説明

焼却装置

【課題】この発明は、煤煙、異臭、有毒物質を全く生成せずに、被焼却物を短い時間で効率よく焼却処理することができる焼却装置の提供を目的とする。
【解決手段】ホッパ2に投入された塊状の被焼却物Aを、掻き削り装置3で粒状或いは粒状以下の大きさに掻き削る。送気装置4から供給される空気Bを、掻き削り装置3で掻き削られる被焼却物Aに対し均一に混合して焼却室6内に供給する。焼却室6内の被焼却物Aに着火装置5で着火した後、該着火された被焼却物Aを燃焼させながら撹拌装置7で撹拌する。被焼却物Aの焼却灰Aaを焼却室6から灰集積室8に回収及び集積し、被焼却物Aが燃焼する際に生成される排ガスGから排熱を排熱回収装置9で回収して大気中に放出する。これにより、被焼却物Aを燃焼させるのに必要な量の空気Bが安定して得られ、被焼却物Aを短い時間で効率よく完全燃焼させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば可燃性廃棄物、生ゴミ、汚泥、汚水、糞尿、或いは、廃油、廃液、塗料、タイヤ、合成樹脂成形品等の産業廃棄物、使用済み注射器、ガーゼ等の医療廃棄物等の被焼却物を焼却処理する際に用いられる焼却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記被焼却物を焼却する装置としては、例えばホッパに投入されたごみを、焼却炉の主燃焼室に設けられたストーカ上に供給して、該ごみを燃焼させながらストーカの上流側から下流側に向けて移送し、該ストーカの下方に設けられた空気ダクトから燃焼空気を供給して燃焼させる焼却炉におけるCO制御方法がある(特許文献1参照)。しかし、前記ごみを粉砕せず塊状のまま焼却炉内へ供給すると、ごみの中心部及びごみ全体に火が通りにくく、完全燃焼させることができない。また、着火時において、煤煙、異臭、有毒物質が生成されてしまい、環境汚染の原因となる。
【0003】
前記ごみ等の焼却物を粉砕して焼却する他の装置としては、例えば焼却物投入用ホッパから供給される塊状の焼却物を破砕機で破砕し、該破砕機で破砕された焼却物を給じん機で圧密して解砕機に供給し、該解砕機でほぐされた焼却物を焼却炉内に供給して燃焼させる。また、前記ホッパと焼却炉とを接続する第一経路内及び第二経路内に残留する可燃性ガスの濃度が設定値を超えた際に、吸気ファンによって一次空気とともに第一経路内及び第二経路内の可燃性ガスを焼却炉内へ供給する焼却設備がある(特許文献2参照)。
【0004】
しかし、前記破砕機で破砕された焼却物を前記給じん機で圧密した際に、該破砕機で粉砕された焼却物中から空気が押し出されてしまうので、焼却物を解砕機でほぐしてから焼却炉内に供給しても、焼却物自体に空気が含まれていないため完全燃焼させることができない。また、着火時において、焼却物全体に火が通る速度が遅くなるので、煤煙、異臭、有毒物質が生成されてしまう。また、第一経路内及び第二経路内に残留する可燃性ガスを、吸気ファンによって第一経路内及び第二経路内から吸引して焼却炉内へ供給する際に、第一経路内及び第二経路内の空気の濃度が薄くなるだけでなく、焼却物中に含まれる空気も一緒に吸引されてしまうため、焼却物を燃焼させるのに必要な量の空気が得られなくなる。
【特許文献1】特開平5−113208号公報
【特許文献2】特開平11−211047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、煤煙、異臭、有毒物質を全く生成せずに、被焼却物を短い時間で効率よく焼却処理することができる焼却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、焼却室内に投入された被焼却物に着火手段で着火して、該被焼却物を焼却室内で焼却処理する焼却装置であって、前記被焼却物が投入される投入部と、該被焼却物が焼却処理される焼却室とを接続する通路に、前記投入部に投入された塊状の被焼却物を該塊状以下の大きさに掻き削るための掻き削り手段と、前記掻き削り手段で掻き削られた被焼却物に対し空気を混合するとともに、該被焼却物が前記焼却室内に向けて移送される方向に空気を供給するための空気供給手段とを備えた焼却装置であることを特徴とする。
【0007】
この発明の態様として、前記焼却室より上流側で前記掻き削り手段より下流側の前記通路の内壁に、前記空気供給手段から供給される空気を吐出するための吐出口を設け、前記吐出口を、前記通路の内壁面に沿って前記焼却室内に向けて空気が吐出される方向に開口することができる。
【0008】
また、この発明の態様として、前記掻き削り手段を、前記被焼却物が供給される方向と直交して前記通路内に対し回転自在に軸受された掻き削りドラムと、該掻き削りドラムの周面と対向して前記通路内に配置された掻き削り壁とで構成し、前記掻き削りドラムを、該掻き削りドラムの周面に突設された複数の掻き削り刃と、前記掻き削り壁に形成された複数の掻き削り孔とが互いに噛合交差される方向に対し回転自在に設けることができる。
【0009】
また、この発明の態様として、前記掻き削り刃を、前記回転体の軸芯方向に対し所定間隔に隔てて複数配列するとともに、該回転体の軸芯を中心として円周方向に対し所定角度に偏心して配置することができる。
【0010】
また、この発明の態様として、前記掻き削り刃の刃先側から根元側に至るすくい面を、該刃先側から根元側に向けて前記被焼却物が送り込まれる形状に形成することができる。
【0011】
また、この発明の態様として、前記掻き削り手段を、前記通路内に形成された円筒状を有する掻き削り室の中心に対し垂直に軸受された回転軸と、前記回転軸の周面に対し上下段違いに突設された複数の掻き削り羽根と、前記掻き削り室の底部に開口された前記被焼却物を放出する放出口と、前記放出口の上方に設けられ該放出口が覆われる大きさに形成された掻き削り板とで構成するとともに、前記回転軸を、前記掻き削り羽根と前記掻き削り板とが互いに噛合交差される方向に対し回転自在に設け、前記底部と掻き削り板との間を、前記掻き削り羽根の水平旋回が許容される上下間隔に隔てることができる。
【0012】
また、この発明の態様として、前記焼却室内の燃焼領域に、該燃焼領域に供給された被焼却物を撹拌する撹拌手段を設けることができる。
【0013】
また、この発明の態様として、前記焼却室内に、前記被焼却物が燃焼する際に発生する火炎によって赤熱状態に加熱される火炎吸収手段を設けることができる。
【0014】
前記被焼却物は、例えば可燃性廃棄物、生ゴミ、汚泥、汚水、糞尿、或いは、廃油、廃液、塗料、タイヤ、合成樹脂成形品などの産業廃棄物、使用済み注射器、ガーゼなどの医療廃棄物等で構成することができる。
【0015】
また、掻き削り手段は、例えば羽根、突起、爪等の棒状又は板状の突出部を備えた掻き削り装置で構成することができる。なお、掻き削りとは、例えば切削、細断、切断、粉砕等を含むものである。
【0016】
また、空気供給手段は、例えばブロワ、ファン等の送気装置で構成することができる。
また、着火手段は、例えば特許第3616117号公報のバーナ装置で構成することができる。
また、撹拌手段は、例えば羽根、突起等の板状又は棒状の撹拌体を備えた撹拌装置で構成することができる。
また、火炎吸収手段は、例えば多孔質のセラミックボール等の耐火性及び蓄熱性を備えたもので構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、煤煙、異臭、有毒物質を全く生成せずに、被焼却物を短い時間で効率よく焼却処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の一実施形態である焼却装置1の内部構造及び焼却方法を示す縦断側面図、図2は通路2eに設けられた掻き削り装置3の構造を示すK−K矢視断面図、図3は掻き削り装置3の構造を示す横断平面図、図4は掻き削り装置3による被焼却物Aの掻き削り動作を示す拡大側面図、図5は焼却室6に設けられた撹拌装置7の構造を示すL−L矢視断面図、図6は焼却室6内の被焼却物Aに着火する着火装置5の構造を示す縦断側面図である。
【0019】
本発明の焼却装置1は、被焼却物Aの投入が許容されるホッパ2と、ホッパ2に投入された塊状の被焼却物Aを該塊状以下の大きさに掻き削りながら焼却室6に供給する掻き削り装置3と、掻き削り装置3で掻き削られる被焼却物Aに空気Bを混合しながら該被焼却物Aと空気Bとの混合物を焼却室6内に供給する送気装置4と、焼却室6内の被焼却物Aに着火する着火装置5と、被焼却物Aを焼却処理する焼却室6と、着火された被焼却物Aを撹拌する撹拌装置7と、被焼却物Aの焼却灰Aaを回収及び集積する灰集積室8と、焼却室6内で被焼却物Aが燃焼する際に生成される排ガスGから排熱を回収する排熱回収装置9とを備えている。なお、焼却室6及びその他の高温になる部分2,3,4,5,7,8,9は、耐火性及び耐熱性に優れた材質で構成されている。
【0020】
前記ホッパ2は、図1にも示すように、焼却室6の上流側下部に連設され、該ホッパ2に投入された被焼却物Aが焼却室6内に向けて供給されるようになっている。また、ホッパ2の上流側端部には、被焼却物Aを投入するための投入口2aが開口され、該投入口2aの上面には蓋2bが開閉自在に取り付けられている。
【0021】
ホッパ2の下流側には、該ホッパ2の中間部から下端部に向けて徐々に狭くなる漏斗状の通路2eが形成されている。また、通路2eの下流側端部には、後述する掻き削り装置3で掻き削られた被焼却物Aを焼却室6内に向けて放出するための放出口2cが開口されている。該放出口2cは、後述する焼却室6の上流側下部外壁(図1に示す左側下部)に開口された供給口6aに連通接続されている。
【0022】
前記掻き削り装置3は、図2、図3、図4にも示すように、前記放出口2cより上流側の通路2e内部に配置され、前記ホッパ2に投入された被焼却物Aが、後述する掻き削りドラム31の掻き削り刃33と掻き削り壁37の掻き削り孔38との噛合交差によって塊状以下の大きさに掻き削られるようになっている。
【0023】
掻き削りドラム31は、ホッパ2内に投入される被焼却物Aの投入方向と直交して前記通路2eの内部に対し回転自在に軸受されている。
また、掻き削りドラム31は、円筒状に形成されたドラム32の周面に、塊状の被焼却物Aを掻き削るための掻き削り刃33が斜め外方に向けて時計回り方向(図4中の矢印aで示す方向)に複数突設されている。
また、掻き削り刃33は、ドラム32の軸芯方向に対し所定間隔に隔てて複数配列されるとともに、該ドラム32の軸芯を中心として円周方向に対し所定角度に偏心して配置されている。
【0024】
掻き削り刃33の刃先側から根元側に至る外側の逃げ面は、前記通路2eの内壁面と対応して側面から見て滑らかな曲率半径に形成されている。また、掻き削り刃33の刃先側から根元側に至る内側のすくい面は、該刃先側から根元側に向けて被焼却物Aが送り込まれる角度に傾斜されている。また、前記通路2eの内壁とドラム32の外周との間は、塊状以下の小さい被焼却物A及び液状の被焼却物Aの通過が許容される間隔に隔てられている。
なお、掻き削り刃33のすくい面を、例えば曲面形状、アール形状等の滑らかな曲率半径を有する面に形成してもよい。
【0025】
また、ドラム32の軸中心には、1本の回転軸34が軸芯方向に貫通して固定されている。その回転軸34の両端は通路2eの両側部に突出され、該両側部に配置した一対の軸受部35,35で軸受されている。また、回転軸34の一端は、通路2eの一側部に配置された変速機能を備えた掻き削り用のモータ36に直結されている。
【0026】
前記放出口2cより上流側の通路2eの内壁(図4に示す右側壁部)には、前記掻き削りドラム31の周面と対向して掻き削り刃33の噛合交差が許容される掻き削り壁37が配置されている。
掻き削り壁37には、掻き削り刃33の周回移動が許容される縦長の掻き削り孔38が上下方向に平行して短冊状に複数本形成されている。該掻き削り孔38は、掻き削り刃33の周回移動が許容される幅及び長さに形成され、掻き削り刃33と対向する位置及び間隔に隔てて幅方向に配列されている。
【0027】
また、掻き削り刃33と掻き削り孔38とが噛合い交差される部分の隙間は、被焼却物Aが塊状以下の大きさに切断あるいは粉砕される間隔に設定されている。
また、掻き削り壁37と、該掻き削り壁37と対向する焼却室6の供給口6a上方の案内壁39との間には、塊状以下の大きさを有する被焼却物A及び液状の被焼却物Aを落下するための通路Xが形成されている。
【0028】
つまり、モータ36によって掻き削りドラム31を掻き削り方向(図4中の矢印aで示す方向)へ回転させることにより、ホッパ2に投入された塊状の被焼却物Aが、掻き削りドラム31の掻き削り刃33と、掻き削り壁37の掻き削り孔38との噛合交差によって、例えば粒状、粉状等の塊状以下の大きさに掻き削られる(図4参照)。
【0029】
また、掻き削りドラム31の掻き削り刃33…が塊状の被焼却物Aに対し順に押し付けられるとともに、該掻き削り刃33…のすくい面によって刃先側から根元側に向けて被焼却物Aが送り込まれるので、被焼却物Aを複数箇所に分けて順に掻き削ることができる。これにより、掻き削りドラム31上に被焼却物Aが残留することがなく、スムースに落下供給することができるとともに、掻き削る際に付与される抵抗が小さくなり、燃焼しやすい大きさに掻き削る作業が容易に行える。
【0030】
また、掻き削り刃33と掻き削り孔38との噛合交差によって掻き削られた被焼却物Aは、掻き削り壁37と案内壁39との間に形成された通路Xを通って落下される。さらに、掻き削りドラム31の掻き削り刃33…によって、被焼却物Aを掻き削り壁37の掻き削り孔38…に対して順に送り込むことにより、被焼却物Aを焼却室6内に定量供給することができる。
【0031】
なお、掻き削りドラム31の回転速度は、焼却処理される被焼却物Aの硬さや粘度、材質等に応じて変更できるようになっている。例えば硬い或いは粘度が高い被焼却物Aを処理する際には、掻き削りドラム31の回転速度を遅くすればよい。これにより、掻き削り壁37の掻き削り孔38…間の無孔部分に被焼却物Aが残留しにくく、掻き削り孔38を通ってスムースに落下供給することができる。
【0032】
前記送気装置4は、前記通路2eの放出口2cより上流側で、前記掻き削り装置3の掻き削りドラム31より下流側の該通路2eの外壁に連設され、大気中から吸気した空気Bが焼却室6内に向けて供給されるようになっている。なお、送気装置4は、ブロワなどの送風機で構成されている。
【0033】
また、前記放出口2cより上流側で、前記掻き削りドラム31より下流側の通路2eの内壁(図4に示す掻き削り壁37と反対側の左側壁部)には、送気装置4から供給される空気Bを焼却室6の供給口6aに向けて吐出するための吐出口2dが設けられている。
【0034】
その吐出口2dは、前記掻き削り装置3で掻き削られた被焼却物Aが落下される通路2eの内壁面(図4に示す左側内壁面)に沿って形成され、焼却室6の供給口6aに向けて空気Bが供給される方向に開口されている。なお、吐出口2dから吐出される空気Bの吐出量、吐出速度、吐出方向は、被焼却物Aの種類や供給量に応じて可変調節することができる。
【0035】
また、前記掻き削りドラム31より下流側の通路2eの内壁は、焼却室6の供給口6aに向けて供給される角度に傾斜されている。つまり、掻き削りドラム31の下方に放出される被焼却物Aに対し、吐出口2dから吐出される空気Bが均一に混合されるとともに、その空気Bの吹き出し力によって被焼却物Aと空気Bとの混合物が焼却室6の供給口6aに向けて移送される。
【0036】
また、前記掻き削り装置3で掻き削られた被焼却物Aが落下される通路2eの傾斜側内壁面には、吐出口2dから吐出される空気Bの層が形成されるので、掻き削りドラム31より下方の通路2eの内壁面と、掻き削りドラム31の下方に放出される被焼却物Aとの直接的な接触が回避され、接触抵抗が小さくなる。
【0037】
これにより、吐出口2dから吐出される空気Bの吹き出し力によって、掻き削りドラム31で掻き削られた被焼却物Aが空気Bとともに焼却室6の供給口6aに向けて供給される。また、液体状の被焼却物Aは、吐出口2dから吐出される空気Bの吹き出し力によって霧状に分散されるとともに、その霧状の被焼却物Aが空気Bと均一に混合されて焼却室6の供給口6aに向けて移送される。
【0038】
また、吐出口2dから吐出される空気Bは、焼却室6の供給口6a内に向けて積極的に吹き出されるので、焼却時に発生する焼却室6内の排圧によって、焼却室6からホッパ2に向けて被焼却物Aや焼却灰Aaが押し戻されることがない。これにより、ホッパ2の投入口2a側にシャッタ等の遮断手段を設ける必要がなくなり、構造及び構成を簡素化することができる。
【0039】
前記着火装置5は、図6にも示すように、前記通路2eの下流側端部に、該通路2eの放出口2c及び前記焼却室6の供給口6aと対向して該焼却室6内の被焼却物Aに着火するためのバーナ装置51が設けられており、焼却室6内の被焼却物Aに向けて火炎Fが噴射されるようになっている。なお、バーナ装置51は、特許第3616117号公報のバーナ装置で構成されている。
【0040】
バーナ装置51は、後端が閉止され前端が開口された外筒52と、該外筒52の内部に対し同心で装着され、前記外筒52と同様に後端が閉止され前端が開口された内筒53と、該内筒53の後端中心に装着された通電発熱体54と、外筒52を貫通して内筒53の内部に液体燃料C(以下燃料Cと記す)を供給する燃料供給管55と、外筒52を介して内筒53の内部に空気Bを供給する空気供給管56とを備えている。
【0041】
外筒52は、空気供給側である後端が閉止板52aによって閉止され、空気噴出側である前端が噴出方向に向けて開口されている。また、閉止板52aの中央部には、外筒52の内部と連通して空気供給管56が接続されている。また、外筒52と内筒53の対向周面間には、外筒52の後端から前端に向けて空気Bを噴出するための空気噴出口52bが形成されている。
【0042】
内筒53は、燃料供給側である後端が閉止板53aによって閉止され、火炎噴出側である前端が噴出方向に向けて開口されている。また、内筒53の内部には、後端から前端に向けて同心で突設された燃料分配筒57と、この燃料分配筒57内に閉止板53aから同心で突設された着火筒58とが内装されている。また、内筒53と燃料分配筒57との間には、燃料供給管55から供給される燃料Cの通過が許容される環状の燃料通過室53bが形成されている。
【0043】
燃料通過室53bの前端は閉止され、後端には空気Bを導入するための空気導入孔53cが設けられている。また、燃料分配筒57の燃料供給管55と対向した周面には、該燃料分配筒57の軸芯方向に対し1列で複数の燃料供給孔57aが穿設されている。また、燃料供給孔57aにはピン59がそれぞれ挿通され、一部のピン59の先端は、着火筒58に形成された燃料供給孔58a,58aに挿通されている。
【0044】
通電発熱体54の先端は、閉止板53aを貫通して着火筒58の後端側中心に挿入されている。また、着火筒58の先端には、着火炎排出孔58bが穿設されており、通電発熱体54によって着火された炎が着火筒58から排出されるようになっている。また、燃料分配筒57と着火筒58の対向周面間の環状隙間と、着火筒58の内部には、セラミック製の塊状を呈した多孔質体60が内装されている。
【0045】
また、燃料分配筒57と着火筒58の間に形成された環状隙間の後端と、着火筒58との後端には、空気Bを導入するための空気導入孔53d,53eがそれぞれ設けられている。
バーナ装置51の燃料供給管55には、可燃性の燃料Cを供給する燃料ポンプ55aが接続され、燃料ポンプ55aからの燃料Cが燃料供給管55を介して供給される。また、空気供給管56には、燃料Cを燃焼させるのに必要な空気Bを供給するための空気ポンプ56aが接続され、空気ポンプ56aからの空気Bが空気供給管56を介して供給される。
【0046】
このように構成されたバーナ装置51によれば、燃料ポンプ55aによって燃料供給管55を介して燃料通過室53bに供給された燃料Cは、燃料供給孔57aとピン59の間の環状隙間を通って着火筒58の外周面に滴下され、着火筒58と燃料分配筒57の間に内装された多孔質体60に吸着される。
【0047】
一部の燃料Cは、ピン59を伝って着火筒58内にまで侵入し、ここに内装されている多孔質体60に吸着される。つまり、燃料Cは、多数の多孔質体60に吸着されることによって、内筒53内に満遍なく行き渡ることになる。
【0048】
ついで、空気ポンプ56aによって空気供給管56を介して空気Bを外筒52内に供給すると、一部は、空気噴出口52bから外部へ放出されるとともに、残部が燃料通過室53bおよび着火筒58と燃料分配筒57との間の隙間に供給される。当該隙間内および着火筒58内は、多孔質体60から気化した燃料Cと空気Bとが混合した混合気が充満した状態になる。この状態で、通電発熱体54に通電することにより、当該通電発熱体54の発熱によって混合気が引火し、これによってバーナ装置51が着火する。
【0049】
そして、一旦バーナ装置51が着火すると、着火筒58と燃料分配筒57との間の隙間から放出された火炎Fおよび未燃焼の燃料Cの飛沫が空気噴出口52bから放出される空気Bによって包まれた状態になる。
これにより、燃料Cの完全燃焼でさらに大きな火炎Fが形成され、この火炎Fが、焼却室6の供給口6aから燃焼領域に向けて放出されることになるため、焼却室6内の被焼却物Aは、即座に着火されることになる。また、空気Bの供給量が多くなっても、多孔質体60の孔に吸着された燃料Cが吹き飛ばされることがなく、一旦着火した火炎Fが消えることはない。
【0050】
前記焼却室6は、図1に示すように、該燃焼室6内の底部中央に配置されたセラミックボール室61によって、被焼却物Aを燃焼させるための燃焼領域と、該燃焼領域で生成された焼却灰Aa及び排ガスGを排出するための熱分解領域とに区分けされている。
【0051】
前記セラミックボール室61は、側面から見てコ字状に形成され、燃焼領域側に向けて一方のみ開放されている。また、燃焼領域側が開放された収容空間62内には、多孔質のセラミックボール63…が多数詰め込まれている。
【0052】
つまり、被焼却物Aが燃焼する際に発生する火炎Fは、収容空間62内のセラミックボール62…を加熱して赤熱状態に変化させる際にこれに吸収されるので、高温の熱風のみが、セラミックボール室61の上部に形成された通路を通って熱分解領域へ送り込まれる。
【0053】
前記撹拌装置7は、図2、図5にも示すように、前記焼却室6内の燃焼領域に配置され、後述する撹拌軸71に突出された撹拌羽根72…によって該燃焼領域に供給された被焼却物Aが均一に撹拌されるようになっている。
【0054】
撹拌軸71は、焼却室6の燃焼領域に供給される被焼却物Aの供給方向と直交して回転自在に軸受されている。また、撹拌軸71の周面には、前記焼却室6内の燃焼領域に供給された被焼却物Aを撹拌するための撹拌羽根72が複数突設されている。
【0055】
また、撹拌羽根72は、撹拌軸71の軸芯方向に対し所定間隔に隔てて複数配列されるとともに、該ドラム32の軸芯を中心として円周方向に対し所定角度に偏心して配置されている。
また、撹拌羽根72の先端は、前記焼却室6内の燃焼領域に供給された被焼却物Aが掬い上げられる形状に形成されている。
【0056】
撹拌軸71の両端は焼却室6の両側部に突出され、該両側部に配置した一対の軸受部73,73で回転自在に軸受されている。また、撹拌軸71の一端は、焼却室6の一側部に配置された変速機能を備えた撹拌用のモータ74に直結されている。
【0057】
つまり、モータ74によって撹拌軸71を撹拌方向(図中の矢印で示す方向)へ回転させることにより、焼却室6内の燃焼領域に供給された被焼却物Aが、撹拌軸71の撹拌羽根72…によって燃焼しながら撹拌されるので、被焼却物Aの全体に対して空気Bが均一に供給される(図1参照)。これにより、被焼却物Aを燃焼させるのに十分な空気Bが得られ、被焼却物Aを焼却室6内で効率よく燃焼させることができる。なお、モータ36,74は、例えばギャドモータで構成することができる。
【0058】
前記灰集積室8は、前記焼却室6の下流側下部に連設され、該焼却室6内で焼却処理された被焼却物Aの焼却灰Aaが回収及び集積されるようになっている。
灰集積室8の上流側下部外壁には、焼却室6内の焼却灰Aaを回収するための回収口8aが開口されている。該回収口8aは、焼却室6の下流側下部外壁(図1に示す右側下部)に開口された排出口6bに連通接続されている。
【0059】
また、灰集積室8の上部中央には、焼却時に生成された排ガスGを室外へ排出するための排気筒8bが上方に向けて鉛直に連設されている。また、灰集積室8の後側下部には、該灰集積室8内に集積された焼却灰Aaを室外へ取り出すための灰取出し口8eが開口され、その灰取出し口8eの前面には蓋8fが開閉自在に取り付けられている。
【0060】
なお、排気筒8bの上端より高所に排ガスGを排出する際は、例えば排気筒8bの上端に、該排気筒8bの上端に被せられる大径に形成された逆ロート状の排気カバー8cと、排気筒8bより小径の延長筒8dとを連設してなる排気装置(図中に示す仮想線)を連設すればよい。
【0061】
前記排熱回収装置9は、前記排気筒8bの一側下部に連設され、灰集積室8内に回収される焼却灰Aaに対し噴霧水Waを吹き付けて冷却及び集積するとともに、焼却時に生成される排ガスGから排熱を回収するようになっている。
【0062】
排気筒8b内の下端側中央部には、焼却室6の上部に配置された貯水タンク92から供給される水Wを霧状に噴射するための噴射ノズル91が一つ又は複数設けられている。その噴射ノズル91は、灰集積室8内に向けて霧状の噴霧水Waが噴射される角度に垂設されている。
【0063】
貯水タンク92の後側下部には、供給管93の一端がバルブ94を介して接続され、供給管93の他端は前記噴射ノズル91に接続されている。また、貯水タンク92の上部中央に設けられた給水口92a上面には、蓋92bが開閉自在に取り付けられている。
噴射ノズル91には、貯水タンク92内の水Wを霧状に噴射するのに必要な気圧力に加圧された空気Bを供給するための空気ポンプ95が供給管96及びバルブ97を介して接続されている。
【0064】
つまり、空気ポンプ95を駆動すると、ベンチュリー効果によって貯水タンク92内の水Wが吸引され噴射ノズル91から霧状に噴射される。灰集積室8内に回収される焼却灰Aaに対し、噴射ノズル91から噴射される霧状の噴霧水Waを略均一に吹き付けて冷却及び温度を低下させるとともに、水滴の付着により降下させて灰集積室8内の底部に集積する。また、灰集積室8内に回収される焼却時に生成された排ガスGから排熱を回収して温度を低下させるとともに、その排熱が回収された排ガスGを、排気筒8b或いは延長筒8dを介して大気中へ排気する。
【0065】
これにより、焼却時に生成される例えば煤煙、異臭、有毒物質等の物質及び高温の排熱が大気中にほとんど放出されず、クリーンな環境を保つことができる。
なお、噴射ノズル91は、灰集積室8内の天井部に設けてもよい。また、貯水タンク92を焼却室6の側部に配置し、図示しないポンプにより貯水タンク92内の水Wを噴射ノズル91に供給してもよい。
【0066】
次に、前記焼却装置1による被焼却物Aの焼却処理方法を説明する。
先ず、図1、図4に示すように、ホッパ2に投入された塊状の被焼却物Aを、掻き削り装置3の掻き削りドラム31の掻き削り刃33…と掻き削り壁37の掻き削り孔38…との噛合交差によって、粒状や粉状等の塊状以下の大きさに掻き削るとともに、送気装置4から供給される空気Bが均一に混合されやすく、且つ、燃焼しやすい大きさに掻き削る。
【0067】
つまり、掻き削りドラム31の掻き削り刃33…を塊状の被焼却物Aに対し順に押し付けるとともに、掻き削り壁37の掻き削り孔38…との噛合交差によって塊状の被焼却物Aを複数箇所に分けて順に掻き削る。
【0068】
前記掻き削り装置3によって塊状以下の大きさに掻き削られた小さな被焼却物A及び液状の被焼却物Aは、通路2eの内壁と掻き削りドラム31の外周との間を通って下方に落下される。
また、残りの被焼却物Aは、掻き削りドラム31の掻き削り刃33…によって掻き削り壁37の掻き削り孔38…に送り込まれるとともに、掻き削り壁37と案内壁39との間に形成された通路Xを通って下方に落下される。
【0069】
次に、送気装置4から供給される空気Bを通路2eの吐出口2dから連続して吐出するとともに、塊状以下の大きさに掻き削られた被焼却物Aに対し空気Bを均一に混合するとともに、該吐出口2dから吐出される空気Bの吹き出し力によって、被焼却物Aと空気Bとの混合物を焼却室6の供給口6aから燃焼領域に向けて供給する。また、液体状の被焼却物Aは、吐出口2dから吐出される空気Bの吹き出し力によって霧状に分散されるとともに、その霧状の被焼却物Aが空気Bと均一に混合されて焼却室6の供給口6aから燃焼領域に向けて供給される。
【0070】
次に、焼却室6内の燃焼領域に被焼却物Aが供給された際に、着火装置5のバーナ装置51を着火して、該バーナ装置51から噴射される火炎Fで被焼却物Aに着火する。着火後は、バーナ装置51を消火しても、一旦着火した被焼却物Aは、送気装置4から供給される空気Bによって燃焼が継続されることになる。
【0071】
また、塊状の被焼却物Aを掻き削りながら、その掻き削られた被焼却物Aに送空気Bを混合して焼却室6内に供給する。同様に、液体状の被焼却物Aを霧状に分散しながら、その霧状の被焼却物Aに空気Bを混合して焼却室6内に供給するので、被焼却物Aの全体に空気Bが均一に取り込まれる。
【0072】
つまり、着火装置5で被焼却物Aに着火する際に、被焼却物Aの全体に火が通りやすく、全体を均一に燃焼させることができる。また、被焼却物Aを燃焼させるのに必要な量の空気Bが安定して得られるので、被焼却物Aを短い時間で効率よく完全燃焼させることができる。
【0073】
次に、着火後において、撹拌装置7の撹拌羽根72…によって被焼却物Aを撹拌しながら燃焼させる。つまり、被焼却物Aの全体に対して空気Bが均一に供給され、被焼却物Aを燃焼させるのに十分な空気Bが得られるので、被焼却物Aを焼却室6内で効率よく完全燃焼させることができる。また、被焼却物Aは、例えば1000度〜1800度の範囲に含まれる温度で焼却処理される。
【0074】
また、被焼却物Aが燃焼する際に発生する火炎Fは、セラミックボール室61内のセラミックボール62…を加熱して赤熱状態に変化させる際に吸収されるので、排ガスGを含む高温の熱風のみがセラミックボール室61の上部に形成された通路を通って熱分解領域へ送り込まれる。これにより、熱分解領域に送り込まれた焼却灰Aaが燃焼せずに、高温の熱風によって熱分解される。
【0075】
次に、排熱回収装置9の噴射ノズル91から噴射される霧状の噴霧水Waを、灰集積室8内に回収される焼却灰Aaに対し略均一に吹き付けて温度を低下させるとともに、水滴の付着により降下させ、灰集積室8内の底部に集積させる。
【0076】
また、灰集積室8内の排ガスGから排熱を回収して温度を低下させるとともに、その排熱が回収された排ガスGは、排気筒8b或いは延長筒8dを介して大気中へ排気する。なお、灰集積室8内の底部に集積された焼却灰Aaは、灰取出し口8eから室外へ取り出して回収或いは廃棄する。
【0077】
以上のように、掻き削り装置3によって塊状以下の大きさに掻き削られた被焼却物Aに空気Bを均一に混合するとともに、該被焼却物Aと空気Bとの混合物を焼却室6内の燃焼領域に向けて供給する。これにより、被焼却物Aを燃焼させるのに必要な量の空気Bが安定して得られ、被焼却物Aを短い時間で効率よく完全燃焼させることができる。また、燃え始め着火に要する時間が短くなるので、焼却開始時において、例えば煤煙、異臭、有毒物質等が生成されず、大気中に放出されることがないので、クリーンな環境を保つことができる。
【0078】
図7は、掻き削り装置3の他の例を示す拡大側面図である。
本例の掻き削り装置3は、ドラム32の周面に対し一対の掻き削り刃33a,33bが円周方向に複数突設されている。
【0079】
また、掻き削り刃33aは、ドラム32の周面に対し斜め外方に向けて時計回り方向(図7中の矢印aで示す方向)に向けて複数突設されている。また、掻き削り刃33bは、ドラム32の周面に対し斜め外方に向けて反時計回り方向(図7中の矢印bで示す方向)に複数突設されている。
【0080】
例えば塊状以下の大きさを有する被焼却物Aを焼却処理する際は、掻き削りドラム31を、図7中の矢印aで示す方向へ回転させて、掻き削り刃33aによって送気装置4から供給される空気Bが均一に混合される状態に拡散させる。
【0081】
また、塊状の被焼却物Aを処理する際には、前記実施例と同様に、掻き削りドラム31を、図7中の矢印bで示す方向へ回転させて、掻き削り刃33bと掻き削り壁37の掻き削り孔38との噛合交差によって塊状以下の大きさに掻き削り処理する。これにより、被焼却物Aを燃焼させるのに必要な量の空気Bが安定して得られ、前記実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0082】
図8、図9は、掻き削り装置3のその他の例を示す拡大側面図である。
本例の掻き削り装置3は、ホッパ2の投入口2aより下流側で、放出口2cより上流側に形成された円筒状を有する掻き削り室24内に配置されている。
【0083】
掻き削り室24の底部24aには、塊状以下の大きさに掻き削られた被焼却物A及び液状の被焼却物Aを放出するための放出口24bが開口されている。また、放出口24bは、掻き削り室24の底部24aのほぼ半分を平面から見て半円形状に切り欠いて形成され、その放出口24bの下方には、通路2eが連通して接続されている。
【0084】
また、放出口24bより上方の内壁には、該放出口24bのほぼ全体が覆われる大きさに形成した平面から見て半円形状の掻き削り板24cが配置されている。この底部24aと掻き削り板24cとの間は、後述する掻き削り羽根26の厚みより幅広で水平旋回が許容される上下間隔に隔てられている。
【0085】
また、掻き削り室24の中心には、該室内に収まる長さに形成された回転軸25が垂直に軸受されている。この回転軸25の周面には、底部24a上に載置された被焼却物Aを掻き削るための下段側の掻き削り羽根26と、掻き削り板24c上に載置された被焼却物Aを掻き削るための上段側の掻き削り羽根27とが該回転軸25を中心として対称位置に突設されている。
【0086】
また、掻き削り羽根26,27は、前記掻き削り室24内の半径とほぼ同一となる長さに形成されるとともに、掻き削り板24cの板厚より幅広となる上下間隔に隔てて上下段違いに配置されている。
【0087】
また、掻き削り羽根26は、底部24aの上面と接する高さに設けられ、掻き削り羽根27は、底部24aの上面と接する高さに設けられおり、回転軸25を中心とする掻き削り羽根26,27の水平旋回によって底部24a及び掻き削り板24cの上面に載置された被焼却物Aが掻き落とされる。
【0088】
なお、底部24aと掻き削り羽根26の対向面間と、掻き削り板24cと掻き削り羽根27の対向面間と、掻き削り室24の内壁と掻き削り羽根26,27の先端との対向面間を、塊状の被焼却物Aが粒状や粉状等の塊状以下の大きさに掻き削られる掻き削り間隔に設定してもよい。また、前記掻き削り間隔は、2mm〜3mmの範囲に含まれる間隔に設定することができる。
【0089】
また、回転軸25の下端は、ホッパ2の底部24a下面に固定された掻き削り用のモータ28に直結されている。つまり、モータ28によって回転軸25を掻き削り方向(図9中の矢印で示す方向)へ回転することにより、掻き削り板24cと掻き削り羽根26,27とが互いに噛合交差される。
【0090】
これにより、掻き削り室24の底部24a上に載置された塊状の被焼却物Aは、掻き削り板24cと掻き削り羽根26,27とによって塊状以下の大きさに掻き削られるとともに、掻き削り羽根26の水平旋回によって掻き削り板24cの下側に送り込まれ、放出口24bから通路2eに向けて放出される(図9に示すb参照)。
【0091】
一方、掻き削り板24c上に載置された被焼却物Aは、該掻き削り板24cと掻き削り羽根27とによって塊状以下の大きさに掻き削られるとともに、掻き削り羽根27の水平旋回によって上段側の掻き削り板24cから下段側の底部24a上に掻き落とされる(図9に示すa参照)。
【0092】
また、液状の被焼却物Aは、掻き削り室24の底部24a及び掻き削り板24cに一旦載置されるので、通路2eに向けて直接放出されることはない。つまり、掻き削り板24c上に載置された液状の被焼却物Aは、掻き削り羽根27の水平旋回によって上段側の掻き削り板24cから下段側の底部24a上へ掻き落とされる(図9に示すa参照)。一方、底部24a上に載置された液状の被焼却物Aは、掻き削り羽根26の水平旋回によって掻き削り板24cの下側に送り込まれ、放出口24bから通路2eに向けて放出される(図9に示すb参照)。
【0093】
これにより、塊状以下の大きさに掻き削られた被焼却物A及び液状の被焼却物Aが焼却室6内の燃焼領域に向けて定量供給されることになり、前記実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0094】
また、ホッパ2の投入口2aより下流側で、前記掻き削り装置3より上流側のホッパ2の内部には、投入口2aから投入される被焼却物Aを一時ストックするためのシャッタ29が枢着部29aを介して上下開閉自在に設けられている。また、シャッタ29の枢着部29aには、該シャッタ29を閉位置(図8に示す実線位置)と開位置(図8に示す仮想線位置)とに上下開閉するための開閉レバー29bが連結されている。
【0095】
また、シャッタ29の閉位置と対応するホッパ2の内壁には、シャッタ29を閉位置に回動規制するための段部30が形成されている。また、シャッタ29の周縁部が押し当てられる段部30の下面側には、耐熱性を有するシール部材31aが装着されている。つまり、シャッタ29を閉位置に回動すると、シャッタ29の周縁部が段部30のシール部材31aに押し当てられ、気密状態が保持される。
【0096】
前記掻き削り室24に投入された全被焼却物Aの掻き削り処理が完了し、全被焼却物Aが焼却室6内の燃焼領域に供給された際に、ホッパ2の投入口2aを蓋2bで閉塞したまま、シャッタ29を開位置に回動して、該シャッタ29上に一時ストックされた被焼却物Aを掻き削り室24に落下供給する。
【0097】
次に、シャッタ29を閉位置に回動し、蓋2bを開位置に回動して、ホッパ2の投入口2aを開放した後、被焼却物Aをホッパ2内に投入するので、焼却時に発生する排熱、排圧、煤煙等がホッパ2内に逆流するか、投入口2aから大気中へ放出されるのを防止することができる。
【0098】
また、通路2eの吐出口2dには、図6のバーナ装置51を備えた送気装置40が接続されている。つまり、吐出口2dから吐出される空気Bの吹き出し力によって被焼却物Aを焼却室6内の燃焼領域に向けて移送する。且つ、焼却開始時において、吐出口2dから噴射される火炎Fにより焼却室6内の燃焼領域に供給される被焼却物Aに着火するので、前記実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0099】
なお、図1に示す通路2eの下流側端部にバーナ装置51を設けず、通路2eの吐出口2dにバーナ装置51を備えた送気装置40を接続してもよい。また、前記シャッタ29を、図1に示すホッパ2に設けてもよい。また、掻き削り羽根26,27の枚数を、例えば3枚、4枚、5枚等の複数枚に変更してもよい。
【0100】
図10は、前記掻き削りドラム31より下流側で前記吐出口2dより上流側の通路2e内部に、固体状の被焼却物Aを定量供給するための第1ホッパ21と、液体状或いは粘性を有する被焼却物Aを定量供給するための第2ホッパ22とのいずれか一方を装填自在に設けた焼却装置1のその他の例を示す通路2eの拡大側面図である。
【0101】
つまり、可燃性廃棄物、生ゴミ、タイヤ、合成樹脂成形品等の産業廃棄物、使用済み注射器、ガーゼ等の医療廃棄物等の固体状の被焼却物Aを焼却処理する際には、通路2eの側壁に取り付けられた蓋2fを開放して、第1ホッパ21を通路2e内部に装填する。これにより、掻き削り装置3で掻き削られた固体状の被焼却物Aを第1ホッパ21内に一時貯留して焼却室6内に定量供給することができる。
【0102】
また、例えば汚泥、汚水、糞尿、廃油、廃液、塗料等の液体状或いは粘性を有する被焼却物Aを焼却処理する際には、前記蓋2fを開放して、第1ホッパ21を通路2eから取り出し、第2ホッパ22を通路2e内部に装填する。これにより、液体状或いは粘性を有する被焼却物Aを第2ホッパ22内に一時貯留して焼却室6内に定量供給することができる。
【0103】
なお、第2ホッパ22の下端には、焼却室6内に供給される被焼却物Aの供給量を調整するためのバルブ23が取り付けられている。また、前記掻き削りドラム31より下流側で前記吐出口2dより上流側の通路2e内部、或いは、第1ホッパ21及び第2ホッパ22の下端に、例えばシャッタ、開閉板等の開閉手段を設けてもよく、被焼却物Aの供給量を調整することができる。
【0104】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の掻き削り手段は、掻き削り装置3に対応し、
以下同様に、
空気供給手段は、送気装置4,40に対応し、
着火手段は、着火装置5に対応し、
撹拌手段は、撹拌装置7に対応し、
火炎吸収手段は、セラミックボール室61に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0105】
本発明の実施形態においては、バーナ装置51の液体燃料Cとして軽油あるいは灯油が採用されているが、例えば軽油や灯油に代えて使用済みのいわゆる廃油を使用することも可能である。
また、前記掻き削り羽根26,27及び掻き削り刃33の長さ、幅、厚み、形状と、前記掻き削り間隔とを、被焼却物Aの種類や硬さ、粘度、材質等に応じて変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の焼却装置の内部構造及び焼却方法を示す縦断側面図。
【図2】通路内に設けられた掻き削り装置の構造を示すK−K矢視断面図。
【図3】掻き削り装置の構造を示す横断平面図。
【図4】掻き削り装置による被焼却物の掻き削り動作を示す拡大側面図。
【図5】焼却室内に設けられた撹拌装置の構造を示すL−L矢視断面図。
【図6】焼却室内の被焼却物に着火する着火装置の構造を示す縦断側面図。
【図7】掻き削り装置の他の例を示す拡大側面図。
【図8】掻き削り装置のその他の例を示す拡大側面図。
【図9】図8の掻き削り装置の構造を示すM−M矢視断面図。
【図10】焼却装置のその他の例を示す通路の拡大側面図。
【符号の説明】
【0107】
A…被焼却物
Aa…焼却灰
B…空気
C…液体燃料
F…火炎
G…排ガス
W…水
Wa…噴霧水
1…焼却装置
2…ホッパ
2e…通路
24…掻き削り室
24a…底部
24b…放出口
24c…掻き削り板
25…回転軸
26,27…掻き削り羽根
21…第1ホッパ
22…第2ホッパ
3…掻き削り装置
31…掻き削りドラム
33,33a,33b…掻き削り刃
37…掻き削り壁
38…掻き削り孔
39…案内壁
4,40…送気装置
5…着火装置
51…バーナ装置
6…焼却室
61…セラミックボール室
63…セラミックボール
7…撹拌装置
72…撹拌羽根
8…灰集積室
9…排熱回収装置
91…噴射ノズル
92…貯水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却室内に投入された被焼却物に着火手段で着火して、該被焼却物を焼却室内で焼却処理する焼却装置であって、
前記被焼却物が投入される投入部と、該被焼却物が焼却処理される焼却室とを接続する通路に、
前記投入部に投入された塊状の被焼却物を該塊状以下の大きさに掻き削るための掻き削り手段と、
前記掻き削り手段で掻き削られた被焼却物に対し空気を混合するとともに、該被焼却物が前記焼却室内に向けて移送される方向に空気を供給するための空気供給手段とを備えた
焼却装置。
【請求項2】
前記焼却室より上流側で前記掻き削り手段より下流側の前記通路の内壁に、前記空気供給手段から供給される空気を吐出するための吐出口を設け、
前記吐出口を、前記通路の内壁面に沿って前記焼却室内に向けて空気が吐出される方向に開口した
請求項1に記載の焼却装置。
【請求項3】
前記掻き削り手段を、
前記被焼却物が供給される方向と直交して前記通路内に対し回転自在に軸受された掻き削りドラムと、該掻き削りドラムの周面と対向して前記通路内に配置された掻き削り壁とで構成するとともに、
前記掻き削りドラムを、該掻き削りドラムの周面に突設された複数の掻き削り刃と、前記掻き削り壁に形成された複数の掻き削り孔とが互いに噛合交差される方向に対し回転自在に設けた
請求項1又は2に記載の焼却装置。
【請求項4】
前記掻き削り刃を、前記回転体の軸芯方向に対し所定間隔に隔てて複数配列するとともに、該回転体の軸芯を中心として円周方向に対し所定角度に偏心して配置した
請求項1〜3のいずれか一つに記載の焼却装置。
【請求項5】
前記掻き削り刃の刃先側から根元側に至るすくい面を、該刃先側から根元側に向けて前記被焼却物が送り込まれる形状に形成した
請求項1〜4のいずれか一つに記載の焼却装置。
【請求項6】
前記掻き削り手段を、
前記通路内に形成された円筒状を有する掻き削り室の中心に対し垂直に軸受された回転軸と、
前記回転軸の周面に対し上下段違いに突設された複数の掻き削り羽根と、
前記掻き削り室の底部に開口された前記被焼却物を放出する放出口と、
前記放出口の上方に設けられ該放出口が覆われる大きさに形成された掻き削り板とで構成するとともに、
前記回転軸を、前記掻き削り羽根と前記掻き削り板とが互いに噛合交差される方向に対し回転自在に設け、
前記底部と掻き削り板との間を、前記掻き削り羽根の水平旋回が許容される上下間隔に隔てた
請求項1又は2に記載の焼却装置。
【請求項7】
前記焼却室内の燃焼領域に、該燃焼領域に供給された被焼却物を撹拌する撹拌手段を設けた
請求項1〜6のいずれか一つに記載の焼却装置。
【請求項8】
前記焼却室内に、前記被焼却物が燃焼する際に発生する火炎によって赤熱状態に加熱される火炎吸収手段を設けた
請求項1〜7のいずれか一つに記載の焼却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−144983(P2010−144983A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321827(P2008−321827)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(393007101)
【出願人】(508372869)株式会社アパレルマシンインターナショナル (1)
【出願人】(508371884)
【出願人】(000227700)日邦ミシン株式会社 (16)
【Fターム(参考)】