説明

無電解スズメッキ浴及び電子部品の無電解スズメッキ方法

【課題】 弱酸性ないし中性域の無電解スズメッキ浴の経時安定性を向上する。
【解決手段】 (A)可溶性第一スズ塩と、(B)無機酸及び有機酸の少なくともいずれかの酸と、(C)チオ尿素類と、(D)オキシカルボン酸よりなる浴安定用錯化剤と、(E)クロム、マンガン、鉄、アルミニウム、バナジウム、ジルコニウム、モリブデンよりなる群から選ばれた金属のイオンとを含有し、上記金属イオン(E)の含有量が0.01〜6.0モル/Lであり、且つ、pH2.5〜7である無電解スズメッキ浴である。鉄、マンガン、クロムなどの特定の金属イオンを所定濃度でオキシカルボン酸に共存させるため、無電解スズ浴は弱酸性ないし中性域を呈すると共に、経時安定性にも優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弱酸性ないし中性域の無電解スズメッキ浴並びに当該メッキ浴を用いた電子部品の無電解スズメッキ方法に関して、浴の経時安定性に優れるとともに、メッキに際して電子部品の樹脂製保護皮膜の侵食を良好に防止できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
スズメッキは、ハンダ付け性向上用、或はエッチングレジスト用の皮膜などとして弱電工業並びに電子工業部品等に広く利用されており、膜厚を均一にする観点では無電解スズメッキが有効である。
例えば、特許文献1〜5には酸性の無電解スズメッキ浴が開示されている。
上記特許文献1は、可溶性第一スズ塩と、有機スルホン酸、有機カルボン酸などの酸と、チオ尿素と、過塩素酸類とを含有し、さらに必要に応じて、均一で微細な粒子の皮膜を得るために水溶性ジルコニウム塩を添加できる無電解スズメッキ浴である(特許請求の範囲、第3頁左上欄)。上記カルボン酸としては酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸などを記載する(第2頁左下欄)。
【0003】
上記特許文献2は、所定の酸化還元電位の範囲内の金属塩をスズ合金を形成しない範囲で添加することにより、析出速度とメッキ皮膜のボンディング性の向上に資する無電解スズメッキ浴であり(請求項1)、所定の金属として鉄、クロム、亜鉛、ビスマス、インジウムなどを例示する(段落13)。
【0004】
上記特許文献3には、接合強度の向上とホイスカーの防止を目的として、ビスマス、インジウム、鉛、アンチモンよりなる群から選ばれた特定金属の可溶性塩を所定濃度で含有する無電解スズメッキ浴が記載されている(請求項1、実施例1〜5)。
【0005】
上記特許文献4には、スズなどの金属の化合物、銅化合物を含む無電解メッキ浴に、浴の分解を抑制するために鉄化合物(例えばフェロシアン化カリウム)を添加することが記載されている(段落19)。
【0006】
しかしながら、一般に、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フィルムキャリヤなどの微細パターン上に上記特許文献1〜4のような無電解スズ浴を用いて無電解メッキを行うと、酸性の無電解スズ浴であるため、上記電子部品のソルダレジストの端部付近が部分剥離して侵食が起こり、特に、プリント基板やフレキシブルプリント基板では侵食され易く、基材の銅を溶出させて製品の信頼性を低下させる恐れがある。
そこで、弱酸性ないし中性域の無電解スズメッキ浴を用いて上記電子部品に無電解メッキを行って、上記侵食性による弊害を回避することが考えられる。
【0007】
特許文献5〜7には弱酸性或は中性の無電解スズメッキ浴が開示されている。
即ち、上記特許文献5は、ベース酸として有機スルホン酸に替えて、グルコン酸、テトロン酸、ペントン酸などのポリオキシカルボン酸又はその塩を用いて、より好ましいpH1.2〜1.9程度に調整した無電解スズメッキ浴である(請求項1、段落3〜4、7、12)。
【0008】
上記特許文献6は、3価のチタン塩(還元剤)、或はクエン酸を所定濃度で添加可能なpH6.5〜11の無電解スズメッキ浴である(請求項4〜6)。
【0009】
上記特許文献7は、窒素原子を有する水溶性糖質を含有し、pH6〜12が好ましいスズなどの置換メッキ浴である(請求項2〜3、8、9、17、段落26)。
【0010】
【特許文献1】特開平2−217478号公報
【特許文献2】特開平10−36973号公報
【特許文献3】特開平8−296050号公報
【特許文献4】特開平8−193275号公報
【特許文献5】特開平4−289178号公報
【特許文献6】特開平8−60376号公報
【特許文献7】特開2002−180259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記弱酸性ないし中性域の無電解スズメッキ浴はプリント基板などのソルダーレジストを侵食する弊害はないが、その反面、2価スズへの錯化作用を有するグルコン酸、クエン酸、酒石酸などのオキシカルボン酸を含有した場合でも経時安定性が低く、早期にスズ化合物の沈殿が発生し、メッキ浴が分解してしまう実情があり、例えば、組成によっては1日以内に分解してしまうことも多く、連続的なメッキ処理の観点から実用的でない。
本発明は弱酸性ないし中性域の無電解スズメッキ浴において、経時安定性を向上して実用性を向上することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、先ず、プリント基板などにスズメッキを施す際に、ソルダレジストへの影響を低減できる観点から弱酸性ないし中性域の無電解スズメッキ浴を使用することを前提として、この無電解スズ浴にグルコン酸、クエン酸、酒石酸などのオキシカルボン酸を添加しながら、さらに他の成分を併存させた場合の浴の安定性を鋭意研究した。
その結果、鉄、マンガン、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの特定の金属イオンを所定の濃度で共存させると、弱酸性ないし中性域のメッキ浴の経時安定性が増して分解を良好に阻止できること、また、この金属イオンとオキシカルボン酸の濃度比率を特定範囲に限定し、或は3価以上のオキシカルボン酸を使用すると、浴の経時安定性の増進にさらに寄与できることなどを見い出して、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明1は、(A)可溶性第一スズ塩と、
(B)無機酸及び有機酸の少なくともいずれかの酸と、
(C)チオ尿素類と、
(D)オキシカルボン酸よりなる浴安定用錯化剤と、
(E)クロム、マンガン、鉄、アルミニウム、バナジウム、ジルコニウム、モリブデンよりなる群から選ばれた金属のイオンの少なくとも一種とを含有し、
上記金属イオン(E)の含有量が0.01〜6.0モル/Lであり、且つ、pH2.5〜7であることを特徴とする無電解スズメッキ浴である。
【0014】
本発明2は、上記本発明1において、浴安定用錯化剤(D)が3価以上のポリオキシカルボン酸であることを特徴とする無電解スズメッキ浴である。
【0015】
本発明3は、上記本発明1又は2において、金属イオン(E)と浴安定用錯化剤(D)との含有量のモル比率が、E:D=1:1〜30であることを特徴とする無電解スズメッキ浴である。
【0016】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、成分(A)と成分(B)と成分(D)の含有量の重量比率が、A:B:D=1:2〜8:2〜16であることを特徴とする無電解スズメッキ浴である。
【0017】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、酸(B)が有機スルホン酸であることを特徴とする無電解スズメッキ浴である。
【0018】
本発明6は、(A)可溶性第一スズ塩と、
(B)有機スルホンと、
(C)チオ尿素と、
(D)3価以上のポリオキシカルボン酸と、
(E)鉄イオンとを含有し、
鉄イオン(E)の含有量が0.03〜3.0モル/Lであり、pH2.5〜6であることを特徴とする無電解スズメッキ浴である。
【0019】
本発明7は、上記本発明1〜6のいずれかにおいて、さらに、酸化防止剤、界面活性剤、pH調整剤よりなる群から選ばれた添加剤を含有することを特徴とする無電解スズメッキ浴である。
【0020】
本発明8は、上記本発明1〜7のいずれかの無電解スズメッキ浴を用いて、回路を樹脂製保護皮膜で被覆した形態の電子部品の当該回路上にスズ皮膜を形成することを特徴とする電子部品の無電解スズメッキ方法である。
【0021】
本発明9は、上記本発明8において、電子部品がプリント基板であることを特徴とするプリント基板の無電解スズメッキ方法である。
【発明の効果】
【0022】
(1)弱酸性ないし中性域の無電解スズメッキ浴にオキシカルボン酸を含有するとともに、鉄、マンガン、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの特定の金属イオンを共存させるので、スズ浴の経時安定性が増して分解を長期に防止でき、無電解メッキの連続処理を円滑に行うことができる。
可溶性第一スズ塩と酸とチオ尿素を基本組成とする弱酸性ないし中性スズ浴においては、オキシカルボン酸のみを添加しても短時間でスズ化合物の沈殿が発生し、これは2価のスズイオンとチオ尿素の相互作用により発生したものと推定できるが、オキシカルボン酸と特定の金属イオンの共存下では、このような相互作用を阻止することで浴が安定化するものと思われる。
また、上記特定の金属はスズと共析化することはなく、本発明の無電解メッキ浴によりスズ皮膜を円滑に形成できる(後述の試験例参照)。
【0023】
(2)本発明の無電解スズメッキ浴はpH2.5〜7の弱酸性ないし中性なので、回路を樹脂製保護皮膜で被覆した形態の電子部品(例えば、プリント基板)に本発明のスズ浴を適用しても、電子部品に被覆した樹脂(プリント基板のレジスト)を侵食することはなく、電子部品の信頼性を高く保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、第一に、可溶性第一スズ塩(A)と酸(B)とチオ尿素類(C)を基本組成とする弱酸性ないし中性のスズ浴において、オキシカルボン酸(浴安定用錯化剤(D))と特定の金属イオン(E)を共存させた無電解スズメッキ浴であり、第二に、この弱酸性ないし中性の無電解スズ浴を、回路を樹脂製保護皮膜で被覆した形態の電子部品(プリント基板など)に適用した無電解スズメッキ方法である。
【0025】
上記可溶性第一スズ塩(A)は、水中でSn2+を発生する化合物であれば任意のものが使用でき、難溶性塩であっても排除するものではない。具体的には、ホウフッ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第一スズ、塩化第一スズ、ピロリン酸スズ、スルファミン酸スズ、亜スズ酸塩などの無機系の可溶性塩、有機スルホン酸第一スズ、スルホコハク酸第一スズ、脂肪族カルボン酸第一スズなどの有機系の可溶性塩などが挙げられる。
【0026】
上記酸(B)としては、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸などの有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸などの有機酸、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、過塩素酸などの無機酸が挙げられ、本発明5に示すように、有機スルホン酸が好ましい。
【0027】
上記アルカンスルホン酸は、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1〜11)で示されるものであり、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などが挙げられる。
【0028】
上記アルカノールスルホン酸は、化学式
m2m+1-CH(OH)-Cp2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)
で示されるものであり、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0029】
上記芳香族スルホン酸としては、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、ナフトールスルホン酸、スルホサリチル酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン−4−スルホン酸等が挙げられる。
【0030】
上記脂肪族カルボン酸としては炭素水1〜6のカルボン酸が好ましく、具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、スルホンコハク酸などが挙げられる。
【0031】
上記チオ尿素類(C)は、素地金属の銅、銅合金に配位して錯イオンを形成し、銅の電極電位を卑の方向に変移させて、スズとの化学置換反応を促進するために含有される。
このチオ尿素類には、チオ尿素、或は、1,3―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、1,3―ジエチル―2―チオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジド等のチオ尿素誘導体が挙げられる。
また、チオ尿素類と同様の錯化作用を奏する化合物としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩、ベンジルアミン、2―ナフチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、シンナミルアミン、p―メトキシシンナミルアミン等も有効である。
【0032】
本発明は弱酸性ないし中性域の無電解スズメッキ浴であるため、オキシカルボン酸(D)を浴安定用錯化剤として含有する。
このオキシカルボン酸(D)としては、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、グルコヘプトン酸、リンゴ酸、グリコール酸、乳酸、トリオキシ酪酸、アスコルビン酸、テトラオキシデカン酸、タルトロン酸、グリセリン酸、シトラマル酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸が挙げられ、糖類であるエリトロースなども有効であって、これらを単用又は併用できる。
本発明3に示すように、このオキシカルボン酸においては3価以上が好ましく、3価以上のオキシカルボン酸としては、グルコン酸、グルコノラクトン、トリオキシ酪酸、アスコルビン酸、テトラオキシデカン酸、グルコノヘプトン酸、エリトロースなどが挙げられる。
【0033】
本発明はオキシカルボン酸(D)に特定の金属イオン(E)を所定濃度で共存させて、弱酸性ないし中性域の無電解スズメッキ浴の経時安定性を向上することを特徴とする。
上記金属イオン(E)は、クロム、マンガン、鉄、アルミニウム、バナジウム、ジルコニウム、モリブデンよりなる群から選ばれた金属のイオンである。
上記金属イオン(E)は単用又は併用でき、その含有量は0.01〜6.0モル/Lであることが必要で、好ましくは0.05〜1.0モル/L、より好ましくは0.1〜0.5モル/L前後である。
金属イオンの含有量が0.01モル/Lより少ないと浴の経時安定性が損なわれ、6.0モル/Lより多いと当該特定の金属塩の溶解性やメッキ速度が低下する恐れがある。
本発明4に示すように、上記金属イオン(E)とオキシカルボン酸(D)の含有量のモル比率は、E:D=1:1〜30であることが好ましく、より好ましくはE:D=1:1〜15である。成分(E)が適正量より少なく、或は成分(D)が多いと浴の経時安定性が低下し、成分(E)が適正量より多く、或は成分(D)が少ないと成分(E)の金属塩の溶解性やメッキ速度が低下する恐れがある。
【0034】
また、本発明の無電解スズメッキ浴は、プリント基板などのソルダレジストの侵食を抑制する観点から、pHを弱酸性ないし中性域に保持する必要があり、具体的にはpH2.5〜7の領域にある無電解スズ浴であり、好ましくはpH2.5〜6.0である。
そして、本発明4に示す通り、弱酸性ないし中性域の無電解スズメッキ浴の経時安定性を良好に保持する見地から、上記可溶性第一スズ塩(A)と酸(B)とチオ尿素類(D)の含有量の重量比率は、A:B:D=1:2〜8:2〜16であることが好ましく、より好ましい重量比率はA:B:D=1:2〜8:2〜8である。
そこで、本発明6は当該無電解スズメッキ浴の代表的な組成を示したもので、(A)可溶性第一スズ塩と、(B)有機スルホンと、(C)チオ尿素と、(D)3価以上のポリオキシカルボン酸と、(E)鉄イオンとを含有し、鉄イオン(E)の含有量が0.03〜3.0モル/Lであり、且つ、pH2.5〜6である無電解スズメッキ浴である。ちなみに、3価以上のポリオキシカルボン酸(D)にはグルコン酸が好適である。
【0035】
また、本発明の無電解スズメッキ浴には、上記成分以外にも、公知の界面活性剤、酸化防止剤、pH調整剤、光沢剤、半光沢剤等の各種添加剤を混合することができる。
上記界面活性剤には通常のノニオン系、アニオン系、両性、或はカチオン系などの各種界面活性剤が挙げられ、メッキ皮膜の外観、緻密性、平滑性、密着性などの改善に寄与する。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、モノ〜トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
上記ノニオン系界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものなどが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。
【0036】
上記pH調整剤としては、塩酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸類、リン酸類等の各種の酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、アミン等の各種の塩基などが挙げられ、上記弱酸性ないし中性域のpH領域にメッキ浴は良好に調整される。
上記酸化防止剤は、浴中のSn2+の酸化防止を目的としたもので、次亜リン酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、クレゾールスルホン酸又はその塩、フェノールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ハイドロキノンスルホン酸又はその塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
【0037】
上記光沢剤、或は半光沢剤としては、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、2,4,6−トリクロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、3−アセナフトアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピリジデンアセトン、フルフリルデンアセトン、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、グルタルアルデヒド、パラアルデヒド、バニリンなどの各種アルデヒド、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、2−ビニルピリジン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、チオ尿素類、N―(3―ヒドロキシブチリデン)―p―スルファニル酸、N―ブチリデンスルファニル酸、N―シンナモイリデンスルファニル酸、2,4―ジアミノ―6―(2′―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―エチル―4―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール、2―メチルベンゾチアゾール、2―アミノベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メトキシベンゾチアゾール、2―メチル―5―クロロベンゾチアゾール、2―ヒドロキシベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メチルベンゾチアゾール、2―クロロベンゾチアゾール、2,5―ジメチルベンゾチアゾール、5―ヒドロキシ―2―メチルベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類などが挙げられる。
【0038】
本発明8は本発明1〜7の無電解スズメッキ浴を用いて、回路を樹脂製保護皮膜で被覆した形態の電子部品の当該回路上にスズ皮膜を形成する電子部品の無電解スズメッキ方法である。
上記回路をカバーレイ、ドライフィルム或は液状レジストなどの樹脂製保護皮膜で被覆した形態の電子部品としては、プリント基板、TABのフィルムキャリアなどが挙げられる。上記プリント基板はリジッド型のプリント基板とフレキシブルプリント基板の両方を包含する概念である。
本発明の無電解スズメッキの条件としては任意であるが、浴温は45〜90℃が好ましく、析出速度を増す見地から50〜70℃がより好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の弱酸性ないし中性域の無電解スズメッキ浴の実施例、当該メッキ浴の経時安定性、プリント基板の侵食防止性の評価試験例などを順次説明する。
また、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0040】
《無電解スズメッキ浴の実施例》
下記の実施例1〜15のうち、実施例7〜8、12は特定の金属イオンを併用した例、それ以外は単用した例である。この単用例のうち、実施例1〜3は3価の鉄イオンの例、実施例11は2価の鉄イオンの例、実施例4、9〜10はマンガンイオンの例、実施例6、14〜15はアルミニウムイオンの例、実施例5はクロムイオンの例、実施例13はジルコニウムイオンの例である。
また、下記の比較例1〜5のうち、比較例1はオキシカルボン酸を含有しないブランク例、比較例2は特定の金属イオンを含有しないブランク例、比較例3は特定の金属イオンを適正量より少なく含有した例、比較例4は冒述の特許文献2に準拠して、特定以外の金属イオン(Zn2+)を含有した例、比較例5は通常の酸性無電解メッキ浴(pH1以下)の例である。
【0041】
(1)実施例1
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
グルコン酸 :0.30モル/L
Fe2(SO4)3・12H2O(Fe3+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
本実施例1では、3価の鉄イオン(E)とグルコン酸(D)とのモル比率は、E:D=0.22:0.30=1:1.36である。また、可溶性第一スズ塩(A)とメタンスルホン酸(B)とグルコン酸(D)との重量比率は、A:B:D=0.13:0.50:0.30=1:3.85:2.36である。
【0042】
(2)実施例2
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
エタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
グルコン酸 :0.30モル/L
Fe2(SO4)3・12H2O(Fe3+として) :0.01モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0043】
(3)実施例3
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
pーフェノールスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
pーフェノールスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
グルコン酸 :0.30モル/L
Fe2(SO4)3・12H2O(Fe3+として) :1.00モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0044】
(4)実施例4
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
グルコン酸 :0.30モル/L
MnSO4・H2O(Mn2+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0045】
(5)実施例5
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
クエン酸 :0.30モル/L
CrK(SO4)2・12H2O(Cr3+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0046】
(6)実施例6
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
クエン酸 :0.30モル/L
Al2(SO4)3・16H2O(Al3+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0047】
(7)実施例7
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
リンゴ酸 :0.30モル/L
Fe2(SO4)3・12H2O(Fe3+として) :0.11モル/L
Al2(SO4)3・16H2O(Al3+として) :0.11モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0048】
(8)実施例8
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
テトラオキシデカン酸 :0.30モル/L
Fe2(SO4)3・12H2O(Fe3+として) :0.11モル/L
MnSO4・H2O(Mn2+として) :0.11モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0049】
(9)実施例9
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :0.50モル/L
グルコン酸 :0.30モル/L
MnSO4・H2O(Mn2+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0050】
(10)実施例10
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.50モル/L
グルコン酸 :0.30モル/L
MnSO4・H2O(Mn2+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0051】
(11)実施例11
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
クエン酸 :0.30モル/L
FeSO4(Fe2+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0052】
(12)実施例12
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
酒石酸 :0.30モル/L
FeSO4(Fe2+として) :0.11モル/L
MnSO4・H2O(Mn2+として) :0.11モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0053】
(13)実施例13
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
酒石酸 :0.30モル/L
硫酸ジルコニウム(Zr2+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0054】
(14)実施例14
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
ホウフッ化水素酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
ホウフッ化水素酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
クエン酸 :0.30モル/L
Al2(SO4)3・16H2O(Al3+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0055】
(15)実施例15
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
硫酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
硫酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
クエン酸 :0.30モル/L
Al2(SO4)3・16H2O(Al3+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0056】
(16)比較例1
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
CrK(SO4)2・12H2O(Cr3+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0057】
(17)比較例2
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
クエン酸 :0.30モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0058】
(18)比較例3
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
クエン酸 :0.30モル/L
CrK(SO4)2・12H2O(Cr3+として) :0.005モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0059】
(19)比較例4
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
クエン酸 :0.30モル/L
ZnSO4・7H2O(Zn2+として) :0.22モル/L
pH(NaOHにより調整) :4.0
【0060】
(20)比較例5
下記組成により無電解スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.13モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :1.00モル/L
pH :1.0以下
【0061】
そこで、上記実施例1〜15及び比較例1〜5で得られた各無電解スズメッキ浴について、経時安定性を評価した。
《無電解スズメッキ浴の経時安定性評価試験例》
上記各無電解メッキ浴を60℃に保持した後、メッキ浴の経時安定性の優劣を下記の基準に基づいて評価した。
◎:建浴後、1カ月経過した時点でも浴に変化はなかった。
○:建浴後、2週間経過した時点で浴に変化はなかった。
×:建浴後、1日以内に浴が分解した。
【0062】
図1の左欄はその試験結果である。
オキシカルボン酸を含有しない比較例1及び特定の金属イオンを含有しない比較例2では、1日以内にメッキ浴は分解したのに対して、オキシカルボン酸と特定の金属イオンを併用した弱酸性の無電解スズ浴である実施例1〜15は2週間に亘り、或は1カ月以上に亘り、メッキ浴は安定であった。
これにより、弱酸性の無電解スズメッキ浴の経時安定性を担保するには、オキシカルボン酸と特定の金属イオンの共存が必要であることが確認できた。
【0063】
また、特定の金属イオンを含有するが、適正量より少ない濃度の比較例3の評価は×であったことから、この比較例3を実施例1〜15に対比すると、弱酸性の無電解スズメッキ浴の経時安定性の改善には、オキシカルボン酸と特定の金属イオンの共存だけでは充分でなく、当該金属イオンの濃度を適正化することの必要性が確認できた。
さらには、特定以外の金属イオン(Zn2+)を添加した比較例4の評価は×であったことから、弱酸性の無電解スズメッキ浴の経時安定性の改善には、オキシカルボン酸と共存させる金属イオンの種類を特定化する必要がある点が裏付けられた。
尚、酸性無電解スズメッキ浴(比較例5)は良好な経時安定性を示したが、本発明の弱酸性ないし中性域の無電解スズ浴(実施例1〜15)も、安定性の面でこの従来の酸性浴に対して遜色がないことが分かった。
【0064】
実施例1〜15の無電解スズ浴を詳細に検討すると、先ず、特定の金属イオンとしてFe3+、Cr3+、Al3+の3価イオンを含有する実施例1〜3、或は実施例5〜7では◎の評価であり、2価の金属イオンを含有する実施例に比べて経時安定性が勝ることが分かった。
実施例1〜3ではオキシカルボン酸の濃度と種類(グルコン酸)、金属イオンの種類(Fe3+)が同じで、金属イオンの濃度が変化しているが、経時安定性の評価は変わらなかった。Al3+を含有する実施例6、14〜15も同様に経時安定性は変わらなかった。
また、特定の金属イオンとしてMn2+、オキシカルボン酸としてグルコン酸を含有する点で共通する実施例4、9〜10ではチオ尿素の濃度だけが変化しているが、経時安定性の評価は変わらなかった。
【0065】
次いで、上記実施例1〜15及び比較例1〜5の各無電解スズメッキ浴にプリント基板を浸漬して、ソルダレジストの侵食防止性の度合を評価した。
《プリント基板の侵食防止評価試験例》
即ち、上記無電解スズ浴を建浴した後、60℃にて保持しながらFPC(フレキシブルプリント基板;回路形成したテスト基板)を10分間浸漬して、無電解メッキを施した。そして、FPCのソルダレジスト(特に端部)を目視観察し、下記の基準に基づいてソルダレジストの剥離の程度(侵食防止性)の優劣を評価した。
○:ソルダレジストに変化なし。
×:ソルダレジストが侵食され、レジストの端部が剥離した。
【0066】
図1の右欄はその試験結果である。
酸性の無電解スズメッキ浴である比較例4ではソルダレジストの剥離が起こったが、弱酸性(pH4)の無電解スズ浴である実施例1〜15では、ソルダレジストに変化はなく、剥離は起こらなかった。
以上の通り、上記経時安定性や侵食防止性の評価試験の結果によれば、本発明の無電解スズメッキ浴はソルダレジストへの侵食がないとともに、浴を長期に安定化できるため、回路を樹脂製保護皮膜で被覆した形態の電子部品(プリント基板やフレキシブルプリント基板など)へのスズメッキの適用に好適である。
【0067】
《無電解スズ皮膜の組成分析試験例》
次いで、本発明の無電解スズメッキ浴の代表例として実施例1を選択し、当該実施例1の無電解スズ浴を用いてFPC(回路形成したテスト基板)の微細パターン上に、浴温60℃、メッキ時間10分の条件(即ち、前記侵食防止性試験と同じ条件)で無電解メッキを施し、得られたスズ皮膜をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて、皮膜組成の分析を行った。
その定量結果によると、Sn=100重量%、Fe=0重量%であった。また、図2はその分析チャートであり、皮膜にはSnの鋭いピークは認められるが、Feのピークは認められなかった。
従って、上記定量結果及びチャートによれば、メッキ浴に少量の所定濃度で含有したFeなどの特定金属のイオンに起因して、当該金属がスズと共析化することはなく、本発明の無電解メッキ浴によりスズ皮膜が円滑に得られることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例1〜15及び比較例1〜5の各無電解スズメッキ浴についての経時安定性並びに侵食防止性の評価試験結果を示す図表である。
【図2】実施例1の無電解スズメッキ浴を用いて得られたスズ皮膜のEDX分析図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)可溶性第一スズ塩と、
(B)無機酸及び有機酸の少なくともいずれかの酸と、
(C)チオ尿素類と、
(D)オキシカルボン酸よりなる浴安定用錯化剤と、
(E)クロム、マンガン、鉄、アルミニウム、バナジウム、ジルコニウム、モリブデンよりなる群から選ばれた金属のイオンの少なくとも一種とを含有し、
上記金属イオン(E)の含有量が0.01〜6.0モル/Lであり、且つ、pH2.5〜7であることを特徴とする無電解スズメッキ浴。
【請求項2】
浴安定用錯化剤(D)が3価以上のポリオキシカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の無電解スズメッキ浴。
【請求項3】
金属イオン(E)と浴安定用錯化剤(D)の含有量のモル比率が、E:D=1:1〜30であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無電解スズメッキ浴。
【請求項4】
成分(A)と成分(B)と成分(D)の含有量の重量比率が、A:B:D=1:2〜8:2〜16である事を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無電解スズメッキ浴。
【請求項5】
酸(B)が有機スルホン酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無電解スズメッキ浴。
【請求項6】
(A)可溶性第一スズ塩と、
(B)有機スルホンと、
(C)チオ尿素と、
(D)3価以上のポリオキシカルボン酸と、
(E)鉄イオンとを含有し、
鉄イオン(E)の含有量が0.03〜3.0モル/Lであり、pH2.5〜6であることを特徴とする無電解スズメッキ浴。
【請求項7】
さらに、酸化防止剤、界面活性剤、pH調整剤よりなる群から選ばれた添加剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の無電解スズメッキ浴。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の無電解スズメッキ浴を用いて、回路を樹脂製保護皮膜で被覆した形態の電子部品の当該回路上にスズ皮膜を形成することを特徴とする電子部品の無電解スズメッキ方法。
【請求項9】
電子部品がプリント基板であることを特徴とする請求項8に記載のプリント基板の無電解スズメッキ方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−35794(P2009−35794A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203214(P2007−203214)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】