無線通信システム
【課題】一般家庭の無線ホームネットワークの複数の基地局が協調して公衆無線アクセスを実現する無線システムを提供する。
【解決手段】複数の基地局がそれぞれ第1の無線システムを介して第1の端末局と接続し、各基地局配下の第1の端末局が制御局を介してネットワーク側との通信を可能とする無線通信システムにおいて、複数の基地局は、互いにクロック同期またはタイミング同期をとる同期手段と、第1の無線システムとは異なる第2の無線システムを介して第2の端末局と接続する第2無線システム接続手段とを備え、制御局は、複数の基地局のうち設置場所が近接する複数の基地局をグループ化し、このグループ化した複数の基地局の各第2無線システム接続手段を組み合わせ、第2の端末局との通信を行う基地局としての機能を実現する第2無線システム基地局制御手段を備え、第2の無線システムを介して第2の端末局とネットワーク側との間の通信を可能とする。
【解決手段】複数の基地局がそれぞれ第1の無線システムを介して第1の端末局と接続し、各基地局配下の第1の端末局が制御局を介してネットワーク側との通信を可能とする無線通信システムにおいて、複数の基地局は、互いにクロック同期またはタイミング同期をとる同期手段と、第1の無線システムとは異なる第2の無線システムを介して第2の端末局と接続する第2無線システム接続手段とを備え、制御局は、複数の基地局のうち設置場所が近接する複数の基地局をグループ化し、このグループ化した複数の基地局の各第2無線システム接続手段を組み合わせ、第2の端末局との通信を行う基地局としての機能を実現する第2無線システム基地局制御手段を備え、第2の無線システムを介して第2の端末局とネットワーク側との間の通信を可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲に分散して存在する第1の無線システムに属する複数の基地局がその機能の一部を活用し、第1の無線システムとは異なる第2の無線システムの基地局を形成して通信を行う無線通信システムに関する。特に、第1の無線システムは、光ファイバやADSL等の有線回線でインターネット等のコアネットワークと接続された無線ホームネットワークであり、第1の無線システムに属する基地局はその無線ホームネットワークの基地局であり、その複数の基地局の機能の一部を活用して第2の無線システムの基地局を形成する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線を用いた通信システムが急激に普及している。これは、古くは携帯電話の普及に始まり、近年では無線LANやWiMAX(Worldwide interoperability for microwave access)などの高速無線アクセスを実現することが可能になってきたことによる。これらの多くは、通信条件的に好ましい比較的低い周波数であるマイクロ波帯を用い、基地局と端末局間が見通し外環境であっても、安定して通信を行うことが可能である。
【0003】
例えば、WiMAXを例に取れば、免許不要の無線LANと異なり、免許を必要とする周波数帯を用いることで大電力の送信が可能となり、ひとつの基地局あたりのカバーする面積は半径数kmにもおよぶ。しかし逆に言えば、非常に広域のエリアで多数のユーザが有限の周波数資源をシェアすることになるため、サービスが普及すればするほど一ユーザ当たりの平均スループットは低下する。一般に、所定の帯域に対して単位面積当たりのスループットを向上させるためには、各サービスエリアを狭くし、個別のセルをマイクロセル化すると共に、キャリアセンスを伴う無線パケットの衝突回避手法、ないしは複数チャネルで周波数繰り返しを行うなど、同一周波数チャネルを離れた場所で再利用することが好ましい。
【0004】
免許不要の無線LANの場合には、近年の爆発的な普及で基地局および端末装置の値段も安価になり、様々な通信事業会社が公衆無線LANサービスを非常に安価に提供している。しかし、これらは各通信事業会社が別途提供している光回線ないしは携帯電話等のモバイル回線との基本契約があるユーザに限られており、さらには利用可能な場所は駅の構内や空港などの公共施設やホテル、喫茶店など集客目的の場所に限定される。これらの通信事業者との別の基本契約を伴わない有料ではあるが安価な無線サービスもあるが、人口が特に密集している都心部を除けば、サービスエリアは離散的に点在しており、その他の地域ではサービスを受けることはできない。
【0005】
このようなサービスエリアの拡大を阻む要因を解決するアプローチとしては、インターネットに接続可能な環境を自宅に供えたユーザが、そこに無線LANの基地局(通常はAP(Access Point)と呼ぶ)を設置し、近隣のユーザにこの基地局を開放することでボランティア・ネットワークを構築するものである。特に、非特許文献1に示す「Fon」によるサービスでは、ユーザが自宅のAPを開放する見返りとして、他者のAPも無料で利用させてもらうものである。このように自宅に設置するAPを無料ないしは安価で提供することにより、自己増殖的にネットワークが広がる。
【0006】
図10は、非特許文献1に記載の無線通信システムの構成例を示す。
図10において、101は基地局、102−1および102−2は端末局、103はネットワーク、104はユーザ宅、105はルータ、106は光ファイバ等の有線回線を表す。ユーザ宅104内にある基地局101はルータ105を経由し、光ファイバ等の有線回線106を介してネットワーク103に接続される。この基地局101は、無線回線を介して自宅内の端末局102−1と通信を行う。したがって、端末局102−1は基地局101を介してネットワーク103に接続し、インターネットから必要な情報を取得することができる。基本的には、ユーザ宅104内に設置された基地局101は、ユーザ宅内の端末局102−1との通信をするために設置されているが、この基地局101が送信する電波は屋外にも漏れるため、屋外の端末局102−2も基地局101と通信することが可能である。
【0007】
ここで、この端末局102−2のユーザは、本図では示していないが同様に自宅に基地局を設置してあり、その基地局は他のユーザの端末局、例えば本図の端末局102−1が同様に無線回線を介して通信し、インターネットアクセスを行うことが可能になる。このように、多くのユーザ間が相互の基地局を開放することで、基地局ないしアクセスポイントの設置場所が限定され、利用可能なエリアが狭い公衆無線LANサービスに対し、相対的にはより広いエリアでの利用が可能となる。
【0008】
図11は、非特許文献2に記載の分散アンテナシステムの構成例を示す。この分散アンテナシステムは、複数のリモート基地局が協調して伝送を行う構成である。
【0009】
図11において、111−1〜111−3は協調的な通信を行う個々のセル、112−1〜112−3は各セルのリモート基地局、113−1〜113−6は端末局、114は制御局、115は光ファイバ等の有線伝送路を表す。セル111−1〜111−3のリモート基地局112−1〜112−3は、同一の周波数チャネルを用いて各端末局113−1〜113−6と通信を行う。制御局114は、光ファイバ等の有線伝送路115を介してリモート基地局112−1〜112−3を制御する。同一周波数を用いた通信であることから、各端末局113−1〜113−6は複数のリモート基地局113−1〜113−3からの信号を受信可能である。例えば、端末局113−4は、全てのリモート基地局112−1〜112−3からの信号を受信することで通信の特性を改善することができる。特に、リモート基地局112−1と端末局113−4、リモート基地局112−2と端末局113−4、リモート基地局112−3と端末局113−4のそれぞれのチャネルの情報が既知であれば、リモート基地局112−1〜112−3が端末局113−4に宛てて信号を送信する際に、端末局113−4で各受信信号が同位相合成となるように送信側で送信ウエイト乗算を施すことで、通信特性の改善が可能である。これらの同位相合成のための信号処理の制御は全て制御局114で実施され、リモート基地局112−1〜112−3は制御局114の指示に従い動作する。
【0010】
分散アンテナシステムでは、このような効果を最大限に利用することで特性を改善する。ここで特徴的なのは、例えばリモート基地局112−1は制御局114の制御のもとで動作するが、他のリモート基地局112−2〜112−3がなくても動作可能であり、基地局としての機能はリモート基地局112−1と制御局114の組み合わせで一通り全ての機能を備えていることになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】”Fonはどれだけ使える?”, 日経コミュニケーション2007年6月15日号
【非特許文献2】松田大輝他, ”最大比送信を用いる分散アンテナシステムのチャネル容量に関する一検討”, 信学技法RCS2007-196, pp.61-66, 2008年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図10に示す無線通信システムは、各ユーザ宅内に設置された基地局を、ユーザ宅内の端末装置に加えて屋外の不特定多数のユーザの端末装置に対しても開放し、相互に通信を行うことができた点が特徴的である。しかし、ここで問題となるのは、一般に屋内に設置された基地局の電波が屋外に漏れ出す際には、壁や窓を通過する際の電波の通過損が生じる。この値は家の壁や窓の素材に大きく依存するが、最低でも10dB以上、通常は20dB程度の損失が予想される。仮に、電波の減衰が自由空間の伝搬損、すなわち距離の2乗に比例する伝搬損失がある場合には、20dBの損失とはサービス可能なエリア半径が1/10になることを意味する。仮に伝搬損失が距離の3乗に比例する場合であっても、20dBの損失とはサービス可能なエリア半径が概ね1/5である。
【0013】
もともと、屋内での利用を想定する無線LAN機器の場合、安価で線形性の低い送信アンプの利用という背景も含めて、送信電力はそれほど高くないのが一般的であり、そのためユーザ宅内の基地局がカバーできるエリア面積は狭い。一般に、基地局が高所に設置されていて、端末局と基地局とが見通しがきく位置関係がある場合には 100m程度は離れていても安定して通信を行うことができるが、見通しが確保できなくなると急激に通信可能な距離は限定される。図10の無線通信システムの場合には、さらに家の壁の通過損失がエリア面積を狭くするため、結果的に利用可能なユーザ宅の直近でなければ通信をすることはできない。
【0014】
近年、急速に光ファイバ等によるブロードバンド環境の提供エリアは広がりつつあるが、実際にブロードバンド環境を構築している加入者の割合は3割程度であり、携帯電話でのインターネットアクセスを除けば、ブロードバンド普及率は十分とは言いがたい。このような状況でのブロードバンド普及率の向上のためには、低廉なインターネットアクセスを提供するための基盤づくりが必要であり、そのためには例えば非特許文献1に記載のような無線通信システムのカバーエリアの拡大を図るための技術が求められている。
【0015】
本発明は、第1の無線システムに属する複数の基地局がその機能の一部を活用し、制御局のもとで第1の無線システムとは異なる第2の無線システムの基地局を形成し、この複数の基地局が協調して第2の無線システムを介して端末局と通信を行うことができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ネットワークに接続された制御局と、該制御局と有線または無線の通信回線を介して接続される複数の基地局とを備え、複数の基地局がそれぞれ第1の無線システムを介して第1の端末局と接続し、各基地局配下の第1の端末局が制御局を介してネットワーク側との通信を可能とする無線通信システムにおいて、複数の基地局は、互いにクロック同期またはタイミング同期をとる同期手段と、第1の無線システムとは異なる第2の無線システムを介して第2の端末局と接続する第2無線システム接続手段とを備え、制御局は、複数の基地局のうち設置場所が近接する複数の基地局をグループ化し、このグループ化した複数の基地局の各第2無線システム接続手段を組み合わせ、第2の端末局との通信を行う基地局としての機能を実現する第2無線システム基地局制御手段を備え、第2の無線システムを介して、第2の端末局とネットワーク側との間の通信を可能とする構成である。
【0017】
本発明の無線通信システムにおいて、第2の無線システムは、直交周波数分割多重(OFDM)変調方式または直交周波数分割多元接続(OFDMA)方式で通信する構成であり、制御局の第2無線システム基地局制御手段は、第2の無線システムが通信に用いる全サブキャリアをグループ化した各基地局に分割して割り当て、各基地局に割り当てたサブキャリアを指示するとともに、当該サブキャリアで伝送するダウンリンク信号を各基地局にそれぞれ送信する送信手段と、グループ化した各基地局が受信した第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、複数の基地局の第2無線システム接続手段は、制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号を受信し、各基地局ごとにそれぞれ割り当てられたサブキャリアを用いて第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、制御局に転送するアップリンク受信手段とを備える。
【0018】
本発明の無線通信システムにおいて、第2の無線システムは、直交周波数分割多重(OFDM)変調方式または直交周波数分割多元接続(OFDMA)方式で通信する構成であり、制御局の第2無線システム基地局制御手段は、グループ化した各基地局に、第2の無線システムを介して伝送するダウンリンク信号を送信する送信手段と、グループ化した各基地局が受信した第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、複数の基地局の第2無線システム接続手段は、制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号を受信し、当該ダウンリンク信号のOFDMシンボルを単位に、ガードインターバルを除く信号領域にグループ化した各基地局で互いに異なるサイクリック遅延量のサイクリック遅延を与えた信号にガードインターバルを付与してダウンリンク信号を生成し、第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、制御局に転送するアップリンク受信手段とを備える。
【0019】
本発明の無線通信システムにおいて、第2の無線システムは、複数の信号系列を空間多重するMIMO伝送が可能な構成であり、制御局の第2無線システム基地局制御手段は、第2の端末局に送信するダウンリンク信号を複数の信号系列に分割し、複数の信号系列を各基地局に割り当て、割り当てられた各信号系列をグループ化した各基地局にそれぞれ送信する送信手段と、グループ化した各基地局が受信した第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、複数の基地局の第2無線システム接続手段は、制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号の各信号系列を受信し、第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、制御局に転送するアップリンク受信手段とを備える。
【0020】
本発明の無線通信システムにおいて、制御局は、複数の基地局の各同期手段に対して所定の信号の送信タイミングを指示する手段を備え、複数の基地局は、制御局より指示された送信タイミングにて所定の信号の送信を開始する手段を備える。
【0021】
本発明の無線通信システムにおいて、複数の基地局は、同期手段により互いに同期したクロックをもとにローカル信号を発生させ、当該ローカル信号をもとに送信信号または受信信号の周波数変換を行い、さらに前記同期したクロックをもとにアナログ/デジタル変換またはデジタル/アナログ変換を実施し、第2の端末局および制御局に転送する送信信号を生成する手段を備える。
【0022】
本発明の無線通信システムにおいて、第1の無線システムおよび第2の無線システムが利用する周波数チャネルは、同一周波数チャネルまたは隣接周波数チャネルであり、OFDMまたはOFDMAのFFTおよびIFFT処理を実施する手段を第1の無線システムおよび第2の無線システムで共通化する。
【0023】
本発明の無線通信システムにおいて、第1の無線システムは、有線または無線の通信回線を介してインターネットに接続可能な一般家庭の無線ホームネットワークを実現する無線システムであり、第2の無線システムは、公衆無線アクセスを実現する無線システムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の無線通信システムは、各ユーザ宅内に設置された基地局を、ユーザ宅内の端末装置に加えて屋外の不特定多数のユーザの端末装置に対しても開放し相互に通信を行うことができるようにする際に、一般に屋内に設置された基地局の電波が屋外に漏れ出す際には、壁や窓を通過する際の電波の通過損が生じ、特にダウンリンクにおいて端末局側での受信電力が大幅に低下し、その結果として通信品質が大幅に劣化し、最終的には安定的な通信を広範囲で実現することが困難であったのに対し、この端末局側での受信レベルを向上させ、結果的に安定的な通信を広範囲で実現することが可能となる。この際に、各基地局装置が備える機能は、ユーザ宅外の端末装置との通信に必要となる機能の全てを実装する必要はなく、その一部のみを実装することで個々の基地局装置の備えるべき機能的な負荷が低減可能である。また、各基地局装置と端末局間のチャネル情報は必ずしも必要ではなく、簡易な制御で上記の効果を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1における無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1における第1の無線システムと第2の無線システムの概要を示す図である。
【図3】本発明の実施例1における第2の無線システムのダウンリンク信号の例を示す図である。
【図4】本発明の実施例2における第2の無線システムのダウンリンク信号の例を示す図である。
【図5】本発明の実施例3における無線通信システムの構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施例4における無線通信システムの構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施例5における無線通信システムの構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施例6における無線通信システムの構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施例6における無線通信システムの動作例を示す図である。
【図10】従来の無線通信システムの構成例を示す図である。
【図11】従来の分散アンテナシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1における無線通信システムの構成例を示す。
図1において、1は制御局、2は光ファイバ等の有線回線あるいは無線回線、3−1〜3−3は基地局装置、4−1〜4−3は第1の無線システムに対応する送受信処理を行う第1無線部、5−1〜5−3は第1の無線システムに対応するベースバンド処理を行う第1BB(ベースバンド)処理部、6−1〜6−3はIF(インタフェース)部、7−1〜7−3は第2の無線システムに対応するベースバンド処理の部分的処理を行う第2BB処理部(#1)〜第2BB処理部(#3)、8−1〜8−3は第2の無線システムに対応する送受信処理を行う第2無線部、9−1〜9−3は制御部、10−1a〜10−3aは第1の無線システムの信号を送受信するアンテナ、10−1b〜10−3bは第2の無線システムの信号を送受信するアンテナ、11−1〜11−3は第1の無線システムの端末局(第1端末局)、12は第2の無線システムの端末局(第2端末局)を表す。
【0027】
制御局1は、有線回線2を介して各基地局装置3−1〜3−3に接続されるとともに、インターネット等のネットワークにも接続される。例えば、第1端末局11−1に対してネットワーク側から制御局1にデータが入力された場合、制御局1は有線回線2を介して基地局装置3−1のIF部6−1に対してデータを転送する。IF部6−1は当該データを終端し、データに付与された情報等から第1端末局11−1宛てのデータと認識し、第1BB処理部5−1でベースバンド信号処理を行い、第1無線部4−1で無線信号に変換し、アンテナ10−1aより無線信号として送信する。送信された信号は、第1端末局11−1に受信され、必要な信号処理が実施される。
【0028】
逆に第1端末局11−1から送信された信号はアンテナ10−1a にて受信し、これを第1無線部10−1aで無線信号処理を行ってベースバンドのデジタル信号に変換し、これを第1BB処理部5−1でベースバンド信号処理を行い、データの抜き出しを行う。IF部6−1は、このデータを制御局1に転送するための所定の信号処理を行い、有線回線2を介して制御局1に転送し、制御局1は必要に応じてネットワーク側に転送する。
【0029】
以上の処理は、他の基地局装置3−2〜3−3および第1端末局11−2〜11−3においても同様である。一般に、各基地局装置3−1〜3−3はユーザ宅に設置され、それぞれが第1端末局11−1〜11−3との間で第1の無線システム(無線ホームネットワーク)を構築し、その中で閉じた通信を行っている。
【0030】
一方、それぞれのユーザ宅の外にある第2端末局12は、各基地局装置3−1〜3−3との間で第2の無線システムを構成し、第1端末局11−1〜11−3と同時並行的に通信を行う。しかし、各基地局装置3−1〜3−3が備える第2BB処理部(#1)7−1〜第2BB処理部(#3)7−3は、それぞれ単独では第2の無線システムのベースバンド処理の全体(後述)を実施せず、その機能の一部のみを実施する。したがって、第2端末局12に宛ててネットワーク側から制御局1にデータが入力された場合、制御局1はその信号を適宜処理し(後述)、別々の処理が施されたそれぞれの信号を有線回線2を介して各基地局装置3−1〜3−3のIF部6−1〜6−3に転送する。IF部6−1〜6−3は、第2端末局12宛ての信号と認識した場合に、その信号を第2BB処理部(#1)7−1〜第2BB処理部(#3)7−3に転送する。
【0031】
例えば、基地局装置3−1の第2BB処理部(#1)7−1は、自局に割り当てられた第2の無線システムのベースバンド信号処理の一部分の信号処理を実施する。同様に、基地局装置3−2の第2BB処理部(#2)7−2は、第2の無線システムのベースバンド信号処理の基地局装置3−1とは異なる一部分の信号処理を実施する。同様に、基地局装置3−3の第2BB処理部(#3)7−3は、第2の無線システムのベースバンド信号処理の基地局装置3−1〜3−2とは異なる一部分の信号処理を実施する。ここでのベースバンド信号処理とは、例えば信号の変調処理、インタリーブ、誤り訂正符号化、周波数直交分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を適用する場合にはサブキャリア毎の変調処理に加えてIFFT処理やガードインターバルの挿入、IFFT処理、デジタル/アナログ変換など、様々な処理の全てないしはそれらの一部を含む処理である。そして、制御局1および各基地局装置3−1〜3−3におけるそれぞれの信号処理を集約すると、第2の無線システムのベースバンド信号処理全体を構成する。このように処理された信号は、第2無線部8−1〜8−3を介して無線信号としてアンテナ10−1b〜10−3bより第2端末局12に対して送信される。第2端末局12は、各基地局装置3−1〜3−3からそれぞれ送信された信号を合せてベースバンド信号処理し、制御局1から送信されたデータを復元する。
【0032】
一方、第2端末局12から送信された信号はアンテナ10−1b〜10−3bにて受信し、第2無線部8−1〜8−3で無線信号処理によってベースバンドのデジタル信号に変換され、第2BB処理部(#1)7−1〜第2BB処理部(#3)7−3でそれぞれ対応するベースバンド信号処理が行われる。ただし、各基地局装置3−1〜3−3の受信信号のベースバンド信号処理の全てを必ずしもここで実施するとは限らず、必要最低限の機能、例えば受信信号に対するタイミング検出、帯域外信号の抑圧フィルタ処理、OFDM変調方式におけるガードインターバル除去とFFT処理等の一連の処理の一部ないしはその組み合わせのみを行い、残りの機能を備える制御局1が残りの信号処理を行う。このような場合には、IF部6−1〜6−3では、中途まで処理された中間的な処理データを制御局1に転送するための所定の信号処理を行い、有線回線2を介して制御局1に転送し、制御局1は残りの信号処理を実施し、データを抜き出す所定の信号処理を実施し、これを必要に応じてネットワーク側に転送する。
【0033】
なお、上述の一連の処理は第1の無線システムおよび第2の無線システムに共通の制御部9−1〜9−3により制御され、それぞれの機能間でのタイミング調整や相互のデータの入出力などが管理される。また上述のように、IF部6−1〜6−3および制御局1では、ネットワークないしは外部の機器との通信を行うため、例えばインターネットプロトコルやイーサネット(登録商標)等のパケット処理などの様々な信号処理を含み得る。同様に、図1には示されていないが、図2に示すように各基地局装置3−1〜3−3と制御局1との間に、それぞれルータ等のネットワーク機器が設置され、そのネットワーク機器においてこれらの信号処理を実現していても構わない。ただし、ここでの説明においては、無線信号の処理に着目した説明を行っているため、上位レイヤにおけるインターネットプロトコルやイーサネット等のパケット処理などの様々な信号処理については、ここでは詳細は省略する。また、制御局1は、基地局装置3−1〜3−3より収集した第2の無線システムのアップリンク信号に対して、例えば最大比合成処理などを行うなど、高い通信品質を実現するための信号処理が実施される。
【0034】
第2端末局12は、移動を伴う携帯端末であってもよいし、ユーザ宅の中で利用する半固定的な設置型の端末装置であっても構わない。この場合、事前に第2端末局12が登録されていれば、その所在地に関する情報は既知であり、連携して信号処理を実施する基地局装置3−1〜3−3の組み合わせ(グループ)を制御局1で選択する。ここでは、第2端末局毎に、異なる基地局装置の組み合わせを選択することも可能であるし、エリアを区切り、各エリア毎に協調する基地局装置を選択しておき、そのエリア内に存在する第2の無線システムの端末局は全て共通の基地局装置の組み合わせと通信を行ってもよい。
【0035】
なお、図1の説明では、第2端末局12はユーザ宅の外にあるとして説明してきたが、一般的な移動端末であってもよいし、図2に示すようにユーザ宅の近隣の別のユーザ宅内にあってもよい。一般的には、様々な制御を効率的に実行するために、第2端末局12の所在が明らかな場合が好ましく、図2に示す構成をとるのが典型的な運用形態である。
【0036】
図2は、本発明の実施例1における第1の無線システムと第2の無線システムの概要を示す。
図2において、図1と同一番号は同一機能を示す。さらに、51−1〜51−3は基地局装置3−1〜3−3を有するユーザ宅、52は第2端末局12を有するユーザ宅、53−1〜53−3は光終端装置やルータ等、54は制御部1に接続されるネットワークを表す。ユーザ宅51−1〜51−3内にある基地局装置3−1〜3−3は、ルータ等53−1〜53−3を経由し、光ファイバ等の有線回線2を介して制御局1に接続され、さらにネットワーク54に接続される。この基地局装置3−1〜3−3は、第1の無線システムを介して自宅内の第1端末局11−1〜11−3と通信を行う。
【0037】
同時に、基地局装置3−1〜3−3は、第2の無線システムを利用して、基地局装置を持たないユーザ宅52内の第2端末局12と通信を行う。基地局装置3−1〜3−3を有するユーザ宅51−1〜51−3内には、第1端末局11−1〜11−3などのルーチングを管理するルータ等53−1〜53−3の機能を備えることになるが、第2端末局12はルータ等53−1〜53−3の管理外であり、制御局1ないしはネットワーク54が第2端末局12のルーチングを管理する機能を持つ。これは、従来技術においても、ルータ等53−1〜53−3のルーチング管理をネットワーク54内に備えるのと同様である。
【0038】
図3は、本発明の実施例1における第2の無線システムのダウンリンク信号の例を示す。
図3において、30は従来の基地局装置、3−1〜3−3は図1および図2に示す実施例1の基地局装置、32は従来の基地局装置30から送信されるダウンリンク信号、33−1〜33−3は実施例1の基地局装置3−1〜3−3からそれぞれ送信されるダウンリンク信号を表す。
【0039】
例えば、第1および第2の無線システムがOFDM変調方式ないしは周波数直交分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access )を用いるシステムとする。この場合、各基地局装置は時間軸上で所定のシンボル周期で信号の送信を行う。さらに、各送信信号は周波数軸上に複数のサブキャリアと呼ばれる分割された信号が配置され、その周波数方向および時間方向のます目毎に信号が割り当てられる。図3に示す32および33−1〜33−3の太い実線で示すブロックは、このサブキャリア単位において実際に送信される信号を表す。一方、33−1〜33−3の破線で示すブロックは、実際には送信には用いられない信号を表す。
【0040】
仮に、OFDM変調方式を採用するシステムであれば、従来の基地局装置30は周波数軸上の全サブキャリアを利用して通信を行う。時間軸上でみれば、送信すべきデータが1シンボル内に収容しきれなければ、複数シンボルに渡り信号を送信することになる。OFDMAの場合には、フレームの先頭において複数の端末局宛のブロードキャスト情報を送信し、この中で端末局に対して時間軸上および周波数軸上での帯域割り当てを指示する。ブロードキャスト情報に後続するデータを収容するペイロード領域では所定の周波数サブキャリアを限定的に抜き出して信号送信を行うことがあり得るが、少なくともブロードキャスト情報を送信する際には、全帯域幅に渡り信号の送信を行う。このように全帯域に渡り信号を送信する際には、装置固有の送信電力を、各サブキャリアに均等に配分して信号送信を行う。
【0041】
これに対して、実施例1の基地局装置3−1〜3−3では、機能を分担して信号を送信する。ここでは、周波数方向に12個のブロックで12本のサブキャリアを用いる場合の例を示すが、基地局装置3−1は上位の4本、基地局装置3−2はそれに続く4本、基地局装置3−3はそれに続く4本のサブキャリアをそれぞれ分担して送信を行う。ポイントとしては、全体の信号を合成すれば従来の基地局装置30が送信する信号32と同等の信号になるが、それを敢えて各基地局装置で機能を分担して信号を送信している点が異なる。すなわち、各基地局装置がサブキャリアを分担して送信することにより、各基地局装置が全帯域に渡って信号を送信する場合と同じ電力を、当該割り当てられたサブキャリアに集中して送信する。
【0042】
この場合、単純には従来の基地局装置30と比べれば、実施例1の3台の基地局装置3−1〜3−3の総送信電力は3倍になるために、カバレッジを広げる効果が得られることが期待される。さらには、33−1〜33−3の太い実線で示すブロックのサブキャリアの信号に関しては、全てのサブキャリアの信号を送信する場合に比べて、各基地局装置が送信する各サブキャリアの電力が3倍に大きくなるので、特に実施例1の基地局装置3−1〜3−3の中で最も端末局と近い基地局が送信したサブキャリアに関しては、非常に安定した通信ができることが期待される。通常の無線通信においては、無線信号には誤り訂正の符号化処理が行なわれているため、これらの信頼性が高い信号と組み合わされた信号は、仮に実施例1の基地局装置3−3からの受信信号の受信レベルが比較的弱かったとしても、誤り訂正で符号誤りを補償することが可能になる。
【0043】
なお、このように複数の基地局装置が協調して伝送を行う例として、先に非特許文献2の分散アンテナシステムの例を示したが、この分散アンテナシステムでは全ての基地局装置が全ての信号を送信しながら、それぞれの信号に所定の係数である送信ウエイトを乗算して信号を送信している。この結果、受信側の端末局においては、各基地局装置からの信号が同じ位相で合成されるように調整することができる。あるいは、マルチユーザMIMO(Multiple Input Multiple Output)と呼ばれる技術を併用する場合には、複数の基地局装置からの信号を合成することにより、所望の信号がある端末局では受信できるが、他の端末局では信号が抑圧されて受信できない(つまり干渉とならない)ように調整することができる。ただし、このような協調伝送を行うためには、各基地局装置と端末局との間のチャネル情報が既知である必要があり、そのためのチャネルフィードバックのメカニズムが必要であったり、例えば端末局側で各基地局装置からの信号を同位相合成するためには周波数や位相の同期等の複雑な処理が必要であった。特に各基地局装置の間で周波数誤差がある場合には、仮に一旦チャネルフィードバックにより同位相合成の送信ウエイトを取得できたとしても、各基地局装置からの信号を合成した結果の位相関係が時間と共に変動することになるため、直ぐにその位相関係の条件が崩れてしまい、分散アンテナシステムの動作が不安定化してしまう。
【0044】
一方、本発明の実施例1では、処理が単純化されているために送信ウエイトを算出する必要はなく、したがって上記の様なチャネルのフィードバックや厳密な周波数同期等の処理も不要となる。
【0045】
なお、図3では各基地局装置への割り当ては連続したサブキャリアとなるように配置したが、全体の帯域内でシャッフルして均一化することも可能である。また、各サブキャリアにおいて共通の変調方式を用いてもよいし、異なる変調方式を用いても構わない。その際、例えば端末局と物理的に近距離にある基地局装置との通信時には高い伝送速度を割り当て、遠い基地局装置とは低い伝送速度の変調方式を固定的に割り当ててもよいし、フェージングにより時変動がある場合には、同一基地局であっても各サブキャリア毎に異なる変調方式を用いても構わない。さらに、各基地局装置のサブキャリアの割り当てにおいては、時間変動を考慮して、良好な条件で通信可能なサブキャッリアを選択して随時割り当てるサブキャリアを動的に最適化しても構わない。
【0046】
ところで、実施例1の構成では、各基地局装置3−1〜3−3が個別に送信するサブキャリア間の直交性を担保するために、各基地局装置のクロックの同期により相互の周波数誤差が所定のレベル以下である必要がある。同様に、信号の送信タイミングについても同期を図ることが必要である。これらの同期を図り相互の周波数誤差を抑圧するためには、各基地局装置3−1〜3−3および制御局1との間で何らかの同期手段が必須になる。例えば、各基地局装置3−1〜3−3および制御局1がGPS(Global Positioning System )を用いて絶対時刻と高精度のクロック供給を受ける方法等があるが、これについて別途説明する。以下に示す同期手段を明記しない他の実施例においても同様である。
【実施例2】
【0047】
図4は、本発明の実施例2における第2の無線システムのダウンリンク信号の例を示す。
実施例2では、図1に示す実施例1のOFDMまたはOFDMAを用いた第2の無線システムにおいて、サイクリックシフト遅延ダイバーシチを利用する例について説明する。
【0048】
図4において、従来の無線基地局30は、2本のアンテナ#1,#2からOFDMシンボル34−1,34−2をそれぞれ送信する。ここでは一例として、各OFDMシンボルをそれぞれ5分割し、そのうちの先頭がガードインターバルの領域となっている例を示している。つまり、OFDMシンボル34−1は、ガードインターバルを除く送信信号a,b,c,dに対して最後尾の信号dを先頭にガードインターバルとして付加した構成である。一方、OFDMシンボル34−2は、OFDMシンボル34−1の信号a,b,c,dを1/4周期ずつずらして送信信号b,c,d,aを生成し、その最後尾の信号aを先頭にガードインターバルとして付加した構成である。次に続くOFDMシンボル35−1,35−2、OFDMシンボル36−1,36−2も同様である。
【0049】
実施例2の基地局装置31−1,31−2,31−3は、従来の無線基地局30が複数のアンテナから送信した信号を、個々に異なる遅延量だけシフトした信号を生成して送信するものである。すなわち、基地局装置31−1が送信するOFDMシンボル37−1は、送信信号a,b,c,dに対して最後尾の信号dを先頭にガードインターバルとして付加した構成である。基地局装置31−2が送信するOFDMシンボル37−2は、OFDMシンボル37−1の信号a,b,c,dを1/4周期ずつずらして送信信号b,c,d,aを生成し、その最後尾の信号aを先頭にガードインターバルとして付加した構成である。基地局装置31−3が送信するOFDMシンボル37−3は、OFDMシンボル37−2の信号b,c,d,aを1/4周期ずつずらして送信信号c,d,a,bを生成し、その最後尾の信号bを先頭にガードインターバルとして付加した構成である。次に続くOFDMシンボル38−1〜38−3、OFDMシンボル39−1〜39−3も同様である。なお、この送信信号のシフト処理は、図1に示す制御局1の制御に従って各基地局装置31−1,31−2,31−3で実施される。
【0050】
一般に、一定の送信電力で信号を送信するアンテナ数を増やした場合、総送信電力の増加によりカバレッジの拡大効果が期待できるが、各アンテナからの信号が逆位相で合成されると逆に受信レベルが低下して逆効果となる。サイクリックシフト遅延ダイバーシチは、サブキャリア毎に見た場合の信号合成の位相関係をランダムにする効果があり、ある端末において殆どのサブキャリアが運悪く逆位相で合成されるリスクを低減することができ、安定的な通信を提供することが可能になる。また、サイクリックシフト遅延ダイバーシチでは、アンテナ間の距離が大きいほど、ないしはアンテナの本数が多くなるほど、周波数軸上でのサブキャリア毎の受信レベルのランダム性を高め、全サブキャリア平均での受信レベルの分布の広がりを抑える傾向がある。本実施例のように、複数の基地局装置が分担してサイクリックシフト遅延ダイバーシチを行う構成では、従来の1つの基地局装置でアンテナ間の距離を広げる場合に比べて、各基地局装置が物理的に離れており、より安定した通信を期待することができるようになる。
【実施例3】
【0051】
図5は、本発明の実施例3における無線通信システムの構成例を示す。
図5において、図1に示す実施例1との差分は、基地局装置3−1〜3−3との間では1対1のSISO(Single Input Single Output)通信を行う第2端末局12に代えて、基地局装置3−1〜3−3との間でMIMO伝送を行う複数のアンテナを備えた第2端末局13を用いる構成にある。
【0052】
通常であれば、MIMO伝送を行う場合の基地局装置は複数アンテナを備える必要があるが、ユーザ宅の基地局装置の場合には必ずしも高機能な基地局装置を想定できるとは限らないので、その場合の対応策として、基地局装置3−1〜3−3が各MIMO伝送の1本分のアンテナを分担し合い、全体としてMIMO伝送を実現しても構わない。この場合、第2BB処理部7−1〜7−3では、伝送するMIMOの各ストリーム毎の信号処理を実施することになる。
【0053】
なお、以上の説明において、MIMO伝送とは一般には(1)空間多重伝送として複数ストリームの信号を空間上で多重化して伝送速度を向上させる、(2)STBC(Space Time Block Code )を用いた符号化によりチャネルの利得を向上させる、(3)フェーズドアレー的な制御により単一ストリーム伝送のアンテナ指向性制御を行う、などの利用方法を伴うが、ここでのMIMO伝送とは(1)(2)の制御を意図しており、チャネルのフィードバックなど分散アンテナシステムと同様の高度な制御が必要で且つ1台の基地局装置のみでも通信自体が成り立つ(3)の利用方法は含まない。なお、この(1),(2)においては、MIMO伝送に求められる全体の機能を分割し、その個別の機能を各基地局装置に配分すると言う点で従来技術とは異なっている。
【0054】
このような構成により、各基地局により送信された電力の総和が、実際に無線媒体に送信される電力となるため、カバレッジを広げることが可能となる。また、MIMOによる多重化を行う場合は、アンテナ間の距離が大きいほど相関が低くなる傾向にあるため、多重化された信号を分離できる確率が高くなる。したがって、互いに異なる基地局から送信される信号によりMIMOが行われることから、従来の構成よりも高い通信品質を得ることができる。なお、1つの基地局により単一ストリームの信号が送信される従来技術と比較した場合に、同じ伝送速度(たとえば、24Mbps )を実現することを基準とすると、4つの基地局によりMIMOを行う場合には、1つの基地局は6Mbps の伝送速度で送信すればよいため、より低い変調方式等を利用できることとなり、結果としてカバレッジが拡大する。
【実施例4】
【0055】
図6は、本発明の実施例4における無線通信システムの構成例を示す。本実施例は、上述したように、各基地局装置3−1〜3−3および制御局1の同期を図り相互の周波数誤差を抑圧するための方法を示す。ここでは、実施例1の構成に適用した例を示すが、他の実施例においても同様である。
【0056】
図6において、図1に示す実施例1との差分は、各基地局装置3−1〜3−3内にGPS14−1〜14−3を実装するとともに、制御局1も同様にGPS14−4を接続して共通のクロックやタイミング情報を受け取る構成にある。ここでは、GPS14−1〜14−3から制御部9−1〜9−3には共通のクロックが供給され、このクロックを基に第2BB処理部7−1〜7−3の各種ベースバンド処理(アナログ/デジタル変換およびデジタル/アナログ変換処理を含む)、および第2無線部8−1〜8−3における周波数変換等の信号処理に用いるローカル信号などの同期を図ることができる。
【0057】
同様に、GPS14−1〜14−3から絶対時刻に関する情報を受けることにより、送受信タイミングを同期させることもできる。この際、制御局1においてもGPS14−4を備えることにより、各基地局装置3−1〜3−3と制御局1との間のタイミング同期が図られ、送信データの送信タイミングに関する情報を制御局1より通知することでタイミングを揃えることができる。ただし、ここでの制御は必ずしも明示的なタイミング指示がなくても、通信に用いるフレーム周期やシンボル周期などを、絶対時刻とどの様に同期させるかなどのルール決め(例えば、秒単位において小数点以下がゼロとなる時刻が各周期の境界に一致)で対応させることも可能である。
【0058】
なお、同様の制御はGPSを用いる以外にも、ネットワークに接続された光ファイバ等の有線回線を介して同期を図っても構わない。あるいは、別の無線システムの電波を受信し、そのシステムに同期させても構わない。
【0059】
分散アンテナシステムにおける各基地局装置は厳密なタイミングや周波数同期が必要であるが、本発明においては求められる精度は大幅に緩和されている。例えばOFDMないしはOFDMAを用いる場合には、タイミングに関してはタイミング誤差がガードインターバル長よりも小さければ、マルチパスによる伝搬遅延差に吸収されて実効上は問題とならない。また、各サブキャリアの周波数間隔に比較して周波数誤差が小さければ、FFT処理によるサブキャリア毎の分離処理にも殆ど影響はない。したがって、GPSやその他の手段によりクロックおよびタイミングの同期を図ることで、本発明の無線通信システムを安定に機能させることができる。
【実施例5】
【0060】
図7は、本発明の実施例5における無線通信システムの構成例を示す。
図7において、図1に示す実施例1との差分は、第2ベースバンド処理部7−1〜7−3をA/D(アナログ/デジタル)−D/A(デジタル/アナログ)変換処理部15−1〜15−3に置き換えられた構成にある。実施例1では、第2の無線システムの端末局12との通信において、第2BB処理部7−1〜7−3は、各種のベースバンド処理の全てないしはその一部を含んでいた。一方、処理を単純化する場合には、制御局1でそれらの処理を行い、D/A変換で用いるサンプリングデータをカプセル化して各基地局装置3−1〜3−3に転送し、IF部6−1〜6−3を介してA/D−D/A処理部15−1〜15−3に入力し、ここでD/A変換を施して第2無線部8−1〜8−3およびアンテナ10−1b〜10−3bを介して信号送信を行っても構わない。
【実施例6】
【0061】
以上の実施例では、第1の無線システムと第2の無線システムは基本的に異なる標準規格であったり、例えば 2.4GHz帯と5GHz帯のように異なる周波数帯であることを想定し、第1の無線システムに関する第1無線部4と、第2の無線システムに関する第2無線部8とを物理的に分けた構成としていた。この利点としては、仮に第1無線部4が信号を送信中であっても、第2無線部8が信号を同時刻に受信することを許容する。これは、第1無線部4および第2無線部8内に配置されるフィルタが帯域外の信号を抑圧するために、その後の信号処理において相互干渉とならずに運用することができるからである。
【0062】
しかし一方で、第1の無線システムと第2の無線システムが相互に独立な動作をする必要がなければ、同じ周波数帯を用い、アンテナ、無線部、さらにはベースバンド処理部までを相互に共用することも可能である。この場合には、第1の無線システムと第2の無線システムは、共通の標準規格に従うことも可能であるし、異なるものであっても構わない。
【0063】
図8は、本発明の実施例6における無線通信システムの構成例を示す。
図8において、図1に示す実施例1との差分は、図1の第1無線部4−1〜4−3と第2無線部8−1〜8−3を共用させた無線部19−1〜19−3、図1のアンテナ10−1a 〜10−3a とアンテナ10−1b〜10−3bを共用させたアンテナ20−1〜20−3を備え、さらにに第1BB処理部17−1〜17−3の機能の一部として、第2BB処理部18−1〜18−3を内在している構成である。
【0064】
図9は、本発明の実施例6における無線通信システムの動作例を示す。
ここでは、第1の無線システムおよび第2の無線システム共にOFDMないしはOFDMAを用いた無線システムを想定し、横軸に周波数を示し、各無線システムにおけるサブキャリアの利用状況を図示した。全体の左半分が第1の無線システムの使用帯域、右半分が第2の無線システムの使用帯域を示す。それぞれの使用帯域は隣接チャネルの関係にあり、相互のチャネル間干渉を回避するためにガードバンドが配置されている。
【0065】
第1の無線システムでは、1つの基地局装置でガードバンドを除く全サブキャリアの信号送信を行う。一方、第2の無線システムでは、例えば図に示したように1つの基地局装置は第2の無線システムに割り当ての全サブキャリアの一部のみを送信し、他の基地局装置が残りのサブキャリアを送信する。この図の例で言えば、OFDMないしはOFDMAにおけるベースバンド処理において、FFT処理およびIFFT処理を行う際には、それぞれを一括で行うことが可能である。例えば、第1の無線システムと第2の無線システム全体では、FFT/IFFTを行う際のポイント数を2倍にすれば、それぞれのチャネルの信号を周波数軸上でサブキャリアの直交関係を保ちながら信号分離等の処理を実施可能である。具体的には、第1の無線システムおよび第2の無線システムがIEEE802.11a/b/g/n 等の無線LAN規格に基づくものであれば、それぞれ64ポイントFFT(全体として64サブキャリアを想定するが、実際にはそのうちの52サブキャリアのみを利用)として動作する。サンプリング間隔を半分にし、ポイント数を2倍に増やした 128ポイントFFTを実施すれば、FFT/IFFTの信号処理を両チャネル一括で実施することが可能になり、しかもチャネル間の直交性を維持することが可能である。
【0066】
このような処理を想定すると、図8に示すように、第1の無線システムに関する信号処理を第1BB処理部17−1〜17−3として第2BB処理部18−1〜18−3が実現し、無線部19−1〜19−3は隣接チャネルまとめて同時に送信または受信を行うことが可能である。なお、この際には一方が送信中には他方が受信を行うことができなくなるため、利用には多少の制約を伴うことになるが、回路規模的には大幅に縮小できるメリットが得られる。
【0067】
なお、図9では上述の実施例1で示したように、各基地局装置が全体のサブキャリアを分担して通信する場合の例を示したが、第2の実施例、第3の実施例の様に、各基地局装置が全てのサブキャリアの信号を送信する場合にも同様の議論が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 制御局
2 有線回線(または無線回線)
3−1〜3−3 基地局装置
4−1〜4−3 第1無線部
5−1〜5−3 第1BB処理部
6−1〜6−3 IF部
7−1 第2BB処理部(#1)
7−2 第2BB処理部(#2)
7−3 第2BB処理部(#3)
8−1〜8−3 第2無線部
9−1〜9−3 制御部
10−1a〜10−3a アンテナ
10−1b〜10−3b アンテナ
11−1〜11−3 第1の無線システムの端末局(第1端末局)
12 第2の無線システムの端末局(第2端末局)
13 複数のアンテナを備えた第2端末局
14−1〜14−4 GPS
15−1〜15−3 A/D−D/A変換処理部
16−1〜16−3 制御部
17−1〜17−3 第1BB処理部
18−1〜18−3 第2BB処理部
19−1〜19−3 無線部
20−1〜20−3 アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲に分散して存在する第1の無線システムに属する複数の基地局がその機能の一部を活用し、第1の無線システムとは異なる第2の無線システムの基地局を形成して通信を行う無線通信システムに関する。特に、第1の無線システムは、光ファイバやADSL等の有線回線でインターネット等のコアネットワークと接続された無線ホームネットワークであり、第1の無線システムに属する基地局はその無線ホームネットワークの基地局であり、その複数の基地局の機能の一部を活用して第2の無線システムの基地局を形成する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線を用いた通信システムが急激に普及している。これは、古くは携帯電話の普及に始まり、近年では無線LANやWiMAX(Worldwide interoperability for microwave access)などの高速無線アクセスを実現することが可能になってきたことによる。これらの多くは、通信条件的に好ましい比較的低い周波数であるマイクロ波帯を用い、基地局と端末局間が見通し外環境であっても、安定して通信を行うことが可能である。
【0003】
例えば、WiMAXを例に取れば、免許不要の無線LANと異なり、免許を必要とする周波数帯を用いることで大電力の送信が可能となり、ひとつの基地局あたりのカバーする面積は半径数kmにもおよぶ。しかし逆に言えば、非常に広域のエリアで多数のユーザが有限の周波数資源をシェアすることになるため、サービスが普及すればするほど一ユーザ当たりの平均スループットは低下する。一般に、所定の帯域に対して単位面積当たりのスループットを向上させるためには、各サービスエリアを狭くし、個別のセルをマイクロセル化すると共に、キャリアセンスを伴う無線パケットの衝突回避手法、ないしは複数チャネルで周波数繰り返しを行うなど、同一周波数チャネルを離れた場所で再利用することが好ましい。
【0004】
免許不要の無線LANの場合には、近年の爆発的な普及で基地局および端末装置の値段も安価になり、様々な通信事業会社が公衆無線LANサービスを非常に安価に提供している。しかし、これらは各通信事業会社が別途提供している光回線ないしは携帯電話等のモバイル回線との基本契約があるユーザに限られており、さらには利用可能な場所は駅の構内や空港などの公共施設やホテル、喫茶店など集客目的の場所に限定される。これらの通信事業者との別の基本契約を伴わない有料ではあるが安価な無線サービスもあるが、人口が特に密集している都心部を除けば、サービスエリアは離散的に点在しており、その他の地域ではサービスを受けることはできない。
【0005】
このようなサービスエリアの拡大を阻む要因を解決するアプローチとしては、インターネットに接続可能な環境を自宅に供えたユーザが、そこに無線LANの基地局(通常はAP(Access Point)と呼ぶ)を設置し、近隣のユーザにこの基地局を開放することでボランティア・ネットワークを構築するものである。特に、非特許文献1に示す「Fon」によるサービスでは、ユーザが自宅のAPを開放する見返りとして、他者のAPも無料で利用させてもらうものである。このように自宅に設置するAPを無料ないしは安価で提供することにより、自己増殖的にネットワークが広がる。
【0006】
図10は、非特許文献1に記載の無線通信システムの構成例を示す。
図10において、101は基地局、102−1および102−2は端末局、103はネットワーク、104はユーザ宅、105はルータ、106は光ファイバ等の有線回線を表す。ユーザ宅104内にある基地局101はルータ105を経由し、光ファイバ等の有線回線106を介してネットワーク103に接続される。この基地局101は、無線回線を介して自宅内の端末局102−1と通信を行う。したがって、端末局102−1は基地局101を介してネットワーク103に接続し、インターネットから必要な情報を取得することができる。基本的には、ユーザ宅104内に設置された基地局101は、ユーザ宅内の端末局102−1との通信をするために設置されているが、この基地局101が送信する電波は屋外にも漏れるため、屋外の端末局102−2も基地局101と通信することが可能である。
【0007】
ここで、この端末局102−2のユーザは、本図では示していないが同様に自宅に基地局を設置してあり、その基地局は他のユーザの端末局、例えば本図の端末局102−1が同様に無線回線を介して通信し、インターネットアクセスを行うことが可能になる。このように、多くのユーザ間が相互の基地局を開放することで、基地局ないしアクセスポイントの設置場所が限定され、利用可能なエリアが狭い公衆無線LANサービスに対し、相対的にはより広いエリアでの利用が可能となる。
【0008】
図11は、非特許文献2に記載の分散アンテナシステムの構成例を示す。この分散アンテナシステムは、複数のリモート基地局が協調して伝送を行う構成である。
【0009】
図11において、111−1〜111−3は協調的な通信を行う個々のセル、112−1〜112−3は各セルのリモート基地局、113−1〜113−6は端末局、114は制御局、115は光ファイバ等の有線伝送路を表す。セル111−1〜111−3のリモート基地局112−1〜112−3は、同一の周波数チャネルを用いて各端末局113−1〜113−6と通信を行う。制御局114は、光ファイバ等の有線伝送路115を介してリモート基地局112−1〜112−3を制御する。同一周波数を用いた通信であることから、各端末局113−1〜113−6は複数のリモート基地局113−1〜113−3からの信号を受信可能である。例えば、端末局113−4は、全てのリモート基地局112−1〜112−3からの信号を受信することで通信の特性を改善することができる。特に、リモート基地局112−1と端末局113−4、リモート基地局112−2と端末局113−4、リモート基地局112−3と端末局113−4のそれぞれのチャネルの情報が既知であれば、リモート基地局112−1〜112−3が端末局113−4に宛てて信号を送信する際に、端末局113−4で各受信信号が同位相合成となるように送信側で送信ウエイト乗算を施すことで、通信特性の改善が可能である。これらの同位相合成のための信号処理の制御は全て制御局114で実施され、リモート基地局112−1〜112−3は制御局114の指示に従い動作する。
【0010】
分散アンテナシステムでは、このような効果を最大限に利用することで特性を改善する。ここで特徴的なのは、例えばリモート基地局112−1は制御局114の制御のもとで動作するが、他のリモート基地局112−2〜112−3がなくても動作可能であり、基地局としての機能はリモート基地局112−1と制御局114の組み合わせで一通り全ての機能を備えていることになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】”Fonはどれだけ使える?”, 日経コミュニケーション2007年6月15日号
【非特許文献2】松田大輝他, ”最大比送信を用いる分散アンテナシステムのチャネル容量に関する一検討”, 信学技法RCS2007-196, pp.61-66, 2008年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図10に示す無線通信システムは、各ユーザ宅内に設置された基地局を、ユーザ宅内の端末装置に加えて屋外の不特定多数のユーザの端末装置に対しても開放し、相互に通信を行うことができた点が特徴的である。しかし、ここで問題となるのは、一般に屋内に設置された基地局の電波が屋外に漏れ出す際には、壁や窓を通過する際の電波の通過損が生じる。この値は家の壁や窓の素材に大きく依存するが、最低でも10dB以上、通常は20dB程度の損失が予想される。仮に、電波の減衰が自由空間の伝搬損、すなわち距離の2乗に比例する伝搬損失がある場合には、20dBの損失とはサービス可能なエリア半径が1/10になることを意味する。仮に伝搬損失が距離の3乗に比例する場合であっても、20dBの損失とはサービス可能なエリア半径が概ね1/5である。
【0013】
もともと、屋内での利用を想定する無線LAN機器の場合、安価で線形性の低い送信アンプの利用という背景も含めて、送信電力はそれほど高くないのが一般的であり、そのためユーザ宅内の基地局がカバーできるエリア面積は狭い。一般に、基地局が高所に設置されていて、端末局と基地局とが見通しがきく位置関係がある場合には 100m程度は離れていても安定して通信を行うことができるが、見通しが確保できなくなると急激に通信可能な距離は限定される。図10の無線通信システムの場合には、さらに家の壁の通過損失がエリア面積を狭くするため、結果的に利用可能なユーザ宅の直近でなければ通信をすることはできない。
【0014】
近年、急速に光ファイバ等によるブロードバンド環境の提供エリアは広がりつつあるが、実際にブロードバンド環境を構築している加入者の割合は3割程度であり、携帯電話でのインターネットアクセスを除けば、ブロードバンド普及率は十分とは言いがたい。このような状況でのブロードバンド普及率の向上のためには、低廉なインターネットアクセスを提供するための基盤づくりが必要であり、そのためには例えば非特許文献1に記載のような無線通信システムのカバーエリアの拡大を図るための技術が求められている。
【0015】
本発明は、第1の無線システムに属する複数の基地局がその機能の一部を活用し、制御局のもとで第1の無線システムとは異なる第2の無線システムの基地局を形成し、この複数の基地局が協調して第2の無線システムを介して端末局と通信を行うことができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ネットワークに接続された制御局と、該制御局と有線または無線の通信回線を介して接続される複数の基地局とを備え、複数の基地局がそれぞれ第1の無線システムを介して第1の端末局と接続し、各基地局配下の第1の端末局が制御局を介してネットワーク側との通信を可能とする無線通信システムにおいて、複数の基地局は、互いにクロック同期またはタイミング同期をとる同期手段と、第1の無線システムとは異なる第2の無線システムを介して第2の端末局と接続する第2無線システム接続手段とを備え、制御局は、複数の基地局のうち設置場所が近接する複数の基地局をグループ化し、このグループ化した複数の基地局の各第2無線システム接続手段を組み合わせ、第2の端末局との通信を行う基地局としての機能を実現する第2無線システム基地局制御手段を備え、第2の無線システムを介して、第2の端末局とネットワーク側との間の通信を可能とする構成である。
【0017】
本発明の無線通信システムにおいて、第2の無線システムは、直交周波数分割多重(OFDM)変調方式または直交周波数分割多元接続(OFDMA)方式で通信する構成であり、制御局の第2無線システム基地局制御手段は、第2の無線システムが通信に用いる全サブキャリアをグループ化した各基地局に分割して割り当て、各基地局に割り当てたサブキャリアを指示するとともに、当該サブキャリアで伝送するダウンリンク信号を各基地局にそれぞれ送信する送信手段と、グループ化した各基地局が受信した第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、複数の基地局の第2無線システム接続手段は、制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号を受信し、各基地局ごとにそれぞれ割り当てられたサブキャリアを用いて第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、制御局に転送するアップリンク受信手段とを備える。
【0018】
本発明の無線通信システムにおいて、第2の無線システムは、直交周波数分割多重(OFDM)変調方式または直交周波数分割多元接続(OFDMA)方式で通信する構成であり、制御局の第2無線システム基地局制御手段は、グループ化した各基地局に、第2の無線システムを介して伝送するダウンリンク信号を送信する送信手段と、グループ化した各基地局が受信した第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、複数の基地局の第2無線システム接続手段は、制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号を受信し、当該ダウンリンク信号のOFDMシンボルを単位に、ガードインターバルを除く信号領域にグループ化した各基地局で互いに異なるサイクリック遅延量のサイクリック遅延を与えた信号にガードインターバルを付与してダウンリンク信号を生成し、第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、制御局に転送するアップリンク受信手段とを備える。
【0019】
本発明の無線通信システムにおいて、第2の無線システムは、複数の信号系列を空間多重するMIMO伝送が可能な構成であり、制御局の第2無線システム基地局制御手段は、第2の端末局に送信するダウンリンク信号を複数の信号系列に分割し、複数の信号系列を各基地局に割り当て、割り当てられた各信号系列をグループ化した各基地局にそれぞれ送信する送信手段と、グループ化した各基地局が受信した第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、複数の基地局の第2無線システム接続手段は、制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号の各信号系列を受信し、第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、制御局に転送するアップリンク受信手段とを備える。
【0020】
本発明の無線通信システムにおいて、制御局は、複数の基地局の各同期手段に対して所定の信号の送信タイミングを指示する手段を備え、複数の基地局は、制御局より指示された送信タイミングにて所定の信号の送信を開始する手段を備える。
【0021】
本発明の無線通信システムにおいて、複数の基地局は、同期手段により互いに同期したクロックをもとにローカル信号を発生させ、当該ローカル信号をもとに送信信号または受信信号の周波数変換を行い、さらに前記同期したクロックをもとにアナログ/デジタル変換またはデジタル/アナログ変換を実施し、第2の端末局および制御局に転送する送信信号を生成する手段を備える。
【0022】
本発明の無線通信システムにおいて、第1の無線システムおよび第2の無線システムが利用する周波数チャネルは、同一周波数チャネルまたは隣接周波数チャネルであり、OFDMまたはOFDMAのFFTおよびIFFT処理を実施する手段を第1の無線システムおよび第2の無線システムで共通化する。
【0023】
本発明の無線通信システムにおいて、第1の無線システムは、有線または無線の通信回線を介してインターネットに接続可能な一般家庭の無線ホームネットワークを実現する無線システムであり、第2の無線システムは、公衆無線アクセスを実現する無線システムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の無線通信システムは、各ユーザ宅内に設置された基地局を、ユーザ宅内の端末装置に加えて屋外の不特定多数のユーザの端末装置に対しても開放し相互に通信を行うことができるようにする際に、一般に屋内に設置された基地局の電波が屋外に漏れ出す際には、壁や窓を通過する際の電波の通過損が生じ、特にダウンリンクにおいて端末局側での受信電力が大幅に低下し、その結果として通信品質が大幅に劣化し、最終的には安定的な通信を広範囲で実現することが困難であったのに対し、この端末局側での受信レベルを向上させ、結果的に安定的な通信を広範囲で実現することが可能となる。この際に、各基地局装置が備える機能は、ユーザ宅外の端末装置との通信に必要となる機能の全てを実装する必要はなく、その一部のみを実装することで個々の基地局装置の備えるべき機能的な負荷が低減可能である。また、各基地局装置と端末局間のチャネル情報は必ずしも必要ではなく、簡易な制御で上記の効果を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1における無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1における第1の無線システムと第2の無線システムの概要を示す図である。
【図3】本発明の実施例1における第2の無線システムのダウンリンク信号の例を示す図である。
【図4】本発明の実施例2における第2の無線システムのダウンリンク信号の例を示す図である。
【図5】本発明の実施例3における無線通信システムの構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施例4における無線通信システムの構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施例5における無線通信システムの構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施例6における無線通信システムの構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施例6における無線通信システムの動作例を示す図である。
【図10】従来の無線通信システムの構成例を示す図である。
【図11】従来の分散アンテナシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1における無線通信システムの構成例を示す。
図1において、1は制御局、2は光ファイバ等の有線回線あるいは無線回線、3−1〜3−3は基地局装置、4−1〜4−3は第1の無線システムに対応する送受信処理を行う第1無線部、5−1〜5−3は第1の無線システムに対応するベースバンド処理を行う第1BB(ベースバンド)処理部、6−1〜6−3はIF(インタフェース)部、7−1〜7−3は第2の無線システムに対応するベースバンド処理の部分的処理を行う第2BB処理部(#1)〜第2BB処理部(#3)、8−1〜8−3は第2の無線システムに対応する送受信処理を行う第2無線部、9−1〜9−3は制御部、10−1a〜10−3aは第1の無線システムの信号を送受信するアンテナ、10−1b〜10−3bは第2の無線システムの信号を送受信するアンテナ、11−1〜11−3は第1の無線システムの端末局(第1端末局)、12は第2の無線システムの端末局(第2端末局)を表す。
【0027】
制御局1は、有線回線2を介して各基地局装置3−1〜3−3に接続されるとともに、インターネット等のネットワークにも接続される。例えば、第1端末局11−1に対してネットワーク側から制御局1にデータが入力された場合、制御局1は有線回線2を介して基地局装置3−1のIF部6−1に対してデータを転送する。IF部6−1は当該データを終端し、データに付与された情報等から第1端末局11−1宛てのデータと認識し、第1BB処理部5−1でベースバンド信号処理を行い、第1無線部4−1で無線信号に変換し、アンテナ10−1aより無線信号として送信する。送信された信号は、第1端末局11−1に受信され、必要な信号処理が実施される。
【0028】
逆に第1端末局11−1から送信された信号はアンテナ10−1a にて受信し、これを第1無線部10−1aで無線信号処理を行ってベースバンドのデジタル信号に変換し、これを第1BB処理部5−1でベースバンド信号処理を行い、データの抜き出しを行う。IF部6−1は、このデータを制御局1に転送するための所定の信号処理を行い、有線回線2を介して制御局1に転送し、制御局1は必要に応じてネットワーク側に転送する。
【0029】
以上の処理は、他の基地局装置3−2〜3−3および第1端末局11−2〜11−3においても同様である。一般に、各基地局装置3−1〜3−3はユーザ宅に設置され、それぞれが第1端末局11−1〜11−3との間で第1の無線システム(無線ホームネットワーク)を構築し、その中で閉じた通信を行っている。
【0030】
一方、それぞれのユーザ宅の外にある第2端末局12は、各基地局装置3−1〜3−3との間で第2の無線システムを構成し、第1端末局11−1〜11−3と同時並行的に通信を行う。しかし、各基地局装置3−1〜3−3が備える第2BB処理部(#1)7−1〜第2BB処理部(#3)7−3は、それぞれ単独では第2の無線システムのベースバンド処理の全体(後述)を実施せず、その機能の一部のみを実施する。したがって、第2端末局12に宛ててネットワーク側から制御局1にデータが入力された場合、制御局1はその信号を適宜処理し(後述)、別々の処理が施されたそれぞれの信号を有線回線2を介して各基地局装置3−1〜3−3のIF部6−1〜6−3に転送する。IF部6−1〜6−3は、第2端末局12宛ての信号と認識した場合に、その信号を第2BB処理部(#1)7−1〜第2BB処理部(#3)7−3に転送する。
【0031】
例えば、基地局装置3−1の第2BB処理部(#1)7−1は、自局に割り当てられた第2の無線システムのベースバンド信号処理の一部分の信号処理を実施する。同様に、基地局装置3−2の第2BB処理部(#2)7−2は、第2の無線システムのベースバンド信号処理の基地局装置3−1とは異なる一部分の信号処理を実施する。同様に、基地局装置3−3の第2BB処理部(#3)7−3は、第2の無線システムのベースバンド信号処理の基地局装置3−1〜3−2とは異なる一部分の信号処理を実施する。ここでのベースバンド信号処理とは、例えば信号の変調処理、インタリーブ、誤り訂正符号化、周波数直交分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を適用する場合にはサブキャリア毎の変調処理に加えてIFFT処理やガードインターバルの挿入、IFFT処理、デジタル/アナログ変換など、様々な処理の全てないしはそれらの一部を含む処理である。そして、制御局1および各基地局装置3−1〜3−3におけるそれぞれの信号処理を集約すると、第2の無線システムのベースバンド信号処理全体を構成する。このように処理された信号は、第2無線部8−1〜8−3を介して無線信号としてアンテナ10−1b〜10−3bより第2端末局12に対して送信される。第2端末局12は、各基地局装置3−1〜3−3からそれぞれ送信された信号を合せてベースバンド信号処理し、制御局1から送信されたデータを復元する。
【0032】
一方、第2端末局12から送信された信号はアンテナ10−1b〜10−3bにて受信し、第2無線部8−1〜8−3で無線信号処理によってベースバンドのデジタル信号に変換され、第2BB処理部(#1)7−1〜第2BB処理部(#3)7−3でそれぞれ対応するベースバンド信号処理が行われる。ただし、各基地局装置3−1〜3−3の受信信号のベースバンド信号処理の全てを必ずしもここで実施するとは限らず、必要最低限の機能、例えば受信信号に対するタイミング検出、帯域外信号の抑圧フィルタ処理、OFDM変調方式におけるガードインターバル除去とFFT処理等の一連の処理の一部ないしはその組み合わせのみを行い、残りの機能を備える制御局1が残りの信号処理を行う。このような場合には、IF部6−1〜6−3では、中途まで処理された中間的な処理データを制御局1に転送するための所定の信号処理を行い、有線回線2を介して制御局1に転送し、制御局1は残りの信号処理を実施し、データを抜き出す所定の信号処理を実施し、これを必要に応じてネットワーク側に転送する。
【0033】
なお、上述の一連の処理は第1の無線システムおよび第2の無線システムに共通の制御部9−1〜9−3により制御され、それぞれの機能間でのタイミング調整や相互のデータの入出力などが管理される。また上述のように、IF部6−1〜6−3および制御局1では、ネットワークないしは外部の機器との通信を行うため、例えばインターネットプロトコルやイーサネット(登録商標)等のパケット処理などの様々な信号処理を含み得る。同様に、図1には示されていないが、図2に示すように各基地局装置3−1〜3−3と制御局1との間に、それぞれルータ等のネットワーク機器が設置され、そのネットワーク機器においてこれらの信号処理を実現していても構わない。ただし、ここでの説明においては、無線信号の処理に着目した説明を行っているため、上位レイヤにおけるインターネットプロトコルやイーサネット等のパケット処理などの様々な信号処理については、ここでは詳細は省略する。また、制御局1は、基地局装置3−1〜3−3より収集した第2の無線システムのアップリンク信号に対して、例えば最大比合成処理などを行うなど、高い通信品質を実現するための信号処理が実施される。
【0034】
第2端末局12は、移動を伴う携帯端末であってもよいし、ユーザ宅の中で利用する半固定的な設置型の端末装置であっても構わない。この場合、事前に第2端末局12が登録されていれば、その所在地に関する情報は既知であり、連携して信号処理を実施する基地局装置3−1〜3−3の組み合わせ(グループ)を制御局1で選択する。ここでは、第2端末局毎に、異なる基地局装置の組み合わせを選択することも可能であるし、エリアを区切り、各エリア毎に協調する基地局装置を選択しておき、そのエリア内に存在する第2の無線システムの端末局は全て共通の基地局装置の組み合わせと通信を行ってもよい。
【0035】
なお、図1の説明では、第2端末局12はユーザ宅の外にあるとして説明してきたが、一般的な移動端末であってもよいし、図2に示すようにユーザ宅の近隣の別のユーザ宅内にあってもよい。一般的には、様々な制御を効率的に実行するために、第2端末局12の所在が明らかな場合が好ましく、図2に示す構成をとるのが典型的な運用形態である。
【0036】
図2は、本発明の実施例1における第1の無線システムと第2の無線システムの概要を示す。
図2において、図1と同一番号は同一機能を示す。さらに、51−1〜51−3は基地局装置3−1〜3−3を有するユーザ宅、52は第2端末局12を有するユーザ宅、53−1〜53−3は光終端装置やルータ等、54は制御部1に接続されるネットワークを表す。ユーザ宅51−1〜51−3内にある基地局装置3−1〜3−3は、ルータ等53−1〜53−3を経由し、光ファイバ等の有線回線2を介して制御局1に接続され、さらにネットワーク54に接続される。この基地局装置3−1〜3−3は、第1の無線システムを介して自宅内の第1端末局11−1〜11−3と通信を行う。
【0037】
同時に、基地局装置3−1〜3−3は、第2の無線システムを利用して、基地局装置を持たないユーザ宅52内の第2端末局12と通信を行う。基地局装置3−1〜3−3を有するユーザ宅51−1〜51−3内には、第1端末局11−1〜11−3などのルーチングを管理するルータ等53−1〜53−3の機能を備えることになるが、第2端末局12はルータ等53−1〜53−3の管理外であり、制御局1ないしはネットワーク54が第2端末局12のルーチングを管理する機能を持つ。これは、従来技術においても、ルータ等53−1〜53−3のルーチング管理をネットワーク54内に備えるのと同様である。
【0038】
図3は、本発明の実施例1における第2の無線システムのダウンリンク信号の例を示す。
図3において、30は従来の基地局装置、3−1〜3−3は図1および図2に示す実施例1の基地局装置、32は従来の基地局装置30から送信されるダウンリンク信号、33−1〜33−3は実施例1の基地局装置3−1〜3−3からそれぞれ送信されるダウンリンク信号を表す。
【0039】
例えば、第1および第2の無線システムがOFDM変調方式ないしは周波数直交分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access )を用いるシステムとする。この場合、各基地局装置は時間軸上で所定のシンボル周期で信号の送信を行う。さらに、各送信信号は周波数軸上に複数のサブキャリアと呼ばれる分割された信号が配置され、その周波数方向および時間方向のます目毎に信号が割り当てられる。図3に示す32および33−1〜33−3の太い実線で示すブロックは、このサブキャリア単位において実際に送信される信号を表す。一方、33−1〜33−3の破線で示すブロックは、実際には送信には用いられない信号を表す。
【0040】
仮に、OFDM変調方式を採用するシステムであれば、従来の基地局装置30は周波数軸上の全サブキャリアを利用して通信を行う。時間軸上でみれば、送信すべきデータが1シンボル内に収容しきれなければ、複数シンボルに渡り信号を送信することになる。OFDMAの場合には、フレームの先頭において複数の端末局宛のブロードキャスト情報を送信し、この中で端末局に対して時間軸上および周波数軸上での帯域割り当てを指示する。ブロードキャスト情報に後続するデータを収容するペイロード領域では所定の周波数サブキャリアを限定的に抜き出して信号送信を行うことがあり得るが、少なくともブロードキャスト情報を送信する際には、全帯域幅に渡り信号の送信を行う。このように全帯域に渡り信号を送信する際には、装置固有の送信電力を、各サブキャリアに均等に配分して信号送信を行う。
【0041】
これに対して、実施例1の基地局装置3−1〜3−3では、機能を分担して信号を送信する。ここでは、周波数方向に12個のブロックで12本のサブキャリアを用いる場合の例を示すが、基地局装置3−1は上位の4本、基地局装置3−2はそれに続く4本、基地局装置3−3はそれに続く4本のサブキャリアをそれぞれ分担して送信を行う。ポイントとしては、全体の信号を合成すれば従来の基地局装置30が送信する信号32と同等の信号になるが、それを敢えて各基地局装置で機能を分担して信号を送信している点が異なる。すなわち、各基地局装置がサブキャリアを分担して送信することにより、各基地局装置が全帯域に渡って信号を送信する場合と同じ電力を、当該割り当てられたサブキャリアに集中して送信する。
【0042】
この場合、単純には従来の基地局装置30と比べれば、実施例1の3台の基地局装置3−1〜3−3の総送信電力は3倍になるために、カバレッジを広げる効果が得られることが期待される。さらには、33−1〜33−3の太い実線で示すブロックのサブキャリアの信号に関しては、全てのサブキャリアの信号を送信する場合に比べて、各基地局装置が送信する各サブキャリアの電力が3倍に大きくなるので、特に実施例1の基地局装置3−1〜3−3の中で最も端末局と近い基地局が送信したサブキャリアに関しては、非常に安定した通信ができることが期待される。通常の無線通信においては、無線信号には誤り訂正の符号化処理が行なわれているため、これらの信頼性が高い信号と組み合わされた信号は、仮に実施例1の基地局装置3−3からの受信信号の受信レベルが比較的弱かったとしても、誤り訂正で符号誤りを補償することが可能になる。
【0043】
なお、このように複数の基地局装置が協調して伝送を行う例として、先に非特許文献2の分散アンテナシステムの例を示したが、この分散アンテナシステムでは全ての基地局装置が全ての信号を送信しながら、それぞれの信号に所定の係数である送信ウエイトを乗算して信号を送信している。この結果、受信側の端末局においては、各基地局装置からの信号が同じ位相で合成されるように調整することができる。あるいは、マルチユーザMIMO(Multiple Input Multiple Output)と呼ばれる技術を併用する場合には、複数の基地局装置からの信号を合成することにより、所望の信号がある端末局では受信できるが、他の端末局では信号が抑圧されて受信できない(つまり干渉とならない)ように調整することができる。ただし、このような協調伝送を行うためには、各基地局装置と端末局との間のチャネル情報が既知である必要があり、そのためのチャネルフィードバックのメカニズムが必要であったり、例えば端末局側で各基地局装置からの信号を同位相合成するためには周波数や位相の同期等の複雑な処理が必要であった。特に各基地局装置の間で周波数誤差がある場合には、仮に一旦チャネルフィードバックにより同位相合成の送信ウエイトを取得できたとしても、各基地局装置からの信号を合成した結果の位相関係が時間と共に変動することになるため、直ぐにその位相関係の条件が崩れてしまい、分散アンテナシステムの動作が不安定化してしまう。
【0044】
一方、本発明の実施例1では、処理が単純化されているために送信ウエイトを算出する必要はなく、したがって上記の様なチャネルのフィードバックや厳密な周波数同期等の処理も不要となる。
【0045】
なお、図3では各基地局装置への割り当ては連続したサブキャリアとなるように配置したが、全体の帯域内でシャッフルして均一化することも可能である。また、各サブキャリアにおいて共通の変調方式を用いてもよいし、異なる変調方式を用いても構わない。その際、例えば端末局と物理的に近距離にある基地局装置との通信時には高い伝送速度を割り当て、遠い基地局装置とは低い伝送速度の変調方式を固定的に割り当ててもよいし、フェージングにより時変動がある場合には、同一基地局であっても各サブキャリア毎に異なる変調方式を用いても構わない。さらに、各基地局装置のサブキャリアの割り当てにおいては、時間変動を考慮して、良好な条件で通信可能なサブキャッリアを選択して随時割り当てるサブキャリアを動的に最適化しても構わない。
【0046】
ところで、実施例1の構成では、各基地局装置3−1〜3−3が個別に送信するサブキャリア間の直交性を担保するために、各基地局装置のクロックの同期により相互の周波数誤差が所定のレベル以下である必要がある。同様に、信号の送信タイミングについても同期を図ることが必要である。これらの同期を図り相互の周波数誤差を抑圧するためには、各基地局装置3−1〜3−3および制御局1との間で何らかの同期手段が必須になる。例えば、各基地局装置3−1〜3−3および制御局1がGPS(Global Positioning System )を用いて絶対時刻と高精度のクロック供給を受ける方法等があるが、これについて別途説明する。以下に示す同期手段を明記しない他の実施例においても同様である。
【実施例2】
【0047】
図4は、本発明の実施例2における第2の無線システムのダウンリンク信号の例を示す。
実施例2では、図1に示す実施例1のOFDMまたはOFDMAを用いた第2の無線システムにおいて、サイクリックシフト遅延ダイバーシチを利用する例について説明する。
【0048】
図4において、従来の無線基地局30は、2本のアンテナ#1,#2からOFDMシンボル34−1,34−2をそれぞれ送信する。ここでは一例として、各OFDMシンボルをそれぞれ5分割し、そのうちの先頭がガードインターバルの領域となっている例を示している。つまり、OFDMシンボル34−1は、ガードインターバルを除く送信信号a,b,c,dに対して最後尾の信号dを先頭にガードインターバルとして付加した構成である。一方、OFDMシンボル34−2は、OFDMシンボル34−1の信号a,b,c,dを1/4周期ずつずらして送信信号b,c,d,aを生成し、その最後尾の信号aを先頭にガードインターバルとして付加した構成である。次に続くOFDMシンボル35−1,35−2、OFDMシンボル36−1,36−2も同様である。
【0049】
実施例2の基地局装置31−1,31−2,31−3は、従来の無線基地局30が複数のアンテナから送信した信号を、個々に異なる遅延量だけシフトした信号を生成して送信するものである。すなわち、基地局装置31−1が送信するOFDMシンボル37−1は、送信信号a,b,c,dに対して最後尾の信号dを先頭にガードインターバルとして付加した構成である。基地局装置31−2が送信するOFDMシンボル37−2は、OFDMシンボル37−1の信号a,b,c,dを1/4周期ずつずらして送信信号b,c,d,aを生成し、その最後尾の信号aを先頭にガードインターバルとして付加した構成である。基地局装置31−3が送信するOFDMシンボル37−3は、OFDMシンボル37−2の信号b,c,d,aを1/4周期ずつずらして送信信号c,d,a,bを生成し、その最後尾の信号bを先頭にガードインターバルとして付加した構成である。次に続くOFDMシンボル38−1〜38−3、OFDMシンボル39−1〜39−3も同様である。なお、この送信信号のシフト処理は、図1に示す制御局1の制御に従って各基地局装置31−1,31−2,31−3で実施される。
【0050】
一般に、一定の送信電力で信号を送信するアンテナ数を増やした場合、総送信電力の増加によりカバレッジの拡大効果が期待できるが、各アンテナからの信号が逆位相で合成されると逆に受信レベルが低下して逆効果となる。サイクリックシフト遅延ダイバーシチは、サブキャリア毎に見た場合の信号合成の位相関係をランダムにする効果があり、ある端末において殆どのサブキャリアが運悪く逆位相で合成されるリスクを低減することができ、安定的な通信を提供することが可能になる。また、サイクリックシフト遅延ダイバーシチでは、アンテナ間の距離が大きいほど、ないしはアンテナの本数が多くなるほど、周波数軸上でのサブキャリア毎の受信レベルのランダム性を高め、全サブキャリア平均での受信レベルの分布の広がりを抑える傾向がある。本実施例のように、複数の基地局装置が分担してサイクリックシフト遅延ダイバーシチを行う構成では、従来の1つの基地局装置でアンテナ間の距離を広げる場合に比べて、各基地局装置が物理的に離れており、より安定した通信を期待することができるようになる。
【実施例3】
【0051】
図5は、本発明の実施例3における無線通信システムの構成例を示す。
図5において、図1に示す実施例1との差分は、基地局装置3−1〜3−3との間では1対1のSISO(Single Input Single Output)通信を行う第2端末局12に代えて、基地局装置3−1〜3−3との間でMIMO伝送を行う複数のアンテナを備えた第2端末局13を用いる構成にある。
【0052】
通常であれば、MIMO伝送を行う場合の基地局装置は複数アンテナを備える必要があるが、ユーザ宅の基地局装置の場合には必ずしも高機能な基地局装置を想定できるとは限らないので、その場合の対応策として、基地局装置3−1〜3−3が各MIMO伝送の1本分のアンテナを分担し合い、全体としてMIMO伝送を実現しても構わない。この場合、第2BB処理部7−1〜7−3では、伝送するMIMOの各ストリーム毎の信号処理を実施することになる。
【0053】
なお、以上の説明において、MIMO伝送とは一般には(1)空間多重伝送として複数ストリームの信号を空間上で多重化して伝送速度を向上させる、(2)STBC(Space Time Block Code )を用いた符号化によりチャネルの利得を向上させる、(3)フェーズドアレー的な制御により単一ストリーム伝送のアンテナ指向性制御を行う、などの利用方法を伴うが、ここでのMIMO伝送とは(1)(2)の制御を意図しており、チャネルのフィードバックなど分散アンテナシステムと同様の高度な制御が必要で且つ1台の基地局装置のみでも通信自体が成り立つ(3)の利用方法は含まない。なお、この(1),(2)においては、MIMO伝送に求められる全体の機能を分割し、その個別の機能を各基地局装置に配分すると言う点で従来技術とは異なっている。
【0054】
このような構成により、各基地局により送信された電力の総和が、実際に無線媒体に送信される電力となるため、カバレッジを広げることが可能となる。また、MIMOによる多重化を行う場合は、アンテナ間の距離が大きいほど相関が低くなる傾向にあるため、多重化された信号を分離できる確率が高くなる。したがって、互いに異なる基地局から送信される信号によりMIMOが行われることから、従来の構成よりも高い通信品質を得ることができる。なお、1つの基地局により単一ストリームの信号が送信される従来技術と比較した場合に、同じ伝送速度(たとえば、24Mbps )を実現することを基準とすると、4つの基地局によりMIMOを行う場合には、1つの基地局は6Mbps の伝送速度で送信すればよいため、より低い変調方式等を利用できることとなり、結果としてカバレッジが拡大する。
【実施例4】
【0055】
図6は、本発明の実施例4における無線通信システムの構成例を示す。本実施例は、上述したように、各基地局装置3−1〜3−3および制御局1の同期を図り相互の周波数誤差を抑圧するための方法を示す。ここでは、実施例1の構成に適用した例を示すが、他の実施例においても同様である。
【0056】
図6において、図1に示す実施例1との差分は、各基地局装置3−1〜3−3内にGPS14−1〜14−3を実装するとともに、制御局1も同様にGPS14−4を接続して共通のクロックやタイミング情報を受け取る構成にある。ここでは、GPS14−1〜14−3から制御部9−1〜9−3には共通のクロックが供給され、このクロックを基に第2BB処理部7−1〜7−3の各種ベースバンド処理(アナログ/デジタル変換およびデジタル/アナログ変換処理を含む)、および第2無線部8−1〜8−3における周波数変換等の信号処理に用いるローカル信号などの同期を図ることができる。
【0057】
同様に、GPS14−1〜14−3から絶対時刻に関する情報を受けることにより、送受信タイミングを同期させることもできる。この際、制御局1においてもGPS14−4を備えることにより、各基地局装置3−1〜3−3と制御局1との間のタイミング同期が図られ、送信データの送信タイミングに関する情報を制御局1より通知することでタイミングを揃えることができる。ただし、ここでの制御は必ずしも明示的なタイミング指示がなくても、通信に用いるフレーム周期やシンボル周期などを、絶対時刻とどの様に同期させるかなどのルール決め(例えば、秒単位において小数点以下がゼロとなる時刻が各周期の境界に一致)で対応させることも可能である。
【0058】
なお、同様の制御はGPSを用いる以外にも、ネットワークに接続された光ファイバ等の有線回線を介して同期を図っても構わない。あるいは、別の無線システムの電波を受信し、そのシステムに同期させても構わない。
【0059】
分散アンテナシステムにおける各基地局装置は厳密なタイミングや周波数同期が必要であるが、本発明においては求められる精度は大幅に緩和されている。例えばOFDMないしはOFDMAを用いる場合には、タイミングに関してはタイミング誤差がガードインターバル長よりも小さければ、マルチパスによる伝搬遅延差に吸収されて実効上は問題とならない。また、各サブキャリアの周波数間隔に比較して周波数誤差が小さければ、FFT処理によるサブキャリア毎の分離処理にも殆ど影響はない。したがって、GPSやその他の手段によりクロックおよびタイミングの同期を図ることで、本発明の無線通信システムを安定に機能させることができる。
【実施例5】
【0060】
図7は、本発明の実施例5における無線通信システムの構成例を示す。
図7において、図1に示す実施例1との差分は、第2ベースバンド処理部7−1〜7−3をA/D(アナログ/デジタル)−D/A(デジタル/アナログ)変換処理部15−1〜15−3に置き換えられた構成にある。実施例1では、第2の無線システムの端末局12との通信において、第2BB処理部7−1〜7−3は、各種のベースバンド処理の全てないしはその一部を含んでいた。一方、処理を単純化する場合には、制御局1でそれらの処理を行い、D/A変換で用いるサンプリングデータをカプセル化して各基地局装置3−1〜3−3に転送し、IF部6−1〜6−3を介してA/D−D/A処理部15−1〜15−3に入力し、ここでD/A変換を施して第2無線部8−1〜8−3およびアンテナ10−1b〜10−3bを介して信号送信を行っても構わない。
【実施例6】
【0061】
以上の実施例では、第1の無線システムと第2の無線システムは基本的に異なる標準規格であったり、例えば 2.4GHz帯と5GHz帯のように異なる周波数帯であることを想定し、第1の無線システムに関する第1無線部4と、第2の無線システムに関する第2無線部8とを物理的に分けた構成としていた。この利点としては、仮に第1無線部4が信号を送信中であっても、第2無線部8が信号を同時刻に受信することを許容する。これは、第1無線部4および第2無線部8内に配置されるフィルタが帯域外の信号を抑圧するために、その後の信号処理において相互干渉とならずに運用することができるからである。
【0062】
しかし一方で、第1の無線システムと第2の無線システムが相互に独立な動作をする必要がなければ、同じ周波数帯を用い、アンテナ、無線部、さらにはベースバンド処理部までを相互に共用することも可能である。この場合には、第1の無線システムと第2の無線システムは、共通の標準規格に従うことも可能であるし、異なるものであっても構わない。
【0063】
図8は、本発明の実施例6における無線通信システムの構成例を示す。
図8において、図1に示す実施例1との差分は、図1の第1無線部4−1〜4−3と第2無線部8−1〜8−3を共用させた無線部19−1〜19−3、図1のアンテナ10−1a 〜10−3a とアンテナ10−1b〜10−3bを共用させたアンテナ20−1〜20−3を備え、さらにに第1BB処理部17−1〜17−3の機能の一部として、第2BB処理部18−1〜18−3を内在している構成である。
【0064】
図9は、本発明の実施例6における無線通信システムの動作例を示す。
ここでは、第1の無線システムおよび第2の無線システム共にOFDMないしはOFDMAを用いた無線システムを想定し、横軸に周波数を示し、各無線システムにおけるサブキャリアの利用状況を図示した。全体の左半分が第1の無線システムの使用帯域、右半分が第2の無線システムの使用帯域を示す。それぞれの使用帯域は隣接チャネルの関係にあり、相互のチャネル間干渉を回避するためにガードバンドが配置されている。
【0065】
第1の無線システムでは、1つの基地局装置でガードバンドを除く全サブキャリアの信号送信を行う。一方、第2の無線システムでは、例えば図に示したように1つの基地局装置は第2の無線システムに割り当ての全サブキャリアの一部のみを送信し、他の基地局装置が残りのサブキャリアを送信する。この図の例で言えば、OFDMないしはOFDMAにおけるベースバンド処理において、FFT処理およびIFFT処理を行う際には、それぞれを一括で行うことが可能である。例えば、第1の無線システムと第2の無線システム全体では、FFT/IFFTを行う際のポイント数を2倍にすれば、それぞれのチャネルの信号を周波数軸上でサブキャリアの直交関係を保ちながら信号分離等の処理を実施可能である。具体的には、第1の無線システムおよび第2の無線システムがIEEE802.11a/b/g/n 等の無線LAN規格に基づくものであれば、それぞれ64ポイントFFT(全体として64サブキャリアを想定するが、実際にはそのうちの52サブキャリアのみを利用)として動作する。サンプリング間隔を半分にし、ポイント数を2倍に増やした 128ポイントFFTを実施すれば、FFT/IFFTの信号処理を両チャネル一括で実施することが可能になり、しかもチャネル間の直交性を維持することが可能である。
【0066】
このような処理を想定すると、図8に示すように、第1の無線システムに関する信号処理を第1BB処理部17−1〜17−3として第2BB処理部18−1〜18−3が実現し、無線部19−1〜19−3は隣接チャネルまとめて同時に送信または受信を行うことが可能である。なお、この際には一方が送信中には他方が受信を行うことができなくなるため、利用には多少の制約を伴うことになるが、回路規模的には大幅に縮小できるメリットが得られる。
【0067】
なお、図9では上述の実施例1で示したように、各基地局装置が全体のサブキャリアを分担して通信する場合の例を示したが、第2の実施例、第3の実施例の様に、各基地局装置が全てのサブキャリアの信号を送信する場合にも同様の議論が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 制御局
2 有線回線(または無線回線)
3−1〜3−3 基地局装置
4−1〜4−3 第1無線部
5−1〜5−3 第1BB処理部
6−1〜6−3 IF部
7−1 第2BB処理部(#1)
7−2 第2BB処理部(#2)
7−3 第2BB処理部(#3)
8−1〜8−3 第2無線部
9−1〜9−3 制御部
10−1a〜10−3a アンテナ
10−1b〜10−3b アンテナ
11−1〜11−3 第1の無線システムの端末局(第1端末局)
12 第2の無線システムの端末局(第2端末局)
13 複数のアンテナを備えた第2端末局
14−1〜14−4 GPS
15−1〜15−3 A/D−D/A変換処理部
16−1〜16−3 制御部
17−1〜17−3 第1BB処理部
18−1〜18−3 第2BB処理部
19−1〜19−3 無線部
20−1〜20−3 アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続された制御局と、該制御局と有線または無線の通信回線を介して接続される複数の基地局とを備え、複数の基地局がそれぞれ第1の無線システムを介して第1の端末局と接続し、各基地局配下の第1の端末局が制御局を介してネットワーク側との通信を可能とする無線通信システムにおいて、
前記複数の基地局は、互いにクロック同期またはタイミング同期をとる同期手段と、前記第1の無線システムとは異なる第2の無線システムを介して第2の端末局と接続する第2無線システム接続手段とを備え、
前記制御局は、前記複数の基地局のうち設置場所が近接する複数の基地局をグループ化し、このグループ化した複数の基地局の各第2無線システム接続手段を組み合わせ、前記第2の端末局との通信を行う基地局としての機能を実現する第2無線システム基地局制御手段を備え、
前記第2の無線システムを介して、前記第2の端末局と前記ネットワーク側との間の通信を可能とする構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第2の無線システムは、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式または直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access )方式で通信する構成であり、
前記制御局の第2無線システム基地局制御手段は、
前記第2の無線システムが通信に用いる全サブキャリアを前記グループ化した各基地局に分割して割り当て、各基地局に割り当てたサブキャリアを指示するとともに、当該サブキャリアで伝送するダウンリンク信号を各基地局にそれぞれ送信する送信手段と、
前記グループ化した各基地局が受信した前記第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、前記第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、
前記複数の基地局の第2無線システム接続手段は、
前記制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号を受信し、各基地局ごとにそれぞれ割り当てられたサブキャリアを用いて前記第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、
前記第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、前記制御局に転送するアップリンク受信手段とを備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第2の無線システムは、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式または直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access )方式で通信する構成であり、
前記制御局の第2無線システム基地局制御手段は、
前記グループ化した各基地局に、前記第2の無線システムを介して伝送するダウンリンク信号を送信する送信手段と、
前記グループ化した各基地局が受信した前記第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、前記第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、
前記複数の基地局の第2無線システム接続手段は、
前記制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号を受信し、当該ダウンリンク信号のOFDMシンボルを単位に、ガードインターバルを除く信号領域に前記グループ化した各基地局で互いに異なるサイクリック遅延量のサイクリック遅延を与えた信号にガードインターバルを付与してダウンリンク信号を生成し、前記第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、
前記第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、前記制御局に転送するアップリンク受信手段とを備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第2の無線システムは、複数の信号系列を空間多重するMIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送が可能な構成であり、
前記制御局の第2無線システム基地局制御手段は、
前記第2の端末局に送信するダウンリンク信号を複数の信号系列に分割し、複数の信号系列を各基地局に割り当て、割り当てられた各信号系列を前記グループ化した各基地局にそれぞれ送信する送信手段と、
前記グループ化した各基地局が受信した前記第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、前記第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、
前記複数の基地局の第2無線システム接続手段は、
前記制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号の各信号系列を受信し、前記第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、
前記第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、前記制御局に転送するアップリンク受信手段とを備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記制御局は、前記複数の基地局の各同期手段に対して所定の信号の送信タイミングを指示する手段を備え、
前記複数の基地局は、前記制御局より指示された送信タイミングにて所定の信号の送信を開始する手段を備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記複数の基地局は、
前記同期手段により互いに同期したクロックをもとにローカル信号を発生させ、当該ローカル信号をもとに送信信号または受信信号の周波数変換を行い、さらに前記同期したクロックをもとにアナログ/デジタル変換またはデジタル/アナログ変換を実施し、前記第2の端末局および前記制御局に転送する送信信号を生成する手段を備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項2または請求項3に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の無線システムおよび前記第2の無線システムが利用する周波数チャネルは、同一周波数チャネルまたは隣接周波数チャネルであり、OFDMまたはOFDMAのFFTおよびIFFT処理を実施する手段を前記第1の無線システムおよび前記第2の無線システムで共通化する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の無線システムは、有線または無線の通信回線を介してインターネットに接続可能な一般家庭の無線ホームネットワークを実現する無線システムであり、
前記第2の無線システムは、公衆無線アクセスを実現する無線システムである
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項1】
ネットワークに接続された制御局と、該制御局と有線または無線の通信回線を介して接続される複数の基地局とを備え、複数の基地局がそれぞれ第1の無線システムを介して第1の端末局と接続し、各基地局配下の第1の端末局が制御局を介してネットワーク側との通信を可能とする無線通信システムにおいて、
前記複数の基地局は、互いにクロック同期またはタイミング同期をとる同期手段と、前記第1の無線システムとは異なる第2の無線システムを介して第2の端末局と接続する第2無線システム接続手段とを備え、
前記制御局は、前記複数の基地局のうち設置場所が近接する複数の基地局をグループ化し、このグループ化した複数の基地局の各第2無線システム接続手段を組み合わせ、前記第2の端末局との通信を行う基地局としての機能を実現する第2無線システム基地局制御手段を備え、
前記第2の無線システムを介して、前記第2の端末局と前記ネットワーク側との間の通信を可能とする構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第2の無線システムは、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式または直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access )方式で通信する構成であり、
前記制御局の第2無線システム基地局制御手段は、
前記第2の無線システムが通信に用いる全サブキャリアを前記グループ化した各基地局に分割して割り当て、各基地局に割り当てたサブキャリアを指示するとともに、当該サブキャリアで伝送するダウンリンク信号を各基地局にそれぞれ送信する送信手段と、
前記グループ化した各基地局が受信した前記第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、前記第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、
前記複数の基地局の第2無線システム接続手段は、
前記制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号を受信し、各基地局ごとにそれぞれ割り当てられたサブキャリアを用いて前記第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、
前記第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、前記制御局に転送するアップリンク受信手段とを備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第2の無線システムは、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式または直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access )方式で通信する構成であり、
前記制御局の第2無線システム基地局制御手段は、
前記グループ化した各基地局に、前記第2の無線システムを介して伝送するダウンリンク信号を送信する送信手段と、
前記グループ化した各基地局が受信した前記第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、前記第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、
前記複数の基地局の第2無線システム接続手段は、
前記制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号を受信し、当該ダウンリンク信号のOFDMシンボルを単位に、ガードインターバルを除く信号領域に前記グループ化した各基地局で互いに異なるサイクリック遅延量のサイクリック遅延を与えた信号にガードインターバルを付与してダウンリンク信号を生成し、前記第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、
前記第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、前記制御局に転送するアップリンク受信手段とを備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第2の無線システムは、複数の信号系列を空間多重するMIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送が可能な構成であり、
前記制御局の第2無線システム基地局制御手段は、
前記第2の端末局に送信するダウンリンク信号を複数の信号系列に分割し、複数の信号系列を各基地局に割り当て、割り当てられた各信号系列を前記グループ化した各基地局にそれぞれ送信する送信手段と、
前記グループ化した各基地局が受信した前記第2の無線システムのアップリンク信号を受取り、前記第2の端末局が送信したアップリンク信号を再生する受信手段とを備え、
前記複数の基地局の第2無線システム接続手段は、
前記制御局の送信手段から送信されたダウンリンク信号の各信号系列を受信し、前記第2の端末局へ転送するダウンリンク送信手段と、
前記第2の端末局から送信されたアップリンク信号を受信し、前記制御局に転送するアップリンク受信手段とを備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記制御局は、前記複数の基地局の各同期手段に対して所定の信号の送信タイミングを指示する手段を備え、
前記複数の基地局は、前記制御局より指示された送信タイミングにて所定の信号の送信を開始する手段を備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記複数の基地局は、
前記同期手段により互いに同期したクロックをもとにローカル信号を発生させ、当該ローカル信号をもとに送信信号または受信信号の周波数変換を行い、さらに前記同期したクロックをもとにアナログ/デジタル変換またはデジタル/アナログ変換を実施し、前記第2の端末局および前記制御局に転送する送信信号を生成する手段を備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項2または請求項3に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の無線システムおよび前記第2の無線システムが利用する周波数チャネルは、同一周波数チャネルまたは隣接周波数チャネルであり、OFDMまたはOFDMAのFFTおよびIFFT処理を実施する手段を前記第1の無線システムおよび前記第2の無線システムで共通化する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の無線システムは、有線または無線の通信回線を介してインターネットに接続可能な一般家庭の無線ホームネットワークを実現する無線システムであり、
前記第2の無線システムは、公衆無線アクセスを実現する無線システムである
ことを特徴とする無線通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−169699(P2012−169699A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26418(P2011−26418)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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