説明

無電源ワイヤレスモニタリングシステムと該システムに使用される子局

【課題】人間のアクセスが困難な環境に設置されている、社会インフラシステム内の各装置の稼動状況又は装置の置かれている環境の状況を、当該装置内に電池による電源を持つことなく半永久的に、且つ装置が設置された環境の好ましからぬ影響から人間を隔離しうる距離に確保しつつ、高い信頼性をもって監視又は調査する手段を提供する。
【解決手段】下り回線4に同一の周波数帯域に存在する電力供給用無変調円偏波搬送波と信号伝送用変調円偏波搬送波を用い、上り回線5に下り回線の電力供給用無変調円偏波搬送波と同一周波数逆旋偏波の信号伝送用変調円偏波搬送を用いた無電源ワイヤレスモニタリングシステムであって、子局10は平衡型の子局受信アンテナ11と、整流および周波数ミキシングを同時に行う非線形回路19を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所領域、高濃度有害化学物質充満領域、放射線取り扱い領域、高電力通過領域、高温領域、高圧領域、高純度衛生環境を維持すべき領域などの人(生物)が直接、アクセスをすることが安全・健康上の理由で適当でない領域の状態を遠方から監視あるいは調査することを可能とするワイヤレスモニタリングシステムに関し、特に、そのような監視あるいは調査を可能とする装置(子局)を一度設置した以後も同装置内における一次電池等の電力発生手段の定期的交換を要することなく同装置の信頼性確保が可能な無電源ワイヤレスモニタリングシステムと該システムに使用される子局に関する。
【背景技術】
【0002】
電力、水道、通信等の社会インフラシステムは、利用者の利便性向上の要求に従って年々高度化・複雑化しており、一旦、同システムが正常動作をしなくなると多くの直接的な利用者が不利益を被ることに留まらず、複雑に関連しあった他のシステムにも波及効果が生じ、他のシステムの利用者にも何からの被害が伝播し、ひいては地域全体、社会全体の混乱を引き起こす可能性が出てきている。現代になって頻繁に報道されている、広域大停電、広域毒性化学物質汚染等は既に大きな社会問題に発展している。
【0003】
このような課題を解決する一つの方策は、同社会インフラシステムの要となる装置の状態、また同装置が置かれている周囲環境の状態を調べることにある。
【0004】
一旦、ある社会インフラシステムが稼動不能に陥ったとき、同システム内のどの装置が正常動作をしていないかを迅速に調査することが出来れば、当該社会インフラシステムの早期復帰が可能となり、他の社会インフラシステムへの悪影響の拡散を最小限度にとどめることができる。
【0005】
また、定期的な社会インフラシステム内の各装置の稼動状況、あるいは装置の置かれている環境の状況を調査あるいは監視することが出来れば、同社会インフラシステムの不稼動状態を未然に防ぐことも可能となる。
【0006】
現代においては、利用者が高度なサービスの享受を要求しているために、利用者の通常の居住地から距離的に隔離された場所に同社会インフラシステムの中核をなす装置を集中させ、通常の居住地近隣では危険あるいは問題となるような極限的環境で装置を稼動させているのが実情である。
【0007】
電力関係では、放射線被爆の危険性がある原子力発電所、引火爆発の危険性のある火力発電所、高落差箇所を多く含む水力発電所、また、発電所で発生された高圧電力を伝送・分配する、送電・変電施設がある。水道では、安全・衛生面から貯水池や浄水場内は人を含む生物からの汚染を排除するために、人は各施設への容易なアクセスが禁じられる。通信では、無線通信を実現するために、基地局アンテナは高所設置が一般的であり、光通信においても地下、地中にファイバ等の伝送媒体が設置されるため、何れも人が該設備へアクセスすることは容易ではない。
【0008】
以上の状況を反映して、電磁波の透過性・迂回伝搬性・非接触性に着目して、上記各設備に何らかの状態検出機構を付帯させ、電波を用いてその状態を無線信号として検出する試みがなされている。
【0009】
しかしながら、電磁波の球面波的伝播特性に伴う対距離減衰特性が伝達信号のエネルギーを伝送路の中に閉じ込めて伝送する有線通信と比べて桁違いに大きいため、情報を無線で伝送するために社会インフラシステムを構成する装置が外部空間に電磁波を放射するための電力を如何に工面するかが大きな技術課題となっている。
【0010】
当該装置自体が電力を扱うものであっても、その扱っている電力の一部を当該装置の稼動状態の検査および当該装置が置かれている周囲環境の調査に使うということは、それ自体、装置の本来すべき動作に擾乱を与えるもので、出来れば避ける方が望ましい。
【0011】
このような状況下では電池を用いることが考えられるが、一次電池の使用は装置自体が置かれている環境のため一定期間後に交換を必要とすることは、そのために新たな危険性を生んでしまうという意味で好ましくない。また、二次電池の使用も考えられるが、新たに二次電池自体の化学特性を保証しなければならない問題が現状では解決しておらず、社会インフラシステムが社会的に容認される寿命を考えたとき、二次電池とても半永久と考えることはできず、決定的な解決策にはならない。
【0012】
電池を使わない解決策としては、無線にて当該装置が使用する電力を供給する方法が考えられる。本方法を用いれば、現在の電気素子、電子素子の寿命は、前述の社会インフラシステムの寿命と比べて十分に長いと考えられるので、電源の交換に際する安全性の問題、信頼性の問題は解決される。
【0013】
しかしながら、上述のように電磁波は空間伝播の際に減少する電力が極めて大きいため、如何に電磁波を用いて信号伝達とエネルギー伝達を効率よく実現するかが大きな課題となっている。
【0014】
電磁波を用いて電力と信号の伝達を実現する従来技術として、無線装置が電力無線伝送用の専用アンテナと信号伝送用の専用アンテナを具備する方法が各種提案されている。例えば、この考え方を用いた森林内に設置されている航空機の飛来履歴を装置内に記録するシステムにおいて、同記録を外部に無線で信号を電磁波に重畳させて伝送する技術が非特許文献1で述べられている。
【0015】
また、電磁波を用いて電力と信号の伝達を実現する他の従来技術として、高周波タグシステムと一般的に呼ばれる方法が各種提案されている。例えば、この考え方を用いて荷物を識別するシステムについて非特許文献2で述べられている。
【非特許文献1】「Microwave Theory and Techniques, IEEE Transactions」; Vol.53, Issue.12; p.3735-3743
【非特許文献2】「IEEE TRANSACTIONS ON ANTENNAS AND PROPAGATION」; Vol.53, NO.12; p.3870-3876
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、非特許文献1に記載された技術では、1)装置が森林内に設置されているため装置の場所が特定できない、2)装置が放射する電磁波の方向を動的に可変とする複雑な処理をするために、装置が有するアンテナが本質的に信号用送信アンテナと信号用受信アンテナと電力獲得用アンテナの三つであり、装置全体の寸法が大きくなってしまう、3)上記複雑な処理のために電磁波で供給される電力とは別の電力を必要とする、という問題がある。
【0017】
一方、非特許文献2に記載のシステムで用いられる装置においては、信号の送受信用のアンテナと電力獲得用のアンテナが同一アンテナで実現されており小型化がなされているが、本システムでは親局と子局の最大距離として数メートル程度しか想定されていないため、人間にとって好ましからぬ影響がある場所に子局が設置されたときに、隔離するための距離を十分に確保できない問題がある。また、本システムでは、通信用アンテナと電力獲得用アンテナは一つのアンテナで代用され、通信と電力獲得を時分割によって個別動作としているので、装置の放射する電磁波の到達距離を伸ばすべく、同電磁波のエネルギーを増加させるためには、電力獲得用の時間を長く取らざるを得ず、その間、完全に通信が切れた状態となってしまう。このため、親局は、子局が通信不能状態に陥っているのか、正常状態で電力獲得状態であるかの判別が困難になる問題がある。少なくとも、完全な信号伝達が出来ずとも親局と子局の通信リンクが確立しているか否かの情報を得ることが出来なければ、現在の社会インフラシステムに要請される信頼性を確保することは難しいと考えられる。
【0018】
従って、本発明の目的は、人間のアクセスが困難な環境に設置されている、社会インフラシステム内の各装置の稼動状況、あるいは装置の置かれている環境の状況を、当該装置内に電池による電源を持つことなく半永久的に、且つ装置(子局)が設置された環境(場所)の好ましからぬ影響から人間を隔離しうる距離に確保しつつ、高い信頼性をもって監視あるいは調査する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記目的を達成するため、親局(第1の送受信機)と子局(第2の送受信機)を有し、電磁波である電力供給用搬送波および通信用搬送波を用いた無電源ワイヤレスモニタリングシステムであって、前記親局は、前記電力供給用搬送波および変調を施された前記通信用搬送波を前記子局に伝送する親局送信アンテナと、前記子局からの出力を受ける親局受信アンテナとを具備し、前記子局は、平衡型アンテナである子局受信アンテナと、該子局受信アンテナの出力を入力とする非線形回路と、該非線形回路の出力を入力とする平滑回路と、前記電力供給用搬送波の周波数を通過帯域とする第1の高周波帯域通過フィルタと、前記電力供給用搬送波と前記通信用搬送波の差の周波数成分を有する中間周波数を通過帯域とする中間周波帯域通過フィルタと、該中間周波帯域通過フィルタの出力を入力とし、前記平滑回路の出力を電源とする復調回路と、該復調回路の出力であるベースバンド信号を受信信号として用いて信号処理し新たな送信信号を送出するベースバンド回路と、該信号処理されたベースバンド信号を用いて前記第1の高周波帯域通過フィルタの出力である前記電力供給用搬送波の周波数を有する高周波信号を変調する変調器と、該変調器の出力を空間に放射する子局送信アンテナとを具備しており、前記親局送信アンテナと前記子局受信アンテナは、同じ回転方向を有する円偏波アンテナであり、前記子局送信アンテナと前記親局受信アンテナは、前記回転方向とは逆旋の偏波特性を有する円偏波アンテナであることを特徴とする無電源ワイヤレスモニタリングシステムを提供する。
【0020】
本発明は、下記のいずれか1つ以上の特徴を有する発明を包含する。
(1)前記非線形回路は、前記子局受信アンテナに結合した平衡入力を二つの不平衡出力に分配する平衡不平衡分配回路と、該二つの不平衡出力に各々結合した非線形素子と、該非線形素子を通過した夫々の信号を分岐する第1および第2の分岐回路と、該第1及び第2の分岐回路の分岐出力を合成する第1の合成回路と、該第1の合成回路の出力が前記第1の高周波帯域通過フィルタを介して前記変調回路の高周波信号となり、前記非線形素子を通過した夫々の信号を合成する第2の合成回路とを備え、該第2の合成回路の出力が前記平滑回路と前記中間周波帯域通過フィルタの入力となることを特徴とする。
(2)前記第2の合成回路の出力が電力供給用搬送波帯域阻止フィルタを介して出力されることを特徴とする。
(3)前記平衡不平衡分配回路と前記非線形素子に代えて、前記子局受信アンテナの夫々の端子と接地電位との間にダイオードが接地電位をカソード側となるように夫々設置され、前記子局受信アンテナの夫々の端子と前記第1および第2の分岐回路の間にダイオードが該各々の分岐回路をアノード側となるように夫々設置されることを特徴とする。
(4)前記第1の合成回路が逆相合成回路であることを特徴とする。
(5)前記逆相合成回路がラットレース型合成回路であることを特徴とする。
(6)前記第2の合成回路が同相合成回路であることを特徴とする。
(7)前記同相合成回路がウィルキンソン型合成回路であることを特徴とする。
(8)前記電力供給用搬送波阻止フィルタに代えて、前記電力供給用搬送波の周波数に対する四分の一波長伝送線路が挿入され、前記第2の合成回路の合成出力端と結合していない該四分の一波長伝送線路の一端と接地電位の間に前記電力供給用搬送波の周波数を通過帯域とする第2の高周波帯域通過フィルタが設置されていることを特徴とする。
(9)前記電力供給用搬送波の電力が前記通信用搬送波の電力よりも高いことを特徴とする。
(10)前記電力供給用搬送波の周波数が前記通信用搬送波の周波数よりも低いことを特徴とする。
(11)前記子局送信アンテナが不平衡型であることを特徴とする。
(12)前記変調器の変調方式が周波数変調であることを特徴とする。
(13)前記通信用搬送波が周波数変調されていることを特徴とする。
(14)前記子局受信アンテナの特性インピーダンスが、前記平滑回路の特性インピーダンスの二倍より大きいことを特徴とする。
(15)前記ベースバンド回路は、温度、圧力、化学物質の濃度、電気、音、電磁波、湿度、放射能のいずれかに反応するセンサが結合されており、該センサの出力信号を用いて、前記ベースバンド回路の送出ベースバンド信号に演算が施されることを特徴とする。
(16)前記ベースバンド回路は、前記子局の識別情報を格納したメモリが結合されており、前記通信用搬送波の変調信号に前記識別情報が重畳され、前記ベースバンド回路に入力される前記ベースバンド信号に前記識別情報を保存して、前記ベースバンド回路内の演算により、前記ベースバンド回路に入力される子局の識別情報と前記メモリに格納されている前記識別情報を比較して、両者が一致したときのみ前記ベースバンド回路の送出ベースバンド信号に情報を付加する演算が施されることを特徴とする。
(17)前記ベースバンド回路の送出ベースバンド信号への情報の付加が、前記センサの出力信号を用いた演算によりなされることを特徴とする。
(18)前記子局送信アンテナおよび前記子局受信アンテナが平面アンテナであることを特徴とする。
(19)前記子局が一体の多層プリント基板で構成され、該多層プリント基板のいずれかの面に前記子局送信アンテナおよび前記子局受信アンテナが形成され、他の面に前記子局を形成するアンテナ以外の要素が形成あるいは設置されることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記目的を達成するため、電磁波である電力供給用搬送波および通信用搬送波を用いた無電源ワイヤレスモニタリングシステムに使用される子局(送受信機)であって、前記子局は、平衡型アンテナである子局受信アンテナと、該子局受信アンテナの出力を入力とする非線形回路と、該非線形回路の出力を入力とする平滑回路と、前記電力供給用搬送波の周波数を通過帯域とする第1の高周波帯域通過フィルタと、前記電力供給用搬送波と前記通信用搬送波の差の周波数成分を有する中間周波数を通過帯域とする中間周波帯域通過フィルタと、該中間周波帯域通過フィルタの出力を入力とし、前記平滑回路の出力を電源とする復調回路と、該復調回路の出力であるベースバンド信号を受信信号として用いて信号処理し新たな送信信号を送出するベースバンド回路と、該信号処理されたベースバンド信号を用いて前記第1の高周波帯域通過フィルタの出力である前記電力供給用搬送波の周波数を有する高周波信号を変調する変調器と、該変調器の出力を空間に放射する子局送信アンテナとを具備しており、前記子局受信アンテナと前記子局送信アンテナとは、お互いに異なる回転方向を有する円偏波アンテナであることを特徴とする無電源ワイヤレスモニタリングシステムに使用される子局(送受信機)を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、人間のアクセスが困難な環境に設置されている、社会インフラシステム内の各装置の稼動状況、あるいは装置の置かれている環境の状況を、当該装置内に電池による電源を持つことなく半永久的に、且つ装置(子局)が設置された環境(場所)の好ましからぬ影響から人間を隔離しうる距離に確保しつつ、高い信頼性をもって監視あるいは調査する手段を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔本発明の第1の実施の形態〕
(無電源ワイヤレスモニタリングシステムの構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの構成を示す概略図である。本実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムでは、親局(BS)1と子局(CS)10との間で電力の伝送と通信を行う。
【0024】
(親局の構成)
親局1は、円偏波アンテナである親局送信アンテナ2と、該親局送信アンテナ2と逆旋の偏波特性を持つ円偏波アンテナである親局受信アンテナ3を具備する。
【0025】
(親局の動作)
親局1から子局10への下り回線電波4では、同じ周波数帯域に存在する電力供給用無変調搬送波(円偏波)と信号伝送用変調搬送波(円偏波)が同時に子局10へ送出されている。
【0026】
ここで、信号伝送用搬送波は周波数変調されていることが望ましい。無線通信に使われる変調方式には、振幅変調、位相変調、周波数変調があるが、ディジタル無線の変調方式では、周波数変調のみが変調後の変調信号の周波数帯域の拡大が生じる。周波数帯域の拡大は、信号伝送品質の向上が図られるので、同一の信号伝送品質を考えれば、より遠くに信号を伝送できることとなるため、周波数変調を選択することにより、親局と子局の通信可能距離を拡大する効果がある。
【0027】
(子局の構成)
子局10は、平衡型の円偏波アンテナである子局受信アンテナ11、該子局受信アンテナ11と逆旋の偏波特性を持つ円偏波アンテナである子局送信アンテナ12、ベースバンド回路(BB)13、変調器(MOD)14、復調器(DEMOD)15、平滑回路16、電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ17、中間周波数帯域通過フィルタ18、および非線形回路19を具備する。
【0028】
ここで、子局送信アンテナ12は、不平衡型であることが望ましい。これにより、平衡−不平衡変換回路(バラン)が不要となり、装置の小型化、低損失化が可能となる。
【0029】
また、前述した理由により、変調器15の変調方式が周波数変調であることが望ましい。
【0030】
また、子局受信アンテナ11の特性インピーダンスが平滑回路16の特性インピーダンスの二倍より大きいことが望ましい。アンテナから平滑回路への高周波信号のエネルギーの伝達は、該平滑回路のインピーダンスがアンテナのインピーダンスより低い方が容易になされ、より多くの電力が該平滑回路に供給されるためである。
【0031】
(子局の動作)
子局10から親局1への上り回線電波5では、下り回線電波4の電力供給用無変調搬送波(円偏波)と同一周波数逆旋偏波の信号伝送用変調搬送波(円偏波)が送出されている。
【0032】
子局受信アンテナ11の受信電力は、先ず非線形回路19に入力され、その出力が平滑回路16と電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ17と中間周波数帯域通過フィルタ18に入力される。平滑回路16の直流出力は、ベースバンド回路13および復調器15の電源として各々に供給される。また、中間周波数帯域通過フィルタ18の出力は、復調器15に入力され、ベースバンド信号に変換された後、ベースバンド回路13に入力される。ベースバンド回路13で信号処理を受けた後、該ベースバンド信号は、変調器14に入力される。変調器14では、電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ17の出力である電力供給用搬送波が変調される。変調器14からの出力は、子局送信アンテナ12を介して親局1に向けて電波として発射される。
【0033】
(電磁波の周波数)
本実施の形態において、親局1と子局10間の信号および電力の伝送を担う電磁波の周波数は数百MHzから数GHzとし、この周波数帯の電磁波に数十MHz以下の周波数の信号で変調を掛け、周波数変換により数十MHz以下の周波数の信号を取り出し、変調や復調を行う。これにより、効率の良い無線システムを実現できる。理由は以下の通りである。
【0034】
外部から電磁波によって供給される電力を用いて再び外部に電磁波を放射する場合、この放射される電磁波の電力を最大にするためには、外部から電磁波によって供給される電力を如何に効率よく該放射される電磁波の電力に変換するかが重要である。
【0035】
地上の電磁波の伝播特性およびアンテナ効率の点から、屋外の無線通信に用いるべき電磁波の周波数は数百MHzから数GHz(より具体的には300MHz〜3GHz程度であり、室内の応用を考えれば上限が6GHz程度)が好ましく、数百MHz未満の周波数では現実的な装置の寸法(数十センチ以下)で効率の良いアンテナを実現することが不可能であり、数GHzを超える周波数では塵や水蒸気による電波伝播時の伝播損失が大きくなり屋外での電磁波のエネルギー伝送効率劣化が無視できない。
【0036】
一方、現在の半導体素子の特性より、数十MHz以下の周波数帯でのアナログ回路の実現が容易であり、該半導体素子の製造コストも低いため、無線機の主要回路要素である変調器や復調器の主たる動作周波数は数十MHz以下が望ましい。
【0037】
以上より、本実施の形態における電磁波の周波数を上述の通りとした。なお、本実施の形態においては、電力供給用搬送波の電力が信号伝送用搬送波の電力よりも大きいため、電力供給用搬送波の周波数を信号伝送用搬送波の周波数よりも低くすることにより、親局の送信回路の電力効率を向上することが出来る。
【0038】
また、子局の構成・動作を上述のようにした理由を以下に説明する。
電磁波の空間伝播特性のため、電力を供給するための数百MHzから数GHzの電磁波の電力は、信号を伝達するための電磁波の電力より遥かに大きくなければならないので、外部から電磁波によって供給される電力を最も効率よく外部に放射する電磁波の電力に変換する方法は、何らの電力変換および周波数変換を経ることなく、電力を伝送するために用いている電磁波をそのまま用いることである。
【0039】
しかしながら、増幅機能を半導体素子に持たせるためには何らかの電源が必要となるから、この電力を伝送するための電磁波の一部のエネルギーと信号を伝送するための電磁波の殆どのエネルギーを整流、平滑して直流とする必要がある。
【0040】
ここで着目すべきは、数十MHz以下の周波数の信号を得るための周波数変換も、直流を得るための整流も半導体非線形素子で実現されることである。電気回路、電子回路において現実的に電力を最も消費する素子は半導体素子であり、換言すれば、この半導体素子の数を減らすことで電磁波の送信受信をする装置の電力効率を上げることができる。具体的には、一つの半導体素子が周波数変換と整流を同時に受け持つ回路とすればよい。
【0041】
また、この場合、親局から子局へ向かう大電力の電力供給用電磁波と同じ周波数成分を持つ子局から親局に向かう信号を変調された小電力の電磁波が同時に混在するが、これら二つの電磁波をお互いに逆回転の円偏波とすることで、お互いに干渉を抑制しつつ、各方向への電磁波の伝送が可能となる。
【0042】
(本発明の第1の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
電力供給用搬送波を用いて親局から子局に電力を供給しつつ、同時に親局−子局間で無線通信が可能となるため、子局が電池などの交換を必要とする電源を有することなく情報の授受を親局との間で遠隔且つ非接触に行うことができ、子局を人間が直接アクセスすることが出来ない環境に設置することで同環境に関係する情報の監視および調査を無線で可能とする。
【0043】
〔本発明の第2の実施の形態〕
(子局の構成)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。以下に説明する子局の構成・動作以外は、第1の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムと同様である。
【0044】
本実施の形態に係る子局20は、平衡型の円偏波アンテナである子局受信アンテナ11、該子局受信アンテナ11と逆旋の偏波特性を持つ円偏波アンテナである子局送信アンテナ12、ベースバンド回路(BB)13、変調器(MOD)14、復調器(DEMOD)15、平滑回路16、電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ17、中間周波数帯域通過フィルタ18、平衡不平衡二線変換回路21、第1の合成回路22、第2の合成回路23、分岐回路24a,24b、および非線形素子25a,25bを具備する。
【0045】
(子局の動作)
子局受信アンテナ11の平衡受信電力は、先ず平衡不平衡二線変換回路21に入力され、二系統の不平衡線に分配される。その分配された高周波電力は夫々、非線形素子25a,25bを通過後、分岐回路24a、24bによって二分配され、各々の分岐回路の一つの出力は第2の合成回路23に入力され、その出力は平滑回路16と中間周波数帯域通過フィルタ18に入力される。各々の分岐回路の他の出力は第1の合成回路22に入力され、その出力は電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ17に入力される。平滑回路16の直流出力は、ベースバンド回路13および復調器15の電源として各々に供給される。また、中間周波数帯域通過フィルタ18の出力は、復調器15に入力され、ベースバンド信号に変換された後、ベースバンド回路13に入力される。ベースバンド回路13で信号処理を受けた後、該ベースバンド信号は、変調器14に入力される。変調器14では、電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ17の出力である電力供給用搬送波が変調される。変調器14からの出力は、子局送信アンテナ12を介して親局1に向けて電波として発射される。
【0046】
(本発明の第2の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、本発明の第1の実施の形態の効果のほかに以下の効果を奏する。
親局から伝送された電力供給用搬送波と信号伝送用搬送波の異なる周波数の電磁波の電力を電力抽出用と信号抽出用とに任意に配分することが可能となり、ワイヤレスモニタリングシステムの設計自由度を向上させる。
【0047】
〔本発明の第3の実施の形態〕
(子局の構成)
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。既述の本発明の各種実施の形態と同様である点の説明は省略する。
【0048】
本実施の形態に係る子局30は、中間周波数帯域通過フィルタ18と第2の合成回路23の間に、電力供給用搬送波周波数帯域阻止フィルタ31が挿入されている点において第2の実施の形態と相違している。
【0049】
復調器15に高周波信号(電力供給用搬送波と信号伝送用搬送波)を通さないために設けられた中間周波数帯域通過フィルタ18の前に電力供給用搬送波周波数帯域阻止フィルタ31を設けたのは、信号伝送用搬送波の成分を平滑回路16にのみ送り込むためであり、また、電力供給用搬送波のエネルギーの一部分を平滑回路16に、残りの部分を変調器14に分配するためである。
【0050】
(本発明の第3の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、第2の実施の形態に比べて、子局より電波を発射する際の搬送波の信号回路系への漏洩を抑制することが出来るので、子局の送信電力効率を向上させる効果がある。
【0051】
〔本発明の第4の実施の形態〕
(子局の構成)
図4は、本発明の第4の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。既述の本発明の各種実施の形態と同様である点の説明は省略する。
【0052】
本実施の形態に係る子局40は、平衡不平衡二線変換回路21および非線形素子25a,25bの代わりに、変形ダイオードブリッジ41a,41b,41c,41dを用いている点において第3の実施の形態と相違している。
【0053】
(本発明の第4の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、第3の実施の形態に比べて、平衡不平衡二線変換回路をダイオード二つで等価的に実現できるので、子局の回路の簡略化が実現でき、子局の製造コストを低減させる効果がある。
【0054】
〔本発明の第5の実施の形態〕
(子局の構成)
図5は、本発明の第5の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。既述の本発明の各種実施の形態と同様である点の説明は省略する。
【0055】
本実施の形態に係る子局50は、第1の合成回路22が逆相合成回路52となっている点において第4の実施の形態と相違している。
【0056】
(本発明の第5の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、親局から伝送される電力供給用搬送波を子局が受信したエネルギーを一周期中すべての期間でもれなく利用することが出来るので、子局の送信電力効率を向上させる効果がある。
【0057】
〔本発明の第6の実施の形態〕
(子局の構成)
図6は、本発明の第6の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。既述の本発明の各種実施の形態と同様である点の説明は省略する。
【0058】
本実施の形態に係る子局60は、逆相合成回路52がラットレース回路62で実現されている点において第5の実施の形態と相違している。
【0059】
(本発明の第6の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、逆相合成回路52の入力ポート間のアイソレーションが確保でき、且つ入力ポートでのインピーダンス整合条件を良好に保つことが出来るので、子局受信アンテナ11から得られる電力供給用搬送波の高周波エネルギーを高効率に変調器14に導くことができ、子局の送信電力効率を向上させる効果がある。
【0060】
〔本発明の第7の実施の形態〕
(子局の構成)
図7は、本発明の第7の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。既述の本発明の各種実施の形態と同様である点の説明は省略する。
【0061】
本実施の形態に係る子局70は、第2の合成回路23が同相合成回路73となっている点において第5の実施の形態と相違している。
【0062】
(本発明の第7の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、親局から伝送される電力供給用搬送波と信号伝送用搬送波とで生成される両者の周波数の差の周波数を有する中間周波の電磁波を効率よく復調器15に導くことが出来るので、子局の受信変調信号の復調効率を向上させる効果がある。
【0063】
〔本発明の第8の実施の形態〕
(子局の構成)
図8は、本発明の第8の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。既述の本発明の各種実施の形態と同様である点の説明は省略する。
【0064】
本実施の形態に係る子局80は、第2の合成回路23(第7の実施の形態において同相合成回路73)がウイルキンソン型合成回路83となっている点において第6の実施の形態と相違している。
【0065】
(本発明の第8の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、第2の合成回路23(同相合成回路73)の入力ポート間のアイソレーションが確保でき、且つ入力ポートでのインピーダンス整合条件を良好に保つことが出来るので、子局受信アンテナ11から得られる信号伝送用搬送波の変調信号のエネルギーを高効率に復調器15に導くことが出来るので、子局の受信変調信号の復調効率を向上させる効果がある。
【0066】
〔本発明の第9の実施の形態〕
(子局の構成)
図9は、本発明の第9の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。既述の本発明の各種実施の形態と同様である点の説明は省略する。
【0067】
本実施の形態に係る子局90は、電力供給用搬送波周波数帯域阻止フィルタ31の代わりに、同相合成回路33と中間周波数帯域通過フィルタ18の間に電力供給用搬送波の周波数に対する四分の一波長相当の電気長を有する伝送線路91を挿入し、該伝送線路91の中周波数帯域通過フィルタ18側に一旦を接地電位とする第2の電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ92を挿入した点において第7の実施の形態と相違している。
【0068】
(本発明の第9の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、平滑回路16と同相合成回路73および逆相合成回路52を含む子局受信アンテナ11側の高周波回路部とのインピーダンス比を伝送線路91の特性インピーダンスと電気長により調整可能となるので、親局から伝送された電力供給用搬送波と信号伝送用搬送波の異なる周波数の電磁波の電力を電力抽出用と信号抽出用とに配分する設計の自由度を向上させる効果がある。また、電力供給用搬送波阻止フィルタ31を電力供給用搬送波の周波数に対する四分の一波長伝送線路および第2の電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ92で構成したことにより、少ない部品点数で、かつ高い効果を得ることができる。
【0069】
〔本発明の第10の実施の形態〕
(子局の構成)
図10は、本発明の第10の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。既述の本発明の各種実施の形態と同様である点の説明は省略する。
【0070】
本実施の形態に係る子局100は、ベースバンド回路13にセンサ回路(SNS)93が新たに結合しており平滑回路16より直流の供給を受けている点において第9の実施の形態と相違している。
【0071】
センサ回路93としては、例えば、温度、圧力、化学物質の濃度、電気、音、電磁波、湿度、放射能のいずれかに反応するセンサが挙げられる。該センサの出力信号を用いて、ベースバンド回路13の送出ベースバンド信号に演算が施される。
【0072】
(本発明の第10の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、センサ回路93を用いて子局が設置されている場所の周辺環境に関連する情報を収集して、同情報を無線にて親局に伝送することが可能となるので、人間が直接アクセスすることが出来ない環境の無線モニタリングを実現することが可能となる。また、センサを結合させ一体化することで無線モニタリング用の子局を小さくできる。
【0073】
〔本発明の第11の実施の形態〕
(子局の構成)
図11は、本発明の第11の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。既述の本発明の各種実施の形態と同様である点の説明は省略する。
【0074】
本実施の形態に係る子局110は、ベースバンド回路13に記憶回路(ROM)94が新たに結合している点において第10の実施の形態と相違している。
【0075】
(本発明の第11の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、記憶回路94に子局固有の識別情報を格納して置き、センサ回路93を用いて子局が設置されている場所の周辺環境に関連する情報を収集して、同情報を無線にて親局に伝送する際に、同識別情報を同時に伝送することが可能となるので、複数の子局が比較的近接に配置される場合でも、具体的にどの子局からの情報かを識別することが可能となり、親局の送信アンテナあるいは受信アンテナの指向性を鋭くして空間的に子局を断定する手法に比べて、格段に低コストで子局の識別機能を実現することが可能となる。
〔本発明の第12の実施の形態〕
(子局の構成)
図12は、本発明の第12の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。既述の本発明の各種実施の形態と同様である点の説明は省略する。
【0076】
本実施の形態に係る子局120は、表層101と中間グランド層105と裏層102の三層構造をなす多層基板で構成されており、表層101と中間グランド層105の間には第1の誘電体層103が形成され、裏層102と中間グランド層105の間には第2の誘電体層104が形成されている。
【0077】
裏層102には平衡型の円偏波アンテナである子局受信アンテナ111a,111bと、子局受信アンテナ111と逆旋の偏波特性を持つ円偏波アンテナである子局返信アンテナ112が形成されている。
【0078】
表層101には変形ダイオードブリッジ41a,41b,41c,41d、分岐回路24a,24b、ウィルキンソン型合成回路83、ラットレース回路62、伝送線路91、第2の電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ92、ベースバンド回路13、変調器14、復調器15、平滑回路16、電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ17、中間周波数帯域通過フィルタ18が形成されている。
【0079】
(子局の動作)
子局受信アンテナ111の平衡受信電力は、二つのスルーホール161を用いて中間グランド層105に設けられた通過孔163を非接触貫通し、変形ダイオードブリッジ119に入力される。ここで二系統の不平衡線に分配された後、分配された高周波電力は夫々、分岐回路24a,24bによって二分配される。
【0080】
各々の分岐回路の一つの出力は、ウィルキンソン型合成回路83に入力され、その出力は伝送線路91を介して中間グランド層105に短絡用スルーホール162にて一端を結合された第2の電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ92と並列に設置された平滑回路16と中間周波数帯域通過フィルタ18に入力される。各々の分岐回路の他の出力は、ラットレース回路62に入力され、その出力は電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ17に入力される。
【0081】
平滑回路16の直流出力は、ベースバンド回路13および復調器15の電源として各々に供給される。また、中間周波数帯域通過フィルタ18の出力は、復調器15に入力され、ベースバンド信号に変換された後、ベースバンド回路13に入力される。ベースバンド回路13で信号処理を受けた後、該ベースバンド信号は、変調器14に入力される。変調器14では、電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ17の出力である電力供給用搬送波が変調される。変調器14からの出力は、スルーホール161を用いて中間グランド層105に設けられた通過孔163を非接触貫通し、子局送信アンテナ112に導かれ、子局送信アンテナ112を介して親局1に向けて電波として発射される。
【0082】
(本発明の第12の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、裏層102に形成された子局受信アンテナ111と子局送信アンテナ112から、表層101に形成された各種高周波回路および中間周波回路が中間グランド層105によって電磁気的に遮蔽されるので、同各種高周波回路および中間周波回路の動作を安定させる効果がある。また、上述の第9の実施の形態において逆相合成回路52をラットレース回路62とし、同相合成回路73をウィルキンソン型合成回路83とした構成を汎用プリント多層基板プロセスを用いて一体の薄板構造で実現できるので、同実施の形態における効果を安価に実現することが出来る。
【0083】
〔本発明の第13の実施の形態〕
(子局の構成)
図13は、本発明の第13の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。既述の本発明の各種実施の形態と同様である点の説明は省略する。
【0084】
本実施の形態に係る子局130は、表層101にセンサ回路93が新たに設置され、ベースバンド回路13に結合し、平滑回路16より直流の供給を受けており、且つ新たに記憶回路94が設置され、ベースバンド回路13に結合している点において第12の実施の形態と相違している。
【0085】
(本発明の第13の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、裏層102に形成された子局受信アンテナ111と子局送信アンテナ112から、表層101に形成された各種高周波回路および中間周波回路が中間グランド層105によって電磁気的に遮蔽されるので、同各種高周波回路および中間周波回路の動作を安定させる効果がある。また、上述の第11の実施の形態において逆相合成回路52をラットレース回路62とし、同相合成回路73をウィルキンソン型合成回路83とした構成を汎用プリント多層基板プロセスを用いて一体の薄板構造で実現できるので、同実施の形態における効果を安価に実現することが出来る。
【0086】
〔本発明のその他の実施の形態〕
第1〜11の実施の形態に示した子局も同様に、第12,13の実施の形態に示した三層構造をなす多層基板で構成された子局とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【図7】本発明の第7の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【図8】本発明の第8の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【図9】本発明の第9の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【図10】本発明の第10の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【図11】本発明の第11の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【図12】本発明の第12の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【図13】本発明の第13の実施の形態に係る無電源ワイヤレスモニタリングシステムの子局の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0088】
1:親局
2:親局送信アンテナ
3:親局受信アンテナ
4:下り回線電波
5:上り回線電波
10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130:子局
11,111:子局受信アンテナ
12,112:子局送信アンテナ
13:ベースバンド回路
14:変調器
15:復調器
16:平滑回路
17:電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ
18:中間周波数帯域通過フィルタ
19:非線形回路
21:平衡不平衡二線変換回路
22:第1の合成回路
23:第2の合成回路
24a,24b:分岐回路
25a,25b:非線形素子
31:電力供給用搬送波周波数帯域阻止フィルタ
41a,41b,41c,41d:変形ダイオードブリッジ
52:逆相合成回路
62:ラットレース回路
73:同相合成回路
83:ウィルキンソン型合成回路
91:伝送線路
92:第2の電力供給用搬送波周波数帯域通過フィルタ
93:センサ回路
94:記憶回路
101:表層
102:裏層
103:第1の誘電体層
104:第2の誘電体層
105:中間グランド層
161:スルーホール
162:短絡用スルーホール
163:通過孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局(第1の送受信機)と子局(第2の送受信機)を有し、電磁波である電力供給用搬送波および通信用搬送波を用いた無電源ワイヤレスモニタリングシステムであって、
前記親局は、前記電力供給用搬送波および変調を施された前記通信用搬送波を前記子局に伝送する親局送信アンテナと、前記子局からの出力を受ける親局受信アンテナとを具備し、
前記子局は、平衡型アンテナである子局受信アンテナと、該子局受信アンテナの出力を入力とする非線形回路と、該非線形回路の出力を入力とする平滑回路と、前記電力供給用搬送波の周波数を通過帯域とする第1の高周波帯域通過フィルタと、前記電力供給用搬送波と前記通信用搬送波の差の周波数成分を有する中間周波数を通過帯域とする中間周波帯域通過フィルタと、該中間周波帯域通過フィルタの出力を入力とし、前記平滑回路の出力を電源とする復調回路と、該復調回路の出力であるベースバンド信号を受信信号として用いて信号処理し新たな送信信号を送出するベースバンド回路と、該信号処理されたベースバンド信号を用いて前記第1の高周波帯域通過フィルタの出力である前記電力供給用搬送波の周波数を有する高周波信号を変調する変調器と、該変調器の出力を空間に放射する子局送信アンテナとを具備しており、
前記親局送信アンテナと前記子局受信アンテナは、同じ回転方向を有する円偏波アンテナであり、前記子局送信アンテナと前記親局受信アンテナは、前記回転方向とは逆旋の偏波特性を有する円偏波アンテナであることを特徴とする無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項2】
前記非線形回路は、前記子局受信アンテナに結合した平衡入力を二つの不平衡出力に分配する平衡不平衡分配回路と、該二つの不平衡出力に各々結合した非線形素子と、該非線形素子を通過した夫々の信号を分岐する第1および第2の分岐回路と、該第1及び第2の分岐回路の分岐出力を合成する第1の合成回路と、該第1の合成回路の出力が前記第1の高周波帯域通過フィルタを介して前記変調回路の高周波信号となり、前記非線形素子を通過した夫々の信号を合成する第2の合成回路とを備え、該第2の合成回路の出力が前記平滑回路と前記中間周波帯域通過フィルタの入力となることを特徴とする請求項1に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項3】
前記第2の合成回路の出力が電力供給用搬送波阻止フィルタを介して出力されることを特徴とする請求項2に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項4】
前記平衡不平衡分配回路と前記非線形素子に代えて、前記子局受信アンテナの夫々の端子と接地電位との間にダイオードが接地電位をカソード側となるように夫々設置され、前記子局受信アンテナの夫々の端子と前記第1および第2の分岐回路の間にダイオードが該各々の分岐回路をアノード側となるように夫々設置されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項5】
前記第1の合成回路が逆相合成回路であることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項6】
前記逆相合成回路がラットレース型合成回路であることを特徴とする請求項5記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項7】
前記第2の合成回路が同相合成回路であることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項8】
前記同相合成回路がウィルキンソン型合成回路であることを特徴とする請求項7記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項9】
前記電力供給用搬送波阻止フィルタに代えて、前記電力供給用搬送波の周波数に対する四分の一波長伝送線路が挿入され、前記第2の合成回路の合成出力端と結合していない該四分の一波長伝送線路の一端と接地電位の間に前記電力供給用搬送波の周波数を通過帯域とする第2の高周波帯域通過フィルタが設置されていることを特徴とする請求項3乃至請求項8のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項10】
前記電力供給用搬送波の電力が前記通信用搬送波の電力よりも高いことを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項11】
前記電力供給用搬送波の周波数が前記通信用搬送波の周波数よりも低いことを特徴とする請求項2乃至請求項10のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項12】
前記子局送信アンテナが不平衡型であることを特徴とする請求項2乃至請求項11のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項13】
前記変調器の変調方式が周波数変調であることを特徴とする請求項2乃至請求項12のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項14】
前記通信用搬送波が周波数変調されていることを特徴とする請求項2乃至請求項13のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項15】
前記子局受信アンテナの特性インピーダンスが、前記平滑回路の特性インピーダンスの二倍より大きいことを特徴とする請求項2乃至請求項14のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項16】
前記ベースバンド回路は、温度、圧力、化学物質の濃度、電気、音、電磁波、湿度、放射能のいずれかに反応するセンサが結合されており、該センサの出力信号を用いて、前記ベースバンド回路の送出ベースバンド信号に演算が施されることを特徴とする請求項2乃至請求項15のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項17】
前記ベースバンド回路は、前記子局の識別情報を格納したメモリが結合されており、前記通信用搬送波の変調信号に前記識別情報が重畳され、前記ベースバンド回路に入力される前記ベースバンド信号に前記識別情報を保存して、前記ベースバンド回路内の演算により、前記ベースバンド回路に入力される子局の識別情報と前記メモリに格納されている前記識別情報を比較して、両者が一致したときのみ前記ベースバンド回路の送出ベースバンド信号に情報を付加する演算が施されることを特徴とする請求項2乃至請求項16のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項18】
前記ベースバンド回路の送出ベースバンド信号への情報の付加が、前記センサの出力信号を用いた演算によりなされることを特徴とする請求項17に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項19】
前記子局送信アンテナおよび前記子局受信アンテナが平面アンテナであることを特徴とする請求項2乃至請求項18のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項20】
前記子局が一体の多層プリント基板で構成され、該多層プリント基板のいずれかの面に前記子局送信アンテナおよび前記子局受信アンテナが形成され、他の面に前記子局を形成するアンテナ以外の要素が形成あるいは設置されることを特徴とする請求項2乃至請求項19のいずれか1項に記載の無電源ワイヤレスモニタリングシステム。
【請求項21】
電磁波である電力供給用搬送波および通信用搬送波を用いた無電源ワイヤレスモニタリングシステムに使用される子局(送受信機)であって、
前記子局は、平衡型アンテナである子局受信アンテナと、該子局受信アンテナの出力を入力とする非線形回路と、該非線形回路の出力を入力とする平滑回路と、前記電力供給用搬送波の周波数を通過帯域とする第1の高周波帯域通過フィルタと、前記電力供給用搬送波と前記通信用搬送波の差の周波数成分を有する中間周波数を通過帯域とする中間周波帯域通過フィルタと、該中間周波帯域通過フィルタの出力を入力とし、前記平滑回路の出力を電源とする復調回路と、該復調回路の出力であるベースバンド信号を受信信号として用いて信号処理し新たな送信信号を送出するベースバンド回路と、該信号処理されたベースバンド信号を用いて前記第1の高周波帯域通過フィルタの出力である前記電力供給用搬送波の周波数を有する高周波信号を変調する変調器と、該変調器の出力を空間に放射する子局送信アンテナとを具備しており、
前記子局受信アンテナと前記子局送信アンテナとは、お互いに異なる回転方向を有する円偏波アンテナであることを特徴とする無電源ワイヤレスモニタリングシステムに使用される子局(送受信機)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−274358(P2007−274358A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97579(P2006−97579)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】