説明

無線通信装置の配置支援システム

【課題】人間や物体の影響を含めたアンテナモデルと周囲環境モデルを用いて電波伝搬解析を行なうことで、適切なアンテナ配置を実現する無線通信装置の配置支援システム。
【解決手段】人間や物体の影響を含めたアンテナ特性を事前にモデル化したアンテナモデルと周囲環境モデルを用いて電波伝搬解析をシミュレーションする。この際、レイトレーシング法(イメージング法やレイラウンチ法)でも人間や物体の影響を含めた解析が可能になる。また、人間に取り付けられた無線通信装置の移動経路についてのみ電波伝搬解析を行うことで解析時間の短縮とメモリ節約が可能となる。また、シミュレータに表示した通信特性結果の中で、通信不能区間を選択することで、通信不能区間に到達したレイを表示することにより、解析空間内のどの対象物による反射、遮蔽が通信不能の原因になっているかを可視化することで、原因に合った対策を行い通信特性改善を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップとアンテナを有する無線通信装置を人間や物体に持たせた場合における無線通信装置の適切な配置位置の決定を支援する配置支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置(例えば、RFID)を人間や物体に取り付けた場合、人間や物体の誘電率の影響で、無線通信装置アンテナの特性は大きく変わる。従って、人間や物体の影響を含めたアンテナ特性を用いて設計を行なう必要がある。そこで、人間や物体の影響を含めたアンテナ特性解析手法の従来技術として、例えば、非特許文献1に記載されているFDTD(Finite Difference Time Domain、有限差分時間領域)法のように、解析空間全体をボクセルで分割し空間・時間領域での差分法によって逐次展開して計算することで電磁場解析を行なう手法が提案されている。
【0003】
また、無線通信装置の配置支援システムでは移動空間全体の解析が必要となるため、大規模空間を高速に解析する手法が求められている。そこで、大規模空間に対応できる高速解析手法の従来技術として、例えば、特許文献2のレイトレーシング法、特許文献3のイメージング法が提案されている。
【0004】
レイトレーシング(ray tracing、光線追跡)法は、電波の伝搬をレイの伝搬に近似し、一様な媒質中では直進し、異なる媒質境界では反射・屈折する、という光の進み方の原理により追跡し、送信点から受信点までの伝搬経路を幾何的に求める手法である。レイトレーシングでは受信位置に到達したレイのみ解析の対象にしているため、高速解析が可能になる。また、イメージング法はレイトレーシング法の一つで、反射面に対する鏡像位置を実像位置に置き換えて電波伝搬解析を行なう手法である。
【0005】
さらに、人間や物体の影響を含めたアンテナ特性を用いて、大規模空間を高速解析する手法の従来技術として、特許文献1に記載されているように、実際の環境における実効的なアンテナ特性を用いてレイラウンチ法解析を行なう際、送信点から放射される光線の中で、放射特性の主要部分のみのレイを用いて計算する手法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−333451号公報
【特許文献2】特開2001−28570号公報
【特許文献3】特開平10−62468号公報
【非特許文献1】IEICE TRANS COMMUN VOL.E86-B,NO.6 JUNE 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の非特許文献1に示された方法では、空間をボクセルで分割してシミュレーションを行なうため、解析空間の増加と共に演算時間が増加する。また、シミュレーションの精度を確保するためにはボクセルの大きさを波長の1/6以下にする必要があり、周波数の増加と共に演算時間も増加する課題がある。さらに、移動経路を考慮した解析を行なう場合、経路上の1点毎に電界強度を計算する必要があるが、1点の計算を行なうためにも解析空間全体の解析を行なう必要があり、計算時間の増大が避けられない。また、解析空間全体をボクセルで分割し、差分法によって逐次展開して計算するため、解析空間のある1点で通信不能になった場合、問題を起こした原因の特定が困難である。
【0007】
また、上記の特許文献2と特許文献3に示された方法では、遠方界を用いて解析を行なうため、アンテナと人間や物体の位置が接近している場合の解析には向いていない。
【0008】
また、上記の特許文献1に示された方法では、送信点から放射される光線の中で、放射特性の主要部分のみのレイを用いて計算を行なっているため、解析精度が落ちる。また、携帯機から送信する場合を想定していて、固定した受信位置での解析について述べられており、人間や物体のような移動を伴う解析には対応していない。
【0009】
また、マルチパス環境での移動状況・入退室状況を確実に把握するためには、適切なアンテナ配置が求められるが、適切なアンテナ配置を実現するためには、問題を起こしている原因の特定と対策を対話的に行なう必要がある。しかし、上記のいずれの特許文献と非特許文献に記載された方法においては、このような対話処理には対応していないという課題がある。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みて、無線通信装置を取り付けた人間や物体の影響を含めたアンテナ特性を用いて電波伝搬解析を行なうことで、適切なアンテナ配置を実現する無線通信装置の配置支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
ICチップとアンテナをもつ無線通信装置が基地局と通信するシミュレーションを行う無線通信装置の配置支援システムにおいて、
人間又は物体に取り付けられた前記無線通信装置のアンテナ遠方界全方向パターンを作成するアンテナモデル作成部と、前記アンテナ遠方界全方向パターンと周囲環境モデルを用いて解析空間を対象として電波伝搬解析を行う解析実行部と、を有し、
前記アンテナモデル作成部は、前記無線通信装置のアンテナの種類、形状、特性を入力するアンテナ入力手段と、前記無線通信装置を取り付ける人間又は物体の形状、特性、取り付け位置を入力する被取り付け体入力手段と、人間又は物体の影響を受けた後の前記アンテナの遠方界全方向パターンを作成するアンテナ遠方界全方向パターン作成手段と、前記作成されたアンテナ遠方界全方向パターンを記憶するアンテナモデルDBと、を備え、
前記解析実行部は、前記アンテナモデルDBから対象となるアンテナモデルを選択するアンテナモデル選択手段と、前記無線通信装置と基地局を含む周囲環境の情報を入力する周囲環境モデル入力手段と、前記アンテナモデルと前記周囲環境モデルを用いて解析空間を対象とする解析を行なう電波伝搬解析手段と、前記対象とした解析空間の電波強度を表示し出力する表示出力手段と、備え、選択したアンテナモデルのアンテナ特性を用い、且つ前記周囲環境モデルを用いて、解析空間を対象とした電波伝搬解析を行い、前記電波伝搬解析の結果を表示出力する構成とする。
【0012】
また、前記無線通信装置の配置支援システムにおいて、前記無線通信装置を取り付ける人間の年齢、性別、身長並びに体重の身体形状、皮膚断層並びに含有水分量の特性、及び取り付け位置をパラメータとする人間モデルを作成して記憶する人間モデルDBを、前記アンテナモデル作成部にさらに備え、記人間モデルDBから適宜の人間モデルを前記被取り付け体入力手段に出力して、個人毎のアンテナモデルを提供する構成とする。さらに、前記人間又は物体に取り付けられた前記無線通信装置が移動する場合、前記無線通信装置におけるアンテナの移動経路を指定する移動経路入力手段と、前記移動経路上のメッシュの格子点のみを抽出して解析空間を決定する手段とを、前記解析実行部にさらに備え、前記移動経路上のメッシュ格子点に対応する解析空間を対象として電波伝搬解析を行なう構成とする。さらに、前記電波伝搬解析手段での電波伝搬解析によって得られた電波強度に対して閾値を設け、前記得られた電波強度が前記閾値との比較で前記無線通信装置による通信評価を行なう構成とする。さらに、前記表示出力手段に表示された解析空間における通信不能領域を選択することで、前記通信不能領域に到達するレイ(ray)を表示して通信不能の原因を可視化して特定する構成とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、人間や物体の影響を含めたアンテナ特性を事前にモデル化することで、レイトレーシング法(イメージング法やレイラウンチ法)でも人間や物体の影響を含めた解析が可能になる。また、事前に作成したアンテナモデルを用いて電波伝搬解析を行なうことで、計算時間を大幅に短縮できる。
【0014】
また、通信不能の原因を可視化できるため、原因分析作業と改善作業を対話的に行なうことが可能になり、適切なアンテナ配置が実現できる。さらに、本発明の無線通信装置を用いると、位置検出精度評価等の支援が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る無線通信装置の配置支援システムについて、図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0016】
「本発明の実施形態に係る無線通信装置の配置支援システムの概要とその全体構成」
まず始めに、本実施形態に係る無線通信装置の配置支援システムの概略を具体例を用いて説明する。図4、図8及び図9を参照すると、人間44又は配管(修理用の工具でもよい)46にICチップとアンテナ42を有する無線通信装置(例、RFIDタグ)を取り付けて、人間又は工具が基地局である基地局アンテナ81の設置されたゲート又は壁面を確実に通過したことを検知する検知システムにおけるシミュレータが本発明の対象とするものである。このような検知システムは、例えば、原子力プラント等の施設や工場等で利用可能であり、ゲート又は特定の検知部位(壁面)(無線通信装置からの電波を送受信する基地局)を誰が何時通過したかをチェックでき、また、運搬車両やプラントの定期点検・修理時に全ての工具にRFIDタグを取り付けて、点検・修理完了時に工具の持ち忘れの無いことをチェックするためのものとして利用可能である。
【0017】
そして、本実施形態に係る配置支援システムは、上述した検知システムのシミュレータであり、人間や物体の影響を含めたアンテナ特性を事前にモデル化してデータベース(DB)に格納しておき、このDBから適宜のモデル化したアンテナモデルを選択するとともに、周囲環境モデル(RFIDタグから又はRFIDタグへ電波を送受信する基地局である基地局アンテナ81を含めた電波伝搬の周囲環境)を作成して、この周囲環境モデルと上述の選択したアンテナモデルとを基にして、無線通信装置からの電波が基地局でどの程度受信できる電界強度であるかを解析するものである。
【0018】
また、基地局アンテナ(基地局)とRFIDタグとの通信不能の原因をシミュレータで可視化して、電波障害物体の分析作業とこの物体のシールドや位置変更などの改善作業をシミュレーションしながら実行しようとするものである。ここで、具体例を挙げると、基地局アンテナ81から送信された電波を無線通信装置43のタグアンテナ42が受信し、この受信電波のパワーで電源供給されてICチップ41動かし応答信号を返答することで基地局アンテナ81又は隣接の別の受信装置が基地局としてICチップ41からの応答信号を受信して人間又は物体(工具)の通過を検知することができる。この検知に際しては、人間又は物体が基地局装置(例、基地局アンテナ81、すなわち送受信機能を備えたアンテナ)設置部位の所定範囲内(図9のメッシュ範囲内)のいずれかの箇所で検知されればよいものである。
【0019】
次に、本発明の実施形態に係る無線通信装置の配置支援システムの構成について、図1を用いて説明する。無線通信装置の配置支援システムはアンテナモデル作成部1と解析実行部2によって構成される。
【0020】
アンテナモデル作成部1は、無線通信装置のアンテナの形状や特性等の入力手段11、無線通信装置を取り付ける人間や物体の入力手段12、例えばFDTD(有限差分時間領域)法などのような電磁流解析手段13、FDTDで求めた近傍界から等価定理によって遠方界解析を行なう手段14、アンテナ遠方界全方向パターン作成手段15、アンテナモデルDB16によって構成される。また、解析実行部2はアンテナモデル選択手段17、周囲環境モデル入力手段18、解析空間を対象とする電波伝搬解析手段19、出力手段20によって構成される。
【0021】
具体的に説明すると、ステップ1として、無線通信装置のアンテナ入力手段11は、人間や物体に取り付ける無線通信装置のアンテナの種類、形状、特性を入力する手段である。ステップ2として、無線通信装置を取り付ける人間や物体の入力手段12は、無線通信装置を取り付ける人間や物体の形状、特性、取り付け位置を入力する手段である。また、ステップ3として、FDTD法などのような電磁流解析手段13は、人間や物体の影響を受けた後のアンテナの電磁流を計算する手段である。この解析手法は上述したアンテナ、人間や物体の情報をもとに、例えば、マクスウェル方程式を差分化し、Yeeのアルゴリズムによって解析を行なうFDTD法で電磁流を計算する。
【0022】
図4にアンテナモデルの一例を示す。無線通信装置43はICチップ41とタグアンテナ42で構成される。人間や物体が接近した状態での無線通信装置のアンテナ特性は単独で扱う場合と異なるため、無線通信装置43を人間44の胸ポケットの位置に取り付けた場合のアンテナモデル45や、無線通信装置43を配管又は工具46に取り付けた場合のアンテナモデル47が解析対象になる。
【0023】
次に、ステップ4として、等価定理による遠方界解析手段14は、FDTD法で求めた近傍界の電磁流から遠方界を推定する手段である。FDTD法を普通に用いると遠方までの各ボクセルを毎回計算しなくてはならないため、膨大な計算時間とメモリを消費する。そこで、近傍の電磁界から遠方界の推定を行なう。具体的には、等価定理を用い、波源を囲む閉曲面を作り、その閉曲面内の電磁界を0としたとき、境界条件より閉曲面上を流れる電磁流を波源と見なし、そこからの放射を考える。このような等価定理により、FDTD法で求めた電磁流から遠方界を求める。
【0024】
さらに、ステップ5として、アンテナ遠方界全方向パターン作成手段15は、θ,φによるアンテナ遠方界全方向パターンテーブルや、アンテナ遠方界全方向パターンを作成する手段である。ここで、θとφは図5によって定義される。つまり、θはz方向からの回転角で、φはx方向からの回転角である。アンテナ位置oを基準とし、遠方の観測点をθ方向とφ方向に回転させながら観測した結果により、図6のθ,φによるアンテナ遠方界全方向パターンテーブル61や、図7のアンテナ遠方界全方向パターン71が求められる。次に、ステップ6として、アンテナモデルDB(データベース)16は、パターン作成手段15によって得られたアンテナ遠方界全方向パターン71を記憶する手段である。以上のステップを経てアンテナモデルの作成が完了する。
【0025】
次に、解析実行部2の説明を行なう。ステップ7として、アンテナモデル選択手段17は、アンテナモデル作成部1で作成したアンテナモデルDB16の中から対象となるアンテナモデル(例えば、図4に示すような人間モデルを含めたアンテナモデル45のアンテナ遠方界放射パターン71)を選択する手段である。さらに、ステップ8として、周囲環境モデル入力手段18は、周囲環境の形状、特性、位置を入力する手段である。図8で示すように、基地局アンテナ81(無線通信装置43のタグアンテナ42に電波を送信してICチップ41を動作可能としタグアンテナ42から電波受信する基地局の役割を果たすもの)や電波伝搬に影響を及ぼす物体82、配管46等のような周囲環境モデル83を作成するものである。
【0026】
また、ステップ9として、解析空間を対象とする電波伝搬解析手段19は、上述したアンテナ遠方界全方向パターン71とこの周囲環境モデル83を用いて、解析空間を対象とする電波伝搬解析を行なう手段である。すなわち、無線通信装置からの送信電波によって基地局でどのような電界強度になっているかの電波伝搬解析を行う。
【0027】
電波伝搬解析の対象となる解析空間は、例えば図9のようにx,y,zの軸方向でdx,dy,dzの間隔で配置されたメッシュ格子点によって形成される斜線部分に相当する。ある1点のメッシュ格子点の受信電力は図12の処理によって求められる。図11はレイトレーシング法で電波伝搬解析を行なう場合の例である。図11の受信点C(110)にレイr1(112)、レイr2(113)、レイr3(114)の複数のレイが到達した場合を例として説明する。
【0028】
図12の符号121はメッシュ格子点である受信点Cに到達したレイの成分である。レイの成分121は各レイ毎の入射角θri,φriおよびその電界強度Driにより表せる。符号122は上述したアンテナ遠方界全方向パターンG(θ,φ)であって、図6のテーブルから入射角θ,φにより求められる。
【0029】
レイriによる受信点Cでの電界強度は、レイriの入射角θri,φriに対する電界強度Driと、次の数1より図6から該方向でのアンテナ遠方界全方向パターンGriを選択し、√Gi(Giのルート)とDriの積で求められる(ここでiはレイの番号を示す)。G(θri,φri)=Gri (数1)
従って、すべてのレイによる受信点での電界強度Eは次の数2によって計算できる。
【数2】

【0030】
受信点Cでの受信電力Pはこの受信点での電界強度Eを用いて次の数3によって求められる。
【0031】
P=20logE (数3)
次に、ステップ10として、出力手段20は、図1に示す電波伝搬解析手段19による計算結果を出力する手段である。例えば、図9の解析対象空間の電界強度をメッシュ毎に色分けして表示を行なう手段などである。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る無線通信装置の配置支援システムの構成例によれば、人間や物体の影響を含めたアンテナ特性を事前にモデル化することで、レイトレーシング法(イメージング法やレイラウンチ法)でも人間や物体の影響を含めた解析が可能になる。また、予めステップ5で作成したアンテナモデルをレイトレーシング法の受信アンテナとして扱い、電波伝搬解析を行なっているため、高速解析が可能になる。
【0033】
「人間モデルの作成」
無線通信装置を取り付ける対象となる人間モデルの作成手段について述べる。解析精度を高めるためには人間モデルの高精度化が必要になる。人間の影響を含めたアンテナモデルを作成するにあたり、個人毎のアンテナモデルを提供するためには、人間の年齢や性別、身体形状(身長、体重)や特性(皮膚断層、含有水分量)をパラメータとする人間モデルの作成が必要である。
【0034】
次に、図2を用い、人間モデルを扱ってアンテナモデルを作成する無線通信装置の配置支援システムの構成を説明する。無線通信装置の配置支援システムは、図1の無線通信装置43を取り付ける人間44や物体46の入力手段12の前段階として人間モデルDB21を加えた構成となっている。また、人間モデルDB21は電磁波解析手法又は実測によって得られたデータを収集・整理し、図13のような人間モデルテーブル131を作成することで求められる。以後、アンテナモデル作成時にこの人間モデルDB21を用いて人間モデルを作成することで、個人毎のアンテナモデルを提供することが可能になり、無線通信装置の配置支援システムの解析精度が向上する。
【0035】
「電波伝搬解析を行うための解析空間」
本実施形態に係る配置支援システムの解析空間は図9の斜線部分となっている。全体について解析を行なうことも良いが、解析時間を短縮するためにはできるだけ解析空間を小さくして解析する必要がある。本実施形態では、解析空間を人間や物体の移動経路に絞って計算を行なう手段について述べる。
【0036】
具体例で示すと、人間44が無線通信装置43を胸ポケットに入れて歩く場合は(図4を参照)、解析空間全体のメッシュの格子点について通信特性を調べる必要はなく、解析空間全体のメッシュの格子点から無線通信装置43の移動経路上のメッシュ格子点のみ抽出し、それに対応する解析空間について通信特性を把握すれば無線通信装置の配置は可能になる。
【0037】
まず、図3を用いて無線通信装置の配置支援システムの構成について概要を説明する。無線通信装置の配置支援システムは、図1の周囲環境モデル入力手段17に移動経路入力手段31を追加し、さらに、解析空間を対象とする電波伝搬解析手段19の直前に移動経路上のメッシュの格子点を抽出して解析空間を決定する手段32を追加した構成となっている。移動経路入力手段31は、アンテナ移動経路を指定する手段である。移動経路は、図14(1)の線の形態や、図14(2)の面の形態や図14(3)の空間の形態がある。また、移動経路は人間や物体の動きを取り入れることで、人間や物体の動線管理が可能になる。
【0038】
移動経路上のメッシュの格子点を抽出し、解析空間を決定する手段32は解析空間全体のメッシュの格子点から無線通信装置の移動経路上のメッシュ格子点(斜線部分)のみ抽出し、それに対応する解析空間を対象として電波伝搬解析を行なう手段である。移動経路上のメッシュの格子点は、図10の斜線部分に相当する。
【0039】
従って、解析空間全体について計算を行なう必要はなく、移動経路のみを計算対象とすることで、解析時間の短縮とメモリの節約に貢献できる。上述の説明は一方通信の場合を例としたが、逆方通信と双方通信でも同様に適用できる。また、送・受信用無線通信装置は必ずしも1対1である必要はなく、複数対複数の場合でも適用できる。
【0040】
以上のように、無線通信装置43が移動する経路(図10に示すメッシュ格子点)に限って電波伝搬の解析を行う、すなわち図4に示す人間44に取り付けられた無線通信装置43のアンテナモデル45が図10の各メッシュ格子点に位置するときの基地局アンテナ81での受信感度の解析を行うものである。この際、無線通信装置43が移動経路のすべてのメッシュ格子点を通過するときに、基地局アンテナ81地点での受信感度が良好であれが問題はないが、図8に示す物体82などの周囲環境によって或るメッシュ格子点での受信感度が通信を行うのに不足していることがシミュレーションで分析可能であり、そのシミュレーション結果を表示して受信感度不足の原因を追跡することを可能とするのが本実施形態の特徴の1つである。
【0041】
「移動経路を指定した場合の通信特性の表示」
電波伝搬解析によって得られた結果は電波のレベルである。無線通信装置43の配置で無線通信装置が通信可能かどうかは、この電波の強さが無線通信装置の通信に必要な値になっているかどうかによって決まる。そこで、無線通信装置の通信に必要な最低限の電波の強さを閾値とし、その閾値を超えた場合は通信可能、反対の場合は通信不能と表示する手法について説明する。
【0042】
次に、図15と図16を用いて移動経路を指定した場合の例について詳細を説明する。これらの図では人間の動線を示しており基地局が受信する電界強度を示している。通信特性の表示手法としては、通信率で表示する形態や通信可能と通信不能に分けて表示する形態がある。また、通信率で表示する形態は、図15(1)のように移動経路の各区間の通信率をそれぞれ表示する形態や、図15(2)のように通信率をいくつの段階に分けて表示する形態がある。
【0043】
また、通信可能と通信不能に分けて表示する形態は、図16(1)のように色分けして表示する形態や、図16(2)のように違う背景で表示する形態や、図16(3)のように通信可能の区間は“O”、通信不能の区間は“×”の記号で表示する形態や、図16(4)のようにメッセージで表示する形態や、図16(5)のように一方を光らせて表示する形態や、図16(6)のように通信可能領域と通信不能領域の中で、片方のみ表示する形態がある。図16(6)では、色の濃い左側(読み取り不能)と色の薄い読み取り可能な右側のグレーで表示している(左右の中間は読み取り難い領域)。読み取り不能の領域こそ注目すべき箇所であるので注意を喚起する箇所を目立つ色や濃さで表している。なお、図16(6)の右側の階段状の表示は人間の動線内でメッシュ格子点毎の受信感度を示している。上述の例は平面表示を例として説明したが、立体表示やワイヤ表示でも同様に適用できる。
【0044】
ここで、通信可能・不能領域の閾値は、無線通信装置の特性に基づき、入力により指定する方法や、図16(7)のように、右端の縦バー(グレーを順に5段階に分けていて、縦バーの下端が通信可能領域、上端が通信不能領域に対応)をドラックすることで指定する方法がある。移動経路の通信特性表示画面は、拡大縮小や平面移動が可能で、図16(8)のように回転も可能であるため、様々な視点から結果分析することが可能である。電磁界の値を通信特性で表示することにより、通信可否の判断が迅速になると同時に、ヒューマンエラーの減少に貢献できる。
【0045】
「通信不能の原因についての可視化」
次に、移動経路を指定した場合を例として通信不能の原因についての可視化の概略を説明する。移動経路のすべての区間において、全部通信可能である必要はなく、移動経路上のある1つの区間で通信可能であれば、システムとしては通信可能と言える(移動する人間に設置された無線通信装置と基地局である基地局アンテナとの間で最低1つの区間で通信できれば最低限の通信可能)。ところで、移動経路全体にわたって全部通信不能の場合や通信可能区間を最大にするアンテナ配置が求められる場合は、通信不能の原因を特定し、その原因を解決する対策を行なう必要がある。そこで、本構成例では、例えばレイトレーシング法を用い、通信不能の原因をレイで可視化することで、通信不能を引き起こしている物体(電波障害物)の特定を行なう手法について説明する。
【0046】
レイトレーシング法はイメージング法とレイラウンチ法の2つの手法がある。以下、それぞれのレイの表示方法について図17と図18を用いて概要を説明する。イメージング法は、反射面に対する鏡像位置を実像位置に置き換えて計算を行なう電波伝搬解析手法である。図17のように、送信点Oから放射されたレイが反射面1で反射して受信点Cに到達するケースを例として手順を説明する。まず、反射面1を基準として、受信点Cの鏡像点Bを求める。送信点Oと点Bを結んで、反射面1との交点をAとする。送信点O、点A、受信点Cを順次結んだのが求めようとするレイになる。
【0047】
レイラウンチ法は、送信点から放射する電波の中で受信点を基準とする球或いは立方体に到達した部分について計算を行なう電波伝搬解析手法である。図18のように、送信点Oから放射されたレイが反射の法則により、受信点Cを基準とする球或いは立方体に到達するケースで、OAC、OCは求めようとするレイになる。
【0048】
キーボードやマウスで通信不能区間を選択すると、その通信不能区間に到達したレイを上記方法で計算し、レイの形状を3次元表示する。また、レイは、図19(1)のようにルート毎に色分けして表示する形態や、図19(2)のように線の太さによって表示する形態や、図19(3)のように線のタイプによって表示する形態がある。なお、無線通信装置43と基地局(例、基地局アンテナ81)との通信において、無線通信装置からの電界強度と基地局からの電界強度は、同様の傾向を示すので、図19では説明の都合上基地局からの電波伝搬解析に基づいて通信可能か否かを取り上げて図示説明している。
【0049】
また、表示されたレイ171の中で観察したいレイのみ強調表示する形態として、図20(1)のように強調したいレイのみを表示する形態(例えば、図23のr3)や、図20(2)のように強調したいレイを別色で表示する形態(例えば、図23のr1とr3)や、図20(3)のように強調したいレイのみを光らせて表示する形態がある。上述の説明は通信可能区間と通信不能区間を色分けして表示する形態を例として説明したが、通信表示の他の形態でも同様に適用できる。
【0050】
通信不能箇所で送信位置から受信位置までのレイを表示することにより、通信ルートの把握が正確かつ迅速になる。また、どのレイが合成波に悪い影響を与えるかを可視化するためには、レイの大きさだけでなく、位相も表示する必要がある。レイの大きさと位相を同時に表示する手段として、レイと合成波を複素空間で表示する方法を使う。複素空間で表示することにより合成波に影響を与えているレイを可視化することができる。レイの複素表示は図21の処理によって求められる。
【0051】
図12のメッシュ格子点に到達したレイの成分121と受信アンテナ遠方界パターン(複素数)122の値から、次の数4を用いて受信点でのレイriの電界強度を計算する。
【数4】

【0052】
211は上記の受信点でのレイriの電界強度であって、212のレイの強さEと213のレイの位相ωtで表示される。
【0053】
また、上記で求めたレイの強さ212とレイの位相213をもとに、次の数5を用いて、レイの複素表示実数部214とレイの複素表示虚数部215を求める。
【数5】

【0054】
上記の計算手順により、移動経路上のある一点に到達した直接波222と、反射波223、及び合成波221の複素表示実数部と虚数部を求め、その計算結果を図22の複素座標上に表示する。
【0055】
さらに、図23に示すように、上記の図22とレイのルート表示画面を関連付けると同時に、図24の処理によって操作を行うことで、通信不能の原因を可視化する。まず、レイの複素表示画面上で合成波221の強さに悪い影響を与えるレイ、例えばここでは反射波231を特定する処理241を行い、マウスやキーボードにより選択する処理242を行う。レイの複素表示画面とレイのルート表示画面の関連付けにより、レイのルート表示画面上の対応する反射波232が選択される処理243、及びその反射波の原因となる障害物233が選択される処理244が自動的に行われる。最後に、レイの複素表示画面上の反射波231、レイのルート表示画面上の対応する反射波232、及びその反射波の原因となる障害物233がセットで強調表示される。上述した方法により、通信不能の原因が可視化でき、対策対象の特定が正確かつ迅速になる。
【0056】
「通信不能の原因の分析と対策」
本構成例では、表示結果から通信不能の原因を分析し、対策を行なう方法について述べる。まず、図25に示すように、本実施形態に係る配置支援システムの出力結果分析処理251を行い、電波特性を改善する必要があるかどうかの判断処理252を行なう。必要ない場合は作業終了するが、改善必要がある場合は、調整作業が可能かどうかの判断処理253を行なう。調整不能の場合は作業終了する。
【0057】
可能の場合は図26(1)の障害物の位置・角度、基地局アンテナの位置・角度調整作業、移動経路、及び図26(2)の障害物をシールドする作業のいずれかにより調整作業254(シミュレータ上での作業)を行う。調整完了後、再解析作業255を行ない、出力結果分析処理251に戻る。このように繰り返し調整することにより、電波環境を改善する。
【0058】
「無線通信装置を利用した位置検出の精度評価」
本構成例では、本実施形態に関する無線通信装置を用いた位置検出精度評価システムについて述べる。位置検出システムとしては、図27のように無線端末から発射した電波を2つの基地局で受信し、到達時間を距離に置き換え、三角法を用いて位置座標を算出する方法がある。この方法では、無線端末から基地局までの通信が直接波であることを前提とするため、マルチパスのない環境では高精度が得られる。しかし、直接波が物体によって遮断された場合、基地局で受信した信号は反射波によるものであり、伝播経路が直接波に比べて長くなり、位置検出精度が落ちてしまう。
【0059】
図27(1)のようにマルチパスがない状況では、対象物の正確な位置273はルートR1,R2,R3により求められる。しかし、図27(2)のように対象物273と基地局271の間に物体272が配置する場合は、対象物273からの直接波が基地局271に届かず、ルートR21とR22の反射波を受信してしまう。ここでルートR1,R21+R22,R23を用いて三角法により位置座標を算出すると図27(3)のような検出結果274になる。本実施形態に係る配置支援システムを用いると、基地局で受信した信号が可視化できるため、正確な位置273から検出位置274がどのくらいズレたかの評価が可能となる。
【0060】
図28のように評価対象となる空間を予めいくつのエリアに分割し、それぞれのエリアで上述した方法を適用し精度評価を行ない、各エリアの精度情報を表示することにより精度マップを作成することができる。上述した構成例は2つの基地局を対象として説明を行なっているが、2つ以上の場合でも同様に適用できる。また、精度アップの作成は平面だけではなく、基地局の数を増やすことによって立体空間でも対応可能である。
【0061】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る配置支援システム(シミュレーションシステム)の特徴は、人間や物体の影響を含めたアンテナ特性を事前にモデル化し、このアンテナモデルを用いて電波伝搬解析を行うことであり、また、表示した通信特性結果の中で、通信不能区間を選択することで、この通信不能区間に到達したレイを表示すると同時にレイを複素空間で表示することにより、どの対象物による反射、遮蔽が通信不能の原因になったかを可視化し、原因に合った対策を行ない、通信特性の改善を図るものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信装置の配置支援システムの構成図である。
【図2】本実施形態に係る無線通信装置の配置支援システムで人間モデルを用いた場合の構成図である。
【図3】本実施形態に係る無線通信装置の配置支援システムで移動経路を指定した場合の構成図である。
【図4】本実施形態に関するアンテナモデルの概念図である。
【図5】本実施形態に関する遠方界と座標系の概念図である。
【図6】本実施形態に関するθとφによるアンテナ遠方界全方向パターンテーブルの一例である。
【図7】本実施形態に関するアンテナ遠方界全方向パターンの一例である。
【図8】本実施形態に関する周囲環境モデルの一例である。
【図9】本実施形態に関する、解析空間を対象とした電波伝搬解析の一例である。
【図10】本実施形態に関する、移動経路による電波伝搬解析の一例である。
【図11】本実施形態に関する、レイトレーシング法で電波伝搬解析を行なう場合の一例である。
【図12】本実施形態に関する、受信点での受信電力の計算手順図である。
【図13】本実施形態に関する人間モデルテーブルの一例である。
【図14】本実施形態に関する無線通信装置における移動経路の一例である。
【図15】本実施形態に関する、通信率で表示する通信特性結果の一例である。
【図16】本実施形態に関する、通信可能と通信不能に分けて表示する通信特性結果の一例である。
【図17】本実施形態に関する、イメージング法によってレイを表示するイメージ図である。
【図18】本実施形態に関する、レイラウンチ法によってレイを表示するイメージ図である。
【図19】本実施形態に関する、通信不能区間に到達した全てのレイを表示する一例である。
【図20】本実施形態に関する、通信不能区間に到達したレイの中で観察したいレイのみ強調表示する一例である。
【図21】本実施形態に関するレイの複素成分の計算手順図である。
【図22】本実施形態に関する、複素座標系でレイを表示するイメージ図である。
【図23】本実施形態に関する、通信不能の原因を可視化する手段の一例である。
【図24】本実施形態に関する、通信不能の原因の可視化手順図である。
【図25】本実施形態に関する、通信不能の原因となる部分について対策を行なう手順図である。
【図26】本実施形態に関する、通信不能の対策イメージ図である。
【図27】本実施形態に関する、三角法を用いた位置検出精度評価システムを示す一例である。
【図28】本実施形態に関する位置検出精度マップの一例である。
【符号の説明】
【0063】
1 アンテナモデル作成部
2 解析実行部
11 無線通信装置のアンテナ入力手段
12 無線通信装置を取り付ける人間や物体の入力手段
13 FDTD法などのような電磁流解析手段
14 等価定理による遠方界解析手段
15 アンテナ遠方界全方向パターン作成手段
16 アンテナモデルDB
17 アンテナモデル選択手段
18 周囲環境モデル入力手段
19 解析空間を対象とする電波伝搬解析手段
20 出力手段
21 人間モデルDB
31 移動経路入力手段
32 移動経路上のメッシュ格子点を抽出し解析空間を決定する手段
41 ICチップ
42 アンテナ
43 無線通信装置
44 人間
45 人間アンテナモデル
46 配管又は工具等の物体
47 物体アンテナモデル
61 θ,φによるアンテナ遠方界全方向パターン
71 アンテナ遠方界全方向パターン
81 基地局アンテナ
82 物体
83 周囲環境モデル
110 受信点C
111 送信店O
112 レイ1
113 レイ2
114 レイ3
121 メッシュ格子点に到達したレイの成分
122 受信アンテナ遠方界パターン(複素数)
123 受信点の電界強度
124 受信電力
131 人間モデルテーブル
171 レイの表示
211 受信点でのレイの電界強度
212 レイの強さ
213 レイの位相
214 レイの複素表示実数部
215 レイの複素表示虚数部
221 すべての波の合成波
222 直接波
223 反射波
231 複素表示画面でのレイ
232 レイのルート表示画面でのレイ
233 障害物
241 複素表示画面上で合成波に影響するレイの特定手段
242 複素表示画面上で合成波に影響するレイの選択手段
243 レイのルート表示画面上で合成波に影響するレイの選択手段
244 レイのルート表示画面上で合成波に影響するレイの原因となる障害物選択手段
245 合成波に影響するレイ及び障害物の強調表示手段
251 出力結果分析手段
252 電波特性を改善する必要はあるか判断する手段
253 調整作業の可否を判断する手段
254 調整手段
255 再解析手段
256 作業終了するかどうかを判断する手段
261 シールド
271 基地局
272 物体
273 対象物の正確な位置
274 対象物の検出位置
281 精度Aのエリア
282 精度Dのエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップとアンテナをもつ無線通信装置が基地局と通信するシミュレーションを行う無線通信装置の配置支援システムにおいて、
人間又は物体に取り付けられた前記無線通信装置のアンテナ遠方界全方向パターンを作成するアンテナモデル作成部と、前記アンテナ遠方界全方向パターンと周囲環境モデルを用いて解析空間を対象として電波伝搬解析を行う解析実行部と、を有し、
前記アンテナモデル作成部は、前記無線通信装置のアンテナの種類、形状、特性を入力するアンテナ入力手段と、前記無線通信装置を取り付ける人間又は物体の形状、特性、取り付け位置を入力する被取り付け体入力手段と、人間又は物体の影響を受けた後の前記アンテナの遠方界全方向パターンを作成するアンテナ遠方界全方向パターン作成手段と、前記作成されたアンテナ遠方界全方向パターンを記憶するアンテナモデルDBと、を備え、
前記解析実行部は、前記アンテナモデルDBから対象となるアンテナモデルを選択するアンテナモデル選択手段と、前記無線通信装置と基地局を含む周囲環境の情報を入力する周囲環境モデル入力手段と、前記アンテナモデルと前記周囲環境モデルを用いて解析空間を対象とする解析を行なう電波伝搬解析手段と、前記対象とした解析空間の電波強度を表示し出力する表示出力手段と、備え、
選択したアンテナモデルのアンテナ特性を用い、且つ前記周囲環境モデルを用いて、解析空間を対象とした電波伝搬解析を行い、前記電波伝搬解析の結果を表示出力する
ことを特徴とする無線通信装置の配置支援システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記無線通信装置を取り付ける人間の年齢、性別、身長並びに体重の身体形状、皮膚断層並びに含有水分量の特性、及び取り付け位置をパラメータとする人間モデルを作成して記憶する人間モデルDBを、前記アンテナモデル作成部にさらに備え、
前記人間モデルDBから適宜の人間モデルを前記被取り付け体入力手段に出力して、個人毎のアンテナモデルを提供する
ことを特徴とする無線通信装置の配置支援システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記人間又は物体に取り付けられた前記無線通信装置が移動する場合、前記無線通信装置におけるアンテナの移動経路を指定する移動経路入力手段と、前記移動経路上のメッシュの格子点のみを抽出して解析空間を決定する手段とを、前記解析実行部にさらに備え、
前記移動経路上のメッシュ格子点に対応する解析空間を対象として電波伝搬解析を行なう
ことを特徴とする無線通信装置の配置支援システム。
【請求項4】
請求項1、2または3において、
前記電波伝搬解析手段での電波伝搬解析によって得られた電波強度に対して閾値を設け、
前記得られた電波強度が前記閾値との比較で前記無線通信装置による通信評価を行なう
ことを特徴とする無線通信装置の配置支援システム。
【請求項5】
請求項1、2または3において、
前記表示出力手段に表示された解析空間における通信不能領域を選択することで、前記通信不能領域に到達するレイ(ray)を表示して通信不能の原因を可視化して特定する
ことを特徴とする無線通信装置の配置支援システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記通信不能の原因である電波障害物体の配置変更、シールド処理、または前記無線通信装置の移動経路変更を実行して、再度の電波伝搬解析を繰り返して行う
ことを特徴とする無線通信装置の配置支援システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記解析空間に前記無線通信装置と少なくとも2つの基地局を配置し、前記解析空間内の電波障害物体によって直接波が前記基地局に届かず反射波を受信する場合に、前記反射波のルートをレイ(ray)表示して可視化することで前記無線通信装置の位置検出の精度を評価可能とする
ことを特徴とする無線通信装置の配置支援システム。
【請求項8】
ICチップとアンテナをもつ無線通信装置が基地局と通信するシミュレーションを行う無線通信装置の配置支援システムにおいて、
人間又は物体に取り付けられた前記無線通信装置のアンテナ遠方界全方向パターンを作成するアンテナモデル作成部と、前記アンテナ遠方界全方向パターンと周囲環境モデルを用いて解析空間を対象として電波伝搬解析を行う解析実行部と、を有し、
前記アンテナモデル作成部は、前記無線通信装置のアンテナの種類、形状、特性を入力するアンテナ入力手段と、前記無線通信装置を取り付ける人間又は物体の形状、特性、取り付け位置を入力する被取り付け体入力手段と、人間又は物体の影響を受けた後の前記アンテナの遠方界全方向パターンを作成するアンテナ遠方界全方向パターン作成手段と、前記作成されたアンテナ遠方界全方向パターンを記憶するアンテナモデルDBと、を備え、
前記解析実行部は、前記アンテナモデルDBから対象となるアンテナモデルを選択するアンテナモデル選択手段と、前記無線通信装置と基地局を含む周囲環境の情報を入力する周囲環境モデル入力手段と、前記アンテナモデルと前記周囲環境モデルを用いて解析空間を対象とする解析を行なう電波伝搬解析手段と、前記対象とした解析空間の電波強度を表示し出力する表示出力手段と、備え、
前記人間又は物体に取り付けられた前記無線通信装置が移動する場合、前記無線通信装置におけるアンテナの移動経路を指定する移動経路入力手段と、前記移動経路上のメッシュの格子点のみを抽出して解析空間を決定する手段とを、前記解析実行部にさらに備え、
前記移動経路が指定された場合、前記基地局と前記無線送信装置の通信に必要な最低限の電波強度を閾値として、前記閾値未満の場合に通信不能、閾値以上の場合に通信可能を前記表示出力手段に前記移動経路の各区間毎に表示し、
前記表示の形態として、色分けして表示、異なる背景で表示、記号で表示、メッセージで表示、又は通信不能の区間のみを光らせて表示或いは濃色で表示、する
ことを特徴とする無線通信装置の配置支援システム。
【請求項9】
ICチップとアンテナをもつ無線通信装置が基地局と通信するシミュレーションを行う無線通信装置の配置支援システムにおいて、
人間又は物体に取り付けられた前記無線通信装置のアンテナ遠方界全方向パターンを作成するアンテナモデル作成部と、前記アンテナ遠方界全方向パターンと周囲環境モデルを用いて解析空間を対象として電波伝搬解析を行う解析実行部と、を有し、
前記アンテナモデル作成部は、前記無線通信装置のアンテナの種類、形状、特性を入力するアンテナ入力手段と、前記無線通信装置を取り付ける人間又は物体の形状、特性、取り付け位置を入力する被取り付け体入力手段と、人間又は物体の影響を受けた後の前記アンテナの遠方界全方向パターンを作成するアンテナ遠方界全方向パターン作成手段と、前記作成されたアンテナ遠方界全方向パターンを記憶するアンテナモデルDBと、を備え、
前記解析実行部は、前記アンテナモデルDBから対象となるアンテナモデルを選択するアンテナモデル選択手段と、前記無線通信装置と基地局を含む周囲環境の情報を入力する周囲環境モデル入力手段と、前記アンテナモデルと前記周囲環境モデルを用いて解析空間を対象とする解析を行なう電波伝搬解析手段と、前記対象とした解析空間の電波強度を表示し出力する表示出力手段と、備え、
前記人間又は物体に取り付けられた前記無線通信装置が移動する場合、前記無線通信装置におけるアンテナの移動経路を指定する移動経路入力手段と、前記移動経路上のメッシュの格子点のみを抽出して解析空間を決定する手段とを、前記解析実行部にさらに備え、
前記移動経路が指定された場合、前記基地局と前記無線送信装置の通信に必要な最低限の電波強度を閾値として、前記閾値未満の場合に通信不能、閾値以上の場合に通信可能を前記表示出力手段に前記移動経路の各区間毎に表示し、
前記通信不能の区間を選択することで、前記通信不能区間に到達したレイ(ray)を計算し前記レイの形状を3次元表示し、
前記3次元表示の形態として、前記レイのルート毎に色分けして表示、線の太さで表示、又は線のタイプで表示して、通信不能の原因を可視化して特定する
ことを特徴とする無線通信装置の配置支援システム。
【請求項10】
請求項9において、
前記表示されたレイの中で観察したいレイのみ強調表示する形態として、前記強調したいレイのみ表示、前記強調したいレイのみを別色で表示、又は前記強調したいレイのみを光らせて表示、して、通信不能区間における通信経路を把握する
ことを特徴とする無線通信装置の配置支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図16】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−130220(P2010−130220A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301451(P2008−301451)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】