無線通信システム
【課題】 周波数資源を有効に利用することで、複数のノードで周波数を共用しつつ、中継による伝送遅延を低減するようにした無線通信システムを提供する。
【解決手段】 送信元ノード1Aから中継ノード1Bを介して送信先ノード1Cにデータ伝送する無線通信システムにおいて、送信元ノード1Aは、各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部13と、各周波数の使用状態に基づき送信周波数を決定する送信周波数決定部13と、決定した送信周波数を中継ノードに送信する周波数情報送信部13と、データ送信部13を備え、中継ノード1Bは、各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部13と、周波数情報と各周波数の使用状態に基づき中継周波数を決定する決定部13と、中継周波数を送信先ノードに送信する周波数情報送信部13と、中継周波数を使用して中継送信するデータ送信部13をもつ無線通信システム。
【解決手段】 送信元ノード1Aから中継ノード1Bを介して送信先ノード1Cにデータ伝送する無線通信システムにおいて、送信元ノード1Aは、各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部13と、各周波数の使用状態に基づき送信周波数を決定する送信周波数決定部13と、決定した送信周波数を中継ノードに送信する周波数情報送信部13と、データ送信部13を備え、中継ノード1Bは、各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部13と、周波数情報と各周波数の使用状態に基づき中継周波数を決定する決定部13と、中継周波数を送信先ノードに送信する周波数情報送信部13と、中継周波数を使用して中継送信するデータ送信部13をもつ無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLSR(Optimized Link State Routing)プロトコル等のように経路情報を交換して、複数の無線通信機の間で複数の周波数周波数を利用して通信を行なう無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の無線通信機の間で経路情報を交換して、経路を最適化するアドホック通信が知られている。
【0003】
特許文献1は、経路情報を最新なものに維持することで、通信容量を向上させるアドホックネットワーク技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−296262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線LANなどで使用されるCSMA/CAでは、複数のノードが同じ周波数を共用しており、他のノードが通信中でない(周波数が使用されていない)ことを検知したときに自ノードの送信を行う。そのため、アドホック通信において、CSMA/CAのように複数のノードが同じ周波数を共用する通信方式を採用すると、送信元のノードとそれに隣接する中継ノードは同時に送信できないことから、中継数が多くなると伝送遅延が顕著になるという問題があった。
また、周波数資源を有効に使用するために、空き周波数のマネジメントを行うような通信システムでは、各ノードを統括する基地局が必要であった。
本発明は、周波数資源を有効に利用することで、複数のノードで周波数を共用しつつ、中継による伝送遅延を低減するようにした無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決する一実施形態は、
送信元ノード(無線通信機1A)から中継ノード(無線通信機1B)を介して送信先ノード(無線通信機1C)にデータ伝送する無線通信システムにおいて、前記送信元ノード(無線通信機1A)は、複数の周波数をスキャンして各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部(制御部13)と、前記周波数スキャン部によって検知された各周波数の使用状態に基づき、送信周波数を決定する送信周波数決定部(制御部13)と、前記送信周波数決定部で決定した送信周波数を周波数情報として前記中継ノードに送信する周波数情報送信部(制御部13、モデム部16、無線部17、アンテナ18)と、前記送信周波数決定部で決定した送信周波数を使用してデータを送信するデータ送信部と(制御部13、モデム部16、無線部17、アンテナ18)、を備え、前記中継ノード(無線通信機1B)は、複数の周波数をスキャンして各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部(制御部13)と、前記送信元ノードから送信された前記周波数情報と、自ノードの前記周波数スキャン部によって検知された各周波数の使用状態に基づき、中継送信で使用する中継周波数を決定する中継周波数決定部(制御部13)と、前記中継周波数決定部で決定した中継周波数を、周波数情報として前記送信先ノードに送信する周波数情報送信部(制御部13、モデム部16、無線部17、アンテナ18)と、前記中継周波数決定部で決定した中継周波数を使用して、前記送信元ノードから送信されたデータを中継送信するデータ送信部(制御部13、モデム部16、無線部17、アンテナ18)と、を具備することを特徴とする無線通信システムである。
【発明の効果】
【0007】
中継ノードにおいて、複数の周波数をスキャンして各周波数の使用状態を検知すると共に、送信元ノードから送信された周波数情報(送信元ノードの送信周波数)と、前記周波数スキャン部によって検知された各周波数の使用状態に基づき、中継送信で使用する中継周波数を決定するように構成したので、複数のノードで周波数を共用しつつ、周波数資源を有効に利用することができ、中継による伝送遅延を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムを構成する無線通信機の構成を示すブロック図。
【図2】同じく無線通信機どうしの通信の一例を示す説明図。
【図3】同じく無線通信機どうしが単一の周波数で中継する際の説明図。
【図4】同じく無線通信機どうしが複数の周波数で中継する際の説明図。
【図5】同じく無線通信機どうしがセンシング情報とルーティング情報を交換する際の説明図。
【図6】同じく無線通信機どうしが4つの周波数で中継する際の説明図。
【図7】同じく無線通信機どうしにおいて、多重化していない場合のチャネル決定手順の一例を示すフローチャート。
【図8】同じく無線通信機どうしの多重化していない場合の通信イメージの一例を示す説明図。
【図9】同じく無線通信機どうしにおいて、多重化している場合のチャネル決定手順の一例を示すフローチャート。
【図10】同じく無線通信機どうしの多重化している場合の通信イメージの一例を示す説明図。
【図11】同じく無線通信機において、送信元となって通信を行う際の多重チャネル決定処理の一例を示すフローチャート。
【図12】同じく無線通信機において、中継器となって通信を行う際の多重チャネル決定処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係る例えばソフトウェア無線機(これに限らない)で実現される無線通信機1(後述する無線通信機1A,1B,1C)は、図1に詳細に示されるように、ユーザが操作するための操作部11と、クライアントPCまたはサーバSと通信を行なうためのインターフェース部12と、後述するアドホックルーティング処理や周波数スキャン処理、送信(中継)周波数の決定処理、多重周波数決定処理を含む各種処理を行って無線通信機1の各部を制御する制御部13と、動作プログラム等を格納するROM14と、動作プログラムや制御情報等を格納するRAM15と、独立した多重通信を行うための変調復調機能である複数(例えば5基)のモデム部16と、独立した多重通信を行うための変調復調機能である複数(例えば5基)の無線部17と、通信波を放射するアンテナ18を有している。
【0010】
次に、このような構成をもつ無線通信機1は、この実施形態において、アドホック通信が用いられており、そのアドホックプロトコルの一例として、OLSR(Optimized Link State Routing)プロトコルを採用している。ここで、OLSRの概要について簡単に説明する。
【0011】
OLSRは、経路情報を常時交換するプロアクティブ型のプロトコルであり、必要最小限の中継ノード(MPR:Multipoint Relay)の集まりによってフラッディングを行うことが特徴である。OLSRでは、主にHELLOパケットとTC(Topology Control)パケットをやりとりすることで経路構築を行う。
【0012】
HELLOパケットは、各ノードから送信され、自ノードのリンク情報やMPR、MPRセレクタなどの情報が含まれる。MPRとは、中継を担当するノードのことであり、効率的なフラッディングを行うために、各ノードが隣接ノードの1ホップ先のリンク情報などを参照して選択する。また、MPRセレクタとは、自ノードをMPRとして選択しているノードのことである。
【0013】
MPRを選択しただけでは、まだ通信経路は構築されない。そこで、OLSRにおいては、TCパケットを使用してネットワーク全体のトポロジーを構築する。TCパケットは、MPRセレクタ集合の情報が含まれ、MPRとして選択されている各ノードから送信される。TCパケットは、MPRによってネットワーク全体にフラッディングされる。
【0014】
このTCパケットにより、ネットワークの全てのノードは、MPRとそのMPRセレクタ集合の情報を取得することができる。各ノードは、それらの情報に基づき、送信先(宛先)までの最短経路を算出して経路表を作成する。本発明の一実施形態においては、使用可能なチャネルの情報を上記のHELLOパケットに含ませることで、通信エリア内にあるノードが使用可能なチャネルを把握することができる。
【0015】
本発明の一実施形態であるアドホックネットワークを用いた無線通信機1は、図2に示すように、複数の無線通信機間で通信を行い、マルチバンド対応であって、1台で複数(この実施形態では5つのチャネルの例を示しているがこれに限らない)のチャネルを有している。このような無線通信機1においては、通信エリア内の他の無線通信機1同士と例えば半二重通信により、通信が行われる。なお、本発明は、半二重通信に限定されない。半二重通信とは、双方向通信において同時に双方からデータを送信したり受信したりすることができず、時間を区切って片方向からの送信しかできない通信方式である。この場合、図3に示すように、第1無線通信機1Aから第2無線通信機1Bへ第1パケットを第1周波数F1で時刻t1において送信することはよいが、時刻t2において、第2パケットを第1無線通信機1Aから第2無線通信機1Bへ連続して送信しようとすると、第2無線通信機1Bから第3無線通信機1Cに同じく第1周波数F1で第1パケットが送信中であり、同一周波数の通信を同時に行なうことができない。このため、送信元ノードである第1無線通信機1Aから送信先ノードである第3無線通信機1Cまでデータを伝送するのには、第1無線通信機1Aから中継ノードである第2無線通信機1Bに送信する時間の2倍以上の時間を要する。
【0016】
これに対して、図4の場合によれば、第1無線通信機1Aから第2無線通信機1Bへ第1パケットを第1周波数F1で時刻t1において送信し、時刻t2において、第2無線通信機1Bから第3無線通信機1Cへは、第1周波数F1ではなく第2周波数F2のチャネルにより第1パケットを送信するため、第1無線通信機1Aから第2無線通信機1Bへ第2パケットを第1周波数F1で送信することができる。従って、これにより、図3の場合に較べ、第1無線通信機1Aから第3無線通信機1Cまでデータ伝送時間を短縮することができる。この伝送時間の短縮は、中継ノードが多くなるほど顕著となる。
【0017】
なお、本発明の一実施形態においては、定期的に周波数スキャン(5周波数)を行い、その結果をセンシング情報として、上述したHELLOパケットに含めて周辺ノードにフラッディングする。
図5に示すように、複数の無線通信機1A,1B,1Cの間で、センシング情報を含むHELLOパケットを制御チャネル、例えば後述するように周波数F1を使用して交換を行うことで、無線通信機1の制御部13は、近傍の無線通信機の状況(リンク先で送信に使用可能な周波数など)を常に認識することができる。なお、この実施形態では、制御チャネルとしてF1を設定している例を示してHELLOパケットの送信の安定化を図っているが、必ずしも専用の制御チャネルを設定せずに、他の周波数を適宜使用することでも、衝突が生じなければ同等の技術的効果を得ることができる。
【0018】
また、本発明の一実施形態においては、図6に示すように、複数の無線通信機1A,1B,1C,…の間で交換したセンシング情報に基づき、無線通信機1A,1B,1C,…の間で、1つの周波数だけに限らず複数の周波数において多重通信を行うことができる。これにより、通信状況に応じて自動的に通信容量を拡大することが可能となる。
【0019】
・周波数決定処理
送信元ノードと中継ノードにおける送信(中継)周波数決定処理について説明する。
本実施形態では、F1からF5までの5つの周波数帯を有する。F1は、上述したHELLOパケットやTCパケットの送受信、及び、後述する送信(中継)周波数情報や、これから送信するデータの宛先情報などを通知するための制御チャネル用として使用され、F2からF5の4周波数がデータパケットの送信に使用するデータ送信用として使用される。
【0020】
先ず、送信元ノードの周波数決定処理について説明する。送信元ノードの制御部13は、定期的に周波数スキャンを実施し、空いている周波数の情報(センシング情報)を取得する。また、中継ノード(MPR)から送信されたHELLOパケットに含まれるセンシング情報を取得する。そして、自ノード及び中継ノードで送信に使用可能な周波数(いずれのノードでも空きが検知された周波数)を送信周波数として決定する。使用可能な周波数が複数存在する場合は、任意の周波数(例えばF番号の一番小さい周波数)を選択する。
【0021】
続いて、中継ノードの周波数決定処理について説明する。中継ノードの制御部13は、定期的に周波数スキャンを実施し、空いている周波数の情報(センシング情報)を取得する。また、送信先ノード(あるいは次の中継ノード)から送信されたHELLOパケットに含まれるセンシング情報を取得する。
そして、自ノード及び送信先ノード(あるいは次の中継ノード)で送信に使用可能な周波数(いずれのノードでも空きが検知された周波数)の中から、送信元ノード(あるいは前の中継ノード)で決定された送信周波数以外の周波数を中継周波数として決定する。使用可能な周波数が複数存在する場合は、任意の周波数(例えば番号の一番小さい周波数)を選択する。
尚、送信元ノード(あるいは前の中継ノード)で決定された送信周波数は、制御チャネルF1を使用し、周波数情報として中継ノードに送信され、通知される。
また、使用可能な周波数が存在しない場合は、CSMA/CAにより、送信元ノード(あるいは前の中継ノード)で決定された周波数が空くのを待って送信を行う。
【0022】
・具体的な通信例
次に、図7及び図8を用いて、複数の無線通信機1A,1B,1C,1Dの間での具体的な通信例を詳細に説明する。
尚、図7及び図8の説明では、上述した周波数決定処理により、無線通信機1Aの送信周波数がF2、無線通信機1Bの送信周波数がF3、無線通信機1Cの送信周波数がF2に決定するものとする。
図7のフローチャートにおいて、第1無線通信機1Aは、自己の有するセンシング情報に基づいて送信にF2を使用することを決定し、F1を用い、「第2無線機1Bとの通信にF2を使用する」ことを第2無線通信機1Bに通知する(ステップS1)。第2無線通信機1Bは、第1無線通信機1AがF2を使用するとの情報と自己の有するセンシング情報に基づいて第3無線機1Cとの通信にF3を使用することを決定し、F1を用い、自分は第3無線機1Cとの通信にF3を使用すると共に、隣接する無線機がF2を使用していることを第3無線通信機1Cに通知する(ステップS2)。第3無線通信機1Cは、第2無線通信機1BがF3を使用すると共に、第2無線通信機1Bの通信エリア内にF2を使用している無線機が存在するとの情報と、自己の有するセンシング情報に基づいてF4を使用することを決定し、自分は第4無線通信機1Dとの通信にF4を使用すると共に、隣接する無線機がF3を使用していることを第4無線通信機1Dに通知する(ステップS3)。その後、第1無線通信機1A乃至第4無線通信機1Dは、確保された周波数を使用してデータパケットの伝送を行う(ステップS4)。この結果、図8に示すように、通信エリア内にある無線通信機同志は異なる周波数の周波数を使用して通信を行なうことになるので、第1無線通信機1Aから第4無線通信機1Dまでの伝送遅延を小さくすることができる。
尚、第4無線通信機1Dがさらに第5の無線通信機にデータを転送する場合、空いている周波数のうち番号の一番小さい周波数を選択するというルールを採用するならば、F2を選択することになる。
【0023】
さらに、図9のフローチャートにおいて、複数のチャネルで多重化通信を行なう場合について説明する。この例では、周波数帯がF1からF7まで存在することを前提として説明する。
第1無線通信機1Aは、自己の有するセンシング情報に基づいて送信にF2・F3を使用することを決定し、F1を用い、「第2無線機1Bとの通信にF2・F3を使用することを第2無線通信機1Bに通知する(ステップS5)。第2無線通信機1Bは、第1無線通信機1AがF2・F3を使用するとの情報と自己の有するセンシング情報に基づいて第3無線機1Cとの通信にF4・F5を使用することを決定し、F1を用い、自分は第3無線機1Cとの通信にF4・F5を使用すると共に、隣接する無線機がF2・F3を使用していることを第3無線通信機1Cに通知する(ステップS6)。第3無線通信機1Cは、第2無線通信機1BがF4・F5を使用すると共に、第2無線通信機1Bの通信エリア内にF2・F3を使用している無線機が存在するとの情報と、自己の有するセンシング情報に基づいてF6・F7を使用することを決定し、自分は第4無線通信機1Dとの通信にF2・F3を使用すると共に、隣接する無線機がF4・F5を使用していることを第4無線通信機1Dに通知する(ステップS7)。その後、第1無線通信機1A乃至第4無線通信機1Dは、確保された多重チャネルを使用してパケット伝送を行うものである(ステップS8)。
【0024】
この結果、図10に示すように、通信エリア内にある無線通信機同士は異なる周波数のチャネルを使用して多重通信を行なうことになる。従って、第1無線通信機1A乃至第4無線通信機1Dは、図7および図8の場合のほぼ二倍の通信容量により通信が同時に可能となるため、通信速度を向上させることができる。
なお、第4無線通信機1Dがさらに第5の無線通信機にデータを転送する場合、空いている周波数のうち番号の一番小さい周波数を選択するというルールを採用するならば、F2、F3を選択することになる。
【0025】
・各無線通信機における通信処理
次に、各無線通信機の制御部(チャネル決定部)13において実施される、上述した特に多重チャネル通信処理を実現するための多重チャネル決定処理を図11および図12に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。
初めに、本発明の一実施形態に係る無線通信機1が、送信元ノードとして機能する場合、すなわち、例えば、無線通信機1Aが無線通信機1Bに信号を伝送する場合について説明する。無線通信機1の周波数決定機能をもつ制御部13は、ROM14等に格納されたプログラムに従って、定期的に、通信可能エリアに存在する他の無線通信機1との間で、センシング情報を含むHELLOパケットを送受信する(ステップS11)。無線通信機1の制御部13において、自身が送信元として送信タスクが発生すると(ステップ12)、上述したセンシング情報に基づいて、使用可能な周波数数を決定する(ステップS13)。
【0026】
すなわち、無線通信機1の制御部13は、図10の説明図に示すF1〜F5の内のどれだけの周波数が使用可能かを判断すると共に、ユーザによる動作設定(使用する周波数数や、優先的に選択する周波数の順序)等に基づき、使用可能な周波数の内から実際に使用する周波数(単数または複数)を選択し決定する(ステップS14からステップS17)。また、無線通信機1は、図11に示したフローチャートに従って通信が継続している間中、繰り返しステップ11に戻って反復することにより、複数の無線通信機の間での通信状況の変化に応じて、使用する周波数やその数を変更する。
【0027】
次に、図12のフローチャートにおいて、中継ノードとして機能する場合、すなわち、例えば、無線通信機1Bが無線通信機1Aからの信号を受けて無線通信機1Cに信号を転送する場合について説明する。無線通信機1の周波数決定機能をもつ制御部13は、ROM14等に格納されたプログラムに従って、定期的に、通信可能エリアに存在する他の無線通信機1との間で、センシング情報を含むHELLOパケットを送受信する(ステップS21)。無線通信機1Bの制御部13は、受信した送信データの宛先情報から、自身が中継ノードとして機能すべきことを認識すると、モデム部16および無線部17を介して取得したセンシング情報及び送信元ノードから送信された周波数情報に基づき、自身が使用可能な周波数数を決定する(ステップS24)。
【0028】
すなわち、無線通信機1Bの制御部13は、図10の説明図に示すF1〜F5の内、残りのどの周波数が使用可能かを判断し、その内のどの周波数(単数または複数)を使用するかを、ユーザによる動作設定(使用する周波数数や、優先的に選択する周波数の順序)等に基づいて決定する(ステップS25からステップS28)。また、無線通信機1は、図12に示したフローチャートに従って通信が継続している間中、繰り返しステップ21に戻って反復することにより、複数の無線通信機の間での通信状況の変化に応じて、使用する周波数やその数を変更する。
【0029】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態では、5つのチャネルによる半二重通信を行うソフトウェア無線通信機の場合を例にとって説明したが、チャネル数、通信形態、無線通信機の形態については、実施形態の場合に限定されるものではなく、どのようなチャネル数、通信形態、無線通信機の形態であっても本発明の実施は可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…無線通信機、11…操作部、12…インターフェース部、13…制御部、14…ROM、15…RAM、16…モデム部、17…無線部、18…アンテナ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLSR(Optimized Link State Routing)プロトコル等のように経路情報を交換して、複数の無線通信機の間で複数の周波数周波数を利用して通信を行なう無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の無線通信機の間で経路情報を交換して、経路を最適化するアドホック通信が知られている。
【0003】
特許文献1は、経路情報を最新なものに維持することで、通信容量を向上させるアドホックネットワーク技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−296262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線LANなどで使用されるCSMA/CAでは、複数のノードが同じ周波数を共用しており、他のノードが通信中でない(周波数が使用されていない)ことを検知したときに自ノードの送信を行う。そのため、アドホック通信において、CSMA/CAのように複数のノードが同じ周波数を共用する通信方式を採用すると、送信元のノードとそれに隣接する中継ノードは同時に送信できないことから、中継数が多くなると伝送遅延が顕著になるという問題があった。
また、周波数資源を有効に使用するために、空き周波数のマネジメントを行うような通信システムでは、各ノードを統括する基地局が必要であった。
本発明は、周波数資源を有効に利用することで、複数のノードで周波数を共用しつつ、中継による伝送遅延を低減するようにした無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決する一実施形態は、
送信元ノード(無線通信機1A)から中継ノード(無線通信機1B)を介して送信先ノード(無線通信機1C)にデータ伝送する無線通信システムにおいて、前記送信元ノード(無線通信機1A)は、複数の周波数をスキャンして各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部(制御部13)と、前記周波数スキャン部によって検知された各周波数の使用状態に基づき、送信周波数を決定する送信周波数決定部(制御部13)と、前記送信周波数決定部で決定した送信周波数を周波数情報として前記中継ノードに送信する周波数情報送信部(制御部13、モデム部16、無線部17、アンテナ18)と、前記送信周波数決定部で決定した送信周波数を使用してデータを送信するデータ送信部と(制御部13、モデム部16、無線部17、アンテナ18)、を備え、前記中継ノード(無線通信機1B)は、複数の周波数をスキャンして各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部(制御部13)と、前記送信元ノードから送信された前記周波数情報と、自ノードの前記周波数スキャン部によって検知された各周波数の使用状態に基づき、中継送信で使用する中継周波数を決定する中継周波数決定部(制御部13)と、前記中継周波数決定部で決定した中継周波数を、周波数情報として前記送信先ノードに送信する周波数情報送信部(制御部13、モデム部16、無線部17、アンテナ18)と、前記中継周波数決定部で決定した中継周波数を使用して、前記送信元ノードから送信されたデータを中継送信するデータ送信部(制御部13、モデム部16、無線部17、アンテナ18)と、を具備することを特徴とする無線通信システムである。
【発明の効果】
【0007】
中継ノードにおいて、複数の周波数をスキャンして各周波数の使用状態を検知すると共に、送信元ノードから送信された周波数情報(送信元ノードの送信周波数)と、前記周波数スキャン部によって検知された各周波数の使用状態に基づき、中継送信で使用する中継周波数を決定するように構成したので、複数のノードで周波数を共用しつつ、周波数資源を有効に利用することができ、中継による伝送遅延を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムを構成する無線通信機の構成を示すブロック図。
【図2】同じく無線通信機どうしの通信の一例を示す説明図。
【図3】同じく無線通信機どうしが単一の周波数で中継する際の説明図。
【図4】同じく無線通信機どうしが複数の周波数で中継する際の説明図。
【図5】同じく無線通信機どうしがセンシング情報とルーティング情報を交換する際の説明図。
【図6】同じく無線通信機どうしが4つの周波数で中継する際の説明図。
【図7】同じく無線通信機どうしにおいて、多重化していない場合のチャネル決定手順の一例を示すフローチャート。
【図8】同じく無線通信機どうしの多重化していない場合の通信イメージの一例を示す説明図。
【図9】同じく無線通信機どうしにおいて、多重化している場合のチャネル決定手順の一例を示すフローチャート。
【図10】同じく無線通信機どうしの多重化している場合の通信イメージの一例を示す説明図。
【図11】同じく無線通信機において、送信元となって通信を行う際の多重チャネル決定処理の一例を示すフローチャート。
【図12】同じく無線通信機において、中継器となって通信を行う際の多重チャネル決定処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係る例えばソフトウェア無線機(これに限らない)で実現される無線通信機1(後述する無線通信機1A,1B,1C)は、図1に詳細に示されるように、ユーザが操作するための操作部11と、クライアントPCまたはサーバSと通信を行なうためのインターフェース部12と、後述するアドホックルーティング処理や周波数スキャン処理、送信(中継)周波数の決定処理、多重周波数決定処理を含む各種処理を行って無線通信機1の各部を制御する制御部13と、動作プログラム等を格納するROM14と、動作プログラムや制御情報等を格納するRAM15と、独立した多重通信を行うための変調復調機能である複数(例えば5基)のモデム部16と、独立した多重通信を行うための変調復調機能である複数(例えば5基)の無線部17と、通信波を放射するアンテナ18を有している。
【0010】
次に、このような構成をもつ無線通信機1は、この実施形態において、アドホック通信が用いられており、そのアドホックプロトコルの一例として、OLSR(Optimized Link State Routing)プロトコルを採用している。ここで、OLSRの概要について簡単に説明する。
【0011】
OLSRは、経路情報を常時交換するプロアクティブ型のプロトコルであり、必要最小限の中継ノード(MPR:Multipoint Relay)の集まりによってフラッディングを行うことが特徴である。OLSRでは、主にHELLOパケットとTC(Topology Control)パケットをやりとりすることで経路構築を行う。
【0012】
HELLOパケットは、各ノードから送信され、自ノードのリンク情報やMPR、MPRセレクタなどの情報が含まれる。MPRとは、中継を担当するノードのことであり、効率的なフラッディングを行うために、各ノードが隣接ノードの1ホップ先のリンク情報などを参照して選択する。また、MPRセレクタとは、自ノードをMPRとして選択しているノードのことである。
【0013】
MPRを選択しただけでは、まだ通信経路は構築されない。そこで、OLSRにおいては、TCパケットを使用してネットワーク全体のトポロジーを構築する。TCパケットは、MPRセレクタ集合の情報が含まれ、MPRとして選択されている各ノードから送信される。TCパケットは、MPRによってネットワーク全体にフラッディングされる。
【0014】
このTCパケットにより、ネットワークの全てのノードは、MPRとそのMPRセレクタ集合の情報を取得することができる。各ノードは、それらの情報に基づき、送信先(宛先)までの最短経路を算出して経路表を作成する。本発明の一実施形態においては、使用可能なチャネルの情報を上記のHELLOパケットに含ませることで、通信エリア内にあるノードが使用可能なチャネルを把握することができる。
【0015】
本発明の一実施形態であるアドホックネットワークを用いた無線通信機1は、図2に示すように、複数の無線通信機間で通信を行い、マルチバンド対応であって、1台で複数(この実施形態では5つのチャネルの例を示しているがこれに限らない)のチャネルを有している。このような無線通信機1においては、通信エリア内の他の無線通信機1同士と例えば半二重通信により、通信が行われる。なお、本発明は、半二重通信に限定されない。半二重通信とは、双方向通信において同時に双方からデータを送信したり受信したりすることができず、時間を区切って片方向からの送信しかできない通信方式である。この場合、図3に示すように、第1無線通信機1Aから第2無線通信機1Bへ第1パケットを第1周波数F1で時刻t1において送信することはよいが、時刻t2において、第2パケットを第1無線通信機1Aから第2無線通信機1Bへ連続して送信しようとすると、第2無線通信機1Bから第3無線通信機1Cに同じく第1周波数F1で第1パケットが送信中であり、同一周波数の通信を同時に行なうことができない。このため、送信元ノードである第1無線通信機1Aから送信先ノードである第3無線通信機1Cまでデータを伝送するのには、第1無線通信機1Aから中継ノードである第2無線通信機1Bに送信する時間の2倍以上の時間を要する。
【0016】
これに対して、図4の場合によれば、第1無線通信機1Aから第2無線通信機1Bへ第1パケットを第1周波数F1で時刻t1において送信し、時刻t2において、第2無線通信機1Bから第3無線通信機1Cへは、第1周波数F1ではなく第2周波数F2のチャネルにより第1パケットを送信するため、第1無線通信機1Aから第2無線通信機1Bへ第2パケットを第1周波数F1で送信することができる。従って、これにより、図3の場合に較べ、第1無線通信機1Aから第3無線通信機1Cまでデータ伝送時間を短縮することができる。この伝送時間の短縮は、中継ノードが多くなるほど顕著となる。
【0017】
なお、本発明の一実施形態においては、定期的に周波数スキャン(5周波数)を行い、その結果をセンシング情報として、上述したHELLOパケットに含めて周辺ノードにフラッディングする。
図5に示すように、複数の無線通信機1A,1B,1Cの間で、センシング情報を含むHELLOパケットを制御チャネル、例えば後述するように周波数F1を使用して交換を行うことで、無線通信機1の制御部13は、近傍の無線通信機の状況(リンク先で送信に使用可能な周波数など)を常に認識することができる。なお、この実施形態では、制御チャネルとしてF1を設定している例を示してHELLOパケットの送信の安定化を図っているが、必ずしも専用の制御チャネルを設定せずに、他の周波数を適宜使用することでも、衝突が生じなければ同等の技術的効果を得ることができる。
【0018】
また、本発明の一実施形態においては、図6に示すように、複数の無線通信機1A,1B,1C,…の間で交換したセンシング情報に基づき、無線通信機1A,1B,1C,…の間で、1つの周波数だけに限らず複数の周波数において多重通信を行うことができる。これにより、通信状況に応じて自動的に通信容量を拡大することが可能となる。
【0019】
・周波数決定処理
送信元ノードと中継ノードにおける送信(中継)周波数決定処理について説明する。
本実施形態では、F1からF5までの5つの周波数帯を有する。F1は、上述したHELLOパケットやTCパケットの送受信、及び、後述する送信(中継)周波数情報や、これから送信するデータの宛先情報などを通知するための制御チャネル用として使用され、F2からF5の4周波数がデータパケットの送信に使用するデータ送信用として使用される。
【0020】
先ず、送信元ノードの周波数決定処理について説明する。送信元ノードの制御部13は、定期的に周波数スキャンを実施し、空いている周波数の情報(センシング情報)を取得する。また、中継ノード(MPR)から送信されたHELLOパケットに含まれるセンシング情報を取得する。そして、自ノード及び中継ノードで送信に使用可能な周波数(いずれのノードでも空きが検知された周波数)を送信周波数として決定する。使用可能な周波数が複数存在する場合は、任意の周波数(例えばF番号の一番小さい周波数)を選択する。
【0021】
続いて、中継ノードの周波数決定処理について説明する。中継ノードの制御部13は、定期的に周波数スキャンを実施し、空いている周波数の情報(センシング情報)を取得する。また、送信先ノード(あるいは次の中継ノード)から送信されたHELLOパケットに含まれるセンシング情報を取得する。
そして、自ノード及び送信先ノード(あるいは次の中継ノード)で送信に使用可能な周波数(いずれのノードでも空きが検知された周波数)の中から、送信元ノード(あるいは前の中継ノード)で決定された送信周波数以外の周波数を中継周波数として決定する。使用可能な周波数が複数存在する場合は、任意の周波数(例えば番号の一番小さい周波数)を選択する。
尚、送信元ノード(あるいは前の中継ノード)で決定された送信周波数は、制御チャネルF1を使用し、周波数情報として中継ノードに送信され、通知される。
また、使用可能な周波数が存在しない場合は、CSMA/CAにより、送信元ノード(あるいは前の中継ノード)で決定された周波数が空くのを待って送信を行う。
【0022】
・具体的な通信例
次に、図7及び図8を用いて、複数の無線通信機1A,1B,1C,1Dの間での具体的な通信例を詳細に説明する。
尚、図7及び図8の説明では、上述した周波数決定処理により、無線通信機1Aの送信周波数がF2、無線通信機1Bの送信周波数がF3、無線通信機1Cの送信周波数がF2に決定するものとする。
図7のフローチャートにおいて、第1無線通信機1Aは、自己の有するセンシング情報に基づいて送信にF2を使用することを決定し、F1を用い、「第2無線機1Bとの通信にF2を使用する」ことを第2無線通信機1Bに通知する(ステップS1)。第2無線通信機1Bは、第1無線通信機1AがF2を使用するとの情報と自己の有するセンシング情報に基づいて第3無線機1Cとの通信にF3を使用することを決定し、F1を用い、自分は第3無線機1Cとの通信にF3を使用すると共に、隣接する無線機がF2を使用していることを第3無線通信機1Cに通知する(ステップS2)。第3無線通信機1Cは、第2無線通信機1BがF3を使用すると共に、第2無線通信機1Bの通信エリア内にF2を使用している無線機が存在するとの情報と、自己の有するセンシング情報に基づいてF4を使用することを決定し、自分は第4無線通信機1Dとの通信にF4を使用すると共に、隣接する無線機がF3を使用していることを第4無線通信機1Dに通知する(ステップS3)。その後、第1無線通信機1A乃至第4無線通信機1Dは、確保された周波数を使用してデータパケットの伝送を行う(ステップS4)。この結果、図8に示すように、通信エリア内にある無線通信機同志は異なる周波数の周波数を使用して通信を行なうことになるので、第1無線通信機1Aから第4無線通信機1Dまでの伝送遅延を小さくすることができる。
尚、第4無線通信機1Dがさらに第5の無線通信機にデータを転送する場合、空いている周波数のうち番号の一番小さい周波数を選択するというルールを採用するならば、F2を選択することになる。
【0023】
さらに、図9のフローチャートにおいて、複数のチャネルで多重化通信を行なう場合について説明する。この例では、周波数帯がF1からF7まで存在することを前提として説明する。
第1無線通信機1Aは、自己の有するセンシング情報に基づいて送信にF2・F3を使用することを決定し、F1を用い、「第2無線機1Bとの通信にF2・F3を使用することを第2無線通信機1Bに通知する(ステップS5)。第2無線通信機1Bは、第1無線通信機1AがF2・F3を使用するとの情報と自己の有するセンシング情報に基づいて第3無線機1Cとの通信にF4・F5を使用することを決定し、F1を用い、自分は第3無線機1Cとの通信にF4・F5を使用すると共に、隣接する無線機がF2・F3を使用していることを第3無線通信機1Cに通知する(ステップS6)。第3無線通信機1Cは、第2無線通信機1BがF4・F5を使用すると共に、第2無線通信機1Bの通信エリア内にF2・F3を使用している無線機が存在するとの情報と、自己の有するセンシング情報に基づいてF6・F7を使用することを決定し、自分は第4無線通信機1Dとの通信にF2・F3を使用すると共に、隣接する無線機がF4・F5を使用していることを第4無線通信機1Dに通知する(ステップS7)。その後、第1無線通信機1A乃至第4無線通信機1Dは、確保された多重チャネルを使用してパケット伝送を行うものである(ステップS8)。
【0024】
この結果、図10に示すように、通信エリア内にある無線通信機同士は異なる周波数のチャネルを使用して多重通信を行なうことになる。従って、第1無線通信機1A乃至第4無線通信機1Dは、図7および図8の場合のほぼ二倍の通信容量により通信が同時に可能となるため、通信速度を向上させることができる。
なお、第4無線通信機1Dがさらに第5の無線通信機にデータを転送する場合、空いている周波数のうち番号の一番小さい周波数を選択するというルールを採用するならば、F2、F3を選択することになる。
【0025】
・各無線通信機における通信処理
次に、各無線通信機の制御部(チャネル決定部)13において実施される、上述した特に多重チャネル通信処理を実現するための多重チャネル決定処理を図11および図12に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。
初めに、本発明の一実施形態に係る無線通信機1が、送信元ノードとして機能する場合、すなわち、例えば、無線通信機1Aが無線通信機1Bに信号を伝送する場合について説明する。無線通信機1の周波数決定機能をもつ制御部13は、ROM14等に格納されたプログラムに従って、定期的に、通信可能エリアに存在する他の無線通信機1との間で、センシング情報を含むHELLOパケットを送受信する(ステップS11)。無線通信機1の制御部13において、自身が送信元として送信タスクが発生すると(ステップ12)、上述したセンシング情報に基づいて、使用可能な周波数数を決定する(ステップS13)。
【0026】
すなわち、無線通信機1の制御部13は、図10の説明図に示すF1〜F5の内のどれだけの周波数が使用可能かを判断すると共に、ユーザによる動作設定(使用する周波数数や、優先的に選択する周波数の順序)等に基づき、使用可能な周波数の内から実際に使用する周波数(単数または複数)を選択し決定する(ステップS14からステップS17)。また、無線通信機1は、図11に示したフローチャートに従って通信が継続している間中、繰り返しステップ11に戻って反復することにより、複数の無線通信機の間での通信状況の変化に応じて、使用する周波数やその数を変更する。
【0027】
次に、図12のフローチャートにおいて、中継ノードとして機能する場合、すなわち、例えば、無線通信機1Bが無線通信機1Aからの信号を受けて無線通信機1Cに信号を転送する場合について説明する。無線通信機1の周波数決定機能をもつ制御部13は、ROM14等に格納されたプログラムに従って、定期的に、通信可能エリアに存在する他の無線通信機1との間で、センシング情報を含むHELLOパケットを送受信する(ステップS21)。無線通信機1Bの制御部13は、受信した送信データの宛先情報から、自身が中継ノードとして機能すべきことを認識すると、モデム部16および無線部17を介して取得したセンシング情報及び送信元ノードから送信された周波数情報に基づき、自身が使用可能な周波数数を決定する(ステップS24)。
【0028】
すなわち、無線通信機1Bの制御部13は、図10の説明図に示すF1〜F5の内、残りのどの周波数が使用可能かを判断し、その内のどの周波数(単数または複数)を使用するかを、ユーザによる動作設定(使用する周波数数や、優先的に選択する周波数の順序)等に基づいて決定する(ステップS25からステップS28)。また、無線通信機1は、図12に示したフローチャートに従って通信が継続している間中、繰り返しステップ21に戻って反復することにより、複数の無線通信機の間での通信状況の変化に応じて、使用する周波数やその数を変更する。
【0029】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態では、5つのチャネルによる半二重通信を行うソフトウェア無線通信機の場合を例にとって説明したが、チャネル数、通信形態、無線通信機の形態については、実施形態の場合に限定されるものではなく、どのようなチャネル数、通信形態、無線通信機の形態であっても本発明の実施は可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…無線通信機、11…操作部、12…インターフェース部、13…制御部、14…ROM、15…RAM、16…モデム部、17…無線部、18…アンテナ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信元ノードから中継ノードを介して送信先ノードにデータ伝送する無線通信システムにおいて、
前記送信元ノードは、
複数の周波数をスキャンして各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部と、
前記周波数スキャン部によって検知された各周波数の使用状態に基づき、送信周波数を決定する送信周波数決定部と、
前記送信周波数決定部で決定した送信周波数を周波数情報として前記中継ノードに送信する周波数情報送信部と、
前記送信周波数決定部で決定した送信周波数を使用してデータを送信するデータ送信部と、を備え、
前記中継ノードは、
複数の周波数をスキャンして各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部と、
前記送信元ノードから送信された前記周波数情報と、自ノードの前記周波数スキャン部によって検知された各周波数の使用状態に基づき、中継送信で使用する中継周波数を決定する中継周波数決定部と、
前記中継周波数決定部で決定した中継周波数を、周波数情報として前記送信先ノードに送信する周波数情報送信部と、
前記中継周波数決定部で決定した中継周波数を使用して、前記送信元ノードから送信されたデータを中継送信するデータ送信部と、
を具備することを特徴とする無線通信システム。
【請求項1】
送信元ノードから中継ノードを介して送信先ノードにデータ伝送する無線通信システムにおいて、
前記送信元ノードは、
複数の周波数をスキャンして各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部と、
前記周波数スキャン部によって検知された各周波数の使用状態に基づき、送信周波数を決定する送信周波数決定部と、
前記送信周波数決定部で決定した送信周波数を周波数情報として前記中継ノードに送信する周波数情報送信部と、
前記送信周波数決定部で決定した送信周波数を使用してデータを送信するデータ送信部と、を備え、
前記中継ノードは、
複数の周波数をスキャンして各周波数の使用状態を検知する周波数スキャン部と、
前記送信元ノードから送信された前記周波数情報と、自ノードの前記周波数スキャン部によって検知された各周波数の使用状態に基づき、中継送信で使用する中継周波数を決定する中継周波数決定部と、
前記中継周波数決定部で決定した中継周波数を、周波数情報として前記送信先ノードに送信する周波数情報送信部と、
前記中継周波数決定部で決定した中継周波数を使用して、前記送信元ノードから送信されたデータを中継送信するデータ送信部と、
を具備することを特徴とする無線通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−15794(P2012−15794A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150327(P2010−150327)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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