説明

焼却炉用排気筒

【課題】 排ガスの円滑な排出、排ガスおよび排気筒の効果的な冷却が良好に維持されるという点を満足しつつ製造コストの低減を図ることができ、さらに、運搬や設置にかかる労力やコストも軽減できる排気筒の提供。
【解決手段】 排気筒1は、内筒27と外筒29とで構成される。外筒29は、第一外筒30と第二外筒31とで構成される。内筒27は、燃焼室5の先端部に立設される。第一外筒30は、燃焼室5に接続された内筒27に上方からはめ込まれ、内筒27との間に円筒状隙間28を形成する。第二外筒31は、第一外筒30の上部に接続される。内筒27からの排ガスは、円筒状隙間28から上方へ流れる空気により、第二外筒31内でガイドされて排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃棄物などの被焼却物を減容化するための焼却炉に適用される排気筒に関するものである。特に、焼却炉の設置場所で組立容易な排気筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件発明者は、先に、下記特許文献1に開示される乾留焼却炉を提案している。この乾留焼却炉では、その図1に示されるように、排気筒(7)は、内筒(7a)と外筒(7b)とにより二重の円筒状に構成され、燃焼室(6)の上部に接続されている。さらに、この外筒(7b)には、上下部において開口(7c,7d)が形成されており、その上下の開口部(7c,7d)を介して、空気が自然対流するよう構成される。ここで、括弧書きの符号は、特許文献1中における符号である。
【特許文献1】特開2005−201499号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の排気筒は、上下方向全体にわたって外筒内に内筒が設けられて二重構造とされており、コスト高となるものであった。また、従来の排気筒の場合、外筒に内筒がはめ込まれた状態で運搬し、設置しなければならなかった。そのため、重量が増加し、簡易な運搬や設置を行う点で改善の余地があった。
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、排ガスの円滑な排出、排ガスおよび排気筒の効果的な冷却が良好に維持されるという点を満足しつつコストの低減を図ることができ、さらに、設置にかかる負担も軽減できる焼却炉用排気筒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、上下方向へ沿って配置され、燃焼室からの排ガスが下方から導入される内筒と、この内筒との間に筒状隙間を形成するよう同一軸線上に配置され、前記内筒よりも上方へ延出する外筒とを備え、前記筒状隙間は、下部が外部と連通されることを特徴とする焼却炉用排気筒である。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、内筒が、外筒の内部に筒状隙間を形成するよう収容される。このとき、外筒の上部には内筒が設けられていないが、下方の筒状隙間から上方へ流れる空気流により、排ガスの円滑な排出、排ガスおよび排気筒の効果的な冷却は良好に維持される。また、内筒の一部を省略したことで、内筒の製造にかかるコストの低減を図ることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、水平方向に設けられた前記燃焼室または煙道に、前記内筒の下端部が取り付けられており、この内筒に前記外筒の下部開口がはめ込まれて設置されることを特徴とする請求項1に記載の焼却炉用排気筒である。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、予め取り付けられた内筒に、外筒を上からはめ込んで設置することができる。これにより、焼却炉の設置場所で排気筒を組み立てる際の労力やコストを軽減できる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、被焼却物を収容して乾留ガス化するガス化室と、このガス化室と接続され、乾留ガスを燃焼させる前記燃焼室とを備える乾留焼却炉に適用され、前記内筒は、下端部が前記燃焼室の先端部に取り付けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焼却炉用排気筒である。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、乾留焼却炉の燃焼室に排気筒を組み立てる際の労力やコストを軽減できる。
【0011】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記外筒は、複数本が互いに接続されて構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼却炉用排気筒である。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、外筒は、複数本に分割することができる。これにより、排気筒の組立作業や運搬が容易となり、その組立作業や運搬にかかるコストも低減できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、排ガスの円滑な排出、排ガスおよび排気筒の効果的な冷却が良好に維持されるという点を満足しつつ製造にかかるコストの低減を図ることができ、さらに、運搬や設置にかかる労力やコストも軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の排気筒は、焼却炉からの排ガスを外部へ排出する煙突である。焼却炉は、その構成を特に問わないが、たとえば、被焼却物を燃焼させる一般的焼却炉の他、被焼却物を乾留ガス化して、それにより生じた乾留ガスを燃焼させる乾留焼却炉とされる。
【0015】
本実施形態の排気筒は、上下方向へ沿って配置される内筒と、この内筒との間に筒状隙間を形成するよう配置され、内筒よりも上方へ延出する外筒とを備える。
【0016】
内筒は、下部が燃焼室と連通する一方、上部が外気と連通する筒状に形成されている。その際、内筒は、燃焼室自体に接続してもよいし、燃焼室からの煙道に接続してもよい。
【0017】
外筒は、筒状に形成されており、下部領域は、内筒との間に筒状隙間を形成するように配置される。前記筒状隙間は、内筒および外筒の他、内筒を通る排ガスを冷却するのに必要十分な空気を通す大きさとされる。外筒の下端部は、通常、内筒の下端部と対応して配置され、外筒の上端部は、内筒の上端部よりも上方へ十分延出して配置される。本実施形態では、予め燃焼室またはそこからの煙道に内筒が接続されて位置決めされており、その内筒に上方から外筒をはめ込んで設置される。このようにして、内筒は、外筒の下端から、たとえば外筒の全長の四分の一から三分の二程度の長さだけ設けられる。
【0018】
内筒および外筒の断面形状は特に問わず、略矩形状などでもよいが、双方ともに円形状に形成するのが好ましい。断面円形状に形成することにより、簡易な構成で、熱応力の影響も抑制できる。
【0019】
また、外筒は、複数本を互いに接続して構成してもよく、典型的には、第一外筒と第二外筒との二本の筒材を上下に互いに接続して構成される。第一外筒の下端部は、通常、内筒の下端部と対応して配置され、その第一外筒の上端部に第二外筒の下端部が接続される。その際、少なくとも第二外筒の上部は内筒より上方へ延出する。本実施形態では、予め内筒を燃焼室またはそこからの煙道に立設しておき、その立設された内筒に、第一外筒、第二外筒の順に上方からはめ込んで設置される。つまり、まず内筒に第一外筒を上からはめ込んで固定し、その第一外筒の上端部に第二外筒の下端部を接続する。内筒、第一外筒および第二外筒のそれぞれの長さや断面の大きさは、適宜に設定される。
【0020】
いずれにしても、外筒は、内筒の外側面との間に筒状隙間を形成し、内筒よりも上方へ延出するように設けられる。従って、外筒内の上部には、内筒が設けられておらず、筒状隙間が形成されていない。ところで、外筒の上端部には、ごみや雨水などが入り込むのを防止する笠が設けられる。
【0021】
筒状隙間は、下部が外気と連通する一方、上部が外筒を介して外気と連通する。従って、焼却炉の運転時には、筒状隙間の下方から上方へ向けて空気の自然対流が生じる。一方、燃焼室からの排ガスは、内筒および外筒を介して外気へ放出される。そして、内筒の上部開口から外筒へ導入される排ガスと、筒状隙間から外筒へ導入される空気は、ほとんど混合することなく外筒内を上方へ流れ、外気へ放出される。具体的には、筒状隙間から上方へ流れる冷却空気は、外筒の内周面に沿って上方へ流れる。一方、燃焼室からの排ガスは、筒状隙間からの円筒状の空気流にガイドされて、上方へ流れる。
【0022】
本実施形態の排気筒は、好適には、乾留ガス化方式および二次燃焼方式の焼却炉に備えられる。この焼却炉には、燃焼室の上流側にガス化室が備えられる。ガス化室は、中空ボックス状に形成され、廃棄物などの被焼却物が収容される。このガス化室において、被焼却物を蒸し焼き状態で燃焼させることにより、乾留ガスを発生させることができる。一方、燃焼室は、ガス化室と連通して設けられ、典型的には水平または垂直に配置される。いずれの場合も、ガス化室の上壁または側壁と、燃焼室の基端部とが接続される。燃焼室には、さらに助燃バーナが設けられる。この助燃バーナは、灯油などの補助燃料を燃焼させるものであり、燃焼室の基端部に設けられる。そして、助燃バーナへは、ガス化室からの乾留ガスが導入されると共に、送風機からの燃焼用空気が導入される。従って、助燃バーナの火炎にて、ガス化室からの乾留ガスは、燃焼室内へ火炎を向けて燃焼される。そして、その排ガスは、燃焼室の先端部に接続された排気筒の内筒に、下方から導入され、外部へ排出される。
【実施例1】
【0023】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいてさらに詳細に説明する。ここでは、乾留焼却炉の排気筒に適用した例について説明する。
【0024】
図1は、本発明の排気筒の実施例1を備える乾留焼却炉の一例を示す概略構成図である。本実施例の乾留焼却炉は、乾留ガス化方式および二次燃料方式により、廃棄物などの被焼却物を焼却処理する装置である。この乾留焼却炉の排気筒1に、本発明が適用されている。
【0025】
本実施例の乾留焼却炉は、着火バーナ2を有し被焼却物(図示省略)を収容するガス化室3と、このガス化室3内の被焼却物から発生させた乾留ガスを燃焼させる助燃バーナ4付きの燃焼室5と、この燃焼室5からの排ガスを装置外へ排出する排気筒1と、ガス化室3や燃焼室5およびそれらに設けた前記各バーナ2,4へ空気を供給する送風機6と、前記各バーナ2,4および前記送風機6などを制御する制御器7とを備える。
【0026】
ガス化室3は、被焼却物を収容可能に、中空ボックス状に形成されている。本実施例のガス化室3には、正面の上下に、被焼却物の投入扉8と焼却後の灰出し扉9とが開閉可能に設けられており、側面に、着火バーナ2が設けられている。着火バーナ2は、ガス化室3の中央部よりやや下方に配置されており、先端部をガス化室3内へ向けて横向きに設けられる。
【0027】
着火バーナ2は、灯油などの補助燃料を燃焼させるものである。そのために、着火バーナ2には、給油路(図示省略)を介して補助燃料が供給されると共に、着火バーナ空気路10を介して送風機6から空気が供給される。ここで、着火バーナ2への補助燃料の供給は、前記給油路に設けた給油弁(図示省略)の開閉により調整される。また、着火バーナ2への空気の供給は、着火バーナ空気路10に設けた着火バーナダンパ11により調整される。
【0028】
ガス化室3には、ガス化室3内へ空気を導入するガス化空気路12が接続されている。このガス化空気路12は、送風機6からの空気をガス化室3の炉床からガス化室3内へ導入するものである。ガス化空気路12には、ガス化空気ダンパ13が設けられており、ガス化室3への供給空気量が調整される。
【0029】
このような構成であるので、着火バーナ2の火炎により被焼却物に着火し、ガス化室3内へ空気を供給することで被焼却物の発熱が促され、被焼却物から乾留ガスが発生する。
【0030】
さらに、ガス化室3には、ガス化室3内の温度を計測するために、ガス化室温度センサ14が設けられる。本実施例のガス化室温度センサ14は、ガス化室3から燃焼室5への出口部付近に設けられる。
【0031】
ガス化室3の上部には、燃焼室5が水平に設けられる。具体的には、ガス化室3の上部には、小径筒15と大径筒16とから構成される二重の筒が、水平に配置される。小径筒15と大径筒16とは、それぞれ円筒状に形成されている。そして、小径筒15に大径筒16を被せるようにして、小径筒15と大径筒16とは同一軸線上に配置される。これにより、小径筒15の外周面と大径筒16の内周面との間に、円筒状空間17が形成される。小径筒15の先端部は、大径筒16よりも先端側へ延出している。円筒状空間17は、大径筒16の先端部においてツバ部18により閉塞される。
【0032】
小径筒15の基端部には、段付き円筒状のバーナ筒19が接続され、このバーナ筒19の基端部に助燃バーナ4が設けられる。小径筒15と大径筒16との間の円筒状空間17は、前述したとおり、その先端部開口がツバ部18により閉塞される。一方、大径筒16は、小径筒15よりも基端側へ延出しており、バーナ筒19の基端部と対応した位置において、大径筒16とバーナ筒19との隙間が閉塞される。ここで、バーナ筒19は、段付き円筒状としたが、段付き部のない単なる円筒状とすることもできる。
【0033】
助燃バーナ4は、着火バーナ2と同様に、灯油などの補助燃料を燃焼させるものである。そのために、助燃バーナ4には補助燃料が供給されると共に、助燃バーナ空気路20を介して送風機6から空気が供給される。助燃バーナ空気路20には、助燃バーナ4への供給空気量を決定する助燃バーナダンパ21が設けられている。
【0034】
前述したように、小径筒15は、その基端部にバーナ筒19を介して助燃バーナ4が設けられるが、このような小径筒15によって燃焼室5が構成される。すなわち、小径筒15と大径筒16とから構成される二重の筒は、燃焼室5の壁を構成し、小径筒15内が燃焼室5として実質的に機能する。そして、この燃焼室5内へは、ガス化室3からの乾留ガスが接続管22を介して導入されると共に、その乾留ガスの燃焼用空気が燃焼用空気路23を介して導入される。
【0035】
具体的には、バーナ筒19とガス化室3とは接続管22で接続され、この接続管22を介して、ガス化室3からの乾留ガスが燃焼室5内へ導入される。本実施例では、水平に配置されたバーナ筒19の周側壁下部と、ガス化室3の上部とが、垂直に配置された円筒状の接続管22にて接続される。
【0036】
一方、燃焼室5内への燃焼用空気の供給は、燃焼用空気路23を介して送風機6から空気を送り込むことでなされる。この際、小径筒15と大径筒16との間の円筒状空間17が、燃焼用空気路23の末端部として用いられる。すなわち、送風機6からの空気は、燃焼用空気ダンパ24を介した後、大径筒16の先端側の周側壁に形成した開口から、円筒状空間17へ供給される。そして、円筒状空間17へ供給された空気は、基端側へ導かれ、小径筒15の基端部に配置したバーナ筒19を介して燃焼室5内へ導出される。
【0037】
このようにして、バーナ筒19内へは乾留ガスと燃焼用空気とが供給され、助燃バーナ4の火炎にて燃焼される。その際、ガス化室3からの乾留ガスは、燃焼室5の先端側へ火炎を向けて燃焼される。
【0038】
小径筒15は、先端面が閉塞され、大径筒16からの延出部の周側壁において上方へ開口している。そのような延出部を覆うように、小径筒15の先端部には、接続筒25が設けられる。接続筒25は略L字形状の流路を有し、一方の開口部がツバ部18に接続され、他方の開口部(上部開口)は、小径筒15の上部開口と同心円状に配置される。ところで、小径筒15の先端部,つまり燃焼室5の先端部には、燃焼室出口の温度を計測する燃焼室温度センサ26が設けられる。
【0039】
小径筒15および接続筒25の各上部開口には、排気筒1が立設される。本実施例の排気筒1は、燃焼室5の先端部に設けられる円筒状の内筒27と、この内筒27との間に円筒状隙間28を形成するように配置される円筒状の外筒29とを備える。この外筒29は、下方に位置する円筒状の第一外筒30と、この第一外筒30の上部に設けられる円筒状の第二外筒31とからなる。
【0040】
内筒27は、燃焼室5の先端部に立設して接続される。具体的には、接続筒25の上部開口から上方へ突出するようにして、下端部が小径筒15の前記延出部の上部開口に接続される。従って、内筒27には、燃焼室5からの排ガスが下方から導入される。
【0041】
第一外筒30は、内筒27よりも大径であり、図示例では、全長は内筒27程度とされている。そして、この第一外筒30は、上記のように接続された内筒27に上方からはめ込んで接続筒25の上部開口に接続され、内筒27と第一外筒30とは同一軸線上に配置される。これにより、内筒27の外周面と第一外筒30の内周面との間には円筒状隙間28が形成され、この円筒状隙間28は、接続筒25と小径筒15との間の隙間とも連通する。また、第一外筒30の上部には径方向外側へ延出してフランジ32が形成されている。
【0042】
第二外筒31は、図示例では、第一外筒30と直径および全長が同一であり、下部には径方向外側へ延出してフランジ33が形成されている。そして、このフランジ33が第一外筒30の上部のフランジ32に接続されることで、第二外筒31は上記のように位置決めされた第一外筒30に連結される。このようにして、第二外筒31は、内筒27および第一外筒30と同一軸線上に配置される。さらに、第二外筒31の上端部には、ごみや雨水などが焼却炉内へ入り込むのを防ぐために、笠34が設けられる。
【0043】
制御器7は、着火バーナ2やガス化室3および燃焼室5への送風量や、各バーナ2,4の作動などを制御する。具体的には、各ダンパ11,13,24の駆動手段をそれぞれ制御することで、着火バーナ2への供給空気量、ガス化空気路12を介したガス化室3への供給空気量、および燃焼用空気路23を介した燃焼室5への供給空気量を変更できる。但し、本実施例では、助燃バーナダンパ21は、所定状態に固定されているので、助燃バーナ4の作動時には一定量の空気が助燃バーナ4へ供給される。
【0044】
また、制御器7は、圧力センサ35の出力に基づき送風機6の回転数をインバータ制御することで、送風機6から各ダンパ11,13,21,24へ送る空気の風圧を一定にできる。さらに、各バーナ2,4への補助燃料の供給は、給油路(図示省略)に設けられた給油弁(図示省略)を開閉制御することでなされる。
【0045】
このような制御は、予め設定された手順(プログラム)に従い、ガス化室3および燃焼室5に設けた各温度センサ14,26、および圧力センサ35の出力、さらには制御器7自身が把握する経過時間などを用いてなされる。そのため、本実施例の乾留焼却炉は、最初にガス化室3内へ被焼却物を投入して収容した後、乾留焼却が段階的に行われ、その一連の処理が完了するまでは、ガス化室3に新たに被焼却物が投入されることはない。この制御器7による運転制御は、前記温度センサ14,26による温度制御を基本とし、これに時間制御を付加したものとしている。また、このような運転制御を、ガス化室3に投入される被焼却物の重量などを用いて行ってもよい。
【0046】
運転に伴い、排気筒1から排ガスが装置外へ排出される。その際、円筒状隙間28には、下方から上方への外気の自然対流が生じる。具体的には、接続筒25の下部に外気導入口36が形成されており、その外気導入口36から導入された外気が、円筒状隙間28の下方から上方へ流れる。
【0047】
このように流れる外気が、円筒状隙間28から第二外筒31内へ導入される一方、燃焼室5からの排ガスも第二外筒31内へ導入される。このとき、円筒状隙間28からの空気は、第二外筒31の内周面に沿って上方へ流れ、燃焼室5からの排ガスは、その円筒状の空気流にガイドされて第二外筒31内を上方へ流れる。そのため、外気と燃焼室5からの排ガスは、第二外筒31内でほとんど混合することなく外部へ排出される。
【実施例2】
【0048】
次に、本発明の排気筒の実施例2について説明する。本実施例2の乾留焼却炉およびその排気筒も基本的には、前記実施例1と同様の構成である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0049】
図2は、本発明の排気筒の実施例2を備える乾留焼却炉を示す概略図であり、図1における燃焼室5先端部から排気筒1の部分のみを示している。本実施例2では、図1の第一外筒30を大径筒16の周側壁に接続して構成される。つまり、前記実施例1では、第一外筒30は接続筒25に接続されたが、本実施例2では、接続筒25を介さないで、第一外筒30は大径筒16に直接に接続される。
【0050】
具体的には、大径筒16の先端側の周側壁上部には開口が形成されており、内筒27は、この開口から突出するようにして、下端部が小径筒15の周側壁上部に接続される。そして、第一外筒30は、上記のように接続された内筒27に上方からはめ込んで大径筒16に接続される。これにより、内筒27の外周面と第一外筒30の内周面との間には円筒状隙間28が形成され、この円筒状隙間28は、小径筒15と大径筒16との間の円筒状空間17と連通する。但し、円筒状空間17は、前記実施例1と同様にツバ部18で閉塞されている。そして、大径筒16の先端側の周側壁下部には、外気導入口36が形成される。そして、排気筒1から排ガスが装置外へ排出されると共に、外気導入口36から導入された外気が、円筒状隙間28の下方から上方へ流れる。
【実施例3】
【0051】
次に、本発明の排気筒の実施例3について説明する。本実施例3の乾留焼却炉およびその排気筒も基本的には、前記実施例1と同様の構成である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0052】
図3は、本発明の排気筒の実施例3を備える乾留焼却炉を示す概略図であり、図1における燃焼室5先端部から排気筒1の部分のみを示している。本実施例3では、図1の排気筒1の周側壁に燃焼室5の先端部を接続して構成される。つまり、前記実施例1では、内筒27は小径筒15の周側壁に接続されたが、本実施例3では、小径筒15が内筒27の周側壁に接続される。
【0053】
本実施例の場合、第一外筒30内に内筒27が設けられた二重筒を燃焼室5の先端部に設ける。その際、小径筒15は、先端部が内筒27の周側壁下端部に接続される一方、大径筒16は、先端部が第一外筒30の周側壁下端部に接続される。そして、円筒状空間17は、大径筒16の先端部において、第一外筒30の周側壁により閉塞される。また、第一外筒30の下壁には、外気導入口36が形成される。そして、排気筒1から排ガスが装置外へ排出されると共に、外気導入口36から導入された外気が、円筒状隙間28の下方から上方へ流れる。
【0054】
前記各実施例の排気筒1によれば、第一外筒30および第二外筒31の全長を内筒27とほぼ同一に形成することで、内筒27と円筒状隙間28を形成するように第一外筒30が設けられる。そして、この第一外筒30の上方に設けられる第二外筒31内には、内筒27は設けられず、円筒状隙間28も形成されない。これにより、排気筒1の設置や運搬が容易となり、内筒27にかかる製造コストを低減できる。さらに、排ガスを排気筒1から外部へ円滑に排出できると共に、燃焼室5からの排ガスおよび排気筒1を効果的に冷却することができる。
【0055】
本発明の排気筒1は、前記各実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、外筒29は、第一外筒30と第二外筒31とが一体的に構成された一本の円筒であってもよいし、三本以上に分割される構成でもよい。外筒29を複数本で構成する場合、その互いの接続は、フランジの他、溶接などでもよい。また、前記各実施例で説明した乾留焼却炉は一例であって、適宜変更可能なことは言うまでもない。
【0056】
さらに、前記各実施例の排気筒1は、乾留焼却炉以外の焼却炉にも適用可能である。たとえば、一般的な焼却炉に適用することもできる。この場合、図1において、燃焼室5を省略する代わりにガス化室3を燃焼室として用い、そのガス化室3の上壁に本発明の排気筒1を接続する。そして、ガス化室3に被焼却物を完全燃焼させるのに十分な空気を供給して、被焼却物を焼却処理する。但し、排気筒1は、ガス化室3の上部側壁に接続してもよい。その際、排気筒1は、ガス化室3の上部側壁から延出するように設けられた煙道を介して、ガス化室3と接続すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の排気筒の実施例1を備える乾留焼却炉の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1における排気筒の変形例(実施例2)を示す図である。
【図3】図1における排気筒のさらに別の変形例(実施例3)を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 排気筒
3 ガス化室
5 燃焼室
27 内筒
28 円筒状隙間
29 外筒
30 第一外筒
31 第二外筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向へ沿って配置され、燃焼室からの排ガスが下方から導入される内筒と、
この内筒との間に筒状隙間を形成するよう同一軸線上に配置され、前記内筒よりも上方へ延出する外筒とを備え、
前記筒状隙間は、下部が外部と連通される
ことを特徴とする焼却炉用排気筒。
【請求項2】
水平方向に設けられた前記燃焼室または煙道に、前記内筒の下端部が取り付けられており、
この内筒に前記外筒の下部開口がはめ込まれて設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の焼却炉用排気筒。
【請求項3】
被焼却物を収容して乾留ガス化するガス化室と、このガス化室と接続され、乾留ガスを燃焼させる前記燃焼室とを備える乾留焼却炉に適用され、
前記内筒は、下端部が前記燃焼室の先端部に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焼却炉用排気筒。
【請求項4】
前記外筒は、複数本が互いに接続されて構成される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼却炉用排気筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−180412(P2008−180412A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12385(P2007−12385)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】