説明

無線通信システム

【課題】無線局における受信時の処理を簡素化するとともに消費電力を低減し、無線信号のプリアンブルを短くして無線信号の利用効率が高い無線通信システムを提供する。
【解決手段】無線通信システムAは、周波数の異なる複数の無線チャンネルのうち所定の無線チャンネルを用いて無線通信を行う中継装置2と複数の検針メータ1とを備える。中継装置2は、チャンネル割当部23が検針メータ1ごとに割り当てたデータ送信用の無線チャンネルを示すチャンネル情報を含むリンク確立信号を、信号送信部26が検針メータ1に送信する。各検針メータ1は、受信したリンク確立信号に含まれるチャンネル情報に基づいて受信対象の無線チャンネルをチャンネル設定部15が設定するとともに、無線信号の受信タイミングを受信タイミング決定部16が決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線チャンネルを用いて無線通信を行う無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば自動遠隔検針システムのように、特定小電力無線局などの無線局を用いて遠隔地点に設置された測定機の測定結果の授受や、遠隔地点に設置された装置の機能を始動、終了させるための制御信号の授受を行う無線通信システムが普及している。この種の無線通信システムは、照明制御システム、防犯システム、ドアホンシステムなどにも適用されており、特許文献1には、火災報知システムにこの種の無線通信システムを適用した例が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の火災報知システムは、無線による通信機能が設けられた複数台の火災感知器を多箇所に設置し、各々の火災感知器間で無線信号の授受が行われる。例えば、何れかの火災感知器が火災を感知すると、その火災感知器は自機の警報を鳴動させるとともに、他の火災感知器に向けて火災感知情報を含む無線信号を連続的に送信する。また、火災を感知した火災感知器からの無線信号を受信した他の火災感知器は、その無線信号に含まれる火災感知情報に基づいて警報を鳴動させる。このように、複数台の火災感知器が互いに無線信号を送信・受信することで、複数台の火災感知器が連動して動作し、火災の発生を迅速且つ確実に報知できるようにしている。
【0004】
この種の無線通信システムにおいては、複数台の無線局間で無線信号の授受を行うため、無線信号として使用する特定の周波数帯域内に複数の無線チャンネルを設け、無線信号の送受信が行われている。具体的には、無線局が無線信号を送信する際には、複数の無線チャンネルから送信に使用する無線チャンネルを択一的に選択し、無線信号の送信を行う。また無線局が無線信号を受信するには、所定のスキャン周期で無線チャンネルごとの受信信号強度(Received Signal Strength Indication:RSSI)を測定し、受信信号強度が所定の閾値よりも大きければ、無線信号を検出して受信を行う。
【0005】
ここで、この無線信号は例えば図4に示すようなフォーマットが採用されており、実際に授受するバイナリデータであるデータDAとは別に、プリアンブルPA、ユニークワードUW、機器識別情報AD、誤り検出符号CRとが含まれている。プリアンブルPAは、例えば0と1を交互に繰り返すビット同期パターンからなるビット列であり、先頭ビットは0、最終ビットは1に設定されている。また、ユニークワードUWは、プリアンブルPAとは異なるビット列からなり、予め無線通信システム内で決められたビット列が用いられる。また、機器識別情報ADは、無線信号を送信した無線局、及び、無線信号の宛先となる無線局のそれぞれに割り当てられた識別子が設定されている。また、誤り検出符号CRは、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)からなるビット列であり、少なくともデータDAを構成するビット列にビット反転などの異常が発生したことを検出できるように設定されている。
【0006】
無線局が無線信号を受信する際には、受信対象の無線チャンネルでプリアンブルPAを検出してビット同期を行った後、ユニークワードUW及び機器識別情報ADから、自機宛に送信された無線信号であるかを判断する。その後この無線局は、自機宛に送信された無線信号であれば、データDAのビット列及び誤り検出符号CRから、データDAに異常が無いことを検知して、データDAの受信を行う。これにより、無線局が任意に選択した無線チャンネルを用いて送信した無線信号を受信することができ、複数台の無線局間で無線信号の授受を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−177340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述の無線通信システムにおいて使用する無線チャンネル数を30とし、1つの無線チャンネルに対する受信信号強度の測定時間を2msとすると、全ての無線チャンネルの受信信号強度を検出するために必要な時間は少なくとも60ms必要である。ここで、無線局が上述のスキャン周期内に任意の無線チャンネルに送信された無線信号を検知するためには、無線信号のプリアンブルPAの全ビット長を、ビット同期に必要なビット長と、スキャン周期に相当するビット長とを足し合わしたビット長が必要である。すなわちプリアンブルPAの全ビット長は、例えばビット同期に必要な64bitと、スキャン周期(60ms)に相当する約288bitとを足し合わせた約352bitのビット長が必要である(図4を参照)。
【0009】
例えば、このプリアンブルPAの全ビット長が上述の全ビット長(約352bit)よりも短ければ、受信側の無線局が所定のスキャン周期内ではプリアンブルPAを検出することが出来ず、結果として無線信号を受信できない可能性がある。そのため、利用する無線チャンネル数が増えると、その無線チャンネル数に応じてプリアンブルPAのビット長を長くする必要があり、結果として無線信号に占める実データの割合が小さくなり、無線信号の利用効率が低くなるという問題があった。
【0010】
また受信側の各無線局では、無線信号を送信した無線局がどの無線チャンネルを用いて信号を送信したのかが分からない為、複数の無線チャンネルを順次に切り替えて受信信号強度の検出を無線チャンネルごとに行う必要がある。この処理は複雑であるとともに、継続して受信信号強度の検出を行うために無線局の省電力化を実現する際の妨げとなっていた。
【0011】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、無線局における受信時の処理を簡素化するとともに消費電力を低減し、無線信号のプリアンブルを短くして無線信号の利用効率が高い無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の無線通信システムは、互いに周波数の異なる第1の無線チャンネル及び複数の第2の無線チャンネルを用いて無線信号を送信する第1の無線機と、第1の無線機から送信された無線信号を受信する1乃至複数の第2の無線機とを備え、第1の無線機は、送信対象の第2の無線機ごとに、実データの送信を行うデータ送信用の無線チャンネルを複数の第2の無線チャンネルから割り当てるチャンネル割当手段と、データ送信用の無線チャンネルを識別するためのチャンネル情報が格納されたリンク確立用の無線信号を生成するリンク確立信号生成手段と、実データを含むデータ送信用の無線信号及びリンク確立用の無線信号を第2の無線機に送信する信号送信手段と、信号送信手段による各無線チャンネルの無線信号の送信期間及び送信順序を決定する送信手順決定手段とを備え、第2の無線機は、第1及び複数の第2の無線チャンネルから、無線信号を受信する受信対象の無線チャンネルを設定するチャンネル設定手段と、受信対象の無線チャンネルの信号強度を測定する信号強度測定手段と、信号強度測定手段が測定した信号強度が所定の閾値を超えていれば、当該無線チャンネルを用いて無線信号の受信を行う信号受信手段と、信号受信手段による無線信号の受信タイミングを調整する受信タイミング調整手段とを備え、第1の無線機は、チャンネル割当手段が送信対象の第2の無線機ごとにデータ送信用の無線チャンネルを割り当て、当該データ送信用の無線チャンネルに対応するチャンネル情報を含むリンク確立用の無線信号をリンク確立信号生成手段が生成し、当該リンク確立用の無線信号を信号送信手段が第1の無線チャンネルを用いて送信して第2の無線機との間でリンクが確立すると、送信手順決定手段が決定した送信期間及び送信順序に基づいて第2の無線チャンネルを順次に切り替えてデータ送信用の無線信号を送信し、第2の無線機は、受信対象の無線チャンネルを第1の無線チャンネルに設定した状態で信号受信手段がリンク確立用の無線信号を受信すると、当該リンク確立用の無線信号に含まれるチャンネル情報に基づいて受信対象の無線チャンネルをチャンネル設定手段が設定するとともに、第1の無線機により受信対象の無線チャンネルに無線信号が送信された送信タイミングに応じて、当該受信対象の無線チャンネルの無線信号を受信する受信タイミングを受信タイミング調整手段が決定することを特徴とする。
【0013】
この無線通信システムにおいて、リンク確立信号生成手段は、受信対象の第2の無線機においてデータ送信用の無線チャンネルを用いて無線信号を受信するための受信タイミングを判別可能なタイミング情報を含むリンク確立用の無線信号を出力し、受信タイミング調整手段は、当該タイミング情報に応じて無線信号を受信するタイミングを決定することが好ましい。
【0014】
また本発明の無線通信システムにおいて、送信手順決定手段は、予め設定された所定の送信期間及び所定の送信順序に従って信号送信手段による各無線チャンネルの無線信号の送信期間及び送信順序を決定し、受信タイミング調整手段は、リンク確立用の無線信号に格納されたチャンネル情報及び予め設定された所定の送信期間及び所定の送信順序に基づいて、受信タイミングを決定することが好ましい。
【0015】
上述の無線通信システムにおいて、チャンネル割当手段は、送信対象の第2の無線機のうちリンクが確立した第2の無線機の間で、データ送信用の無線チャンネルが重複しないように、第2の無線機にデータ送信用の無線チャンネルを割り当てることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無線局における受信時の処理を簡素化するとともに消費電力を低減し、無線信号のプリアンブルを短くして無線信号の利用効率が高い無線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明の実施の形態にかかる無線通信システムを示す概略ブロック図である。
【図2】同無線通信システムに用いる通信信号のフォーマットを示す概略図である。
【図3】同無線通信システムの動作を説明する為の概略図である。
【図4】従来の無線通信システムに用いられる通信信号のフォーマットを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の技術思想を電力検針システムに適用した実施の形態について、図1〜3に基づいて説明する。
【0019】
本実施の形態にかかる電力検針システムAは、例えば電力会社内に設置された集計サーバを操作することで、電力会社から遠隔地に存在する複数の住戸で消費された電力量を収集するためのシステムである。また電力検針システムAは、図1に示すように、各住戸にそれぞれ設置された検針メータ1(1a…1c)と、電柱などに設置され周囲の検針メータ1から検針データを受信する中継装置2とを備える。
【0020】
中継装置2は、中継装置2を統括的に制御する制御部21と、広域通信網WANを介して電力会社に設置された集計サーバ(図示せず)との間で通信を行う制御部22と、周囲の検針メータ1との間で無線通信を行う無線通信部20とを備える。
【0021】
制御部21は、マイコン(図示せず)をその主構成要素として備えており、制御部22を介して受信した集計サーバからの制御命令に基づいて動作する。この制御命令としては、検針メータ1から検針データを取得する命令(検針データ収集命令)や、検針データを取得する時刻を設定する命令(時刻設定命令)など種々の命令があり、集計サーバから必要に応じて送信される。
【0022】
また制御部21はタイマ(図示せず)を有し、時刻設定命令により設定された収集時刻に基づいて無線通信部20を制御し、無線通信部20を介して受信した周囲の検針メータ1からの検針データを制御部22を用いて集計サーバに送信する。また制御部21は、検針データ収集命令が入力されると予め設定された収集時刻に関わらず、周囲の検針メータ1から検針データを受信して集計サーバに送信する。これにより、検針メータ1が測定した各住戸の消費電力量は遠隔地に設置された電力会社の集計サーバから自動的に測定・集計を行うことが可能である。
【0023】
無線通信部20は、例えば特定小電力無線局からなり、検針メータ1との間で上述の通知信号、要求信号、リンク確立信号などの種々の無線信号の送受信を行う。この無線通信部20と各検針メータ1との間の無線通信では、所定の周波数帯域内に複数の無線チャンネルを設け、この複数のチャンネルから選択した1つの無線チャンネルを用いて無線信号の送受信を行う。ここで用いられる無線信号としては、測定した検針データを通知する為の通知信号、中継装置2が検針メータ1に検針データの送信を要求する要求信号、中継装置2との間で無線リンクを確立するためのリンク確立信号など種々の無線信号がある。
【0024】
またこの無線信号には、図2に示すフォーマットが採用されており、プリアンブルPA、ユニークワードUW、機器識別情報AD、データDA、及び、誤り検出符号CRにより構成されている。プリアンブルPAは、例えば0と1を交互に繰り返すビット同期パターンからなるビット列であり、先頭ビットは0、最終ビットは1に設定されている。またプリアンブルPAの全ビット長は、ビット同期に必要な最低限の長さ(図2では64bit)に設定されている。ユニークワードUWは、プリアンブルPAとは異なるビット列からなり、予め無線通信システムごとに決定されており、検針メータ1及び中継装置2には同じ値が設定されている。機器識別情報ADは、無線信号の送信元を識別するための送信元情報と、送信先の機器を識別するための宛先情報とが含まれる。データDAは、例えば電力量計測部11で測定された検針データや、中継装置2からの要求命令などの実データを含むビット列からなり、必要に応じてそのビット長を可変とすることができる。誤り検出符号CRは、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)からなるビット列であり、少なくともデータDAを構成するビット列にビット反転などの異常が発生したことを受信時に検出できるように設定されている。
【0025】
また無線通信部20は、送信対象の検針メータ1ごとに実データとして要求信号を送信する無線チャンネルを割り当てるチャンネル割当部23と、割り当てた無線チャンネルの送信順序を決定する送信順序決定部24とをその構成要素として備える。
【0026】
チャンネル割当部23は、送信対象の検針メータ1ごとに要求信号を送信する為の無線チャンネルをそれぞれ割り当てる。この時チャンネル割当部23は、送信対象の検針メータ1a…1cの間で、同一の無線チャンネルが割り当てられないように設定されている。
【0027】
送信順序決定部24は、チャンネル割当部23が各検針メータ1に割り当てた無線チャンネルを用いて無線信号を送信する送信順序と送信期間とを決定する。本実施の形態において送信順序決定部24には、予め無線信号を送信する無線チャンネルの送信順序と、無線チャンネルごとの送信期間が設定されている。
【0028】
また無線通信部20は、チャンネル割当部23が割り当てた無線チャンネルを識別する為のチャンネル情報を含むリンク確立信号を生成するリンク確立信号生成部25と、種々の無線信号を送受信する信号送信部26とをその構成要素として備える。
【0029】
各検針メータ1(1a…1c)は、中継装置2との間で無線による通信を行う無線通信部10と、住戸で消費された電力量を計測する電力量計測部11と、消費電力量を検針データとして記憶する記憶部12とを備える。
【0030】
電力量計測部11は、電力会社から住戸に電力を供給する電力供給路(図示せず)を流れる電力量を定常的に計測することで住戸における消費電力量を計測し、この消費電力量を当該住戸の検針データとして記憶部12に記憶させる。
【0031】
記憶部12は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)などの不揮発性メモリからなり、電力量計測部11及び無線通信部10が必要に応じて種々の情報を書き込み・読み出しを行う。
【0032】
無線通信部10は、例えば特定小電力無線局からなり、中継装置2との間で無線信号による通信が行われる。また無線通信部10は、受信対象の無線チャンネルの信号強度を測定する信号強度検出部13と、信号強度検出部13が検出した信号強度が所定の閾値よりも大きければ無線信号の受信を行う受信機能を有する信号受信部14とをその構成要素として備える。さらに無線通信部10は、リンク確立信号に基づいて受信対象の無線チャンネルを設定するチャンネル設定部15と、リンク確立信号に基づいて信号受信部14が無線信号を受信するタイミングを決定する受信タイミング決定部16をその構成要素として備える。
【0033】
信号強度検出部13は、チャンネル設定部15により設定されたスキャン対象の無線チャンネルにおける信号強度の測定を行う。この信号強度の測定は、例えば受信信号強度表示信号(RSSI)に基づいて行われ、信号強度検出部13は測定した信号強度と無線チャンネルを含む信号情報を信号受信部14に出力する。また信号強度検出部13は、受信タイミング決定部16から制御信号に応じて、信号強度の検出処理を停止または開始する。
【0034】
信号受信部14は、信号強度検出部13から信号情報が入力されると、この信号情報に含まれる信号強度と、予め設定された閾値とを比較する。また信号受信部14は、この信号強度が閾値よりも大きい場合には、信号情報に含まれる無線チャンネルを受信対象の無線チャンネルとして無線信号の受信を行う。
【0035】
無線信号の受信では、まず信号受信部14は、受信対象の無線チャンネルにおけるプリアンブルPAを検出してビット同期を行い、プリアンブルPAが検出されビット同期が正常に行われると、ユニークワードUW、データDA、誤り検出符号CRの受信を行う。ここで信号受信部14は、ユニークワードUWのビット列が予め設定されたビット列とを比較するとともに、機器識別情報ADから無線信号が自機宛に送信されたものであるかを判定する。さらに信号受信部14は、受信した無線信号が自機宛の無線信号であると判断すると、データDAのビット列からCRC値を求め、このCRC値と誤り検出符号CRとを比較して無線信号のビット列に発生した異常を検出する。このようにして信号受信部14は、自機以外に送信された無線信号やビット列が不正な無線信号の受信は行わず、自機宛に送信された有効な無線信号のみを受信することができる。
【0036】
チャンネル設定部15は、信号受信部14が上述の受信動作により無線信号としてリンク確立信号を受信すると、このリンク確立信号に含まれるチャンネル情報に基づいて、スキャン対象の無線チャンネルを信号強度検出部13に設定する。これにより信号強度検出部13は、新たに設定されたスキャン対象の無線チャンネルにおける信号強度の検出を行うので、中継装置2が割り当てた無線チャンネルを受信対象の無線チャンネルとして、無線信号の受信が行われる。
【0037】
受信タイミング決定部16は、信号受信部14がリンク確立信号を受信すると、このリンク確立信号に含まれるチャンネル情報に基づいて、自機に割り当てられた無線チャンネルを用いて無線信号の受信を行う受信タイミングを決定する。ここで受信タイミング決定部16は、予め中継装置2の送信順序決定部24に設定された無線チャンネルの送信順序と、無線チャンネルごとの送信期間が設定されている。これにより受信タイミング決定部16は、チャンネル設定部15が設定した無線チャンネルがどのタイミングで送信されるのかを求めることができ、求めた受信タイミングに基づいて信号強度検出部13による信号強度の検出動作を制御する。
【0038】
例えば受信タイミング決定部16は、求めた受信タイミング以外の期間、すなわち自機に割り当てられた無線チャンネル以外の無線チャンネルに無線信号が送信されている間は、信号強度検出部13による信号強度の検出動作が停止されるよう制御を行う。また求めた受信タイミングでは、信号強度検出部13による信号強度の検出が行われるように、信号強度検出部13の動作を制御する。
【0039】
ここで、無線通信部20が要求信号を各検針メータ1(1a…1c)に向けて送信する際の動作について図3を用いて説明を行う。なお以下の説明では、無線通信に使用する無線チャンネルとして互いに周波数の異なるチャンネルCH0〜CH6を設け、リンク確立信号を送受信する為の無線チャンネルとしてチャンネルCH0が設定されている。また、各検針メータ1の記憶部12には、受信対象の無線チャンネルの初期値としてチャンネルCH0が記憶されている。ここで、中継装置2の送信順序決定部24及び、各検針メータ1の受信タイミング決定部16には、無線信号の送信順序として、チャンネルCH1、チャンネルCH2…チャンネルCH6という順序が設定されている。また送信順序決定部24及び受信タイミング決定部16には、各無線チャンネルにおける送信期間として、それぞれ同じ期間(図3のΔt)が設定されている。
【0040】
まず信号送信部26は、リンク確立用のチャンネルCH0を送信用の無線チャンネルとして設定し、プリアンブルPAなどからなるリンク要求信号を送信する。このリンク要求信号は、全ての検針メータ1をその宛先なるよう機器識別情報ADが設定されており、周囲の検針メータ1に向けてブロードキャストされる(図3のS1)。
【0041】
このリンク要求信号を受信した各検針メータ1a…1cは、プリアンブルPAなどからなるリンク要求への応答信号を中継装置2に送信する(図3のS2)。この応答信号には、各検針メータ1を識別するためのアドレスが含まれており、このアドレスを機器識別情報ADとして用いることで、これ以降に行われる無線信号の送受信において、その宛先を指定することができる。
【0042】
次にチャンネル割当部23は、信号送信部26が受信した応答信号に基づいて、検針メータ1ごとに要求信号を送信する為の無線チャンネルの割り当てを行う。ここでは検針メータ1a、1b、1cにそれぞれチャンネルCH2、CH3、CH1を割り当てている。その後リンク確立信号生成部は、この割り当てられた無線チャンネルを示すチャンネル情報をデータDAに格納したリンク確立信号を生成し、信号送信部26を介して検針メータ1a…1cに送信する(図3のS3)。
【0043】
ここで、各検針メータ1の信号強度検出部13は、所定のスキャン周期ごとにチャンネルCH0の信号強度を測定し、信号受信部14に信号強度を出力している。リンク確立信号が中継装置2から送信されると、信号受信部14に入力される信号強度が記憶部12に記憶された閾値よりも大きな値となるので、信号受信部14は、チャンネルCH0を用いて無線信号の受信を行う。また信号受信部14がチャンネルCH0を用いてリンク確立信号を受信すると、チャンネル設定部15がこのリンク確立信号に含まれる自機に対応した無線チャンネルを取得し、受信対象の無線チャンネルとして信号強度検出部13に設定する。例えば、検針メータ1aでは、チャンネルCH2が受信対象の無線チャンネルとして信号強度検出部13に設定される。
【0044】
また、各検針メータ1の無線通信部10は、中継装置2からのリンク確立信号を受信すると、正常にリンクの確立が完了した旨を示す完了信号を中継装置2を宛先として送信する(図3のS4)。この完了信号を受信した中継装置2は、送信順序決定部24が決定した無線信号の送信順序に従い、信号送信部26が送信対象の無線チャンネルを順次に切り替え、検針メータ1に検針データの送信を要求する要求信号を送信する。
【0045】
より具体的には、まず使用する無線チャンネルをチャンネルCH1に設定して、検針メータ1cを機器識別情報ADの宛先として設定した要求信号を送信する。続いて、使用する無線チャンネルをチャンネルCH2とし、検針メータ1aを機器識別情報ADの宛先として設定した要求信号を送信し、次に、検針メータ1bを機器識別情報ADの宛先として設定した要求信号をチャンネルCH3を用いて送信する。この時、各無線チャンネルに送信された要求信号は、予め各検針メータ1との間で取り決められた送信期間(図3のΔt)で送信される。
【0046】
ここで各検針メータ1の受信タイミング決定部16は、受信したリンク確立信号に含まれる受信対象の無線チャンネルに基づいて、受信対象の無線チャンネルから無線信号の受信を行う受信タイミングを決定する。検針メータ1aを例に説明すると、実データの送受信に使用する無線チャンネルはチャンネルCH1〜CH6であり、受信対象の無線チャンネルはチャンネルCH2であるので、チャンネルCH1及びチャンネルCH3〜CH6に対応する時間は信号強度の検出を停止することができる。ここで、チャンネルCH1〜CH6を用いて実データの送受信が行われる送信期間(図3のΔt)は一定の間隔に設定されているので、受信タイミング決定手段16は信号強度検出部13による信号強度の検出を開始・停止する時間を求めることができる。これにより、各検針メータ1は要求信号を受信することができ、記憶部12に記憶された検針メータを、受信対象の無線チャンネルを用いて返送することができる。
【0047】
このようにして各検針メータ1は、自機が受信に使用する無線チャンネル以外の無線チャンネルを用いて中継装置2が無線信号を送信している間は、信号強度検出部13による受信信号強度の検出処理を停止することができ、電力消費を抑えることができる。また各検針メータ1の信号強度検出部13は、信号強度を検出する無線チャンネルを順次に切り替える必要が無くなるので、受信にかかる処理の簡素化を図ることが可能となる。
【0048】
さらに信号強度検出部13が所定のスキャン周期で信号強度を検出する無線チャンネルは1つであるので、中継装置2が送信する無線信号のプリアンブルのビット長を短くしても確実に検針メータ1では無線信号を受信することができる。すなわち、無線信号のプリアンブルを短くして無線信号の利用効率を高めることができる。
【0049】
また、本実施の形態では、中継装置2が各検針メータ1との間で実データを送信する為の無線チャンネルが互いに重複しないように割り当てている。これにより、各検針メータ1は受信した無線信号に応じて、同じ無線チャンネルを用いて検針データをそのまま返送することが可能となり、送受信にかかる処理の簡略化を行うことができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、本発明の技術思想を電力検針システムに適用した例について説明を行ったが、ガス検針システムや水道メータ検針システムなどの種々のシステムおいて適応することが可能である。
【0051】
また、リンク確立信号生成部25は、各検針メータ1に割り当てられたデータ送信用の無線チャンネルを用いて、無線信号を送信するタイミングを示す送信タイミング情報をリンク確立信号に格納するようにしても良い。この場合には、各検針メータ1の受信タイミング決定部16は、リンク確立信号に含まれる送信タイミング情報に基づいて、受信タイミングを決定することで無線信号の受信が可能となる。これにより、各検針メータ1と中継装置2との間で、予め無線信号を送信する送信順序及び送信期間を共有する必要が無くなり、より柔軟な無線信号の送受信を行うことが出来る。
【符号の説明】
【0052】
1(1a…1c) 検針メータ(第2の無線機)
10 無線通信部
11 電力量計測部
12 記憶部
13 信号強度検出部
14 信号受信部
15 チャンネル設定部
16 受信タイミング決定部
2 中継装置(第1の無線機)
20 無線通信部
21 制御部
22 通信部
23 チャンネル割当部
24 送信順序決定部
25 リンク確立信号生成部
26 信号送信部
WAN 広域通信網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに周波数の異なる第1の無線チャンネル及び複数の第2の無線チャンネルを用いて無線信号を送信する第1の無線機と、前記第1の無線機から送信された無線信号を受信する1乃至複数の第2の無線機とを備え、
前記第1の無線機は、送信対象の前記第2の無線機ごとに、実データの送信を行うデータ送信用の無線チャンネルを前記複数の第2の無線チャンネルから割り当てるチャンネル割当手段と、前記データ送信用の無線チャンネルを識別するためのチャンネル情報が格納されたリンク確立用の無線信号を生成するリンク確立信号生成手段と、前記実データを含むデータ送信用の無線信号及び前記リンク確立用の無線信号を前記第2の無線機に送信する信号送信手段と、前記信号送信手段による各無線チャンネルの無線信号の送信期間及び送信順序を決定する送信手順決定手段とを備え、
前記第2の無線機は、前記第1及び複数の第2の無線チャンネルから、無線信号を受信する受信対象の無線チャンネルを設定するチャンネル設定手段と、前記受信対象の無線チャンネルの信号強度を測定する信号強度測定手段と、前記信号強度測定手段が測定した信号強度が所定の閾値を超えていれば、当該無線チャンネルを用いて無線信号の受信を行う信号受信手段と、前記信号受信手段による無線信号の受信タイミングを調整する受信タイミング調整手段とを備え、
前記第1の無線機は、前記チャンネル割当手段が送信対象の第2の無線機ごとに前記データ送信用の無線チャンネルを割り当て、当該データ送信用の無線チャンネルに対応するチャンネル情報を含むリンク確立用の無線信号をリンク確立信号生成手段が生成し、当該リンク確立用の無線信号を前記信号送信手段が前記第1の無線チャンネルを用いて送信して前記第2の無線機との間でリンクが確立すると、前記送信手順決定手段が決定した送信期間及び送信順序に基づいて前記第2の無線チャンネルを順次に切り替えて前記データ送信用の無線信号を送信し、
前記第2の無線機は、前記受信対象の無線チャンネルを前記第1の無線チャンネルに設定した状態で前記信号受信手段が前記リンク確立用の無線信号を受信すると、当該リンク確立用の無線信号に含まれるチャンネル情報に基づいて受信対象の無線チャンネルを前記チャンネル設定手段が設定するとともに、当該受信対象の無線チャンネルを用いて前記第1の無線機が無線信号を送信する送信タイミングに応じて、当該受信対象の無線チャンネルの無線信号を受信する受信タイミングを受信タイミング調整手段が決定することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記リンク確立信号生成手段は、受信対象の前記第2の無線機において前記データ送信用の無線チャンネルを用いて無線信号を受信するための受信タイミングを判別可能なタイミング情報を含む前記リンク確立用の無線信号を出力し、
前記受信タイミング調整手段は、当該タイミング情報に応じて無線信号を受信するタイミングを決定することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記送信手順決定手段は、予め設定された所定の送信期間及び所定の送信順序に従って前記信号送信手段による各無線チャンネルの無線信号の送信期間及び送信順序を決定し、
前記受信タイミング調整手段は、前記リンク確立用の無線信号に格納されたチャンネル情報及び予め設定された前記所定の送信期間及び所定の送信順序に基づいて、前記受信タイミングを決定することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記チャンネル割当手段は、前記送信対象の前記第2の無線機のうちリンクが確立した第2の無線機の間で、前記データ送信用の無線チャンネルが重複しないように、前記第2の無線機にデータ送信用の無線チャンネルを割り当てることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−250024(P2011−250024A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119620(P2010−119620)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】