説明

無線通信システム

【課題】自律的に周波数の安定度を確保できる無線通信システムを提供する。
【解決手段】ステップS206において、AFC処理部130aは、受信した無線端末Aの長波標準電波信号のタイムコードを入力する。ステップS207において、AFC処理部130aは、格納している長波標準電波信号のタイムコードを取り出し、取り出した長波標準電波信号のタイムコードの時間情報と無線端末Aから受信した長波標準電波信号のタイムコードの時間情報を比較する。無線端末Aから受信したタイムコードの時間情報が新しいときは、ステップS208において、無線端末Aから送信される通信データの周波数に追従するように自局の周波数を補正する。ステップS209において、無線端末Aから受信したタイムコードを記憶する。また、ステップS207において、記憶している長波標準電波信号のタイムコードの時間情報が新しいときには、自局の周波数の補正は行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に長波標準電波信号の標準周波数に追従して周波数を補正する無線端末から構成される無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおける周波数安定については、電波法に係わるだけでなく、無線通信システムにも大きな影響を及ぼすため、無線通信システム毎に必要とされる周波数の安定度が規定されている。このため、基地局を経由する無線端末間の通信においては、基地局に高精度の基準発振器を設け、無線端末が基地局から送信される基準となる周波数(以下、基準発振周波数という)を受信し、基地局の基準発振周波数に自局の周波数を追従させている。また、基地局を経由しない無線端末間の通信においては、無線端末に高精度の基準発振器を設けることはコスト的に難しいため、無線端末が長波標準電波送信所から送信される長波標準電波信号を受信し、長波標準電波信号の周波数に自局の周波数を追従させている。長波標準電波信号は、標準となる時間(以下、標準時間という)及び周波数(以下、標準周波数という)を知らせするために送信される電波であり、標準時間に関する情報としてタイムコードを送信している。長波標準電波信号は、1Hzのタイムコードを標準周波数である40kHzもしくは60kHzの搬送波に10:1でAM変調をかけたもので、1秒を1ビット、60ビット(1分)を1フレームとするシリアルのデジタル信号である。タイムコードは、分、時、曜日、通算日(1年)、及び西暦年の情報(以下、時間情報という)や、うるう秒情報等をBCDで表現している。長波標準電波信号は、大鷹鳥谷山(おおたかどややま)標準電波送信所から40kHz、羽金山(はがねやま)標準電波送信所から60kHzの長波で送信されている。
【0003】
まず、基地局を経由する無線端末間の通信における、基地局の基準発振周波数に無線端末の周波数が追従する従来の無線通信システムについて説明する。次に、基地局を経由しない無線端末間の通信における、長波標準電波信号の搬送波である標準周波数(以下、長波標準電波信号の標準周波数という)に無線端末の周波数が追従する従来の無線通信システムについて説明する。
【0004】
図4に、基地局を経由する無線端末間の通信における、基地局の基準発振周波数に無線端末の周波数が追従する従来の無線通信システム300の構成を示す。無線通信システム300は、基地局310、車載機320、及び携帯機330から構成されている。無線通信システム300は、実際には複数の車載機320及び携帯機330から構成されているが、図4の無線通信システム300には、各々1台の車載機320及び携帯機330のみを記載している。基地局310には高精度の基準発振器が設けられ、車載機320及び携帯機330からの要求に応じて基準発振器から出力される基準発振周波数を車載機320及び携帯機330に送信している。車載機320は、基地局310を経由して他の車載機320や携帯機330と通信を行う車搭載用の無線端末である。また、車載機320は、一定周期で基地局310に対して基準発振周波数の送信を要求し、受信した基準発振周波数に自局の周波数を追従させるために周波数の補正を行っている。携帯機330は、基地局310を経由して他の携帯機330や車載機320と通信を行う携帯用の無線端末である。また、携帯機330は、一定周期で基地局310に対して基準発振周波数の送信を要求し、受信した基準発振周波数に自局の周波数を追従させるために周波数の補正を行っている。このように無線通信システム300では、基地局310から送信される基準発振周波数に基づいて、車載機320及び携帯機330の周波数を補正することで、無線通信システム300の周波数の安定度を確保している。
【0005】
図5に、基地局を経由しない無線端末間の通信における、長波標準電波信号の標準周波数に無線端末の周波数が追従する従来の無線通信システム400の構成を示す。無線通信システム400は、長波標準電波送信所410と携帯機420から構成されている。無線通信システム400は、実際には複数の携帯機420から構成されているが、図5の無線通信システム400には、2台の携帯機420のみを記載している。長波標準電波送信所410は、標準時間及び標準周波数を知らせるための長波標準電波信号を送信している。携帯機420は、基地局を経由せずに携帯機420間で通信を行う携帯用の無線端末であり、長波標準電波信号受信部421を備えている。また、携帯機420は、一定周期で長波標準電波信号を受信し、長波標準電波信号の標準周波数に自局の周波数を追従させるために周波数の補正を行っている。このように無線通信システム400では、長波標準電波送信所410から送信される長波標準電波信号の標準周波数に基づいて、携帯機420の周波数を補正することで、無線通信システム400の周波数の安定度を確保している。
【0006】
しかし、従来の無線通信システム400においては、携帯機420が長波標準電波信号を受信できない場所に長期間置かれた場合や、長波標準電波信号受信部421の故障により長波標準電波信号を長期間受信できない場合がある。このような場合には、携帯機420は長波標準電波信号の標準周波数に対して経年変化による周波数のズレが大きくなるので、通信品質の劣化が生じてしまうという問題があった。しかし、無線端末を安価で提供するためには、無線端末に高精度の基準発振器を設けることができない。
【0007】
無線端末が自局の基準発振周波数の補正を行う技術として下記の特許文献1と特許文献2がある。特許文献1は、VCTCXO(電圧制御温度補償水晶発振器)の非同期時の制御値を、温度レベル毎に基地局送信波を基準として補正値を求めることで、VCTCXO(電圧制御温度補償水晶発振器)の経年変化による原振のずれを自動で補正する周波数追従方法を提供している。特許文献2は、基地局から信号を受信できない場合に、時刻情報パルスである標準電波を受信し、この標準電波と水晶振動子から基準クロックを生成し、この基準クロックに基づいてVCTCXO(電圧制御温度補償水晶発振器)の経年劣化による周波数のずれを補正する周波数制御装置を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−305442
【特許文献2】特開2008−199523
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の周波数追従方法では、移動局が基地局からの送信波に同期して受信を行っているので、基地局には高精度の基準発振器が必要となる。特許文献2の周波数制御装置では、基地局を介さない時刻情報パルスである標準電波による周波数制御を行うので、基地局に高精度の基準発振器は必要ないが、受信した標準電波と水晶振動子から基準クロックを生成するので、無線端末に高精度の水晶振動子を搭載する必要がある。しかし、高精度の基準発振器は高価であり、無線端末を安価で提供できないという問題がある。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決できる無線端末及び無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線通信システムは、長波標準電波信号の標準周波数に追従して周波数を補正する無線端末から構成される無線通信システムであって、長波標準電波送信所から前記長波標準電波信号を受信する発信側の前記無線端末の長波標準電波信号受信手段と、長波標準電波信号受信手段で受信した前記長波標準電波信号の標準周波数に基づいて周波数を補正する発信側の前記無線端末の周波数補正手段と、着信側の前記無線端末に通信データを送信する発信側の前記無線端末の通信データ送信手段と、前記通信データを受信する着信側の前記無線端末の通信データ受信手段とを備え、着信側の前記無線端末が前記通信データ受信手段で受信した前記通信データの周波数に基づいて着信側の前記無線端末の周波数を補正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無線端末が長波標準電波信号を長期間受信できない場合でも、無線端末に高価な高精度の基準発振器を設けることなく、自律的に周波数の安定度を確保できる無線通信システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1と実施形態2に係る無線通信システムにおける無線端末の機能構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る無線端末相互の通信で周波数補正を行う手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態2に係る無線端末相互の通信で周波数補正を行う手順を示すフローチャートである。
【図4】従来の基地局の基準発振周波数に無線端末の周波数が追従する無線通信システムの構成を示す図である。
【図5】従来の長波標準電波信号の標準周波数に無線端末の周波数が追従する無線通信システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、基地局を経由しない無線端末間の通信において、無線端末が長波標準電波信号の標準周波数に自局の周波数を追従させて自局の周数を補正し、更に長波標準電波信号の標準周波数に自局の周波数を追従させて自局の周波数を補正した発信側の無線端末から着信側の無線端末に通信データを送信することで、着信側の無線端末は送信側の無線端末の通信データに自局の周波数を追従させて自局の周波数を補正することで、無線端末相互の通信で周波数の補正を行うことができる。
【0015】
(実施形態1)
本発明の実施形態1は、基地局を経由しない無線端末間の通信において、無線端末が長波標準電波信号の標準周波数に自局の周波数を追従させ、更に発信側の無線端末から着信側の無線端末に長波標準電波信号のタイムコードを送信し、発信側の無線端末から送信された長波標準電波信号のタイムコードと着信側の無線端末が記憶している長波標準電波信号のタイムコードとを比較し、発信側の無線端末から送信されたタイムコードの時間情報の方が新しいときに、発信側の無線端末から送信される通信データの周波数に追従する実施形態である。以下、図1に示す実施形態1の無線端末100の機能構成と、図2に示す無線端末相互の通信での周波数補正手順のフローチャートを用いて説明する。尚、実施形態1の無線通信システム400aの構成は、図5に示す無線通信システム400の構成において、携帯機420を無線端末100に変更したもので、それ以外は同じである。
【0016】
まず、図1に示す無線端末100の機能構成について説明する。無線端末100は、データ通信用アンテナ110、送受信処理部120、DSP(Digital Signal Processor:中央制御装置)130、記憶部140、長波標準電波信号用アンテナ150、及び長波標準電波信号受信処理部160から構成されている。また、DSP130には自動周波数制御(以下、AFCという)処理部130aを備え、記憶部140には長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aを備えている。
【0017】
データ通信用アンテナ110は、無線端末100相互間の通信において、相手の無線端末100に通信データの送信、及び相手の無線端末100から通信データを受信するアンテナである。送受信処理部120は、相手の無線端末100にデータ通信用アンテナ110を介して送信する通信データの送信処理、及び相手の無線端末100からデータ通信用アンテナ110を介して受信する通信データの受信処理を行う。DSP130は、送受信処理部120から入力する通信データをデータ形式に従って音声データ、文字データ、または映像データなどに変換し、文字、音声、または映像として図示しない映像表示部や音声出力部に出力する。また、DSP130は、無線端末100に入力される文字データ、音声データ、または映像データなどをデータ形式に従って通信データに変換し、送受信処理部120に出力する。また、DSP130は、無線端末100のPTT(Push to Talk)ボタンの押下により発信要求をAFC処理部130aに通知し、PTTボタンの押下の解除により発信終了要求をAFC処理部130aに通知する。また、DSP130は、無線端末100に対して着信があると着信をAFC処理部130aに通知し、着信による通信が終了すると着信終了をAFC処理部130aに通知する。記憶部140は、RAMやROMからなりDSP130で実行するプロクラムや使用するデータを記憶する。
【0018】
長波標準電波信号用アンテナ150は、長波標準電波送信所410から送信される長波標準電波信号を受信するアンテナである。長波標準電波信号受信処理部160は、長波標準電波送信所410から長波標準電波信号用アンテナ150を介して受信する長波標準電波信号の復調処理を行う。AFC処理部130aは、長波標準電波信号受信処理部160から入力する長波標準電波信号の標準周波数に追従するように自局の周波数を補正する処理を行う。長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aは、AFC処理部130aにより長波標準電波信号のタイムコードが格納されるエリアである。
【0019】
次に、図2に示す無線端末100相互の通信で周波数補正を行う手順についてステップ順に説明する。
【0020】
相互に通話する2台の無線端末100について、一方を発信側の無線端末A、他方を着信側の無線端末Bとすると、図2は、発信側の無線端末Aと着信側の無線端末Bの間で行われるAFC処理の手順である。無線端末Aの電源を投入すると、無線端末AのDSP130がAFC処理部130aを起動し、AFC処理部130aが無線端末AのAFC処理を開始する。同様に、無線端末Bの電源を投入すると、無線端末BのDSP130がAFC処理部130aを起動し、AFC処理部130aが無線端末BのAFC処理を開始する。
【0021】
まず、発信側である無線端末AのAFC処理について説明する。
(ステップS101)
AFC処理部130aは、予め決められた一定時間を通信の待受け状態とし、時間の経過によりタイムアウトを検出するとステップS102に進む。
【0022】
(ステップS102)
次に、AFC処理部130aは、長波標準電波信号受信処理部160が受信した長波標準電波信号を、長波標準電波信号受信処理部160から入力する。
【0023】
(ステップS103)
次に、AFC処理部130aは、長波標準電波信号の標準周波数に追従するように自局の周波数を補正する。
【0024】
(ステップS104)
次に、AFC処理部130aは、ステップS102で入力した長波標準電波信号からタイムコードを取り出し、記憶部140の長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aに記憶する。このタイムコードの時間情報が周波数を補正した時刻となるので、周波数を補正した時刻が長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aに記憶されることになる。
【0025】
(ステップS105)
次に、AFC処理部130aは、DSP130から発信要求の通知が有るかを判定する。発信要求の通知が有るとき(ステップS105のYes)は、AFC処理部130aは、長波標準電波信号のタイムコードを無線端末Bに送信するステップS106に進む。また、発信要求の通知が無いとき(ステップS105のNo)は、AFC処理部130aは、通信の待受け状態になるためステップS101に戻る。
【0026】
(ステップS106)
次に、AFC処理部130aは、長波標準電波信号のタイムコードを無線端末Bに送信するために、記憶部140の長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aから長波標準電波信号のタイムコードを取り出し、送受信処理部120に出力する。送受信処理部120はこのタイムコードを、データ通信用アンテナ110を介して無線端末Bに送信する。
【0027】
(ステップS107)
次に、AFC処理部130aは、発信終了要求の通知が有るかを判定する。発信終了要求の通知が有るとき(ステップS107のYes)は、AFC処理部130aは、通信の待受け状態になるためステップS101に戻る。また、発信終了要求の通知が無いとき(ステップS107のNo)は、AFC処理部130aは、発信終了要求の通知待ち状態とするステップS108に進む。
【0028】
(ステップS108)
AFC処理部130aは、予め決められた一定時間を発信終了要求の通知待状態とし、時間の経過によりタイムアウトを検出するとステップS107に戻る。
【0029】
以上のように、発信側の無線端末Aから着信側の無線端末Bに、無線端末Aが受信した長波標準電波信号のタイムコードを送信することができる。
【0030】
次に、着信側である無線端末BのAFC処理について説明する。
(ステップS201)
AFC処理部130aは、予め決められた一定時間を通信の待受け状態とし、時間の経過によりタイムアウトを検出するとステップS202に進む。
【0031】
(ステップS202)
次に、AFC処理部130aは、長波標準電波信号受信処理部160が受信した長波標準電波信号を、長波標準電波信号受信処理部160から入力する。
【0032】
(ステップS203)
次に、AFC処理部130aは、長波標準電波信号の標準周波数に追従するように自局の周波数を補正する。
【0033】
(ステップS204)
次に、AFC処理部130aは、ステップS202で入力した長波標準電波信号からタイムコードを取り出し、記憶部140の長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aに記憶する。このタイムコードの時間情報が周波数を補正した時刻となるので、周波数を補正した時刻が長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aに記憶されることになる。
【0034】
(ステップS205)
次に、AFC処理部130aは、DSP130から着信の通知が有るかを判定する。着信の通知が有るとき(ステップS205のYes)は、AFC処理部130aは、無線端末Aから送信される長波標準電波信号のタイムコードを受信するステップS206に進む。また、着信の通知が無いとき(ステップS205のNo)は、AFC処理部130aは、通信の待受け状態になるためステップS201に戻る。
【0035】
(ステップS206)
次に、AFC処理部130aは、送受信処理部120が受信した無線端末Aの長波標準電波信号のタイムコードを、送受信処理部120から入力する。
【0036】
(ステップS207)
次に、AFC処理部130aは、記憶部140の長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aから長波標準電波信号のタイムコードを取り出し、取り出した長波標準電波信号のタイムコードの時間情報と無線端末Aから受信した長波標準電波信号のタイムコードの時間情報を比較する。無線端末Aから受信した長波標準電波信号のタイムコードの時間情報が現在時間に近い(以下、新しいという)とき(ステップS207のYes)は、AFC処理部130aは、無線端末Aから受信した長波標準電波信号の標準周波数に追従するように周波数を補正するステップS208に進む。また、長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aから取り出した長波標準電波信号のタイムコードの時間情報が新しいとき(ステップS207のNo)は、AFC処理部130aは、周波数の補正を行わずに発信終了要求の通知が有るかを判定するステップS210に進む。
【0037】
(ステップS208)
次に、AFC処理部130aは、無線端末Aから送信される通信データの周波数に追従するように自局の周波数を補正する。
【0038】
(ステップS209)
次に、AFC処理部130aは、無線端末Aから受信した長波標準電波信号からタイムコードを取り出し、記憶部140の長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aに記憶する。このタイムコードの時間情報が周波数を補正した時刻となるので、周波数を補正した時刻が長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aに記憶されることになる。
【0039】
(ステップS210)
次に、AFC処理部130aは、着信終了の通知が有るかを判定する。着信終了の通知が有るとき(ステップS210のYes)は、AFC処理部130aは、通信の待受け状態になるためステップS201に戻る。また、着信終了の通知が無いとき(ステップS210のNo)は、AFC処理部130aは、着信終了の通知待ち状態とするステップS211に進む。
【0040】
(ステップS211)
AFC処理部130aは、予め決められた一定時間を着信終了の通知待状態とし、時間の経過によりタイムアウトを検出するとステップS210に戻る。
【0041】
以上の実施形態1によれば、着信側の無線端末Bは、発信側の無線端末Aから長波標準電波信号のタイムコードを受信し、無線端末Bが格納しているタイムコードの時間情報と、無線端末Aから送信されたタイムコードの時間情報を比較し、無線端末Aから送信されたタイムコードの時間情報が新しいときには、無線端末Aから送信される通信データの周波数に追従することで自局の周波数を最新の長波標準電波信号の標準周波数に補正できる。
【0042】
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、実施形態1において発信側の無線端末から送信された長波標準電波信号のタイムコードと着信側の無線端末が記憶している長波標準電波信号のタイムコードとを比較し、発信側の無線端末から送信されたタイムコードの時間情報の方が新しいときに、発信側の無線端末から送信される通信データの周波数に追従し、また着信側の無線端末が記憶しているタイムコードの時間情報の方が新しいときには、着信側の無線端末から発信側の無線端末に長波標準電波信号のタイムコードを送信し、発信側の無線端末は着信側から送信される通信データの周波数に追従する実施形態である。以下、図3に示す無線端末相互の通信での周波数補正手順のフローチャートを用いて説明する。尚、実施形態2の無線通信システム400bの構成は、図5に示す無線通信システム400の構成において、携帯機420を無線端末200に変換したもので、それ以外は同じである。また、実施形態2の無線端末200の機能構成は、図1に示す無線端末100の機能構成に同じである。
【0043】
次に、図3に示す無線端末200相互の通信で周波数補正を行う手順について、図2に示す実施形態1における手順と異なる処理のステップについて説明する。
【0044】
まず、着信側である無線端末BのAFC処理におけるステップS207'とステップS207aについて説明する。
【0045】
(ステップS207')
ステップS207'において、AFC処理部130aは、記憶部140の長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aから長波標準電波信号のタイムコードを取り出し、取り出した長波標準電波信号のタイムコードの時間情報と無線端末Aから受信した長波標準電波信号のタイムコードの時間情報を比較する。無線端末Aから受信した長波標準電波信号のタイムコードの時間情報が新しいとき(ステップS207'のYes)は、AFC処理部130aは、無線端末Aから受信した長波標準電波信号の標準周波数に追従するように周波数を補正するステップS208に進む。また、長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aから取り出した長波標準電波信号のタイムコードの時間情報が新しいとき(ステップS207'のNo)は、AFC処理部130aは、長波標準電波信号のタイムコードを無線端末Aに送信するステップS207aに進む。
【0046】
(ステップS207a)
次に、AFC処理部130aは、長波標準電波信号のタイムコードを無線端末Aに送信するために、記憶部140の長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aから長波標準電波信号のタイムコードを取り出し、送受信処理部120に出力する。送受信処理部120はこのタイムコードを、データ通信用アンテナ110を介して無線端末Aに送信する処理を実行し、その後ステップS210に進む。
【0047】
次に、発信側である無線端末AのAFC処理におけるステップS106aからステップS106cについて説明する。
【0048】
(ステップS106a)
無線端末AはステップS106を実行した後、ステップS106aに進む。ステップS106aにおいて、AFC処理部130aは、送受信処理部120が受信した無線端末Bの長波標準電波信号のタイムコードを、送受信処理部120から入力する。
【0049】
(ステップS106b)
次に、AFC処理部130aは、無線端末Bから送信される通信データの周波数に追従するように自局の周波数を補正する。
【0050】
(ステップS106c)
次に、AFC処理部130aは、無線端末Bから受信した長波標準電波信号からタイムコードを取り出し、記憶部140の長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aに記憶する。このタイムコードの時間情報が周波数を補正した時刻となるので、周波数を補正した時刻が長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aに記憶されることになる。
【0051】
以上の実施形態2によれば、着信側の無線端末Bは、発信側の無線端末Aから長波標準電波信号のタイムコードを受信し、無線端末Bが格納しているタイムコードの時間情報と、無線端末Aから送信されたタイムコードの時間情報を比較し、無線端末Aから送信されたタイムコードの時間情報が新しいときには、無線端末Aの周波数に追従することで自局の周波数を最新の長波標準電波信号の標準周波数に補正できる。一方、無線端末Bの長波標準電波信号タイムコード格納エリア140aに記憶されたタイムコードの時間情報が新しいときには、無線端末Aが無線端末Bから送信される通信データの周波数に追従することで無線端末Aは周波数を最新の長波標準電波信号の標準周波数に補正できる。
【0052】
尚、実施形態1または実施形態2において、発信側の無線端末AではステップS105(発信要求有りか)のみ判定するようにしたが、ステップS105がNoのときに着信側の無線端末BのステップS205に相当する処理ステップを実行して「着信有りか」を判定し、以降は無線端末BのステップS206からステップS211に相当する処理を行うようにして発信側と着信側を共通の処理とすることができる。また、発信要求と着信を同じタイミングで定期的にチェックすることができる。また、実施形態1または実施形態2において、着信側の無線端末BではステップS205(着信有りか)のみ判定するようにしたが、ステップS205がNoのときに発信側の無線端末AのステップS105に相当する処理ステップを実行して「発信要求有りか」を判定し、以降は無線端末AのステップS106からステップS108に相当する処理を行うようにして着信側と発信側を共通の処理とすることができる。また、着信と発信要求を同じタイミングで定期的にチェックすることができる。
【0053】
尚、実施形態1または実施形態2では無線端末A及び無線端末Bは、長波標準電波信号を受信できる無線端末として説明したが、長波標準電波信号を受信する機能を装備していない無線端末、または故障や障害などで長波標準電波信号を受信できない無線端末でも、発信側の無線端末が長波標準電波信号を受信可能であれば、長波標準電波信号の標準周波数に追従して自律的に周波数を高精度に補正することができる。しかし、発信側の無線端末が長波標準電波信号を受信する機能を装備していない場合には、着信側の無線端末は、発信側から長波標準電波信号を受信しないので、発信側の周波数に追従するような周波数の補正は行われない。また、基地局を経由する無線端末間の通信においても、基地局や無線端末に高価な高精度の基準発振器を設けることなく、無線端末が長波標準電波信号を受信することで自律的に周波数を高精度に補正することができる。
【0054】
尚、実施形態1または実施形態2では無線端末Aは、発信要求をユーザ手動によるPTTの押下によるものだけではなく、例えば特定の周波数(1か月など)をもって自動で発信要求を発生し、無線端末Bは無線端末Aの送信を受信し、図2同様の周波数を補正する処理を行ってもよい。また、図3と同様の処理を行う場合も同様に、無線端末Bが自動で無線端末Aに送信して無線端末Aが周波数を補正する処理を行ってもよい。このようにすれば、本機能を生かし、無線端末のユーザが意識することなく自動で無線端末の周波数補正を実現することができる。また、無線端末が発信する際に、長波標準電波信号のタイムコードのみを送信する単独送信や、送信における音声データ等の通信データと共に長波標準電波信号のタイムコードのデータを重畳して送信する方法をとることも可能である。
【0055】
本発明によれば、無線端末が長波標準電波信号を受信できない場合でも、無線端末に高価な高精度の基準発振器を設けることなく自律的に周波数を高精度に補正し安定させる無線通信システムを提供できる。
【0056】
具体的な実施の形態により本発明を説明したが、上記実施の形態は本発明の例示であり、この実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0057】
以上をまとめると、本発明は次のような特徴を有する。
(1)本発明の無線通信システムは、長波標準電波信号の標準周波数に追従して周波数を補正する無線端末から構成される無線通信システムであって、長波標準電波送信所から前記長波標準電波信号を受信する発信側の前記無線端末の長波標準電波信号受信手段と、長波標準電波信号受信手段で受信した前記長波標準電波信号の標準周波数に基づいて周波数を補正する発信側の前記無線端末の周波数補正手段と、着信側の前記無線端末に通信データを送信する発信側の前記無線端末の通信データ送信手段と、前記通信データを受信する着信側の前記無線端末の通信データ受信手段とを備え、着信側の前記無線端末が前記通信データ受信手段で受信した前記通信データの周波数に基づいて着信側の前記無線端末の周波数を補正することを特徴としている。
(2)本発明の無線通信システムは、長波標準電波信号の標準周波数に追従して周波数を補正する無線端末から構成される無線通信システムであって、長波標準電波送信所から前記長波標準電波信号を受信する発信側の前記無線端末の発信側長波標準電波信号受信手段と、前記発信側長波標準電波信号受信手段で受信した前記長波標準電波信号の標準周波数に基づいて周波数を補正する発信側の前記無線端末の発信側周波数補正手段と、着信側の前記無線端末に前記長波標準電波信号の発信側タイムコードを送信する発信側の前記無線端末の発信側タイムコード送信手段と、着信側の前記無線端末に発信側通信データを送信する発信側の前記無線端末の発信側通信データ送信手段と、前記長波標準電波送信所から前記長波標準電波信号を受信する着信側の前記無線端末の着信側長波標準電波信号受信手段と、前記着信側長波標準電波信号受信手段で受信した前記長波標準電波信号の標準周波数に基づいて周波数を補正する着信側の前記無線端末の着信側周波数補正手段と、発信側の前記無線端末から前記発信側タイムコードを受信する着信側の前記無線端末の着信側タイムコード受信手段と、発信側の前記無線端末から前記発信側通信データを受信する着信側の前記無線端末の着信側通信データ受信手段と、着信側の前記無線端末は、発信側の前記無線端末から受信した前記発信側タイムコードと、前記着信側長波標準電波信号受信手段で受信した前記長波標準電波信号の着信側タイムコードとを比較するタイムコード比較手段と、を備えることを特徴としている。
(3)(2)の本発明の無線通信システムは、前記タイムコード比較手段により前記発信側タイムコードの方が新しいときに、前記着信側通信データ受信手段により受信した前記発信側通信データの周波数に基づいて着信側の前記無線端末の周波数を補正することを特徴としている。
(4)(2)の本発明の無線通信システムは、発信側の前記無線端末に前記着信側タイムコードを送信する着信側の前記無線端末の着信側タイムコード送信手段と、発信側の前記無線端末に着信側通信データを送信する着信側の前記無線端末の着信側通信データ送信手段と、着信側の前記無線端末から前記着信側通信データを受信する発信側の前記無線端末の発信側通信データ受信手段とを備え、前記タイムコード比較手段により前記着信側タイムコードの方が新しいときに、前記発信側通信データ受信手段により受信した前記着信側通信データの周波数に基づいて発信側の前記無線端末の周波数を補正することを特徴としている。
(5)(2)から(4)のいずれかの本発明の無線通信システムは、発信側の前記無線端末は前記長波標準電波信号の発信側タイムコードを記憶する発信側タイムコード記憶手段と、着信側の前記無線端末は前記長波標準電波信号の着信側タイムコードを記憶する着信側タイムコード記憶手段と、を備えることを特徴としている。
(6)(1)から(5)のいずれかの本発明の無線通信システムの前記無線端末は携帯機であることを特徴としている。
(7)(1)から(5)のいずれかの本発明の無線通信システムの前記無線端末は車載機であることを特徴としている。
(8)(1)から(5)のいずれかの本発明の無線通信システムの前記無線端末は基地局であることを特徴としている。
(9)本発明の無線通信システムの周波数補正方法は、長波標準電波信号の標準周波数に追従して周波数を補正する無線端末から構成される無線通信システムの周波数補正方法であって、長波標準電波送信所から前記長波標準電波信号を受信する発信側の前記無線端末の長波標準電波信号受信工程と、長波標準電波信号受信工程で受信した前記長波標準電波信号の前記標準周波数に基づいて周波数を補正する発信側の前記無線端末の周波数補正工程と、着信側の前記無線端末に通信データを送信する発信側の前記無線端末の通信データ送信工程と、前記通信データを受信する着信側の前記無線端末の通信データ受信工程とを備え、着信側の前記無線端末が前記通信データ受信工程で受信した前記通信データの周波数に基づいて着信側の前記無線端末の周波数を補正することを特徴としている。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、無線通信システムに好適であるが、無線通信システムに限られるものではなく、長波標準電波信号の受信が可能なシステム一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
100・・・・・・・・無線端末
110・・・・・・・・データ通信用アンテナ
120・・・・・・・・送受信処理部
130・・・・・・・・DSP
130a・・・・・・・AFC処理部
140・・・・・・・・記憶部
140a・・・・・・・長波標準電波信号タイムコード格納エリア
150・・・・・・・・長波標準電波信号用アンテナ
160・・・・・・・・長波標準電波信号受信処理部
200・・・・・・・・無線端末
300・・・・・・・・無線通信システム
310・・・・・・・・基地局
320・・・・・・・・車載機
330・・・・・・・・携帯機
400・・・・・・・・無線通信システム
400a・・・・・・・無線通信システム
400b・・・・・・・無線通信システム
410・・・・・・・・長波標準電波送信所
420・・・・・・・・携帯機
421・・・・・・・・長波標準電波信号受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長波標準電波信号の標準周波数に追従して周波数を補正する無線端末から構成される無線通信システムであって、
長波標準電波送信所から前記長波標準電波信号を受信する発信側の前記無線端末の長波標準電波信号受信手段と、
長波標準電波信号受信手段で受信した前記長波標準電波信号の標準周波数に基づいて周波数を補正する発信側の前記無線端末の周波数補正手段と、
着信側の前記無線端末に通信データを送信する発信側の前記無線端末の通信データ送信手段と、
前記通信データを受信する着信側の前記無線端末の通信データ受信手段とを備え、
着信側の前記無線端末が前記通信データ受信手段で受信した前記通信データの周波数に基づいて着信側の前記無線端末の周波数を補正することを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−105149(P2012−105149A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253099(P2010−253099)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】