説明

無線通信装置

【課題】設置環境や組み込まれる筐体の構造等によらず、常に最適な通信特性を得ることができる無線通信装置を提供する。
【解決手段】非接触ICカードとの間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを含む共振回路を有し、この共振回路を介して非接触ICカードとの間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう非接触ICカードリーダライタにおいて、上記共振回路を介して非接触ICカードとの間で電磁波を用いた無線通信を行なう送受信回路を有し、通信特性調整モードに設定されると、上記アンテナから調整用の電磁波を出力させ、そのときの上記送受信回路における送信電力を検出し、この検出された送信電力があらかじめ定められた閾値以上になるように上記共振回路の共振周波数を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、電磁誘導結合により誘起された電力で駆動される非接触ICカード(無線通信媒体)と非接触(無線通信)でデータの送受信を行なう非接触ICカードリーダライタなどに適用して好適な無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の非接触ICカードリーダライタは、上位装置に接続されていて、この上位装置は非接触ICカードリーダライタに対しデータの送受信に関するコマンドを送出するとともに、非接触ICカードリーダライタから非接触ICカードとの通信結果などを受取るようになっている。
【0003】
非接触ICカードリーダライタは、非接触ICカードと通信を行なうためにループアンテナから所定周波数のASK(振幅偏移)変調信号を送出し、非接触ICカードが非接触ICカードリーダライタの通信可能領域内に入ると、非接触ICカードリーダライタのループアンテナと非接触ICカードのループアンテナとの間に発生する電磁誘導結合により非接触ICカードに動作用の電力が供給される。非接触ICカードは、受信データに対する応答を負荷変調により行ない、非接触ICカードリーダライタは、この負荷変調データを包絡線検波により検出し、復調回路にて復調され、その復調データが上位装置へ転送される(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−187916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、非接触ICカードリーダライタは、駅や店舗などさまざまな環境で用いられているが、組み込まれる筐体の構造や設置環境によりアンテナを含む共振回路の共振周波数が最適値からずれてしまったり、アンテナから放射される磁界が金属製の筐体に吸収され弱められてしまったりすることがある。
このため、最適な通信特性を実現するためには、組み込まれる筐体の構造や設置環境ごとに、アンテナを含む共振回路の共振周波数やアンテナからの送信電力を調整する必要があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、設置環境や組み込まれる筐体の構造等によらず、常に最適な通信特性を得ることができる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無線通信装置は、無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを含む共振回路を有し、この共振回路を介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、前記共振回路を介して無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なう送受信回路と、通信特性調整モードに設定されると、前記アンテナから調整用の電磁波を出力させ、そのときの前記送信回路における送信電力を検出する送信電力検出手段と、この送信電力検出手段により検出された送信電力があらかじめ定められた閾値以上になるように前記共振回路の共振周波数を調整する共振周波数調整手段とを具備している。
【0007】
また、本発明の無線通信装置は、無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを含む共振回路を有し、この共振回路を介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、前記共振回路を介して無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なう送受信回路と、通信特性調整モードに設定されると、前記アンテナから調整用の電磁波を出力させ、そのときの前記送信回路における送信電力を検出する送信電力検出手段と、この送信電力検出手段により検出された送信電力があらかじめ定められた閾値以上になるように前記共振回路の共振周波数を調整する共振周波数調整手段と、この共振周波数調整手段による前記共振回路の共振周波数の調整が終了すると、前記アンテナの近傍における磁界強度を検出する磁界強度検出手段と、この磁界強度検出手段により検出された磁界強度があらかじめ定められた閾値以上になるように前記送受信回路への電源電圧を調整する電源電圧調整手段とを具備している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アンテナからの送信電力が規定の閾値以上になるようにアンテナを含む共振回路の共振周波数を自動的に調整することで、設置環境や組み込まれる筐体の構造等によらず、常に最適な通信特性を得ることができる無線通信装置を提供できる。
【0009】
また、本発明によれば、アンテナからの送信電力が規定の閾値以上になるようにアンテナを含む共振回路の共振周波数を自動的に調整するとともに、アンテナ近傍の磁界強度が規定の閾値以上になるように送受信回路への電源電圧を調整することで、組み込まれる筐体の構造により共振周波数を最適化したにもかかわらず、無線通信媒体との通信距離がとれない場合でも、送受信回路への供給電圧を調整することで最適な通信特性を得ることができる無線通信装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すものである。この非接触ICカードリーダライタは、そのアンテナ部に無線通信媒体としての非接触ICカードが翳されることで、当該非接触ICカードとの間で電磁波を用いた無線通信を行なう場合の例を示している。
【0011】
図1において、非接触ICカードリーダライタ1は、コマンド送出や応答処理を行なう上位装置2に接続されていて、アンテナ部に非接触ICカード3が翳されることで、当該非接触ICカード3に対しデータの読出しや書込みなどのデータ送受信を行なうように構成されている。
【0012】
非接触ICカードリーダライタ1は、非接触ICカード3との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナ(たとえば、ループアンテナ)11、アンテナ11を含む共振回路12、共振回路12の共振周波数を調整する共振周波数調整手段としての周波数調整回路13、共振回路12を介して非接触ICカード3との間で送受信を行なう送受信回路14、送信回路14における送信電力を検出する送信電力検出手段としての送信電力検出回路15、全体的な制御を行なう制御手段としてのCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)16、および、外部から供給された電力を動作電源として送受信回路14、送信電力検出回路15およびCPU16へ供給する電源回路17を有して構成されている。
【0013】
共振回路12は、CPU16から供給される周波数制御信号b0,b1によって動作する周波数調整回路13により共振周波数が切換制御されることで、非接触ICカード3との通信特性が最適値に調整されるようになっており、それについては後で詳細を説明する。
【0014】
CPU16には、たとえば、ROMあるいはEEPROMなどのメモリ18が設けられている。メモリ18には、各種閾値があらかじめ設定記憶されているとともに、各種処理データが格納されるようになっている。
【0015】
共振回路12は、たとえば、図2に示すように、アンテナ11、および、このアンテナ11に並列接続される同調コンデンサC0などを有して構成される。
また、周波数調整回路13は、たとえば、図2に示すように、同調コンデンサC0に並列接続される複数(この例では2個)のコンデンサC1〜C2、および、これら複数のコンデンサC1〜C2に対しそれぞれ直列に接続されるスイッチ手段としての複数(この例では2個)のトランジスタT1〜T2を有していて、複数のトランジスタT1〜T2をCPU16からの周波数制御信号b0,b1により選択的にオン,オフ制御するように構成されている。
【0016】
複数のコンデンサC1〜C2は、共振回路12の共振周波数を所望の値に切換え設定するためのもので、それぞれ異なる所定の値(容量)、たとえば、共振周波数が等間隔に変化するような値に設定されていて、周波数制御信号b0,b1のハイ,ローを切換えて複数のトランジスタT1〜T2を選択的にオン,オフ制御することにより、所望のコンデンサ(共振周波数)が選択されるようになっている。
【0017】
なお、周波数制御信号b0,b1および複数のコンデンサの数は上記例に限ったものではなく、より多くの数であってもよい。数が多くなるほど細かく、かつ、精度の高い周波数制御が可能となる。
【0018】
次に、このような構成において第1の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタ1の動作を図3に示すフローチャートを参照して説明する。
非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、上位装置2から送信される調整モード開始コマンドを受信すると、通信特性調整モードを選択(設定)する(ステップS1)。ここで、調整モード開始コマンドは、非接触ICカードリーダライタ1の初回起動時に1回送信するようにしてもよいし、非接触ICカードリーダライタ1の電源オン時にその都度送信するようにしてもよい。
【0019】
CPU14は、通信特性調整モードに入ると、まずアンテナ11から調整用のキャリア電波を放射し、そのときの送受信回路14での送信電力を送信電力検出回路15によって検出し、送信電力データDAT1としてメモリ18に格納する(ステップS2)。ここで、あらかじめメモリ18には送信電力の閾値が記憶されており、検出した送信電力データDAT1が当該閾値以上であるかどうか判定する(ステップS3)。この判定の結果、送信電力データDAT1が閾値以上であれば、共振回路12の共振周波数は最適値に調整されているとして、通信特性調整処理を終了する。
【0020】
ステップS3における判定の結果、送信電力データDAT1が閾値以下であった場合、周波数調整回路13によって共振回路12の共振周波数を一定値上げる(ステップS4)。ここで、共振周波数を上げた後の送受信回路14での送信電力を送信電力検出回路15によって検出し、送信電力データDAT2としてメモリ18に記録する(ステップS5)。
【0021】
次に、検出した送信電力データDAT2とあらかじめメモリ18に記憶された送信電力の閾値とを比較し(ステップS6)、送信電力データDAT2が閾値以上であれば、共振回路12の共振周波数は最適値に調整されているとして、通信特性調整処理を終了する。
【0022】
ステップS6における比較の結果、送信電力データDAT2が閾値以下であれば、送信電力データDAT2とDAT1とを比較し(ステップS7)、送信電力データDAT2がDAT1よりも大きかった場合、共振周波数は最適値よりも低い方にずれていると判定し、DAT2をDAT1にコピーした後、周波数調整回路13によって共振回路12の共振周波数をさらに一定値上げる(ステップS8)。送信電力データDAT2がDAT1よりも小さかった場合、共振周波数は最適値よりも高い方にずれていると判定し、DAT2をDAT1にコピーした後、周波数調整回路13によって共振回路12の共振周波数をさらに一定値下げる(ステップS9)。
【0023】
ステップS8,S9で共振周波数を変化させた後の送受信回路14での送信電力を送信電力検出回路15によって検出し、送信電力データDAT2としてメモリ18に記録する(ステップS10,S11)。次に、送信電力データDAT2とDAT1との差があらかじめメモリ18に記憶された規定値以上であるか否かを判定し(ステップS12,S13)、DAT2とDAT1との差が規定値以上である場合、ステップS8,S9に戻り、上記同様な動作を繰り返す。
【0024】
ステップS12,S13における判定の結果、DAT2とDAT1との差が規定値以上でない場合、送信電力データDAT2とDAT1とを比較し(ステップS14,S15)、DAT2がDAT1よりも小さい場合、共振周波数を上げた(もしくは下げた)結果、最適値を飛び越えて初期状態とは逆の方向にずれてしまったことが考えられる。
【0025】
たとえば、最初、最適値よりも周波数が低い方にずれていて、共振周波数を上げていき、DAT2とDAT1との差が規定値以下であり、かつ、DAT2がDAT1よりも小さい場合、最適値を飛び越えて高い方にずれたとして、共振周波数を一段低い値に戻し(ステップS16)、通信特性調整処理を終了する。
【0026】
逆に最初、最適値よりも高い方にずれていて、共振周波数を下げていったところ最適値よりもさらに下がってしまい、低い方にずれてしまった結果、共振周波数変更前の送信電力よりも共振周波数変更後の送信電力の方が低くなってしまう。この場合は共振周波数を一段高い値に戻し(ステップS17)、通信特性調整処理を終了する。
【0027】
ステップS14,S15において、DAT2がDAT1よりも大きい場合、共振周波数が最適値になったものと判断して、通信特性調整処理を終了する。
【0028】
以上説明したように第1の実施の形態によれば、アンテナ11からの送信電力が規定の閾値以上になるように、共振回路12の共振周波数を自動的に調整することで、設置環境や組み込まれる筐体の構造等によらず、常に最適な通信特性を得ることができる。
【0029】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図4は、第2の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すものである。第2の実施の形態の第1の実施の形態と異なる点は、アンテナ11上に設置され、アンテナ11の近傍の磁界強度を検出する磁界強度検出手段としての磁気センサ回路19が追加された点が異なる。磁気センサ回路19の出力信号はCPU16へ送られる。また、電源回路17は、CPU16から供給される電源回路制御信号によって送受信回路14へ供給する電源電圧を制御するように構成されている点が異なる。したがって、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0030】
次に、このような構成において第2の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタ1の動作を図5および図6に示すフローチャートを参照して説明する。
非接触ICカードリーダライタ1のCPU14は、上位装置2から送信される調整モード開始コマンドを受信すると、通信特性調整モードを選択(設定)する(ステップS1)。ここで、調整モード開始コマンドは、非接触ICカードリーダライタ1の初回起動時に1回送信するようにしてもよいし、非接触ICカードリーダライタ1の電源オン時にその都度送信するようにしてもよい。
【0031】
CPU14は、通信特性調整モードに入ると、まずアンテナ11から調整用のキャリア電波を放射し、そのときの送受信回路14での送信電力を送信電力検出回路15によって検出し、送信電力データDAT1としてメモリ18に格納する(ステップS2)。ここで、あらかじめメモリ18には送信電力の閾値が記憶されており、検出した送信電力データDAT1が当該閾値以上であるかどうか判定する(ステップS3)。この判定の結果、送信電力データDAT1が閾値以上であれば、共振回路12の共振周波数は最適値に調整されているとして、周波数調整処理を終了し、ステップS18に進む。
【0032】
ステップS3における判定の結果、送信電力データDAT1が閾値以下であった場合、周波数調整回路13によって共振回路12の共振周波数を一定値上げる(ステップS4)。ここで、共振周波数を上げた後の送受信回路14での送信電力を送信電力検出回路15によって検出し、送信電力データDAT2としてメモリ18に記録する(ステップS5)。
【0033】
次に、検出した送信電力データDAT2とあらかじめメモリ18に記憶された送信電力の閾値とを比較し(ステップS6)、送信電力データDAT2が閾値以上であれば、共振回路12の共振周波数は最適値に調整されているとして、周波数調整処理を終了し、ステップS18に進む。
【0034】
ステップS6における比較の結果、送信電力データDAT2が閾値以下であれば、送信電力データDAT2とDAT1とを比較し(ステップS7)、送信電力データDAT2がDAT1よりも大きかった場合、共振周波数は最適値よりも低い方にずれていると判定し、DAT2をDAT1にコピーした後、周波数調整回路13によって共振回路12の共振周波数をさらに一定値上げる(ステップS8)。送信電力データDAT2がDAT1よりも小さかった場合、共振周波数は最適値よりも高い方にずれていると判定し、DAT2をDAT1にコピーした後、周波数調整回路13によって共振回路12の共振周波数をさらに一定値下げる(ステップS9)。
【0035】
ステップS8,S9で共振周波数を変化させた後の送受信回路14での送信電力を送信電力検出回路15によって検出し、送信電力データDAT2としてメモリ18に記録する(ステップS10,S11)。次に、送信電力データDAT2とDAT1との差があらかじめメモリ18に記憶された規定値以上であるか否かを判定し(ステップS12,S13)、DAT2とDAT1との差が規定値以上である場合、ステップS8,S9に戻り、上記同様な動作を繰り返す。
【0036】
ステップS12,S13における判定の結果、DAT2とDAT1との差が規定値以上でない場合、送信電力データDAT2とDAT1とを比較し(ステップS14,S15)、DAT2がDAT1よりも小さい場合、共振周波数を上げた(もしくは下げた)結果、最適値を飛び越えて初期状態とは逆の方向にずれてしまったことが考えられる。
【0037】
たとえば、最初、最適値よりも周波数が低い方にずれていて、共振周波数を上げていき、DAT2とDAT1との差が規定値以下であり、かつ、DAT2がDAT1よりも小さい場合、最適値を飛び越えて高い方にずれたとして、共振周波数を一段低い値に戻して(ステップS16)、周波数調整処理を終了し、ステップS18に進む。
【0038】
逆に最初、最適値よりも高い方にずれていて、共振周波数を下げていったところ最適値よりもさらに下がってしまい、低い方にずれてしまった結果、共振周波数変更前の送信電力よりも共振周波数変更後の送信電力の方が低くなってしまう。この場合は共振周波数を一段高い値に戻して(ステップS17)、周波数調整処理を終了し、ステップS18に進む。
【0039】
ステップS14,S15において、DAT2がDAT1よりも大きい場合、共振周波数が最適値になったものと判断して、周波数調整処理を終了し、ステップS18に進む。
【0040】
ステップS18では、アンテナ11上に設置された磁気センサ回路19によってアンテナ11近傍の磁界強度を検出し、その検出値をCPU16へ送る。CPU16は、磁気センサ回路19で検出された磁界強度があらかじめメモリ18に記憶された磁界強度の閾値以上であるか否かを判定し(ステップS19)、検出された磁界強度が閾値以上である場合、アンテナ11から充分な強度の磁界が発生しているとして、通信特性調整モードを終了する。
【0041】
ステップS19における判定の結果、検出された磁界強度が閾値以上でない場合、CPU16は、送受信回路14へ供給されている電源電圧があらかじめ定められた上限値であるか否かを判定し(ステップS20)、送受信回路14への電源電圧が上限値である場合、通信特性調整モードを終了する。
【0042】
ステップS20における判定の結果、送受信回路14への電源電圧が上限値でない場合、CPU16は、周囲の環境等によりアンテナ11からの磁界強度が弱められている状態にあるとして、電源回路17に対し電源回路制御信号を送信することで、送受信回路14への電源電圧を一定値上げる(ステップS21)。
【0043】
次に、CPU16は、ステップS21で送受信回路14への電源電圧を一定値上げた後の送受信回路14での送信電力を送信電力検出回路15によって検出し、送信電力データDAT2としてメモリ18に記録し(ステップS22)、その後、ステップS18に戻り、上記同様な動作を繰り返す。
【0044】
このように、送受信回路14への電源電圧を上げた後、再度、磁気センサ回路19でアンテナ11近傍の磁界強度を検出し、検出した磁界強度が閾値以上になるまで、送受信回路14への電源電圧を一定値ずつ上げていく。そして、検出されたアンテナ11近傍の磁界強度が閾値以上になると(ステップS19)、アンテナ11から充分な強度の磁界が発生しているとして、通信特性調整モードを終了する。
【0045】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、アンテナ11からの送信電力が規定の閾値以上になるように、共振回路12の共振周波数を自動的に調整するとともに、アンテナ11近傍の磁界強度が規定の閾値以上になるように送受信回路14への電源電圧を調整することで、組み込まれる筐体の構造により共振周波数を最適化したにもかかわらず、非接触ICカード3との通信距離がとれない場合でも、送受信回路14への供給電圧を調整することで最適な通信特性を得ることができる。
【0046】
なお、前記実施の形態では、電磁誘導結合により誘起された電力で駆動される非接触ICカードと無線通信でデータの送受信を行なう非接触ICカードリーダライタに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば、電磁誘導結合により誘起された電力で駆動される非接触ICタグと無線通信でデータの送受信を行なう非接触ICタグリーダライタ等にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すブロック図。
【図2】第1の実施の形態に係る共振回路および周波数調整回路の具体的な構成を概略的に示す回路図。
【図3】第1の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明するフローチャート。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る無線通信装置としての非接触ICカードリーダライタの構成を概略的に示すブロック図。
【図5】第2の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明するフローチャート。
【図6】第2の実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタの動作を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0048】
1…非接触ICカードリーダライタ(無線通信装置)、2…上位装置、3…非接触ICカード(無線通信媒体)、11…アンテナ、12…共振回路、13…周波数調整回路(共振周波数調整手段)、14…送受信回路、15…送信電力検出回路(送信電力検出手段)、16…CPU(制御手段)、17…電源回路、18…メモリ(記憶手段)、19…磁気センサ回路(磁界強度検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを含む共振回路を有し、この共振回路を介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、
前記共振回路を介して無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なう送受信回路と、
通信特性調整モードに設定されると、前記アンテナから調整用の電磁波を出力させ、そのときの前記送信回路における送信電力を検出する送信電力検出手段と、
この送信電力検出手段により検出された送信電力があらかじめ定められた閾値以上になるように前記共振回路の共振周波数を調整する共振周波数調整手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なうためのアンテナを含む共振回路を有し、この共振回路を介して無線通信媒体との間で無線通信を行なうことによりデータの送受信を行なう無線通信装置において、
前記共振回路を介して無線通信媒体との間で電磁波を用いた無線通信を行なう送受信回路と、
通信特性調整モードに設定されると、前記アンテナから調整用の電磁波を出力させ、そのときの前記送信回路における送信電力を検出する送信電力検出手段と、
この送信電力検出手段により検出された送信電力があらかじめ定められた閾値以上になるように前記共振回路の共振周波数を調整する共振周波数調整手段と、
この共振周波数調整手段による前記共振回路の共振周波数の調整が終了すると、前記アンテナの近傍における磁界強度を検出する磁界強度検出手段と、
この磁界強度検出手段により検出された磁界強度があらかじめ定められた閾値以上になるように前記送受信回路への電源電圧を調整する電源電圧調整手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
前記通信特性調整モードは、当該無線通信装置の上位装置から送信される調整モード開始コマンドを受信することで設定されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記調整モード開始コマンドは、当該無線通信装置の初回起動時に1回送信されるか、当該無線通信装置の電源オン時にその都度送信されることを特徴とする請求3記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記無線通信媒体は、電磁誘導結合により誘起された電力で駆動される非接触ICカードであることを特徴とすることを特徴とする請求項4または請求項5記載の無線通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−160312(P2008−160312A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344773(P2006−344773)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】