説明

無線通信端末およびその基地局サーチ方法

【課題】端末の使用状況に応じ基地局サーチ周期を決定し、受信性能と省電力性能のバランスを最適化することのできる無線通信端末の提供。
【解決手段】無線通信端末は、着信履歴を記録する着信履歴記録部と、基地局のサービス圏外であると判定した時点から遡った所定の期間における着信頻度が所定のしきい値より低い場合に、長い基地局サーチ周期に変更するサーチ周期判定部と、を備える。無線通信端末は、基地局のサービス圏外であると判定すると(ステップS002のYES)、過去一定期間の発着信データを参照し(ステップS003)、その結果に応じて基地局のサーチ周期(基地局サーチモード)を決定する(ステップS004)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末およびその基地局サーチ方法に関し、特に、基地局サーチ周期を変更する機能を備えた無線通信端末およびその基地局サーチ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無線通信端末は、同期が取れている在圏状態にある無線基地局から遠ざかる等して、受信レベルが低下し、サービスエリア圏外の状態に移行した場合、全チャンネルサーチと称される方法等の基地局サーチを周期的に行い、他の基地局のシステムサービス圏内に移行し、通信可能な状態を維持する動作を行う。
【0003】
また一般に基地局サーチは、無線通信端末の受信検波回路や制御部を動作させる必要があるため、その周期次第で電力消費が著しくなり、無線端末の駆動時間を縮めてしまう。そこで、例えば、圏外状態が一定時間に継続すると、基地局サーチ周期を長くし、サーチ間隔を大きくする技術が知られている。
【0004】
上記方法のみでは、長期間圏外状態にあった場合に基地局サーチ周期が長くなり、システムサービス圏内への復帰が遅くなり着信を受けられないケースが発生する。そこで、特許文献1には、受信レベルの増減傾向によって、基地局サーチ周期を変化させる無線通信端末が提案されている。特許文献1には、例えば、受信レベルが増大傾向にある場合は、システムサービス圏内に近づいているものと推定し、基地局サーチ周期を通常の短い周期に戻し、受信性能を引き上げることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、ユーザ毎に無線通信端末を使用する曜日や時間帯に偏りがあることに着目し、過去の利用状況によって、受信部への電源供給間隔を制御することが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特間2006−140912号公報
【特許文献2】特開2006−20021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、従来より基地局サーチ周期を切り替えるタイミングが各種提案されているが、依然として、無線通信端末の実際の状況にそぐわない基地局サーチ周期が選択されてしまうという問題点がある。
【0008】
例えば、特許文献1記載の方式によれば、システムサービス圏内に近づいているときに、短かい基地局サーチ周期が採用されるが、実際に着信が無ければ、基地局サーチ周期を短くする必要は無かったということになる。
【0009】
特許文献2の方式も、同一曜日や同一時間帯にかなりの頻度で通信を行うような使い方をするユーザには有効であるが、使用する曜日・時間帯等にばらつきのあるユーザには不適当である。また、使用する曜日・時間帯等に一定の傾向が見られたユーザであっても、その様な傾向が継続するとは限らず、特定の曜日や時間帯について基地局サーチ周期を短くした分、省電力性能が落ちてしまう。
【0010】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、端末の使用状況に応じ基地局サーチ周期を決定し、受信性能と省電力性能のバランスを最適化することのできる基地局サーチ方法及び該基地局サーチ方法の実施機能を備えた無線通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の視点によれば、着信履歴を記録する着信履歴記録部と、基地局のサービス圏外であると判定した時点から遡った所定の期間における着信頻度に応じて基地局サーチ周期を変更するサーチ周期判定部と、を備えたこと、を特徴とする無線通信端末が提供される。
【0012】
本発明の第2の視点によれば、無線通信端末の基地局サーチ方法であって、前記無線通信端末が、着信履歴を記録するステップと、前記無線通信端末が、基地局のサービス圏外であるか否かを監視するステップと、基地局のサービス圏外であると判定した場合に、前記無線通信端末が、該時点から遡った所定の期間における着信頻度に応じて基地局サーチ周期を変更するステップと、前記無線通信端末が、前記変更した基地局サーチ周期を用いて、基地局サーチを実施するステップと、を含むこと、を特徴とする基地局サーチ方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基地局サーチ周期を最適化し、必要なときにのみ受信性能を引き上げるといった制御が可能となる。その理由は、過去の着信履歴を参照し、その都度、基地局サーチ周期の変更要否を判定するよう構成したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
続いて、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、携帯電話機に代表される本発明の第1の実施形態に係る無線通信端末の構成を表したブロック図である。図1を参照すると、本実施形態に係る無線通信端末は、アンテナ部10と、無線部20と、制御部30と、発着呼計測部40と、サーチ周期判定部50と、記憶部60と、外部インターフェイス部70とを備えて構成されている。
【0015】
制御部30は、無線通信端末の各部を制御する手段である。例えば、制御部30は、無線通信端末が待ち受け中である無線基地局(携帯電話基地局)から送出される報知情報や呼出情報等の信号の受信・復調処理、復調した信号の信号誤りの検出処理、後記する基地局サーチ処理等の音声通信及びパケット通信に必要な各種処理を無線部20に実行させる。
【0016】
発着呼計測部40は、制御部30の制御の下、発着呼を計測する。計測結果は、時間情報と対応付けられて、記憶部60に、着信履歴及び発信履歴として所定時間分、あるいは、所定回数分記録される。
【0017】
サーチ周期判定部50は、上記記憶部60に記録された着信履歴や発信履歴に基づき、
過去所定時間内における発着信の頻度を参照し、所定の規則に従い圏外時の基地局サーチ周期を長くするか否かを判定する。
【0018】
外部インターフェイス部70は、例えば、キー操作部、表示部、マイク/スピーカ等のユーザインターフェイス(図示省略)と制御部30とのインターフェイスを取る手段を表している。
【0019】
なお、説明上、発着呼計測部40及びサーチ周期判定部50は、制御部30と別の機能ブロックであるものとして説明するが、制御部30の機能に含む構成とすることができる。
【0020】
続いて、本実施形態に係る無線通信端末の動作について図面を参照して詳細に説明する。以下、説明の簡略のため、無線通信端末が長短2つの基地局サーチ(受信検波)モードを有しているものとして説明する。
【0021】
図2は、上記2つの基地局サーチ(受信検波)モードを説明するための図である。図2(a)は、図2(b)の周期T2よりも短い周期T1による基地局サーチ(ノーマル基地局サーチ)を行う第1の基地局サーチモードを表している。図2(b)は、図2(a)の周期T1よりも長い周期T2による基地局サーチ(省電力型基地局サーチ)を行う第2の基地局サーチモードを表している。図2中のTsは、無線部20の電源を立ち上げ、所望のチャネルサーチの周波数に同調し、基地局サーチに要する検波時間を表している。従って、上記2つのサーチモードの差異は、無線部20等が休止(不能動化)しているスリープ期間T1a、T2aの長さが異なる点にある。当然に、スリープ期間T2aの長い第2の基地局サーチモードの方が、一定時間における消費電力が少なく、省電力性に優れることになる。
【0022】
図3は、本実施形態に係る無線通信端末の基本動作を表したフローチャートである。図3を参照すると、サービスエリア圏内でいつでも送受信が可能である待ち受け状態(圏内)において、無線通信端末の制御部30は、発信・着信を記録する(ステップS001)。
【0023】
無線通信端末がサービスエリア圏外状態に移行したことが検知されると(ステップS002のYES)、制御部30は、記憶部60に記録された発着信データを参照し(ステップS003)、省電力型基地局サーチを実行する省電力モードへの移行条件が成立しているか否かを確認する(ステップS004)。
【0024】
ここで、省電力モードへの移行条件について説明する。省電力モードへの移行条件は、例えば、現時点から所定時間前までの直近の期間における着信回数が所定のしきい値より少ない場合に成立するよう設定される。これは、最近の着信数が多い場合に比べて、着信数が少ない場合は、即座に受信性能を引き上げる必要性も少ないことによる。
【0025】
また、例えば、省電力モードへの移行条件に、着信回数だけでなく、発信回数を加えることもできる。例えば、現時点から所定時間前までの直近の期間における発着信回数合計値が所定のしきい値より少ない場合に省電力モードへの移行が行われるようにすることができる。
【0026】
以上のような省電力モードへの移行条件が成立した場合は、制御部30は、図2(b)に例示した省電力型基地局サーチを実行する省電力モードに移行する(ステップS005)。一方、省電力モードへの移行条件が成立していない場合は、制御部30は、図2(a)に例示したノーマル基地局サーチを実行するノーマルモードに移行する(ステップS006)。
【0027】
また、省電力モードへの移行後は、所定の省電力モード解除条件が成立しているか否かの判定が行われる(ステップS007)。例えば、ユーザにより発信操作や折り畳み型筐体の開操作が行われた場合に省電力モードを解除する省電力モード解除条件が設定される。制御部30は、上記発信操作等の受け付け後、速やかにノーマルモードに復帰する(ステップS006へ)。これにより、速やかに最寄り基地局との同期を確立することが可能となる。
【0028】
上記省電力型基地局サーチ又はノーマル基地局サーチのいずれかで基地局を見つけた場合は、基地局との同期確立が行われ、サービスエリア圏内に移行、待ち受け状態に復帰する(ステップS001へ)。
【0029】
図4、図5は、本実施形態に係る無線通信端末が、システムサービスエリア圏外に移動した際に記録されている発着信状況と、選択される基地局サーチモードを表した図である。図4、図5とも圏外を検出した時点Tkから遡った時点Tjまでの過去一定期間Tmにおける着信回数がしきい値より少ない場合に省電力モードへ移行するという省電力モード移行条件が定められているものとする。
【0030】
図4は、過去一定期間Tm中の着信回数が多かった例を表している。過去一定期間Tmにおいて度々着信が行われており、無線通信端末の受信能力を高く保っておくべき状態である。このような場合は、無線通信端末は、ノーマルモードにて、短い周期で基地局サーチを実施する。
【0031】
図5は、過去一定期間Tm中の着信回数が少なかった例を表している。過去一定期間Tmにおいて発信はあるが、着信は少なく、無線通信端末の受信能力を常時高く保っておく必要は少ない状態であるといえる。このような場合は、無線通信端末は、省電力モードにて、省電力性能を重視し長い周期で基地局サーチを実施する。
【0032】
以上、説明したように、着信頻度に応じて最適な基地局サーチの周期を選択することにより、同期信号を短い時間で受信できる受信性能と、省電力性能とを両立することが可能となる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態の記載に限定されるものではなく、適用される無線通信端末の仕様等に応じて、各種の変形を加えることが可能である。例えば、上記した実施形態では、ノーマルモードと省電力モードの2段階の基地局サーチ周期を切り替える構成を説明したが、3段階以上の基地局サーチ周期を有し、上記着信頻度等に応じて、段階的に基地局サーチ周期を変更していく構成も採用可能である。
【0034】
また例えば、上記した実施形態では、短い基地局サーチ周期による基地局サーチを実行する動作モードをノーマルモードとし、過去一定期間の着信頻度が低い場合に、長い基地局サーチ周期による基地局サーチを実行する動作モード(省電力モード)に切り替えるものとして説明したが、長い基地局サーチ周期による基地局サーチを実行する動作モードをノーマルモードとし、過去一定期間の着信頻度が高い場合に、短い基地局サーチ周期による基地局サーチを実行する動作モード(受信性能重視モード)に切り替えるものとしてもよい。
【0035】
また、上記した実施形態では、着信(あるいは発着信)の回数により、最適な基地局サーチの周期を変更するものとして説明したが、その他着信(あるいは発着信)頻度を表す統計値を用いて基地局サーチの周期を変更することも可能である。また、上記に加えて、圏外を検出した時刻、受信レベル、エリア情報、受信電界レベルといった情報も併用して、上記基地局サーチの周期の変更結果を補正する構成も採用可能である。
【0036】
また、上記した実施形態では、本発明を携帯電話機に適用した例を挙げて説明したが、電子メール端末や携帯型パーソナルコンピュータ等、その他圏外時に周期的な基地局サーチを行う無線通信方式を採用する無線通信端末であれば、同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信端末の構成を表したブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る無線通信端末に備えられる2つの基地局サーチモードを説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る無線通信端末の基本動作を表したフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る無線通信端末の動作具体例を説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る無線通信端末の動作具体例を説明するための別の図である。
【符号の説明】
【0038】
10 アンテナ部
20 無線部
30 制御部
40 発着呼計測部
50 サーチ周期判定部
60 記憶部
70 外部インターフェイス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着信履歴を記録する着信履歴記録部と、
基地局のサービス圏外であると判定した時点から遡った所定の期間における着信頻度に応じて基地局サーチ周期を変更するサーチ周期判定部と、を備えたこと、
を特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記サーチ周期判定部は、前記所定の期間における着信回数が所定のしきい値より低い場合に、通常の基地局サーチより長い基地局サーチ周期に変更すること、
を特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
更に、発信履歴を記録する発信履歴記録部を備え、
前記サーチ周期判定部は、基地局のサービス圏外であると判定した時点から遡った所定の期間における発信頻度も参照して、前記基地局サーチ周期を変更すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記サーチ周期判定部は、前記基地局サーチ周期を長くした動作状態において、所定の端末操作が行われた場合には、前記基地局サーチ周期を短くすること、
を特徴とする請求項1乃至3いずれか一に記載の無線通信端末。
【請求項5】
無線通信端末の基地局サーチ方法であって、
前記無線通信端末が、着信履歴を記録するステップと、
前記無線通信端末が、基地局のサービス圏外であるか否かを監視するステップと、
基地局のサービス圏外であると判定した場合に、前記無線通信端末が、該時点から遡った所定の期間における着信頻度に応じて基地局サーチ周期を変更するステップと、
前記無線通信端末が、前記変更した基地局サーチ周期を用いて、基地局サーチを実施するステップと、を含むこと、
を特徴とする基地局サーチ方法。
【請求項6】
前記無線通信端末は、前記所定の期間における着信回数が所定のしきい値より低い場合に、通常の基地局サーチより長い基地局サーチ周期に変更すること、
を特徴とする請求項5に記載の基地局サーチ方法。
【請求項7】
更に、前記無線通信端末が、発信履歴を記録するステップを含み、
前記無線通信端末は、基地局のサービス圏外であると判定した時点から遡った所定の期間における発信頻度も参照して、前記基地局サーチ周期を変更すること、
を特徴とする請求項5又は6に記載の基地局サーチ方法。
【請求項8】
更に、前記無線通信端末は、前記基地局サーチ周期を長くした動作状態において、所定の端末操作が行われた場合には、前記基地局サーチ周期を短くすること、
を特徴とする請求項5乃至7いずれか一に記載の基地局サーチ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−160303(P2008−160303A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344649(P2006−344649)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】