説明

無菌充填方法

【課題】非炭酸飲料の充填と炭酸飲料の充填ラインとを同じ無菌充填ラインで行い、小設置スペースで無菌充填を行い得る無菌充填方法。
【解決手段】無菌充填ラインは、ボトルの供給ゾーン11、ボトルの殺菌ゾーン13、飲料の充填ゾーン15及び密封ゾーン17、18が配備されており、この順に各ゾーンをボトルが通過するように設けられているボトル搬送路を有していると共に、充填ゾーン13を、非炭酸飲料用充填域15aと炭酸飲料用充填域15bとに区画し、これらの充填域が密封ゾーン17、18に連通しており、非炭酸飲料の充填を行う場合には、供給ゾーン11、殺菌ゾーン13、非炭酸用充填域15a及び密封ゾーン17、18の順にボトルが搬送され、炭酸飲料の充填を行う場合には、供給ゾーン11、殺菌ゾーン13、炭酸用充填域15a及び密封ゾーン17、18の順にボトルが搬送されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の飲料をPETボトルに代表されるポリエステルボトルに無菌充填する方法に関するものであり、より詳細には、非炭酸飲料と炭酸飲料とを同一の無菌充填ラインで無菌充填し得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)の如きポリエステル樹脂により形成されたボトルは、優れた透明性や表面光沢性を有すると共に、ボトル等の容器に必要な耐衝撃性、剛性、ガスバリヤー性をも有しており、各種飲料等の液体用容器として広く使用されている。また、最近のポリエステルボトルは、熱固定によってその耐熱性も著しく高められている。
【0003】
このようなポリエステルボトルにおいては、従来より、各種飲料を無菌充填する方法が広く採用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
この無菌充填方法は、殺菌液や熱水によりボトルを殺菌し、次いでボトルに飲料等の内容液を充填し、さらにキャップによりボトルを密封するというものであり、これらの工程は、全て、無菌状態に維持された無菌チャンバー内に配置された無菌充填ラインで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−287310号公報
【特許文献2】特開平7−291236号公報
【特許文献3】特開平7−76324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ポリエステルボトルに充填される飲料は、飲料水、果汁類、お茶類、コーヒー類のなどの非炭酸飲料と、コーラ、サイダーなどの炭酸飲料とに大別される。非炭酸飲料と炭酸飲料とでは、要求される殺菌レベルが異なっていることや、飲料の特性が大きく異なっていることなどから、充填ゾーンに設けられる充填機の構造や充填機自体の殺菌方式などが異なっている。
【0006】
例えば、飲料をボトルに充填するための充填機は、回転する円板状の支持体の外周に沿って複数の飲料供給パイプが円板の回転に同期して公転するように設けられており、このような飲料供給パイプにより、この円板の下方に搬送され且つ円板の回転に同期して移動するボトルに順次飲料を充填するという基本的な構造を有している。
【0007】
しかるに、非炭酸飲料は、それ自体に殺菌処理が必要であり、このため、飲料タンクが外部に配置され、このタンクで加熱殺菌が行われ、殺菌された飲料が配管を通して搬送され、支持体中心に設けられているロータリージョイントを介して各飲料供給パイプに接続され、このパイプからボトルに充填される構造となっている。
一方、炭酸飲料では、それ自体に殺菌処理は不要であり、しかも、炭酸ガスの放出を防ぐために、温度コントロールも必要である。このため、炭酸飲料用の飲料タンクは、円板形状の支持体上に載置されており、このタンクは、長い配管を介することなく、直接飲料供給パイプに接続され、支持体と一体に回転するようになっている。また、この飲料供給パイプは、上下動可能に設けられており、ボトルへの充填に際しては、降下してボトルの口部に接触した状態でボトル内に炭酸飲料が吐出する構造となっている。ボトルの口部から離して、炭酸飲料を吐出すると、ボトル内での泡立ちが生じ、炭酸ガスボリュームが低下してしまうからである。
【0008】
前記のような充填機の構造の相違により、非炭酸飲料と炭酸飲料とでは、充填機の殺菌手段も異なっている。即ち、非炭酸飲料では、飲料タンクから飲料供給パイプまで長い配管を通して接続されているため、高温の加熱水蒸気を通して殺菌処理が行われる。一方、炭酸飲料では、タンクが直接飲料供給パイプに接続されており、長い配管が介在しておらず、しかも炭酸飲料自体に殺菌効果もあることから、単に60〜90度程度の熱水を通すことにより殺菌処理が行われる。
【0009】
このように、非炭酸飲料と炭酸飲料とでは、充填機の構造やその殺菌手段が異なり、さらには後述するように殺菌に用いる液も異なっていることから、それぞれ、専用の無菌充填ラインによりポリエステルボトルへの無菌充填が行われているのが現状である。
【0010】
しかしながら、非炭酸飲料と炭酸飲料とで異なる無菌充填ラインを使用することは、敷地面積当りの生産性(ポットイールド)の低下をもたらし、その改善が必要となっている。即ち、飲料ボトルが大量に生産される現況下では、無菌充填ラインの生産性を高めるために、ラインの高速化が図られているが、高速のラインでは、単位時間当たりのボトルの処理本数が多くなり、しかも用いる殺菌液や熱水の量も大量となり、したがって、無菌充填ラインを収容している無菌チャンバー自体も大型化することとなる。しかも、飲料メーカーも、非炭酸飲料と炭酸飲料の両方を生産販売しているため、非炭酸飲料用の無菌充填ラインと炭酸飲料用の無菌充填ラインとを設けることは、工場内に非常に大きな設置スペースが必要となってしまう。特に、最近では飲料の種類ばかりかボトルの種類も多様であり、多品種、少量生産が主体の現状では、ボトルや飲料の交換のために、無菌充填ラインの非稼動時間が長くなってしまい、非炭酸飲料の無菌充填と炭酸飲料の無菌充填を別個に行うことは、生産効率の著しい低下を招いている。
【0011】
従って、本発明の目的は、非炭酸飲料のボトルへの無菌充填と炭酸飲料のボトルへの無菌充填ラインとを同じ無菌充填ラインで行うことが可能であり、小さな設置スペースで非炭酸飲料及び炭酸飲料の無菌充填を行い得る無菌充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、無菌チャンバー内に配置された無菌充填ラインでポリエステルボトルに飲料を無菌充填するための無菌充填方法において、
前記無菌充填ラインは、前記ボトルの供給ゾーン、前記ボトルを殺菌液及び/又は熱水で殺菌する殺菌ゾーン、飲料の充填ゾーン及びキャップによる密封ゾーンが配備されており、この順に各ゾーンをボトルが通過するように設けられているボトル搬送路を有していると共に、
前記充填ゾーンを、非炭酸飲料用充填域と炭酸飲料用充填域とに区画し、これらの充填域のそれぞれが前記密封ゾーンに連通しており、
非炭酸飲料のポリエステルボトルへの充填を行う場合には、前記供給ゾーン、前記殺菌ゾーン、前記非炭酸飲料用充填域及び前記密封ゾーンの順に該ボトルが搬送され、
炭酸飲料のポリエステルボトルへの充填を行う場合には、前記供給ゾーン、前記殺菌ゾーン、前記炭酸飲料用充填域及び前記密封ゾーンの順に該ボトルが搬送されることを特徴とする無菌充填方法が提供される。
【0013】
本発明の無菌充填方法においては、
前記非炭酸飲料用充填域と炭酸飲料用充填域とが、前記ボトルの搬送路に対して、この順で直列に配列されていると共に、
前記密封ゾーンとして、前記非炭酸飲料用充填域に連通する非炭酸飲料用密封ゾーンと前記炭酸飲料用充填域に連通する炭酸飲料用密封ゾーンとが設けられており、
非炭酸飲料の前記ポリエステルボトルへの充填を行う場合には、前記供給ゾーンから前記殺菌ゾーンに搬送された該ボトルは、直接、前記非炭酸飲料用充填域に搬送され、次いで前記非炭酸飲料用密封ゾーンに搬送され、
炭酸飲料の前記ポリエステルボトルへの充填を行う場合には、前記供給ゾーンから前記殺菌ゾーンに搬送された該ボトルは、非充填の前記非炭酸飲料用充填域を通って前記炭酸飲料用充填域に搬送され、次いで前記炭酸飲料用密封ゾーンに搬送されることが好適である。
また、本発明の無菌充填方法では、
前記非炭酸飲料用充填域と炭酸飲料用充填域とが、前記ボトルの搬送路に対して並列に配置されていると共に、該非炭酸飲料用充填域及び炭酸飲料用充填域に連なる密封ゾーンを共有していることが好適である。
さらに、前記非炭酸飲料用充填域と炭酸飲料用充填域を、ボトルの搬送路に対して並列に配置し、該非炭酸飲料用充填域及び炭酸飲料用充填域に連なる密封ゾーンを共有する場合は、前記密封ゾーンを非炭酸飲料用充填域に連なって設けることがより一層好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、一つの無機充填ライン中の充填ゾーンを非炭酸飲料用の充填域と炭酸飲料用の充填域とに区画し、それぞれの充填域に密封ゾーンを連通させているため、一つの無菌充填ラインで非炭酸飲料の無菌充填及び炭酸飲料の無菌充填を行うことができる。即ち、本発明では、無菌充填ラインに要する工場敷地内の設置スペースを大幅に低減することができ、その生産効率を向上させることが可能となる。
【0015】
また、本発明では、非炭酸飲料用の充填域と炭酸飲料用の充填域とをボトルの搬送路に対して、この順で直列に配置し、各充填域に専用の密封ゾーンを配置することが好適である。
即ち、この態様では、非炭酸飲料用の充填域をボトルの搬送路に対して上流側に配置し、炭酸飲料用の充填域は下流側に配置されており、非炭酸飲料をボトルに充填する場合には、供給ゾーン及び殺菌ゾーンを通ったボトルは、非炭酸飲料用の充填域に導入され、非炭酸飲料のボトルへの充填を行った後、この充填域に通じる非炭酸飲料に専用の密封ゾーンに供給されてキャップによる密封が行われる。一方、炭酸飲料をボトルに充填する場合には、供給ゾーン及び殺菌ゾーンを通ったボトルは、非炭酸飲料用の充填域(このときは非充填状態にある)を通過して炭酸飲料用の充填域に導入され、炭酸飲料のボトルへの充填を行った後、この充填域に通じる炭酸飲料に専用の密封ゾーンに供給されてキャップによる密封が行われることとなる。
【0016】
このような態様によれば、一経路の搬送路でボトルを非炭酸用充填域と炭酸飲料用充填域の両方に搬送することができ、搬送路の切り替えなしに、飲料の種類に応じた充填域にボトルを搬送することができる。また、炭酸飲料が充填されたボトルでは、ボトル内圧が高いため、非炭酸飲料が充填されたボトルに比して、キャップによる密封が強固に行われる。しかるに、この態様では、非炭酸用充填域及び炭酸飲料用充填域は、それぞれ、専用の密封ゾーン(非炭酸飲料用密封ゾーン及び炭酸飲料用密封ゾーン)に連通しており、非炭酸飲料及び炭酸飲料に応じた密封を行うことができる。
尚、前記のように2つの充填域を直列に配置する場合には、必ず、炭酸飲料用の充填域を非炭酸飲料用の充填域の下流側に位置せしめることが必要であり、この逆の配置は採用することができない。何故ならば、非炭酸飲料は、炭酸飲料に比して、要求される殺菌レベルが高いため、非炭酸飲料の充填を行う場合、殺菌レベルの低い炭酸飲料用の充填域にボトルを通過させて密封することができないからである。
【0017】
また、本発明においては、非炭酸飲料用の充填域と炭酸飲料用の充填域とを、ボトルの搬送路に対して並列に配置し、非炭酸飲料用の充填域に連なる密封ゾーンと炭酸飲料用の充填域に連なる密封ゾーンと共有させることが好適である。この場合には、非炭酸飲料及び炭酸飲料に応じて充填ゾーンへのボトルの搬送路を切り替える必要があるが、それぞれの充填域に隣接するようにして密封ゾーンを共有させることができるという利点がある。この場合には、密封ゾーンの殺菌レベルを非炭酸飲料のレベルとし、キャップによる密封は、非炭酸飲料、或いは炭酸飲料に対応させて設定して密封ゾーンを共有させることにより、非炭酸飲料及び炭酸飲料の密封が可能となり、より一層、ラインのコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の無菌充填方法を実施するための無菌充填ラインを示す図である。
【図2】本発明の無菌充填方法を実施するための無菌充填ラインの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の無菌充填方法を実施するために採用される無菌充填ラインを示す図1において、この無菌充填ラインは、所定のクリーン度に維持されたチャンバー内に設けられており、それ自体公知のボトル搬送装置1が延びており、チャンバーの入り口側から出口側に向かって順に、供給ゾーン11、殺菌ゾーン13、非炭酸用充填域15aと炭酸用充填域15bが順次直列に配置された充填ゾーン15、及び前記非炭酸用充填域15aに連なる非炭酸用密封ゾーン17、前記炭酸用充填域15bに連なる炭酸密封ゾーン18が形成されている。即ち、飲料を充填するポリエステルボトルは、供給ゾーン11、殺菌ゾーン13及び充填ゾーン15に搬送され、充填する飲料が非炭酸飲料の場合には、充填ゾーン15の非炭酸用充填域15aで非炭酸飲料が充填された後、非炭酸用の密封ゾーン17でキャップによる密封が行われ、また、充填する飲料が炭酸飲料の場合には、充填ゾーン15の炭酸用充填域15bで炭酸飲料が充填された後、炭酸用の密封ゾーン18でキャップによる密封が行われ、それぞれ、密封後に、この無菌充填ラインから連続的に排出されるようになっている。
尚、密封ゾーンを非炭酸用の密封ゾーン17と炭酸用の密封ゾーン18とに分けているのは、要求される殺菌レベル、密封度が相違するからである。
【0020】
前記のような無菌充填ラインが配置されているチャンバー内は、殺菌剤や熱水により殺菌され、滅菌フィルターを介して無菌空気がチャンバー内に供給され、無菌的な環境に維持されている。
【0021】
飲料を無菌充填すべきポリエステルボトルは、代表的にはポリエチレンテレフタレート(PET)製であるが、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の他のポリエステル製であってもよい。また、後述する熱水による殺菌など、高温に曝されるようなときには、このポリエステルボトルは、成形後或いは成形時での熱固定により耐熱性を向上させておくことが好適である。
【0022】
このようなポリエステルボトルは、クリーンな状態に保持されているチャンバー内の供給ゾーン11に導入され、搬送装置1により倒立状態に保持され、必要により、温水によりボトルの外面や内面がリンスされ、次の殺菌ゾーン13に搬送される。
【0023】
殺菌ゾーン13においては、ボトル内に充填する飲料の種類に応じて、殺菌液或いは熱水により殺菌処理が行われる。
殺菌液としては、通常、過酸化水素水、過酢酸水溶液、過酸化水素と過酢酸との混合液、次亜塩素酸ソーダの水溶液などが代表的である。また、熱水としては、通常、63℃以上の温度のものが使用される。
【0024】
例えば、非炭酸飲料であっても、ミルク入り飲料(コーヒー、紅茶等)などの飲料をボトルに充填する場合には、特に高度の殺菌を要するため、過酸化水素、過酢酸過酸化水素、或いは前記過酢酸との混合液の水溶液が適度の濃度に調整されて殺菌液として使用される。また、ミネラルウオーターなどの飲料水、各種の果汁類、お茶類を充填する場合には、殺菌の程度は中程度でよく、通常、熱水、或いは過酸化水素水や過酢酸水溶液による殺菌でよい。
さらに、炭酸飲料は、そのpHが低く、要求される殺菌レベルは最も低いため、次亜塩素酸ソーダを適度に薄めた水溶液による殺菌、或いは水による洗浄が行われる。
【0025】
そして、前記のような殺菌を、殺菌液を用いて行ったときには、その後、無菌水によりボトル内のリンスが行われる。また、熱水により殺菌が行われたときは、このようなリンスは必要でない。
【0026】
尚、ボトル内面のリンスや殺菌は、ボトル内に液供給用ノズルを侵入させ、このノズルから液を吐出することにより行われる。
【0027】
殺菌終了後のボトルは、殺菌ゾーン13から充填ゾーン15に搬送され、このゾーン15で、公知の反転装置によって倒立状態から正立状態にボトルを復帰させ、次いで内容液供給パイプにより、内容液のボトル内への充填が行われることとなる。
【0028】
本発明の無菌充填方法の無菌充填ラインにおける充填ゾーン15は、非炭酸用充填域15aと炭酸用充填域15bとに区画されており、図から理解されるように、非炭酸用充填域15aが上流側に、炭酸用充填域15bが下流側となるように、ボトルの搬送路に対して直列に配置されている。即ち、充填ゾーン15に導入されたボトルは、非炭酸飲料の充填を行う場合には、直接、非炭酸用充填域15aに供給され、炭酸飲料の充填を行う場合には、非炭酸用充填域15aを通って炭酸用充填域15bに供給されることとなる。
【0029】
前記のような非炭酸用充填域15aと炭酸用充填域15bとは、通常、チャンバーで仕切られており、炭酸飲料の充填を行う場合にのみ、非炭酸用充填域15aを通しての炭酸用充填域15bへのボトルの搬送が可能となるように、両者が連通するように、開口等が設けられている。
【0030】
非炭酸用充填域15a及び炭酸用充填域15bには、それぞれ、飲料タンクに連結された複数の飲料供給パイプを備えたそれ自体公知の充填機が配置されている。
即ち、前記の充填機が備えている複数の飲料供給パイプは、回転する円板状の支持体の外周に沿って複数設けられており、これらの飲料供給パイプは、円板の回転に同期して公転し、この円板の下方に搬送され且つ円板の回転に同期して移動するボトルに順次飲料を充填するという基本的な構造を有しているが、既に述べたように、非炭酸用充填域15aに配置されている充填機と炭酸用充填域15bに配置されている充填機とは、その構造が大きく異なっている。
【0031】
例えば、非炭酸用充填域15aに配置されている充填機では、飲料タンクが無菌充填ラインの外部に配置されており、この飲料タンクから長い配管が延びており、この配管が円板状の支持体の上面中心に設けられているロータリージョイントを介して飲料供給パイプに接続されている。即ち、非炭酸飲料は、飲料自体の加熱殺菌が必要であるため、飲料タンクが外部に配置され、このタンク内で加熱殺菌が行われるようになっている。
また、この飲料供給パイプからのボトルへの飲料の充填は、ボトル口部への液だれ防止及び充填環境を保持するために、このパイプの先端をボトルの口部に接触しないように位置せしめ、この状態で非炭酸飲料をボトル内に吐出することにより行われるようになっている。
【0032】
一方、炭酸用充填域15bに配置されている充填機では、飲料タンクが円板状の支持体の上面に該支持体と一体に回転するように搭載されており、長い配管を介することなく、直接、飲料供給パイプに接続されている。即ち、炭酸飲料は、それ自体で殺菌能力を有しており、殺菌処理は不要であるばかりか、炭酸ガスが溶解しているため、炭酸ガスの放出(ガスボリュームの低下)を防止することが必要である。このため、飲料タンクを支持体の上部に設けることによって、飲料供給パイプまでの搬送距離を可及的に短くしているわけである。
また、この飲料供給パイプからのボトルへの飲料の充填は、泡立ち等による炭酸ガスの放出を防止するために、飲料供給用パイプ(或いは支持体)を上下動可能に設け、このパイプの先端をボトルの口部に接触させた状態で炭酸飲料をボトル内に吐出することにより行われる。
【0033】
それぞれの充填域15a、15bでボトル内に非炭酸飲料或いは炭酸飲料を充填した後は、正立状態のまま、それぞれ専用の密封ゾーン(非炭酸用密封ゾーン17或いは炭酸用密封ゾーン18)に搬送され、キャップによる密封が行われる。
【0034】
前記の密封ゾーン17、18は、充填後に直ちに密封を行うために、充填ゾーン15のそれぞれの充填域15a、15bに隣接して配置されているが、チャンバーなどによりこれらの充填域15a,15bと仕切る必要は無く、これらの領域と常時連通する状態に保持されていてよい。また、これらの密封ゾーン17、18では、ボトルを一時的に位置固定するステーションが配置されており、その上部に、非炭酸用或いは炭酸用に専用のキャッパーが配置されており、飲料が充填されたボトルの口部にキャップを被せ、この状態で閉栓方向に回転することにより密封が行われる。この場合において、炭酸飲料が充填されるボトルに装着されるキャップは、ボトル内圧によるキャップの脱離が生じないように強固なシールが形成されるような構造となっており、また、キャッパーによる巻締めも、非炭酸用に適用されるものに比して、より強固に行われるようになっている。
【0035】
密封ゾーン17或いは18でキャップによる密封が行われた後は、各飲料が充填密封されたボトルは、チャンバー内から排出され、適宜、温水等によりボトルの外面を洗浄、乾燥した後、製品として販売に供される。
【0036】
前記のような無菌充填方法において、充填する飲料を切り替える場合には、このラインを停止し、この無菌充填ラインが配置されているチャンバー内の殺菌処理や充填する飲料の変更(或いは、それに伴う殺菌液などの変更、充填機の殺菌処理)などが行われる。チャンバー内の殺菌処理は、例えば、過酸化水素と過酢酸との混合液や次亜塩素酸ソーダの水溶液などの高度の殺菌液を使用してチャンバー内に残存する内容液を除去し、次いで温水等により殺菌液をリンスすることにより行われ、この際、搬送装置を空運転しておくことが好適である。また、このような稼動停止時の殺菌処理は、無菌充填ラインに形成されている各ゾーン毎に行ってもよい。
特に充填ゾーン15では、充填機の殺菌洗浄が行われるが、例えば、非炭酸用充填域15aでは、適宜、飲料タンクを殺菌液で殺菌し、リンスした後、加熱水蒸気を飲料タンクとから配管を通して飲料供給パイプを通すことにより、殺菌洗浄が行われる。一方、炭酸用充填域15bでは、要求される殺菌レベルが低レベルであるため、飲料タンク及び飲料供給パイプの殺菌洗浄は熱水を用いて行われる。
【0037】
図1に示す充填ラインでは、前記のようにして非炭酸飲料或いは炭酸飲料についての無菌充填が行われる。
即ち、非炭酸飲料を充填する場合には、チャンバー内の殺菌洗浄後、非炭酸用充填域15aと炭酸用充填域15bとをチャンバーにより完全に仕切っておき、この状態で、ポリエステルボトルを供給ゾーン11から殺菌ゾーン13に供給し、殺菌ゾーン13で所定の殺菌処理を行った後、充填ゾーン15内の非炭酸用充填域15aに直接搬送し、所定の充填機により非炭酸飲料をボトルに充填し、次いで非炭酸用密封ゾーン17に移送し、キャップによるボトルの密封が行われ、この無菌充填ラインから排出される。
一方、炭酸飲料を充填する場合には、チャンバー内の殺菌洗浄後、非炭酸用充填域15aと炭酸用充填域15bとを連通状態のままに維持しておき、この状態で、非炭酸飲料の場合と同様、ポリエステルボトルを供給ゾーン11から殺菌ゾーン13に供給し、殺菌ゾーン13で所定の殺菌処理が行われるが、殺菌処理後のボトルは、充填ゾーン15内の非炭酸用充填域15aを経由して、炭酸用充填域15bに搬送し、所定の充填機により炭酸飲料をボトルに充填し、次いで炭酸用密封ゾーン18に移送され、キャップによるボトルの密封が行われて、この無菌充填ラインから排出されることとなる。
【0038】
尚、図1においては、炭酸用充填域15bの位置を非炭酸用充填域15aの下流側に配置することが必要であり、非炭酸用充填域15aの上流側に炭酸用充填域15bを配置することはできない。非炭酸飲料の充填を行う場合、密封前のボトルを殺菌レベルの低い炭酸用充填域15aを通過させることはできないからである。
【0039】
上述した図1に示す無菌充填ラインを用いての無菌充填方法では、非炭酸飲料及び炭酸飲料の無菌充填が、全く同じ供給ゾーン11及び殺菌ゾーン13を利用しているばかりか、殺菌ゾーン13から炭酸用充填域15bへのボトルの移送のために、専用の搬送路を設ける必要がなく、搬送路を切り替えることなく、一つの搬送路で非炭酸用充填域15a及び炭酸用充填域15bにボトルを搬送することができる。例えば、炭酸用充填域15bにボトルを搬送するために、非炭酸用充填域15a或いはこれに連通している非炭酸用密封ゾーン17を迂回して搬送路を設ける必要が無い。従って、非炭酸飲料用の無機充填ラインと炭酸飲料用の無菌充填ラインとを設けた場合に比して、その設置スペースを著しく小さくすることが可能となる。
【0040】
図2には、本発明の無菌充填方法を実施するための無菌充填ラインの他の例を示す図であって、図2の無菌充填ラインは、図1の無菌充填ラインと全く同様、所定のクリーン度に維持されたチャンバー内に設けられる。ボトル搬送装置1が、チャンバーの入り口側から出口側に向かって順に、供給ゾーン11、殺菌ゾーン13、充填ゾーン15を通って延びており、この充填ゾーン15も、図1と同様、非炭酸用充填域15aと炭酸用充填域15bとに分割されており、各ゾーンでの殺菌方法なども、図1の無菌充填ラインと全く同様である。
【0041】
そして、図2の無菌充填ラインでは、充填ゾーン15の非炭酸用充填域15aと炭酸用充填域15bとがボトル搬送路に対して並列に配置されていると共に、充填ゾーン15は、共通の密封ゾーン19に連なっている。即ち、このラインでは、殺菌ゾーン13で殺菌処理されたボトルを、搬送路の切り替えによって非炭酸用充填域15a及び炭酸用充填域15bに搬送されることとなるが、これらの充填域15a,15bが並列して配列され、非炭酸用と炭酸用の密封ゾーン19を共有させることにより、この密封ゾーン19を充填域15a,15bのそれぞれに隣接して配置する必要がなく、より一層、ラインのコンパクト化を測ることができる。
【0042】
尚、このような並列配置の態様では、非炭酸飲料が充填されたボトルと炭酸飲料が充填されたボトルは、同じ密封ゾーン19でキャップによる密封が行われるため、炭酸飲料の殺菌レベルを非炭酸飲料のレベルとし、その密封度合いは、非炭酸飲料或いは炭酸飲料が充填されたボトルに対応するように設定されて密封が行われるようになっている。
また、前記した共有の密封ゾーン19を非炭酸用充填域に連なって設けることにより、非炭酸飲料の殺菌レベルを低下させることなく、容易に非炭酸飲料及び炭酸飲料共有の密封ゾーンとすることが可能となる。
【0043】
上述した図1或いは図2に示す無菌充填ラインを用いて行われる本発明の無機充填方法によれば、小さな設置スペースで非炭酸飲料と炭酸飲料の無菌充填を行うことができるため、生産効率を著しく向上させることができ、工業的に極めて有用である。
【符号の説明】
【0044】
11:供給ゾーン
13:殺菌ゾーン
15:充填ゾーン
15a:非炭酸用充填域
15b:炭酸用充填域
17:非炭酸密封ゾーン
18:炭酸密封ゾーン
19:共有密封ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌チャンバー内に配置された無菌充填ラインでポリエステルボトルに飲料を無菌充填するための無菌充填方法において、
前記無菌充填ラインは、前記ボトルの供給ゾーン、前記ボトルを殺菌液及び/又は熱水で殺菌する殺菌ゾーン、飲料の充填ゾーン及びキャップによる密封ゾーンが配備されており、この順に各ゾーンをボトルが通過するように設けられているボトル搬送路を有していると共に、
前記充填ゾーンを、非炭酸飲料用充填域と炭酸飲料用充填域とに区画し、これらの充填域のそれぞれが前記密封ゾーンに連通しており、
非炭酸飲料のポリエステルボトルへの充填を行う場合には、前記供給ゾーン、前記殺菌ゾーン、前記非炭酸飲料用充填域及び前記密封ゾーンの順に該ボトルが搬送され、
炭酸飲料のポリエステルボトルへの充填を行う場合には、前記供給ゾーン、前記殺菌ゾーン、前記炭酸飲料用充填域及び前記密封ゾーンの順に該ボトルが搬送されることを特徴とする無菌充填方法。
【請求項2】
前記非炭酸飲料用充填域と炭酸飲料用充填域とが、前記ボトルの搬送路に対して、この順で直列に配列されていると共に、
前記密封ゾーンとして、前記非炭酸飲料用充填域に連通する非炭酸飲料用密封ゾーンと前記炭酸飲料用充填域に連通する炭酸飲料用密封ゾーンとが設けられており、
非炭酸飲料の前記ポリエステルボトルへの充填を行う場合には、前記供給ゾーンから前記殺菌ゾーンに搬送された該ボトルは、直接、前記非炭酸飲料用充填域に搬送され、次いで前記非炭酸飲料用密封ゾーンに搬送され、
炭酸飲料の前記ポリエステルボトルへの充填を行う場合には、前記供給ゾーンから前記殺菌ゾーンに搬送された該ボトルは、非充填の前記非炭酸飲料用充填域を通って前記炭酸飲料用充填域に搬送され、次いで前記炭酸飲料用密封ゾーンに搬送される請求項1に記載の無菌充填方法。
【請求項3】
前記非炭酸飲料用充填域と炭酸飲料用充填域とが、前記ボトルの搬送路に対して並列に配置されていると共に、該非炭酸飲料用充填域及び炭酸飲料用充填域に連なる密封ゾーンを共有している請求項1に記載の無菌充填方法。
【請求項4】
前記密封ゾーンが非炭酸飲料用充填域に連なって設けられている請求項3に記載の無菌充填方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−121622(P2011−121622A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282112(P2009−282112)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】