説明

無線通信機器及びそれを用いた無線通信ネットワーク

【課題】マルチホップ機能を用いる無線通信ネットワークに接続される無線通信機器において、自機の状態監視信号の送信が設定の時間帯に集中せず、かつ状態監視信号の送信を行う無線通信機器の台数が増加してもネットワークの輻輳による送信遅延の発生を抑制することができる無線通信機器を提供する
【解決手段】他の無線通信機器から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号を、前記無線通信ネットワークを通して転送する。自機の状態を示す状態監視信号を送信するのに、所定の第二の期間(T2)の中で、前記状態監視信号を送信することができる時間が複数設定されている中から、前記状態監視信号を送信する時間を、乱数を用いて選び、当該時間の経過時に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信機器及びそれを用いた無線通信ネットワークに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の無線通信機器を点在させて、無線ネットワークによって結合する、ある種の無線通信ネットワークが注目を集めている。この無線通信ネットワークでは、無線通信機器は、無線信号の存在を間欠的に検知しており、他の無線通信機器からのメッセージを受けると、そのメッセージが自己宛てでない場合、同じ内容のメッセージを送信する。すなわち無線通信機器は転送装置として機能する。このような転送を繰り返して、最終的に目的とする無線通信機器にメッセージが伝達されるようになっている。このような通信機能を「マルチホップ機能」という。
【0003】
あるいは同報通信の場合、無線通信機器は、他の無線通信機器からのメッセージを受けると、必要に応じてそのメッセージを取り込むとともに、同じ内容のメッセージを転送する。このような転送を繰り返して、最終的にすべての無線通信機器にメッセージが伝達される。
各無線通信機器は通信経路の情報を有しない、また専用の中継器も必要としない。そのために、各無線通信機器の設置が手軽に行える。また、各無線通信機器の通信制御部(CPU)の処理速度が小さくても、無線通信が可能になる。したがって、無線通信機器の規模が小さくなり、全体として安価にネットワークを構築できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-114394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、無線通信機器を、無線通信機器の駆動源である外部直流電源に接続して所定場所に設置するだけでよいという簡易設置型が増えている。また、外部直流電源に加えて、あるいは外部直流電源に代えて、電池を用いるものも考案されている。
この場合、外部直流電源の不具合若しくは電池の交換時期をオペレータに知らせることが必要になってくる。例えば、自機(1号機とする)の電池の消耗状態を示す状態監視信号を、他の無線通信機器に送信すれば、1号機及び/又は当該他の無線通信機器につながれている表示器等において、1号機の電池の消耗状態を表示する、あるいは電池を交換すべき時期であれば、そのことを特に分かる方法で表示する、といったことが考えられる。
【0006】
ところが、マルチホップ機能を用いる無線通信ネットワークにおいては、1回の通信が始まってから収束するまでの時間がかかる。特に子機の台数が増加するにしたがって収束時間が延び、数秒かかることもある。
このような無線通信ネットワークの下で、電池の消耗状態など自機の状態を示す状態監視信号を送信すると、無線回線が占有され、その時間帯に緊急に必要なデータの送信ができないし、他の無線通信機器からの緊急に必要なデータの受信ができない。しかし、状態監視信号の通知も無線通信機器の管理という面で重要であり、状態監視信号の送信は行う場合、状態監視信号の送信を確実に1回で終わらせるための工夫が必要になってくる。
【0007】
なぜなら、複数の無線通信機器で状態監視信号の送信が衝突すれば(衝突したことはキャリアセンスしていれば分かる)、待ち時間を置いてまた送り直しになる。複数の無線通信機器で状態監視信号の送信タイミングの重なる台数が多いと、(待ち時間)×(タイミングが重なった台数)の時間だけ、状態監視信号の送信が続くことになる。例えば、待ち時間が2.5秒でタイミングが重なった台数が30台とすると最大75秒間状態監視信号の送信が続く。この間、緊急に必要なデータの通信の機会を減らしてしまうことになるからである。このような問題は、複数の無線通信機器で、状態監視信号の送信時刻が同一周期で設定されている場合に起こりやすい。
【0008】
特許文献1は、設定の無線局から定期監視メッセージを含む無線信号が送信される時刻の前後を含む定期受信期間内においては、他の全ての無線局における間欠受信間隔を相対的に短くすることで前記無線信号を確実に受信することができ、また、定期受信期間外においては、他の全ての無線局における間欠受信間隔を相対的に長くすることで消費電力を低減することができる技術を開示するが(特許文献2の段落[0037]などを参照)、これでは子局の台数が増加するに従って、定期受信期間内における送信遅延が発生する可能性がある。また間欠受信間隔をさらに短くすると、消費電力が大きくなる。
【0009】
本発明は、マルチホップ機能を用いる無線通信ネットワークに接続される無線通信機器において状態監視信号の送信が設定の時間帯に集中せず、かつ状態監視信号の送信を行う無線通信機器の台数が増加してもネットワークの輻輳による送信遅延の発生を抑制することができる無線通信機器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無線通信機器は、当該無線通信機器の指令又は接続された外部機器からの指令に基づいて情報信号を送信する情報信号送信手段と、自機の状態を示す状態監視信号を送信する状態監視信号送信手段と、他の無線通信機器から送信された無線信号を、第一の期間(T1)の経過ごとに受信する受信手段と、前記受信手段により受信した無線信号を、前記無線通信ネットワークを通して転送する転送手段と、通信制御手段とを備え、前記通信制御手段は、所定の第二の期間(T2)の中で、かつ、前記状態監視信号送信手段が前記状態監視信号を送信することができる複数設定された時間の中から、前記状態監視信号を送信する時間を任意に選び、当該時間の経過により前記状態監視信号を送信するものであり、前記複数設定されている時間どうしの間隔(T3)は、第一の期間(T1)よりも長いものである。
【0011】
上述の無線通信機器によれば、状態監視信号送信手段は、複数設定されている時間の中から任意の時間に状態監視信号を送信するため、複数の無線通信機器が状態監視信号の送信を行ってもが設定の時間帯に集中することがない。よって、無線通信機器の台数が増加してもネットワークの輻輳による送信遅延の発生を抑制することができる。
また本発明の無線通信機器は、さらに電池により電源を供給する電源供給手段と、前記電池の残量を検出する電池残量検出手段とをさらに有することが望ましい。前記「自機の状態」には、前記電池残量検出手段により検出された電池の残量が、所定の閾値以下の状態が一定の期間継続したことが含まれる。電池の残量が閾値以下になった場合でも、すぐに送信するのではなく、閾値以下の状態が予め定められた期間継続した場合に送信するため、誤検出による送信を防ぐことができる。
【0012】
前記各通信制御手段は、前記状態監視信号を送信すべき時間を、乱数を用いて設定してもよく、前記各無線通信機器は、ユニークな識別番号を有し、自機の識別番号を基数として前記乱数を用いてもよい。いずれの場合も状態監視信号の送信を行う期間が、第二の期間(T2)の中で無線通信機器ごとに拡散するので、状態監視信号の送信が設定の時間帯に集中しない。特に後者は、自機の識別番号を基数として乱数を設定するため、乱数で設定される値が各無線通信機器で重なる可能性をなくすことができる。
【0013】
前記第二の期間(T2)の開始時点は、当該無線通信機器ごとに決定される場合もあり、無線通信ネットワークに接続された各無線通信機器に対して一律に決められる場合もある。具体例を挙げると、前者は、それぞれの無線通信機器を立ち上げたときに各第二の期間(T2)が開始される場合である。後者は、各無線通信機器を一斉に立ち上げたときに、同一の第二の期間(T2)が開始される場合である。
【0014】
前記状態監視信号送信手段は、前記状態監視信号を送信しようとする時点で、キャリアセンスにより他の無線通信機器からの無線信号を認識した場合、前記状態監視信号の送信を、第四の期間(T4)だけ延期することが望ましい。
また本発明の無線通信ネットワークは、前述した無線通信機器を構成端末とする無線通信ネットワークである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】無線通信ネットワークに接続される無線通信機器のブロック図である。
【図2】電源起動後、バッテリチェックの結果に応じて、電源電圧低下を示すメッセージを送信する処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】バッテリ監視情報を送信する処理を示すフローチャートである。
【図4】バッテリ監視情報を二回目以後に送信する送信処理を示すフローチャートである。
【図5】時間軸上で各無線通信機器からバッテリ監視情報が送出される時刻を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
本発明は、無線通信機器と、それらを接続する無線ネットワークとによって構成される。無線通信機器は基本的には同一の構成である。しかし実施可能な範囲において、例えば一部の無線通信機器を受信専用の構成としたり送信専用の構成とするなど、各無線通信機器を異なる構成とすることができる。また、無線通信機器のそれぞれが移動する無線通信機器であるとして説明を行うが、その一部又は全部が、固定位置に取り付けられるものであっても良い。
【0017】
無線ネットワークで用いられる周波数帯は、例えば、400MHz、1.2GHz、2.4GHzの各周波数帯とされるが、これに限定されなるものではなく、赤外線の周波数帯でも良い。したがって本明細書で「無線」とは赤外線通信を含む。また、無線通信機器の送信電力は1〜10mW程度の特定小電力とされている。また、無線通信機器の各々の通信可能範囲は、例えば、200m〜300m程度の範囲である。
【0018】
図1は、無線通信機器のブロック図である。無線通信機器は、送受信部101、通信制御部102、電源部103、通信制御部102の中にあり電源部103の機能をチェックするヘルスチェック部104、インターフェイス部105、を有して構成されている。また、インターフェイス部105には当該無線通信機器に接続される外部機器からの接点入力、外部機器への接点出力、リレー出力が設けられている。これらの接点入力、接点出力、リレー出力に接続される外部機器には、(A)各種センサ類、(B)回転灯、信号灯、音声報知器、文字表示ボード、(C)各無線通信機器からの情報を一箇所に収集する目的のために設けられる制御コントローラ等がある。これらの外部機器は有線又は無線で無線通信機器に接続される。
【0019】
なお、(A)の各種センサ類の機能を有する部品を無線通信機器の中に搭載して、一体型とすることも可能である。例えば温度計を内蔵し、無線通信機器を屋外に設置して気温が所定の温度に達するとメッセージを送信するようにできる。また無線通信機器に加速度計を内蔵し、山の斜面に無線通信機器を設置して、土砂災害等により無線通信機器が転倒した場合に、メッセージを送信するようにしてもよい。
【0020】
無線通信機器が接続された無線ネットワークの活用例をあげると、駐車場の出口通路にビームセンサを設置し、ビームセンサをコントロールして音声報知器等を制御するコントロールボックスを経由して無線通信機器Aの接点入力に接続する。他の無線通信機器Bの接点出力には音声報知器が接続されている。駐車場から車両が出るときにビームセンサがこれを検知し、コントロールボックスを経由して無線通信機器Aから無線送信される。無線通信機器Bはこの無線信号を受信すると、所定の接点出力を出して音声報知器から「車が出ます。ご注意ください」とアナウンスされる。無線通信機器A、無線通信機器Bなどは無線回線で接続されるので、システムの設置の手間が少なくて済む。
【0021】
送受信部101は、変調部、電力増幅部、高周波増幅部、復調部などが一体として構成されている。
通信制御部102は中央演算装置(CPU)を中心として構成され、その機能は、ROMに格納されている通信制御プログラムを、一時記憶領域であるRAMを利用しながら実行することである。インターフェイス部105は例えば調歩同期シリアル通信を採用している。なお、通信制御部102、ROM、RAM、インターフェイス部105は1個のマイクロコンピュータチップに搭載されていてもよい。
【0022】
通信制御部102は、周期的に間欠受信しており、無線通信ネットワークを通して他の無線通信機器からメッセージを受信した場合に、当該メッセージの転送を開始する転送機能を有する。ここで「キャリアセンス」とは、ある時間を起点(キャリアセンス起点)として、所定の「待ち時間」待って、その待ち時間内にいずれの無線通信機器からも受信しなかったことを認識した場合には自らが送信(転送)をし、他の無線通信機器からの送信(転送)がされたと認識した場合には自らは送信(転送)をしない技術をいう。このようにして、次から次ぎにメッセージが転送され、1台の無線通信機器の通信可能な距離を越えたメッセージの伝送が可能とされる。ここで「待ち時間」とは、キャリアセンス起点から自らが信号を送信するまでの時間をいい、この待ち時間内に他の無線通信機器からの送信(転送)がされたと認識した場合は自らは送信(転送)を行わない。
【0023】
電源部103は、乾電池などの一次電池、リチウムイオン電池、ニッカド電池などの二次電池であってもよく、商用電源線からの交流電気を直流化する電源アダプタであってもよい。電源部103からの電力は、送受信部101、通信制御部102などに供給され、また、必要に応じて、接続されている外部機器にも供給される。
通信制御部102の一部であるヘルスチェック部104は、電源部103の電力供給能力、具体的には電源部103の端子電圧を測定し、電圧が閾値よりも低下した場合に、そのことを示すメッセージを生成して通信制御部102を通して無線送信する。「閾値」とは、これより低下すると当該無線通信機器の動作が不安定になるので、電池の交換を促したり、電源アダプタの点検を促すための閾値である。以下、電源部103は電池であることを想定し、この電源部103の電力供給能力の点検を「バッテリチェック」という。
【0024】
図2は、ヘルスチェック部104及び通信制御部102の実施する、無線通信機器の起動時に、バッテリチェック及び電圧が閾値よりも低下していることを示すメッセージを送信する処理の全体を示すフローチャートである。
無線通信機器の電源が起動されると、ヘルスチェック部104はバッテリチェックを行い、電圧が閾値よりも低下していることを検出すると、ローバッテリフラグを立てる(ステップS1〜S3)。そして無線通信機器は、無線通信ネットワークへの参加の情報を送信する。このときローバッテリフラグが立っていれば、それをバッテリ監視情報として同時に送信する(ステップS4)。この送信処理の詳しい内容は、図3に示されているように、ローバッテリフラグが立っているかどうかを判定し(ステップS41)、立っていればローバッテリを設定し(ステップS42)、無線通信機器の識別番号を添えて送信を行い(ステップS43)、送信が終わればローバッテリフラグを降ろす(ステップS44)。なお、ローバッテリフラグは降ろさないようにしてもよい。なぜなら、一度ローバッテリフラグが立てば、その後のバッテリチェックでは必ず閾値以下になり、再度ローバッテリフラグが立つからである。
【0025】
以上の処理は、無線通信機器の電源が起動される時点で行われる処理である。
起動後、一日の中でバッテリ監視情報を送信する時間を乱数により設定する(ステップS5)。例えば一日を24時間に区切り、0時〜1時を第1時間とし、1時〜2時を第2時間とし、・・・23時〜24時を第24時間とする。その中で、バッテリ監視情報を送信すべき時間を、乱数発生ソフトを用いて決定する。なおこの「一日」は当該無線通信機器の電源が起動されたときからカウントされる相対的な時間である。
【0026】
送信すべき時間が決まると、図4のカウント処理に進む。
図4の処理では、まずバッテリチェックを行い(ステップS60)、電圧が閾値以下であるか判定する(ステップS61)。電圧が閾値以下であれば「現時間の配列のフラグ」をHiにし(ステップS62)、電圧が閾値を超えていれば「現時間の配列のフラグ」をLowにする(ステップS63)。この「現時間の配列のフラグ」は1時間ごとに、電圧に応じて立てるかどうか判断されるフラグである。
【0027】
過去m回(この例ではm=6)連続して「現時間の配列のフラグ」が立てられていれば(ステップS64)、ここで初めて電圧が閾値よりも低下していること(ローバッテリ)が判断される。このように複数回バッテリチェックを行うのは、1回だけのチェックでは電源部103の電力供給能力が残っているのに、測定時点でたまたま電圧が閾値よりも低く測定される場合があり得るからである。また、電圧が閾値より低下しても、m時間は電源部103の電力供給能力はまだ残っているからである。mの値は、この電池の残存能力の観点から設定すべきである。
【0028】
このように、電圧が閾値よりも低下する状態がm時間続いて、初めて電源部103の電力供給能力が足りないと判断し、ローバッテリフラグを立てる(ステップS65)。
次に時間の経過をカウントし、1時間が経過すればカウント値を1進める(ステップS66)。ステップS63で「現時間の配列のフラグ」をLowにした場合、ステップS64で過去m回連続して「現時間の配列のフラグ」が立てられていなかった場合も、同様にカウント値を1進める(ステップS67)。
【0029】
つぎにこのカウント値が、ステップS5で設定された時間(「一日」の中でバッテリ監視情報を送信すべき時間)になったかどうかを判定し(ステップS67)、Yesの場合は送信処理に入る(ステップS68)。この送信処理の内容は、図3を用いて説明した処理(ステップS41〜S44)とほぼ同じであるが、それに加えて、ローバッテリフラグを初めて立てた時点から何時間あるいは何日が経過したかを示す値も送信する。
【0030】
そしてステップS66で進められたカウント値が第24時間になっているどうかを調べ(ステップS69)、第24時間になっていなければステップS60に戻る。第24時間になれば、その「一日」は終了したと判断し、カウント値を0にし(ステップS70)、改めてバッテリ監視情報を送信すべき時間を乱数に基づいて決める(ステップS71)。
以上のように、バッテリ監視情報を送信すべき時間を、「一日」の中で、乱数を用いて任意に設定し、「一日」の最初から数えて前記「送信すべき時間」が経過すれば前記バッテリ監視情報を送信することとした。
【0031】
ここで、「一日」とは当該無線通信機器の電源が起動されたときから進行する時間であるので、(1)無線通信機器の電源が起動される時刻がまちまちであれば、「一日」の始まりもまちまちである。しかし(2)無線通信機器の電源が起動される「一日」の始まりの時刻が統一されることもある。これは、電源部103が共通の電池から供給される場合、又は共通の電源アダプタから供給される場合に、各無線通信機器が一斉に電源ONされることにより発生し得る。
【0032】
本実施形態によれば、バッテリ監視情報を送信すべき時間を、「一日」の中で、乱数を用いて任意に設定し、「一日」の最初から前記「送信すべき時間」が経過すれば前記バッテリ監視情報を送信することとしたので、前述の(2)のように「一日」の始まりが各無線通信機器において統一されていても、無線通信機器から出されるバッテリ監視情報が衝突する確率は少ない。前述の(1)の場合、「一日」の始まりが各無線通信機器において統一されていないので、無線通信機器から出されるバッテリ監視情報が衝突する確率はさらに少なくなる。
【0033】
しかし前述の(1)(2)いずれの場合でも、「一日」の中で、各無線通信機器から出されるバッテリ監視情報が衝突する可能性もないとは言えない。このように衝突するケースに備えて、キャリアセンスした無線通信機器は、他の無線通信機器からの送信がされたと認識した場合には、自らは転送をしないで所定の転送待機時間待って、その転送待機時間の経過後に再度キャリアセンスするようにすることが望ましい。この「転送待機時間」を、全無線通信機器について一定に設定すると、再度キャリアセンス時間に重複が生じ、同時転送の状態が固定される可能性もあるので、各無線通信機器のキャリアセンス時間にばらつきを生じさせるために、「転送待機時間」にランダムな時間を付加することが好ましい。この付加時間も、無線通信機器ごとに乱数発生ソフトで設定すればよい。ここで、「転送待機時間」とは、キャリアセンスにより他の無線通信機器からの送信を認識した後、自らが再送信するまでの時間をいう。また、本発明の実施形態では、複数回リトライしてもバッテリ監視情報を送出できない場合は、次の「一日」、つまり翌日に送出するようにしている。
【0034】
また、バッテリ監視情報の衝突対策として、無線通信機器の製造時に、無線通信機器ごとにユニークな識別番号を付与し、各乱数発生ソフトが、自機の識別番号を基数として前記乱数を設定するようにしてもよい。これによれば各無線通信機器の識別番号がそれぞれ違っているので、それに乱数を付加した結果得られる数で同じものはなくなる。したがって、バッテリ監視情報が衝突する可能性はなくなる。
【0035】
このように、バッテリ監視情報を送信すべき時間を、「一日」の中で、乱数を用いて任意に設定した結果、各無線通信機器から出されるバッテリ監視情報を、時間軸上で図示したグラフが図5である。ただし図5では、前述の(2)のように、「一日」の始まりが各無線通信機器において統一されているという前提でグラフを描いている。
図5において、間欠受信の時間間隔を“T1”で示し、「一日」を“T2”で示し、バッテリ監視情報を上向の矢印で示し、バッテリ監視情報を送信すべき時間どうしの間隔(すなわち1時間)を“T3”で示している。
【0036】
図5において無線通信機器は8台存在するものとし、第n番目の無線通信機器を“Txn”で表している。無線通信機器Tx1はバッテリ監視情報を送信すべき時間として第2時間を設定している。無線通信機器Tx2はバッテリ監視情報を送信すべき時間として第8時間を設定している。無線通信機器Tx3はバッテリ監視情報を送信すべき時間として第23時間を設定している。・・・無線通信機器Tx7はバッテリ監視情報を送信すべき時間として第8時間を設定し、無線通信機器Tx8はバッテリ監視情報を送信すべき時間として第11時間を設定している。
【0037】
このように、バッテリ監視情報を送信すべき時間を、一日T2の中で、乱数を用いて任意に設定したので、バッテリ監視情報を送信すべき時間が重複する確率は少なくなる。しかし、無線通信機器Tx2と無線通信機器Tx7のように、バッテリ監視情報を送信すべき時間として設定された第8時間が重複することもある。この場合は、後からバッテリ監視情報を送信しようとした無線通信機器、例えばTx7が、無線通信機器Tx2からの送信を認識するので、自らは転送をしないで所定の転送待機時間待って、その転送待機時間の経過後に再度キャリアセンスすることになる。この転送待機時間を、図5の無線通信機器Tx7の時間軸で“T4”と表示している。
【0038】
いままで説明した実施形態では、人間の活動周期を参考にして「一日」という期間T2をまず設定し、それを24時間に区切り、0時〜1時を第1時間とし、1時〜2時を第2時間とし、・・・23時〜24時を第24時間とし、その中で、バッテリ監視情報を送信すべき時間を特定していた。このバッテリ監視情報を送信すべき時間を特定する基礎となる期間T2は「一日」に限られるものではない。一日よりも長い期間、例えば一ヶ月に設定しても良いし、一日よりも短い期間、例えば1時間に設定しても良い。
【0039】
また、バッテリ監視情報を送信すべき時間をT3=1時間ごとに区切って、これらの何れかの時間にバッテリ監視情報を送信することとしていたが、区切る単位は期間T2よりも小さければよく、「1時間」に限られるものではない。1時間よりも短い期間、例えば1分に設定しても良い。ただし、間欠受信する周期T1よりも短いものであってはならない。間欠受信する周期T1よりも短ければ、バッテリ監視情報を送信できないという事態が発生するおそれがあるからである。
【0040】
また、いままで説明した実施形態では、電源部103の機能をチェックした結果としてのバッテリ監視情報を送信することとしていた。しかしバッテリ監視情報以外に、自機の状態を示す状態監視信号を送信するのであれば、本発明の適用がある。例えば、ローバッテリーフラグをはじめて立てた時点からカウント値を記憶しておき、何時間あるいは何日ローバッテリー状態が継続していたかを示すローバッテリーカウント情報がある。
【0041】
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
101 送受信部
102 通信制御部
103 電源部
104 ヘルスチェック部
105 インターフェイス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークに接続された無線通信機器であって、
当該無線通信機器の指令又は接続された外部機器からの指令に基づいて情報信号を送信する情報信号送信手段と、
自機の状態を示す状態監視信号を送信する状態監視信号送信手段と、
他の無線通信機器から送信された無線信号を、第一の期間(T1)の経過ごとに受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した無線信号を、前記無線通信ネットワークを通して転送する転送手段と、
通信制御手段とを備え、
前記通信制御手段は、所定の第二の期間(T2)の中で、かつ、前記状態監視信号を送信することができる複数設定された時間の中から、前記状態監視信号を送信する時間を任意に選び、当該時間の経過により前記状態監視信号を送信するものであり、
前記複数設定されている時間どうしの間隔(T3)は、前記第一の期間(T1)よりも長いものである、無線通信機器。
【請求項2】
電池により電源を供給する電源供給手段と、前記電池の残量を検出する電池残量検出手段とをさらに有し、前記「自機の状態」には、前記電池残量検出手段により検出された電池の残量が、所定の閾値以下の状態が一定の期間継続したことが含まれる、請求項1に記載の無線通信機器。
【請求項3】
前記通信制御手段は、前記状態監視信号を送信すべき時間を、乱数を用いて設定する請求項1又は請求項2に記載の無線通信機器。
【請求項4】
前記無線通信機器は、ユニークな識別番号を有し、自機の識別番号を基数として前記乱数を用いる、請求項3に記載の無線通信機器。
【請求項5】
前記状態監視信号送信手段は、前記状態監視信号を送信しようとする時点で、キャリアセンスにより他の無線通信機器からの無線信号を認識した場合、前記状態監視信号の送信を、第四の期間(T4)だけ延期する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線通信機器。
【請求項6】
前記通信制御手段は、前記第四の期間(T4)を、乱数を用いて設定する請求項5に記載の無線通信機器。
【請求項7】
前記第二の期間(T2)の開始時点は、当該無線通信機器ごとに決定される請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線通信機器。
【請求項8】
前記第二の期間(T2)の開始時点は、無線通信ネットワークに接続された各無線通信機器に対して一律に決められる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線通信機器。
【請求項9】
複数の無線通信機器どうしを接続する無線通信ネットワークであって、
請求項1から請求項8の何れか1項に記載の無線通信機器を構成端末に含む無線通信ネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98906(P2013−98906A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242267(P2011−242267)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(312001937)株式会社パトライト (15)
【Fターム(参考)】