説明

無線通信システム

【課題】アンテナ設備を含めた基地局等の正常性を確認する。
【解決手段】基地局101は、無線端末の送受信機能を有する端末機能部124を有する。端末機能部124から、基地局101のアンテナを介して、基地局102又は103の信号処理部に無線信号を送信し、基地局101のアンテナと、基地局102のアンテナ及び信号処理部122とを介して(経路192)、端末機能部124とテストサーバ112との呼接続処理を実行する。呼接続の成功又は失敗に従い、基地局101のアンテナ、基地局102又は103の正常又は異常を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に、移動体通信システムにおいて、無線基地局及びネットワークの正常性を診断するための無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システム又は無線通信システムを運用する上で、システムの安定性は重要な要素のひとつである。システムを安定的に動作させるためには、システム運用停止となる障害を発生させないことに加えて、障害が発生した場合には迅速にその障害を検出し、復旧させることが求められる。従って、無線基地局の正常性確認方法は極めて重要である。また、障害が発生した場合は、ユーザへの影響度が重要である。例えば、無線基地局装置にて何らかの障害が発生した場合、その障害がユーザへ影響があるかないかでは重要度が異なり、対応も変わってくる。
【0003】
移動体通信システム又は無線通信システムは、広いサービスエリアをセルと呼ばれる多数の小さなエリアに分割し、各セル内に無線基地局装置を配置する。無線基地局装置はネットワークに接続されており、ユーザ端末は、当該端末が該当するセルの無線基地局装置と無線を介して通信を行うことで、ネットワークに接続された別端末と通信を行うことが可能となる。
【0004】
無線基地局装置及びネットワークを含めた正常性をリモートかつオンラインで確認する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、基地局の基地局無線装置とアンテナの間に方向性結合器が取り付けれ、高周波ケーブルを介して試験装置と接続されている。基地局の試験の際にはオペレーションセンタの固定電話から試験装置の携帯電話へダイヤルし音声通信することで基地局及びネットワークの試験を行う方法である。また、同様の試験方法を、音声通信ではなくパケットデータ呼処理機能の正常性確認方法に発展させた技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、本出願人により、基地局に備えられた端末機能部を用いて、自基地局の空中線障害試験、受信機障害試験、送信機障害試験を行う無線試験装置が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2000−332674号公報
【特許文献2】特開2002−271280号公報
【特許文献3】特開2005−151189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2に記載の技術では、無線基地局装置とアンテナの間に方向性結合器を接続し、試験端末を接続しているため、無線基地局装置のアンテナ設備を含めた正常性の確認はできないという課題がある。アンテナ設備を含めた正常性の確認ができないことで、試験の結果、正常と判断した場合でもアンテナ設備に障害があり、システム運用停止となる場合がある。この課題を解決するため、アンテナ設備を含めた無線基地局装置及びネットワークの正常性試験方法を確立する必要がある。また、各無線基地局装置に試験端末を用意する必要があるため、1台あたりの無線基地局装置のコストが高くなる。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、アンテナ設備を含めた無線基地局装置及びネットワークの正常性、つまり、システム全体の正常性を確認する無線通信システムを提供することを目的とする。本発明は、システム運用中であっても正常性を確認できる方法及びシステムを提供することを目的とする。また、本発明は、システム全体の正常性確認を安価に実現することを目的のひとつとする。また、本発明は、端末機能部を搭載する無線基地局装置を減らすことを可能とし、無線基地局装置のコストを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、ある無線基地局装置にTAT(端末機能部)という試験端末を搭載し、呼接続処理を行う。TATを搭載している無線基地局装置と接続するのではなく、隣接する無線基地局装置と接続することで、アンテナ設備を含めた正常性の確認を行う。無線基地局装置に搭載されたTATで隣接する複数の無線基地局装置の正常性試験を実施するので、各無線基地局装置にTAT相当の試験端末をそれぞれ搭載する必要が無く、コストを削減することができる。
TATは、一般端末と同じ呼処理機能をもつ試験端末である。一般端末と同じ呼処理機能をもつことで、一般サービスへの影響なく呼接続を行うことができる。
【0009】
本発明の第1の解決手段によると、
第1のアンテナと、前記第1のアンテナに接続され無線端末の送受信機能を有する端末機能部と、を有する第1の基地局と、
第2のアンテナに接続された信号処理部を有する第2の基地局と、
前記端末機能部と呼接続するためのテストサーバと、
前記第1の基地局の第1のアンテナ及び前記第2の基地局の正常又は異常を判断するための試験を行う保守端末と
を備え、
前記保守端末は、
正常又は異常の判断対象となる、前記第1の基地局の第1の基地局識別子と、前記第2の基地局の第2の基地局識別子とを指定し、
指定された第1の基地局識別子が示す前記第1の基地局に、指定された第2の基地局識別子を送信し、
前記第1の基地局は、
前記保守端末から第2の基地局識別子を受信し、
前記端末機能部から、前記第1のアンテナを介して、受信された第2の基地局識別子により特定される前記第2の基地局の前記信号処理部に無線信号を送信し、前記第1のアンテナと該信号処理部とを介して、前記端末機能部と前記テストサーバとの呼接続処理を実行し、
呼接続の成功又は失敗を示す接続結果を前記端末機能部により判定し、
該接続結果を前記保守端末に送信し、
前記保守端末は、
前記第1の基地局から該接続結果を受信し、
該接続結果を表示部に表示し、又は、記憶部に記憶し、又は、該接続結果に従い前記第1の基地局の第1のアンテナ及び前記第2の基地局の正常又は異常を判断する無線通信システムが提供される。
【0010】
本発明の第2の解決手段によると、
セクタ毎の第1のアンテナと、無線端末の送受信機能を有する端末機能部と、該端末機能部とセクタ毎の前記第1のアンテナのひとつとを接続するスイッチとを有する第1の基地局と、
第2のアンテナに接続されたセクタ毎の信号処理部を有する第2の基地局と、
前記端末機能部と呼接続するためのテストサーバと、
前記第1の基地局の第1のアンテナ及び前記第2の基地局の正常又は異常を判断するための試験を行う保守端末と
を備え、
前記保守端末は、
正常又は異常の判断対象となる、前記第1の基地局の第1の基地局識別子及び第1のセクタ識別子と、前記第2の基地局の第2の基地局識別子及び第2のセクタ識別子とを指定し、
指定された第1の基地局識別子に従い、前記第1の基地局に、指定された第1のセクタ識別子と、第2の基地局識別子と、第2のセクタ識別子とを送信し、
前記第1の基地局は、
前記保守端末から、第1のセクタ識別子と第2の基地局識別子と第2のセクタ識別子とを受信し、
受信された第1のセクタ識別子に従い、前記スイッチにより第1のセクタ識別子が示すセクタの前記第1のアンテナと前記端末機能部とを接続し、
前記端末機能部から、接続された第1のアンテナを介して、受信された第2の基地局識別子及び第2のセクタ識別子により特定される前記第2の基地局の前記信号処理部に無線信号を送信し、前記第1のアンテナと該信号処理部とを介して、前記端末機能部と前記テストサーバとの呼接続処理を実行し、
呼接続の成功又は失敗を示す接続結果を前記端末機能部により判定し、
該接続結果を前記保守端末に送信し、
前記保守端末は、
前記第1の基地局から該接続結果を受信し、
該接続結果を表示部に表示し、又は、記憶部に記憶し、又は、該接続結果に従い前記第1の基地局の第1のアンテナ及び前記第2の基地局の正常又は異常を判断する無線通信システムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、アンテナ設備を含めた無線基地局装置及びネットワークの正常性、つまり、システム全体の正常性を確認する無線通信システムを提供することができる。本発明によると、システム運用中であっても正常性を確認できる方法及びシステムを提供することができる。また、本発明によると、システム全体の正常性確認を安価に実現することができる。また、本発明によると、TATを搭載する無線基地局装置を減らすことを可能とし、無線基地局装置のコストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本実施の形態に係わる無線基地局装置を無線基地局通信網の構成ならびにこれらの運用方法について、1xEV−DO(1x Evolution Data Only)システムを例に図面を用いて説明する。なお、システムは、1xEV−DOに限らず、適宜のシステムでもよい。
【0013】
図1は、1xEV−DOシステムにおける無線基地局試験システムの構成図である。また、図2、図3は試験時の無線信号経路の説明図である。図1〜3を参照して、本実施の形態についての概略を説明する。
無線基地局試験システムは、信号処理部121と試験機能部124とを搭載する基地局(無線基地局装置、第1の基地局)101と、信号処理部122又は123を搭載する基地局(第2の基地局)102、103と、IP−SW(IPスイッチ)107と、PCF−SC(Packet Control Function−Session Control、無線パケット制御装置)109と、AN−AAA(Access Network−Authentication、Authorization、and Accounting、認証装置)106と、保守端末110と、テストサーバ112とを備える。また、試験機能部124を搭載している基地局の数は1つに限らず、適宜の数の基地局を備えてもよい。また、試験機能部を搭載していない基地局の数は2つに限らず、ひとつでもよいし適宜の数の基地局を備えてもよい。例えば、隣接する基地局の少なくともひとつに、試験機能部を有するようにしてもよい。なお、全ての基地局が試験機能部を有していてもよい。
【0014】
基地局101は、アンテナに接続される信号処理部121と、試験機能部124を有する。基地局102、103は、例えば、基地局101と同一構成の信号処理部121を有する。図中、端末181は基地局101と主信号経路141を用いて、端末182は基地局102と主信号経路142を用いて、端末183は基地局装置103と主信号経路143を用いて無線又は有線の他の端末184と通信することができる。図中、基地局101、102、103を取り囲む円は、基地局101、102、103のセル範囲を視覚化したものである。
【0015】
IP−SW107は、基地局101、102,103等に接続され、パケットのスイッチングなどを行う。AN−AAA106は端末認証用のサーバであり、ユーザ情報の登録・管理等の機能を有する。保守端末110は、管理網108、IP−SW107を経由して、基地局101、102、103に接続され、各基地局の監視・制御をリモートにて行う機能を有する。PCF−SC109は無線パケット制御装置であり、セッション情報の管理、端末認証、無線パケットの制御及び終端等の機能を有する。テストサーバ112は試験用のサーバであり、基地局101内部の試験機能部124がネットワーク網(データ網)111を経由して接続する。
【0016】
また、図2に示すように基地局101に搭載されている試験機能部124は、基地局101の信号処理部121を経由し、信号経路191を用いてテストサーバ112と通信することができる。これにより、基地局101の正常性の確認を行うことができる。しかし、この場合は基地局101のアンテナは経由していないので、アンテナついては未診断である。
【0017】
また、図3に示すように、基地局101に搭載されている試験機能部124は、基地局101を介してテストサーバ112等と通信可能なだけでなく、基地局101のアンテナ、基地局102又は103を経由した経路192を用いてテストサーバ112と通信することができる。この場合は基地局101のアンテナ、基地局102又は103のアンテナを経由し、テストサーバ112と接続していることから、アンテナ設備を含めた無線基地局装置及びネットワークの正常性の確認を行うことができる。
【0018】
図4は、基地局101の詳細構成図である。基地局101は、信号処理部121と、試験機能部124とを備える。基地局101の内部の信号処理部121は、3つのセクタに対応するセクタ毎の信号処理部(セクタ1 信号処理部131、セクタ2 信号処理部132、セクタ3 信号処理部133)と、回路インターフェース134と、基地局制御部135とを有する。なお、図5の例は、1セクタあたり、1系統の送信機と2系統の受信機(0系と1系)とを備え、ダイバーシティ受信を可能とする3セクタ構成の基地局を例にし、図示している。なお、セクタ、及び、送信系、受信系は、これに限らず適宜の数を備えてもよい。なお、セクタは、1セクタであってもよい。
【0019】
セクタ1 信号処理部131は、下り信号182と上り信号183を分離するDUP(デュプレクサ)143と、アンテナ171からの上り無線信号の通過帯域を制限するBPF(通過帯域フィルタ)144と、1系統の送信機145及び2系統の受信機(0系受信機146・1系受信機147)とを備える。また、変調器148と、復調器149と、CPL(方向性結合器)141、142とを備える。変調機148、復調機149はデータの変換及び復調を行う。CPL141は、DUP143とアンテナ170とSW151(端末機能部137への経路)とを相互に接続する。CPL142は、アンテナ171とBPF144とSW152(端末機能部137への経路)とを相互に接続する。なお、セクタ1 信号処理部131の内部構成のみを図示しているが、セクタ2 信号処理部132及びセクタ3 信号処理部133は、セクタ1 信号処理部131と同様とすることができるため、説明を省略する。
【0020】
回路インターフェース部134は、基地局101とIP−SW107とのインターフェースである。基地局制御部135は、基地局101の監視・制御機能を有する。例えば、基地局制御部135は、CPU161とROM162とRAM163とを有する。
【0021】
試験機能部124は、試験機能制御部136と、端末機能部137と、例えば3個のスイッチ151、152、154と、DUP153とを有する。なお、スイッチはこれに限らず適宜の数を有してもよい。また、端末機能部137の下り減衰器155と、上り減衰器156とを更に有してもよい。端末機能部137は、一般ユーザが使用する端末104と同等の機能を有する試験用端末である。例えば端末機能部137は、送信機157と受信機158とを有する。試験機能制御部136は、端末機能部137の制御を行い、また、試験機能部124に搭載される3個のスイッチ151、152、154の設定、下り減衰器155及び上り減衰器156の減衰量の設定を行う機能を有する。なお、試験機能制御部136は、試験機能部124の各部と接続されている。SW151及びSW152は、試験するセクタを切り替える機能を有する。また、スイッチ154は、基地局101の0系受信機146を通る経路か、1系受信機147を通る経路かを切り替える。
【0022】
図5は、基地局102、103の詳細構成図である。基地局102、103の信号処理部122、123は、セクタに対応するセクタごとの信号処理部1131、1132、1133と、回路インターフェース部1134と基地局制御部1135とを有する。基地局102、103に搭載されている信号処理部122、123の各部は、基地局101に搭載されている信号処理部121と同様のため説明を省略する。なお、基地局102、103では、基地局101が備えるCPL141、142を省略することができる。
【0023】
図6は、診断試験を行う際のシーケンスの説明図である。図7は基地局101のアンテナ設備を除く診断方法のシーケンス図である。なお、基地局103のアンテナを含む診断方法については基地局102のアンテナを含む診断方法と同一手順で診断可能なため省略する。また、要求に対するAckは通常存在するため省略する。
【0024】
診断試験は、例えば、保守者が保守端末110に診断実行命令を入力することで開始される。診断実行命令には、診断対象基地局の指定(第1の基地局ID)、及び対象セクタ(第1のセクタID)、対象受信機の指定(0系又は1系を示す受信機ID)等の診断条件を含む。ここではまず、基地局101のセクタ1、0系の診断を行うものとして説明する。なお、保守者による入力以外にも、例えば、予め定められたスケジュールに従い、所定の時刻になると測定を開始するなど、適宜のタイミングで基地局の診断を開始してもよい。
【0025】
ステップ701では、保守端末110は、試験機能部124を搭載している基地局101の基地局制御部135に、指定された診断条件を含む診断開始指示を通知する。なお、診断するセクタ、受信系の指定を省略し、基地局101の全てのセクタ、受信系に対して、順次診断を実行するようにしても良い。
【0026】
ステップ702では、基地局制御部135は診断対象セクタのPN(pseudo noise、擬似雑音)番号を試験端末制御部136へ通知する。PN番号とは、基地局/端末を識別するのに使用される番号である。なお、PN番号以外にも、基地局及びセクタを識別するための適宜のセクタ識別子を用いてもよい。
【0027】
ステップ703では、基地局制御部135は診断開始指示を受信し、その指示に従い試験機能制御部136へ端末機能部137の電源を投入するよう命令する(電源投入命令)。ステップ704では、試験端末制御部136は端末機能部137の電源を投入する。
【0028】
ステップ705では、基地局制御部135は試験端末制御部136にスイッチの設定を指示する。ステップ706では、試験端末制御部136は、試験機能部124のスイッチを切り替える。例えば、受信された第1のセクタIDに従い、スイッチ151をセクタ1側に設定し、受信機IDに従いスイッチ154を0系側に設定する。ステップ707では、基地局制御部135が試験機能制御部136に呼接続を開始するよう指示する(呼接続開始命令)。ステップ708では、試験機能制御部136が端末機能部137へ呼接続を開始するよう指示する。この指示には、PN番号を含むことができる。ステップ709では、端末機能部137は、基地局101の信号処理部を経由しテストサーバ112にダイヤルアップして呼接続状態を確立する。例えば、基地局101の下りの経路は図7の経路193、上りの0系の経路は図7の経路194を通る。例えば、端末機能部137から送信される信号は、CPL141を介してアンテナ170側にも伝わるが、PN番号は基地局101のセクタ1 信号処理部131を示しているため、アンテナ170を介して他の基地局では受信処理されない。
【0029】
ここで呼接続状態を確立できれば基地局101のアンテナ設備を除いた基地局101の正常性が確認できる。テストサーバ112にダイヤルアップし、呼接続状態を確立するために経由する、基地局及びセクタはステップ702及びステップ708で通知したPN番号によって決まる。なお、テストサーバ112のダイヤル番号などの接続先情報は、予め基地局制御部135又は試験端末制御部130内の適宜メモリに記憶することができる。
【0030】
ステップ710では、端末機能部137が、診断対象のセクタ、系を経由した呼接続が成功したか又は失敗したかを示す情報を含む「接続情報」を基地局制御部135に通知する。なお、端末機能部137及び基地局制御部135は、例えば試験機能制御部136を介して互いにデータの送受信が可能である。
【0031】
ステップ711では、基地局制御部135は、端末制御部136に呼接続を解放するように命令する(呼接続解放命令)。ステップ712では、試験機能制御部136は基地局制御部135からの呼接続解放命令を端末機能部137へ通知する。ステップ713では、端末機能部137は呼接続解放命令に従い、呼接続を解放する。ステップ714では、端末機能部137は基地局制御部135に、呼接続を解放した情報を含む「接続情報」を通知する。
【0032】
ステップ715では、基地局制御部135は試験機能部136に端末機能部の電源を切断するよう命令する(電源切断命令)。ステップ716では、試験端末制御部136は端末機能部137の電源を切断する。ステップ717では、基地局制御部135は保守端末110に診断結果を報告する。ここで、診断結果には、ステップ710で通知された呼接続が成功したか又は失敗したかの情報を含む。
【0033】
ステップ718では、保守端末110は診断結果を受信し、受信した診断結果を表示部に表示及び/又は記憶部に記憶し、基地局101の診断試験を終了する。また、保守端末は、呼接続が成功していれば、基地局101のアンテナ設備を除く無線基地局装置及びネットワークの正常性を確認することができる。一方、呼接続が失敗していれば、基地局101のアンテナ設備を除く無線基地局装置及びネットワークが異常であることを確認できる。
【0034】
図8及び図9は、基地局101のアンテナ設備及び基地局102アンテナ設備を含む診断方法の説明図である。図10は、基地局101のアンテナ設備、基地局102のアンテナ設備を含む診断方法のシーケンス図である。なお、基地局103のアンテナ設備を含む診断方法については基地局102のアンテナ設備を含む診断試験と同一手順にて診断可能なため省略する。
【0035】
診断試験は、例えば、保守者が保守端末110に診断実行命令を入力することで開始される。診断実行命令には、どの基地局の端末機能部を使用するか(第1の基地局ID)、使用する端末機能部を搭載している基地局のどのセクタを使用するか(第1のセクタID)、どの基地局のどのセクタを経由するか(第2の基地局ID及び第2のセクタID)等の診断条件を含む。さらに、受信系の指定(0系又は1系)を含んでもよい。ここではまず、基地局102のセクタ1、0系のアンテナ設備を含む診断及び基地局101のアンテナ設備の診断を行うものとして説明する。例えば、保守者により、基地局101を示す第1の基地局IDと、セクタ1を示す第1のセクタIDと、基地局102を示す第2の基地局IDと、セクタ1を示す第2のセクタIDとが入力されたとする。なお、保守者による入力以外にも、例えば、予め定められたスケジュールに従い、所定の時刻になると診断を開始するなど、適宜のタイミングで基地局の診断を開始してもよい。
【0036】
ステップ801では、保守端末110は、第1の基地局ID及び第2の基地局IDに従い、試験機能部124を搭載している基地局101の基地局制御部135と、経由する基地局102の基地局制御部135とに、指定された診断条件を含む診断開始指示をそれぞれ通知する。通知する基地局、通知する情報は適宜省略できる。なお、診断するセクタ、受信系の指定を省略し、基地局102の全てのセクタ、受信系に対して、順次診断を実行するようにしても良い。
【0037】
ステップ802では、基地局101または基地局102の基地局制御部135、1135が、診断対象基地局のセクタのPN番号を試験端末制御部136へ通知する。例えば、通知された第2の基地局IDと第2のセクタIDに従い、基地局102のセクタ1のPN番号を通知する。なお、PN番号は、第2の基地局IDと第2のセクタIDとに対応して、予め各基地局のメモリに記憶し、各基地局はこれを参照することができる。また、各基地局の各セクタのPN番号は保守端末内のメモリに記憶し、保守者が保守端末に診断条件を入力した際に保守端末がメモリから読み出し、試験機能部124を搭載している基地局101の基地局制御部へ通知してもよい。また、各基地局の基地局制御部135に、隣接する基地局の各セクタのPN番号を記憶しておき、診断実行時に保守端末110が診断対象の基地局の基地局制御部135から読み出し、試験機能部124を搭載している基地局の基地局制御部へ通知してもよい。なお、ステップ802の処理は、端末機能部137からの接続があった時など、適宜のタイミングで実行してもよい。
【0038】
ステップ803では、基地局101の基地局制御部135は診断開始指示を受信し、その指示に従い試験機能制御部136へ端末機能部137の電源を投入するよう命令する(電源投入命令)。ステップ804では、試験端末制御部136は端末機能部137の電源を投入する。
【0039】
ステップ805では、基地局101の基地局制御部135は試験端末制御部136にスイッチの設定を指示する。ステップ806では試験機能部124のスイッチを切り替える。例えば、第1のセクタIDに従い、スイッチ151をセクタ1側にし、スイッチ154を0系側にする。
【0040】
ステップ807では、基地局101の基地局制御部135が試験機能制御部136に呼接続を開始するよう指示する(呼接続開始命令)。ステップ808では試験機能制御部136が端末機能部137へ呼接続を開始するよう指示する。この指示には、通知されたPN番号を含むことができる。
【0041】
ステップ809では、端末機能部137は、基地局101のアンテナと基地局102を経由し、テストサーバ112にダイヤルアップして呼接続状態を確立する。下りの経路は図9の経路197と図8の経路195を通り、上りの経路は図8の経路196と図9の経路198を通る。例えば、端末機能部137から送信される信号は、CPL141を介してDUP143、0系受信機146側にも伝わるが、PN番号は基地局102のセクタ1 信号処理部1131を示しているため、0系受信機146側では受信処理されない。
【0042】
ここで呼接続状態を確立できれば基地局101のアンテナ設備と、アンテナ設備を含んだ基地局102の正常性が確認できる。テストサーバ112にダイヤルアップして呼接続状態を確立するために経由する基地局及びセクタは、ステップ802及びステップ807で通知されたPN番号によって決まる。
【0043】
診断試験を実施した際、試験端末137を搭載している基地局101と、経由する基地局102とには端末機能部137の端末情報が通知される(例えば、ステップ801)。基地局101及び102は通知された端末から接続があった場合、端末へ接続先のPN番号を通知する。端末は通知されたPN番号に対して呼接続を実施する。本説明では端末へのPN番号通知は基地局101、102により通知しているが、基地局101のみからの通知でも、その他の隣接している基地局からでもよい。また、PN番号は各基地局、各セクタで異なる値が設定されている。なお、テストサーバ112のダイヤル番号などの接続先情報は、予め基地局制御部135又は試験端末制御部130内又は外部の適宜メモリに記憶することができる。
【0044】
ステップ810では、端末機能部137が、診断対象のセクタ、系を経由した呼接続が成功したか失敗したかを示す情報を含む「接続情報」を基地局制御部135に通知する。なお、端末機能部137及び基地局制御部135は、例えば試験機能制御部を介して互いにデータの送受信が可能である。
【0045】
ステップ811では、基地局101の基地局制御部135は、端末制御部136に呼接続を解放するように命令する(呼接続解放命令)。ステップ812では、試験機能制御部136は基地局101の基地局制御部135からの呼接続解放命令を端末機能部137へ通知する。ステップ813では、端末機能部137は呼接続解放命令に従い、呼接続を解放する。ステップ814では、端末機能部137は、基地局101の基地局制御部135に呼接続を解放した情報を含む「接続情報」を通知する。
【0046】
ステップ815では、基地局101の基地局制御部135は、試験機能部136に端末機能部137の電源を切断するよう命令する(電源切断命令)。ステップ816では、試験端末制御部136は端末機能部137の電源を切断する。ステップ817では、基地局101の基地局制御部135は、保守端末110に診断結果を報告する。ここで、診断結果は、ステップ810で通知された呼接続が成功したか又は失敗したかの情報を含む。
【0047】
ステップ818では、保守端末110は診断結果を受信し、受信した診断結果を表示部に表示及び/又は記憶部に記憶し、基地局101の診断試験を終了する。また、保守端末110は、呼接続が成功していれば、基地局101のアンテナ設備、アンテナ設備を含む基地局102の正常性及びネットワークの正常性を確認することができる。一方、呼接続が失敗していれば、基地局101のアンテナ設備、アンテナ設備を含んだ基地局102の無線基地局装置及びネットワークが異常であることを確認することができる。
【0048】
なお、本試験は図7の処理と図10の処理とに分けて実施することも、組み合わせて実施することも可能である。また、適宜の順番で行ってもよい。
本発明によりアンテナ設備を含んだ無線基地局装置及びネットワークの正常性診断試験を安価に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば、移動体通信システム、基地局に関する産業に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明における1xEV−DOシステム 無線基地局試験システムの構成図である。
【図2】本発明における基地局101の診断経路の説明図である。
【図3】本発明における基地局102、103の診断経路の説明図である。
【図4】本発明における基地局101の詳細構成図である。
【図5】本発明における基地局102の詳細構成図である。
【図6】本発明における基地局101診断時の、基地局101の診断経路である。
【図7】本発明におけるアンテナ設備を含まない基地局101の診断を行う際のシーケンスの説明図である。
【図8】本発明における基地局102、103診断時の、基地局101の診断経路である。
【図9】本発明における基地局102、103診断時の、基地局102、103の診断経路である。
【図10】本発明のおける基地局101のアンテナ設備、アンテナ設備を含む基地局102、103の診断を行う際のシーケンスの説明図である。
【符号の説明】
【0051】
101、102、103 無線基地局装置(基地局)
106 AN−AAA
107 IP−SW
108 管理網
109 PCF−SC
110 保守端末
111 ネットワーク網(データ網)
112 テストサーバ
121、122,123 信号処理部
124 試験機能部
131、132、133 信号処理部(セクタ1、2、3)
134 回路インターフェース
135 基地局制御部
137 端末機能部
136 試験機能制御部
141、142 CPL(方向性結合器)
143、153 DUP(デュプレクサ)
144 BPF(通過帯域フィルタ)
145 送信機
146、147 受信機(0系、1系)
148 変調機
149 復調機
151、152、154 スイッチ
155 下り減衰器
156 上り減衰器
161 CPU
162 ROM
163 RAM
170 0系アンテナ
171 1系アンテナ
181、182、183、184 一般端末
190 一般端末経路
191、192、193、194、195、196、197、198 診断経路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアンテナと、前記第1のアンテナに接続され無線端末の送受信機能を有する端末機能部と、を有する第1の基地局と、
第2のアンテナに接続された信号処理部を有する第2の基地局と、
前記端末機能部と呼接続するためのテストサーバと、
前記第1の基地局の第1のアンテナ及び前記第2の基地局の正常又は異常を判断するための試験を行う保守端末と
を備え、
前記保守端末は、
正常又は異常の判断対象となる、前記第1の基地局の第1の基地局識別子と、前記第2の基地局の第2の基地局識別子とを指定し、
指定された第1の基地局識別子が示す前記第1の基地局に、指定された第2の基地局識別子を送信し、
前記第1の基地局は、
前記保守端末から第2の基地局識別子を受信し、
前記端末機能部から、前記第1のアンテナを介して、受信された第2の基地局識別子により特定される前記第2の基地局の前記信号処理部に無線信号を送信し、前記第1のアンテナと該信号処理部とを介して、前記端末機能部と前記テストサーバとの呼接続処理を実行し、
呼接続の成功又は失敗を示す接続結果を前記端末機能部により判定し、
該接続結果を前記保守端末に送信し、
前記保守端末は、
前記第1の基地局から該接続結果を受信し、
該接続結果を表示部に表示し、又は、記憶部に記憶し、又は、該接続結果に従い前記第1の基地局の第1のアンテナ及び前記第2の基地局の正常又は異常を判断する無線通信システム。
【請求項2】
セクタ毎の第1のアンテナと、無線端末の送受信機能を有する端末機能部と、該端末機能部とセクタ毎の前記第1のアンテナのひとつとを接続するスイッチとを有する第1の基地局と、
第2のアンテナに接続されたセクタ毎の信号処理部を有する第2の基地局と、
前記端末機能部と呼接続するためのテストサーバと、
前記第1の基地局の第1のアンテナ及び前記第2の基地局の正常又は異常を判断するための試験を行う保守端末と
を備え、
前記保守端末は、
正常又は異常の判断対象となる、前記第1の基地局の第1の基地局識別子及び第1のセクタ識別子と、前記第2の基地局の第2の基地局識別子及び第2のセクタ識別子とを指定し、
指定された第1の基地局識別子に従い、前記第1の基地局に、指定された第1のセクタ識別子と、第2の基地局識別子と、第2のセクタ識別子とを送信し、
前記第1の基地局は、
前記保守端末から、第1のセクタ識別子と第2の基地局識別子と第2のセクタ識別子とを受信し、
受信された第1のセクタ識別子に従い、前記スイッチにより第1のセクタ識別子が示すセクタの前記第1のアンテナと前記端末機能部とを接続し、
前記端末機能部から、接続された第1のアンテナを介して、受信された第2の基地局識別子及び第2のセクタ識別子により特定される前記第2の基地局の前記信号処理部に無線信号を送信し、前記第1のアンテナと該信号処理部とを介して、前記端末機能部と前記テストサーバとの呼接続処理を実行し、
呼接続の成功又は失敗を示す接続結果を前記端末機能部により判定し、
該接続結果を前記保守端末に送信し、
前記保守端末は、
前記第1の基地局から該接続結果を受信し、
該接続結果を表示部に表示し、又は、記憶部に記憶し、又は、該接続結果に従い前記第1の基地局の第1のアンテナ及び前記第2の基地局の正常又は異常を判断する無線通信システム。
【請求項3】
前記保守端末、前記第1の基地局及び前記第2の基地局のいずれかが、第2の基地局識別子及び第2のセクタ識別子に対応した、セクタを識別するためのPN(pseudo noize)番号を前記端末機能部に通知し、
前記端末機能部は、該PN番号を用いて前記第2の基地局の前記信号処理部に無線信号を送信する請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1の基地局は、セクタ毎の第2の信号処理部をさらに有し、
前記保守端末は、さらに、
前記第1の基地局の第1の基地局識別子及び第1のセクタ識別子を指定し、
指定された第1の基地局識別子が示す前記第1の基地局に、指定された第1のセクタ識別子を送信し、
前記第1の基地局は、さらに、
前記保守端末から第1のセクタ識別子を受信し、
受信された第1のセクタ識別子が示すセクタの前記第2の信号処理部と前記端末機能部とを接続し、
前記端末機能部から、接続された該第2の信号処理部に信号を出力し、該第2の信号処理部を介して前記端末機能部と前記テストサーバとの呼接続処理を実行し、
該呼接続の成功又は失敗を示す第2の接続結果を前記端末機能部により判定し、
該第2の接続結果を前記保守端末に送信し、
前記保守端末は、さらに、
前記第1の基地局から該第2の接続結果を受信し、
該第2の接続結果を表示部に表示し、又は、記憶部に記憶し、又は、該第2の接続結果に従い前記第1の基地局の正常又は異常を判断する請求項2に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−180714(P2007−180714A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374628(P2005−374628)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】