説明

焼成用衣ミックス及びこれを使用した焼成食品

【課題】カリッと感があり焼成後時間が経ってもカリッと感を維持できる焼成食品を得ることができる焼成用衣ミックスを提供すること。
【解決手段】焼成用衣ミックス中、デュラムセモリナを30質量%以上含み、サイリウムシードガム、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、タマリンドガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上からなる補助剤を0.1質量%以上5質量%以下含むことを特徴とする焼成用衣ミックスである。また、前記焼成用衣ミックスを使用した焼成食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成用衣ミックス及びこれを使用した焼成食品に関する。
【背景技術】
【0002】
フライ用衣ミックスとして、粒度が32メッシュスルー80メッシュオーバーの強力系硬質小麦粉砕物を5重量%以上含有するフライ用衣ミックス、及び前記強力系硬質小麦粉砕物がデュラム小麦のセモリナであるフライ用衣ミックスが知られている(例えば特許文献1参照)。
一方、網焼きやフライパンなどで焼成する場合は、衣として片栗粉やコーンスターチなどが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−88957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フライの場合は衣が強く加熱されるのでカリッとした食感を得やすいが、フライパンに少量の油をしくなどしても、焼成の場合は加熱がフライに比べ緩やかになり且つ素材に水分が多く残るため、フライした唐揚げのような衣のカリッと感が出し難かった。
また焼成直後はカリッとしていても時間が経つと衣がしんなりしやすいという問題があった。
従って、本発明の目的は、カリッと感があり焼成後時間が経ってもカリッと感を維持できる焼成食品を得ることができる焼成用衣ミックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、デュラムセモリナ及び補助剤を特定量含む焼成用衣ミックスを使用することによりカリッと感があり焼成後時間が経ってもカリッと感を維持できる焼成食品を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、焼成用衣ミックス中、デュラムセモリナを30質量%以上含み、サイリウムシードガム、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、タマリンドガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上からなる補助剤を0.1質量%以上5質量%以下含むことを特徴とする焼成用衣ミックス及びこれを使用した焼成食品である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の焼成用衣ミックスを使用することによりカリッと感があり焼成後時間が経ってもカリッと感が残る焼成食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において焼成食品とは、焼き網や串などを使用した直接加熱、フライパンなどの金属製熱媒体を使用しての加熱、オーブンなど輻射熱を利用しての加熱又は過熱蒸気による加熱により調理する食品をいい、フライ食品のように油を熱媒体として加熱する食品は本発明の焼成食品に含まれない。
焼成する素材は従来焼成されている素材であれば特に限定されず鶏肉、豚、羊、牛などの畜肉、イカ、貝、えび、魚などの海産物、かぼちゃなどの野菜が使用できる。
【0008】
本発明で使用するデュラムセモリナはデュラム小麦を原料としたセモリナであり、スパゲティの原料としてよく知られている。
デュラムセモリナであれば、灰分含有量や蛋白含有量は特に限定されず使用できる。
デュラムセモリナの使用量は、焼成用衣ミックス中、30質量%以上である。
デュラムセモリナの使用量が30質量%未満では、衣がしんなりしやすくカリットした食感が得られないので好ましくない。
【0009】
本発明において使用できる補助剤は、サイリウムシードガム、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、タマリンドガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上からなる。
補助剤の使用量は、焼成用衣ミックス中、0.1質量%以上5質量%以下である。
これらの補助剤は単独ではカリット感を与えることはないがデュラムセモリナと併用することによりデュラムセモリナを単独で使用した場合よりカリットした食感が得られる。
補助剤の使用量が0.1質量%未満では、カリットした食感を十分得ることができず、素材からの水分の影響で衣がしんなりしやすくなり好ましくない。
また、補助剤の使用量が5質量%を超えると、カリットした食感ではなく硬い食感になり過ぎ好ましくない。
補助剤はある程度の保水力があることが要件であるがα化澱粉やパン粉などは吸水はするが保水力が弱いので補助剤として使用できない。
焼成時には素材から液分が出て垂れやすいが、これを抑制する効果もある。
【0010】
本発明の焼成用ミックスは、素材との結着性がよく、従来の焼成食品では、塩や香辛料の付着が悪いため、これらを余分に使用しなければならず効率が悪かったが、本発明の焼成用ミックスではこのような無駄がない。
また、本発明の焼成用ミックスは、フライパンなどを使用した調理時に素材と加熱媒体とが焦げ付くことを防ぐ効果もある。
【0011】
本発明の焼成用ミックスは、デュラムセモリと補助剤が均一に混じっていればよくその製造方法は特に限定されない。
本発明の焼成用ミックスには、必要に応じて、小麦粉などの穀粉、コーンスターチなどの澱粉、食塩、胡椒などの香辛料、アミノ酸などの調味料、ベーキングパウダーなどの膨張剤、砂糖などの糖類、乳化剤、色素などを使用することができる。
本発明の焼成用ミックスは、焼成する前に素材にまぶしてよくなじませた後は従来の焼成方法と同じく焼成すればよく特別な焼成方法は必要ない。
【実施例】
【0012】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1〜4、比較例1]フライパン調理 デュラムセモリナの配合量
食塩7質量部、粉末醤油8質量部、胡椒2質量部、パプリカ色素1質量部、ガーリックパウダー1質量部、及び表2に示す焼成用衣原料をよく混合し焼成用衣ミックスを得た。
鶏肉を25g程度の大きさにカットし、前記焼成用衣ミックスを対肉10%質量部加え、ビニール袋の中で合わせ、鶏肉の表面に衣ミックスが均一に馴染むように混ぜ合わせた後、5分置き素材と衣ミックスを馴染ませた。
フライパンに小さじ2杯程度の油をひいて前記鶏肉を中火で約6分(片面3分ずつ)加熱した。
得られた焼成済み鶏肉の焼成直後及び25℃で5時間保存後の食感及び食味の評価を表1に示す基準で10名のパネラーにより行った。
結果を表2に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【0015】
デュラムセモリナの配合量が30質量%未満では、カリッとした食感が得られなかった。
【0016】
[実施例5〜9、比較例2〜3]フライパン調理 補助剤の配合量
実施例1において、表2に示す焼成用衣原料を表3に示す質量部に変更した以外は実施例1と同様にして評価を行った。
結果を表3に示す。
【0017】
【表3】

【0018】
サイリウムシードガムの配合量が0.1質量%未満では、カリッとした食感が得られなかった。
また、サイリウムシードガムの配合量が5質量%を超えると硬い食感の衣になった。
【0019】
[実施例10〜20、比較例4〜5]フライパン調理 補助剤の種類
実施例3において、サイリウムシードガムを表4に示す補助剤に変更した以外は実施例3と同様にして評価を行った。
結果を表4に示す。
【0020】
【表4】

【0021】
α化澱粉や微粉パン粉など一旦吸水しても保水力が弱いもの、経時とともに離水するものは効果が弱かった。
【0022】
[実施例21]網焼き
鶏肉を25gほどにカットし、衣ミックス(実施例2の配合)を対肉10%質量部加え、ビニール袋の中でまぶし約5分置き、鶏肉と衣ミックスを馴染ませた。
その後、衣ミックスをまぶした鶏肉を焼き網の上にのせ、ガスコンロの中火で約10分加熱し網焼きの鶏肉を得た。
実施例1と同様に評価を行ったところ、焼成直後の食感は4.9、食味はA、5時間後の食感は4.6、食味はBであった。
【0023】
[実施例22]串焼き
鶏肉を25gほどにカットし、衣ミックス(実施例2の配合)を対肉10%質量部加え、ビニール袋の中でまぶし約5分置き、鶏肉と衣ミックスを馴染ませた。
その後、衣ミックスをまぶした鶏肉を3つずつ串に刺し、ガスの火で約12分加熱し串焼きの鶏肉を得た。
実施例1と同様に評価を行ったところ、焼成直後の食感は4.9、食味はA、5時間後の食感は4.4、食味はBであった。
【0024】
[実施例23]オーブントースター
鶏肉を25gほどにカットし、衣ミックス(実施例2の配合)を対肉10%質量部加え、ビニール袋の中でまぶし約5分置き、鶏肉と衣ミックスを馴染ませた。
その後、トレーに薄くサラダ油を塗り、家庭用オーブントースターにトレーを入れ、その上に衣ミックスをまぶした鶏肉を置き、1,000Wで約8分加熱した。
実施例1と同様に評価を行ったところ、焼成直後の食感は4.2、食味はA、5時間後の食感は4.0、食味はBであった。
【0025】
[実施例24]豚串
豚ばら肉串(約30g)に衣ミックス(実施例2の配合)を対肉約10%質量部まぶし、約5分置いた後、180℃に設定したオーブンに入れ、約16分加熱し焼成済み豚串を得た。
肉からにじみ出た液体が垂れることなく、味の付いたカリッとした食感であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成用衣ミックス中、デュラムセモリナを30質量%以上含み、サイリウムシードガム、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、タマリンドガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上からなる補助剤を0.1質量%以上5質量%以下含むことを特徴とする焼成用衣ミックス。
【請求項2】
請求項1に記載の焼成用衣ミックスを使用した焼成食品。


【公開番号】特開2011−30520(P2011−30520A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181232(P2009−181232)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】