説明

無線通信システム

【課題】圏外状態においてバッテリの消費電力を抑制することができ、圏内復帰までの時間が遅くなることを抑制できる無線通信システムを提供する。
【解決手段】移動局と、移動局に対して下り送信信号を常時周期的に無線送信する常送基地局と、移動局に対して送信すべき情報が存在する場合に下り送信信号を無線送信する非常送基地局とを備え、前記移動局は、前記常送基地局の圏内状態から圏外状態に移行すると、第1の間隔で間欠的に基地局を探索するチャネルスキャンを行い、非常送基地局からの下り送信信号を受信すると該信号の受信信号レベルの測定を行い、該受信信号レベルが所定値以上である場合に、非常送基地局からの信号の受信間隔を前記第1の間隔よりも短くしてチャネルスキャンを行うよう、無線通信システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池により電力を供給される無線機など、消費電力を低減することが求められる無線機や、該無線機を用いる無線通信システムに関するものであり、特に、待ち受け状態における間欠受信動作の消費電力を低減する無線機や無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、従来技術の無線通信システムにおける待ち受け時の間欠受信制御方法について説明する。従来、例えば携帯電話や業務用無線システムに代表される移動体通信の無線通信システムにおいて、移動局装置が基地局のカバーするサービスエリア内(圏内)に位置する場合、周期的に基地局からの制御情報を受信する。基地局からの制御情報の送信周期は、そのシステムによりあらかじめ規定され、おもにスーパーフレームと呼ばれる基地局送信のフレームタイミングに同期した一定周期で送信されている。移動局装置は、その制御情報の受信により当該移動局装置宛の着信であるか否かを判定し、当該移動局装置宛の着信でない場合は、制御情報受信区間以外のタイミングにおいて、移動局装置を構成するハードウェアの電源切断制御、およびCPU(Central Processing Unit)をはじめとする各プロセッサのパワーダウン制御をおこない、バッテリの消費電力の抑制を行う。
【0003】
一方、移動局装置が移動することで、基地局のサービスエリア外(圏外)となった場合には、基地局からの制御情報の受信ができないため、移動局装置の周波数テーブルに記憶している、複数の基地局の送信する周波数それぞれにおける受信電界強度、もしくは信号対干渉波レベル測定等を周期的に行い、再度、いずれかの基地局のサービスエリアに戻った際に基地局とのアクセスを再開できるよう制御を行う。
【0004】
従来技術においては、バッテリにて駆動する移動局装置の使用時間を延ばすため、圏外となった場合に行われる基地局制御情報の探索(以下、チャネルスキャンと称する)を行う時間間隔を、圏内時に行われる間欠受信動作よりも長く設定することにより、圏外時におけるバッテリの消費電力を抑制する制御が行われる。
【0005】
しかしながら、上述のように圏外状態において、圏内状態よりも長い間欠受信周期を設定した場合、圏内時に比べバッテリの消費電力を抑制することは可能であるが、単純に周期を長くした場合は、その時間間隔と移動による圏内復帰までの時間はトレードオフの関係となり、移動局装置が使用できる環境(圏内状態になることができる環境)においても圏外状態のままとなっている可能性が高くなる。
【0006】
また、移動体通信においては無線伝搬路状況は不安定であり、基地局の単純な水平面のエリアのみではなく、地形建物による影響も大きいため、圏内あるいは圏外状態への移行は不安定であり、頻繁に圏内あるいは圏外状態への移行が発生するようなシステムでは、圏外時の間欠受信間隔を単純に長くするだけでは、十分な長さに設定するこができず、バッテリの消費電力を抑制する効果が十分に得られないことが想定される。
【0007】
また、無線通信システムにおいて、基地局と移動局装置間の信号送受信方法として、基地局からの下り送信信号を常時周期的に送信する上記の常送システムの他、移動局装置に対して送信すべきメッセージ、具体的には移動局装置に対する制御情報、音声または文字メッセージ等のユーザデータが存在する場合に、基地局が送信信号を出力する非常送基地局を含む非常送システムがある。
下記の特許文献1には、基地局からの下り波が必要時に送信される非常送基地局を有する業務用デジタル無線システムにおける移動局無線機の制御方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−199156公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来の無線通信システムにおいては、圏外状態において、単純に圏内状態よりも長い間欠受信周期を設定するだけでは、バッテリの消費電力の抑制が十分でない、あるいは、圏内復帰までの時間が遅くなるという課題があった。
本発明は、このような従来の課題を解決するために為されたもので、非常送システムにおいても、圏外状態においてバッテリの消費電力を抑制することができ、また、圏内復帰までの時間が遅くなることを抑制できる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための、本願発明の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
移動局と、
移動局に対して下り送信信号を常時周期的に無線送信する常送基地局と、
移動局に対して送信すべき情報が存在する場合に下り送信信号を無線送信する非常送基地局とを備え、
前記移動局は、前記常送基地局の圏内状態から圏外状態に移行すると、第1の間隔で間欠的に基地局を探索するチャネルスキャンを行い、非常送基地局からの下り送信信号を受信すると該信号の受信信号レベルの測定を行い、該受信信号レベルが所定値以上である場合に、非常送基地局からの信号の受信間隔を前記第1の間隔よりも短くしてチャネルスキャンを行うことを特徴とする無線通信システム。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、圏外状態においてバッテリの消費電力を抑制することができ、また、圏内復帰までの時間が遅くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る移動局装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフレーム構成と移動局装置の状態を示す図である。
【図3】第1実施例の処理を説明するフローチャートである。
【図4】第2実施例の処理を説明するフローチャートである。
【図5】第4実施例の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態においては、バッテリにて駆動される移動局装置が、基地局の圏外に位置する場合に、圏内時の間欠受信の時間間隔よりも長いサイクルにて待ち受け受信を繰り返すものであり、さらに、圏外に位置する継続時間を測定し、移動局の圏外に位置する時間が所定の時間以上になると、圏外時の間欠受信時間を長くするよう適応的に制御する。
【0014】
また、その圏外時の間欠受信時間の制御において、定期的に圏外時における基地局からの受信信号レベルの測定を行い、その測定した受信信号レベルの変化量に応じて圏外時の間欠受信間隔を制御する、具体的には、受信信号レベルの変化量が所定のレベル以上になると、圏外時の間欠受信時間を短くするよう適応的に制御する。
【0015】
さらには、当該移動局装置が外部接続機器として、または内蔵する機能部としてGPS(Global Positioning System)等の位置情報を取得する手段を備え、その位置情報の変化を保持し、移動局装置の移動状態に応じて圏外時の間欠受信間隔を制御する、具体的には、移動局装置の移動量が所定の移動量以上になると、圏外時の間欠受信時間を短くするよう適応的に制御する。
【0016】
また、移動局装置の属する無線通信システムが、基地局装置が常時制御情報を周期的に送信する常送基地局と、送信すべき情報がある場合に基地局装置が制御情報を送信する非常送基地局の両方を備える非常送システムである場合は、基地局のサービスするエリアの圏内状態において別の基地局のエリアに移動した場合に、移動先の基地局の送信状態(常送/非常送)に応じて待ち受け受信間隔の制御を自動的に変更する、具体的には、例えば、移動先の基地局が常送基地局である場合は、上述した移動局の圏外滞在時間や、受信信号レベルの変化量や、移動局装置の移動量に応じて圏外時の間欠受信間隔を制御し、移動先の基地局が非常送基地局である場合は、受信信号レベルが所定値以上である場合に基地局からの送信信号を常時受信できるよう制御する。
【0017】
上記実施形態によれば、圏外時における移動局装置の圏外滞在時間や位置や受信信号レベル等の状態を監視しながら間欠受信間隔の制御を行うため、基地局の圏内位置に移行する可能性が高まったことを認識できる。したがって、圏内位置に移行する前に、圏外時の間欠受信の時間間隔を短く再設定することが可能であり、間欠受信による圏内移行時間の遅れを抑制し、バッテリの消費電力を抑制することが可能となる。
【0018】
図1に本発明の実施例の移動局装置の構成を示す。図1において、101は、移動局装置が受信動作中は空中からの無線周波数帯の信号を受信し、送信動作中は無線部102からの無線周波数帯の信号を送信するアンテナを備えるアンテナ部である。102は、アンテナ部101により受信した高周波数帯の信号をベースバンド信号に周波数変換し、送信時にはその逆の周波数変換を行う無線部である。103は、送信するデジタル信号のベースバンド出力をアナログ信号に変換し、無線部102に出力するDAコンバータ(デジタルアナログコンバータ)である。104は、送信する信号のデータ変調処理を行い、DAコンバータ103に対して変調した信号を出力する変調部である。105は、送信する信号の誤り訂正のための符号化、及び当該無線通信システムにおいて規定される無線フレームに対応するフレーム化処理を行なうチャネルエンコーダ部である。
【0019】
106は、基地局からの制御信号や、音声信号や非音声デジタル信号等のユーザデータを受信した無線部102からのアナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータ(アナログデジタルコンバータ)である。108は、基地局で変調処理された信号を復調処理するもので、ADコンバータ106の出力であるベースバンド信号のデータ復調処理を行なう復調部である。109は、受信データに基づき、ある特定の既知パターンの一致検出を行うことで、基地局からの無線フレーム信号の同期タイミングを抽出し、基地局との無線フレームタイミング同期を管理する同期部である。110は、復調部108からの復調後の信号に対する誤り訂正処理や、データの取り出しを行うチャネルデコーダ部である。112は、受信信号レベルの測定を行い、接続している基地局の回線品質、及びその周辺基地局の受信レベルの報告を111制御部に対して行う受信レベル測定部である。
【0020】
113は、時計、メール等を表示するためのユーザインターフェイスとしての表示部である。114は、文字、電話番号等を入力するためのユーザインターフェイスとしての入力部である。107は、圏内、または圏外時の間欠受信動作を行う場合の時間間隔を制御するセービングタイマであり、各機能部のパワーダウン後に再度受信動作を行う場合、本タイマのタイムアウトにより制御部111に対しウェイクアップ割り込み信号を入力する。115は、位置情報を用いた移動局装置の移動状態を取得するためのGPS受信部である。
【0021】
111は、CPUを備え、基地局との回線接続及び切断等の無線プロトコル処理を行い、また、表示部113や操作部114等のユーザインターフェイスの処理を含め、移動局装置の各構成部の制御を行う制御部である。また、制御部111においては、受信レベル測定部112の測定結果や、GPS受信部115の測定結果等に基づき、移動局装置の間欠受信間隔の制御や、無線部102等の各構成部の間欠受信時におけるパワーダウン制御も行う。
【0022】
次に、本実施形態の間欠受信動作について説明する。
まず、圏内時の待ち受け状態の間欠受信動作について説明する。移動局装置が基地局エリア内に位置する場合、音声をはじめとするユーザデータの通信、および無線通信システム内での制御情報の通信以外では、移動局装置は待ち受け状態にある。待ち受け状態では、基地局は、あらかじめ決められたタイミングで周期的に制御情報を送信し、移動局装置は、その制御情報の周期的な受信を行う。
本実施形態の無線通信システムにおいては、移動局装置と基地局間の通信単位を無線フレームとし、複数の無線フレームからスーパーフレームを構成し、そのスーパーフレーム内における制御情報の位置をあらかじめ規定しておくことで、制御情報の周期的な送信を実現する。図2に、フレーム構成例と移動局装置の状態を示す。図2の例では、1フレームの長さを40ms、スーパーフレームを、フレーム0〜フレーム17の18フレーム(720ms)とし、移動局装置は、例えばフレーム0、フレーム1で制御情報を受信後、該制御情報により自局宛の送信でないと判断した場合、つまり、継続して待ち受けすべき状態と判断した場合には、次に受信するスーパーフレームのフレーム0の受信タイミングと、パワーダウン解除後における移動局装置起動に要する時間を考慮したタイミングをセービングタイマ107に設定し、パワーダウン状態に移行する。上記の移動局装置起動に要する時間は、移動局装置に依存する。
【0023】
パワーダウン状態においては、上述の無線部102、DAコンバータ103、変調部104、チャネルエンコーダ105、ADコンバータ106、復調部108、同期部109、チャネルエデコーダ110、受信レベル測定部112は、電源が供給されないパワーダウン状態になるが、制御部111、セービングタイマ107、GPS受信部115、表示部113、操作部114は、電源供給を継続される。
【0024】
パワーダウン解除のタイミングでは、セービングタイマ107のタイムアウトにより割り込み信号を制御部111に入力し、移動局装置のパワーダウンを解除して、再度受信状態に移行する。本動作を繰り返すことにより圏内時の待ち受け状態が継続される。
【0025】
次に、圏外時の動作について説明する。
圏外時は、基地局の制御情報を受信できず、無線フレームおよびスーパーフレーム同期も確立していない状態であるため、チャネルスキャンを行うタイミングは任意となり、移動局装置の持つタイミングを基準に動作する。
【0026】
チャネルスキャンは、次のように行われる。すなわち、移動局装置は、あらかじめ複数の基地局との間で通信を行うための複数の周波数情報をテーブルとして保持しており、その複数の候補周波数の中から順次周波数を選択し、該選択した周波数を、移動局装置無線部102の受信周波数として設定し、該周波数の受信信号のレベル測定を行う。受信レベルは、通常、電界強度で測定し、受信レベルがあらかじめ設定されたしきい値以上であった場合には、復調処理して同期確立し、制御情報の受信を行う。
【0027】
(第1実施例:受信レベル測定変動量による制御)
チャネルスキャンの結果、受信レベルがしきい値以上のチャネルがなく、継続して圏外状態であると判断した場合には、再度パワーダウン状態に移行し、圏内時と同様にセービングタイマ107にて次にチャネルスキャンを行うタイミング(パワーダウンしている時間:T)を設定する。このとき、圏内から圏外に移行したタイミングを、移動局装置の記憶部へ記憶しておく。具体的には、制御部111での判定処理の簡略化のため、パワーダウン/チャネルスキャンの一連の周期処理を何回継続しているかを監視し、その継続回数(n)が所定の回数(N)以上であれば、パワーダウン時間を長く変更する。第一段階のパワーダウン時間をTout1、第二段階のパワーダウン時間をTout2とすると、
n(Tout1)> N then T=Tout2 (Tout2>Tout1
上記のように段階的にパワーダウン時間を延ばし、安定して圏外状態に位置している場合には、単位時間あたりのチャネルスキャンの回数を減らすことにより、圏外時におけるバッテリの消費電力の削減を実現する。
【0028】
しかし、上記の圏外時における段階的なチャネルスキャン周期の延長を単純に行った場合には、移動局装置が圏外の環境に長時間滞在し、その後移動等により圏内に復帰しようとした場合において、上記のチャネルスキャン間隔延長を行わない場合と比較して、チャネルスキャン間隔延長を行った分、圏内復帰までの時間が遅くなるという問題が生じる。
本実施例では、この問題を回避するため、圏外時のチャネルスキャン時における受信信号レベル測定情報をもとに、圏内に復帰する可能性が高いと判断した場合には、段階的に時間間隔を延ばしたセービングタイマ値を初期段階の短いチャネルスキャン周期に戻すようにする。
【0029】
前述の通り、チャネルスキャン時においては、候補となるチャネル(周波数)の受信信号レベルの測定を行い、受信信号レベルがしきい値以上であれば、同期確立し、制御信号の受信を段階的に行う。ここで、同期確立は、基地局と移動局装置間で同期に使用するユニークなビット列を規定しておき、その検出を同期判定に用いるのが一般的である。また制御信号の受信については、基地局側で送信する制御信号には一定の規則に則り符号化、及びCRC(Cyclic Redundancy Check)等の誤り検出符号が付加されており、その検出結果により正しく基地局情報が受信できているかどうかを判定することができる。
【0030】
チャネルスキャン周期を初期段階に戻すかどうか、すなわち、圏内に復帰する可能性が高いかどうかの判断には、受信信号レベルの変化量の測定結果を用いる。受信信号レベルの測定は、設定した周波数毎の受信電界強度で行うが、この場合、周波数毎の相対的な変化量をもとに判断を行う。例えば、代表的な例としては、ある周波数において周期的なチャネルスキャンの結果が、いずれも安定して低いレベルであり、それに対して、直近の測定の結果が前回までの測定値に対して十分大きく、高いレベルに変動している場合である。この判定においても受信信号レベルの変動量に対して所定のしきい値(ΔR)をあらかじめ設定しておき、変動量がしきい値(ΔR)を超えた場合に、チャネルスキャン周期を初期段階に戻す。
【0031】
以上の圏外時の動作例について、図3を用いて説明する。図3は、第1実施例の処理を説明するフローチャートである。図3の例では、受信信号レベルとして、受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を用いる。
図3において、圏外状態へ移行すると、まず、セービングタイマ107のタイマ値を設定し(ステップS1)、移動局装置をパワーダウンする(ステップS2)。セービングタイマ107のタイムアウトにより割り込み信号が制御部111に入力され、制御部111はパワーダウンを解除してチャネルスキャンを行う(ステップS4)。
チャネルスキャンの結果、受信電界強度がしきい値以上のチャネルがあれば(ステップS5でYes)、そのチャネルで同期確立し圏内移行を行う(ステップS6)。
チャネルスキャンの結果、受信電界強度がしきい値以上のチャネルがなければ(ステップS5でNo)、受信電界強度の変動量が所定のしきい値(ΔR)を超えているチャネルがある場合に(ステップS7でYes)、パワーダウン/チャネルスキャンの一連の周期処理を実施した回数(n)をゼロクリアするとともに、セービングタイマ107のタイマ値を初期化し(ステップS8)、チャネルスキャン周期を初期段階に戻す。
【0032】
受信電界強度の変動量が所定のしきい値(ΔR)を超えているチャネルがない場合は(ステップS7でNo)、パワーダウン/チャネルスキャンの一連の周期処理を実施した回数(n)が所定の回数(N)を超えていれば(ステップS10でYes)、回数(n)をゼロクリアし(ステップS11)、セービングタイマ107のタイマ値を変更し(ステップS12)、パワーダウン時間を長くする。なお、ステップS11において、所定の回数(N)を異なる回数、例えば、より大きい数や、又はより小さい数に更新してもよい。
【0033】
このように図3の例では、受信電界強度の変動量が所定のしきい値(ΔR)を超えているチャネルがない場合は、パワーダウン時間が段階的に次第に長くなるので、バッテリの消費電力の削減を促進することができる。また、受信電界強度の変動量が所定のしきい値(ΔR)を超えているチャネルがある場合は、パワーダウン時間が当初の短い値に戻されるので、圏内復帰までの時間が遅くなるという問題を抑制できる。
【0034】
(第2実施例:位置情報変化量による制御)
圏外時のパワーダウン周期の制御において、GPS受信部115を用いた場合について説明する。
GPS受信部115では、衛星からのGPS信号を受信することにより、1PPS(Pulse Per Second)信号、10MHz基準信号および位置情報である座標データを、制御部111へ提供することができる。無線通信システムによっては、上位ネットワーク側に座標データを通知することにより、移動局の位置、基地局との距離等の把握も可能であるが、本実施例においては上位ネットワークシステムとの連携等は必要とせず、簡易的な相対位置の変化の把握により制御を行う。つまり、前述した圏外時における受信信号レベルの変化量の算出と同様に、GPS受信部115により取得される位置情報における相対的な位置の変化を検出し、該位置の変化量、すなわち、パワーダウン中における移動局装置の移動量が大きければ、基地局の提供するサービスエリア内に移動する可能性が高いと判断し、パワーダウン周期を初期状態である短い周期に戻すことにより、段階的に延長したパワーダウン周期の影響を少なくする。
【0035】
本実施例の場合も、前述のレベル変動によるセービングタイマ値の設定値の変更と同様に、チャネルスキャン時の各周波数の受信信号を測定した結果、受信信号レベルの測定結果に変化がなく安定した圏外状態であった場合に、GPS受信部115による位置情報の取得結果が、前回のチャネルスキャン時に取得した位置情報との単純比較により所定のしきい値(ΔP)を超える移動量の変化が認められれば、その後において基地局との通信が可能な圏内状態に遷移する可能性が高いと判断し、短周期のチャネルスキャンに戻す処理、すなわちセービングタイマの設定値を初期化する。
また、前述の所定のしきい値(ΔP)を超える移動量の変化が認められない場合は、チャネルスキャンが所定回数を超えると、第1実施例のように段階的にパワーダウン時間を長く変更する処理により、バッテリの消費電力を低減することができる。
【0036】
第2実施例を、図4を用いて説明する。図4は、第2実施例の処理を説明するフローチャートである。図4において、図3と異なるのは、図3のステップS7を図4のステップS27に変更した点である。他の点は、図3と同じであるので説明を省略する。
図4のステップS27において、チャネルスキャン(ステップS24)の結果、受信信号レベルがしきい値以上のチャネルがなければ(ステップS25でNo)、位置の変化量が所定のしきい値(ΔP)を超えている場合に(ステップS27でYes)、パワーダウン/チャネルスキャンの一連の周期処理を実施した回数(n)をゼロクリアするとともに、セービングタイマ107のタイマ値を初期化し(ステップS28)、チャネルスキャン周期を初期段階に戻す。
【0037】
位置の変化量が所定のしきい値(ΔP)を超えていない場合は(ステップS27でNo)、パワーダウン/チャネルスキャンの一連の周期処理を実施した回数(n)が所定の回数(N)を超えていれば(ステップS30でYes)、回数(n)をゼロクリアし(ステップS31)、セービングタイマ107のタイマ値を変更し(ステップS32)、パワーダウン時間を長くする。
このように図4の例では、位置の変化量が所定のしきい値(ΔP)を超えていない場合は、パワーダウン時間が段階的に次第に長くなるので、バッテリの消費電力の削減を促進することができる。また、位置の変化量が所定のしきい値(ΔP)を超えている場合は、パワーダウン時間が当初の短い値に戻されるので、圏内復帰までの時間が遅くなるという問題を抑制できる。
【0038】
(第3実施例:常送、非常送自動切り替え時の動作)
前述の第1、2実施例で示した無線通信システムにおいては、移動局装置宛てのメッセージが存在しない場合においても、送信データが空の状態の下り送信信号が、基地局から常時、周期的に基準信号として送信されており、移動局装置は、基地局との間でユーザ情報等のメッセージ通信が発生しない状況においても、当該基地局のエリア内では基地局からの制御信号を周期的に捕捉することができ、チャネルスキャン動作により基地局との通信が可能なエリアかどうかの判断が可能である。
【0039】
一方、移動局装置に対する制御情報、音声または文字メッセージ等のユーザデータが存在する場合に、基地局が送信信号を出力する非常送基地局を含む非常送システムでは、基地局からの下り信号にて使用される周波数情報を用いたチャネルスキャンによる受信信号レベルの測定をしようとしても、その基地局がなにも送信していない状態も存在するため圏内か圏外かの判断ができない。つまり、非常送の基地局を含む非常送システムにおいては、前述のような圏内時および圏外時の基本的な基地局間の通信動作の切り替えに加え、通信区間以外において移動局装置の各構成部の電源制御等を行いパワーダウン等を実施するセービング動作も切り替える必要がある。
【0040】
第3実施例においては、移動局装置は、あらかじめチャネル情報(周波数テーブル)に、その周波数の基地局装置が常送又は非常送どちらの運用形態をとるかの情報を記憶しておき、常送の基地局エリアに位置する場合は、前述の圏内、圏外のセービング動作を行い、非常送の基地局のエリアに移動した場合は、自動的に常送時のセービング動作を切り替える機能を有する。
【0041】
具体的には、例えば前述の第1、2実施例の圏外時の動作において、セービングタイマ107を用いた周期的なチャネルスキャンを実行し、この動作を継続している状態において、チャネルスキャンの結果、非常送の運用形態をとる基地局の周波数を検出し、その周波数の基地局からの下り送信の信号レベルが所定値以上である場合には、セービングタイマ107による動作を中断し、第1、2実施例の圏内、圏外の待ち受けの動作モードとは別の非常送の基地局に対応した動作状態、つまり、基地局からの信号を常時受信できる状態に移行する。また、非常送基地局からの下り送信の信号レベルが所定値より小さい場合には、セービングタイマ107による動作を続行する。
【0042】
非常送の基地局からは、基地局から移動局装置に対して制御情報や音声情報等のユーザメッセージが発生した場合、即座に下り信号の送出が行われる。このとき、移動局装置がパワーダウンによる間欠受信動作をおこなっている場合、受信信号を正常に受信できないことが容易に想到される。つまり、非常送システムでは、周期的な基地局下り信号の捕捉による間欠受信動作は行えないため、移動局装置は無線部102を、基地局からの信号を常時受信できる状態に維持することが好ましい。
【0043】
本実施例においては、移動局装置が、基地局の運用状態が常送又は非常送であるかを認識し、基地局の運用状態が非常送である場合は、該非常送基地局からの下り送信の信号レベルが所定値以上の場合に、基地局からの信号を常時受信できる状態へ自動的に切り替えることにより、ユーザが、基地局との間の通信状態や移動によりモード切り替え操作等を行わなくても、バッテリを用いた移動局装置の消費電力の抑制を適切に実施することが可能となり、また、圏内復帰までの時間が遅くなるという問題を抑制できる。
【0044】
(第4実施例:非常送時の動作)
前述の第3実施例においては、移動局装置は、非常送の基地局のエリアに移動した場合は、基地局からの信号を常時受信できる状態に移行したが、このままでは、消費電力が増え、連続動作時間が短くなってしまう。
そこで、第4実施例においては、移動局装置同士が移動局装置間で直接通信をする場合は、制御部11が無線部12の送信時の出力パワーを下げるようにする。移動局装置間で直接通信するような、あまり距離が離れていない範囲で通信をする場合は、送信時の出力パワーを下げても問題ない。移動局装置の無線部102に、受信感度レベル以上の信号が入力されれば受信は可能である。
送信時の出力パワーを下げることは、特に、FDMA(Frequency Division Multiple Access:周波数分割多元接続)方式の1つであって、時分割という概念がないため送信時は常に送信し続ける状態となるSCPC(Single Channel Per Carrier)方式の無線通信システムにおいては、送信時間と受信時間が時間的に分けられているTDMA(Time Division Multiple Access:時分割多元接続)方式と比べて送信時間が長くなるため、消費電力の低減に有効である。
【0045】
また、第4実施例においては、非常送時においても、待ち受け時の受信を間欠受信にする。非常送基地局と通信を行う場合は、無線の通信開始時間がわからないため、常に移動局装置受信部の電源を入れておかないと、受信データが頭切れをおこし最初の音が受信できない。頭切れする時間が多少(数百msec)あっても構わないような場合、例えば、再度聞きなおせばよいという場合であれば、移動局装置を間欠受信にすることができる。例えば1フレームが40msの場合に80msec毎に受信部の電源をON/OFFすれば、待ち受け時における受信部の消費電力は半分になる。
【0046】
このとき、送信側において、送信開始から所定の時間、通話禁止時間を設けることが望ましい。通話禁止時間を設けることにより、受信側の方の頭切れ時間をカバーすることができ、頭切れを感じることなく受信が可能となる。送信側では、通話禁止時間の間、多少待ってから通話することになる。通話可能になったときに、「ピッ」等の音によりユーザに知らせる機能があれば更に便利である。
【0047】
図5は、第4実施例の処理動作を示すフローチャートである。普段はユーザは、低消費電力モードを選択せず(ステップS41でOFF)、通常モードで運用する(ステップS42)が、バッテリーの持ち時間を長くしたいときは、ユーザが、低消費電力モードを選択し(ステップS41でON)、低消費電力モードで運用する(ステップS43)。
低消費電力モードにおいては、送信モードになると(ステップS44でYes)、送信時の出力パワーを下げる(ステップS45)。また、待ち受けモードになると(ステップS46でYes)、間欠受信を行い(ステップS47)、さらに通話禁止時間を設ける(ステップS48)。
【0048】
以上述べたように、第4実施例では、送信パワーが下がる、頭切れを起こす、通話禁止時間を設ける等、使用できる機能に制限がかかってしまうが、少しでも消費電力を低減し動作時間を長くしたい場合には有効である。
【0049】
なお、第1〜4実施例は、適宜、組み合わせて用いることができる。例えば、第1実施例と第2実施例を組み合わせてもよい。具体的には、例えば、第1実施例の図3のステップS7で、受信電界強度の変動量が所定のしきい値(ΔR)を超えているチャネルがない場合に、第2実施例の図4のステップS27の、位置の変化量が所定のしきい値(ΔP)を超えているかどうかの判定を行い、超えている場合は図3のステップS8へ進み、超えていない場合は図3のステップS9へ進むようにすればよい。
【0050】
また、本発明は、TDMA方式やFDMA方式の無線通信システムに限定されるものではなく、無線基地局を有する移動体通信システムにおいて適用することができる。
また、本発明は、本発明に係る処理を実行するシステムとしてだけでなく、装置、方法として、或いは、このような方法やシステムを実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
また、本発明は、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行することにより制御する構成としてもよく、また、ハードウエア回路として構成してもよい。
【0051】
本明細書には、少なくとも次の発明が含まれる。
第1の発明は、
移動局と、
移動局に対して下り送信信号を常時周期的に無線送信する常送基地局と、
移動局に対して送信すべき情報が存在する場合に下り送信信号を無線送信する非常送基地局とを備え、
前記移動局は、前記常送基地局の圏内状態から圏外状態に移行すると、第1の間隔で間欠的に基地局を探索するチャネルスキャンを行い、非常送基地局からの下り送信信号を受信すると該信号の受信信号レベルの測定を行い、該受信信号レベルが所定値以上である場合に、非常送基地局からの信号の受信間隔を前記第1の間隔よりも短くしてチャネルスキャンを行うことを特徴とする無線通信システム。
このように構成すると、圏外状態においてバッテリの消費電力を抑制するとともに、圏内復帰までの時間が遅くなることを抑制することができる。
【0052】
第2の発明は、
前記第1の発明に記載の無線通信システムであって、
前記移動局は、前記受信信号レベルが所定値以上である場合に、非常送基地局からの信号を常時受信できるようにすることを特徴とする無線通信システム。
このように構成すると、圏内復帰までの時間が遅くなることをさらに抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
101・・アンテナ部、102・・無線部、103・・DAコンバータ、104・・変調部、105・・チャネルエンコーダ、106・・ADコンバータ、107・・セービングタイマ、108・・復調部、109・・同期部、110・・チャネルエデコーダ、111・・制御部、112・・受信レベル測定部、113・・表示部、114・・操作部、115・・GPS受信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局と、
移動局に対して下り送信信号を常時周期的に無線送信する常送基地局と、
移動局に対して送信すべき情報が存在する場合に下り送信信号を無線送信する非常送基地局とを備え、
前記移動局は、前記常送基地局の圏内状態から圏外状態に移行すると、第1の間隔で間欠的に基地局を探索するチャネルスキャンを行い、非常送基地局からの下り送信信号を受信すると該信号の受信信号レベルの測定を行い、該受信信号レベルが所定値以上である場合に、非常送基地局からの信号の受信間隔を前記第1の間隔よりも短くしてチャネルスキャンを行うことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−205176(P2012−205176A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69358(P2011−69358)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】