説明

無線通信システムにおいて無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを求めるための方法及び装置

【課題】セル間干渉にさらされるセルエッジにいるユーザに対してもデータレートを高める。
【解決手段】第1のチャネル状態情報は第1の無線デバイスから第1の基地局によって受信され、第2の無線デバイスと第1の基地局との間のチャネルの第1のチャネル利得情報を受信する(120)。第1のチャネル利得情報h21は第2の基地局から受信される。第2の基地局から、該第2の基地局によって第2の無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を示す第1の信号強度パラメータbを受信し(130)、第2の基地局から、該第2の基地局によって第1の無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を示す第1の干渉強度パラメータaを受信する(140)。さらに、共通の信号対干渉雑音比パラメータを最大化し、第1の無線デバイスに送信されるステップになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルpi,optを取得する(150)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施の形態は無線通信システムに関し、詳細には、無線通信システムにおいて無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを求めるための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラーマルチユーザー多入力多出力(MIMO)システムが、将来の無線通信のために引き続き開発中である。1つの中心問題が、干渉制限セルラーシステムにおいてセルエッジのユーザーレートを最大化することである。現在のセルラーネットワークの場合、セル間干渉(ICI)がシステムボトルネックであり、数多くの既存の方法が、種々の技法を用いてセル間干渉を軽減することを試みてきた。セルエッジにいるユーザーは大抵の場合に、隣接する基地局の強い干渉に悩まされ、これが、達成可能なレートが低くなることに直接反映される。
【0003】
図11Aは、MISO(多入力単出力)線形プリコーディングのための2セルMISOシステムモデルの概略図を示す。図11Aは、セル1及びセル2をカバーする2つの基地局BS1、BS2、並びに2つの無線デバイスUE1、UE2(ユーザー機器1、ユーザー機器2)を示す。さらに、図11Bは、基地局1がビームフォーマーbを使用し、基地局2がビームフォーマーbを使用するときに、基地局BS1、BS2と無線デバイスUE1、UE2との間のチャネルの概略図による直接リンク(有効信号)及び干渉リンク(干渉)を示す。
【0004】
言い換えると、図11Aに示されるように、セルあたり一人のユーザーを有する2セルMISOシナリオが考察される。ただし、各BSはM個のアンテナを有し、セルエッジにある各受信機は1つのアンテナを有する。このシステムモデルは、図12に示されるように、2ユーザーMISO干渉チャネル(IC)とみなすこともでき、ICとの関連では、ユーザーは送信機/受信機ペアを表す。データシンボル
【数1】

がプリコーダー
【数2】

によって線形にプリコーディングされ、ユーザーiによって受信されることになるチャネル
【数3】

を介して送信される。システムの特性に起因して、そのデータシンボルは同様に、チャネル
【数4】

上で送信され(ただし、j≠i)、望まれない干渉としてユーザーjによって受信されることになる。送信信号は送信電力制約
【数5】

を受ける。受信機側では、得られた信号は雑音
【数6】

によってかき乱される。得られたデータシンボル推定値を書くと、以下の式が与えられる。
【数7】

ただし、(・)は転置を表す。
【0005】
システム性能を捉える最も一般的な尺度は、達成可能な合計レートCによって与えられる。
【数8】

ただし、SINR及びSINRはそれぞれ、受信機1及び2の受信された信号対干渉雑音比である。
【数9】

【0006】
以下では、インデックスi及びjは、i∈{1,2}及びj≠iである。
【0007】
既知の合計レート最大化手法は、非特許文献1において記述されている分散型干渉価格設定アルゴリズム(distributed interference pricing algorithm)である。この反復法は、一人のユーザーを有するセルを仮定して、各受信機が干渉基地局(BS)に対して干渉価格(interference price)をアナウンスすることによって開始する。実際には、各受信機はこれらの価格をその対応する基地局(BS)にフィードバックし、対応する基地局がそれらの価格を他の基地局に通知する。したがって、BS協調が必要とされる。各受信機の干渉価格は、干渉BSの初期ビームフォーマーに依存する。その後、各BSは、他の受信機によってアナウンスされる干渉価格を考慮に入れて、その対応するユーザーレートの最大化を別々に実行する。それゆえ、その手法は分散型手法である。それゆえ、その手法は、他のユーザーへの干渉を引き起こすときに罰金(ペナルティ)が支払われることを条件とする利己的手法と考えることができる。最大化の結果として、ビームフォーマーは新たなものとなる。次に、受信機は、その干渉価格を更新し、その更新された干渉価格に従って、新たなビームフォーマーが再び計算される。収束するまで、このプロセスが繰り返される。
【0008】
干渉制限システムにおいて干渉を軽減するための異なる手法も考えられている。これまでのところ、提案されている最良の手法は分散型手法であり、各送信機が、システム内の受信機によってアナウンスされる干渉価格を考慮に入れて、自らのレートを最大化することを試みる(非特許文献2及び非特許文献1)。形式的には、干渉価格πは、送信機jによって引き起こされる干渉の僅かな増加による、受信機iのレートの僅かな減少を表しており、以下のように定義される。
【数10】

ただし、u=log(1+SINR)は受信機iのレートであり、
【数11】

は受信機iに存在する干渉電力である(式3を参照)。
【0009】
一定の干渉価格を仮定すると、各BSiは以下の問題を解く。
【数12】

ただし、(・)は共役転置を表す。各BSの目的関数は、そのBSの達成可能なレートから、そのBSが生成する他のユーザーへの干渉のコストを引いた値とみなすことができる。それは、他のユーザーへの干渉を引き起こす際に支払われる罰金を考慮に入れる利己的手法である。このアルゴリズムを実施するために、各受信機は、全ての干渉BSに干渉価格をアナウンスすべきである。実際には、各受信機はこれらの価格をその対応する基地局(BS)にフィードバックし、対応する基地局がそれらの価格を他の基地局に通知する。したがって、BS協調が必要とされる。これらの干渉価格を仮定して、各BSはその最良のプリコーダーを計算する。収束に達するまで、そのアルゴリズムはプリコーダー及び干渉価格を反復的に更新する。干渉価格を計算するために、全ての受信機は、有効信号電力及び干渉信号電力を知る必要がある。受信機側において、プリコーダーを知る必要はない。最適なプリコーダーを計算するために、全てのBSiは、チャネル利得hki(k=1,2)を知る必要がある。
【0010】
図11Aは、分散型干渉価格アルゴリズムによって記述されるような、マルチセルCOMP/MIMOシステム(協調マルチポイント/多入力多出力システム)のダウンリンク伝送における目標とする構成のための一例を示す。セルエッジのユーザーレートを最大化するために、協調ビームフォーミングを用いることができるが、閉じた形の解は存在せず、シグナリングオーバーヘッドが生じる。図13は、2つの基地局間の分散型干渉価格アルゴリズムを概略的に示す。最初に、干渉価格p、すなわち罰金のアナウンスメントが受信機(無線デバイス)によって送信される。干渉価格は、干渉が僅かに増加する場合のレートの僅かな減少を表す。その後、基地局は、アナウンスされた価格pを考慮に入れて、自らのレートを反復的に最大化する。これは利己的手法である。例えば、基地局1は、以下の式を解く。
【数13】

【0011】
協調ビームフォーミングはCを最大化するためにb及びbを一緒に計算するが、ビームフォーマーの閉じた形の解は存在せず、何がシグナリングされるべきであり、どのような経費(オーバーヘッド)を支払うのかに関して疑問の余地がある。
【0012】
この手法によれば、各反復前にシグナリングフェーズが必要である。その手法は、隣接するセルからの干渉罰金を条件として、セルエッジのユーザーレートを反復的に最適化する。干渉罰金は、エアリンクを介してシグナリングされ、その後、バックホールを介して(反復毎に)交換される。
【0013】
図14は、2つの基地局と2つの無線デバイスUE1、UE2との間のチャネルの概略図によって、初期シグナリング及び各反復のシグナリングフェーズを示す。基地局1は、以下の式を最大化するbを見つける。
【数14】

【0014】
この手法は、利己的手法であるために収束が遅く、高い計算能力を必要とし、急速に変化するシステムには適応せず、受信機側における付加的な処理、及びエアリンク(無線リンク)を介した付加的な通信を必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】D. A. Schmidt、C. Shir、R. A. Berry、M. Honig、及び、W. Utschick、「Distributed Resources Allocation Schemes」、IEEE Signal Processing Magazine, Sept. 2009, pp. 53-63
【非特許文献2】C. Shi、R. A. Berry、及び、M. Honig、「Distributed Interference Pricing with MISO Chennels」、Proc. 46th Annual Allerton Conference 2008, Urbana-Champaign, IL, Sept. 2008, pp. 539-546
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、無線通信システムにおいて無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを求めるための改善された概念を提供することであり、その概念によれば、無線デバイスとの通信のため、特にセルエッジユーザーのために達成可能なデータレートを高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
その目的は、請求項1に記載の方法又は請求項14に記載の装置によって解決される。
【0018】
本発明の実施の形態は、無線通信システムにおいて無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを求めるための方法を提供する。本方法は、無線通信システムにおいて第1の無線デバイスと第1の基地局との間のチャネルの第1のチャネル状態情報を受信するステップを含む。第1のチャネル状態情報は、第1の無線デバイスから第1の基地局によって受信される。さらに、本方法は、第2の無線デバイスと第1の基地局との間のチャネルの第1のチャネル利得情報を受信するステップと、第2の基地局から、該第2の基地局によって第2の無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を示す第1の信号強度パラメータを受信するステップと、及び第2の基地局から、第2の基地局によって第1の無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を示す第1の干渉強度パラメータを受信するステップとを含む。第1のチャネル利得情報は第2の基地局から受信される。さらに、本方法は、共通の信号対干渉雑音比パラメータを最大化して、第1の無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを取得するステップを含む。共通の信号対干渉雑音比パラメータは、第1の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比、及び第2の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比に依存し、第1のチャネル状態情報、第1のチャネル利得情報、第1の信号強度パラメータ及び第1の干渉強度パラメータに基づく。
【0019】
本発明による実施の形態は、第1の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比、及び第2の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比に依存する共通の信号対干渉雑音比パラメータが最大化され、それにより、両方の無線デバイスに与えられる達成可能な合計レートを高めることができるという中心概念に基づく。例えば、合計レートとすることができる共通の信号対干渉雑音比パラメータを最大化することによって、干渉が軽減されるので、特にエッジユーザー(セルのエッジにある無線デバイス)の合わせた総合データレートを高めることができる。さらに、既知の手法と比べると、無線デバイスからの価格情報が不要であるので、基地局と無線デバイスとの間で必要とされるシグナリングが少ない。さらに、アルゴリズムの迅速な収束を達成することができ、結果として計算労力が小さい。
【0020】
本発明によるいくつかの実施の形態では、共通の信号対干渉雑音比パラメータは、第1の無線デバイス及び第2の無線デバイスの合計レート、第1の無線デバイス及び第2の無線デバイスにおける共通の信号対干渉雑音比、又は第1の無線デバイス及び第2の無線デバイスにおける共通の信号対干渉雑音比の下限を表す。
【0021】
共通の信号対干渉雑音比の下限を用いることによって、計算の複雑さを大きく低減することができる。
【0022】
本発明の実施形態が、添付の図面を参照しながら後に詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを求めるための方法の流れ図である。
【図2】可能な共通の信号対干渉雑音比パラメータを示す図である。
【図3】提案手法を用いるシグナリングを示す概略図である。
【図4】無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを求めるための方法の流れ図である。
【図5】提案される概念を用いる無線通信システム内の2つのセルの概略図である。
【図6】提案される概念を用いる2つの基地局と2つの無線デバイスとの間のチャネル及び通信の概略図である。
【図7】目的関数の下限を考慮するための種々の手法を比較する図である。
【図8】セルエッジユーザーのためのレート結果を示す図である。
【図9】収束プロットを示す図である。
【図10】無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを求めるための装置のブロック図である。
【図11A】システム解釈を表すセルエッジユーザーを有する2セルMISOシナリオの概略図である。
【図11B】2つの基地局と2つの無線デバイスとの間のチャネルの概略図である。
【図12】理論的モデルを表す2セルMISOシナリオの概略的なブロック図である。
【図13】干渉価格に基づく手法を用いる無線通信システムの2つのセルの概略図である。
【図14】干渉価格に基づく手法を用いる2つの基地局と2つの無線デバイスとの間のチャネル及び信号の概略図である。
【図15】既知の干渉価格に基づく手法を用いるシグナリングを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、同一又は類似の機能的特性を有する物及び機能ユニットに対して部分的に同じ参照番号が用いられており、或る図に関するその説明は、実施形態の説明が重複するのを減らすために他の図にも当てはまる。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による無線通信システムにおいて無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルpi,optを求めるための方法100の流れ図を示す。方法100は、無線通信システムにおいて第1の無線デバイスと第1の基地局との間のチャネルの第1のチャネル状態情報を受信すること(110)を含む。この第1のチャネル状態情報は、第1の無線デバイスから第1の基地局によって受信される。さらに、第2の無線デバイスと第1の基地局との間のチャネルの第1のチャネル利得情報が受信される(120)。この第1のチャネル利得情報は、第2の基地局から受信される(120)。さらに、本方法は、第2の基地局から、第2の基地局によって第2の無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を示す第1の信号強度パラメータbを受信すること(130)、及び第2の基地局から、第2の基地局によって第1の無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を示す第1の干渉強度パラメータaを受信すること(140)を含む。さらに、本方法は、共通の信号対干渉雑音比パラメータ
【数15】

を最大化し(150)、第1の無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングpi,optを得ることを含む。共通の信号対干渉雑音比パラメータ
【数16】

は、第1の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比SINR(第1の無線デバイスにおける信号対干渉及び雑音比)及び第2の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比SINR(第2の無線デバイスにおける信号対干渉及び雑音比)に依存する。さらに、共通の信号対干渉雑音比パラメータ
【数17】

は、第1のチャネル状態情報、第1のチャネル利得情報h21、第1の信号強度パラメータb及び第1の干渉パラメータaに基づく。
【0026】
無線デバイスに送信するためのデータをプリコーディングするための提案される概念を用いることによって得られたプリコーディングベクトルを用いることにより、無線通信システムにおいて無線デバイスにデータを与えるための合計レートを高めることができる。なぜなら、プリコーディングベクトルを求めるために、合計レートが最大化されるようにして、2つ以上の無線デバイスにおける干渉が考慮されるからである。このために、第1の基地局において、第1の無線デバイスからチャネル状態情報が受信され、1つ又は複数の他の基地局から、1つ又は複数の他の無線デバイスに関する更なる情報及びパラメータが受信される。この情報を用いて、可能なプリコーディングベクトルにわたる共通の信号対干渉雑音比パラメータ(共通の信号対干渉及び雑音比パラメータとも呼ばれる)の最大化150を実現することができる。既知の方法によって用いられるような干渉価格情報は必要ではない。それゆえ、提案される概念は、基地局と無線デバイスとの間で必要とされるシグナリング(エアリンク又は無線チャネルを通じて)を少なくすることができる。
【0027】
2つの基地局及び無線デバイスのみが言及されるが、説明される概念は、任意の数の基地局及び無線デバイスに適用することができる。
【0028】
無線デバイスは、例えば、移動電話、ラップトップ、又は更に一般的には、無線チャネルを通じてデータを要求するユーザー機器UEである。
【0029】
提案方法100は、基地局(例えば、第1の基地局)において実行することができることが好ましい。代替的には、最大化150は、第1のチャネル利得情報、第1の信号強度パラメータ及び第1の干渉強度パラメータを受信する中央コントローラーによって実行される。この場合、第1の基地局は、第1のチャネル状態情報及び第2のチャネル状態情報を用いて、第1の無線デバイスと第1の基地局との間のチャネルh11のチャネル利得情報を計算し、このチャネル利得情報を中央コントローラーに送信することができる。代替的には、第1のチャネル状態情報を中央コントローラーに送信することができ、中央コントローラーによって、対応するチャネル利得情報を計算することができる。
【0030】
例えば、チャネル状態情報は、無線デバイスにおいてチャネルベクトル量子化によって得られ、SINR値(信号対干渉及び雑音比値)を表すチャネル品質インジケーターとともにコードブックエントリーを含む。第1のチャネル状態情報に基づいて、第1の無線デバイスと第1の基地局との間のチャネルのチャネル利得情報h11を計算することができる。このチャネル利得情報は、共通の信号対干渉雑音比パラメータのパラメータとすることができ、その結果、共通の信号対干渉雑音比パラメータは、このチャネル利得情報を介して、第1のチャネル状態情報に基づく。
【0031】
第1のチャネル利得情報h21、第1の信号強度パラメータb及び第1の干渉強度パラメータaは、第2の基地局から有線チャネルを通じて(無線通信システムのバックホールを通じて)受信することができる。対照的に、第1のチャネル状態情報は、第1の無線デバイスから、無線チャネル(エアリンク)を通じて受信される。それゆえ、既知の方法に比べて、無線チャネルを通じた必要なデータ交換を少なく抑えることができるか、又は削減することができる。なぜなら、第1のチャネル利得情報、第1の信号強度パラメータ及び第1の干渉強度パラメータは無線通信システムのバックホールを通じて交換されるからである。
【0032】
提案される概念との関連において、信号強度パラメータは、プリコーディングベクトルが用いられるときに、無線デバイスに対して責任を負う基地局(その無線デバイスはその基地局に割り当てられる)によって、その無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を一般的に示すことができ、そのプリコーディングベクトルがその信号強度パラメータを計算するために用いられる。例えば、信号強度パラメータは、高い信号強度の場合に大きな値、低い信号強度の場合に小さな値を備える。さらに、干渉強度パラメータは、プリコーディングベクトルが用いられるときに、無線デバイスに対して責任を負わない基地局(その無線デバイスは別の基地局に割り当てられる)によって、その無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を一般的に示すことができ、そのプリコーディングベクトルがその干渉強度パラメータを計算するために用いられる。例えば、干渉強度パラメータは、高い干渉強度の場合に大きな値、低い干渉強度の場合に小さな値を備える。さらに、干渉強度パラメータは、干渉強度を示すだけでなく、無線デバイスにおける干渉強度及び雑音強度(の和)も示すことができる。
【0033】
第1のチャネル利得情報h21、第1の信号強度パラメータb及び第1の干渉強度パラメータaは、第2の基地局が計算することができ、その後、第1の基地局に送信される。第1のチャネル利得情報h21、第1の信号強度パラメータb及び/又は第1の干渉強度パラメータaを計算するために、第2の基地局は、第1の無線デバイスと第2の基地局との間のチャネルのチャネル利得情報を必要とする可能性がある。それゆえ、方法100は、無線通信システムにおいて第1の無線デバイスと第2の基地局との間のチャネルの第2のチャネル状態情報を受信することを更に含むことができる。第2のチャネル状態情報は、第1の基地局が第1の無線デバイスから受信することができる。さらに、第2のチャネル状態情報に基づいて、第1の無線デバイスと第2の基地局との間のチャネルの第2のチャネル利得情報を計算することができ、その第2のチャネル利得情報h12を第2の基地局に送信することができる。これは、第1の基地局によって、又は上記の代替の実施態様では中央コントローラーによって行なうことができる。
【0034】
本発明によるいくつかの実施形態では、第2の基地局が、上記の概念による方法を実行することもできる。このようにして、両方の基地局が、それぞれ割り当てられた無線デバイスからチャネル状態情報(第1のチャネル状態情報)を受信することによって、それぞれの基地局に割り当てられる無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを求めることができ、他の基地局から、第1のチャネル利得情報、第1の信号強度パラメータ及び第1の干渉強度パラメータを受信することができる。
【0035】
このために、基地局は、自らによって、割り当てられた無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を示す信号強度パラメータ、及び自らによって、他の無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を示す干渉強度パラメータを計算し、計算された信号強度パラメータ及び計算された干渉強度パラメータを他の基地局に送信する。
【0036】
上記の言い回しに合わせて言い換えると、本方法は、第1の基地局によって、第1の無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を示す第2の信号強度パラメータbを計算すること、及び第1の基地局によって、第2の無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を示す第2の干渉強度パラメータaを計算することを更に含むことができる。本方法は、第2の信号強度パラメータb及び第2の干渉強度パラメータaを第2の基地局に送信することを更に含むことができる。このようにして、両方の基地局が、共通の信号対干渉雑音比パラメータを最大化することによってプリコーディングベクトルを求めることができ、それにより、無線デバイスに送信されることになるデータの達成可能な合計レートを高めることができる。
【0037】
さらに、この手法によれば、各基地局が、以前に求められたプリコーディングベクトルに基づいて新たな干渉強度パラメータ及び新たな信号強度パラメータを計算し、それらのパラメータを他方の基地局に送信することができるので、求められたプリコーディングベクトルの反復的な最適化を実現することができる。
【0038】
上記の言い回しに合わせて言い換えると、本方法は、第2の基地局から、第3の信号強度パラメータ及び第3の干渉強度パラメータaを受信することを更に含むことができる。第3の信号強度パラメータbは、送信された第2の信号強度パラメータb及び送信された第2の干渉強度パラメータaに基づいて、第2の基地局が計算することができる。さらに、第3の信号強度パラメータbは、送信された第2の信号強度パラメータb及び送信された第2の干渉強度パラメータaを考慮に入れて、第2の基地局によって第2の無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を示すことができる。第3の干渉強度パラメータaは、送信された第2の信号強度パラメータb及び第2の干渉強度パラメータaに基づいて第2の基地局が計算することができる。さらに、第3の干渉強度パラメータaは、送信された第2の信号強度パラメータb及び送信された第2の干渉強度パラメータaを考慮に入れて、第2の基地局によって第1の無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を示すことができる。さらに、共通の信号対干渉雑音比パラメータを最大化することによって、新たなプリコーディングベクトルを得ることができ、ここで、そのパラメータは、第1のチャネル状態情報、第1のチャネル利得情報、第3の信号強度パラメータ及び第3の干渉強度パラメータに基づいているので、プリコーディングベクトルを反復的に最適化することができる。
【0039】
このようにして、第3の信号強度パラメータ及び第3の干渉強度パラメータは、第2の信号強度パラメータ及び第2の干渉強度パラメータに基づいて計算され、その第2の信号強度パラメータ及び第2の干渉強度パラメータは、第1の信号強度パラメータ及び第1の干渉強度パラメータに基づいて計算されるので、共通の信号対干渉雑音比パラメータは依然として、第1の信号強度パラメータ及び第1の干渉強度パラメータにも依存する。
【0040】
本発明によるいくつかの実施形態では、共通の信号対干渉雑音比パラメータは、第1の無線デバイス及び第2の無線デバイスの合計レートC、第1の無線デバイス及び第2の無線デバイスにおける共通の信号対干渉雑音比
【数18】

又は第1の無線デバイス及び第2の無線デバイスにおける共通の信号対干渉雑音比の下限
【数19】

を表すことができる。
【0041】
以下では、提案される概念に従ってプリコーディングベクトルを求めるための方法に関する詳細な例が説明される。説明される特徴は一緒に用いることができるか、又は上記の基本概念と組み合わせて、互いに別々に用いることができる。詳細な例との関連において、提案される概念は、干渉電力を交換することによって、基地局が協調してシステム合計レートを直接最大化するとみなすこともできる。以下の説明のうちのいくつかは、2つの基地局及び2つの無線デバイスを有するシステムに関連するが、提案される概念の適用はそのようなシステムには限定されず、任意の数の基地局及び無線デバイスに適用することもできる。
【0042】
図2は、2つの基地局BS1、BS2の信号電力S、S(信号強度)及び干渉電力I、I(干渉強度)の指示値を用いる、2つの基地局と2つの無線デバイスとの間の合計レートに関する一般的な例を示す。以下では、信号電力S、S及び信号強度パラメータbは等しい量とすることができ、干渉電力I、I及び信号強度パラメータaは等しい量とすることができ、ビームフォーマーb、b及びプリコーディングベクトルp、pは等しい量とすることができる。
【0043】
BSがプリコーダー情報を交換することができると仮定して(この仮定は後に緩和される)、主目的関数(式2を参照)を直接最大化することが提案される。このために、式2が以下のように書き換えられる。
【数20】

ただし、
【数21】

は同じレートを達成する対応する単一セル単一ユーザーシステムの等価なSINR(例えば、1つの可能な共通の信号対干渉雑音パラメータ)である。対数関数は単調であるので、式6を最大化することは、その独立変数を最大化することと等価である。したがって、最適なプリコーダー(p,poptを見つける問題は以下のように定式化することができる。
【数22】

【0044】
【数23】

(例えば、1つの可能な共通の信号対干渉雑音パラメータ)の各項はp及びpの式を含み、その問題の構造を複雑なものにする。したがって、最適なプリコーダーのための閉じた形の式を入手することはできない。それゆえ、代替の最適化手法に従って、(準)最適なプリコーダー値を見つけることができる。BSjのプリコーダーpがわかっているものとして、BSiがその最適なプリコーダーpを見つけたいと仮定する。最初に、SINR及びSINRは以下のように書き換えられ、
【数24】

スカラーa及びbを以下のように定義する。
【数25】

及びbはそれぞれ、受信機iにおいて存在する干渉+雑音電力、及び受信機jの有効信号電力を表しており、特定のp値の場合に既知であり、かつ一定である。これらの量を用いて、式8を以下のように書き換えることができる。
【数26】

ただし、A及びBは以下の式によって与えられる正定値行列である。
【数27】

ただし、Bの式を得るために、等式
【数28】

が用いられており、Iは大きさMの恒等行列である。
【0045】
その際、式7の目的関数
【数29】

は、以下のように専らプリコーダーpに関して書くことができることは容易にわかる。
【数30】

ただし、正定値行列Dは暗に定義される。これは、レイリー商と同じように見え、その最大値は、行列D及びBの最大一般化固有値(GEV)に対応する一般化固有ベクトルによって与えられる。しかしながら、Dそのものは、pの関数であり、これは、GEV手法の使用を妨げる。以下では、
【数31】

を簡単にし、かつ当面の問題に対して実行可能解を与える2つの手法が提案される。いずれの手法も、目的関数(例えば、共通の信号対干渉雑音パラメータ)の下限を定めることに関連する。以下の式が成り立つことに留意されたい。
【数32】

ただし、pがゼロフォーシング解である場合に等式になり、これにより、下限
【数33】

(例えば、1つの可能な共通の信号対干渉雑音パラメータ)を以下のように表すことができる。
【数34】

ただし、正定値行列Dlow,iは暗に定義される。この行列はpから独立していることに留意されたい。したがって、GEV手法を用いて、その問題を解くことができる。
【数35】

を直接最大化する代わりに、
【数36】

のための下限である
【数37】

が最大化されるので、主な問題が変更されている。この下限はbiに依存する。したがって、下限は可変であり、反復する度に変化する。最適なpは、行列Dlow,i及びBの最大一般化固有値λmaxに対応する一般化固有ベクトルとして見つけることができる。
【数38】

【0046】
i,optを見つけたとき、ここで、上記と同じ手順を用いて、BSjはこの更新された値を用いてpj,optを見つけることができ、収束するまでこれが繰り返される。この方法の詳細が以下のアルゴリズムにおいて記載される。
アルゴリズム1 システム合計レートに関する下限の最大化
【表1】

【0047】
そのアルゴリズムは初期値p1,noncoop及びp2,noncoopで開始し、それらの初期値は、協調が行なわれない場合のプリコーダー値を表す。すなわち、各BSが他のBSから独立して自らの合計レートを最大化することを試みる。メインループでは、反復する度に提案手法に従って、p及びpの新たな値が計算される。それでも収束に達していない場合には、そのアルゴリズムは、最長でmax_nb_iterationsの反復数まで実行され、所望の収束精度に従って、変数εを設定することができる。
【0048】
【数39】

に関連する問題は
【数40】

項の中にあり、その項は既知の解析的解を得るのを妨げる。以前の手法では、この項は下限を定められ、それにより二次値の問題に変換され、実行可能解を得ることができる。pが第nの反復後に得られたプリコーダー解を表すものとし、ここで、pn+1が探索されると仮定する。pn+1を計算する別の可能な方法は、
【数41】

を、
【数42】

又は
【数43】

のいずれかで近似することである。例えば、第1の手法が検討され、pが与えられ、これは、
【数44】

がここで一定であることを意味することに留意されたい。実質的には、本発明者らは、SINR項を実際には無視し(式11及び12を参照)、以下の部分問題を解くことになる。
【数45】

【0049】
【数46】

(例えば、1つの可能な共通の信号対干渉雑音パラメータ)は実際には
【数47】

のための別の下限であることに留意されたい。新たな目的関数は以下のように書き換えることができる。
【数48】

ただし、簡単にするために反復インデックスは省略されている。D’は正定値であるので、pi,optは行列D’及びBの最大固有値に対応する一般化固有ベクトルによって与えられる。以前の手法からの行列Dlow,iをD’と比較すると、唯一の違いはDlow,i内に存在する追加の
【数49】

の項にあることがわかる。高いSNR(信号対雑音比)では、σ→0であり、結果として、Dlow,i→D’である。したがって、2つの手法は、同様の解を生成すると予想される。
【0050】
提案アルゴリズムの実施態様は、BSiにおいてチャネル利得hki∀k=1,2を知る必要がある場合がある。さらに、スカラー量a及びbが入手可能である必要がある。これらのスカラーはpに依存する(式9を参照)。したがって、pを直接通知する代わりに、それらのスカラーをBSjにおいて計算し、BSiに返送することができ、結果としてシグナリングオーバーヘッドを削減することができる。提案手法と最新技術の手法との間の1つの基本的な違いは、選択される最適化関数のほかに、BS間で交換されている情報にある。最新技術は価格情報を交換し、一方、提案手法は、分散型システムを前提とすると、干渉電力a∀i(式9を参照)を交換する。最新技術の手法と比べて、BS間で1つの追加のスカラーbの交換が必要とされ、結果として、BS間で追加のシグナリングオーバーヘッドが生成されるが、受信機での処理(干渉価格の計算)は不要である。さらに、干渉価格は、受信機側からBS側に最初にフィードバックされる必要があり、結果として、最新技術の手法の場合、受信機とBSとの間で付加的なオーバーヘッドが生じる。このオーバーヘッドは伝送のために利用可能な帯域幅を縮小する。
【0051】
図3は、提案方法のために必要とされるシグナリングを示す。初期化フェーズは、受信機にパイロットシンボルが送信されることから開始し、受信機は自身のチャネルを推定して、それらのチャネル(第1のチャネル状態情報、例えば、コードブックエントリー及びチャネル品質インジケーター。図3は、チャネル状態情報から基地局によって導出されるパラメータh11、h12、σを示す)を推定された雑音電力とともに対応するBSに返送する(この仮定は後に緩和される)。その後、BSは必要な情報(例えば、チャネル利得情報hij及び雑音σ)を交換し、その後、アルゴリズムを開始する。収束後に、データ伝送を開始することができる。2セルシステムの場合、全体的なシグナリングオーバーヘッドは同一である(同様である)。最新技術の手法を用いると、価格スカラーが、対応するBSにフィードバックされ、そのBSは更にそれを干渉するBSに通知するので、結果として、図15に示されるように、2スカラー値のシグナリングが生じる(この場合、チャネルシグナリングを無視する)。提案手法は、BS間で2スカラー値a及びbを直接交換する(雑音電力密度は、システム内の受信機が異なっても同様であると仮定しても差し支えない;したがって、雑音電力は受信機からBSにフィードバックされ、その後、BS間で交換される必要はない)。両方の図に示されるように、それらのチャネルのための専用のシグナリングも同一である。干渉価格のフィードバックは、信頼性が低いエアリンクを介して行なわれることに留意されたい。したがって、フィードバックされる値内に少しでも誤りがあると、得られた最新技術の解に大きな影響を及ぼす可能性がある。一方、提案方法を用いるスカラーの交換はファイバーリンクを介して行なわれ(帯域幅は問題でない)、信頼性が高い。この検討は量子化を想定しない。その場合、シグナリングはプリコーダー及び干渉価格の両方のコードブックサイズに依存するので、どの方法が少ないシグナリングを有するかを算定するのは難しい。最後に、図から明らかなように、提案方法を用いる反復は、受信機からフィードバックされる情報を不要にすることができ、BS間の情報のみが交換されるので、反復する度に、更新された価格情報π及びπを受信機からフィードバックする必要がある最新技術の方法とは対照的である。これにより、提案アルゴリズムは、例えば、集中型システムに適したものとなる。
【0052】
シミュレーション結果において後に与えられるように、提案アルゴリズムは非常に速い収束速度を有する。この結果として、必要とされる計算能力が大幅に削減され、経済的に望ましい。さらに、各反復が1つのシグナリングフェーズを必要とすることに留意すると、提案アルゴリズムは、限られたシグナリングしか必要としないので、急速に変化するチャネルを用いる分散型システムの場合にも適している。最新技術の解決策は多数の反復を、それゆえ、多数のシグナリングを必要とする。
【0053】
図4は、本発明の一実施形態による、無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを求めるための方法400の流れ図を示す。この例は上記のアルゴリズム1に類似であり、上記の概念に従う2つの基地局の協調を示す。
【0054】
この例では、第1の基地局が最初にプリコーディングベクトルb(p)を計算することから開始し、第1の信号強度パラメータI(b)及び第1の干渉強度パラメータS(a)を計算し(図1に示され、それに対応して説明される例では、その計算は第2の基地局によって行なわれる)、それらのパラメータを第2の基地局BS2にシグナリングする(その基地局は、図1に示される第1の基地局である)。その後、第2の基地局BS2(図1の第1の基地局)は、第1の信号強度パラメータI及び第1の干渉強度パラメータSに基づいて、最適なプリコーディングベクトルb(p)を見つけるために、共通の信号対干渉雑音比パラメータを最大化する。さらに、第2の基地局は、第2の信号強度パラメータI(b)及び第2の干渉強度パラメータS(a)を計算し、それらのパラメータを第1の基地局BS1(図1の例では、第2の基地局)にシグナリングする。
【0055】
次に、基地局BS1(図1の例では第2の基地局)が、第2の信号強度パラメータI及び第2の干渉強度パラメータSに基づいて共通の信号対干渉雑音比パラメータを最大化し、最適なプリコーディングベクトルbを見つける。さらに、基地局BS1は、第3の信号強度パラメータI(b)及び第3の干渉強度パラメータS(a)を計算し、それらのパラメータを第2の基地局BS2(その基地局は、図1の例では第1の基地局である)にシグナリングする。
【0056】
新たなプリコーディングベクトルが所定の中断の判定基準
【数50】

を満たすか、又は最大反復回数に達した場合には、そのアルゴリズムは終了し、第1の基地局及び第2の基地局において最後に計算されたプリコーディングベクトルが、無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするために用いられる。
【0057】
基地局における無線デバイスの第1のチャネル状態情報の受信及び第1のチャネル利得情報の受信はこの概略的なアルゴリズムには示されていないが、これらのステップも実行される。
【0058】
この反復手法を用いることによって、無線デバイスからの更なる情報(例えば、既知の概念による干渉価格等)を必要とすることなく、無線デバイスにデータを送信するための合計レートを反復的に最適化することができるので、必要な無線シグナリングを少なく抑えることができる。しかしながら、無線レート(すなわち、種々のユーザーの達成可能なレート)は、既存の方式に比べて高い。
【0059】
図4のアルゴリズムの例示は、図3に示されるアルゴリズムと等価である。インデックスのみが僅かに異なる。例えば、プリコーディングベクトルは、pではなく、bによって示され、信号強度パラメータ(又は信号電力パラメータ)はaではなくSによって示され、干渉強度パラメータ(又は干渉電力パラメータ)はbではなく、Iによって示される。
【0060】
さらに、図5は無線通信システムの2つのセルの概略図を示しており、基地局が他方のセル内のセルエッジユーザーに対して干渉を引き起こし、各反復のシグナリングフェーズ中に干渉強度パラメータI、Iがシグナリングされる。これは、基地局間の有線リンクを通じて行なわれるので、エアリンク通信を削減することができる。
【0061】
その図は、自らが引き起こした干渉電力Iを基地局が計算することができるようにする新たなシグナリング方式を例示する。このようにして、基地局は、干渉電力交換を介して協調してCを最大化することを可能にすることができる。
【数51】

【0062】
図4において示されるアルゴリズム、及び図5の2セルシナリオの概略図に対応して、図6は、提案される概念を用いるときの、2つの基地局と2つの無線デバイスとの間で交換されることになるチャネル及びデータの概略図(シグナリング図)を示す。最初に無線デバイスから基地局にチャネル状態情報をシグナリングすることによって、基地局は、基地局と無線デバイスとの間の種々のチャネルのためのチャネル利得情報を計算することができる。その後、各反復のシグナリングフェーズ中に、基地局間の有線リンクのみを必要とすることができるので、各反復時に(必要な)エアリンク通信(データ)を削減することができる。
【0063】
シミュレーション結果が、直接リンク及び干渉リンクの両方について、平均0及び共分散行列Iを有する独立同一分布(IID)チャネルを5000回実現して平均される。これにより、ユーザーが有効信号と同程度に強い干渉に悩まされるセルエッジにおける性能を捉える。送信電力
【数52】

をl、∀iに設定した。各BSにおいて、M=2個のアンテナを用いた。図7は、提案された両方の(下限を定める)手法を比較しており、それらの手法はそれぞれ、
【数53】

を用いる方法、及び
【数54】

を用いる方法を指している。下限を最大化する方法は低いSNRにおいて僅かにより良好に機能するが、いずれの方法も、予想通りに、SNRの増加とともに同様の解を生成する。下限手法のうちの1つが次のシミュレーションにおいて用いられる。図8は、提案手法と、分散型価格設定手法とを比較する。低いSNRの場合に、分散型価格設定手法は僅かにより良好に機能する。提案手法は、SNR〜12dBから分散型手法よりも性能が優れている。提案手法は、SNRが増加するのに応じて、著しいスペクトル効率(及びその後のレート)利得を達成する。
【0064】
図9は、収束に達するために、提案手法及び分散型価格設定手法によって必要とされる反復回数を示す。プロットからわかるように、提案方式は、後続の反復が無視することができる程度の改善しか与えないので、第1の反復直後にほぼ収束する。分散型価格設定手法は、収束するのにそれよりも多くの反復回数を必要とする。これは、この例における提案方式がセルエッジユーザーレートの合計に関する下限を直接最大化するのに対して、分散型手法は種々の目的関数を別々に最大化し、これが収束を遅らせるという事実に起因する。
【0065】
図10は、本発明の一実施形態による、無線通信システムにおいて無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルpi,optを求めるための装置1000のブロック図を示す。
【0066】
装置1000は、無線受信機1010と、有線受信機1020と、プロセッサ1030とを備える。無線受信機1010及び有線受信機1020はプロセッサ1030に接続される。無線受信機1010は、無線通信システムにおいて第1の無線デバイスと第1の基地局との間のチャネルの第1のチャネル状態情報1002を受信するように構成される。第1のチャネル状態情報1002は、第1の無線デバイスから第1の基地局によって受信される。有線受信機1020は、第2の無線デバイスと第1の基地局との間のチャネルの第1のチャネル利得情報h21を受信するように構成される。第1のチャネル利得情報h21は、第2の基地局から受信される。さらに、有線受信機1020は、第2の基地局から、第2の基地局によって第2の無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を示す第1の信号強度パラメータbを受信するように構成される。有線受信機1020は、第2の基地局から、第2の基地局によって第1の無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を示す第1の干渉強度パラメータaを受信するように更に構成される。プロセッサ1030は、共通の信号対干渉雑音比パラメータ
【数55】

を最大化することによって、第1の無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルpi,optを取得するように構成される。共通の信号対干渉雑音比パラメータは、第1の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比及び第2の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比に依存し、第1のチャネル状態情報1002、第1のチャネル利得情報h21、第1の信号強度パラメータb及び第1の干渉強度パラメータaに基づく。
【0067】
装置1000又は装置1000の構成要素は、上記の概念の1つ又は複数の態様を実現する1つ又は複数の付加的な機構又はユニットを備えることができる。
【0068】
例えば、装置1000は、無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーダーを備えることができる。さらに、装置1000は、無線デバイスにプリコーディングされたデータを送信するための送信機を備えることができる。
【0069】
無線受信機1010、有線受信機1020、プロセッサ1030及び/又は装置1000の他のオプションのユニットは、独立したハードウェアユニット又はコンピューターの一部、マイクロコントローラー又はデジタルシグナルプロセッサ、及びコンピューター、マイクロコントローラー若しくはデジタルシグナルプロセッサ上で実行するためのコンピュータープログラム又はソフトウェア製品とすることができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態は、上記のようにプリコーディングベクトルを求めるための装置を備える基地局に関する。このために、基地局の既存の無線受信機ユニット、有線受信機ユニット及びプロセッサを用いることができる。さらに、基地局のプリコーダー及び/又は送信機も用いることができる。
【0071】
上記の概念を複数の基地局において実施することによって、複数の基地局及び供給される無線デバイスのための最大合計レートを取得するために、種々の基地局において用いられるプリコーディングベクトルを協調して最適化することができるようになる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態は、(干渉)電力の基地局交換に基づく協調レート最大化に関する。その新たな方法は、基地局の協調を前提として、2セルシナリオの場合のセルエッジユーザーレートの合計を最適化することに基づくことができる。各BSが利己的に自らのレートを最大化する利己的な最新技術の方法と比べて、BSが協調して総合レートを最大化する。総合レートは最初に基地局のビームフォーマーに関して定式化され、最適なビームフォーマーは以下のように反復的に見つけられる。他の(例えば、BS2の)ビームフォーマーに関する情報が交換されると仮定して、反復する度に、1つのビームフォーマー(例えば、BS1のビームフォーマー)を最適化して、総合レートに関する下限を最大化する。実際には、電力レベルしか交換する必要がないので、ビームフォーマー情報は不要である。その際、BS2は、BS1によって通知される更新された電力レベル情報を用いて、自らのビームフォーマーを計算する。収束するまで、これが繰り返される。分散型手法と比べると、付加的なスカラーを互いのBSに通知する必要がある場合がある。しかしながら、最新技術の方法を用いるとき、最初に、エアリンクを通じて受信機から対応するBSに干渉価格をフィードバックする必要がある。エアリンクは信頼性が低い。したがって、フィードバックされる干渉価格内に少しでも誤りがあると、得られた最新技術の解に大きな影響を及ぼす可能性がある。また、これはエアリンクのデータ伝送のための帯域幅を削減する。上記の例のうちのいくつかは多入力単出力(MISO)シナリオに基づく。しかしながら、MIMOシナリオへの拡張は簡単である。さらに、例えば、そのシステム内の2つのセルからなる複数のサブセットを注意深く選択することによって、又は協調が3セルシナリオに基づくイントラサイトCoMPとの関連において、マルチセルシナリオへの拡張が可能である。
【0073】
例えば、提案方法は、中程度から高いSNR範囲において、セルエッジユーザーに対して高いレートを達成する。提案方式が迅速に収束する結果として、計算能力が低くて済むので、経済的に望ましい。提案方式は、BS間のシグナリングが僅かに増加することと引き換えに、BSと受信機との間で必要とされるシグナリングが少ない。その方式は、受信機側において処理を必要としない。したがって、簡単な受信機を使用することができる。さらに、提案アルゴリズムは、新たな各反復が新たなシグナリングを必要とすることに留意して、限れたシグナリングしか必要とされないので、チャネルが急速に変化する分散型システムにも適している。
【0074】
言い換えると、セルラーネットワークにおいて、すなわち高い干渉に悩まされるセルエッジユーザーに対して、より高いレートを達成するために、新たな反復法が提案される。その提案手法は、そのようなユーザーの併合した総合レートを最大化することによって干渉を暗に軽減することを試みる。したがって、それは協調的手法である。現在の最新技術の方法は、干渉を直接抑圧するか、又はレートをユーザー毎に別々に最大化することを試みる。そのような手法は、利己的と言われる。例えば、新たな方法は、複数の基地局が干渉電力情報を反復的に交換する協調マルチポイント(CoMP)方式であり、受信機側において計算された価格情報(各基地局によって生成される干渉量についての限られた情報)が交換される他の方法とは対照的である。共同処理は行なわれない。すなわち、基地局(BS)は最適なビームフォーマーを見つけるために協調するだけであり、その対応するセルにそれぞれ独立して送信する。
【0075】
例えば、提案方法は、中程度から高い信号対雑音比(SNR)において、セルエッジユーザーのために、より高いレートを達成する。提案方法は、BS間のシグナリングが僅かに増加することと引き換えに、受信機とBSとの間で必要とされるシグナリングが少ない。受信機とBSとの間のシグナリングはエアリンクを介して行なわれ、これはデータ伝送のための帯域幅を縮小する。さらに、エアリンクは信頼性が低い可能性がある。一方、BS間のシグナリングはバックホールリンク(ファイバー)を介して行なわれるので、帯域幅は問題ではなく、シグナリングもはるかに信頼性が高い。さらに、提案方式は、受信機側において処理(価格情報の計算)を必要としない。提案方式が迅速に収束する結果として、全体的な計算能力が低くて済む。計算能力が低い結果として、基地局における運用費が少なくなり、経済的に望ましい。セルエッジにおけるレートが高くなる結果として収益が増加し、レートを高めることが所望されていない場合には、低い送信電力で同じレートを達成することができ、これによっても、BSにおける電力費が節約される。提案アルゴリズムは、集中型システム及び分散型システムに適用することができる。さらに、新たな各反復が新たなシグナリングを必要とすることに留意して、限られたシグナリングしか必要とされないので、提案アルゴリズムは、チャネルが急速に変化する分散型システムに適している。最新の解決策は多数の反復を、それゆえ、多数のシグナリングを必要とする。
【0076】
上記の概念は、無線通信、伝送技術、CoMP伝送(協調マルチポイント伝送)及び/又はセルラーネットワークの分野において用いることができ、セルラーマルチユーザー多入力多出力(MIMO)システムに適用することができる。
【0077】
基地局協調に基づいてセルエッジユーザーのレートを最大化するための新規の方法が提案される。セル間干渉(ICI)はシステムボトルネックであり、特にセルエッジユーザーの場合に、システム性能に深刻な影響を及ぼし、この結果として、達成可能なレートが低下する。文献では、種々の手法を用いて干渉を軽減することを試みる数多くの方法が存在する。直接干渉を抑圧することを試みる方法もあれば、レートをユーザー毎に別々に最大化することを試みる方法もあり、それゆえ、利己的手法である。提案方式は、エッジユーザーの併合した総合レートを最大化することによって、干渉を暗に軽減することを試みる。それゆえ、それは協調的手法である。単一ユーザーセルを有する2セル多入力単出力(MISO)シナリオが考察され、総合レートに関する下限を最大化するために、基地局(BS)は干渉電力情報を交互に交換する。数値結果は、中程度及び高い信号対雑音比(SNR)の場合に、最新技術の方法よりも優れた性能改善を示す。さらに、提案方式は、速い収束速度を有し、それにより、限られた反復回数しか受け入れる余裕がない時間変動システムの場合に更に魅力的である。
【0078】
言い換えると、提案される概念は、例えば、変換が迅速であり、必要とされる計算能力が低く、かつ計算があまり複雑でないアルゴリズム、受信機側において少ない処理、エアリンクにおいて少ない通信、急速に変化するシステムへの良好な適応性、及び/又は複雑になった分をC(合計レート)の下限を定めることによって相殺することを提供する。
【0079】
既知の概念と比べて、提案方式は、基地局間で(バックホールリンクを介して)多くのシグナリングを必要とする可能性があるが、基地局と受信機との間の(エアリンクを介する)シグナリングは著しく少なく、受信機における処理は少ないか、又は不要である。さらに、提案される概念は、既知の概念に比べて、速い収束速度を備えることができ、低い計算労力を必要とし、急速に変化するシナリオに良好な適応力を備える。
【0080】
提案される概念によって増加するセルエッジレートは、収益を増加させることができる。さらに、低い計算労力による結果として、基地局における運用費を下げることができる。
【0081】
既知の概念を用いる場合、協調する基地局の共同ビームフォーミング設計によって、システムの総合レートを最適化することはできない。言い換えると、既知の方法は、システムの総合レートを最適化しない。それに比べて、提案方法は、隣接するセル(隣接する基地局)からの電力尺度(例えば、信号強度及び干渉強度)を条件として、システムの総合レートを反復的に最適化することができる。電力は、基地局において測定され、バックホールを介して交換することができる(反復する度に行なわれ、エアリンクを介したシグナリングを不要にすることができる)。この概念は、シグナリングを効率的にしながら、システム総合レートを最大化する方法を提供することができる。
【0082】
既知の手法は利己的である(罰金を条件とする)。それに比べて、提案方法は、新たな利他的(協調的)手法において、その問題に対処することができる。各基地局は同時に総合レート(又は両方のユーザーの合計又はレート)を最大化することを試みる。
【0083】
総合レートを最大化する最適なビームフォーマー(プリコーディングベクトル)を見つけることを1つの目的とすることができる(例えば、図2)。
【0084】
及びIが与えられると、基地局1 BS1は、例えば、Cを最大化する最適なビームフォーマーbを見つけることができる。これは、基地局BS2の場合にも同様に行なわれる。最適なビームフォーマー(それゆえ、S及びIの量)はわからないので、そのアルゴリズムは初期ビームフォーマーから開始し、収束するまで反復することができる。複雑になった分は、C(合計レート)の下限を定めることによって低減することができる。
【0085】
本発明によるいくつかの実施形態は、基地局協調を前提として総合レート最大化問題を解くことによって、無線セルラーネットワーク内のセルエッジユーザーのレートを最大化することを目指す方法に関する。
【0086】
オプションで、本方法は、最適なビームフォーミングベクトルを計算するために、基地局間で(干渉)電力を交換することに基づく反復手順を更に含むことができる。
【0087】
別の態様によれば、その反復手順は、複数の基地局にわたり分散して実行され、基地局を接続するバックホールを介したシグナリングを必要とする。
【0088】
別の態様によれば、反復する度に、正確なレートではなく、セルエッジユーザーの総合レートの下限が最大化される。
【0089】
説明された概念のいくつかの態様は装置との関連で説明されたが、これらの態様は、対応する方法の記述も表し、ここでブロック又はデバイスは方法ステップ又は方法ステップの特徴に対応することが明らかである。それに類似して、方法ステップに関連して説明された態様も、対応する装置の対応するブロック又はアイテム又は特徴の記述を表す。
【0090】
或る特定の実施態様要件に依存して、本発明の実施形態はハードウェア又はソフトウェアで実施することができる。この実施態様は、電子的に読取り可能な制御信号が格納されたデジタルストレージ媒体、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、又はフラッシュメモリを用いて実行することができ、それらは、それぞれの方法が実行されるようにプログラム可能なコンピューターシステムと連携する(又は連携可能である)。それゆえ、デジタルストレージ媒体はコンピューター可読とすることができる。
【0091】
本発明によるいくつかの実施形態は、本明細書に記載された方法のうちの1つが実行されるようにプログラム可能なコンピューターシステムと連携することができる電子的に読取り可能な制御信号を有するデータ担体を含む。
【0092】
概して、本発明の実施形態は、プログラムコードを有するコンピュータープログラム製品として実施することができる。このプログラムコードは、コンピュータープログラム製品がコンピューター上で実行されると、方法のうちの1つを実行するように動作可能である。プログラムコードは、例えば機械可読担体上に格納することができる。
【0093】
他の実施形態は、機械可読担体上に格納された、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するためのコンピュータープログラムを含む。
【0094】
それゆえ、言い換えると、本発明の方法の一実施形態は、コンピュータープログラムがコンピューター上で実行されるときに本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するプログラムコードを有するコンピュータープログラムである。
【0095】
それゆえ、本発明の方法の更なる実施形態は、データ担体(又はデジタルストレージ媒体若しくはコンピューター可読媒体)であって、該データ担体上に記録された、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するためのコンピュータープログラムを含む、データ担体である。
【0096】
それゆえ、本発明の方法の更なる実施形態は、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するためのコンピュータープログラムを表すデータストリーム又は信号シーケンスである。データストリーム又は信号シーケンスは、例えば、データ通信接続を介して、例えばインターネットを介して転送されるように構成することができる。
【0097】
更なる実施形態は、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するように構成又は適合された処理手段、例えばコンピューター又はプログラム可能な論理デバイスを含む。
【0098】
更なる実施形態は、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するためのコンピュータープログラムがインストールされたコンピューターを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、プログラム可能な論理デバイス(例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ)を用いて、本明細書に記載された方法の機能のうちのいくつか又は全てを実行することができる。いくつかの実施形態では、フィールドプログラマブルゲートアレイは、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するためにマイクロプロセッサと連携することができる。概して、本方法は好ましくは任意のハードウェア装置によって実行される。
【0100】
上述した実施形態は、単に本発明の原理を例示するものである。本明細書において記載される構成及び詳細の変更及び変形は当業者には明らかであることが理解される。それゆえ、本発明は、同封の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定され、本明細書における実施形態の記述及び説明のために提示された特定の詳細によって限定されるものではないことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおいて無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトル(pi,opt)を求めるための方法(100)であって、
前記無線通信システムにおいて第1の無線デバイスと第1の基地局との間のチャネルの第1のチャネル状態情報を受信するステップ(110)であって、該第1のチャネル状態情報は該第1の無線デバイスから該第1の基地局によって受信される、受信するステップと、
第2の無線デバイスと前記第1の基地局との間のチャネルの第1のチャネル利得情報(h21)を受信するステップ(120)であって、該第1のチャネル利得情報(h21)は、第2の基地局から受信される、受信するステップと、
前記第2の基地局から、該第2の基地局によって前記第2の無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を示す第1の信号強度パラメータ(b)を受信するステップ(130)と、
前記第2の基地局から、該第2の基地局によって前記第1の無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を示す第1の干渉強度パラメータ(a)を受信するステップ(140)と、
共通の信号対干渉雑音比パラメータ
【数1】

を最大化するステップ(150)であって、前記第1の無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトル(pi,opt)を取得し、前記共通の信号対干渉雑音比パラメータ
【数2】

は、前記第1の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比(SINR)及び前記第2の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比(SINR)に依存し、前記第1のチャネル状態情報、前記第1のチャネル利得情報(h21)、前記第1の信号強度パラメータ(b)及び前記第1の干渉強度パラメータ(a)に基づく、最大化するステップと、
を含む、無線通信システムにおいて無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを求めるための方法。
【請求項2】
前記無線通信システムにおいて前記第1の無線デバイスと第2の基地局との間のチャネルの第2のチャネル状態情報を受信するステップであって、該第2のチャネル状態情報は前記第1の無線デバイスから前記第1の基地局によって受信される、受信するステップと、
前記第2のチャネル状態情報に基づいて、前記第1の無線デバイスと前記第2の基地局との間の前記チャネルの第2のチャネル利得情報(h12)を計算するステップと、
前記第2のチャネル利得情報(h12)を前記第2の基地局に送信するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のチャネル状態情報及び前記第2のチャネル状態情報は、前記第1の無線デバイスから無線チャネルを通じて受信され、前記第1のチャネル利得情報(h21)、前記第1の信号強度パラメータ(b)及び前記第1の干渉強度パラメータ(a)は、前記第2の基地局から有線チャネルを通じて受信される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の基地局によって前記第1の無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を示す第2の信号強度パラメータ(b)を計算するステップと、
前記第1の基地局によって前記第2の無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を示す第2の干渉強度パラメータ(a)を計算するステップと、
前記第2の信号強度パラメータ(b)及び前記第2の干渉強度パラメータ(a)を前記第2の基地局に送信するステップと、
を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の基地局から第3の信号強度パラメータ(b)を受信するステップであって、該第3の信号強度パラメータ(b)は、前記送信された第2の信号強度パラメータ(b)及び前記送信された第2の干渉強度パラメータ(a)に基づいて前記第2の基地局によって計算され、該第3の信号強度パラメータ(b)は、前記送信された第2の信号強度パラメータ(b)及び前記送信された第2の干渉強度パラメータ(a)を考慮に入れて、前記第2の基地局によって前記第2の無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を示す、受信するステップと、
前記第2の基地局から第3の干渉強度パラメータ(a)を受信するステップであって、該第3の干渉強度パラメータ(a)は、前記送信された第2の信号強度パラメータ(b)及び前記第2の干渉強度パラメータ(a)に基づいて前記第2の基地局によって計算され、該第3の干渉強度パラメータ(a)は、前記送信された第2の信号強度パラメータ(b)及び前記送信された第2の干渉強度パラメータ(a)を考慮に入れて、前記第2の基地局によって前記第1の無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を示す、受信するステップと、
前記共通の信号対干渉雑音比パラメータ
【数3】

を最大化するステップであって、新たなプリコーディングベクトル(pi,opt)を取得し、前記共通の信号対干渉雑音比パラメータ
【数4】

は、前記第1のチャネル状態情報、前記第1のチャネル利得情報(h21)、前記第3の信号強度パラメータ(b)及び前記第3の干渉強度パラメータ(a)に基づき、それにより、前記プリコーディングベクトル(pi,opt)は反復的に最適化される、最大化するステップと、
を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記共通の信号対干渉雑音比パラメータ
【数5】

は、前記第1の無線デバイス及び前記第2の無線デバイスの合計レート(C)、前記第1の無線デバイス及び前記第2の無線デバイスにおける共通の信号対干渉雑音比
【数6】

又は前記第1の無線デバイス及び前記第2の無線デバイスにおける共通の信号対干渉雑音比の下限
【数7】

を表す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記共通の信号対干渉雑音比
【数8】

は以下の式によって定義され、
【数9】

ただし、SINRは前記第1の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比であり、SINRは前記第2の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記共通の信号対干渉雑音比の前記下限
【数10】

は以下の式によって定義され、
【数11】

ただし、
【数12】

及び
【数13】

であり、
【数14】

は共通の信号対干渉雑音比であり、インデックスi及びjは1又は2に等しく、iはjと等しくなく、p、pは前記第1の基地局又は前記第2の基地局のプリコーディングベクトルであり、hii、hij、hji及びhjjは基地局と無線デバイスとの間のチャネルのチャネル利得情報であり、σは雑音電力であり、Iは大きさMの恒等行列であり、
【数15】

は送信電力であり、aは干渉強度パラメータであり、bは信号強度パラメータである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記共通の信号対干渉比の前記下限
【数16】

は以下の式によって定義され、
【数17】

ただし、
【数18】

及び
【数19】

であり、
【数20】

は共通の信号対干渉雑音比であり、インデックスi及びjは1又は2に等しく、iはjと等しくなく、p、pは前記第1の基地局又は前記第2の基地局のプリコーディングベクトルであり、hii、hij、hji及びhjjは基地局と無線デバイスとの間のチャネルのチャネル利得情報であり、σは雑音電力であり、Iは大きさMの恒等行列であり、
【数21】

は送信電力であり、aは干渉強度パラメータであり、bは信号強度パラメータである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の信号強度パラメータ(b)は以下の式によって定義され、
【数22】

ただし、インデックスi及びjは1又は2に等しく、iはjと等しくなく、pは前記第1の基地局又は前記第2の基地局のプリコーディングベクトルであり、hjjは基地局と無線デバイスとの間のチャネルのチャネル利得情報である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の干渉強度パラメータ(a)は以下の式によって定義され、
【数23】

ただし、インデックスi及びjは1又は2に等しく、iはjと等しくなく、pは前記第1の基地局又は前記第2の基地局のプリコーディングベクトルであり、hijは基地局と無線デバイスとの間のチャネルのチャネル利得情報であり、σは雑音電力である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記最大化するステップは、一般化固有ベクトルのベクトル問題を解くステップによって行なわれ、データをプリコーディングするための前記プリコーディングベクトル(pi,opt)は、前記第1のチャネル状態情報、前記第1のチャネル利得情報(h21)、前記第1の信号強度パラメータ(b)及び前記第1の干渉強度パラメータ(a)に依存する行列(Dlow,i、B)の最大一般化固有値(λmax)に対応する固有ベクトルである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
解かれることになる前記一般化固有ベクトル問題は、
【数24】

であり、ただし、Dlow,iは以下の式によって定義され、
【数25】

ただし、
【数26】

であり、
【数27】

は共通の信号対干渉雑音比であり、インデックスi及びjは1又は2に等しく、iはjと等しくなく、p、pは前記第1の基地局又は前記第2の基地局のプリコーディングベクトルであり、hii、hij、hji及びhjjは基地局と無線デバイスとの間のチャネルのチャネル利得情報であり、σは雑音電力であり、Iは大きさMの恒等行列であり、
【数28】

は送信電力であり、aは干渉強度パラメータであり、bは信号強度パラメータである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
無線通信システムにおいて無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトル(pi,opt)を求めるための装置(1000)であって、
前記無線通信システムにおいて第1の無線デバイスと第1の基地局との間のチャネルの第1のチャネル状態情報を受信するように構成される無線受信機(1010)であって、該第1のチャネル状態情報は該第1の無線デバイスから該第1の基地局によって受信される、無線受信機と、
第2の無線デバイスと前記第1の基地局との間のチャネルの第1のチャネル利得情報(h21)を受信するように構成される有線受信機(1020)であって、該第1のチャネル利得情報(h21)は第2の基地局から受信され、該有線受信機(1020)は、該第2の基地局から、該第2の基地局によって該第2の無線デバイスにおいて引き起こされる信号強度を示す第1の信号強度パラメータ(b)を受信するように構成され、該有線受信機(1020)は、前記第2の基地局から、該第2の基地局によって前記第1の無線デバイスにおいて引き起こされる干渉強度を示す第1の干渉強度パラメータ(a)を受信するように更に構成される、有線受信機と、
共通の信号対干渉雑音比パラメータ
【数29】

を最大化することによって前記第1の無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトル(pi,opt)を取得するように構成されるプロセッサ(1030)であって、前記共通の信号対干渉雑音比パラメータ
【数30】

は、前記第1の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比及び前記第2の無線デバイスにおける信号対干渉雑音比に依存し、前記第1のチャネル状態情報、前記第1のチャネル利得情報(h21)、前記第1の信号強度パラメータ(b)及び前記第1の干渉強度パラメータ(a)に基づく、プロセッサと、
を備える、無線通信システムにおいて無線デバイスに送信されることになるデータをプリコーディングするためのプリコーディングベクトルを求めるための装置。
【請求項15】
コンピュータープログラムであって、コンピューター又はマイクロコントローラーにおいて実行されるときに、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有する、コンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−227907(P2012−227907A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−270278(P2011−270278)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】