説明

無線通信装置及び無線通信方法

【課題】 電力配分されたMIMO通信システムで適切な受信処理を行なう。
【解決手段】 空間分離された各受信ストリームから電力配分情報を取得し、各ストリームの電力配分を考慮してチャネル行列を推定することによって、本来あるべきMMSEプロセスを実現し、より正確なアンテナ重み行列を求め、空間分離性能を向上させる。電力配分情報がフィードバックされる前の受信信号を受信バッファに保持しておき、フィードバックされた電力配分情報を考慮したチャネル行列から求められたアンテナ受信重み行列を用いて、受信バッファ中の受信信号を改めて空間分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間多重を利用して複数の論理的なチャネルを形成したMIMO(Multi Input Multi Output)通信を行なう無線通信装置及び無線通信方法に係り、特に、送信側で何らかの重み付け(ビーム・フォーミング)して空間多重送信することにより、さらに通信容量を拡大する無線通信装置及び無線通信方法無線通信装置及び無線通信方法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、送信側で各送信ストリームに最適な送信電力の配分を行なうことでより大きな通信容量を得て伝送効率のよい空間多重伝送動作を行なう無線通信装置及び無線通信方法に係り、特に、電力配分された複数の送信ストリームからなる空間多重信号を受信側で性能よく空間分離する無線通信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0003】
旧来の有線通信方式における配線から解放するシステムとして、無線ネットワークが注目されている。無線ネットワークに関する標準的な規格として、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11などを挙げることができる。
【0004】
例えばIEEE802.11a/gでは、無線LANの標準規格として、マルチキャリア方式の1つであるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調方式が採用されている。OFDM変調方式では、各サブキャリアがシンボル区間内で相互に直交するように各キャリアの周波数が設定されている。サブキャリアが互いに直交するとは、任意のサブキャリアのスペクトラムのピーク点が常に他のサブキャリアのスペクトラムのゼロ点と一致していることを意味する。OFDM変調方式によれば、送信データを周波数の異なる複数のキャリアに分配して伝送するので、各キャリアの帯域が狭帯域となり、周波数利用効率が非常に高く、周波数選択性フェージング妨害に強い。
【0005】
OFDM送信機は、シリアルで送られてきた情報を情報伝送レートより遅いシンボル周期毎にシリアル/パラレル変換して出力される複数のデータを各サブキャリアに割り当ててサブキャリア毎に振幅及び位相の変調を行ない、その複数サブキャリアについて逆FFTを行なうことで周波数軸での各サブキャリアの直交性を保持したまま時間軸の信号に変換して送信する。また、OFDM受信機は、この逆の操作、すなわちFFTを行なって時間軸の信号を周波数軸の信号に変換して各サブキャリアについてそれぞれの変調方式に対応した復調を行ない、パラレル/シリアル変換して元のシリアル信号で送られた情報を再生する。
【0006】
また、IEEE802.11aの規格では最大で54Mbpsの通信速度を達成する変調方式をサポートしているが、さらなる高ビットレートを実現できる無線規格が求められている。
【0007】
無線通信の高速化を実現する技術の1つとして、MIMO(Multi−Input Multi−Output)通信が注目を集めている。これは、送信機側と受信機側の双方において複数のアンテナ素子を備え、空間多重した伝送路(以下、「MIMOチャネル」とも呼ぶ)を実現する通信方式である。送信機側では複数のアンテナに送信データを分配して送出する。一方、受信機側では複数のアンテナにより受信した空間信号に信号処理を行なうことによって、各信号をクロストークなしに取り出すことができる(例えば、特許文献1を参照のこと)。例えば、IEEE802.11nの標準化作業においては、IEEE802.11a/gで採用されているOFDMと、上述したMIMO通信方式とを組み合わせることにより、高速な無線通信を実現する方法を中心に議論が進められている。
【0008】
MIMO通信方式によれば、周波数帯域を増大させることになく、アンテナ本数に応じて通信容量の拡大を図り、通信速度向上を達成することができる。また、空間多重を利用するので、周波数利用効率はよい。MIMOはチャネル特性を利用した通信方式であり、単なる送受信アダプティブ・アレーとは相違する。
【0009】
一般的に、MIMOチャネルは、送信機周りの電波伝播環境(伝達関数)と、チャネル空間の構造(伝達関数)と、受信機周りの電波伝播環境(伝達関数)とで構成される。各アンテナから伝送される信号を多重する際、クロストーク(Crosstalk)が発生するが、受信側でチャネル特性に応じた受信処理を行なうことにより、多重化された各信号をクロストークなしに正しく取り出すことができる。
【0010】
図9には、MIMO通信システムを概念的に示している。MIMO送信機には、2本のアンテナ、すなわち送信アンテナ1、送信アンテナ2を備え、一方のMIMO受信機も2本の受信アンテナ1、受信アンテナ2を備えている。ここで、送信アンテナ1と受信アンテナ1の伝搬路を伝搬路a、送信アンテナ2と受信アンテナ1の伝搬路を伝搬路b、送信アンテナ1と受信アンテナ2の伝搬路を伝搬路c、送信アンテナ2と受信アンテナ2の伝搬路を伝搬路dとする。そして、送信機は、送信アンテナ1に対して送信データ系列X1を送信アンテナ2に対して送信データ系列X2を割り当て、受信機は、受信アンテナ1において受信データ系列Y1を受信し、受信アンテナ2において受信データ系列Y2を受信したものとする。この場合の伝搬路状況は、以下の式(1)のように表現することができる。
【0011】
【数1】

【0012】
このときのチャネル行列Hを次式(2)のように定義すると、次々式(3)のようにチャネル行列Hの逆行列H-1をアンテナ受信重み行列Wとして求めることができる。
【0013】
【数2】

【0014】
したがって、次式(4)のように受信信号系列Y1及びY2にチャネル行列Hの逆行列H-1を乗算することで、次々式(5)のように受信信号系列X1及びX2が求まる。
【0015】
【数3】

【0016】
なお、図9では送受信アンテナがともに2本の場合を示したが、アンテナ本数が2本以上であれば、同様にしてMIMO通信システムを構築することができる。送信側では、複数の送信データに空間/時間符号を施して多重化し、M本の送信アンテナに分配してMIMOチャネルに送信する。これに対し、受信側では、MIMOチャネル経由でN本の受信アンテナにより受信した受信信号を空間/時間復号して受信データを得ることができる。理想的には、送受信アンテナのうち少ない方の数(MIN[M,N])だけのMIMOストリームが形成される。
【0017】
MIMO受信機は、上述したように、空間多重された受信信号yから各ストリーム信号xを空間分離するためには、何らかの方法によりチャネル行列Hを取得し、所定のアルゴリズムによってチャネル行列Hから受信重み行列Wを求める必要がある。
【0018】
例えば、送信機から既知の信号系列からなるトレーニング信号を送信し、受信機側ではこのトレーニング信号を用いてチャネル行列Hを取得することができる。
【0019】
また、チャネル行列Hから受信重み行列Wを求める比較的簡単なアルゴリズムとして、Zero Force(ゼロ化規範)と(例えば、非特許文献1を参照のこと)、MMSE(Minimum Mean Square Error)(例えば、非特許文献2を参照のこと)が知られている。Zero Forceは、完全にクロストークを取り除く論理に基づいた方法であり、一方のMMSEは、信号電力と2乗エラー(クロストーク電力と雑音電力の和)の比を最大化する論理に基づいた方法である。MMSEは、受信機の雑音電力の概念を導入し、クロストークを意図的に発生させて受信重み行列Wを求める(チャネル行列を逆行列演算する)。両者を比較すると、雑音が大きい環境下では、MMSEは優れていることが知られている。
【0020】
上述したように、MIMO通信システムは、複数の送受信アンテナを並べることにより、周波数帯域を増大させずに通信容量を拡大することができるが、送信側で何らかの重み付け(ビーム・フォーミング)して空間多重送信することにより、さらにMIMO伝送の通信容量を拡大することができる。
【0021】
例えば、注水定理を用いて、送信電力をどのように配分したら全体の通信容量が最大になるかを解くことができる。(例えば、非特許文献3を参照のこと)。注水定理とは、各送信電力をチャネルの減衰に比例する量から引いた値に設定するという定理である。これによれば、良好なチャネルにより大きい送信電力を割り当てて、劣悪なチャネルには小さな電力しか割り当てないという電力配分を行なうことにより、MIMO通信システムの通信容量は最大になる。
【0022】
以下では、MIMO通信において、受信側のプロセスにMMSEを用いた場合について考察してみる。MMSEプロセスでは、トレーニング信号から作り出されるチャネル行列に対し、雑音電力をその対角要素に加算することで、干渉と雑音をバランスよくキャンセルし、所望の信号成分を得る動作を行なう。雑音が大きい環境下では、MMSEは優れている。
【0023】
ここで、等しい電力に割り当てられたトレーニング信号からチャネル行列を取得し、MMSEプロセスで信号を分離することは、ストリーム間に等しい電力が割り当てられていることを前提としている、という点に留意されたい。
【0024】
他方、送信側で何らかの重み付け送信(ビーム・フォーミング)してMIMO通信を行なう際、例えばチャネルの固有値の大きさに比例した電力割り当てを行なうと、通信容量が最大になる(前述)。
【0025】
ところが、送信側で電力分配されたストリームを受信側にてMMSE受信する際には問題が生じる。何故ならば、MMSEプロセスではストリーム間で等しい電力が割り当てられていることを前提としているからである。言い換えれば、送信ストリーム毎の電力配分値を考慮しないで、MMSEプロセスにより空間分離を行なおうとすると、正確なアンテナ受信重み行列が得られない、すなわち本来あるべきMMSEプロセスではないことになり、特性劣化を引き起こし、通信容量を最大化していないことになる。
【0026】
また、送信側でストリーム毎に割当て得電力配分値を受信側で知る方法として、送信側から電力配分値に関する情報を送信してもらうという方法が考えられる。しかしながら、この方法は情報伝送に寄与しない余分なヘッダ・フィールドを用意することになるので、通信容量の観点からは望ましくない。
【0027】
【特許文献1】特開2002−44051号公報
【非特許文献1】A.Benjebbour,H.Murata and S.Yoshida,“Performance of iterative successive detection algorithm for space−time transmission”,Proc.IEEE VTC Spring,vol.2,pp.1287−1291,Rhodes,Greece,May 2001.
【非特許文献2】A.Benjebbour,H.Murata and S.Yoshida,“Performance comparison of ordered successive receivers for space−time transmission”,Proc.IEEE VTC Fall,vol.4,pp.2053−2057,Atlantic City,USA,sept.2001.
【非特許文献3】G.J.Foschini、M.J.Gans共著“On limits of wireless communications in a fading environment when using multiple antennas”(Wireless Personal Communications,vol.6, no.3,pp.311−335,March 1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の目的は、複数のアンテナを持つ送信機と複数のアンテナを持つ受信機が対となって、空間多重を利用して複数の論理的なチャネルを形成したMIMO通信を好適に行なうことができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することにある。
【0029】
本発明のさらなる目的は、送信側で各送信ストリームにビーム・フォーミングが行なわれた空間多重信号を性能よく空間分離することができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することにある。
【0030】
本発明のさらなる目的は、送信側で各送信ストリームに最適な送信電力の配分を行なわれた空間多重信号を、MMSEプロセスに従いながら性能よく空間分離して伝送特性の向上に寄与することができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、複数の電力配分された送信ストリームが空間多重された信号を複数のアンテナで受信する無線通信装置であって、
空間多重されたチャネルのチャネル行列を推定するチャネル行列推定部と、
推定されたチャネル行列からアンテナ受信重み行列を求め、各アンテナの受信信号に受信重み行列を乗算して複数の受信ストリームに分離する空間分離部と、
各ストリームの電力配分情報を推定する電力推定部とを備え、
前記チャネル行列推定部は、前記電力推定部により推定された各ストリームの電力配分を考慮してチャネル行列を推定する、
することを特徴とする無線通信装置である。
【0032】
本発明は、MIMO通信方式に関する。MIMO受信機は、チャネル行列Hを取得し、所定のアルゴリズムによってチャネル行列Hから受信重み行列Wを求め、空間多重された受信信号yにこの受信重み行列Wを乗算することによって各ストリーム信号xを空間分離することができる。
【0033】
MIMO受信機は、例えば、MMSEプロセスによってチャネル行列Hから受信重み行列Wを求めることができる。このMMSEアルゴリズムでは、トレーニング信号から作り出されるチャネル行列に対し、雑音電力をその対角要素に加算することで、干渉と雑音をバランスよくキャンセルし、所望の信号成分を得る動作を行なうので、雑音が大きい環境に適している。
【0034】
また、MIMO通信システムでは、送信側では、注水定理に従い、良好なチャネルにより大きい送信電力を割り当てるとともに、劣悪なチャネルには小さな電力しか割り当てないという電力配分を行なうことにより、MIMO通信システムの通信容量を最大にすることができる。
【0035】
ところが、MMSEプロセスではストリーム間で等しい電力が割り当てられていることを前提としていることから、送信側で電力分配されたストリームを受信側にてそのままMMSEプロセスにより空間分離を行なおうとすると、正確なアンテナ受信重み行列が得られないという問題がある。この場合、本来あるべきMMSEプロセスではないことになり、特性劣化を引き起こし、通信容量を最大化していないことになる。
【0036】
そこで、本発明に係るMIMO受信機では、送信ストリーム毎の電力配分値を考慮してチャネル行列を推定することによって、電力配分されたMIMO通信システムにおいて、本来あるべきMMSEプロセスを実現し、より正確なアンテナ受信重み行列を求めるようにした。この結果、空間分離性能を向上させ、ひいては受信機全体のパフォーマンス劣化を抑制することができる。
【0037】
例えば、前記電力推定部は、前記空間分離部により空間分離された各受信ストリームから電力配分情報を取得して、前記チャネル行列推定部にフィードバックし、前記チャネル行列推定部は、フィードバックされた各ストリームの電力配分を考慮してチャネル行列を推定することができる。
【0038】
この場合、フィードバックされるまでの間は、正確なアンテナ受信重み行列を用いずに受信信号を空間分離することになり、受信性能がよくないという問題がある。そこで、前記空間分離部により空間分離する前の各アンテナの受信信号を一時的に保持する受信バッファを設け、電力配分情報がフィードバックされる前に推定したチャネル行列を用いて空間分離が行なわれた各受信信号をこの受信バッファに保持するようにしてもよい。そして、前記空間分離部は、フィードバックされた電力配分情報を考慮して推定したチャネル行列から求められたアンテナ受信重み行列を用いて、前記受信バッファ中の受信信号を改めて空間分離するようにすればよい。
【0039】
例えば、空間多重信号に既知信号系列を含めるという通信方式が採用されている場合、前記チャネル行列推定部は、既知信号系列を基にチャネル行列を推定し、前記電力推定部は、空間分離後の各ストリームから取り出される既知信号系列から各ストリームの電力配分を算出することができる。ここで言う通信方式として、IEEE802.11a、IEEE802.11g、又はHiperLAN/type2などを挙げることができる。
【0040】
また、空間多重通信には、周波数軸上で互いに直交する複数のサブキャリアにOFDMマッピングするOFDM伝送方式を適用することができる。このような場合、前記電力推定部は、空間分離後の各ストリームのユーザ・データに含まれるパイロット・キャリアなどの既知信号系列の受信電力に基づいて各ストリームの電力配分を算出することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、複数のアンテナを持つ送信機と複数のアンテナを持つ受信機が対となって、空間多重を利用して複数の論理的なチャネルを形成したMIMO通信を好適に行なうことができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することができる。
【0042】
また、本発明によれば、送信側で各送信ストリームにビーム・フォーミングが行なわれた空間多重信号を性能よく空間分離することができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することができる。
【0043】
また、本発明によれば、電力配分されたMIMO通信システムにおいて適切な受信処理を実現することができる。すなわち、本発明に係る受信機は、送信側で各送信ストリームに最適な送信電力の配分を行なわれた空間多重信号を、MMSEプロセスに従いながら性能よく空間分離して伝送特性の向上に寄与することができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することができる。
【0044】
本発明を適用したMIMO受信機によれば、無駄なヘッダ領域の付加による伝送効率の劣化を抑えつつ、MMSEの基準に準じた空間分離を行なうことができる。
【0045】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0047】
本発明は、それぞれ複数のアンテナを持つ送信機と受信機が対となって空間多重信号の伝送を行なうMIMO通信に関する。MIMO通信方式では、送信機において複数のアンテナに送信データを分配して送出し、受信機では複数のアンテナにより受信した空間信号に信号処理を行なうことによって、各信号をクロストークなしに取り出す。MIMO通信方式によれば、周波数帯域を増大させることになく、アンテナ本数に応じて通信容量の拡大を図り、通信速度向上を達成することができる。また、空間多重を利用するので、周波数利用効率はよい。
【0048】
A.システム構成
図1及び図2には、本発明の一実施形態に係るMIMO送信機及びMIMO受信機の構成をそれぞれ示している。図示の送受信機はそれぞれ2本のアンテナを持ち、2系統のMIMO送受信ストリームが形成されることになるが、本発明の要旨はストリーム数に限定されない。
【0049】
また、図示の通信システムは、OFDM変調方式を併用したMIMO_OFDM通信システムである。OFDM変調方式は、各サブキャリアがシンボル区間内で相互に直交するように各サブキャリアの周波数を設定したマルチキャリア伝送方式である。サブキャリアが互いに直交するとは、任意のサブキャリアのスペクトラムのピーク点が常に他のサブキャリアのスペクトラムのゼロ点と一致していることを意味する。OFDM変調方式によれば、周波数利用効率が非常に高く、周波数選択性フェージング妨害に強い。
【0050】
データ発生器100から供給される送信データは、スクランブラ102においてスクランブルが掛けられる。次いで、符号化器104で誤り訂正符号化を施さられ。この際の符号化器の種類としては、例えばIEEE802.11aであればR=1/2、K=7の畳み込み符号器などが採用されている。そして、符号化信号はデータ振り分け器106に入力され、ストリーム毎に振り分けられる。
【0051】
各MIMO送信ストリームでは、ストリーム毎に与えられたデータレートに従って、送信信号をパンクチャ108又は109によりパンクチャし、インターリーバ110又は111によりインターリーブし、マッパー112又は113によりIQ信号空間にマッピングして複素ベースバンド信号となる。周波数領域に並んだ各サブキャリアをIFFT114又は115を通過して時間軸信号に変換した後に、ガード・インターバルを付加する。そして、デジタル・フィルタ118又は119にて帯域制限した後、DAコンバータ120又は121にてアナログ信号に変換し、RF部122又は123にて適当な周波数帯にアップコンバートしてから、それぞれの送信アンテナから伝搬路に送出される。
【0052】
他方、MIMOチャネルを通してMIMO受信機に届いたデータは、それぞれのMIMO受信ストリームにおいて、RF部232又は233でアナログ処理し、ADコンバータ230又は231によりデジタル信号に変換した後、デジタル・フィルタ228又は229に入力される。そして、同期回路226にてパケット発見、タイミング検出、周波数オフセット補正などの処理が行なわれた後、データ送信区間の先頭に付加されたガード・インターバルをガード除去部224又は225により除去する。そして、FFT222又は223により時間軸信号が周波数軸信号となる。
【0053】
チャネル推定部220は、MIMO受信ストリーム毎に得られた信号から送受信アンテナ毎にチャネル推定し、受信アンテナ数×送信アンテナ数の要素を持つチャネル行列Hとして表現する。
【0054】
アンテナ受信重み行列演算部218は、推定されたチャネル行列Hから例えばMMSEアルゴリズムに基づいてアンテナ受信重み行列Wを計算する。MMSEは、信号電力と2乗エラー(クロストーク電力と雑音電力の和)の比を最大化する論理に基づいた方法であり、チャネル行列に対し雑音電力をその対角要素に加算することで、干渉と雑音をバランスよくキャンセルし、所望の信号成分を得る動作を行なう。MMSEは、雑音が大きい環境下では特に優れている。
【0055】
アンテナ受信重み行列乗算部216は、元々の受信信号とアンテナ受信重み行列Wとの行列乗算を行なうことで空間多重信号の空間復号を行ない、ストリーム毎に独立した信号系列を得る。
【0056】
なお、電力配分されたMIMO通信システムでは、空間分離された各受信ストリームから電力配分情報を取得し、チャネル推定部220は、この電力配分情報を考慮してより正確なチャネル行列Hを得るようにしている。この場合、以前のチャネル行列Hを基に算出されるアンテナ受信重み行列Wもより正確な値となる(すなわち本来のMMSEプロセスを実現することができる)ので、空間分離性能を向上させ、ひいては受信機全体のパフォーマンス劣化を抑制することができる。但し、電力配分情報の取得や、電力配分に基づいた空間分離に関する詳細については後述に譲る。
【0057】
チャネル等価回路214は、ストリーム毎の信号系列に対し、さらに残留周波数オフセット補正、チャネル・トラッキングなどを施す。そして、デマッパー212又は213はIQ信号空間上の受信信号をデマップし、デインターリーバ210又は211はデインターリーブし、デパンクチャ208又は209は所定のデータレートでデパンクチャした後、データ合成部206によりMIMO受信ストリーム毎の受信信号を1本のストリームに合成する。このデータ合成処理は送信側で行なうデータ振り分けと全く逆の動作を行なうものである。そして、復号器204にて軟判定により誤り訂正復号した後、デスクランブラ202によりデスクランブルし、データ取得部200は受信データを取得する。
【0058】
MIMO受信機は、空間多重信号から各受信ストリームを空間分離するためには、何らかの方法によりチャネル行列Hを取得し、所定のアルゴリズムによってチャネル行列Hから受信重み行列Wを求める必要がある。
【0059】
B.チャネル行列の取得方法
上式(2)で示されるチャネル行列Hは、一般的には、送信側並びに受信側で既知の系列を送受信することで、送受アンテナ組み合わせ分の経路の伝搬路(式(2)の例で言えば、a、b、c、d)を行列形式に並べたものである。送信側アンテナ本数がNで受信側アンテナ本数がMのときは、チャネル行列はM×N(行×列)の行列となる。したがって、M×N個の既知系列すなわちトレーニング信号を送信機から受信機へ送信すればよいことになる。
【0060】
ところが、複数のトレーニング信号を同時に無対策で送信すると、受信側ではどのアンテナから送信されたものかが判別することができなくなる。そこで、本実施形態では、送信機側から送信アンテナ毎のトレーニング信号を時分割(すなわち時間的に直交させて)送信し、受信機側のチャネル推定部220では各受信アンテナで受信したトレーニング信号を基にチャネル行列Hを取得するという時分割法を適用する(図3を参照のこと)。
【0061】
また、トレーニング信号を時分割送信する際に、各MIMOチャネル用のトレーニング信号を挿入する位置をサブキャリア毎に入れ替えるトーン・インターリーブ操作を行なうようにしてもよい。トーン・インターリーブは、周波数軸上の直交性を利用したチャネル行列の取得方法である。トレーニング系列をトーン・インターリーブする目的は、各アンテナからの電力の不要なピークを避け、劣悪なクロストーク・チャネルを通って受信するMIMOストリームの受信ゲインをすべての受信ブランチにわたって均一化することにある、と言われている。
【0062】
C.MIMO通信システムにおける電力配分
MIMO通信システムは、複数の送受信アンテナを並べることにより、周波数帯域を増大させずに通信容量を拡大することができる。ここで、送信側で何らかの重み付け(ビーム・フォーミング)して空間多重送信することによって、さらにMIMO伝送の通信容量を拡大することができる。
【0063】
例えば、非特許文献1には、複数のストリームを用いて多重伝送を行なう際の通信容量がいくらになるのかが定量的に示されている。各受信アンテナでの平均の雑音電力をN、nt本のアンテナで電力Sの信号を送信し、nr本のアンテナで受信したとすると、当該MIMO通信システムの通信容量C[bits/sec/Hz]は、下式のように表される。但し、λiはi番目のストリームの固有値である。
【0064】
【数4】

【0065】
実際の通信システムでは、SN比の良いストリーム(固有値の大きいストリーム)からSN比の悪いストリーム(固有値の小さいストリーム)まである。このため、各ストリームへの電力配分方法次第で、上式(5)で示した通信容量よりもさらに大きい通信容量が得られることが知られている。
【0066】
各ストリームの電力の総和が一定の拘束条件の下で、ラグランジェの未定定数法を用いて上式(5)を展開すると、下式(6)によりMIMOシステムの最大の通信容量が求まる。
【0067】
【数5】

【0068】
注水定理とは、上式(6)のように、各送信電力をチャネルの減衰に比例する量から引いた値に設定する定理である。つまり、注水定理によれば、良好なチャネルにより大きい送信電力を割り当てて、劣悪なチャネルには小さな電力しか割り当てないという電力配分を行なうことにより、MIMO通信システムの通信容量を最大にすることになる。
【0069】
例えば、通信品質に基づいて送信ストリーム毎に異なる変調方式を割り当てるときには、ストリーム間で通信品質が均等に近づくように、注水定理を用いて各ストリームの電力配分を決定することができる。注水定理によれば、帯域又は時刻により雑音電力が異なる場合に、測定した雑音電力と信号電力との和(基準電力)とが等しくなるように帯域又は時刻毎に電力を設定して通信を行なうことで、平均送信信号電力当たりの通信容量を大きくすることができる。基準電力は、例えば符号化に用いる符号の誤り訂正能力や、受信機側の受信状態のフィードバックに基づいて決定する。
【0070】
D.電力配分されたMIMO通信システムにおける最適な空間分離方法
前項Cで説明したように、良好なチャネルにより大きい送信電力を割り当て、劣悪なチャネルには小さな電力しか割り当てないという電力配分を行なうことにより、MIMO通信システムの通信容量を最大にすることができる。
【0071】
ところが、電力配分されたMIMO通信システムでは、本来あるべきMMSEプロセスを行なえないという問題がある。何故ならば、MMSEプロセスではストリーム間で等しい電力が割り当てられていることを前提としているからである。この場合、送信側で電力分配されたストリームを受信側にてそのままMMSEMMSEプロセスにより空間分離を行なおうとすると、正確なアンテナ受信重み行列が得られないため、特性劣化を引き起こし、通信容量を最大化していないことになる。
【0072】
そこで、本実施形態では、MIMO処理部300において、送信ストリーム毎の電力配分値を考慮してチャネル行列を推定することによって、電力配分されたMIMO通信システムにおいても本来あるべきMMSEプロセスを実現するようにした。この結果、より正確なアンテナ受信重み行列が求まるので、空間分離性能を向上させ、ひいては受信機全体のパフォーマンス劣化を抑制することができる。
【0073】
図5には、各ストリームの電力配分を考慮した空間分離を行なう場合にMIMO処理部400の構成を詳解している。
【0074】
MMSEプロセスを用いてMIMO処理を行なう場合、チャネル推定部220で得られたチャネル推定情報を行列表記した後、このチャネル行列HがMMSE処理部410に入力される。
【0075】
MMSE処理部410内では、ノイズ加算部219がチャネル行列Hの対角成分に対してノイズ電力を加算し、アンテナ受信重み行列演算部218がノイズ加算後の行列に対してMMSE基準でアンテナ受信重み行列Wとしてのチャネル行列Hの逆行列H-1を生成する。
【0076】
アンテナ受信重み行列乗算部216は、このようして得られた逆行列H-1を各アンテナからの受信信号に乗算することで、ストリーム毎の信号に空間分離する。
【0077】
送信側でストリーム毎に電力配分がなされている場合、電力推定部217において、ストリーム毎に空間分離した後の信号からパイロット信号成分を取り出し、各ストリームのパイロット信号の電力をそれぞれ検出することで、ストリーム毎の電力比[p1,p2]を算出する。そして、電力推定部217は、検出されたストリーム毎の電力比を、電力推定値フィードバック機構217−Aを用いてチャネル推定部220にフィードバックする。図示の例では、チャネル追従更新部220−Bは、チャネル行列更新タイミングにて電力配分値をチャネル推定部220に与えるようになっている。
【0078】
なお、ストリーム毎のデータ信号の仮判定を行なった結果、それらが正しい場合は、データ部の電力も適宜重み付けなどを行ない、参照することも可能である。
【0079】
チャネル推定部220は、フィードバックされた電力比[p1,p2]をチャネル推定値に乗算する。この際、チャネル行列Hの行方向にストリーム毎の電力配分値を乗算することになる。すなわち、元のチャネル行列をH=[h1,h2]とおくと、電力配分値を乗算した結果[p11,p22]がチャネル行列として出力される。
【0080】
MMSE処理部410では、電力配分値を反映させたチャネル推定行列[p11,p22]に対し、再度MMSEプロセスによる逆行列生成を行なう。暗転受信重み行列乗算部216は、このようして改めて得られた逆行列H-1を各アンテナからの受信信号に乗算することで、ストリーム毎の信号に空間分離する際に、各ストリームに割り当てられた電力配分をキャンセルすることができる。図示の例では、電力配分を考慮して得られたチャネル行列の逆行列と、先ほど受信信号バッファ221においてバッファリングしておいた信号を乗算することで、ストリーム毎の信号に分離処理を行なう。
【0081】
このようして得られた信号に対し、チャネル等化回路214にて、残留周波数オフセット処理、送受信タイミング誤差補正、位相雑音補正などを施し、デマッパー以降のデコード処理することで最適なMIMO処理を行なうことができる。なお、FFT222〜223により各アンテナからの受信信号をフーリエ変換してOFDM信号を得るまでの処理、並びに、MIMO処理部300において空間分離した後のチャネル等化回路214以降の処理は上述したと同様なので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0082】
このように本実施形態に係るMIMO受信機では、ストリーム毎の電力検出のために一旦MMSE処理を行ない、再度、信号分離のためにMMSE処理を行なうという構成を採ることで、電力配分されたMIMO通信システムにおいて最適なMMSE処理を可能にすることができる。
【0083】
ここで、フィードバックされるまでの間は、正確なアンテナ受信重み行列を用いずに受信信号を空間分離することになり、受信性能がよくないという問題がある。そこで、電力配分情報がフィードバックされる前に推定したチャネル行列を用いて空間分離が行なわれた各受信信号を一時的に保持しておき、フィードバックされた電力配分情報を考慮して推定したチャネル行列からアンテナ受信重み行列を求めた後、保持しておいた受信信号を改めて空間分離するようにすればよい。
【0084】
図6には、この場合のMIMO処理部400の構成を詳解している。
【0085】
MMSEプロセスを用いてMIMO処理を行なう場合、チャネル推定部220で得られたチャネル推定情報を行列表記した後、このチャネル行列HがMMSE処理部410に入力される。MMSE処理部410内では、ノイズ加算部219がチャネル行列Hの対角成分に対してノイズ電力を加算し、アンテナ受信重み行列演算部218がノイズ加算後の行列に対してMMSE基準でアンテナ受信重み行列Wとしてのチャネル行列Hの逆行列H-1を生成する。
【0086】
アンテナ受信重み行列乗算部216は、このようして得られた逆行列H-1を各アンテナからの受信信号に乗算することで、ストリーム毎の信号に空間分離する。このとき、次のステップで得られるより正確な逆行列で改めて空間分離するために、受信信号を受信信号バッファ221にてバッファリングしておく。
【0087】
送信側でストリーム毎に電力配分がなされている場合、電力推定部217において、ストリーム毎に空間分離した後の信号からパイロット信号成分を取り出し、各ストリームのパイロット信号の電力をそれぞれ検出することで、ストリーム毎の電力比を算出し、これを電力推定値フィードバック機構217−A経由でチャネル推定部220にフィードバックする。
【0088】
チャネル推定部220は、フィードバックされた電力比をチャネル推定値に乗算する。この際、チャネル行列Hの行方向にストリーム毎の電力配分値を乗算することになる。MMSE処理部410では、電力配分値が乗算されたチャネル推定行列に対し、再度MMSEプロセスによる逆行列生成を行なう。アンテナ受信重み行列乗算部216は、電力配分値を反映させて改めて求められた逆行列H-1を各アンテナからの受信信号に乗算することで、ストリーム毎の信号に空間分離する際に、各ストリームに割り当てられた電力配分をキャンセルすることができる。
【0089】
図示の例では、電力配分を考慮して得られたチャネル行列の逆行列と、先ほど受信信号バッファ221においてバッファリングしておいた信号を乗算することで、ストリーム毎の信号に対しより正確な空間分離処理を改めて行なう。
【0090】
このようして得られた信号に対し、チャネル等化回路214にて、残留周波数オフセット処理、送受信タイミング誤差補正、位相雑音補正などを施し、デマッパー以降のデコード処理することで最適なMIMO処理を行なうことができる。
【0091】
MIMO処理部400を図5又は図6のうちいずれの構成にするべきかは任意である。但し、受信信号バッファによる遅延が気になる場合には、受信信号バッファ221を持たせることをせず、図5に示したように、チャネル追従更新部220−Bとの併用を行なうようにしてもよい。この場合、チャネル行列更新タイミングにて電力配分値を考慮したチャネル行列の推定を同時に行ない、逆行列生成,ストリーム毎への信号分離への処理といったプロセスを踏むことになる。こうすることで、信号分離過程における遅延を最小限に抑制しながら、電力配分されたMIMO通信方式においてMMSEプロセスを用いて空間分離する際に、よりよい性能を引き出すことができるようになる。
【0092】
図7及び図8には、各ストリームの電力配分を考慮したMMSEプロセスによりMIMO受信処理したときの効果について、計算機シミュレーションを用いて検証した結果をそれぞれ示している。ここでは、IEEE802.11 TGnで定義されている2つのチャネル・モデルを使用し、送受信アンテナ数ともに2本の場合でシミュレーションしている。各図では、それぞれのチャネル・モデルにおいて、各SNR領域で適用された伝送レートでMIMO伝送したときのパケット・エラー率をプロットしている。
【0093】
図7及び図8を見て判るように、特に、低い伝送レートが適用される低めのSNR領域、すなわち雑音が大きな環境下で本発明の効果が顕著に現れている。MMSEは低めのSNR領域において、雑音と干渉のバランスを好適にとりながらキャンセルしストリーム分離を行なうことができるという特徴があるが、その様子が各図ではっきりと示されている。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0095】
本明細書では、アンテナ受信重み行列を得るためにMMSEアルゴリズムを採用したMIMO通信システムに本発明を適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。雑音電力を考慮しながらアンテナ重みを求めるその他のアルゴリズムを用いたMIMO通信システムに対しても、同様に本発明の効果を奏することができる。
【0096】
また、本明細書では、MIMO_OFDM通信システムに関する実施形態について説明したが、勿論、その他のMIMOシステム構成方法であっても同様に本発明を適用することができる。
【0097】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るMIMO送信機の構成を示した図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るMIMO受信機の構成を示した図である。
【図3】図3は、各送信アンテナからのトレーニング信号を時分割送信する方法を説明するための図である。
【図4】図4は、各送信アンテナからのトレーニング信号をトーン・インターリーブして送信する方法を説明するための図である。
【図5】図5は、各ストリームの電力配分を考慮した空間分離を行なう場合にMIMO処理部400の構成例を示した図である。
【図6】図6は、各ストリームの電力配分を考慮した空間分離を行なう場合にMIMO処理部400の他の構成例を示した図である。
【図7】図7は、各ストリームの電力配分を考慮したMMSEプロセスによりMIMO受信処理したときの効果を示した計算機シミュレーションの結果である。
【図8】図8は、各ストリームの電力配分を考慮したMMSEプロセスによりMIMO受信処理したときの効果を示した計算機シミュレーションの結果である。
【図9】図9は、MIMO通信システムを概念的に示した図である。
【符号の説明】
【0099】
100…データ発生器
102…スクランブラ
104…符号化器
106…データ振り分け部
108,109…パンクチャ
110,111…インターリーバ
112,113…マッパー
114,115…IFFT
116,117…ガード挿入部
118,119…デジタル・フィルタ
120,121…DAコンバータ
122,123…RF部
200…データ取得部
202…デスクランブラ
204…復号器
206…データ合成部
208,209…デパンクチャ
210,211…デインターリーバ
212,213…デマッパー
214…チャネル等化回路
216…アンテナ受信重み行乗算部
217…電力推定部
218…アンテナ受信重み行列演算部
219…ノイズ加算部
220…チャネル推定部
221…受信信号バッファ
222,223…FFT
224,225…ガード除去部
226…同期回路
228,229…デジタル・フィルタ
230,231…ADコンバータ
232,233…RF部
300,400…MIMO処理部
410…MMSE処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力配分された送信ストリームが空間多重された信号を複数のアンテナで受信する無線通信装置であって、
空間多重されたチャネルのチャネル行列を推定するチャネル行列推定部と、
推定されたチャネル行列からアンテナ受信重み行列を求め、各アンテナの受信信号にアンテナ受信重み行列を乗算して複数の受信ストリームに分離する空間分離部と、
各ストリームの電力配分情報を推定する電力推定部とを備え、
前記チャネル行列推定部は、前記電力推定部により推定された各ストリームの電力配分を考慮してチャネル行列を推定する、
することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記空間分離部は、信号電力と2乗エラーの比を最大化する論理に基づくMMSE(Minimum Mean Square Error)アルゴリズムに従ってアンテナ受信重み行列を算出し、前記受信信号と前記アンテナ受信重み行列を乗算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記電力推定部は、前記空間分離部により空間分離された各受信ストリームから電力配分情報を取得して、前記チャネル行列推定部にフィードバックする、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記空間分離部により空間分離する前の各アンテナの受信信号を一時的に保持する受信バッファをさらに備え、
前記電力推定部から電力配分情報がフィードバックされる前に前記チャネル行列推定部が推定したチャネル行列を用いて空間分離が行なわれた各受信信号を前記受信バッファに保持し、
前記チャネル行列推定部が前記電力推定部からフィードバックされた電力配分情報を考慮してチャネル行列を推定した後に、前記空間分離部は、該チャネル行列から求められたアンテナ受信重み行列を用いて前記受信バッファ中の受信信号を改めて空間分離する、
ことを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
空間多重信号には既知信号系列が含まれており、
前記チャネル行列推定部は、既知信号系列を基にチャネル行列を推定し、
前記電力推定部は、空間分離後の各ストリームから取り出される既知信号系列から各ストリームの電力配分を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
空間多重通信には、周波数軸上で互いに直交する複数のサブキャリアにOFDMマッピングするOFDM伝送方式が採用されており、
前記電力推定部は、空間分離後の各ストリームのユーザ・データに含まれるパイロット・キャリアの受信電力に基づいて各ストリームの電力配分を算出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
既知信号系列は、IEEE802.11a、IEEE802.11g、又はHiperLAN/type2のうちいずれかの規定に従う、
ことを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項8】
複数の電力配分された送信ストリームが空間多重された信号を複数のアンテナで受信する無線通信方法であって、
空間多重されたチャネルのチャネル行列を推定するチャネル行列推定ステップと、
推定されたチャネル行列からアンテナ受信重み行列を求め、各アンテナの受信信号に受信重み行列を乗算して複数の受信ストリームに分離する空間分離ステップと、
各ストリームの電力配分情報を推定する電力推定ステップとを備え、
前記チャネル行列推定ステップでは、前記電力推定ステップにおいて推定された各ストリームの電力配分を考慮してチャネル行列を推定する、
することを特徴とする無線通信方法。
【請求項9】
前記空間分離ステップでは、信号電力と2乗エラーの比を最大化する論理に基づくMMSEアルゴリズムに従ってアンテナ受信重み行列を算出し、前記受信信号と前記アンテナ受信重み行列を乗算する、
ことを特徴とする請求項8に記載の無線通信方法。
【請求項10】
前記電力推定ステップでは、前記空間分離ステップにおいて空間分離された各受信ストリームから電力配分情報を取得して、前記チャネル行列推定ステップにフィードバックする、
ことを特徴とする請求項8に記載の無線通信方法。
【請求項11】
前記電力推定ステップにより推定された電力配分情報がフィードバックされる前に前記チャネル行列推定ステップにおいて推定したチャネル行列を用いて空間分離が行なわれた各受信信号を一時的に保持する受信バッファリング・ステップをさらに備え、
前記チャネル行列推定ステップにおいて前記電力推定ステップからフィードバックされた電力配分情報を考慮してチャネル行列を推定した後に、前記空間分離ステップでは、該チャネル行列から求められたアンテナ受信重み行列を用いて前記の一時的に保持された受信信号を改めて空間分離する、
ことを特徴とする請求項10に記載の無線通信方法。
【請求項12】
空間多重信号には既知信号系列が含まれており、
前記チャネル行列推定ステップでは、既知信号系列を基にチャネル行列を推定し、
前記電力推定ステップでは、空間分離後の各ストリームから取り出される既知信号系列から各ストリームの電力配分を算出する、
ことを特徴とする請求項8に記載の無線通信方法。
【請求項13】
空間多重通信には、周波数軸上で互いに直交する複数のサブキャリアにOFDMマッピングするOFDM伝送方式が採用されており、
前記電力推定ステップでは、空間分離後の各ストリームのユーザ・データに含まれるパイロット・キャリアの受信電力に基づいて各ストリームの電力配分を算出する、
ことを特徴とする請求項12に記載の無線通信方法。
【請求項14】
既知信号系列は、IEEE802.11a、IEEE802.11g、又はHiperLAN/type2のうちいずれかの規定に従う、
ことを特徴とする請求項8に記載の無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−287690(P2006−287690A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106040(P2005−106040)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】