説明

無線通信方法及び無線通信システム、並びに無線通信端末

【課題】通信相手が無線電波の届き難い遠隔地に存在していても、無線通信端末間での無線通信を極力可能にした変復調方式を適応的に可変する無線通信システムを提供する。
【解決手段】この無線通信システムを成す各無線通信端末1〜5は、伝送路状況の推定として自端末の周囲の他の端末に関する経路情報を作成して保持する経路作成保持手段、経路情報に基づいて変復調方式としての高速伝送に適した第1の変復調方式、並びに長距離伝送に適した第2の変復調方式を適宜選択設定する変復調方式選択設定手段を備える。一斉配信データ6を送信する送信側の端末1から最終目標の受信側の端末2までの経路上にある各中継相手の端末3、4で端末2へ至るまで経路作成保持機能により得られた経路情報に基づく中継相手の選定、並びに変復調方式選択設定機能による変復調方式の選択設定を順次行って中継を継続し、適応的に変復調方式を可変して無線通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変復調方式を適応的に可変して複数の無線通信端末間における無線通信時に一斉に配信データを伝送すると共に、中継機能を含めて適応変復調方式で無線通信するための無線通信方法及び無線通信システム、並びに無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データを高速にして大容量で伝送するためにネットワークのブロードバンド化が進み、これに伴ってブロードバンドネットワークを介して、より高精細な画像や動画を伝送することが可能になっている。
【0003】
また、デジタル無線通信システムの分野においても、高信頼性を持つ高速なデータ通信に対する要求が高まっており、この様な要求を受け、例えば伝播路の状況や気候の変化に応じて変調方式を切り替える適応変調方式が提案されている。
【0004】
ここでの適応変調方式とは、例えば伝送特性が良好な伝送路の場合には、搬送波にデジタル情報を付加させる変調方式として知られると共に、通常四角波が用いられる16QAM(直交振幅変調)方式等の高速伝送が可能な多値数の多い変調方式を選択し、伝送路の状況が余り良くない場合には、QPSK(四位相偏移)変調方式、BPSK(二位相偏移)変調方式等の多値数が少ない低速の変調方式に順次切り替えるようにした形態を示すものである。
【0005】
更に、送信側及び受信側の無線通信端末の間で1対1通信を行う無線通信システムにおいて、適応変調方式を採用するときに受信側無線通信端末において必要とされる伝送路状況を推定するための方法として、電信受界強度を用いる方法、等化器の誤差出力を用いる方法、誤り訂正後の再符号化による推定ビット誤り率を用いる方法等が知られている。
【0006】
このような伝送路状況の推定を含む適応変調方式を採用した無線通信に関連する周知技術としては、例えば雨降や霧等の場合にも伝送周波数の切換えを行った上で適応変調を用いることにより、伝送距離の落ち込みを無くすことのできる無線通信システム(特許文献1参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−37029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に係る無線通信システムは、送信側及び受信側の伝送装置が第1の周波数帯、第2の周波数帯の伝送手段を有することを前提とし、送信側伝送装置が伝送路状況又は湿度による減衰状況を検出した結果に応じて適応的に各周波数帯の何れかを選択し、選択された周波数帯による無線伝送可能な情報量に対応して適応的に伝送フレームレート、圧縮率の少なくとも一方を可変し、更に、可変した伝送フレームレートや圧縮率に応じて変調方式を適応的に可変して伝送する手法、送信側伝送装置が伝送路状況を検出した結果に応じて適応的に各周波数帯の何れかを選択し、検出結果の伝送路状況とは異なる伝送路状況に基づいて伝送を行う変調方式を適応的に可変する手法、或いは送信側伝送装置が降雨状況を検出した結果に応じて適応的に各周波数帯の何れかを選択し、検出結果の伝送路状況に基づいて伝送を行う変調方式を適応的に可変する手法を提案している。
【0009】
しかしながら、特許文献1に係る無線通信システムの各手法は、何れも送信側及び受信側の伝送装置(無線機、無線通信端末)間で1対1通信を行うシステム構成で適用されるものであって、各伝送装置間での一斉通信による中継機能の構築、或いはそうした場合の変調方式の制御を何等考慮していないため、移動体通信として各伝送装置の位置関係が常時変化することにより、例えば各伝送装置における送信側伝送装置からの通信相手となる受信側伝送装置が無線電波の届き難い遠隔地に存在していたり、或いはフェージング等による通信障害を被り易い環境下に存在していると、無線通信による伝送が行われなかったり、或いは無線通信による伝送が行われていても中断され易いという難点がある。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、通信相手が無線電波の届き難い遠隔地や通信障害を被り易い環境下に存在していても、無線通信端末間での無線通信を極力可能にした変復調方式を適応的に可変する無線通信方法及び無線通信システム、並びに無線通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的課題を解決するため、本発明の無線通信方法は、移動体通信用の複数の無線通信端末間で送信側のものから通信相手とする受信側のものへ無線通信を行うと共に、当該複数の無線通信端末における当該送信側のものでは伝送路状況を推定した結果に応じて当該無線通信のデータについての変復調方式を適応的に可変する無線通信方法であって、複数の無線通信端末に対してそれぞれ伝送路状況の推定として自端末の周囲の他の端末に関する経路情報を作成して保持する経路作成保持機能を持たせると共に、当該経路情報に基づいて変復調方式としての高速伝送に適した第1の変復調方式、並びに長距離伝送に適した第2の変復調方式を適宜選択設定する変復調方式選択設定機能を持たせるようにし、複数の無線通信端末における送信側のものから通信相手とする受信側のものへ無線通信するとき、一斉にデータ配信を行って経路作成保持機能により得られた経路情報に基づいて電波の届く範囲内で決定された当該通信相手としての中継相手を含む当該受信側のものに対して、変復調方式選択設定機能による第1の変復調方式又は第2の変復調方式の選択設定を行うことで変復調方式を適応的に可変することを特徴とする。
【0012】
上記無線通信方法において、通信相手としての受信側のものに含まれる中継相手は、経路作成保持機能により得られた経路情報に基づいて他の中継相手を決定し、他の中継相手は、通信相手としての受信側のものに含まれる最終目標とするものへ至るまで経路作成保持機能により得られた経路情報に基づく中継相手の選定、並びに変復調方式選択設定機能による第1の変復調方式又は第2の変復調方式の選択設定を順次行って中継を継続することが好ましい。
【0013】
一方、上記技術的課題を解決するため、本発明の無線通信システムは、移動体通信用の複数の無線通信端末を備えて成ると共に、当該無線通信端末間で互いに無線通信を行うとき、当該複数の無線通信端末における当該送信側のものが伝送路状況を推定した結果に応じて当該無線通信のデータについての変復調方式を適応的に可変する無線通信システムであって、複数の無線通信端末は、伝送路状況の推定として自端末の周囲の他の端末に関する経路情報を作成して保持する経路作成保持手段と、経路情報に基づいて変復調方式としての高速伝送に適した第1の変復調方式、並びに長距離伝送に適した第2の変復調方式を適宜選択設定する変復調方式選択設定手段とを有し、複数の無線通信端末における送信側のものから通信相手とする受信側のものへ無線通信するとき、一斉にデータ配信を行って経路作成保持手段により得られた経路情報に基づいて電波の届く範囲内で決定された当該通信相手としての中継相手を含む当該受信側のものに対して、変復調方式選択設定手段による第1の変復調方式又は第2の変復調方式の選択設定を行うことで変復調方式を適応的に可変することを特徴とする。
【0014】
上記無線通信システムにおいて、複数の無線通信端末における受信側のものに含まれる中継相手は、経路作成保持手段により得られた経路情報に基づいて他の中継相手を決定し、他の中継相手は、通信相手としての受信側のものに含まれる最終目標とするものへ至るまで経路作成保持手段により得られた経路情報に基づく中継相手の選定、並びに変復調方式選択設定手段による第1の変復調方式又は第2の変復調方式の選択設定を順次行って中継を継続することが好ましい。
【0015】
他方、上記技術的課題を解決するため、本発明の無線通信端末は、互いに無線通信可能な移動体通信用であると共に、送信側のものから通信相手となる受信側のものへ当該無線通信を行うときに伝送路状況を推定した結果に応じて当該無線通信のデータについての変復調方式を適応的に可変する機能を持つ無線通信端末であって、伝送路状況の推定として自端末の周囲の他の端末に関する経路情報を作成して保持する経路作成保持手段と、経路情報に基づいて変復調方式としての高速伝送に適した第1の変復調方式、並びに長距離伝送に適した第2の変復調方式を適宜選択設定する変復調方式選択設定手段とを有し、送信側のものから通信相手とする受信側のものへ無線通信するとき、一斉にデータ配信を行って経路作成保持手段により得られた経路情報に基づいて電波の届く範囲内で決定された当該通信相手としての中継相手を含む当該受信側のものに対して、変復調方式選択設定手段による第1の変復調方式又は第2の変復調方式の選択設定を行うことで変復調方式を適応的に可変することを特徴とする。
【0016】
上記無線通信端末において、通信相手としての受信側のものに含まれる中継相手は、経路作成保持手段により得られた経路情報に基づいて他の中継相手を決定し、他の中継相手は、通信相手としての受信側のものに含まれる最終目標とするものへ至るまで経路作成保持手段により得られた経路情報に基づく中継相手の選定、並びに変復調方式選択設定手段による第1の変復調方式又は第2の変復調方式の選択設定を順次行って中継を継続することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各無線通信端末の位置関係が常時変化する環境下でも、送信側のものから受信側のものへ一斉にデータ配信し、受信側のものに含まれる最終目標とするものへ至るまでの経路情報に基づいて変復調方式を適応的に可変して無線通信を行うようにしている(中継を要する場合を含む他、中継を継続する形態では最終目標へ至るまで中継相手の選定、並びに変復調方式の選択設定を順次行う)ため、通信相手が無線電波の届き難い遠隔地や通信障害を被り易い環境下に存在していても、無線通信端末間での無線通信を極力可能にすることができる。この結果、送信側のものから受信側の最終目標とするものへの無線通信を高いデータ到達率を維持しつつ、可能な限り高速通信で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の無線通信方法の技術的概要を具体的に説明するために示した無線通信システムの構成図である。
【図2】本発明の実施例1に係る無線通信システムに用いられる無線通信端末の基本構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係る無線通信システムに係る一形態であって、各無線通信端末間の無線通信で中継相手を必要としない場合の変復調方式切替え制御動作のシーケンスを示した図である。
【図4】変復調方式切替え制御で利用する制御パケットの構成を例示したもので、(a)は送信用制御パケットに関するもの、(b)は応答用制御パケットの一例に関するもの、(c)は応答用制御パケットの他例に関するものである。
【図5】本発明の実施例1に係る無線通信システムに係る他形態であって、各無線通信端末間の無線通信で中継相手を必要とする場合の変復調方式切替え制御動作のシーケンスを示した図である。
【図6】図5で説明した無線通信システムにおける送信側の無線通信端末に係る自動切替動作処理(図3で説明した無線通信システムの場合を含む)を示したフローチャートである。
【図7】図5で説明した無線通信システムにおける受信側の無線通信端末に係る自動切替動作処理(図3で説明した無線通信システムの場合を含む)を示したフローチャートである。
【図8】図5で説明した無線通信システムにおける中継側の無線通信端末に係る自動切替動作処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の無線通信方法及び無線通信システム、並びに無線通信端末について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
最初に、本発明の無線通信方法の技術的概要を説明する。本発明の無線通信方法は、移動体通信用の複数の無線通信端末間で送信側のものから通信相手とする受信側のものへ無線通信を行うと共に、各無線通信端末における送信側のものでは伝送路状況を推定した結果に応じて無線通信のデータについての変復調方式を適応的に可変するものである。
【0021】
具体的に云えば、各無線通信端末に対してそれぞれ伝送路状況の推定として自端末の周囲の他の端末に関する経路情報を作成して保持する経路作成保持機能を持たせると共に、経路情報に基づいて変復調方式としての高速伝送に適した第1の変復調方式、並びに長距離伝送に適した第2の変復調方式を適宜選択設定する変復調方式選択設定機能を持たせるようにすることを前提とした上、各無線通信端末における送信側のものから通信相手とする受信側のものへ無線通信するとき、一斉にデータ配信を行って経路作成保持機能により得られた経路情報に基づいて電波の届く範囲内で決定された通信相手としての中継相手を含む受信側のものに対して、変復調方式選択設定機能による第1の変復調方式又は第2の変復調方式の選択設定を行うことで変復調方式を適応的に可変するものである。
【0022】
但し、上記無線通信方法において、通信相手としての受信側のものに含まれる中継相手は、経路作成保持機能により得られた経路情報に基づいて他の中継相手を決定する。また、他の中継相手は、通信相手としての受信側のものに含まれる最終目標とするものへ至るまで経路作成保持機能により得られた経路情報に基づく中継相手の選定、並びに変復調方式選択設定機能による第1の変復調方式又は第2の変復調方式の選択設定を順次行って中継を継続する。なお、経路情報についてはGPSを直接利用したり、或いはそれに準じた地図を含む情報局等を利用して取得することができるが、ここでは特に経路情報の取得手段を限定しないものとする。
【0023】
このような無線通信方法によれば、各無線通信端末の位置関係が常時変化する環境下でも、送信側のものから受信側のものへ一斉にデータ配信し、受信側のものに含まれる最終目標とするものへ至るまでの経路情報に基づいて変復調方式を適応的に可変して無線通信を行う(中継を要する場合を含む他、中継を継続する形態では最終目標へ至るまで中継相手の選定、並びに変復調方式の選択設定を順次行う)ため、通信相手が無線電波の届き難い遠隔地や通信障害を被り易い環境下に存在していても、無線通信端末間での無線通信を極力可能にすることができる。結果として、送信側のものから受信側の最終目標とするものへの無線通信を高いデータ到達率を維持しつつ、可能な限り高速通信で行うことができる。
【0024】
図1は、本発明の無線通信方法の技術的概要を具体的に説明するために示した無線通信システムの構成図である。ここでは、複数の無線通信端末1〜5がそれぞれ伝送路状況の推定として自端末の周囲の他の端末に関する経路情報を作成して保持する経路作成保持機能と、経路情報に基づいて変復調方式としての高速伝送に適した第1の変復調方式、並びに長距離伝送に適した第2の変復調方式を適宜選択設定する変復調方式選択設定機能とを持つことを前提として、各無線通信端末1〜5を備えた無線通信システムが構成されている。
【0025】
こうした条件下において、各無線通信端末1〜5間で無線通信のデータについての変復調方式を適応的に可変して無線通信を行うとき、送信側の無線通信端末1から他の無線通信端末2〜5に対して一斉にデータ配信して一斉配信データ6を送信し、無線通信端末1が経路情報に基づく伝送路状況の推定の結果、受信側の最終目標である無線通信端末2については遠隔場所に存在しているために直接無線通信するのは不向き(電波の届く範囲内ではない)と判断して無線通信端末3を初段の中継相手、無線通信端末4を次段の中継相手とすると共に、無線通信端末5については中継相手の対象外と判断する場合を示している。
【0026】
具体的に云えば、送信側の無線通信端末1は、一斉配信データ6を送信した後、経路作成保持機能により得られた経路情報に基づいて伝送路状況を推定した結果、最終目標とする無線通信端末2が遠隔場所に存在しているため、直接無線通信を行わずに無線通信端末3を初段の中継相手、無線通信端末4を次段の中継相手として中継を行うように判断し、これに応じて初段の中継相手の無線通信端末3へ変復調方式選択設定機能により適宜選択設定した第1の変復調方式又は第2の変復調方式で無線通信を行う。
【0027】
初段の中継相手の無線通信端末3では、同様に経路作成保持機能により得られた経路情報に基づいて次段の中継相手の無線通信端末4を選定し、変復調方式選択設定機能により適宜選択設定した第1の変復調方式又は第2の変復調方式で無線通信を行う。また、次段の中継相手の無線通信端末4では、同様に経路作成保持機能により得られた経路情報に基づいて最終目標とする受信側の無線通信端末2を選定し、変復調方式選択設定機能により適宜選択設定した第1の変復調方式又は第2の変復調方式で無線通信を行う。
【0028】
このように、最終的に送信側の無線通信端末1から最終目標とする受信側の無線通信端末2までの経路上にある各中継相手の無線通信端末3、4で最終目標とする受信側の無線通信端末2へ至るまで経路作成保持機能により得られた経路情報に基づく中継相手の選定、並びに変復調方式選択設定機能による第1の変復調方式又は第2の変復調方式の選択設定を順次行って中継を継続するようにして、適応的に変復調方式を可変して無線通信を行うことにより、無線通信端末1から送信した一斉配信データ6を最終目標とする受信側の無線通信端末2で受信する際のデータ損失を最小限に留め、高いデータ到達率を維持しつつ、可能な限り高速なデータ通信を行うことができる。
【実施例1】
【0029】
図2は、本発明の実施例1に係る無線通信システムに用いられる無線通信端末7の基本構成を示したブロック図である。
【0030】
この無線通信端末7は、図1に示したような複数台が設置されて相互に無線通信を行う構成とすることで無線通信システムとなるもので、基本構成上、無線機8に対して有線による信号系で接続された無線増幅部9、制御器11、及び空中線(アンテナ)10を有している。
【0031】
このうち、無線機8は、無線通信のデータを高速伝送に適した第1の変復調方式で変復調する第1の変復調部12と、無線通信のデータを長距離伝送に適した第2の変復調方式で変復調する第2の変復調部13と、を備えている。
【0032】
制御器11は、上述した第1の変復調部12による第1の変復調方式と第2の変復調部13による第2の変復調方式とを切替え制御するための変復調制御部14と、自端末の周囲に存在する他の端末についての経路情報を作成して保持する経路情報作成部15と、自端末以外の他の端末との無線通信のデータ送受や自端末の移動に伴うデータ処理等の制御全般を担う制御部16と、を備えている。なお、無線機8における第1の変復調部12の第1の変復調方式による変復調機能、第2の変復調部13の第2の変復調方式による変復調機能、制御器11における各部の諸機能は、何れもソフトウェアにより構築可能なものである。
【0033】
この無線通信端末7により行われる基本動作の概要を説明する。送信機能の動作では、無線機8が制御器11から受け取った送信信号をD/A変換した後、無線増幅部9による電力増幅を行ってから無線機8を介して空中線10へと伝送する。この送信信号が空中線10から無線通信による無線信号として空中へ伝播される。
【0034】
これに対し、受信機能の動作では、空中に伝播された無線信号が空中線10より受信されると、空中線10を介して無線機8に伝送される。無線機8では伝送された無線信号をA/D変換して受信信号として制御器11へ伝送する。制御器11では伝送された受信信号のデータに基づいて必要な制御を行う。
【0035】
無線通信端末7における各部機能として、制御器11における経路情報作成部15及び制御部16は、協働して伝送路状況を推定するために自端末の周囲の他の端末に関する経路情報を作成して保持する経路作成保持手段として機能する。また、無線機8における第1の変復調部12及び第2の変復調部13と制御器11における変復調制御部14とは、協働して経路情報に基づいて変復調方式としての高速伝送に適した第1の変復調方式、及び長距離伝送に適した第2の変復調方式を適宜選択設定する変復調方式選択設定手段として機能する。
【0036】
このような無線通信端末7は、複数台が設備されることにより無線通信システムを構成し、各無線通信端末7における送信側のものから通信相手とする受信側のものへ無線通信するとき、一斉にデータ配信(一斉配信データ6の送信)を行って経路作成保持手段により得られた経路情報に基づいて電波の届く範囲内で決定された通信相手としての中継相手を含む受信側のものに対して、変復調方式選択設定手段による第1の変復調方式又は第2の変復調方式の選択設定を行うことで変復調方式を適応的に可変する機能を持つ。また、各無線通信端末7における受信側のものに含まれる中継相手は、経路作成保持手段により得られた経路情報に基づいて他の中継相手を決定する。更に、他の中継相手は、通信相手としての受信側のものに含まれる最終目標とするものへ至るまで経路作成保持手段により得られた経路情報に基づく中継相手の選定、並びに変復調方式選択設定手段による第1の変復調方式又は第2の変復調方式の選択設定を順次行って中継を継続する。
【0037】
図3は、本発明の実施例1に係る無線通信システムに係る一形態であって、各無線通信端末1、2間の無線通信で中継相手を必要としない場合の変復調方式切替え制御動作のシーケンスを示した図である。また、以下では図4に示される変復調方式切替え制御で利用する制御パケットの構成例を参照する。因みに、図4に示される制御パケットについて、同図(a)は送信用制御パケット24、26に関するもの、同図(b)は応答用制御パケット25、27(一例)に関するもの、同図(c)は応答用制御パケット28(他例)に関するものである。
【0038】
この無線通信システムでは、一斉配信データ6の送信を行う制御器17及び無線機18を持つ無線通信端末1(ここでの基本構成自体は図2で説明した無線通信端末7の場合と同様である)と受信側の最終目標とする無線機19及び制御器20を持つ無線通信端末2(ここでの基本構成自体も図2で説明した無線通信端末7の場合と同様である)との間で送信用制御パケット24、応答用制御パケット25を送受することで、無線通信端末1が2つの端末間の伝送路状況を推定して変復調方式を選択する。但し、この無線通信システムでは、無線通信端末1、2が互いに電波の届く範囲内の位置関係にあるとする。
【0039】
詳細に説明すれば、無線通信端末1では、無線通信端末2に対する送信用制御パケット24の送信より200ms前から変復調制御部14及び制御部16で一斉配信している一斉配信データ6の送信を変復調制御部14により停止(このときに一斉配信データ停止時間21が生じる)し、変復調方式を第1の変復調部12による高速伝送に適した第1の変復調方式に固定する。無線通信端末1は、送信用制御パケット24を送信してから20msが経過するまで変復調方式を第1の変復調方式に固定し、一斉配信データ6の送信を行わない。この20msは、無線通信端末2へ送信用制御パケット24を送信し、無線通信端末2から応答用制御パケット25を受信するときの失敗判定に必要な時間であって、送信用制御パケット24、応答用制御パケット25をそれぞれ送信、受信する過程で要する制御パケット応答待ち時間22となる。
【0040】
因みに、無線通信端末1における送信用制御パケット24を送信するための時間間隔を示す制御パケット送信周期23と制御パケット応答待ち時間22とは、無線通信端末1から無線通信端末2までの距離によって適応的に変更可能とする。無線通信端末1から無線通信端末2までの距離について、図1に示したシステム構成では無線通信端末1から送信した無線信号のデータが無線通信端末2に到達するまでに経由しなければならない他の端末の数(中継端末の数)を2とし、この端末の数を制御器11の経路情報作成部15で作成保持するものであるが、図3の無線通信システムの構成では中継を必要としない場合を想定しているために端末の数が零となる。
【0041】
無線通信端末1から送信する送信用制御パケット24は、図4(a)に示されるように、無線プリアンブル32とデータ部分となるパケットヘッダ33及び検査符合34とから構成される。無線プリアンブル32については、共通の変復調方式によって送信し、制御器17により解析するデータ部分を第1の変復調部12の第1の変復調方式に従って変復調して送信する。データ部分の検査符合34は、受信側の無線通信端末2における正誤確認に利用するもので、パケットヘッダ33はそれに伴う検査用である。パケットヘッダ33及び検査符合34によるデータ部分のサイズを一斉配信する一斉配信データ6のサイズと等しくすれば、送信用制御パケット24による伝送路状況の判断の精度を高めることができる。
【0042】
無線通信端末2では、無線通信端末1からの送信用制御パケット24を受信できない場合には何も処理を行わない。こうした場合には、無線通信端末1側でタイムアウトとみなし、変復調方式を伝送速度は低速であるが、長距離伝送に適した第2の変復調部13による第2の変復調方式へ切替え設定する。
【0043】
無線通信端末2は、無線通信端末1からの送信用制御パケット24を受信すると、伝送路状況を推定するためにパケット内のデータが正常であるか否かを確認し、パケット内のデータが正常であれば無線通信端末1に対して第1の変復調部12による第1の変復調方式を指示する旨の応答用制御パケット25を送信し、データ内に誤りがある場合には無線通信端末1に対して第2の変復調部13による第2の変復調方式を指示する旨の応答用制御パケット25を送信する。
【0044】
無線通信端末2から無線通信端末1に対して送信する応答用制御パケット25は、図4(b)に示されるように、無線プリアンブル35とデータ部分となるパケットヘッダ36及び送信側指示用変復調データ37とから構成される。この応答用制御パケット25は、無線通信端末1に対して指示を行う送信側指示用変復調データ37をデータ部分に含むもので、送信時の変復調方式については無線通信端末2の設定に従うものとする。
【0045】
無線通信端末1では、無線通信端末2からの応答用制御パケット25を受信しなかった場合、並びに送信側指示用変復調データ37に第2の変復調部13による第2の変復調方式を指示する旨を含む応答用制御パケット25を受信した場合、変復調方式を第2の変復調部13による第2の変復調方式に設定する。
【0046】
また、無線通信端末1では、無線通信端末2から送信側指示用変復調データ37に第1の変復調部12による第1の変復調方式を指示する応答用制御パケット25を受信した場合、第1の変復調部12による第1の変復調方式を指示するメッセージを連続で規定回数以上(ここでは規定回数を8回とする)受信した際、変復調方式を第1の変復調部12による第1の変復調方式に切替え設定する。
【0047】
このように、第1の変復調部12による第1の変復調方式への切替え設定する際の条件を厳しくすることにより、無線通信端末1が無線通信端末2に対して高速伝送に適した第1の変復調部12による第1の変復調方式で通信可能なエリアと、長距離伝送に適した第2の変復調部13による第2の変復調方式でのみ通信可能なエリアとの境界線上を移動する際の伝送路を安定させることができる。
【0048】
図5は、本発明の実施例1に係る無線通信システムに係る他形態であって、各無線通信端末1、2間の無線通信で中継相手の無線通信端末3を必要とする場合の変復調方式切替え制御動作のシーケンスを示した図である。
【0049】
この無線通信システムでは、図3の場合と同様な構成の無線通信端末1、2が互いに電波の届かない遠隔な位置関係にあると共に、無線機30及び制御器31を持つ無線通信端末3を介することで無線通信端末1から無線通信端末2へと無線通信(無線信号)のデータを送信可能な状況下での変復調方式の切替え制御を想定している。
【0050】
詳細に説明すれば、無線通信端末1では、無線通信端末2に対する送信用制御パケット24の送信より200ms前から変復調制御部14及び制御部16で一斉配信している一斉配信データ6の送信を変復調制御部14により停止(このときに一斉配信データ停止時間21が生じる)し、変復調方式を第1の変復調部12による高速伝送に適した第1の変復調方式に固定する。ここで、無線通信端末1は、制御器17内の経路情報作成部15により無線通信端末2に関する経路情報を確認する。無線通信端末2に関する経路情報とは、無線通信端末2へ無線通信(無線信号)のデータを送る際に仲介する中継相手の端末の数と次にデータを送信すべき送信先の端末とを指すものである。
【0051】
この無線通信システムの構成では、仲介する中継相手の端末の数が1であり、次にデータを送信すべき端末が無線通信端末3であることを示す。
【0052】
そこで、無線通信端末1では、制御パケット応答待ち時間22と制御パケット送信周期23とを仲介する中継相手の端末数1に応じて可変とし、具体的には制御パケット応答待ち時間22を40ms、制御パケット送信周期23を4sとした上、送信用制御パケット24を中継相手の無線通信端末3へ送信した後、40msが経過するまで変復調方式を第1の変復調部12による第1の変復調方式に固定し、40msの経過後には元の変復調方式に従って一斉配信データ6の送信を再開する。
【0053】
無線通信端末3は、無線通信端末1からの送信用制御パケット24を受信した場合、パケット内のデータの正誤を確認し、無線通信端末1及び無線通信端末3間の伝送路が第1の変復調部12による第1の変復調方式で通信可能であるか否かを記憶した後、変復調方式を第1の変復調部12による第1の変復調方式に固定する。このとき、無線通信端末3では、制御器17内の経路情報作成部15を用いて無線通信端末2に関する経路情報を確認し、他の端末の仲介を介さずに無線通信端末2にデータを送信可能であることを認識する。
【0054】
そこで、無線通信端末3は、無線通信端末1から受信したものと同様な構成の送信用制御パケット26[図4(a)に示される]を無線通信端末2に送信し、この送信用制御パケット26を送信開始した後の20msの間は変復調方式を第1の変復調部12による第1の変復調方式に固定し、無線通信端末2から応答用制御パケット27[図4(b)に示される]が送信されるまでの待ち時間が制御パケット応答待ち時間29となる。
【0055】
無線通信端末2では、無線通信端末3から送信用制御パケット26を受信しなかった場合、応答用制御パケット27を無線通信端末3に向けて送信しない。こうした場合には、無線通信端末3側が応答用制御パケット27の制御パケット応答待ち時間29を経過した後にタイムアウトと判断する。
【0056】
また、無線通信端末2は、無線通信端末3から受信した送信用制御パケット26内のデータが正常であれば,無線通信端末3に対して第1の変復調部12による第1の変復調方式を指示する旨を含む応答用制御パケット27を送信し、無線通信端末3から受信した送信用制御パケット26内のデータに誤りがあれば、無線通信端末3に対して第2の変復調部13による第2の変復調方式を指示する旨を含む応答用制御パケット27を送信する。
【0057】
無線通信端末2から無線通信端末3へと送信する応答用制御パケット27は、図4(b)に示されるように、先に説明した応答用制御パケット25の場合と同様な構成、並びに機能付けがなされ、送信時の変復調方式は無線通信端末2の設定に従うものとする。
【0058】
無線通信端末3では、無線通信端末2から応答用制御パケット27を受信しなかった場合、制御パケット応答待ち時間29を経過した後にタイムアウトと判断し、変復調方式を第2の変復調部13による第2の変復調方式に設定する。また、無線通信端末3は、送信側指示用変復調データ37に無線通信端末2から第2の変復調部13による第2の変復調方式を指示する旨の応答用制御パケット27を受信した場合についても、変復調方式を第2の変復調部13による第2の変復調方式に設定する。更に、無線通信端末3は、送信側指示用変復調データ37に第1の変復調部12による第1の変復調方式を指示する旨の応答用制御パケット27を受信した場合、第1の変復調部12による第1の変復調方式を指示する旨の応答用制御パケット27を連続で規定回数以上(ここでは規定回数を8回とする)受信した際、変復調方式を第1の変復調部12による第1の変復調方式に設定する。
【0059】
無線通信端末3は、上述した無線通信端末2からの応答用制御パケット27の解析及びそれに伴う変復調方式の切替え処理を完了した後、自端末の変復調方式を示す自端末用変復調データ41と、無線通信端末1に対して指示する変復調方式を示す送信側指示用変復調データ40とをデータ部分に含む図4(c)に示すような構成の応答用制御パケット28を無線通信端末1に送信する。
【0060】
そこで、無線通信端末1は、無線通信端末3からの応答用制御パケット28を受信しなかった場合、並びに送信側指示用変復調データ40に第2の変復調部13による第2の変復調方式を指示する旨の応答用制御パケット28を受信した場合、変復調方式を第2の変復調部13による第2の変復調方式に設定する。また、無線通信端末1は、送信側指示用変復調データ40に第1の変復調部12による第1の変復調方式を指示する旨の応答用制御パケット28を受信した場合、第1の変復調部12による第1の変復調方式を指示する応答用制御パケット28を連続で規定回数以上(ここでは規定回数を8回とする)受信した際、変復調方式を第1の変復調部12による第1の変復調方式に設定する。このとき、無線通信端末1は、応答用制御パケット28に含まれる無線通信端末3の変復調方式を示す自端末用変復調データ41を確認することで無線通信端末1から無線通信端末2までの各端末間の変復調方式を把握し、無線通信端末1及び無線通信端末3に設定されている変復調方式に応じて一斉配信データ6の伝送レートを適応的に変更可能とする。
【0061】
図6は、図5で説明した無線通信システムにおける送信側の無線通信端末1に係る自動切替動作処理(図3で説明した無線通信システムの場合を含む)を示したフローチャートである。
【0062】
無線通信端末1の自動切替動作処理は、第1の変復調部12による第1の変復調方式、第2の変復調部13による第2の変復調方式の設定を行うための自動切替開始(ステップS11)として起動する。起動時には一斉配信データ6の送信が行われているため、起動後は一定時間(経路状況に応じて変更される)スリープ(ステップS12)の状態となり、その後に一斉配信データ6の送信を変復調制御部14により停止することに伴い、一斉配信データ停止時間21に相当するスリープ、即ち、データの一斉配信を停止して一定(経路状況に応じて変更される)時間スリープ(ステップS13)の状態となる。
【0063】
次に、無線通信端末1は、経路作成保持手段により経路状況を把握し、最終目標とする無線通信端末2(図3の場合に対応する)或いは無線通信端末2に無線通信(無線信号)のデータを転送可能な端末(図5の場合には無線通信端末3が対応する)を宛先として選ぶ(ステップS14)。
【0064】
そこで、無線通信端末1は、宛先となる無線通信端末3(図5の場合)又は無線通信端末2(図3の場合)へ送信用制御パケット24を送信(ステップS15)した後、無線通信端末3、無線通信端末2から応答用制御パケット28、25の応答を受信したか否かの判定(ステップS16)を行う。この判定の結果、応答受信されていなければ、送信用制御パケット24の送信後、20ms経過(この制御パケット応答待ち時間22は経路状況に応じて変更される)したか否かの判定(ステップS17)を行い、20ms経過していなければ先の無線通信端末3、無線通信端末2から応答用制御パケット28、25の応答を受信したか否かの判定(ステップS16)の前にリターンするが、20ms経過していれば変復調方式を第2の変復調方式に設定(ステップS18)する。
【0065】
また、無線通信端末3、無線通信端末2から応答用制御パケット28、25の応答を受信したか否かの判定(ステップS16)の結果、応答受信されていれば、無線通信端末3、無線通信端末2からの応答用制御パケット28、25における送信側指示用変復調データ40、37に第1の変復調方式を指示する旨が含まれているか否かを判断することにより、第1の変復調方式を指示するパケットを受信したか否かの判定(ステップS19)を行い、第1の変復調方式を指示するパケットを受信していなければ変復調方式を第2の変復調方式に設定(ステップS18)するが、第1の変復調方式を指示するパケットを受信していれば、第1の変復調方式を指示するパケットを規定回数の8回以上受信したか否かの判定(ステップS20)を行う。
【0066】
この判定の結果、8回以上受信していなければ、変復調方式を第2の変復調方式に設定(ステップS18)するが、8回以上受信していれば、変復調方式を第1の変復調方式に設定(ステップS21)する。
【0067】
以上により変復調方式を第2の変復調方式に設定(ステップS18)した状態か、或いは変復調方式を第1の変復調方式に設定(ステップS21)した状態となるため、無線通信端末1はその後、何れの場合にも一斉配信データ6を送信するデータの一斉配信を再開(ステップS22)してから動作終了とするか否かの判定(ステップS23)を行い、動作終了でなければ自動切替開始(ステップS11)にリターンして動作処理を繰り返すようにするが、動作終了であれば動作処理を終了する。なお、動作終了の判断は変復調制御部14がフラグやプログラムのオンオフ等で認識するものである。
【0068】
図7は、図5で説明した無線通信システムにおける受信側の無線通信端末2に係る自動切替動作処理(図3で説明した無線通信システムの場合を含む)を示したフローチャートである。
【0069】
無線通信端末2の自動切替動作処理も、第1の変復調部12による第1の変復調方式、第2の変復調部13による第2の変復調方式の設定を示す自動切替開始(ステップS31)として起動する。起動後には無線通信端末3からの送信用制御パケット26又は無線通信端末1からの送信用制御パケット24を受信したか否かの判定(ステップS32)を行い、制御パケットを受信していなければこの判定の前にリターンして待機するが、制御パケットを受信していればその受信データが正常か否かの判定(ステップS33)を行う。この判定の結果、正常であれば第1の変復調方式を指示する応答用制御パケット27(図5の場合)又は応答用制御パケット25(図3の場合)を作成(ステップS34)するが、正常でなければ(異常であれば)、第2の変復調方式を指示する応答用制御パケット27(図5の場合)又は応答用制御パケット25(図3の場合)を作成(ステップS35)する。この後は、送信用制御パケット26、24の送信元の無線通信端末3、無線通信端末1へ応答用制御パケット27、25を送信(ステップS36)してから動作終了とするか否かの判定(ステップS38)を行い、動作終了でなければ自動切替開始(ステップS31)にリターンして動作処理を繰り返すようにするが、動作終了であれば動作処理を終了する。なお、ここでの動作終了の判断についても、変復調制御部14がフラグやプログラムのオンオフ等で認識するものである。
【0070】
図8は、図5で説明した無線通信システムにおける中継側の無線通信端末3に係る自動切替動作処理を示したフローチャートである。
【0071】
無線通信端末3の自動切替動作処理も、第1の変復調部12による第1の変復調方式、第2の変復調部13による第2の変復調方式の設定を示す自動切替開始(ステップS41)として起動する。起動後には無線通信端末1からの送信用制御パケット24を受信したか否かの判定(ステップS42)を行い、制御パケットを受信していなければこの判定の前にリターンして待機するが、制御パケットを受信していれば制御パケット(送信用制御パケット24)のデータ部を確認し、送信元の無線通信端末1に指示する変復調方式を決定(ステップS43)した後、経路作成保持手段により経路状況を把握し、最終目標とする無線通信端末2を自端末から送信する制御パケット(送信用制御パケット26)の宛先として選ぶ(ステップS44)。
【0072】
そこで、無線通信端末3は、宛先となる無線通信端末2へ送信用制御パケット26を送信(ステップS45)した後、無線通信端末2から応答用制御パケット27の応答を受信したか否かの判定(ステップS46)を行う。この判定の結果、応答受信されていなければ、送信用制御パケット26の送信後、20ms経過(この制御パケット応答待ち時間29は経路状況に応じて変更される)したか否かの判定(ステップS47)を行い、20ms経過していなければ先の無線通信端末2から応答用制御パケット27の応答を受信したか否かの判定(ステップS46)の前にリターンするが、20ms経過していれば変復調方式を第2の変復調方式に設定(ステップS48)する。
【0073】
また、無線通信端末2から応答用制御パケット27の応答を受信したか否かの判定(ステップS46)の結果、応答受信されていれば、無線通信端末2からの応答用制御パケット27における送信側指示用変復調データ37に第1の変復調方式を指示する旨が含まれているか否かを判断することにより、無線通信端末2から第1の変復調方式を指示するパケットを受信したか否かの判定(ステップS49)を行い、第1の変復調方式を指示するパケットを受信していなければ変復調方式を第2の変復調方式に設定(ステップS48)するが、第1の変復調方式を指示するパケットを受信していれば、第1の変復調方式を指示するパケットを規定回数の8回以上受信したか否かの判定(ステップS50)を行う。
【0074】
この判定の結果、8回以上受信していなければ、変復調方式を第2の変復調方式に設定(ステップS48)するが、8回以上受信していれば、変復調方式を第1の変復調方式に設定(ステップS51)する。
【0075】
以上により変復調方式を第2の変復調方式に設定(ステップS48)した状態か、或いは変復調方式を第1の変復調方式に設定(ステップS51)した状態となるため、無線通信端末3はその後、何れの場合にも無線通信端末1への自端末の変復調方式(自端末用変復調データ41)と無線通信端末1が設定すべき変復調方式(送信側指示用変復調データ40)を含む応答用制御パケット28を無線通信端末1に送信(ステップS52)してから動作終了とするか否かの判定(ステップS53)を行い、動作終了でなければ自動切替開始(ステップS41)にリターンして動作処理を繰り返すようにするが、動作終了であれば動作処理を終了する。なお、ここでの動作終了の判断も変復調制御部14がフラグやプログラムのオンオフ等で認識するものである。
【符号の説明】
【0076】
1〜5、7 無線通信端末
6 一斉配信データ
8、18、19、30 無線機
9 無線増幅部
10 空中線
11、17、20、31 制御器
12 第1の変復調部
13 第2の変復調部
14 変復調制御部
15 経路情報作成部
16 制御部
21 一斉配信データ停止時間
22、29 制御パケット応答待ち時間
23 制御パケット送信周期
24、26 送信用制御パケット
25、27,28 応答用制御パケット
32、35、38 無線プリアンブル
33、36、39 パケットヘッダ
34 検査符号
37、40 送信側指示用変復調データ
41 自端末用変復調データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信用の複数の無線通信端末間で送信側のものから通信相手とする受信側のものへ無線通信を行うと共に、当該複数の無線通信端末における当該送信側のものでは伝送路状況を推定した結果に応じて当該無線通信のデータについての変復調方式を適応的に可変する無線通信方法であって、
前記複数の無線通信端末に対してそれぞれ前記伝送路状況の推定として自端末の周囲の他の端末に関する経路情報を作成して保持する経路作成保持機能を持たせると共に、当該経路情報に基づいて前記変復調方式としての高速伝送に適した第1の変復調方式、並びに長距離伝送に適した第2の変復調方式を適宜選択設定する変復調方式選択設定機能を持たせるようにし、
前記複数の無線通信端末における前記送信側のものから前記通信相手とする前記受信側のものへ前記無線通信するとき、一斉にデータ配信を行って前記経路作成保持機能により得られた前記経路情報に基づいて電波の届く範囲内で決定された当該通信相手としての中継相手を含む当該受信側のものに対して、前記変復調方式選択設定機能による前記第1の変復調方式又は前記第2の変復調方式の選択設定を行うことで前記変復調方式を適応的に可変することを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信方法において、前記通信相手としての前記受信側のものに含まれる前記中継相手は、前記経路作成保持機能により得られた前記経路情報に基づいて他の中継相手を決定し、前記他の中継相手は、前記通信相手としての前記受信側のものに含まれる最終目標とするものへ至るまで前記経路作成保持機能により得られた前記経路情報に基づく中継相手の選定、並びに前記変復調方式選択設定機能による前記第1の変復調方式又は前記第2の変復調方式の選択設定を順次行って中継を継続することを特徴とする無線通信方法。
【請求項3】
移動体通信用の複数の無線通信端末を備えて成ると共に、当該無線通信端末間で互いに無線通信を行うとき、当該複数の無線通信端末における当該送信側のものが伝送路状況を推定した結果に応じて当該無線通信のデータについての変復調方式を適応的に可変する無線通信システムであって、
前記複数の無線通信端末は、前記伝送路状況の推定として自端末の周囲の他の端末に関する経路情報を作成して保持する経路作成保持手段と、前記経路情報に基づいて前記変復調方式としての高速伝送に適した第1の変復調方式、並びに長距離伝送に適した第2の変復調方式を適宜選択設定する変復調方式選択設定手段とを有し、
前記複数の無線通信端末における前記送信側のものから前記通信相手とする前記受信側のものへ前記無線通信するとき、一斉にデータ配信を行って前記経路作成保持手段により得られた前記経路情報に基づいて電波の届く範囲内で決定された当該通信相手としての中継相手を含む当該受信側のものに対して、前記変復調方式選択設定手段による前記第1の変復調方式又は前記第2の変復調方式の選択設定を行うことで前記変復調方式を適応的に可変することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項3記載の無線通信システムにおいて、前記複数の無線通信端末における前記受信側のものに含まれる前記中継相手は、前記経路作成保持手段により得られた前記経路情報に基づいて他の中継相手を決定し、前記他の中継相手は、前記通信相手としての前記受信側のものに含まれる最終目標とするものへ至るまで前記経路作成保持手段により得られた前記経路情報に基づく中継相手の選定、並びに前記変復調方式選択設定手段による前記第1の変復調方式又は前記第2の変復調方式の選択設定を順次行って中継を継続することを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
互いに無線通信可能な移動体通信用であると共に、送信側のものから通信相手となる受信側のものへ当該無線通信を行うときに伝送路状況を推定した結果に応じて当該無線通信のデータについての変復調方式を適応的に可変する機能を持つ無線通信端末であって、
前記伝送路状況の推定として自端末の周囲の他の端末に関する経路情報を作成して保持する経路作成保持手段と、前記経路情報に基づいて前記変復調方式としての高速伝送に適した第1の変復調方式、並びに長距離伝送に適した第2の変復調方式を適宜選択設定する変復調方式選択設定手段とを有し、
前記送信側のものから前記通信相手とする前記受信側のものへ前記無線通信するとき、一斉にデータ配信を行って前記経路作成保持手段により得られた前記経路情報に基づいて電波の届く範囲内で決定された当該通信相手としての中継相手を含む当該受信側のものに対して、前記変復調方式選択設定手段による前記第1の変復調方式又は前記第2の変復調方式の選択設定を行うことで前記変復調方式を適応的に可変することを特徴とする無線通信端末。
【請求項6】
請求項5記載の無線通信端末において、前記通信相手としての前記受信側のものに含まれる前記中継相手は、前記経路作成保持手段により得られた前記経路情報に基づいて他の中継相手を決定し、前記他の中継相手は、前記通信相手としての前記受信側のものに含まれる最終目標とするものへ至るまで前記経路作成保持手段により得られた前記経路情報に基づく中継相手の選定、並びに前記変復調方式選択設定手段による前記第1の変復調方式又は前記第2の変復調方式の選択設定を順次行って中継を継続することを特徴とする無線通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−4335(P2011−4335A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147733(P2009−147733)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】