説明

焼き製品

本発明は、焼き製品中に乳酸産生菌を含む組成物および方法について説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、焼き製品中における乳酸産生菌の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
胃腸の微生物叢は、胃腸管の機能および全身の生理学的健康の維持において多くの極めて重要な役割を担う。胃腸管に生息する多くの個々の微生物種の増殖および代謝は、その多くが食事に由来する、それらにとって利用可能な基質に主に依存する(たとえば、Gibson G.R. et al., 1995. Gastroenterology 106: 975-982(非特許文献1); Christl, S.U. et al., 1992. Gut 33:1234-1238(非特許文献2)を参照のこと)。これらの知見から、主に、生きた微生物の栄養補助食品であるプロバイオティクスによる、食事を通して細菌集団の構成および代謝活性を改変する試みが導かれた。
【0003】
プロバイオティクス生物は、非病原性で、毒性がなく、保存中に生存能力を維持し、かつ胃および小腸の通過に耐える。一般的にプロバイオティクスは、宿主において恒久的にはコロニーを形成しないため、いかなる健康促進特性を持続するためにも定期的に摂取する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Gibson G.R. et al., 1995. Gastroenterology 106: 975-982
【非特許文献2】Christl, S.U. et al, 1992. Gut 33:1234-1238
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ヒトまたは動物の消費用の焼き製品中における酸産生菌の使用について説明する。具体的には、本発明は、食用デンプンと単離されたバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)菌との焼き組成物を含む組成物、ならびに、芽胞を含む焼き製品をヒトまたは他の動物に与えることによって、プロバイオティクス細菌芽胞をヒトまたは他の動物に投与する方法を提供する。この方法において、ヒトまたは他の動物は焼き製品を摂取し、芽胞が胃腸管(胃または小腸)内で発芽する。投与された細菌芽胞または細胞による、芽胞の発芽および/または胃腸組織でのコロニー形成は、個体の便中のプロバイオティクス微生物を検出することによって評価される。
【0006】
例示的な焼き製品には、パン、ケーキ、パイ、タルト、ペストリー、キャンディーバー、エナジーバー、フードバー、グラノーラ、グラノーラバー、キッシュ、クッキー、シリアル、ピザ、コーンチップ、トルティーヤチップ、ポテトチップ、焼きクラッカー、乾燥野菜、乾燥果物、またはペットの餌が含まれる。別の局面において、焼き製品には、粉を含有する任意の製品が含まれる。さらに別の局面において、本発明の焼き製品には、加熱された、たとえば焼かれた(乾熱への暴露)任意の製品が含まれる。好ましくは、焼き製品はマフィンである。一局面において、焼き製品はブルーベリーブランマフィンである。
【0007】
任意で、焼き組成物は脂肪も含む。適した脂肪には、油、バター、ショートニング、人工脂質、合成脂肪、および脂肪代替物が含まれる。別の局面において、焼き組成物には砂糖、砂糖代替物、または人工甘味料も含まれる。
【0008】
一局面において、単離されたバチルス・コアギュランスは焼き製品の約0.01重量%〜約50重量%を占める。任意で、単離されたバチルス・コアギュランスは焼き製品の約0.01重量%〜約10重量%を占める。好ましくは、単離されたバチルス・コアギュランスは焼き製品の約0.01重量%〜約0.1重量%を占める。
【0009】
本発明はまた、バチルス・コアギュランス、たとえばバチルス・コアギュランスhammer、好ましくはバチルス・コアギュランスhammer株アクセッション番号ATCC 31284、またはバチルス・コアギュランスhammer株アクセッション番号ATCC 31284に由来する1種類もしくはそれ以上の株(たとえば、ATCC番号:GBI-20、ATCC指定番号(Designation Number)PTA-6085;GBI-30、ATCC指定番号PTA-6086;およびGBI-40、ATCC指定番号PTA-6087;Farmerの米国特許第6,849,256号を参照のこと)を含む細菌種も提供する。
【0010】
任意で、単離されたバチルス・コアギュランスは芽胞の形態である。あるいは、単離されたバチルス・コアギュランスは栄養細胞の形態である。別の局面においては、単離されたバチルス・コアギュランスは栄養細胞と芽胞との混合物の形態である。
【0011】
本発明はまた、基礎的な混合物(base mix)を含有する粉と水である液体部分とを含む焼き製品を製造する方法も提供する。任意で、この方法は、基礎的な混合物を含有する粉と水である液体部分とを提供する工程;前記基礎的な混合物を含有する粉と前記水とを混合してバッター(batter)またはドウ(dough)を形成する工程;単離されたバチルス・コアギュランス菌を前記バッターまたはドウに適用する工程;および、焼き製品を調理するために前記バッターまたはドウを加熱する工程を含む。あるいは、前記方法は、基礎的な混合物を含有する粉と水である液体部分とを提供する工程;前記基礎的な混合物を含有する粉と前記水とを混合してバッターまたはドウを形成する工程;単離されたバチルス・コアギュランス菌を前記バッターまたはドウに混ぜ合わせる工程;および、焼き製品を調理するために前記バッターまたはドウを加熱する工程を含む。
【0012】
任意で、単離されたバチルス・コアギュランスはバチルス・コアギュランスhammer株アクセッション番号ATCC 31284である。例示的な態様において、単離されたバチルス・コアギュランスはGBI-30株(ATCC指定番号PTA-6086)である。一局面において、単離されたバチルス・コアギュランスは芽胞の形態である。あるいは、単離されたバチルス・コアギュランスは栄養細胞の形態である。好ましい態様において、単離されたバチルス・コアギュランスは焼き製品の1重量%〜10重量%を占める。
【0013】
本発明はまた、粉と単離されたバチルス・コアギュランス菌とを含有する焼き製品用の乾燥混合物を含む組成物を提供する。
【0014】
本発明のバチルス・コアギュランスHammer株は、非病原性で、米国食品医薬品局(FDA)および米国農務省(USDA)ならびに当業者により、一般にヒトの食物での使用において安全とみなされている(すなわち、GRAS分類)。さらに、本発明のバチルス・コアギュランスHammer株はヒト体温またはそれ未満で発芽し、プロバイオティクスとして有用である。Hammer株の群以外の多くのバチルス・コアギュランス株は主に産業用途を有し、栄養面での恩恵はほとんどまたはまったくなく、かつ安全性が評価されていない環境汚染物を有する。さらに、バチルス・コアギュランスの他の多くの非Hammer株は、ヒトの体温を超える温度で最適に増殖し、したがってヒト体内では効率的に発芽しない。そのような株は、ヒトの消費用のプロバイオティクスにはあまり適さないかまたはまったく適さない。
【0015】
引用した刊行物は参照により本明細書に組み入れられる。上述の一般的説明ならびに以下の詳細な説明および実施例はいずれも、例示的および説明的でしかなく、特許請求される本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本発明は、例示的なバチルス・コアギュランスなどの非病原性乳酸産生菌(すなわち、「乳酸菌」)が、プロバイオティクスとして焼き製品において有用であることの発見を対象とする。
【0017】
プロバイオティクス乳酸産生菌
本発明の方法および組成物における使用に適したプロバイオティクス乳酸産生菌は、酸を産生し、かつ非病原性である。本発明は既知の細菌種に限定されるものではないが、細菌の目的および目標が記載される限りにおいて、本明細書中に記載したような同定された多くの適切な細菌が存在する。酸を産生する性質は、本発明のプロバイオティクス乳酸産生菌の有効性において重要である。
【0018】
本発明は、バチルス・コアギュランスなどの芽胞形成バチルス種などの乳酸産生菌の使用を提供する。好ましくは、本発明の芽胞形成バチルス種はバチルス・コアギュランスHammerである。
【0019】
例示的な方法および組成物は、バチルス・コアギュランスをプロバイオティクスとして用いて本明細書に記載されている。精製したおよび/または単離したバチルス・コアギュランスは、焼き食品中のプロバイオティクスとして特に有用である。プロバイオティクスであるバチルス・コアギュランスは、非病原性であり、米国食品医薬品局(FDA)および米国農務省(USDA)ならびに当業者により一般に安全とみなされている(すなわち、GRAS分類)。
【0020】
バチルス・コアギュランスは、発酵条件においてL(+)乳酸(右旋性)を産生する非病原性グラム陽性芽胞形成細菌である。それは、栄養培地に播種した熱処理土壌試料などの天然源から単離されてきた(Bergey's Manual off Systemic Bacteriology, Vol. 2, Sneath, P.H.A., et al., eds., Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 1986)。精製されたバチルス・コアギュランス株は、エンドヌクレアーゼ(たとえば、米国特許第5,200,336号);アミラーゼ(米国特許第4,980,180号);ラクターゼ(米国特許第4,323,651号);およびシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(米国特許第5,102,800号)を含む酵素の供給源として役立ってきた。バチルス・コアギュランスは、乳酸の産生に用いられてきた(米国特許第5,079,164号)。バチルス・コアギュランスの1つの株(ラクトバチルス・スポロゲネス(L. sporogenes)と称される;Sakaguti & Nakayama (ATCC 31284))は、他の乳酸産生菌および納豆菌(B. natto)と組み合わされて、蒸した大豆から発酵食品を作り出してきた(米国特許第4,110,477号)。
【0021】
細菌種には、バチルス・コアギュランス、たとえばバチルス・コアギュランスhammer、好ましくはバチルス・コアギュランスhammer株アクセッション番号ATCC 31284、またはバチルス・コアギュランスhammer株アクセッション番号ATCC 31284から派生する1つもしくは複数の株(ATCC番号:GBI-20、ATCC指定番号PTA-6085;GBI-30、ATCC指定番号PTA-6086;およびGBI-40、ATCC指定番号PTA-6087;Farmerの米国特許第 6,849,256号を参照のこと)が含まれる。
【0022】
バチルス・コアギュランスは、以前は誤ってラクトバチルスと特徴付けられ、ラクトバチルス・スポロゲネスと名付けられていた(Nakamura et al., 1988. Int. J. Syst. Bacteriol. 38: 63-73を参照のこと)。しかし、バチルス・コアギュランスは芽胞を生成し、かつ代謝によってL(+)-乳酸を排出することから、当初の分類は誤りであった。これらの特徴はいずれも、バチルス・コアギュランスの有用性の鍵となる特性を提供する。これらの発達上および代謝上の特徴から、この細菌は乳酸バチルス属と分類された。加えて、古典的なラクトバチルス種は、胆汁、特にヒト胆汁の厳しいpH環境(すなわち、酸性環境)では不安定であるために消化管のコロニー形成に適していないということが一般には認識されていない。対照的に、バチルス・コアギュランスは、胃腸管の胆汁環境で生存しコロニー形成することができ、この低pH範囲でも増殖することができる。
【0023】
バチルス・コアギュランスのプロバイオティクス活性
細菌性病原体、真菌性病原体、病原性酵母の多くの種が、胃腸の正常な生化学機能の混乱、胃腸組織の壊死、および栄養の生体吸収の混乱、ならびに類似の状態を含むがこれらに限定されない様々な胃腸障害を引き起こす能力を有することは、臨床において十分に報告されている。プロバイオティクス微生物を含む本発明の組成物は、これらの病原体を阻害する。したがって、本発明の組成物は、上記の病原体への感染に関連する状態の予防的または治療的処置において有用である。
【0024】
一局面において、バチルス・コアギュランス株は栄養細胞の形態で組成物に含まれる。あるいは、バチルス・コアギュランス株は芽胞の形態で組成物に含まれる。本発明はまた、バチルス・コアギュランス株を乾燥細胞塊、安定化ペースト、または安定化ゲルの形態の組成物中に含むことを提供する。
【0025】
バチルス芽胞は、耐熱性および耐圧性であり、かつ乾燥粉末として保存できるため、本明細書に記載した様々な焼き製品および組成物などの製品への調製およびそのような製品の製造に特に有用である。バチルス種は本発明によく適しており、特に、熱およびその他の条件に比較的耐性である芽胞形成能を有する種は、製品の調製における保存(貯蔵期間)において理想的である。
【0026】
本発明のバチルス・コアギュランスは、約12日間〜約2年間、約1ヶ月間〜約18ヶ月間、約3ヶ月間〜約1年間、または約6ヶ月間〜約9ヶ月間の保存(貯蔵期間)に耐える。たとえば、マフィンに焼かれた芽胞は、マフィンの貯蔵期間(たとえば、6〜12日間)の間、生存可能かつ発芽能力のある状態を保つ。
【0027】
マイクロカプセル化
一局面において、乳酸産生菌は、焼き製品に加えられる前に、当該分野において周知の任意のマイクロカプセル化工程を用いてマイクロカプセルコーティング中に組み込まれる。単離されたバチルス・コアギュランスは、この細菌を周囲環境から保護するために、他の材料中に包装またはカプセル化される。本発明のカプセルの大きさは、1/1000mm〜7mmの範囲である。マイクロカプセルの内部成分は、カプセル壁の機械的破壊、カプセル壁の溶解、カプセル壁の融解、およびカプセル壁を通した拡散を含む様々な方法で、シェルから放出される。したがって、マイクロカプセル化により、本発明の焼き製品の加熱工程(焼き工程)の間、単離されたバチルス・コアギュランスに対するさらなる保護が提供される。マイクロカプセル化の物理的方法には、パンコーティング、エアサスペンションコーティング、遠心押し出し、振動ノズル、および噴霧乾燥が含まれる。マイクロカプセル化の化学的方法には、界面重合、インサイチュー重合、マトリックス重合が含まれる。
【0028】
あるいは、乳酸産生菌はマイクロカプセル化せずに焼き製品に加えられる。
【0029】
焼き製品
本発明は、乳酸産生菌、特にバチルス種が、本発明の焼き製品が約5分間、約10分間、約30分間、または約1時間、約3000F〜約4750Fに加熱された時に、加熱/調理された焼き製品中で生存可能であり続け、かつ有益なプロバイオティクス特性を保つという驚くべき発見を対象とする。一局面において、本発明の焼き製品は、約35O0Fまで約14分間、約4500Fまで約17分間、または4750Fまで約6分間加熱される。好ましい熱および期間は、個々の焼き製品に依存して変動すると考えられる。一局面において、マフィンは約3500F〜約3750Fまで約14分間〜約20分間加熱される。別の局面において、シリアルは約4750Fまで約6分間加熱される。
【0030】
さらに考察されるように、細菌が、プロバイティクス生物の種および形態に依存して栄養細胞もしくは芽胞またはその両方として存在することから、本組成物は、多くの構成で調製される。細胞/芽胞は、焼き製品に用いられるのに適した様々な組成物中に存在する。一局面において、細菌は芽胞および栄養細胞の混合物として存在する。好ましくは、細菌は少なくとも90%が芽胞として、たとえば、95%、98%、または99%が芽胞として存在する。
【0031】
例示的な焼き製品には、パン、ケーキ、パイ、タルト、ペストリー、キャンディーバー、エナジーバー、グラノーラ、グラノーラバー、キッシュ、クッキー、シリアル、フードバー、ピザ、コーンチップ、トルティーヤチップ、ポテトチップ、焼きクラッカー、乾燥野菜、またはペットの餌が含まれる。別の局面において、焼き製品には粉を含有する任意の製品が含まれる。さらに別の局面においては、本発明の焼き製品には、加熱される任意の製品が含まれる。本発明は、オーブンで焼かれた/調理された焼き組成物を提供する。本明細書に記載される組成物は、焼かれるか、または熱に供することで乾燥させる。あるいは、焼き組成物は、高熱および過湿を用いて蒸気加熱する。たとえば、焼く前に、約10%〜約50% w/w 水/ドウである。好ましくは、焼き組成物は、焼く前に、約30〜50% w/w 水/ドウ、約15〜30% w/w 水/ドウ、または約5〜15% w/w 水/ドウを含む。本発明はまた、飴、棒付きキャンディー、キャンディーバー、チョコレート、およびスナック食品の他の甘い品物などの菓子組成物も提供する。
【0032】
パンは最小限で粉と水からなり、大抵の場合は塩が含まれ、通常はイーストなどの膨張剤が用いられる。しかしながら、広く認知された任意のパン製造法が本発明において用いられる。任意で、粉は小麦粉、米粉、コーンフラワー、ライ麦粉、ジャガイモ粉、ミレット粉、ベーキングフラワー、グラハム粉、またはキヌア粉である。一局面において、粉はセルフライジングフラワーである。いくつかの場合において、パンには、いくらかの量の砂糖、スパイス、果物(レーズン、カボチャ、バナナ、イチゴ、ブルーベリーなど)、野菜(タマネギ、ズッキーニなど)、ナッツ、または種子(キャラウェイ、ゴマ、ケシの実など)も含まれる。任意で、油(植物油、コーン油、オリーブ油、ブドウ種子油、堅果油、または果実油)、バター、ショートニング、人工脂質、合成脂肪、およびオレストラなどの脂肪代替物などの脂肪もまた含まれる。別の局面において、砂糖、砂糖代替物、またはサッカリン、スクラロース、もしくはアスパルテームなどの人工甘味料が含まれる。適した焼き製品には、バン、ロール、ベーグル、クッキー、およびペストリーが含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、焼き製品はブルーベリーブランマフィンである。
【0033】
バチルス菌は、焼き製品の製造工程の間に、焼き製品に添加される(たとえば、バッターまたはドウの混合物に加えられる)。バチルス芽胞は、その耐圧性および耐熱性から、焼き製品を調理するための加熱工程(焼き工程)の前に焼き製品に組み込むのに特に適している。
【0034】
一局面において、焼き製品の製造工程の間に、生菌を含む組成物を焼き製品に適用することによって、プロバイオティクス乳酸産生菌を焼き製品の一部分の中または上に導入する。好ましくは、プロバイオティクス酸産生菌の芽胞および/または栄養細胞を、焼き製品を焼く前にバッターまたはドウに導入する。あるいは、焼き工程の間または焼き工程が完了した後に細菌を加える。
【0035】
好ましくは、焼き製品を調理する前にバチルス菌をバッターに導入する。本発明は、通常は、水、牛乳、またはビールなどの液体と混ぜ合わせた、1種類またはそれ以上の粉をベースとする液体混合物を含むバッターを提供する。一局面において、バッターには卵が含まれる。調理するとバッターがガスを含んでふくらむように、混合物には任意で、膨張剤が含まれる。一態様において、バッターの粘度は極めて「硬い」(逆さにしたスプーンにくっつく)。あるいは、バッターの粘度はきわめて「薄い」(シングルクリームに近い)。好ましくは、材料を調理するために焼くことでバッターに熱を加え(こうすることで味を良くする)、バッターを固形形状に「固化する」。焼き工程後、焼き製品は、ヒトまたは動物による即時の消費または凍結、すなわち製品を将来の消費のために保存することに適する。
【0036】
本発明はまた、たとえば、粉末の添加、焼き製品上へのプロバイオティクスの噴霧乾燥、プロバイオティクスを含む溶液への焼き製品の浸漬を含む、様々な公知の方法のうちの任意のものを用いて、バチルス菌を焼き製品に適用することも提供する。任意で、バチルス菌は、焼き製品の調理前に適用される。あるいは、バチルス菌は、焼き工程の間または焼き工程が完了した後に適用される。
【0037】
本発明は、細菌組成物を焼き製品上に配置するための様々な方法を提供する。しかしながら、好ましい方法には「噴霧乾燥」法が含まれる。この方法では、低湿度チャンバ内で焼き製品を液体組成物を含有する微粒化混合物に暴露し、続いてこのチャンバを約80〜1100Fに暴露して液体を乾燥させ、それによって焼き製品の材料に該組成物の材料を添加する。
【0038】
典型的な濃度は、生菌または芽胞/焼き製品の外部表面(インチ2)が、約1x107〜1x1012 CFU;1x108〜1x1011 CFU;または1x109〜1x1010 CFUである。乾燥後、焼き製品は即時の使用、無菌包装中での保存、または凍結が可能な状態にある。
【0039】
活性成分(すなわち、生菌または細胞外抽出物)は、最終組成物の約0.01重量%〜約50重量%、好ましくは最終焼き製品の約0.01重量%〜約10重量%を占める。好ましくは、単離されたバチルス・コアギュランスは焼き製品の約0.01重量%〜約0.1重量%を占める。
【0040】
一局面において、細菌の量は、焼き製品1グラムあたりの細菌(すなわち、栄養細胞および/または細菌芽胞)のコロニー形成単位(CFU)が約104〜1014、好ましくは105〜1013 CFU/gである。より好ましくは、前記濃度は、108〜1013 CFU/g;109〜1012 CFU/g;または1010〜1011 CFU/gである。一局面において、細菌の量は焼き製品あたり約1 x 106 CFUである。あるいは、細菌の量はバッター5ポンドあたり約2 x 1010 CFUである。組成物中の実際の量は、焼き製品中に分散される組成物の量および分散の経路に依存して変動すると考えられる。
【0041】
一局面において、単離されたバチルス・コアギュランスは、焼き製品の約0.01重量%〜約10重量%;0.01重量%〜約1重量%;または約0.05重量%〜約0.1重量%を占める。任意で、単離されたバチルス・コアギュランスは、重量で、焼き製品の約1mg〜約10g;約10mg〜約1g;または約25mg〜約75mgを占める。
【0042】
一局面において、完成した焼き製品は、消費の前に凍結されて無菌包装中で保存される。本発明はまた、消費の前に焼き製品を室温で無菌包装中で保存することを提供する。あるいは、焼き製品は即時に消費される。一局面において、バチルス・コアギュランス芽胞は、約12日間〜約2年間、約1ヶ月間〜約18ヶ月間、約3ヶ月間〜約1年間、または約6ヶ月間〜約9ヶ月間の保存(貯蔵期間)に耐える、すなわち、生理学的条件下(たとえば、消化)において生存能力または発芽能力を保つ。一局面において、本発明のバチルス・コアギュランスは、マフィン中で少なくとも約12日間の保存(貯蔵期間)に耐える。別の局面において、本発明のバチルス・コアギュランスは、冷凍ピザ中で少なくとも約2年間の保存(貯蔵期間)に耐える。さらに別の局面において、本発明のバチルス・コアギュランスは、フードバー中で少なくとも約6ヶ月間〜少なくとも約18ヶ月間の保存(貯蔵期間)に耐える。
【0043】
実施例1:バチルス・コアギュランス培養物の調製
バチルス・コアギュランスHammer菌(ATCCアクセッション番号31284)を、標準的なエアリフト発酵容器を用いて30℃で、ペプトン5 g、肉エキス3 g、MnSO4 10〜30 mg、および蒸留水1,000 mlを含有するpH 7.0に調整した栄養ブイヨン中に播種し、約108〜109細胞/mlの細胞密度まで増殖させた。芽胞形成にふさわしいMnSO4の範囲は1 mg/l〜1 g/lである。栄養細胞は450C以下で活発に繁殖でき、芽胞は900C以下で安定である。発酵後、バチルス・コアギュランス菌細胞または芽胞を標準的な方法(たとえば、濾過、遠心分離)を用いて収集し、収集した細胞および芽胞を凍結乾燥、噴霧乾燥、風乾、または凍結することができる。本明細書で記載するように、細胞培養物由来の上清を収集し、バチルス・コアギュランスから分泌された細胞外物質として使用する。
【0044】
上記培養物からの典型的な収率は、乾燥前のグラムあたり、生芽胞約109〜1010個、より典型的には、細胞/芽胞約1000〜1500億個の範囲である。芽胞は、乾燥後、室温で10年間まで保存した場合に少なくとも90%の生存率を保ち、したがって、バチルス・コアギュランスHammer芽胞を含有する組成物の室温での有効な貯蔵期間は約10年間である。
【0045】
実施例2:バチルス・コアギュランス芽胞の調製
乾燥バチルス・コアギュランス芽胞の培養物を以下のように調製した。1000万個の芽胞を、ポテトデキストロースエキス24 g、家禽組織および魚組織の酵素消化物10 g、FOS 5 g、およびMnSO4 10 gを含有する1リットルの培養物に播種した。この培養物を、高酸素環境下37℃で72時間維持し、培養物1グラムあたり約1500億個の細胞を有する培養物を作製した。その後、この培養物を濾過して培養培地液体を取り除き、細菌ペレットを水に再懸濁して凍結乾燥した。続いて、凍結乾燥した粉末を、標準的な優良医薬品製造基準(GMP)を用いて微粉末に轢く。
【0046】
実施例3 マイクロカプセル化バチルス・コアギュランスを有する焼いたマフィン
GBI-30、ATCC指定番号PTA-6086をマイクロカプセル化し(Maxx Performance; Chester, NY)、乾燥粉末形状でブルーベリーブランマフィンバッターに加えた。バッター中のバチルス・コアギュランス(栄養細胞および芽胞の両方)の最終濃度は、バッター5ポンド(マフィン約20個が得られる)あたり約200億(2 x 1010) CFUであった。各マフィンのバチルス・コアギュランスの最終濃度(栄養細胞および芽胞の両方)は、マフィンあたり約10億(1 x 1O6) CFUであった。単離されたバチルス・コアギュランスは、4オンスのマフィンあたり重量で約50 mgを占めた。マフィンを3500Fで15分間調理した。続いて、マフィンを凍結し、00Fで14日間保存した。次にマフィンを解凍し、粉砕し、生菌の数を測定した。予想外なことに、マフィン中の細菌の約41%が、上記の調理および凍結サイクルの後に生存可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用デンプンと単離されたバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)菌との焼き組成物を含む組成物。
【請求項2】
焼き組成物が、パン、ケーキ、パイ、タルト、ペストリー、キャンディーバー、エナジーバー、グラノーラバー、キッシュ、クッキー、およびペットの餌からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ケーキがマフィンである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
マフィンがブルーベリーブランマフィンである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
単離されたバチルス・コアギュランスが、焼き製品の0.01重量%〜10重量%を占める、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
単離されたバチルス・コアギュランスがバチルス・コアギュランスhammer株アクセッション番号ATCC 31284である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
単離されたバチルス・コアギュランスがGBI-30株 (ATCC指定番号PTA-6086)である、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
単離されたバチルス・コアギュランスがGBI-20株 (ATCC指定番号PTA-6085)である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
単離されたバチルス・コアギュランスがGBI-40株 (ATCC指定番号PTA-6087)である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
単離されたバチルス・コアギュランスが芽胞の形態である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
単離されたバチルス・コアギュランスが栄養細胞の形態である、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
単離されたバチルス・コアギュランスが栄養細胞と芽胞との混合物の形態である、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
以下の工程を含む、焼き製品を作製する方法:
基礎的な混合物(base mix)を含有する粉と水である液体部分とを提供する工程;
前記基礎的な混合物を含有する粉と前記水とを混合してバッター(batter)またはドウ(dough)を形成する工程;
単離されたバチルス・コアギュランス菌を前記バッターまたはドウに適用する工程;および
焼き製品を調理するために前記バッターまたはドウを加熱する工程。
【請求項14】
単離されたバチルス・コアギュランスがバチルス・コアギュランスhammer株アクセッション番号ATCC 31284である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
単離されたバチルス・コアギュランスがGBI-30株 (ATCC指定番号PTA-6086)である、請求項13記載の方法。
【請求項16】
単離されたバチルス・コアギュランスが芽胞の形態である、請求項13記載の方法。
【請求項17】
単離されたバチルス・コアギュランスが栄養細胞の形態である、請求項13記載の方法。
【請求項18】
単離されたバチルス・コアギュランスが、焼き製品の1重量%〜10重量%を占める、請求項13記載の方法。
【請求項19】
以下の工程を含む、焼き製品を作製する方法:
基礎的な混合物を含有する粉と水である液体部分とを提供する工程;
前記基礎的な混合物を含有する粉と前記水とを混合してバッターまたはドウを形成する工程;
単離されたバチルス・コアギュランス菌を前記バッターまたはドウに混ぜ合わせる工程;および
焼き製品を調理するために前記バッターまたはドウを加熱する工程。
【請求項20】
油、バター、ショートニング、人工脂質、合成脂肪、および脂肪代替物からなる群より選択される脂肪をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
砂糖、砂糖代替物、または人工甘味料をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
粉と単離されたバチルス・コアギュランス菌とを含む焼き製品用の乾燥混合物を含む、組成物。

【公表番号】特表2010−537631(P2010−537631A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522931(P2010−522931)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/010143
【国際公開番号】WO2009/029267
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(507132374)ガネーデン バイオテック インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】