれユーザ#1〜ユーザ#Kに対応する制御チャネル信号を復調する。制御チャネル復調部216#1〜216#Kにより復調された各制御チャネル信号は、CQI情報更新部219#1〜219#Kに出力される。
【0067】
CQI情報更新部218#1〜218#Kは、制御チャネル復調部216#1〜216#Kから入力された各制御チャネル信号(例えば、PUCCH)に含まれるチャネル状態情報(CSI)を抽出し、常にCSIを最新の状態に更新する。例えば、CSIには、PMI、RI及びCQIが含まれる。CSI情報更新部218#1〜218#Kに更新されるCSIは、それぞれプリコーディングベクトル生成部219、リソース割当制御部220、MIMO切替部221#1〜221#K及びコードブック選択部222に出力される。
【0068】
コードブック選択部222は、CSI情報更新部218#1〜218#KからのCSI情報からPMIを抽出し、そのPMIに基づいてアンテナ素子の配列方向に対して非均一に設定されたコードブック中のM種類のプリコーディングベクトルの中からのうちの最適なプリコーディングベクトルを選択する。なお、予め設定されるアンテナ素子の配列方向に対して非均一に設定されたコードブックは、ρ(L)を無線基地局装置からの距離に応じたユーザ端末の分布関数とし、L[m]を無線基地局装置からの距離としたときに、以下の式により求められる(ユーザ端末の密度の逆数で均一になるように設定される)。
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(ρ(L・[0,1,...M-1])))
ここで、hは無線基地局装置の高さであり、dはブランチ間隔であり、αは水平方向に対してユーザ端末UEに向けた送信ビームのチルト角であり、Nはブランチ数である。
【0069】
また、無線基地局装置からの距離に応じたユーザ端末の分布関数ρ(L)は、例えば、各ユーザ端末の上りリンク信号(PUCCHあるいはPUSCH)の信号を用いて推定した無線基地局装置からの距離や、上り信号(PUCCHあるいはPUSCH)を用いて推定した無線基地局装置からユーザ端末に対する角度や、別途ユーザ端末においてGPS等により推定した位置情報を取得し、それを上り信号(PUCCHあるいはPUSCH)で取得した位置情報から割り出した無線基地局装置からの距離や、信号の遅延時間等の方法を用いて推定した無線基地局装置からの距離により求めることができる。
【0070】
プリコーディングベクトル生成部219は、CSI情報更新部218#1〜218#Kから入力されたCSIに基づいて、送信データ#1〜#Kに対する位相及び/又は振幅シフト量を示すプリコーディングベクトルを生成する。このプリコーディングベクトルは、コードブック選択部222で選択されたコードブックから生成される。生成された各プリコーディングベクトルは、プリコーディング乗算部204#1〜204#Kに出力され、送信データ#1〜送信データ#Kのプリコーディングに利用される。
【0071】
リソース割当制御部220は、CSI情報更新部218#1〜218#Kから入力されたCSIに基づいて、各ユーザに割り当てるリソース割当情報を決定する。リソース割当制御部220により決定されたリソース割当情報は、サブキャリアマッピング部203に出力され、送信データ#1〜送信データ#Kのマッピングに利用される。
【0072】
MIMO切替部221#1〜221#Kは、CSI情報更新部218#1〜218#Kから入力されたCSIに基づいて、送信データ#1〜送信データ#Kに用いるMIMO伝送方式を選択する。そして、選択したMIMO伝送方式に応じた送信データ#1〜送信データ#Kに対するチャネル符号化率及び変調方式を決定する。決定されたチャネル符号化率は、それぞれチャネル符号化部201#1〜201#Kに出力され、決定された変調方式は、それぞれデータ変調部202#1〜202#Kに出力される。
【0073】
一方、図11に示す移動局100において、無線基地局装置200から送出された送信信号は、受信アンテナRX#1〜RX#Nにより受信され、デュプレクサ(Duplexer)101#1〜101#Nにて送信経路と受信経路とに電気的に分離された後、RF受信回路102#1〜102#Nに出力される。そして、RF受信回路102#1〜102#Nにて、無線周波数信号からベースバンド信号に変換する周波数変換処理が施される。周波数変換処理が施されたベースバンド信号は、サイクリックプレフィクス(CP)除去部103#1〜103#NにてCPが除去された後、高速フーリエ変換部(FFT部)104#1〜104#Nに出力される。受信タイミング推定部105は、受信信号に含まれるリファレンス信号から受信タイミングを推定し、その推定結果をCP除去部103#1〜103#Nに通知する。FFT部104#1〜104#Nは、入力された受信信号にフーリエ変換を施し、時系列の信号から周波数領域の信号に変換する。周波数領域の信号に変換された受信信号は、データチャネル信号分離部106に出力される。
【0074】
データチャネル信号分離部106は、FFT部104#1〜104#Nから入力された受信信号を、例えば、平均2乗誤差最小(MMSE:Minimum Mean Squared Error)や最尤推定検出(MLD:Maximum Likelihood Detection)信号分離法により分離する。これにより、無線基地局装置200から到来した受信信号は、ユーザ#1〜ユーザ#Kに関する受信信号に分離され、移動局100のユーザ(ここでは、ユーザKとする)に関する受信信号が抽出される。チャネル推定部107は、データチャネル信号分離部106で分離された受信信号に含まれるリファレンス信号からチャネル状態を推定し、推定したチャネル状態を制御チャネル復調部108に通知する。
【0075】
データチャネル信号分離部106により分離されたユーザ#Kに関する受信信号は、不図示のサブキャリアデマッピング部にてデマッピングされて時系列の信号に戻された後、データ復調部109で復調される。そして、図示しないチャネル復号部にてチャネル復号処理が施されることで受信データが得られる。
【0076】
制御チャネル復調部108は、データチャネル信号分離部106で分離された受信信号に含まれる制御チャネル信号(例えば、PDCCH)を復調する。この際、制御チャネル復調部108においては、チャネル推定部107から通知されたチャネル状態に基づいて、ユーザ#Kに対応する制御チャネル信号を復調する。制御チャネル復調部108により復調された各制御チャネル信号は、チャネル品質測定部110に出力される。
【0077】
チャネル品質測定部110は、制御チャネル復調部108から入力された制御チャネル信号に基づいてチャネル品質(CQI)を測定する。また、チャネル品質測定部110は、測定したCQIに基づいてPMI及びRIを選択する。このとき、PMIは、セル内のユーザ端末の分布状態に基づいて予め設定されたコードブックから選択される。そして、CQI、PMI及びRIをCSIフィードバック信号生成部111及びMIMO切替部112に通知する。
【0078】
CSIフィードバック信号生成部111においては、無線基地局装置200にフィードバックするCSIフィードバック信号(例えば、PUCCH)が生成される。この場合、CSIフィードバック信号には、チャネル品質測定部110から通知されたCQI、PMI及びRIが含まれる。CSIフィードバック信号生成部111で生成されたCSIフィードバック信号は、マルチプレクサ(MUX)113に出力される。
【0079】
MIMO切替部112は、チャネル品質測定部110から入力されたCQI、PMI及びRIに基づいて、送信データ#Kに用いるMIMO伝送方式を選択する。そして、選択したMIMO伝送方式に応じた送信データ#Kに対するチャネル符号化率及び変調方式を決定する。決定されたチャネル符号化率は、それぞれチャネル符号化部114に出力され、決定された変調方式は、それぞれデータ変調部115に出力される。
【0080】
一方、上位レイヤから送出されたユーザ#Kに関する送信データ#Kは、チャネル符号化部114によりチャネル符号化された後、データ変調部115にてデータ変調される。データ変調部115にてデータ変調された送信データ#Kは、不図示の直並列変換部で、時系列の信号から周波数領域の信号に変換されてサブキャリアマッピング部116に出力される。
【0081】
サブキャリアマッピング部116においては、送信データ#Kを、無線基地局装置200から指示されたスケジュール情報に応じてサブキャリアにマッピングする。このとき、サブキャリアマッピング部116は、不図示の参照信号生成部により生成された参照信号#Kを、送信データ#Kと共にサブキャリアにマッピング(多重)する。このようにしてサブキャリアにマッピングされた送信データ#Kがプリコーディング乗算部117に出力される。
【0082】
プリコーディング乗算部117は、受信アンテナRX#1〜RX#N毎に送信データ#Kを位相及び/又は振幅シフトする。このとき、プリコーディング乗算部117は、制御チャネル復調部108で復調された制御チャネル信号で指定されるPMIに対応するプリコーディングベクトルに応じて位相及び/又は振幅シフトする。プリコーディング乗算部117により位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#Kは、マルチプレクサ(MUX)113に出力される。
【0083】
マルチプレクサ(MUX)113においては、位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#Kと、CSIフィードバック信号生成部111により生成された制御信号とを合成し、受信アンテナRX#1〜RX#N毎の送信信号を生成する。マルチプレクサ(MUX)113により生成された送信信号は、逆高速フーリエ変換部(IFFT部)118#1〜118#Nにて逆高速フーリエ変換して周波数領域の信号から時間領域の信号に変換された後、CP付加部119#1〜119#NでCPが付加されてRF送信回路120#1〜120#Nへ出力される。そして、RF送信回路120#1〜120#Nで無線周波数帯に変換する周波数変換処理が施された後、デュプレクサ(Duplexer)101#1〜101#Nを介して受信アンテナRX#1〜RX#Nに出力され、受信アンテナRX#1〜RX#Nから上りリンクで無線基地局装置200に送出される。
【0084】
このようなセルを形成する無線基地局装置と、この無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線通信方法においては、無線基地局装置で、上りリンク信号を用いて、前記セル内のユーザ端末の分布状態に基づいて予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択し、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算する。そして、プリコーディングベクトルが乗算された信号がユーザ端末に送信される。
【0085】
ユーザ端末においては、無線基地局装置からのビームを受信し、受信したビームから参照信号を取り出してチャネル品質を測定し、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする。
【0086】
このように、サービスエリア内でのユーザ端末の偏りを考慮したコードブックを設定し、ユーザ端末からフィードバックされた通信品質情報、あるいは、無線基地局装置において上りリンク信号から求められた通信品質情報に基づいてコードブック内のプリコーディングベクトルを選択するので、システムの容量が増加する。
【0087】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。例えば、上述の実施形態において、ユーザ数や装置における処理部数については、これに限定されず、装置構成に応じて適宜変更することが可能である。また、本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0088】
1 無線通信システム
10 アレーアンテナ
10a 垂直偏波アンテナ
10b 水平偏波アンテナ
11 アンテナ素子
11V 垂直偏波素子
11H 水平偏波素子
100 移動局
TRX#1〜TRX#N 送受信アンテナ
101#1〜101#N デュプレクサ
102#1〜102#N RF受信回路
108 制御チャネル復調部
109 データ復調部
110 チャネル品質測定部
111 CSIフィードバック信号生成部
112 MIMO切替部
114 チャネル符号化部
115 データ変調部
116 サブキャリアマッピング部
117 プリコーディング乗算部
200 無線基地局装置
201#1〜201#K チャネル符号化部
202#1〜202#K データ変調部
203 サブキャリアマッピング部
204#1〜204#K プリコーディング乗算部
215#1〜215#K チャネル推定部
216#1〜216#K 制御チャネル復調部
217#1〜217#K データ復調部
218#1〜218#K CQI情報更新部
219 プリコーディングベクトル生成部
220 リソース割当制御部
222 コードブック選択部
300 上位局装置
400 コアネットワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムであって、
前記無線基地局装置は、
一方向に配列された複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、
前記セル内のユーザ端末からフィードバックされた通信品質情報に基づいて、前記アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する選択部と、
選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算するプリコーディング乗算部と、
前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する送信部と、
を具備し、
前記ユーザ端末は、
前記無線基地局装置からの信号を受信する受信部と、
受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定するチャネル品質測定部と、
測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする送信部と、を具備することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記コードブックは、ユーザ端末の密度の逆数が均一になるようなプリコーディングベクトルで構成されたことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記コードブックは、ρ(L)を無線基地局装置からの距離に応じたユーザ端末の分布関数とし、L[m]を無線基地局装置からの距離としたときに、以下の式により求められるなプリコーディングベクトルで構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線通信システム。
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(ρ(L・[0,1,...M-1])))
ここで、hは無線基地局装置の高さであり、dは複数のアンテナ素子グループであるブランチの間隔であり、αは水平方向に対してユーザ端末UEに向けた送信ビームのチルト角であり、Nはブランチ数である。
【請求項4】
ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて一様に分布している場合に、前記コードブックは、以下の式により求められるプリコーディングベクトルで構成されることを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(Lmax/M)・[0,1,...M-1]))
【請求項5】
ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて2乗倍で分布している場合に、前記コードブックは、以下の式により求められるなプリコーディングベクトルで構成されることを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(Lmax/sqrt(2)^[M-1,...1,0]))
【請求項6】
セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線基地局装置であって、
一方向に配列された複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、
前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、前記アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する選択部と、
選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算するプリコーディング乗算部と、
前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する送信部と、
を具備することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項7】
セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線基地局装置であって、
一方向に配列された複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、
ユーザ端末からの通信品質情報を用いて、前記アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する選択部と、
選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算するプリコーディング乗算部と、
前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する送信部と、
を具備することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項8】
セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおけるユーザ端末であって、
前記無線基地局装置において前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックを用いて前記無線基地局装置から送信された信号を受信する受信部と、
受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定するチャネル品質測定部と、
測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする送信部と、を具備することを特徴とするユーザ端末。
【請求項9】
セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記無線基地局装置において、前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する工程と、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算する工程と、前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する工程と、
前記ユーザ端末において、前記無線基地局装置からの信号を受信する工程と、受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定する工程と、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする工程と、を具備することを特徴とする無線通信方法。
【請求項1】
セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムであって、
前記無線基地局装置は、
一方向に配列された複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、
前記セル内のユーザ端末からフィードバックされた通信品質情報に基づいて、前記アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する選択部と、
選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算するプリコーディング乗算部と、
前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する送信部と、
を具備し、
前記ユーザ端末は、
前記無線基地局装置からの信号を受信する受信部と、
受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定するチャネル品質測定部と、
測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする送信部と、を具備することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記コードブックは、ユーザ端末の密度の逆数が均一になるようなプリコーディングベクトルで構成されたことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記コードブックは、ρ(L)を無線基地局装置からの距離に応じたユーザ端末の分布関数とし、L[m]を無線基地局装置からの距離としたときに、以下の式により求められるなプリコーディングベクトルで構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線通信システム。
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(ρ(L・[0,1,...M-1])))
ここで、hは無線基地局装置の高さであり、dは複数のアンテナ素子グループであるブランチの間隔であり、αは水平方向に対してユーザ端末UEに向けた送信ビームのチルト角であり、Nはブランチ数である。
【請求項4】
ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて一様に分布している場合に、前記コードブックは、以下の式により求められるプリコーディングベクトルで構成されることを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(Lmax/M)・[0,1,...M-1]))
【請求項5】
ユーザ端末が無線基地局装置からの距離に応じて2乗倍で分布している場合に、前記コードブックは、以下の式により求められるなプリコーディングベクトルで構成されることを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
CODEBOOKV[0,1,...M-1]=exp(2πd・jcos(α+π/2)・[0,1,2,,...,N-1])
α=atan(h/(Lmax/sqrt(2)^[M-1,...1,0]))
【請求項6】
セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線基地局装置であって、
一方向に配列された複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、
前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、前記アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する選択部と、
選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算するプリコーディング乗算部と、
前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する送信部と、
を具備することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項7】
セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線基地局装置であって、
一方向に配列された複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、
ユーザ端末からの通信品質情報を用いて、前記アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する選択部と、
選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算するプリコーディング乗算部と、
前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する送信部と、
を具備することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項8】
セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおけるユーザ端末であって、
前記無線基地局装置において前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックを用いて前記無線基地局装置から送信された信号を受信する受信部と、
受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定するチャネル品質測定部と、
測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする送信部と、を具備することを特徴とするユーザ端末。
【請求項9】
セルを形成する無線基地局装置と、前記無線基地局装置に無線接続するユーザ端末とを備えた無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記無線基地局装置において、前記セル内のユーザ端末の通信品質情報に基づいて、アンテナ素子の配列方向に対して非均一に予め設定されたコードブックからプリコーディングベクトルを選択する工程と、選択されたプリコーディングベクトルを、前記各アンテナ素子へ供給する信号に対して乗算する工程と、前記プリコーディングベクトルが乗算された信号をユーザ端末に送信する工程と、
前記ユーザ端末において、前記無線基地局装置からの信号を受信する工程と、受信した信号から参照信号を取り出してチャネル品質を測定する工程と、測定されたチャネル品質を含む通信品質フィードバック信号を上りリンクを介して前記無線基地局装置にフィードバックする工程と、を具備することを特徴とする無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−42340(P2013−42340A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177605(P2011−177605)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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