説明

無電解ニッケルメッキ方法、無電解ニッケルメッキ用洗浄液、無電解ニッケルメッキ用テクスチャー処理液、無電解ニッケルメッキ用センシタイジング処理液、無電解ニッケルメッキ用表面調整処理液、液晶ディスプレイ用ガラス基板、及び、液晶ディスプレイ

【課題】 密着性の高い無電解ニッケルメッキ層を形成する方法における各処理工程で使用する処理液の提供。また、前記方法による液晶ディスプレイ(LCD)用ガラス基板とLCDの提供。
【解決手段】アルカリ洗浄、テクスチャー処理、センシタイジング、アクチベーティング、及び、無電解ニッケルメッキからなる工程を経てガラス表面にニッケルメッキ層を形成する方法において、アルカリ洗浄液は、フッ化カリウム、酸性フッ化カリウム及び水酸化カリウム含有水溶液を、テクスチャー処理液は、酸性フッ化アンモニウム及び酸性フッ化カリウム含有水溶液を、センシタイジング処理液は、第一スズイオン及びパーフルオロアルキル基含有界面活性剤を含有する水溶液を、表面調整処理液は、フッ化カリウム含有水溶液を使用する。前記方法によりブラックマトリックスを形成したLCD用ガラス基板を製造し、このガラス基板を使用したLCDを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解ニッケルメッキ方法、無電解ニッケルメッキ用洗浄液、無電解ニッケルメッキ用テクスチャー処理液、無電解ニッケルメッキ用センシタイジング処理液、及び、無電解ニッケルメッキ用表面調整処理液、並びに、無電解ニッケルメッキによってブラックマトリックスを形成した液晶ディスプレイ用ガラス基板、及び、このガラス基板を使用した液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
無電解ニッケルメッキは、プラスチック、ガラスセラミックス等の不導体素材に対してもメッキ層を形成することが可能であり、汎用されているメッキ方法である。この無電解ニッケルメッキにおいて、形成されたメッキ層の剥離が生じることを防止するため、メッキ層の密着強度を向上させる技術開発が検討されている。メッキ層の密着強度を向上させる無電解ニッケルメッキ方法をしては、例えば、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平7−334841号公報
【0003】
特許文献1に開示されている無電解メッキの前処理方法は、記録媒体として使用されている磁気ディスクに使用されるガラス基板表面にニッケルメッキを形成する方法が開示されている。この方法は、市販のアルカリ性脱脂液を使用してガラス基板表面の脱脂を行う処理と、フッ化水素酸とフッ化カリウムを含む水溶液によるエッチング処理と、このエッチング処理で生じたケイフッ化物を除去するために塩酸水溶液でガラス基板を洗浄する酸洗い処理と、ナトリウムメトキシドを含有する水溶液を使用して以後に続くセンシタイジング処理でスズをガラス基板表面全体に効率的に付着させるための表面調整処理と、センシタイジング処理と、アクチベーティング処理と、ニッケルメッキ層形成処理とを順次行ってガラス基板表面にニッケルメッキ層を形成する方法である。
【0004】
アルカリ脱脂処理は、ガラス表面に付着している油脂等を除去する目的がある。即ち、メッキ対象物の表面に親水性を付与することを目的とするものであり、親水性を付与することが出来なければ、後に続くエッチング処理等をガラス表面全体に施すことができず、無電解メッキの密着強度が低いものとなる。このアルカリ脱脂処理は、換言すると、ガラス表面の洗浄処理となるものである。
【0005】
エッチング処理は、ガラス表面を粗面化することにより、メッキ層とガラス表面の物理的密着性を高めるアンカー効果を得るために行われる。酸洗い処理は、エッチングによりガラス表面に生じたケイフッ化物を除去することによって、メッキ層とガラス表面が直接密着することで、メッキ層の密着性を得るために行われる。
【0006】
表面調整処理は、メッキ対象物の表面に、電荷を付与するために行われる工程である。センシタイジング処理は、スズイオンが溶解した水溶液に、メッキ対象物を浸漬することによって行われることが一般的であり、このセンシタイジング処理は、次に続くアクチベーティング工程で、メッキ対象物表面にパラジウム等の金属を形成させる前処理としての作用がある。またアクチベーティング工程は、センシタイジング処理を経たメッキ対象物をパラジウムイオンが溶解した水溶液に浸漬することによって行われることが一般的であり、このアクチベーティング工程によって、無電解ニッケルメッキ層形成においてのメッキ形成核となるパラジウム金属が、メッキ対象物表面に形成されることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている無電解メッキ方法と同様に、密着性の高いメッキ層を得るための他の方法の提供が望まれている他方で、密着性の高いメッキ層が形成されていても、メッキ層形成目的となるガラス表面の一部にメッキ層が形成しない場合には再度のメッキ形成を試みなければならないため、無メッキ層の形成を抑制してメッキ層形成の確実性を高めることが望まれている。
【0008】
ところで、近年において画像表示装置である液晶ディスプレイの需要が増大している。図1は、液晶ディスプレイ用ガラス基板の一例を表した断面模式図である。ガラス基板は、ガラス表面に多層形成したガラス板1、8間に液晶を注入した構造をとる。一方のガラス板1の液晶ディスプレイ画像表示面となる正面側には、偏光板7をガラス表面に積層している。背面側には、カラーフィルター層3がブラックマトリックス層2に区分けされつつ積層されている。カラーフィルター層3には、透明樹脂からなるオーバーコート層4が積層され、次いで透明電極(ITO膜)層5及びポリイミドからなる配向膜層6が形成されている。液晶ディスプレイ用ガラス基板に直接積層されているブラックマトリックスは、クロムを含有した金属膜を使用して積層することが一般的であるが、クロムは人体への毒性が高く、更には、環境汚染の原因になる金属であることから、人体毒性及び環境汚染を防止するための設備投資を行わなければならい。そのため、クロムを使用したブラックマトリックスに代替するブラックマトリックスを使用した液晶ディスプレイ用ガラス基板及び液晶ディスプレイが提供されることが望まれている。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、密着性の高い無電解ニッケルメッキ層を形成する方法、並びに、この方法に使用することが好適な無電解ニッケルメッキ用洗浄液、無電解ニッケルメッキ用テクスチャー処理液、無電解ニッケルメッキ用センシタイジング処理液、及び、無電解ニッケルメッキ用表面調整処理液を提供することを目的とする。また、本発明は、密着性の高い無電解メッキ方法を使用してブラックマトリックス層をガラス基板表面上に形成した液晶ディスプレイ用ガラス基板、及び、このガラス基板を使用して製造した液晶ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ガラスの表面に無電解ニッケルメッキを行う方法であって、前記ガラスをアルカリ性溶液に浸漬するアルカリ洗浄処理工程と、前記アルカリ洗浄処理工程の後に前記ガラス表面を粗面化するテクスチャー処理工程と、その後、前記ガラス表面のセンシタイジング処理、アクチベーティング処理、及び、メッキ層形成処理からなるメッキ工程を備えることを特徴とするガラス表面の無電解ニッケルメッキ方法である。この方法において、前記テクスチャー処理工程とメッキ工程との間に前記ガラスを酸性水溶液に浸漬する酸洗い工程を備えることが好適である。また、前記テクスチャー処理工程とメッキ工程との間に前記ガラスをフッ化カリウム水溶液に浸漬する表面調整処理工程を備えることも好適である。
【0011】
前記アルカリ洗浄処理工程においは、フッ化カリウム、酸性フッ化カリウム及び水酸化カリウムを含有させたアルカリ性水溶液を使用することが好適であり、このアルカリ性水溶液にガラス板を浸漬して前記アルカリ洗浄処理を行うと良い。
【0012】
前記テクスチャー処理工程おいては、酸性フッ化アンモニウム及び酸性フッ化カリウムを含有させた水溶液を使用することが好適であり、この水溶液にガラス板を浸漬して前記テクスチャー処理を行うと良い。この場合、ガラス表面の透明性を損なうことなくガラス表面の粗面化を行うことができる。
【0013】
前記センシタイジング処理においては、第一スズイオン及びパーフルオロアルキル基含有界面活性剤を含有するセンシタイジング処理液を使用することが好適であり、このセンシタイジング処理液に前記ガラスを浸漬することによって前記センシタイジング処理を行うと良い。
【0014】
前記表面調整処理液は、フッ化カリウムを含有させた水溶液であることが好適である。
【0015】
また、本発明は、前記無電解ニッケルメッキ方法を使用した液晶ディスプレイ用ガラス基板である。この液晶ディスプレイ用ガラス基板において、ニッケルメッキは、ブラックマトリックス層となる。また本発明は、このガラス基板を使用した液晶ディスプレイである。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成された無電解ニッケルメッキ方法によれば、アルカリ洗浄によってガラス表面を十分に親水化した後にテクスチャー処理を行っているのでガラス表面全体が粗面化するので、形成されるニッケルメッキ層のアンカー効果を十分に発揮されて密着性の高いニッケルメッキをガラス表面上に形成することができる。上記のように構成された洗浄液、テクスチャー処理液、センシタイジング処理液、又は、表面調整処理液を使用した無電解ニッケルメッキ方法を使用した場合には、無メッキ部分の発生を抑制した高い密着性のメッキ層をガラス表面上に形成することができる。
【0017】
また、上記のように構成された液晶ディスプレイ用ガラス基板、及び液晶ディスプレイは、本発明に係る無電解ニッケルメッキ方法を使用してガラス基板上にクロムを含まないブラックマトリックス層を形成したものであるので密着性の高いブラックマトリックスを形成し、人体及び環境への影響に配慮したブラックマトリックスを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態について説明する。本発明に係る無電解ニッケルメッキ方法において、メッキ層を形成することができるガラスは、ソーダ石灰ガラス、無アルカリガラス、アルカリバリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウ酸塩ガラス、シリカガラス、鉛ガラス等、ガラスの種別を問わない。即ち、液晶ディスプレイ用ガラス基板に使用されている矩形の無アルカリアルミノホウケイ酸ガラスにメッキ層を形成した場合にも、形成したメッキ層は高い密着性を発揮する。
【0019】
本発明に係る無電解ニッケルメッキ方法は、アルカリ洗浄処理工程、テクスチャー処理工程、酸洗い工程、表面調整処理工程、メッキ工程を順次行うことによって行われる。目的とするメッキ層の密着強度に応じて酸洗い工程および/又は表面調整処理工程を省略しても良い。各工程における使用液を除去するための洗浄工程が各工程間に設けられる。
【0020】
アルカリ洗浄処理工程は、アルカリ性の水溶液にガラスを浸漬することによって行われる。アルカリ性水溶液には、フッ化カリウム、酸性フッ化カリウム及び水酸化カリウムを含有させた水溶液を使用することが好適である。好ましくは、フッ化カリウムを5〜15g/L、酸性フッ化カリウムを2g/L以下含有させたアルカリ性水溶液である。水酸化カリウムの含有量は、使用する水溶液がアルカリ性であれば特に限定されるものではないが、1〜5g/L含有させることが好ましい。ガラスをアルカリ性水溶液に浸漬する場合、アルカリ性水溶液の温度及び浸漬時間は、20〜30℃の温度で30〜40分間浸漬すると良い。このとき、超音波をアルカリ性水溶液中に発生させながらガラスを浸漬しても良い。
【0021】
アルカリ洗浄工程を経ることによってガラス表面に付着している油等の異物を除去し、ガラス表面の撥水性を抑制して、アルカリ洗浄工程後の各工程において使用される溶液とガラス板表面との親水性を向上させ、その結果、メッキ層の密着強度の向上及び無メッキ部発生を抑制することができる。
【0022】
テクスチャー処理工程は、ガラス表面を溶解して粗面化するテクスチャー処理液にガラスを浸漬することによって行われる。テクスチャー処理液には、酸性フッ化アンモニウム及び酸性フッ化カリウムを含有させた水溶液を使用することが好適である。このテクスチャー処理液は、酸性フッ化アンモニウムを20〜55g/L、酸性フッ化カリウムを0.5〜20g/L含有させたものであることが好ましい。より好ましくは、酸性フッ化アンモニウムを30〜45g/L含有させることである。テクスチャー処理の処理時間は、3〜30分間、好適には5〜7分間の処理時間で、好適には15〜40℃の温度で、テクスチャー処理を行う。このテクスチャー条件で、ガラスにテクスチャー処理を行った場合、ガラスの透明性が確保されると共に、アンカー効果によるメッキ層の密着強度を向上させることができる。なお、このときのガラス表面粗度は、算術平均粗さが0.02μm以下となる。
【0023】
酸洗い工程は、ガラスを酸洗い液に浸漬することによって行われる。酸洗い液は、無機酸を一種又は二種以上含有させた水溶液を使用すると良い。含有させる無機酸は、例えば、硝酸、硫酸、塩酸及びリン酸がある。中でも、塩酸を含有させた水溶液が好適である。酸洗い液中の無機酸は、2〜4重量%であると良い。ガラス表面の酸洗い処理を行うことにより、テクスチャー処理で生じたガラス表面の膜状付着物を除去し、メッキ層とガラス表面との直接的な密着性を高めると共に、無メッキ部の発生を抑制することができる。酸洗い液にガラスを浸漬する場合、室温で1分程度浸漬すると良い。
【0024】
表面調整処理工程は、ガラスを表面調整処理液に浸漬することによって行われる。フッ化カリウムを含有させた水溶液を表面調整処理液として使用することが好適である。この場合、フッ化カリウムを40〜60g/L含有させた水溶液であると良く、好ましくは、45〜55g/Lである。表面調整処理液への浸漬条件は、特に限定されないが、室温で15〜30分間浸漬すると良い。表面調整処理を行ったメッキ層は、無メッキ部の発生が抑制されたメッキ層となる。
【0025】
メッキ工程は、センシタイジング処理、アクチベーティング処理、メッキ層形成処理を順次行うものである。センシタイジング処理とアクチベーティング処理を1サイクルとして、これを複数サイクル行った後にメッキ層形成処理を行っても良い。なお、各処理の間には、通常、各処理で使用した液を除去するための洗浄が設けられる。
【0026】
センシタイジング処理は、ガラス表面にスズ元素を付着させる処理であり、センシタイジング処理液にガラスを浸漬することによって行われる。センシタイジング処理液には、第一スズイオン及びパーフルオロアルキル基含有界面活性剤を含有する水溶液を使用することが好適である。このセンシタイジング処理液は、通常、塩化スズを含有させることによって第一スズイオンを含有している。好適に使用されるセンシタイジング処理液は、塩化スズ、パーフルオロアルキル基含有界面活性剤及び塩酸を含有させた水溶液である。
【0027】
センシタイジング液に含有されるパーフルオロアルキル基含有界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性のパーフルオロ界面活性剤が一種又は二種以上センシタイジング液に含有されていると良い。アニオン性パーフルオロ界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルが、カチオン性パーフルオロ界面活性剤としては、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩が、両性パーフルオロ界面活性剤としては、パーフルオロアルキルベタイン、非イオン性パーフルオロ界面活性剤としては、パーフルオロアルキルアミンオキサイドが、それぞれ例示される。このうち、カチオン性界面活性剤を選択することが好適であり、より好適には、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩を選択することである。
【0028】
このセンシタイジング処理液に含有させる塩化スズ及び塩酸の量は、例えば、塩化スズが1〜15g/L、塩酸が35重量%塩酸水溶液として5〜200mL/Lである。センシタイジング処理液中のパーフルオロアルキル基含有界面活性剤は、1〜30ppm添加されていると良く、好適には、5〜10ppm添加されていることである。
【0029】
ガラスをセンシタイジング液に浸漬するときの条件は、20℃以上の温度、好ましくは20〜35℃のセンシタイジング処理液に2〜5分浸漬することである。20℃に満たない温度である場合、形成されたメッキ層の均一性と密着性が低下する傾向がある。
【0030】
アクチベーティング処理は、ガラスをアクチベーティング処理液に浸漬することによって行われる。アクチベーティング処理液には、例えば、塩化パラジウムを0.05〜0.5g/L、35重量%塩酸を0.1〜2mL/L含有させた水溶液を使用すると良い。アクチベーティング液にガラスを浸漬する条件は、15〜35℃、好ましくは25℃以上のアクチベーティング液に2〜5分間ガラスを浸漬すると良い。
【0031】
アクチベーティング処理を行った後にメッキ層形成処理が行われる。両処理の間に乾燥処理を設け、乾燥したガラスにメッキ層を形成する場合、光沢あるメッキ層を形成することができ、乾燥せずにメッキ層を形成した場合に比べて遮光性が向上する。一方、乾燥せずにメッキ層を形成する場合には、無光沢のメッキ層が形成されることになる。
【0032】
メッキ層形成処理は、例えば、硫酸ニッケルを15〜25g/L、次亜リン酸ナトリウムを20〜30g/L、クエン酸アンモニウム又は硫化アンモニウムを10〜40g/L、クエン酸ナトリウムを15〜40g/L及び鉛イオン1〜3mg/Lを含有させ、水酸化ナトリウムでpHを6.5〜7.5に調整した水溶液を使用することでメッキ層を形成すると良い。
【0033】
本発明に係る液晶ディスプレイ用ガラス基板は、一枚のガラス基板の表面にブラックマトリックス層、カラーフィルター層、透明電極層等を一種または二種以上積層されたものであり、本発明において、液晶ディスプレイ用ガラス基板とは、ガラス基板の表面に少なくともブラックマトリックス層が形成された一枚のガラス基板、及び、このガラス基板と他のガラス基板を貼り合せたもの双方を意味する。ガラス基板上にブラックマトリックス層を形成するには、前記本発明に係る無電解ニッケルメッキ方法を使用して形成することができる。このとき、ガラス基板表面にニッケルメッキを施した後、ニッケルメッキ表面上にマスキング剤を所定のパターンで被覆し、その後、エッチングを行うことによってマスキング剤が被覆されていないニッケルメッキが除去される。そして、ニッケルメッキが除去された後にマスキング剤を除去することによって所定のパターンのブラックマトリックス層がガラス基板上に形成される。
【0034】
また、本発明に係る液晶ディスプレイは、本発明に係る液晶ディスプレイ用ガラス基板を使用して製造する事ができる。
【0035】
以下、実施例に基づき本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0036】
以下の実施例においてガラス板は、縦50mm、横30mmのノンアルカリアルミノホウケイ酸ガラス板を使用した。このガラス板は、非イオン系界面活性剤を使用して表面を洗浄したものを使用した。このガラス板を使用して、アルカリ洗浄処理、テクスチャー処理、酸洗い処理、及び表面調整処理を種々の組み合わせで行い、その後、センシタイジング処理、アクチベーティング処理、センシタイジング処理、アクチベーティング処理、及び、メッキ層形成処理を順次行った。つまり、センシタイジング処理とアクチベーティング処理は、2度行った。なお、各処理の間には、水でガラス板を洗浄する洗浄処理を行い、メッキ層形成処理の直前には、ガラス板を乾燥させる乾燥処理を行った。
【0037】
実施例1については、アルカリ処理、及びテクスチャー処理を順に行った後にセンシタイジング処理等を行った。実施例2については、アルカリ処理、テクスチャー処理、及び酸洗い処理を順に行った後にセンシタイジング処理等を行った。実施例3については、アルカリ処理、テクスチャー処理、酸洗い処理、及び、表面調整処理を順に行った後にセンシタイジング処理等を行った。実施例における各処理は、次の通り行った。
【0038】
(アルカリ処理)
フッ化カリウム11g、酸性フッ化カリウム0.5g、水酸化カリウム1.5g、及びDC−5000(カニングジャパン株式会社商品名)35gを水に添加し、更にこれを水で希釈して全量を1Lとしたアルカリ性溶液をアルカリ処理液として使用した。液温が25℃のアルカリ処理液にガラス板を40分間浸漬してアルカリ処理を行った。
【0039】
(テクスチャー処理)
酸性フッ化アンモニウム34g、及び酸性フッ化カリウム1.5gを水に混合し、さらに水を添加して全量1Lとした溶液をテクスチャー処理液とした。液温が20℃のテクスチャー処理液にガラス板を7分間浸漬することによってテクスチャー処理を行った。
【0040】
(酸洗い処理)
塩酸4重量%水溶液を酸洗い液とし、液温が20℃の酸洗い液にガラス板を1分間浸漬することによって酸洗い処理を行った。
【0041】
(表面調整処理)
50g/Lのフッ化カリウム水溶液を表面調整処理液とし、25℃の表面調整処理液にガラス板を20分浸漬することによって表面調整処理を行った。
【0042】
(センシタイジング処理)
塩化第一スズが4.8g/L、35重量%塩酸が10ml/Lの水溶液にパーフルオロアルキルトリメチルアンモニウムを5ppm添加混合した水溶液をセンシタイジング処理液として使用し、24℃のセンシタイジング処理液にガラス板を3分間浸漬することによってセンシタイジング処理を行った。
【0043】
(アクチベーティング処理)
塩化パラジウムが3g/L、35重量%塩酸が12ml/Lの水溶液を水で20倍希釈した水溶液をアクチベーティング液として使用した。28℃のセンシタイジング処理液にガラス板を3分間浸漬した。
(メッキ層形成)
硫酸ニッケルを20g/L、次亜リン酸ナトリウムを25g/L、クエン酸アンモニウムを30g/L、クエン酸ナトリウムを30g/L、及び、鉛イオンを2mg/L含有させた水溶液に水酸化ナトリウムを添加してpHが7に調整された水溶液をメッキ層形成液として使用した。液温が60℃のメッキ層形成液にガラス基板を6分間浸漬することによってガラス板表面にメッキ層を形成した。
【0044】
また、実施例の比較として、比較例を次の通り行った。比較例において、実施例と同じく縦50mm、横30mmの表面が親水化されたノンアルカリアルミノホウケイ酸ガラス板を使用した。また、ガラス板表面へのメッキ層の形成は、アルカリ処理、テクスチャー処理、酸洗い処理、及び表面調整処理を行わずにセンシタイジング処理、アクチベーティング処理、センシタイジング処理、アクチベーティング処理、及びメッキ層形成処理を順に行った。比較例で行ったセンシタイジング処理、アクチベーティング処理、及びメッキ層形成処理を、センシタイジング処理において使用したセンシタイジング処理液がパーフルオロアルキルトリメチルアンモニウムを含有していないこと以外、実施例と同様にして行った。
【0045】
実施例及び比較例においてガラス板表面に形成したメッキ層の密着性、及び無メッキ部分の発生について確認した。メッキ層の密着性については、JIS Z 1522に準じるテープを使用し、JIS H 8504の引き剥がし試験に準拠して行った。但し、メッキの密着性の評価は、密着性の高いものを○、密着性の低いものを×として2段階に分けて評価した。無メッキ部分の発生は、目視で確認し、無メッキ部分の発生の少ないものから○、△、×として3段階に評価した。次表1に実施例及び比較例の結果を示す。
【0046】
【表1】

実施例のメッキ層は、比較例のメッキ層よりも密着性が高いことを確認することができる。また、無メッキ部分の発生は、実施例3、実施例2、実施例1の順に少ないことが表1から確認することができる。つまり、実施例1と実施例2の比較において、テクスチャー処理においてガラス板表面に生じた被膜が酸洗い処理で除去され、その結果、無メッキ部分の発生が抑制されたことが確認されたことになり、また、表面調整処理を行った実施例3のメッキ層は、この処理を行っていない実施例2のメッキ層よりも無メッキ部分の発生が抑制されたことが確認されたことになる。なお、メッキ層形成処理直前にガラス板を乾燥した各実施例のメッキは、光沢があったことが確認されている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】液晶ディスプレイ用ガラス基板の一例を表した断面模式図である。
【符号の説明】
【0048】
2 ブラックマトリックス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスの表面に無電解ニッケルメッキを行う方法であって、前記ガラスをアルカリ性溶液に浸漬するアルカリ洗浄処理工程と、前記アルカリ洗浄処理工程の後に前記ガラス表面を粗面化するテクスチャー処理工程と、その後、前記ガラス表面のセンシタイジング処理、アクチベーティング処理、及び、メッキ層形成処理からなるメッキ工程を備えることを特徴とするガラス表面の無電解ニッケルメッキ方法。
【請求項2】
前記テクスチャー処理工程とメッキ工程との間に前記ガラスを酸性水溶液に浸漬する酸洗い工程を備える請求項1に記載の無電解ニッケルメッキ方法。
【請求項3】
前記テクスチャー処理工程とメッキ工程との間に前記ガラスをフッ化カリウム水溶液に浸漬する表面調整処理工程を備える請求項1に記載の無電解ニッケルメッキ方法。
【請求項4】
前記アルカリ洗浄処理工程は、フッ化カリウム、酸性フッ化カリウム及び水酸化カリウムを含有させたアルカリ性水溶液に前記ガラスを浸漬することによって行われる請求項1〜3のいずれかに記載の無電解ニッケルメッキ方法。
【請求項5】
前記テクスチャー処理工程は、酸性フッ化アンモニウム及び酸性フッ化カリウムを含有させた水溶液に前記ガラスを浸漬することによって行われる請求項1〜4のいずれかに記載の無電解ニッケルメッキ方法。
【請求項6】
前記センシタイジング処理は、第一スズイオン及びパーフルオロアルキル基含有界面活性剤を含有するセンシタイジング処理液に前記ガラスを浸漬することによって行われる請求項1〜5のいずれかに記載の無電解ニッケルメッキ方法。
【請求項7】
無電解ニッケルメッキ方法に使用する洗浄液であって、フッ化カリウム、酸性フッ化カリウム及び水酸化カリウムを含有させたアルカリ性水溶液である無電解ニッケルメッキ用洗浄液。
【請求項8】
無電解ニッケルメッキ方法に使用するテクスチャー処理液であって、酸性フッ化アンモニウム及び酸性フッ化カリウムを含有させた水溶液である無電解ニッケルメッキ用テクスチャー処理液。
【請求項9】
無電解ニッケルメッキ方法に使用するセンシタイジング処理液であって、第一スズイオン及びパーフルオロアルキル基含有界面活性剤を含有する水溶液である無電解ニッケルメッキ用センシタイジング処理液。
【請求項10】
無電解ニッケルメッキ方法に使用する表面調整処理液であって、フッ化カリウムを含有させた水溶液である無電解ニッケルメッキ用表面調整処理液。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の無電解ニッケルメッキ方法を使用した液晶ディスプレイ用ガラス基板。
【請求項12】
請求項11に記載のガラス基板を使用した液晶ディスプレイ。

【図1】
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【公開番号】特開2006−45634(P2006−45634A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230021(P2004−230021)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000195937)西山ステンレスケミカル株式会社 (44)
【Fターム(参考)】