説明

無線通信装置及び車両の電子キーシステム

【課題】応答性を確保しつつ消費電力を低減することのできる無線通信装置を提供する。
【解決手段】この無線通信装置3は、携帯電話機4をポーリングするためのレスポンス要求信号を無線送信するとともに、レスポンス要求信号を受信した携帯電話機4から無線送信されるレスポンス信号を受信するとき、同レスポンス信号に含まれるIDコードを車載機2に送信する。ここでは、車載機2から送信されるリクエスト信号を受信するとき、レスポンス要求信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の通信対象から送信された無線信号を受信してこれを第2の通信対象に送信する無線通信装置、及び同無線通信装置を利用した車両の電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子キーを所持したユーザが車両ドアに接近することにより車両ドアが自動的に解錠されるとともに、ユーザが車室内に入ることによりエンジンの始動等が許可される、いわゆる電子キーシステムが周知である。この電子キーシステムでは、例えば車両ドアに設けられた送信アンテナから車両ドアの周辺に設定された通信エリアにリクエスト信号が送信される。そしてこのリクエスト信号の送信により電子キーがポーリングされる。また、リクエスト信号の受信に基づき識別コード(IDコード)を含むIDコード信号を送信する電子キーをユーザが所持する。すなわち、電子キーを所持したユーザが通信エリアに進入することによって電子キーからIDコード信号が送信される。そして、この電子キーから送信されたIDコード信号は、車両に設けられた受信アンテナにより受信されて、車両にかかる各種制御を実行する車両制御部に伝達される。この車両制御部では、受信されたIDコード信号に含まれているIDコードと、内蔵するメモリに記憶されているIDコードとの照合を行い、この照合を通じて、例えば車両ドアに設けられたドアロック機構により車両ドアの解錠を行う。このような電子キーシステムによれば、ユーザの直接的な手動操作によることなく車両の各種操作が自動的に行われるため、利便性が向上するようになる。
【0003】
一方、このような電子キーシステムでは、例えば特許文献1に見られるように、普及率の高い携帯電話機を電子キーとして利用する方法が提案されている。このような方法によれば、ユーザは携帯電話機を所持するだけで車両の各種操作を行うことができるため、専用の電子キーを所持する必要がない分だけ携帯性が向上するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−181119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、携帯電話機を電子キーとして利用する場合、携帯電話機及び車載機の間で無線通信を行う必要がある。そこで、携帯電話機に搭載された通信機能、例えばNFC(Near Field Communication)規格に基づく通信機能などを利用してそれらの間で無線通信を行うといった方法が考えられる。また、このような方法を採用する場合、携帯電話機及び車載機の双方と無線通信を行うことが可能な無線通信装置を車両に設けることが有効である。これにより、NFC規格に基づく通信機能が車載機に搭載されていない場合であっても、携帯電話機の保持するIDコードなどの情報を無線通信装置を介して車載機に送信することができるため、携帯電話機を電子キーとして利用することが容易となる。
【0006】
一方、このような方法を採用する場合、無線通信装置において携帯電話機をポーリングする必要がある。ただし、携帯電話機のポーリングのために無線通信装置から所定の無線信号を常時送信すると、無線通信装置の消費電力の増加が避けられないものとなる。このような消費電力の増加は、特に無線通信装置が電池を動作電源として駆動するものである場合に問題となる。すなわち、消費電力が増加すると電池の消耗が早くなる。したがって、電池切れが生じ易くなるため、頻繁な電池交換が必要になるなど、ユーザの負担が懸念される。また、電池切れで無線通信装置が動作しなくなると、携帯電話機及び車載機の間でIDコードなどの情報を授受することができなくなる。このため、車両ドアを解錠することができなくなるなど、電子キーシステムとして要求される機能にも支障をきたしかねない。
【0007】
なおこのような課題は、携帯電話機を電子キーとして利用する場合に限らず、適宜の電子機器を電子キーとして利用する場合においても共通する課題である。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、応答性を確保しつつ、消費電力を低減することのできる無線通信装置及び車両の電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、第1の通信対象をポーリングするためのレスポンス要求信号を無線送信するとともに、同レスポンス要求信号を受信した前記第1の通信対象から無線送信されるレスポンス信号を受信するとき、該レスポンス信号に含まれている情報を第2の通信対象に送信する無線通信装置であって、前記第2の通信対象から送信されるトリガ信号を受信するとき、前記レスポンス要求信号の送信を行うことを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、第2の通信対象から送信されたトリガ信号を受信したときにレスポンス要求信号が送信される。これにより、レスポンス要求信号を常時送信する場合と比較すると、レスポンス要求信号の送信頻度が低下するため、消費電力を低減することができるようになる。また、トリガ信号の送信間隔に応じてレスポンス要求信号の送信間隔が設定されるため、トリガ信号の送信間隔を適切に設定すれば、第1の通信対象に対する無線通信の応答性を確保することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、車両に搭載されてリクエスト信号を無線送信する車載機と、前記リクエスト信号の受信に基づき応答信号を無線送信する電子キーとの間で無線通信を行い、前記車載機が前記応答信号に含まれている情報に基づいて車両の各種制御を実行する車両の電子キーシステムであって、請求項1に記載の無線通信装置と、前記第1の通信対象となる電子機器とを備え、前記車載機は、前記第2の通信対象として、前記無線通信装置から送信される前記レスポンス信号に含まれている情報を受信するとともに、該情報に基づき前記車両の各種制御を実行することを要旨とする。
【0011】
同システムによれば、電子機器から送信されたレスポンス信号が無線通信装置によって受信されると、同レスポンス信号に含まれている情報が車載機に送信される。そしてこのレスポンス信号に含まれている情報に基づいて車両の各種制御が実行される。したがって、電子機器を電子キーとして用いることができるため、利便性が大幅に向上するようになる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両の電子キーシステムにおいて、前記トリガ信号として、前記リクエスト信号を用いることを要旨とする。
同システムによるように、車載機から送信されるリクエスト信号をトリガ信号として用いることとすれば、トリガ信号を送信するための装置を車載機に新たに設ける必要がない。このため、車載機の構造を簡素化することができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる無線通信装置及び車両の電子キーシステムによれば、応答性を確保しつつ、消費電力を低減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる無線通信装置を利用した車両の電子キーシステムの一実施形態についてその概略構成を模式的に示す図。
【図2】同実施形態の車両の電子キーシステムについてそのシステム構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態の無線通信装置によるレスポンス要求信号を送信する処理についてその手順を示すフローチャート。
【図4】(a),(b)は、同実施形態の車両の電子キーシステムについてその動作例を示すタイミングチャート。
【図5】(a),(b)は、本発明にかかる無線通信装置を利用した電子キーシステムの他の例についてその動作例を示すタイミングチャート。
【図6】(a),(b)は、本発明にかかる無線通信装置を利用した電子キーシステムの他の例についてその動作例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる車両の電子キーシステムの一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。はじめに、図1を参照して、本実施形態にかかる電子キーシステムの概要について説明する。
【0016】
図1に示すように、この電子キーシステムでは、電子キー1を所持したユーザが車両ドアの周辺に設定された通信エリアAに進入すると、車両に設けられた車載機2と電子キー1との間で双方向の無線通信が行われる。これにより、車載機2と電子キー1との間でリクエスト信号及びIDコード信号が授受されて、電子キーの認証が行われる。そして該認証が成立した場合には、車両ドアが解錠される。また、この電子キーシステムでは、後部座席のドア5に設置された無線通信装置3にユーザが窓ガラス6の外側から携帯電話機4を近づけると、無線通信装置3と携帯電話機4との間でNFC(Near Field Communication)規格に基づく無線通信が行われる。なお、NFC規格に基づく無線通信とは、HF帯(13.56MHz)の電波を用いて十センチメートル程度のごく近距離で双方向の無線通信を行うものである。ここでは、このNFC規格に基づく無線通信を通じて無線通信装置3と携帯電話機4との間でレスポンス要求信号及びレスポンス信号が授受されて、携帯電話機4の認証が行われる。そして該認証が成立した場合にも、車両ドアが解錠される。
【0017】
次に、図2を参照して、本実施形態にかかる電子キーシステムの構成、動作について説明する。
図2に示すように、車載機2は、リクエストコードでLF帯(134kHz)の搬送波を変調することによりリクエスト信号を生成するとともに、生成したリクエスト信号をアンテナ20aから通信エリアAに向けて発信するLF送信回路20を有している。また、車載機2は、電子キー1及び無線通信装置3から送信されるUHF帯(315MHz)のIDコード信号をアンテナ21aを介して受信するとともに、同IDコード信号からIDコードを復調するUHF受信回路21を有している。そして、LF送信回路20によるリクエスト信号の送信制御、及びUHF受信回路21を介して受信されるIDコードの処理が、マイクロコンピュータを中心に構成された車両制御部22を通じて統括的に行われる。この車両制御部22は、車両ドアの施解錠を行うドアロック機構23を制御する部分でもある。なお、車両制御部22は、IDコードなどの情報が記憶された不揮発性のメモリ22aを有している。
【0018】
無線通信装置3は、第1の通信対象である携帯電話機4とNFC規格に基づく無線通信を行うための通信部30を有している。この通信部30は、HF帯の無線電波を送受信するアンテナ30a、各種通信処理を行うリーダライタIC30c、及びアンテナ30aとリーダライタIC30cとの間の整合を取るための整合回路30bにより構成されている。リーダライタIC30cは、レスポンス要求コードでHF帯の搬送波を変調することによりレスポンス要求信号を生成するとともに、生成したレスポンス要求信号をアンテナ30aから送信する。また、リーダライタIC30cは、携帯電話機4から送信されるHF帯のレスポンス信号をアンテナ30aを介して受信すると、同レスポンス信号からIDコードを復調する。一方、無線通信装置3は、第2の通信対象である車載機2と無線通信を行うためのLF受信回路31及びUHF送信回路32を有している。LF受信回路31は、車載機2から送信されるリクエスト信号をアンテナ31aを介して受信するとともに、同リクエスト信号からリクエストコードを復調する。また、UHF送信回路32は、IDコードでUHF帯の搬送波を変調してIDコード信号を生成するとともに、生成したIDコード信号をアンテナ32aから送信する。さらに、無線通信装置3は、アンテナ31aを介して受信されるLF帯の無線電波の強度(受信信号強度)を検出するRSSI(Received Signal Strength Indicator)回路35を有している。そして、このRSSI回路35の出力が、マイクロコンピュータを中心に構成された制御部33に取り込まれている。この制御部33は、LF受信回路31を介して受信されるリクエストコードの処理、及びUHF送信回路32によるIDコード信号の送信制御を行う。また、制御部33は、通信部30によるレスポンス要求信号の送信制御、及び通信部30を介して受信されるIDコードの処理も行う。なお、無線通信装置3の動作電源は、同装置に内蔵された電池34によって確保されている。
【0019】
携帯電話機4は、無線通信装置3とNFC規格に基づく無線通信を行うための通信モジュール40を有している。この通信モジュール40は、制御回路やメモリなどを有するICチップやアンテナなどにより構成されている。なお、通信モジュール40は不揮発性のメモリを有しており、このメモリ内にIDコードなどの情報が予め記憶されている。
【0020】
電子キー1は、車載機2と無線通信を行うための通信装置(図示略)を有している。また、電子キー1は不揮発性のメモリを有しており、このメモリ内にIDコードなどの情報が記憶されている。
【0021】
次に、このような構成からなる電子キーシステムの動作について説明する。
車両制御部22は、例えば車両のイグニッションスイッチがオフ状態であって且つ、車両ドアが施錠状態であるとき、LF送信回路20から所定の周期でリクエスト信号を送信することで電子キー1をポーリングする。すなわち、ユーザが電子キー1を所持した状態で通信エリアAに進入すると、電子キー1によってリクエスト信号が受信される。このとき、電子キー1は、受信したリクエスト信号からリクエストコードを復調して同コードに基づく処理を実行する。具体的には、自身のメモリに記憶されているIDコードでUHF帯の搬送波を変調してIDコード信号を生成した後、同IDコード信号を車載機2に送信する。このIDコード信号は、車載機2のアンテナ21aを介して受信されて、UHF受信回路21に入力される。これにより、UHF受信回路21は、IDコード信号からIDコードを復調するとともに、同IDコードを車両制御部22に出力する。このとき、車両制御部22は、入力されたIDコードと、自身のメモリ22aに記憶されているIDコードとの照合を行い、該照合を通じて互いのIDコードが一致した場合には、電子キーの認証が成立したと判断する。そして、電子キーの認証が成立した場合には、ドアロック機構23を駆動させて車両ドアを解錠する。
【0022】
一方、制御部33は、通信部30からレスポンス要求信号を送信することによって携帯電話機4をポーリングする。すなわち、ユーザが携帯電話機4を無線通信装置3に近づけたとすると、レスポンス要求信号が携帯電話機4の通信モジュール40によって受信される。これにより、通信モジュール40は、電磁誘導作用によってレスポンス要求信号から電力を得て起動する。また、起動した通信モジュール40は、レスポンス要求信号からレスポンス要求コードを復調して同コードに基づく処理を実行する。具体的には、自身のメモリに記憶されているIDコードでHF帯の搬送波を変調してレスポンス信号を生成した後、同レスポンス信号を無線通信装置3に送信する。このレスポンス信号は、無線通信装置3のアンテナ30aを介して受信されて、リーダライタIC30cに入力される。これにより、リーダライタIC30cは、レスポンス信号からIDコードを復調するとともに、同IDコードを制御部33に出力する。このとき、制御部33は、入力されたIDコードをUHF送信回路32に出力して、アンテナ32aからIDコード信号を送信する。このIDコード信号は、車載機2のアンテナ21aを介して受信されて、UHF受信回路21に入力される。その後、UHF受信回路21及び車両制御部22は、上述した電子キー1から送信されたIDコード信号を受信したときと同様の処理を実行する。そして、車両制御部22は、IDコードの照合を通じて携帯電話機4の認証が成立したと判断した場合には、ドアロック機構23を駆動させて車両ドアを解錠する。
【0023】
ところで、携帯電話機4のポーリングのために無線通信装置3からレスポンス要求信号を常時送信すると、無線通信装置3の消費電力が増加するため、電池34の消耗が早くなることが懸念される。そこで、本実施形態では、車載機2から送信されるリクエスト信号を無線通信装置3が受信したときに、無線通信装置3からレスポンス要求信号を送信するようにしている。
【0024】
図3は、制御部33を通じて実行される、リクエスト信号の受信に基づきレスポンス要求信号の送信を行う処理についてその手順をフローチャートとして示したものである。なお、この図3に示す処理は、実際には所定の演算周期をもって繰り返し実行される。
【0025】
同図3に示されるように、この処理では、まず、LF帯の電波を受信したか否かが監視される(ステップS1)。具体的には、RSSI回路35を通じて検出される受信信号強度が予め定められた所定の強度よりも大きくなった場合には、LF帯の電波を受信したと判断される。ここで、制御部33は、LF帯の電波を受信することができる(ステップS1:YES)まで、受信信号強度のみを監視するスリープ状態となっている。そして、LF帯の電波を受信した場合には(ステップS1:YES)、制御部33がウェークアップする。これにより、まず、受信した電波がリクエスト信号であるか否かが判断される(ステップS2)。具体的には、受信した電波からLF受信回路31を通じてリクエストコードを復調することができた場合には、受信した電波がリクエスト信号であると判断される。ここで、受信した電波がリクエスト信号である場合には(ステップS2:YES)、通信部30からレスポンス要求信号が送信される(ステップS3)。
【0026】
一方、受信した電波がリクエスト信号でない場合には(ステップS2:NO)、すなわち何らかのノイズである場合には、LF帯の無線電波を受信したか否かが再び監視される(ステップS1)。
【0027】
以下、本実施形態の電子キーシステムの動作例(作用)について、図4を参照して説明する。
図4に示すように、車載機2からリクエスト信号が所定の周期Taで送信されているとする。このとき、無線通信装置3は、リクエスト信号を受信する時刻t1,t2,t3,t4・・・の時点でレスポンス要求信号を送信する。これにより、無線通信装置3からレスポンス要求信号が所定の周期Taで間欠的に送信されるため、レスポンス要求信号を常時送信する場合と比較すると、無線通信装置3の消費電力を低減することができる。したがって、電池34の寿命を延ばすことができる。また、レスポンス要求信号の送信周期はリクエスト信号の送信周期と一致するため、携帯電話機4と無線通信装置3との間で無線通信が行われる頻度を、電子キー1と車載機2との間で無線通信が行われる頻度と一致させることができる。このため、携帯電話機4を用いた場合の電子キーシステムの応答性として、電子キー1を用いた場合と同様の応答性を確保することができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態にかかる無線通信装置及び車両の電子キーシステムによれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)無線通信装置3では、車載機2から送信されるリクエスト信号を受信するとき、レスポンス要求信号を送信することとした。これにより、無線通信装置3の消費電力を低減することができるようになる。また、携帯電話機4を用いたときの電子キーシステムの応答性として、電子キー1を用いたときと同様の応答性を確保することができるようになる。
【0029】
(2)無線通信装置3では、携帯電話機4との無線通信を通じてIDコードの情報を取得することとした。また、車載機2では、無線通信装置3から送信されるIDコードに基づいて車両ドアを解錠することとした。これにより、携帯電話機4を電子キーとして用いることが可能となるため、利便性が大幅に向上するようになる。
【0030】
(3)無線通信装置3がレスポンス要求信号の送信を行うトリガ信号として、リクエスト信号を用いることとした。これにより、トリガ信号を送信するための装置を車載機2に新たに設ける必要がないため、車載機2の構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0031】
(4)無線通信装置3には、車載機2にIDコードを無線送信するためのUHF送信回路32と、内蔵電池34を設けることとした。これにより、携帯電話機4との通信、及び車載機2との通信を無線化することができるため、ハーネスなどの引き回しが不要となる。したがって、無線通信装置3の搭載位置を自由に変更することができるため、搭載性が向上するようになる。
【0032】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、電子キー1をポーリングすべく、車載機2からリクエスト信号を周期Taで送信することとしたが、これに代えて、例えば図5(a)に示すようにリクエスト信号を送信してもよい。まず、車両制御部22は、車両のイグニッションスイッチがオフ状態であるときに車両ドアが施錠されたことを時刻t10で検知したとすると、時刻t10から所定時間T1が経過する時刻t11までの期間、周期Taでリクエスト信号を送信する。また、時刻t11以降、周期Taよりも長い周期Tbでリクエスト信号を送信する。そして、時刻t11から所定時間T2が経過する時刻t12の時点でリクエスト信号の送信を停止する。このような構成によれば、リクエスト信号の送信を周期Taで継続して行う場合と比較すると車載機2の消費電力を低減することができるため、車載バッテリの寿命を延ばすことができるようになる。一方、車載機2からリクエスト信号が図5(a)に示すように送信された場合、無線通信装置3はレスポンス要求信号を図5(b)に示すように送信する。すなわち、車載機2からのリクエスト信号の送信に追従するかたちで、レスポンス要求信号を周期Taで所定時間T1だけ送信した後、周期Tbで所定時間T2だけ送信する。したがって、レスポンス要求信号の送信周期を調整するための構成を無線通信装置3に設けることなく、レスポンス要求信号の送信周期が自動的に調整されるようになる。
【0033】
・上記実施形態では、本発明にかかる無線通信装置を、電子キー1のポーリングを継続して行う、いわゆるポーリング式の電子キーシステムに適用することとしたが、これに代えて、例えばユーザがドアノブに触れたときに限って電子キー1のポーリングを行う、いわゆるトリガ式の電子キーシステムに適用することも可能である。具体的には、図2に破線で示すように、車載機2には、ユーザが車両のドアノブに触れたか否かを検出する接触センサ24を設ける。接触センサ24としては、例えば静電容量センサなどを用いることができる。そして、車両制御部22は、接触センサ24によりユーザがドアノブに触れたことを検知すると、リクエスト信号を図6(a)に示す態様にて送信する。すなわち、ユーザがドアノブに触れたことが検知される時刻t20以降、周期Tcでリクエスト信号の送信を複数回行う。このような構成によれば、リクエスト信号の送信を周期Taで継続して行う場合と比較すると車載機2の消費電力を極めて小さくすることができるため、車載バッテリの寿命を更に延ばすことができるようになる。一方、車載機2からリクエスト信号が図6(a)に示すように送信された場合、無線通信装置3はレスポンス要求信号を図6(b)に示すように送信する。すなわち、車載機2からのリクエスト信号の送信に追従するかたちでレスポンス要求信号を複数回だけ送信する。したがって、レスポンス要求信号の送信頻度を極めて少なくすることができるため、無線通信装置3の消費電力をさらに低減することができるようになる。
【0034】
・上記実施形態では、無線通信装置3の動作電源として電池34を用いることとしたが、これに代えて、例えば車載バッテリから適宜の配線を介して無線通信装置3へ給電を行ってもよい。このような構成の場合には、無線通信装置3の消費電力が低減した分だけ車載バッテリの寿命を延ばすことができるようになる。
【0035】
・上記実施形態では、無線通信装置3がレスポンス要求信号の送信を行うトリガ信号として、リクエスト信号を用いることとしたが、例えばリクエスト信号とは別に車載機2から送信される特定の信号を用いてもよい。これにより、車載機2から特定の信号を送信する周期を調整すれば、無線通信装置3からレスポンス要求信号が送信される周期を適宜変更することができるため、リクエスト信号の送信周期とレスポンス要求信号の送信周期を別々に設定することが可能となる。
【0036】
・上記実施形態では、無線通信装置3から車載機2へのIDコードの伝達を無線通信により行うこととしたが、例えば無線通信装置3と車載機2とをハーネスなどにより互いに接続した上で、IDコードの伝達を有線により行ってもよい。
【0037】
・上記実施形態では、無線通信装置3の通信対象として携帯電話機4を用いることとしたが、これに代えて、例えばNFC通信モジュールが内蔵されたカードなど、適宜の電子機器を用いてもよい。
【0038】
・上記実施形態では、無線通信装置3と携帯電話機4との間の無線通信をNFC規格に基づいて行うこととしたが、これに代えて、例えばMifare(登録商標)やFeliCa(登録商標)など、他のRFID方式に基づいて行ってもよい。
【0039】
・上記実施形態では、本発明にかかる無線通信装置を、車両ドアの解錠を行う電子キーシステムに適用することとした。これに代えて、例えば携帯電話機4のIDコードに応じてシートポジションを変更する電子キーシステムに適用することも可能である。また、携帯電話機4の認証が成立した際に、ユーザの名前を音声で伝えたり、あるいは車両のライトを点灯させるなど、いわゆるお出迎え機能を実行する電子キーシステムに適用することも可能である。さらに、携帯電話機4の認証が成立することを条件に、車載エンジンの始動を許可する電子キーシステムにも適用することができる。
【0040】
<付記>
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)請求項1に記載の無線通信装置において、前記第1の通信対象との無線通信がNFC規格に基づいて行われることを特徴とする無線通信装置。近年、携帯電話機には、NFC規格に基づく通信機能が搭載されている。したがって、上記構成によれば、普及率の高い携帯電話機を第1の通信対象として用いることができるため、利便性が向上するようになる。
【0041】
(ロ)請求項1及び付記イに記載の無線通信装置において、前記レスポンス信号に含まれている情報を前記第2の通信対象に無線送信するための通信部と、該通信部、並びに前記第1の通信対象と無線通信を行うための通信部の双方の動作電源となる電池とを更に備えることを特徴とする無線通信装置。同構成によれば、第1の通信対象との通信、及び第2の通信対象との通信を無線化することができるため、ハーネスなどの引き回しが不要となる。これにより、当該無線通信装置の搭載位置を自由に変更することができるため、搭載性が向上するようになる。
【符号の説明】
【0042】
1…電子キー、2…車載機、3…無線通信装置、4…携帯電話機、5…ドア、6…窓ガラス、20…LF送信回路、20a,21a,30a,31a,32a…アンテナ、21…UHF受信回路、22…車両制御部、22a…メモリ、23…ドアロック機構、24…接触センサ、30…通信部、30b…整合回路、30c…リーダライタIC、31…LF受信回路、32…UHF送信回路、33…制御部、34…電池、35…RSSI回路、40…通信モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信対象をポーリングするためのレスポンス要求信号を無線送信するとともに、同レスポンス要求信号を受信した前記第1の通信対象から無線送信されるレスポンス信号を受信するとき、該レスポンス信号に含まれている情報を第2の通信対象に送信する無線通信装置であって、
前記第2の通信対象から送信されるトリガ信号を受信するとき、前記レスポンス要求信号の送信を行う
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
車両に搭載されてリクエスト信号を無線送信する車載機と、前記リクエスト信号の受信に基づき応答信号を無線送信する電子キーとの間で無線通信を行い、前記車載機が前記応答信号に含まれている情報に基づいて車両の各種制御を実行する車両の電子キーシステムであって、
請求項1に記載の無線通信装置と、前記第1の通信対象となる電子機器とを備え、前記車載機は、前記第2の通信対象として、前記無線通信装置から送信される前記レスポンス信号に含まれている情報を受信するとともに、該情報に基づき前記車両の各種制御を実行する
ことを特徴とする車両の電子キーシステム。
【請求項3】
前記トリガ信号として、前記リクエスト信号を用いる
請求項2に記載の車両の電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−167513(P2012−167513A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30903(P2011−30903)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】