説明

無線通信システムにおけるポーリング方法、基地局装置及び加入者局装置

【課題】各コマンド処理に要する時間を短縮でき、他の処理に遅延を生じさせないポーリング方法を提供する。
【解決手段】ポーリング方法は、基地局装置が、加入者局装置に対して送信するコマンドに基づき、変調の多値度を選択するステップと、基地局装置が、加入者局装置に対して選択した多値度を通知して、多値度を決定するステップと、基地局装置が、前記コマンドを、決定した多値度で変調した無線信号により加入者局装置に送信するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置が、1つ以上の加入者局装置に対して行うポーリングに関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、1対多無線通信システムのシステム構成図である。図12によると1対多無線通信システムは、1つ以上の加入者局装置1−1〜1−Nと、基地局装置2と、基地局装置2及び加入者局装置1−1〜1−Nの制御を行う制御装置3とを備えている。通常、1対多無線通信システムにおいて、基地局装置2は、各加入者局装置に対してポーリングを行う。つまり、基地局装置2は、各加入者局装置に対して定期的にコマンドを送信し、各加入者局装置からコマンドに対するレスポンスを受信して、各加入者局装置に対する制御や各加入者局装置の状況を認識する。
【0003】
ポーリングにより行う制御内容としては、送信スロットの割当てや開放といった回線接続制御に関するもの、パケット引込みや自動利得制御の高速化といった特性向上に関するもの、回線の正常性確認や試験実施といった保守運用に関するもの等がある。また、ポーリングは周期ポーリングと非周期ポーリングに分けることができる。周期ポーリングとは、基地局装置が、各加入者局装置から認証情報や監視情報といった所定の情報を定期的に収集するためのものであり、各加入者局装置に対して周期的に実行する。
【0004】
図13は、周期ポーリングのシーケンス図である。基地局装置2は、加入者局装置1−1へのコマンド送信後、加入者局装置1−1からのレスポンスを待つと共に、ポーリング間隔と呼ばれる一定時間経過後には加入者局装置1−2へのコマンド送信を行う。以後、同様に、コマンド送信を繰り返し、加入者局装置1−Nへのコマンド送信後、ポーリング間隔の経過をもって、再度、加入者局装置1−1へのコマンド送信を行う。ある加入者局装置へのコマンド送信後、再度、同じ加入者局装置へコマンドを送信するまでの時間、つまり、ポーリング間隔×加入者局装置数で表される期間を、ポーリング周期という。
【0005】
また、非周期ポーリングとは、特定の加入者局装置に対して周期ポーリング以外の処理を行うためのものであり、例えば、制御装置3が、特定の加入者局装置に対する試験制御コマンドを発した場合に、基地局装置2が当該特定の加入者局装置に対して行うポーリング等をいう。具体的には、制御装置3や保守者等から加入者局装置と制御内容が指定された信号を受信した基地局装置2は、周期ポーリングを中断し、指定された制御内容を、指定された加入者局装置に通知する非周期ポーリングを行う。基地局装置2は、当該加入者局装置からのレスポンスを受信することで、非周期ポーリングの進行状況を把握し、加入者局装置において指定された制御が完了することで、周期ポーリングを再開する。図10は、上述した、従来技術によるポーリング方法の状態遷移図である。
【0006】
図11は、基地局装置2と各加入者局装置が、時分割複信(TDD)方式により通信する場合の無線フレームである。無線フレームは、基地局装置2から加入者局装置方向への伝送に使用する下り領域と、加入者局装置から基地局装置方向への伝送に使用する上り領域とを有し、下り領域は、下りヘッダ領域と、複数のスロットからなる下りユーザデータ領域とを含み、上り領域は、上りヘッダ領域と、複数のスロットからなる上りユーザデータ領域とを含んでいる。
【0007】
下りヘッダ領域は、キャリア再生やクロック再生等のためのプリアンブル、基地局番号、下り保守運用領域及び誤り訂正符号を含み、下り保守運用領域は、加入者局番号と保守運用に関するコマンドデータを含んでいる。また、上りヘッダ領域は、プリアンブル、上り保守運用領域及び誤り訂正符号を含み、上り保守運用領域は、加入者局番号と保守運用に関するレスポンスデータを含んでいる。加入者局装置は、受信した無線フレームの下り保守運用領域に自装置の加入者局番号が含まれている場合には、下り保守運用領域に含まれているコマンドデータで指定された処理を実行し、上り保守運用領域に、自装置を示す加入者局番号と、処理に対するレスポンスデータを設定して基地局装置2に送信する。
【0008】
無線フレームの下り及び上り保守運用領域は、上述した通り、回線の正常性確認や、試験実施といった保守運用に係るポーリングに使用され、これら情報は、確実に送受信が行うことに重点が置かれる。したがって、特許文献1に記載されている様に、下り及び上り保守運用領域の変調には、無線区間の影響を考慮して、低多値度のものが使用される。
【0009】
【特許文献1】特開2004−356808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ポーリングで基地局装置から加入者局装置に送信されるコマンドや、加入者局装置から基地局装置に送信されるレスポンスには、データ量の多いものが存在し、この様なコマンド又はレスポンスの送信には、保守運用領域の変調が低多値度であるため、一度のコマンド・レスポンスのやり取りでは完了せず、よって、コマンド処理に要する時間が増大するという問題がある。また、一度のコマンド・レスポンスのやり取りでは完了しないため、例えば、他の緊急性の高いコマンドを送信する必要が生じたとしても、直ぐ送信できないという問題もある。
【0011】
したがって、本発明は、従来技術より各コマンド処理に要する時間を短縮でき、他の処理に遅延を生じさせないポーリング方法と、該方法を実行する基地局装置及び加入者局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明におけるポーリング方法によれば、
基地局装置が、加入者局装置に対して送信するコマンドに基づき、変調の多値度を選択するステップと、基地局装置が、加入者局装置に対して選択した多値度を通知して、多値度を決定するステップと、基地局装置が、前記コマンドを、決定した多値度で変調した無線信号により加入者局装置に送信するステップとを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明のポーリング方法における他の実施形態によれば、
多値度の決定は、選択した多値度以下の多値度から、基地局装置と加入者局装置間の無線回線品質に応じて決定することも好ましい。
【0014】
また、本発明のポーリング方法における他の実施形態によれば、
多値度を決定するステップは、基地局装置が、選択した多値度を、加入者局装置に通知するステップと、加入者局装置が、加入者局装置にて測定した無線回線品質、又は、基地局が選択した多値度以下であり、加入者局装置にて測定した無線回線品質に応じて決定した多値度を、基地局装置に通知するステップとを含んでいることも好ましい。
【0015】
更に、本発明のポーリング方法における他の実施形態によれば、
基地局装置は、コマンドと多値度の対応関係を示すデータベースを参照することで、変調の多値度を選択することも好ましい。
【0016】
本発明における基地局装置によれば、
加入者局装置に対して送信するコマンドに基づき、変調の多値度を選択する手段と、加入者局装置に対して選択した多値度を通知して、多値度を決定する手段と、前記コマンドを、決定した多値度で変調した無線信号により加入者局装置に送信する手段とを備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明の基地局装置における他の実施形態によれば、
多値度を決定する手段は、選択した多値度の通知に対する加入者局装置からの応答に含まれる多値度を、コマンド送信に使用する多値度として決定することも好ましい。
【0018】
また、本発明の基地局装置における他の実施形態によれば、
多値度を決定する手段は、加入者局装置が測定した無線回線品質に基づき、選択した多値度以下の多値度を、コマンド送信に使用する多値度として決定することも好ましい。
【0019】
本発明における加入者局装置によれば、
基地局装置から、ポーリングにおけるコマンドに使用する変調の多値度の通知を受信して、使用する多値度を決定する手段と、基地局装置からの無線信号に含まれる、決定した多値度で変調されたコマンドを受信する手段とを備えていることを特徴とする。
【0020】
本発明の加入者局装置における他の実施形態によれば、
多値度を決定する手段は、通知された多値度以下の多値度であり、加入者局装置において測定した無線回線品質に応じた多値度を、基地局装置からのコマンドに使用する多値度として決定し、決定した多値度を基地局装置に通知することも好ましい。
【0021】
また、本発明の加入者局装置における他の実施形態によれば、
多値度を決定する手段は、基地局装置からの多値度の通知に対して、加入者局装置において測定した無線回線品質を基地局装置に通知し、基地局装置への無線回線品質の通知に対して基地局装置から通知される多値度を、基地局装置からのコマンドに使用する多値度として決定することも好ましい。
【発明の効果】
【0022】
コマンドに応じて変調の多値度を変えることにより、データ量の大きいポーリングの処理時間を低減させることができる。また、コマンド種別と多値度の関係をデータベースとして保持することで、将来の変更に柔軟に対応することが可能になる。更に、多値度の決定に無線回線品質を利用することで、安定したポーリング処理と、処理時間の低減を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の実施形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。図12は、本発明による基地局装置2及び加入者局装置1−1〜1―Nを含む無線通信システムのシステム構成図であり、制御装置3は、基地局装置2に対して、特定の加入者局装置に対する制御を指示し、基地局装置2は、制御装置3の指示に従い、周期ポーリングを中断し、制御装置3により指定された特定の加入者局装置に対する非周期ポーリングを実行する。
【0024】
図9は、本実施形態におけるポーリング方法を説明する状態遷移図である。図9に示す様に、非周期ポーリングには、低多値度の変調方法を使用する状態と、高多値度の変調方法を使用する状態の2つが存在する。各コマンドはいずれかの変調方法と対応づけられており、制御装置から受信した非周期ポーリングのためのコマンドが、低多値度に対応づけられている場合には、低多値度による非周期ポーリングに遷移し、高多値度に対応づけられている場合には、高多値度による非周期ポーリングに遷移する。これにより、例えば、加入者局装置のファームウェアの変更等、データ量の大きいコマンドを高多値度に対応付けておくことで、処理の完了に要する期間を短縮することできる。
【0025】
なお、以下では、低多値度と高多値度の2種類の変調方法を選択して使用する形態にて説明するが、3種類以上の多値度を選択して使用することももちろん可能である。
【0026】
図11は、本発明による基地局装置2及び各加入者局装置が使用する無線フレームである。なお、図11においては、時分割複信(TDD)方式を使用する場合の無線フレームを示しているが、本発明は周波数分割複信(FDD)方式にも適用できるものである。図11において、無線フレームは、基地局装置2から加入者局装置方向への伝送に使用する下り領域と、加入者局装置から基地局装置方向への伝送に使用する上り領域とを有し、下り領域は、下りヘッダ領域と、複数のスロットからなる下りユーザデータ領域とを含み、上り領域は、上りヘッダ領域と、複数のスロットからなる上りユーザデータ領域とを含んでいる。
【0027】
下りヘッダ領域は、キャリア再生やクロック再生等のためのプリアンブル、基地局番号、下り保守運用領域及び誤り訂正符号を含み、下り保守運用領域は、加入者局番号と保守運用に関するコマンドデータを含んでいる。また、上りヘッダ領域は、プリアンブル、上り保守運用領域及び誤り訂正符号を含み、上り保守運用領域は、加入者局番号と保守運用に関するレスポンスデータを含んでいる。加入者局装置は、受信した無線フレームの下り保守運用領域に自装置の加入者局番号が含まれている場合、下り保守運用領域に含まれているコマンドデータで指定された処理を実行し、上り保守運用領域に、自装置を示す加入者局番号と、実行した処理に対するレスポンスデータを含む無線フレームを基地局2に送信する。
【0028】
本発明においては、上り及び下り保守運用領域の伝送に使用する変調の多値度が可変であり、上述した様に、非周期ポーリングにおけるコマンド内容に応じて制御される。
【0029】
図1は、本発明による基地局装置2のブロック図である。図1によると、基地局装置2は、信号識別部201と、非周期ポーリング受付部202と、コマンド判定部203と、コマンドデータベース204と、コマンド・レスポンス処理部21と、コマンド送信部206と、無線送受信部207と、レスポンス受付部208と、非周期ポーリング応答部210と、主信号処理部211とを備えている。また、コマンド・レスポンス処理部21は、コマンド処理部205と、レスポンス処理部209とを含んでいる。
【0030】
信号識別部201は、ネットワーク側から受信する信号が、制御装置3による加入者局装置への制御指示であるか、加入者局装置への主信号であるかを判定し、制御指示である場合には、非周期ポーリング受付部202に出力し、主信号である場合には主信号処理部211に出力する。
【0031】
非周期ポーリング受付部202は、制御指示をコマンド判定部203に出力し、コマンド判定部203は、制御装置3が指示した制御に使用するコマンドに基づき非周期ポーリングで使用する変調方法の多値度、即ち、低多値度又は高多値度を選択し、コマンドと、対象の加入者局装置を特定する情報と、選択した多値度をコマンド・レスポンス処理部21に出力する。多値度の選択には、コマンドと多値度との対応関係を示すデータを有するコマンドデータベース204を参照する。
【0032】
コマンド・レスポンス処理部21は、あらかじめ設定された内容に基づき、配下にある加入者局装置に対して周期ポーリングを実行している。コマンド・レスポンス処理部21は、コマンド判定部203より非周期ポーリングのコマンド等の情報を受信した場合、周期ポーリングを中断し、非周期ポーリングの制御を実行する。具体的には、まず、コマンド送信部206を制御し、制御対象の加入者局装置の加入者局番号と、選択した多値度と、コマンドを識別する情報を含み、周期ポーリングで使用しているものと同じ低多値度で変調された下り保守運用領域を含む無線フレームを、非周期ポーリングの開始を通知するために無線送受信部207から送信させる。
【0033】
コマンド・レスポンス処理部21は、この無線フレームに対するレスポンスを、制御対象加入者局装置から受信することで、コマンド判定部203が選択した多値度を、実際に使用する多値度として決定する。以後、コマンド・レスポンス処理部21のコマンド処理部205は、コマンドデータと、制御対象の加入者局装置の加入者局番号を含み、コマンド判定部203が選択した多値度の変調方法で変調した下り保守運用領域を含む無線フレームを、無線送受信部207から送信させる。
【0034】
また、レスポンス受付部208は、受信無線フレームに含まれる上り保守運用領域に含まれる加入者局番号と、レスポンデータを取り出して、コマンド・レスポンス処理部21に出力する。コマンド・レスポンス処理部21のレスポンス処理部209は、加入者局番号に基づきどのコマンドに対するレスポンスであるかを判定し、非周期ポーリングのレスポンスデータを受信した場合には、非周期ポーリング応答部210経由で、レスポンスデータを制御装置3に送信する。
【0035】
図2は、本発明による加入者局装置のブロック図である。図2によると加入者局装置は、無線送受信部101と、コマンド受付部102と、コマンド・レスポンス処理部11と、レスポンス送信部110と、主信号処理部111とを備えている。また、コマンド・レスポンス処理部11は、コマンド処理部105と、レスポンス処理部109とを含んでいる。
【0036】
無線送受信部101は、基地局装置2との無線フレームの送受を行い、無線フレームの下り保守運用領域に含まれるコマンドデータと、加入者局番号を、コマンド受付部102に出力し、ユーザデータ領域に含まれるデータを、主信号処理部111に出力する。
【0037】
コマンド受付部102は、下り保守運用領域に自装置の加入者局番号が含まれる場合に、その内容をコマンド判定部103に出力する。コマンド判定部103は、例えば、非周期ポーリングにおいて、無線フレームの下り保守運用領域に使用する変調の多値度と、上り保守運用領域に使用する変調の多値度を独立して決定する場合に設けられる。コマンド判定部103は、受信した無線フレームが自装置に対する非周期ポーリングの開始を通知するものである場合、含まれるコマンドを識別する情報に基づき上り保守運用領域で使用する変調方法の多値度を選択する。選択した多値度は、下り方向と同様、周期ポーリングで使用しているものと同じ低多値度の変調方法を上り保守運用領域に適用した無線フレームで基地局装置2に伝えられる。なお、上り下りにて同じ多値度を使用する場合には、コマンド判定部103及びコマンドデータベース104は省略できる。
【0038】
コマンド・レスポンス処理部11のコマンド処理部105は、受信したコマンドデータに応じた処理を行い、レスポンス処理部109は、処理に対する応答であるレスポンスデータをレスポンス送信部110に出力し、レスポンス送信部110は、処理に対するレスポンスデータと、自装置を表す加入者局番号を含み、基地局装置2又は自装置が選択した多値度の変調方法で変調した上り保守運用領域を含む無線フレームを、無線送信部101から送信させる。
【0039】
図5は、本発明による基地局装置2における処理フロー図である。基地局装置2は、通常時、周期ポーリングを実施(S51)し、制御装置3から非周期ポーリングの指示を受けた場合(S52)、コマンド種別を判定(S53)し、コマンド種別が低多値度に対応している場合には、低多値度の変調方法を用いて対象となる加入者局装置にコマンドを送信(S54)し、コマンド種別が高多値度に対応している場合には、高多値度の変調方法を用いて対象となる加入者局装置にコマンドを送信(S56)する。いずれの変調方法を使用したとしても、加入者局装置における処理が完了後(S55及びS57)、周期ポーリングを再開する。
【0040】
図6は、本発明によるポーリング方法のシーケンス図である。図6において、点線は、周期ポーリングを、実線は非周期ポーリングを、更に、実線の細線は保守運用領域に低多値度の変調方法が、実線の太線は保守運用領域に高多値度の変調方法が使用されていることを示している。なお、図6は、上り及び下りの保守運用領域に同一の多値度を使用する場合を示している。
【0041】
基地局装置2は、各加入者局装置に対して、通常時、周期ポーリングを実施する(S61)。制御装置3から、例えば、加入者局1−1への、高多値度に対応する制御指示を受信した場合、基地局装置2は、周期ポーリングを中止し、周期ポーリングで使用しているものと同じ低多値度の変調方式を下り保守運用領域に使用し、高多値度変調による非周期ポーリングの開始を加入者局装置1−1に通知する(S62)。以後の、加入者局装置1−1に対する非周期ポーリングは、その保守運用領域に高多値度変調を適用して行い(S63)、非周期ポーリングの終了に伴い(S64)、低多値度による通常の周期ポーリングを再開する(S65)。なお、上り下りの保守運用領域で異なる多値度を使用する場合にはS62でそれぞれ通知し合う。
【0042】
以上、コマンド種別に基づき保守運用領域に使用する変調の多値度を異ならせることで、データ量の大きいポーリングの処理時間を低減させることができる。また、コマンド種別と多値度の関係をデータベースとして保持することで、将来の変更に柔軟に対応することが可能になる。
【0043】
図3及び4は、本発明の他の実施形態における基地局装置2及び加入局装置のブロック図であり、図1及び図2と同一構成要素には同じ符号を付与して説明は省略する。図3によると、基地局装置2は、無線品質処理部212を更に備え、加入者局装置は、無線品質処理部112を更に備えている。
【0044】
無線品質処理部112及び212は、多値度の決定に無線回線の品質を考慮するためのものである。即ち、本実施形態においては、高多値度を使用するコマンドであっても、その時点における無線回線の品質がある閾値以下である場合には、低多値度の変調を使用する。なお、複数の多値度を利用している場合においては、コマンドに基づきコマンド判定部203や、103が選択した多値度以下の多値度を、無線回線品質に応じて、コマンド・レスポンス処理部11や22が決定する。無線区間の品質測定には、無線信号の受信レベルや、誤り訂正符号における誤り訂正量等を使用することができ、受信レベル値や、誤り訂正量や、誤り訂正量に基づき求めたビットエラーレート等を品質情報とすることができる。また、図11に示す無線フレームのユーザデータ領域のあるスロットを無線区間の品質測定用に使用することもできる。なお、上り及び下りのユーザデータ領域は、使用する変調の多値度により幾つかの領域に更に分割されるが、無線区間の品質測定には、高多値度のスロットを使用することが望ましい。
【0045】
図7は、本実施形態における基地局装置2の処理フロー図である。基地局装置2は、通常時、周期ポーリングを実施(S71)し、制御装置3から非周期ポーリングの指示を受けた場合(S72)、コマンド種別を判定(S73)し、コマンド種別が低多値度に対応している場合には、低多値度の変調方法を用いて対象となる加入者局装置にコマンドを送信(S74)し、加入者局装置における処理が完了後(S75)、周期ポーリングを再開する。一方、コマンド種別が高多値度に対応している場合には、無線回線品質を調べ(S76)、品質が所定の閾値より大きく高多値度の使用が可能である場合には、高多値度の変調方法を用いて対象となる加入者局装置にコマンドを送信(S77)し、品質が所定の基準を満足しない場合には、低多値度の変調方法を用いて対象となる加入者局装置にコマンドを送信(S78)する。加入者局装置における処理が完了するまで、非周期ポーリングを行うたびに、S76での多値度の判定を行い、加入者局装置における処理が完了後(S79)、周期ポーリングを再開する。なお、基地局における無線回線品質の判定は、後述する様に、加入者局装置からの通知に基づく。
【0046】
図8は、本発明の他の実施形態におけるポーリング方法のシーケンス図である。図8において、点線は、周期ポーリングを、実線は非周期ポーリングを、更に、実線の細線は保守運用領域に低多値度の変調方法が、実線の太線は保守運用領域に高多値度の変調方法が使用されていることを示している。また、図8に示すシーケンス図においては、加入者局装置の無線品質処理部112が、無線区間の品質判定を行い、判定結果に基づき使用する多値度の決定を行って基地局装置に通知する形態を示している。
【0047】
基地局装置2は、各加入者局装置に対して、通常時、周期ポーリングを実施する(S81)。制御装置3から、例えば、加入者局1−1への、高多値度に対応する制御指示を受信した場合、基地局装置2は、周期ポーリングを中止し、初期値である周期ポーリングに使用する多値度の変調方式、つまり、低多値度の変調方式を下り保守運用領域に使用し、高多値度変調による非周期ポーリングの開始を加入者局装置1−1に通知する。しかしながら、加入者局装置1−1は、その無線区間の品質が所定の基準を満足しないため、基地局装置2に低多値度の使用を通知する(S82)。基地局装置2は、加入者局装置1−1からの指示に従い、保守運用領域に低多値度変調を適用してポーリングを行う。無線区間の品質が改善され、所定の基準を満足することとなったため、加入者局装置1−1は、このポーリングに対する応答において、高多値度の使用を基地局装置2に通知する(S83)。以後、加入者局装置1−1は、非周期ポーリングの各レスポンスにおいて、無線区間の品質に基づく多値度の指定を基地局装置2に対して行い、基地局装置2は、次の非周期ポーリングにおいて指定された多値度を使用する。その後、非周期ポーリングの終了に伴い(S85)、低多値度による通常の周期ポーリングを再開する(S86)。
【0048】
なお、多値度の決定を基地局装置2が行う場合には、加入者局装置が、その無線品質処理部112において、ビットエラーレート等の品質情報を測定して基地局装置2に通知し、基地局装置2の無線品質処理部212は、通知された品質情報に基づき次に使用する多値度を決定し、コマンド処理部205に指示する。また、基地局装置2において多値度を決定する場合には、まず、変更前の多値度を保守運用領域に使用した無線フレームを用いて、加入者局装置に対して変更後の多値度の通知を行い、次の無線フレームから変更後の多値度を適用することになる。なお、本実施形態においても上り下りの保守運用領域で異なる多値度を使用することが可能であり、その場合には、上り方向の無線区間の品質測定は、基地局装置2の無線品質処理部212が行う。なお、下りの無線区間の品質を、上りの無線区間の品質から推定し、上りの無線区間の品質を、下りの無線区間の品質から推定しても良い。つまり、基地局装置2が、その無線品質処理部212において無線回線品質を判定して下り方向の多値度を決定しても良い。
【0049】
以上、本実施形態においては、保守運用領域に使用する変調の多値度の決定に、コマンド種別に加えて無線区間の品質を考慮するため、安定したポーリング処理と、処理時間の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による基地局装置のブロック図である。
【図2】本発明による加入者局装置のブロック図である。
【図3】本発明の他の実施形態における基地局装置のブロック図である。
【図4】本発明の他の実施形態における加入者局装置のブロック図である。
【図5】本発明による基地局装置の処理フロー図である。
【図6】本発明によるポーリング方法のシーケンス図である。
【図7】本発明の他の実施形態における基地局装置の処理フロー図である。
【図8】本発明の他の実施形態におけるポーリング方法のシーケンス図である。
【図9】本発明によるポーリング方法の状態遷移図である。
【図10】従来技術によるポーリング方法の状態遷移図である。
【図11】基地局装置と加入者局装置間で伝送される無線フレームを示す図である。
【図12】1対多無線通信システムのシステム構成図である。
【図13】周期ポーリングのシーケンス図である。
【符号の説明】
【0051】
1−1〜1−N 加入者局装置
2 基地局装置
3 制御装置
11、21 コマンド・レスポンス処理部
101、207 無線送受信部
102 コマンド受付部
103、203 コマンド判定部
104、204 コマンドデータベース
105、205 コマンド処理部
109、209 レスポンス処理部
110 レスポンス送信部
111、211 主信号処理部
112、212 無線品質処理部
201 信号識別部
202 非周期ポーリング受付部
205 コマンド処理部
206 コマンド送信部
208 レスポンス受付部
210 非周期ポーリング応答部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置が、加入者局装置に対して送信するコマンドに基づき、変調の多値度を選択するステップと、
基地局装置が、加入者局装置に対して選択した多値度を通知して、多値度を決定するステップと、
基地局装置が、前記コマンドを、決定した多値度で変調した無線信号により加入者局装置に送信するステップと、
を備えているポーリング方法。
【請求項2】
多値度の決定は、選択した多値度以下の多値度から、基地局装置と加入者局装置間の無線回線品質に応じて決定する、
請求項1に記載のポーリング方法。
【請求項3】
多値度を決定するステップは、
基地局装置が、選択した多値度を、加入者局装置に通知するステップと、
加入者局装置が、加入者局装置にて測定した無線回線品質、又は、基地局が選択した多値度以下であり、加入者局装置にて測定した無線回線品質に応じて決定した多値度を、基地局装置に通知するステップと、
を含んでいる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基地局装置は、コマンドと多値度の対応関係を示すデータベースを参照することで、変調の多値度を選択する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
加入者局装置に対して送信するコマンドに基づき、変調の多値度を選択する手段と、
加入者局装置に対して選択した多値度を通知して、多値度を決定する手段と、
前記コマンドを、決定した多値度で変調した無線信号により加入者局装置に送信する手段と、
を備えている基地局装置。
【請求項6】
多値度を決定する手段は、選択した多値度の通知に対する加入者局装置からの応答に含まれる多値度を、コマンド送信に使用する多値度として決定する、
請求項5に記載の基地局装置。
【請求項7】
多値度を決定する手段は、加入者局装置が測定した無線回線品質に基づき、選択した多値度以下の多値度を、コマンド送信に使用する多値度として決定する、
請求項5に記載の基地局装置。
【請求項8】
基地局装置から、ポーリングにおけるコマンドに使用する変調の多値度の通知を受信して、使用する多値度を決定する手段と、
基地局装置からの無線信号に含まれる、決定した多値度で変調されたコマンドを受信する手段と、
を備えている加入者局装置。
【請求項9】
多値度を決定する手段は、通知された多値度以下の多値度であり、加入者局装置において測定した無線回線品質に基づき決定した多値度を、基地局装置からのコマンドに使用する多値度として決定し、決定した多値度を基地局装置に通知する、
請求項8に記載の加入者局装置。
【請求項10】
多値度を決定する手段は、基地局装置からの多値度の通知に対して、加入者局装置において測定した無線回線品質を基地局装置に通知し、基地局装置への無線回線品質の通知に対して基地局装置から通知される多値度を、基地局装置からのコマンドに使用する多値度として決定する、
請求項8に記載の加入者局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−311833(P2008−311833A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156205(P2007−156205)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】