説明

無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品

【課題】放射導体やグランド導体の取付けを容易なものとし、導体間の接続信頼性の向上を図る。
【解決手段】誘電体ブロック30と、ブロック30の第1主面に設けられた放射導体11と、ブロック30の第2主面に設けられたグランド導体12と、高周波信号を処理する無線IC素子50と放射導体11及びグランド導体12とを接続する給電導体13,14と、放射導体11とグランド導体12とを接続する短絡導体15とを含んで構成される逆F型アンテナを備えた無線通信デバイス。少なくとも放射導体11、グランド導体12、給電導体13,14及び短絡導体15は、それぞれ平板状をなす金属導体10として構成されている。金属導体10は、放射導体11部分がブロック30の第1主面に配置され、グランド導体12部分がブロック30の第2主面に配置され、給電端子13,14部分が主としてブロック30の側面に配置され、短絡導体15部分が主としてブロック30の側面に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信デバイス、特にRFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の情報管理システムとして、リーダライタと、物品に付されたRFIDタグ(無線通信デバイスとも称する)とを非接触方式で通信し、所定の情報を伝達するRFIDシステムが実用化されている。このRFIDシステムとしては、13MHz帯の高周波を用いたHF帯、900MHz帯の高周波を用いたUHF帯が一般的に使用されている。通常、HF帯に使用される無線ICタグではコイル状のアンテナが用いられており、UHF帯で使用される無線ICタグではダイポール型アンテナ、ループ型アンテナや逆F型アンテナなど各種のアンテナが用いられている。
【0003】
UHF帯にて使用されている逆F型アンテナとしては、例えば、特許文献1〜4に開示されているように、誘電体基板の表面に平板状の放射導体、裏面に平板状のグランド導体を設けた構造が一般的である。こうした逆F型アンテナは、基板の裏面にグランド導体が設けられているため、タグの取付け対象物品が金属物であっても動作可能であり、また、放射導体をグランド導体に対して所定のギャップを介して平行に設けることができるため、アンテナの小型化、薄型化を実現できる。
【0004】
ところで、特許文献1〜4に開示された逆F型アンテナでは、放射導体と給電回路とを接続するための給電導体や、放射導体とグランド導体とを接続するための短絡導体は、誘電体基板に形成されたスルーホール導体やビアホール導体によって構成されている。
【0005】
しかしながら、スルーホール導体やビアホール導体は、一般に、誘電体基板への貫通孔の形成、該貫通孔へのめっき膜の形成や導電性ペーストの充填といったプロセスが必要で、そのプロセスは煩雑である。また、スルーホール導体やビアホール導体と放射導体やグランド導体のような平面状の導体との電気的接続は信頼性を保持することが困難である。さらに、スルーホール導体やビアホール導体と平面状の導体とは材料が異なるため、接続部における抵抗が大きくなりやすい。しかも、タグが貼着される物品は様々な形状を有し、特に、ガスボンベなど湾曲面にタグを貼着する場合、タグに可撓性が求められるが、誘電体基板の曲げや撓みに追従できるスルーホール導体やビアホール導体を形成するのは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−133847号公報
【特許文献2】特開2006−319496号公報
【特許文献3】特開2008−084308号公報
【特許文献4】特開2009−065318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、放射導体やグランド導体の取付けが容易で導体間の接続信頼性に優れた無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の形態である無線通信デバイスは、
第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する誘電体ブロックと、前記誘電体ブロックの第1主面に設けられた放射導体と、前記誘電体ブロックの第2主面に設けられたグランド導体と、高周波信号を処理する無線IC素子と前記放射導体及び前記グランド導体とを接続する給電導体と、前記放射導体と前記グランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される逆F型アンテナを備えた無線通信デバイスであって、
少なくとも前記放射導体、前記グランド導体、前記給電導体及び前記短絡導体は、それぞれ平板状をなす金属導体として構成されており、
前記金属導体は、放射導体部分が前記誘電体ブロックの第1主面に配置され、前記グランド導体部分が前記誘電体ブロックの第2主面に配置され、前記給電端子部分が主として前記誘電体ブロックの側面に配置され、前記短絡導体部分が主として前記誘電体ブロックの側面に配置されていること、
を特徴とする。
【0009】
本発明の第2の形態である無線通信デバイスの製造方法は、
第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する誘電体ブロックと、前記誘電体ブロックの第1主面に設けられた放射導体と、前記誘電体ブロックの第2主面に設けられたグランド導体と、高周波信号を処理する無線IC素子と前記放射導体及び前記グランド導体とを接続する給電導体と、前記放射導体と前記グランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される逆F型アンテナを備えた無線通信デバイスの製造方法であって、
平板状をなす金属導体をパターニングして、少なくとも前記放射導体、前記グランド導体、前記給電導体及び前記短絡導体を形成する工程と、
前記金属導体の放射導体部分を前記誘電体ブロックの第1主面に配置し、前記グランド導体部分を前記誘電体ブロックの第2主面に配置し、前記給電端子部分を主として前記誘電体ブロックの側面に配置し、前記短絡導体部分を主として前記誘電体ブロックの側面に配置する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の形態である無線通信デバイス付き金属物品は、
第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する誘電体ブロックと、前記誘電体ブロックの第1主面に設けられた放射導体と、前記誘電体ブロックの第2主面に設けられたグランド導体と、高周波信号を処理する無線IC素子と前記放射導体及び前記グランド導体とを接続する給電導体と、前記放射導体と前記グランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される逆F型アンテナを備えた無線通信デバイス付き金属物品であって、
少なくとも前記放射導体、前記グランド導体、前記給電導体及び前記短絡導体は、それぞれ平板状をなす金属導体として構成されており、
前記金属導体は、放射導体部分が前記誘電体ブロックの第1主面に配置され、前記グランド導体部分が前記誘電体ブロックの第2主面に配置され、前記給電端子部分が主として前記誘電体ブロックの側面に配置され、前記短絡導体部分が主として前記誘電体ブロックの側面に配置されていること、
を特徴とする。
【0011】
前記無線通信デバイスにおいては、少なくとも放射導体、グランド導体、給電導体及び短絡導体は平板状をなす金属導体で構成され、スルーホール導体やビアホール導体を形成する必要がないため、製造が容易であり、かつ、導体間の接続信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射導体やグランド導体の取付けが容易で導体間の接続信頼性に優れた無線通信デバイス及び無線通信デバイス付き金属物品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施例である無線通信デバイスを示し、(A)はその概略構成を示す斜視図、(B)は等価回路図である。
【図2】第1実施例である無線通信デバイスを示し、(A)は分解斜視図、(B)は外観斜視図である。
【図3】第1実施例である無線通信デバイスの使用状態を示す斜視図である。
【図4】第1実施例である無線通信デバイスの他の使用状態を示す垂直断面図である。
【図5】第1実施例である無線通信デバイスの変形例1を示し、(A)は平面図、(B)は使用状態の側面図である。
【図6】第1実施例である無線通信デバイスの変形例2を示す平面図である。
【図7】第1実施例である無線通信デバイスの変形例3を示す平面図である。
【図8】第1実施例である無線通信デバイスの変形例4を示す平面図である。
【図9】第2実施例である無線通信デバイスを示し、(A)は分解斜視図、(B)は外観斜視図である。
【図10】第3実施例である無線通信デバイスを示し、(A)は外観斜視図、(B)は部分垂直断面図である。
【図11】第4実施例である無線通信デバイスを示し、(A)はその概略構成を示す斜視図、(B)は等価回路図である。
【図12】第4実施例である無線通信デバイスを示し、(A)は分解斜視図、(B)は外観斜視図である。
【図13】第5実施例である無線通信デバイスを示し、(A)は概略構成を示す斜視図、(B)は等価回路図である。
【図14】第6実施例である無線通信デバイスの概略構成を示す斜視図である。
【図15】第7実施例である無線通信デバイスの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
(無線通信デバイスの概略説明)
まず、本発明に係る無線通信デバイスについてその概略を説明する。この無線通信デバイスは、誘電体ブロックに取り付けた逆Fアンテナを備えている。逆Fアンテナは、モノポール型アンテナである放射導体を90°に折り曲げ、さらにその給電点の近傍に短絡導体を設けることによってインピーダンスの整合を図ったアンテナであり、モノポール型アンテナやループ型アンテナに比べて小型化、薄型化が可能である。
【0016】
前記逆F型アンテナは、主に放射素子として機能する放射導体と、該放射導体に対向配置されたグランド導体と、高周波信号を処理する無線通信素子と放射導体及びグランド導体とを接続する給電導体と、放射導体とグランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される。放射導体は誘電体ブロックの第1主面に設けられ、グランド導体は誘電体ブロックの第2主面に設けられ、給電導体及び短絡導体が主として誘電体ブロックの側面に設けられている。
【0017】
誘電体ブロックとしては、セラミックや樹脂あるいは紙などを素材とすることができ、特に、ガスボンベのような湾曲面に貼着される無線通信デバイスの場合、可撓性を有することが好ましい。可撓性を有する誘電体ブロックとしては、例えば、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂のような弾性素材(エラストマ)を用いることができる。なお、平面に貼着される無線通信デバイスの場合、必ずしも可撓性を有する必要はなく、セラミックやエポキシ樹脂などの硬質素材を用いることができる。また、誘電体ブロックは第1主面及び第2主面を有する直方体形状であることが好ましいが、これに限定するものではない。平面視で楕円形状や円形状であってもよい。誘電体ブロックは全体が均一な材料で形成されている必要はなく、様々な誘電率を有する誘電体を組み合わせてもよく、内部に空洞を有していてもよい。
【0018】
前記逆F型アンテナにおいて、少なくとも放射導体、グランド導体、給電導体及び短絡導体は、平板状をなす金属導体として構成され、該金属導体は誘電体ブロックに巻き付けられている。具体的には、放射導体部分が誘電体ブロックの第1主面に配置され、グランド導体部分が誘電体ブロックの第2主面に配置され、給電端子部分が主として誘電体ブロックの側面に配置され、短絡導体部分が主として誘電体ブロックの側面に配置される。
【0019】
平板状をなす金属導体は、誘電体ブロックに巻き付けることができるように折り曲げ加工が可能な金属薄板を使用することが好ましい。金属薄板は、硬質なものであってもよいが、特に、ガスボンベのような湾曲面に貼着される無線通信デバイスの場合、可撓性を有することが好ましい。また、金属導体として、金属フープ材のような金属薄板を単独で用いてもよいが、PETなどの基材フィルムに金属箔(銅箔やアルミ箔)をラミネートしたもの、導電性薄膜を成膜したものを用いてもよい。金属材料としては銅や銀を主成分とする比抵抗の小さな材料を好適に用いることができる。
【0020】
本無線通信デバイスがガスボンベのような湾曲面に貼着される場合、デバイスが湾曲面に沿うことを助長するために、金属導体はその全面が誘電体ブロックに接着・固定されていないことが好ましく、金属導体と誘電体ブロックとの間には非接着領域が設けられていることが好ましい。特に、給電導体及び短絡導体を含んで形成されるループ部分は、逆F型アンテナにおけるインピーダンスの整合を図っていることから、このループ部分を誘電体ブロックに固定し、他の部分を誘電体ブロックに固定しないことが好ましい。
【0021】
前記無線通信デバイスによれば、逆F型アンテナを構成する放射導体、グランド導体、給電導体及び短絡導体を平板状をなす金属導体にて形成し、該金属導体を誘電体ブロックに巻き付けることによって構成しているため、即ち、これらの導体を金属導体の折り曲げ加工によって構成しているため、スルーホール導体やビアホール導体のように、誘電体ブロックに貫通孔を形成したり、該貫通孔へのめっき膜の形成や導電ペーストの充填といった複雑なプロセスを用いる必要がない。また、スルーホール導体やビアホール導体と平板状の金属導体との接続部は電気的抵抗値が大きくなってしまうが、これを解消し、平板状の放射導体やグランド導体の接続信頼性を容易に保つことができる。さらに、無線通信デバイスを貼着する対象物である物品には様々な形状を有しているが、湾曲面に貼着する場合であっても、それぞれの導体の接続信頼性が損なわれることはない。
【0022】
無線通信デバイスにあっては、無線IC素子が搭載されている。この無線IC素子は、信号処理回路やメモリ回路などを有しており、基本的には半導体集積回路チップとして構成されていることが好ましい。無線IC素子としては、ベアチップであってもよく、パッケージICとして構成されていてもよい。無線IC素子は、給電導体に接続され、給電導体に直接的に搭載(即ち、金属導体に搭載)されていてもよく、あるいは、高周波線路を介して給電導体に接続されていてもよい。即ち、無線IC素子は誘電体ブロックに取り付けられていてもよく、あるいは、他の基板に設けられていてもよい。また、無線IC素子は半導体集積回路チップを整合回路や共振回路を有する給電回路基板に搭載されたものであってもよい。
【0023】
金属導体は無線IC素子が内側となるように誘電体ブロックに巻き付けられていることが好ましく、誘電体ブロックには無線IC素子を収容するためのキャビティが設けられていることが好ましい。これにより、誘電体ブロックが無線IC素子の保護材として機能する。
【0024】
前記無線通信デバイスの製造方法は、第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する誘電体ブロックと、誘電体ブロックの第1主面に設けられた放射導体と、誘電体ブロックの第2主面に設けられたグランド導体と、高周波信号を処理する無線IC素子と放射導体及びグランド導体とを接続する給電導体と、放射導体とグランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される逆F型アンテナを備えた無線通信デバイスの製造方法であって、平板状をなす金属導体をパターニングして、少なくとも放射導体、グランド導体、給電導体及び短絡導体を形成する工程と、金属導体を、放射導体部分が誘電体ブロックの第1主面に配置され、グランド導体部分が誘電体ブロックの第2主面に配置され、給電端子部分が主として誘電体ブロックの側面に配置され、短絡導体部分が主として誘電体ブロックの側面に配置されるように、誘電体ブロックに巻き付ける工程と、を備えている。
【0025】
前記無線通信デバイスは、主としてUHF帯のRFIDシステムに用いられるが、サイズなどに応じてHF帯やそれ以下の周波数帯のRFIDシステムに用いることができ、あるいは、UHF帯よりも高周波側の帯域を利用したRFIDシステムに用いることも可能である。
【0026】
ところで、前記無線通信デバイスは、特に、金属物品に貼着することにより無線通信デバイス付き金属物品として構成することができる。無線通信デバイスをそのグランド導体を金属面に向けて接着剤などを介して貼着することにより、グランド導体と金属物品とが容量を介して結合する。この容量は使用周波数において電気的に直結する容量であればよい。なお、グランド導体と金属物品とは直接電気的に接続されていてもよい。
【0027】
(第1実施例、図1〜図4参照)
第1実施例である無線通信デバイス1Aは、図1(A)に示すように、金属導体10と無線IC素子50とを備えている。金属導体10にて上段に水平に位置する放射導体11と下段に水平に位置するグランド導体12が構成され、さらに、放射導体11及びグランド導体12のそれぞれの側部が折り曲げられて互いに対向する給電導体13,14が構成され、放射導体11とグランド導体12との側部が折り曲げた状態で連結された短絡導体15が構成されている。
【0028】
無線IC素子50は、RF信号を処理するもので、給電導体13,14に接合されている。即ち、無線IC素子50の一対の入出力電極(図示せず)が給電導体13,14の対向する部分に接合されている。この接合は、半田バンプなどによる電気的な直接結合(DC接続)であるが、電磁界結合であってもよい。
【0029】
ここで、無線通信デバイス1Aの構成をその製造方法とともに説明する。まず、図2に示す誘電体ブロック30及び支持フィルム20の表面に設けた金属導体10を準備する。金属導体10は、前述のように、放射導体11、グランド導体12、給電導体13,14及び短絡導体15が展開状態で形成されている。給電導体13,14には無線IC素子50が既に接合されている。これらの各部材の材料は前述のものが使用されている。
【0030】
ここで、誘電体ブロック30の上面から側面及び下面にわたって金属導体10を保持した支持フィルム20を巻き付けるようにして接着する。このとき、放射導体11は誘電体ブロック30の上面に位置し、給電導体13,14及び短絡導体15は主として誘電体ブロック30の側面に位置し、グランド導体12は誘電体ブロック30の下面に位置する。接着剤は支持フィルム20の裏面に塗布されているが、誘電体ブロック30の表面に塗布されていてもよく、あるいは両面接着テープを使用してもよい。なお、金属導体10がその折曲げ形状を保持できる材料で形成されていれば、接着剤は必ずしも必要ではない。
【0031】
以上のごとく製造された無線通信デバイス1Aは図3に示す外観をなしている。無線IC素子50は金属導体10の外側に接合されている。本無線通信デバイス1Aにあっては、図1(B)の等価回路に示す逆F型アンテナとして機能する。ここで、給電導体13,14と短絡導体15と放射導体11の一部とグランド導体12の一部とでループ電流経路iが形成される。また、逆F型アンテナとしての有効長さはLである。
【0032】
前記ループ電流経路iは、無線IC素子50と放射導体12とのインピーダンスの整合に寄与する。そして、放射導体12の幅寸法や長さ、給電導体13,14及び短絡導体15の接続位置、給電導体13,14及び短絡導体15の幅寸法や長さ、放射導体11とグランド導体12との間隔などで、共振周波数や共振抵抗、動作帯域などのアンテナ特性が規定される。
【0033】
本無線通信デバイス1Aは、図3に示すように、金属物品61の表面に貼着されて使用される(無線通信デバイス付き金属物品とも称することができる)。この場合、グランド導体12が金属物品61に直接電気的に接続されることになり、放射特性としては金属物品61の法線方向に指向性が生じ、RFIDシステムのリーダライタとの通信が可能である。
【0034】
また、無線通信デバイス1Aは、図4に示すように、樹脂製の保護ケース60に収容した状態で金属物品61の表面に接着剤62を介して貼着されてもよい(無線通信デバイス付き金属物品とも称することができる)。この場合、グランド導体12は金属物品61に対して保護ケース60の底部60a及び接着剤62を介して容量結合することになる。この容量は使用周波数において電気的に直結する容量であればよい。
【0035】
この無線通信デバイス付き金属物品にあっては、保護ケース60を使用することで、無線通信デバイス1Aの耐環境性が良好なものとなる。なお、図3及び図4では、金属物品61を本無線通信デバイス1Aの補助的な放射素子として使用する形態を示しているが、本無線通信デバイス1Aは金属と結合させることなく、単独でもリーダライタと比較的短い距離ではあるが通信が可能である。
【0036】
(変形例、図5〜図8参照)
前記第1実施例では、支持フィルム20の裏面全体を誘電体ブロック30に接着する構成を採用している。しかし、無線通信デバイス1Aがガスボンベのような湾曲面に貼着される場合、デバイス1Aが湾曲面に沿うことを助長するために、金属導体10はその全面が誘電体ブロック30に接着・固定されていないことが好ましく、金属導体10と誘電体ブロック30との間には非接着領域が設けられていることが好ましい。以下に非接着領域を設けた変形例を説明する。
【0037】
変形例1は、図5(A)に示すように、斜線を付した部分を非接着領域Nとしたものである。このように誘電体ブロック30に対して部分的に非接着領域Nを設けることで、図5(B)に示すように、デバイス1Aを金属物品61の湾曲面に貼着した場合、非接着領域Nにおいて金属導体10(支持フィルム20)と誘電体ブロック30とが滑りを生じ、誘電体ブロック30及び金属導体10が湾曲しやすくなる。特に、給電導体13,14及び短絡導体15を含んで形成されるループ部分は、逆F型アンテナにおけるインピーダンスの整合を図っていることから、このループ部分を誘電体ブロック30に固定し、他の部分を誘電体ブロック30に固定しないことが好ましい。
【0038】
変形例2は、図6に示すように、前記変形例1をさらに徹底させたもので、給電導体13,14及び短絡導体15が位置する部分を残して放射導体11及びグランド導体12の位置する部分のほとんどを非接着領域Nとしたものである。前記ループ部分のみを接着・固定することで、デバイス1Aの可撓性を十分に発揮させ、かつ、インピーダンスの変動を最小限に抑えることができる。
【0039】
図7に示す変形例3のように、放射導体11及びグランド導体12が位置する右端部分のみを接着して他の部分を非接着領域Nとしてもよい。また、図8に示す変形例4のように、放射導体11、給電導体13,14及び短絡導体15が位置する部分を接着し、グランド導体12が位置する部分を非接着領域Nとしてもよい。さらに、支持フィルム20に関しては、放射導体11とグランド導体12との間に切込み部21を形成するようにした。これにて、デバイス1Aの湾曲時に前記ループ部分への影響、即ち、インピーダンスの変動が極力少なくなり、かつ、デバイス1Aの可撓性を確保できる。
【0040】
(第2実施例、図9参照)
第2実施例である無線通信デバイス1Bは、図9に示すように、支持フィルムを用いることなく、金属導体10を誘電体ブロック30に直接巻き付けたものである。また、放射導体11は相対的に幅狭く形成し、その分、短絡導体15は長く形成されている。また、給電導体14も長く形成され、給電導体13,14に接合された無線IC素子50は誘電体ブロック30の上面に配置されることになる。本無線通信デバイス1Bでは金属導体10としてフープ材を用いることができる。金属導体10のどの部分を誘電体ブロック30に接着するかは任意である。
【0041】
本無線通信デバイス1Bにおける金属導体10の逆F型アンテナとしての機能は前記第1実施例と同様である。
【0042】
(第3実施例、図10参照)
第3実施例である無線通信デバイス1Cは、図10に示すように、無線IC素子50が金属導体10の内側に接合されており、金属導体10を誘電体ブロック30に巻き付けた状態で無線IC素子50は誘電体ブロック30の側面に形成したキャビティ31に収容されている。その他の構成は前記第1実施例と同様である。なお、本無線通信デバイス1Cにおいて、金属導体10は支持フィルム20の裏面側に設けられている。
【0043】
(第4実施例、図11及び図12参照)
第4実施例である無線通信デバイス1Dは、図11(A)及び12(A),(B)に示すように、給電導体13,14と短絡導体15との配置を入れ替えたもの、即ち、給電導体13,14を外側に、短絡導体15を内側に配置したものである。他の構成及び製造工程は前記第1実施例と同様である。
【0044】
本無線通信デバイス1Dにあっても、図11(B)の等価回路に示す逆F型アンテナとして機能する。逆F型アンテナとしての有効長さはLである。
【0045】
(第5、第6及び第7実施例、図13〜図15参照)
前述のように、給電導体13,14及び短絡導体15を含むループ電流経路はインピーダンスの整合機能を有している。そこで、ループ電流経路を種々に変更することにより、インピーダンスをより広範囲に整合させることができる。
【0046】
第5実施例である無線通信デバイス1Eは、図13(A)に示すように、前記第4実施例における短絡導体15を2本設けたものである。他の構成及び製造工程は前記第1実施例と同様である。本無線通信デバイス1Eにおける等価回路は図13(B)に示すとおりである。
【0047】
第6実施例である無線通信デバイス1Fは、図14に示すように、短絡導体15の幅寸法を相対的に大きくしたものである。他の構成及び製造工程は前記第1実施例と同様である。
【0048】
第7実施例である無線通信デバイス1Gは、図15に示すように、給電導体13,14の幅寸法を相対的に大きくしたものである。他の構成及び製造工程は前記第1実施例と同様である。
【0049】
(他の実施例)
なお、本発明に係る無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明は、無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品に有用であり、特に、放射導体やグランド導体の取付けが容易で導体間の接続信頼性が向上する点で優れている。
【符号の説明】
【0051】
1A〜1G…無線通信デバイス
10…金属導体
11…放射導体
12…グランド導体
13,14…給電導体
15…短絡導体
30…誘電体ブロック
31…キャビティ
50…無線IC素子
61…金属物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する誘電体ブロックと、前記誘電体ブロックの第1主面に設けられた放射導体と、前記誘電体ブロックの第2主面に設けられたグランド導体と、高周波信号を処理する無線IC素子と前記放射導体及び前記グランド導体とを接続する給電導体と、前記放射導体と前記グランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される逆F型アンテナを備えた無線通信デバイスであって、
少なくとも前記放射導体、前記グランド導体、前記給電導体及び前記短絡導体は、それぞれ平板状をなす金属導体として構成されており、
前記金属導体は、放射導体部分が前記誘電体ブロックの第1主面に配置され、前記グランド導体部分が前記誘電体ブロックの第2主面に配置され、前記給電端子部分が主として前記誘電体ブロックの側面に配置され、前記短絡導体部分が主として前記誘電体ブロックの側面に配置されていること、
を特徴とする無線通信デバイス。
【請求項2】
前記金属導体は、前記放射導体部分、前記グランド導体部分及び前記短絡導体部分が一体的に形成されてなり、前記誘電体ブロックに巻き付けられていることを特徴とする請求項1に記載の無線通信デバイス。
【請求項3】
前記金属導体は可撓性フィルム上に設けられており、該可撓性フィルムとともに前記誘電体ブロックに巻き付けられていること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信デバイス。
【請求項4】
前記誘電体ブロックは可撓性を有する材料にて形成されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項5】
前記金属導体と前記誘電体ブロックとの間には非接着領域が設けられていること、を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項6】
前記金属導体は前記無線IC素子が内側となるように前記誘電体ブロックに巻き付けられており、
前記誘電体ブロックには前記無線IC素子を収容するためのキャビティが設けられていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項7】
第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する誘電体ブロックと、前記誘電体ブロックの第1主面に設けられた放射導体と、前記誘電体ブロックの第2主面に設けられたグランド導体と、高周波信号を処理する無線IC素子と前記放射導体及び前記グランド導体とを接続する給電導体と、前記放射導体と前記グランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される逆F型アンテナを備えた無線通信デバイスの製造方法であって、
平板状をなす金属導体をパターニングして、少なくとも前記放射導体、前記グランド導体、前記給電導体及び前記短絡導体を形成する工程と、
前記金属導体の放射導体部分を前記誘電体ブロックの第1主面に配置し、前記グランド導体部分を前記誘電体ブロックの第2主面に配置し、前記給電端子部分を主として前記誘電体ブロックの側面に配置し、前記短絡導体部分を主として前記誘電体ブロックの側面に配置する工程と、
を備えたことを特徴とする無線通信デバイスの製造方法。
【請求項8】
第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する誘電体ブロックと、前記誘電体ブロックの第1主面に設けられた放射導体と、前記誘電体ブロックの第2主面に設けられたグランド導体と、高周波信号を処理する無線IC素子と前記放射導体及び前記グランド導体とを接続する給電導体と、前記放射導体と前記グランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される逆F型アンテナを備えた無線通信デバイス付き金属物品であって、
少なくとも前記放射導体、前記グランド導体、前記給電導体及び前記短絡導体は、それぞれ平板状をなす金属導体として構成されており、
前記金属導体は、放射導体部分が前記誘電体ブロックの第1主面に配置され、前記グランド導体部分が前記誘電体ブロックの第2主面に配置され、前記給電端子部分が主として前記誘電体ブロックの側面に配置され、前記短絡導体部分が主として前記誘電体ブロックの側面に配置されていること、
を特徴とする無線通信デバイス付き金属物品。
【請求項9】
前記金属物品と前記グランド導体とは直接電気的に接続していること、を特徴とする請求項8に記載の無線通信デバイス付き金属物品。
【請求項10】
前記金属物品と前記グランド導体とは容量を介して結合していること、を特徴とする請求項8に記載の無線通信デバイス付き金属物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−253700(P2012−253700A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126853(P2011−126853)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】