説明

焼結体板および加熱用調理具

【課題】コージェライト焼結体の耐熱衝撃性を向上させること。
【解決手段】焼結体板1は、コージェライトを主成分として含み、1.0wt%以上5.0wt%以下のTiO2をさらに含む。このような焼結体板1は、コージェライト粉末とTiO2粉末との混合粉を1300℃以上1400℃以下で焼結して得られたものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コージェライトを主成分とする焼結体板および加熱用調理具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コージェライトは、低熱膨張率および高強度のセラミックスとして知られている。また、コージェライトは難焼結体としても知られ、緻密なコージェライト焼結体を得ることが困難であった。そのため、多孔体をコージェライトで構成することがあり、たとえばコージェライトからなるフィルターが知られている(たとえば特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、コージェライトからなる多孔体では、コージェライトが持つ高強度の特性を生かすことが難しい。これに対して、コージェライトに添加物を含有させると、緻密なコージェライト焼結体を得ることができる。よって、コージェライトに添加物を含有させることにより、コージェライトが持つ高強度の特性を十分に生かす試みも行われている(たとえば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−156343号公報
【特許文献2】特開2000−169216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、緻密なコージェライト焼結体の作製が研究されている。また、コージェライトの更なる高強度化も研究されている。しかし、従来のコージェライト焼結体では耐熱衝撃性に優れないことがある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、コージェライトを主成分とし且つ十分な耐熱衝撃性を兼ね備えた焼結体板および加熱用調理具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る焼結体板は、コージェライトを主成分として含み、1.0wt%以上5.0wt%以下のTiO2をさらに含む。
【0008】
本発明に係る焼結体板は、コージェライト粉末とTiO2粉末との混合粉を1300℃以上1400℃以下で焼結して得られることが好ましい。
【0009】
本発明に係る焼結体板には、直径が10mm以下であり、厚み方向に貫通する穴が形成されていることが好ましい。
【0010】
穴は、焼結体板側面から10mm以上離れた位置に形成されていることが好ましい。
穴が2つ以上形成されているとき、隣り合う穴の間隔は50mm以上であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る加熱用調理具は、本発明に係る焼結体板を含む。
本発明に係る加熱用調理具は、一辺の長さが600mm以下であり他辺の長さが1000mm以下である矩形の平面形状を有し、且つ10mm以下の厚みを有する電磁誘電加熱クッキングヒーター用トッププレートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る焼結体板および加熱用調理具では、耐熱衝撃性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る焼結体板を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る焼結体板を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る焼結体板の断面図である。
【図4】本発明のまた別の実施形態に係る焼結体板の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る加熱用調理具を模式的に示す平面図である。
【図6】(a)は図5に示すVIA−VIA線における断面図であり、(b)は図5に示すVIB−VIB線における断面図である。
【図7】焼結体板におけるTiO2の含有量と焼結体板の曲げ強度値との実験結果を示すグラフである。
【図8】焼結体板の焼結温度と焼結体板の曲げ強度値との実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る焼結体板および加熱用調理具を説明する。図1は、本発明に係る焼結体板1を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明に係る焼結体板11を模式的に示す斜視図であり、図3は焼結体板11の断面図である。図4は、本発明に係る焼結体板21の断面図である。図5は、本発明に係る加熱用調理具31を模式的に示す平面図であり、図6(a)は図5に示すVIA−VIA線における断面図であり、図6(b)は図5に示すVIB−VIB線における断面図である。なお、本発明は、以下に示す事項に限定されない。
【0015】
<焼結体板1>
本発明に係る焼結体板1は、コージェライトを主成分として含んでおり、さらに1.0wt%以上5.0wt%以下のTiO2を含んでいる。
【0016】
コージェライトは、2MgO・2Al23・5SiO2で表されるセラミックスであり、熱膨張率が低く且つ強度に優れるセラミックスである。よって、本発明に係る焼結体板1がコージェライトを主成分として含んでいれば、本発明に係る焼結体板1の熱膨張率を低く抑えることができ、また本発明に係る焼結体板1の強度を確保することができる。
【0017】
本発明に係る焼結体板1がコージェライトを主成分として含むとは、焼結体板におけるコージェライトの含有量が95wt%以上99wt%以下であることを意味する。焼結体板におけるコージェライトの含有量が95wt%未満であれば、焼結体板の熱膨張率を低く抑えることが難しくなり、また、焼結体板の強度を確保することが難しくなる。一方、焼結体板におけるコージェライトの含有量が99wt%を超えると、焼結体板におけるTiO2の含有量の低下を招くため、焼結体板の緻密性の低下を招く恐れがある。
【0018】
TiO2の含有量は、本発明に係る焼結体板1に含まれるTiO2量であり、上述のように1.0wt%以上5.0wt%以下であり、好ましくは2.0wt%以上4.0wt%以下である。TiO2の含有量が1.0wt%未満であれば、TiO2が焼結助剤として作用し難くなり、よって、緻密な焼結体板が得られないことがある。一方、TiO2の含有量が5.0wt%を超えると、コージェライトの含有量が少なくなるので、焼結体板の熱膨張率を低く抑えることが難しくなり、また焼結体板の強度を確保することが難しくなる。
【0019】
本発明に係る焼結体板1は、図1に示すように平面視矩形に形成されていても良いし、矩形以外の平面形状を有していても良い。矩形以外の平面形状としては、たとえば、矩形以外の多角形、円形、または楕円形などが挙げられる。また、矩形には、4つの角部の頂角がすべて90度である場合だけでなく、少なくとも1つの角部に面取り加工が施されている場合(たとえば図2に示す場合)も含まれる。
【0020】
本発明に係る焼結体板1は、Mg、AlおよびSiのそれぞれを含む化合物たとえば酸化物を焼結させてコージェライト粉末を作製し、得られたコージェライト粉末にTiO2粉末を添加して混合粉を得、得られた混合粉を所定の形状に成形して焼結させることにより、得られる。このとき、混合粉におけるTiO2の含有量を1.0wt%以上5.0wt%以下とすれば良い。
【0021】
焼結温度は、1300℃以上1400℃以下であることが好ましい。焼結温度が1300℃未満であれば、焼結が十分に進行しないおそれがあり、よって、作製された焼結体板の強度低下を招くことがある。一方、焼結温度が1400℃を超えると、コージェライトがもろくなるおそれがあり、作製された焼結体板の強度低下を招くことがある。
【0022】
焼結時には、コージェライト粉末が溶融する前にTiO2粉末が溶融し、溶融したTiO2によりコージェライト粉末間の隙間が埋められる。なぜならば、TiO2粉末は、コージェライト粉末よりも融点が低いからであり、また、焼結時であってもコージェライト粉末と反応しにくいからである。このようにTiO2粉末が焼結助剤として作用するので、緻密性に優れた焼結体板1が得られる。また、溶融したTiO2がコージェライト粉末間の隙間を埋めるので、焼結時にコージェライト粉末が成長することを防止できる。これによっても、緻密性に優れた焼結体板1が得られる。このように、本発明に係る焼結体板1は、TiO2を添加物として含んでいない焼結体板よりも緻密であるので、当該焼結体板よりも強度に優れ、よって、当該焼結体板よりも耐熱衝撃性に優れる。
【0023】
焼結体板1の緻密性は、たとえば焼結体板1のかさ比重を求めることにより求められる。焼結体板のかさ比重値が2.42g/cm3以上であれば、焼結体板の緻密性が高いことを示している。一方、焼結体板のかさ比重値が2.42g/cm3未満であれば、焼結体板の緻密性が低く、焼結体板に多数の空隙または大きな空隙が存在することを示している。焼結体板1のかさ比重は、焼結体板1の重量とその体積とから算出される。
【0024】
焼結体板1の強度は、たとえば焼結体板1の曲げ強度を測定することにより求められる。焼結体板の曲げ強度値が200MPa以上であれば、焼結体板が強度に優れる。一方、焼結体板の曲げ強度値が200MPa未満であれば、焼結体板が強度に劣る。焼結体板1の曲げ強度は、たとえばJIS R 1601に準拠して測定された3点曲げ強度で示される。
【0025】
焼結体板1の耐熱衝撃性は、熱衝撃試験を行なうことにより求められる。たとえば熱衝撃試験は、焼結体板1を所定温度に加熱し、加熱された焼結体板1を室温程度の水中に投入し、当該焼結体板1を水中から取り出して、その焼結体板1に割れまたはヒビが存在するか否かを調べるというものである。なお、焼結体板1を加熱する温度は、焼結体板1の使用時の環境温度よりも高いことが好ましく、焼結体板1を加熱用調理具の材料として使用するときには500℃以上であれば良い。
【0026】
以上説明したように本発明に係る焼結体板1はTiO2を添加物として含んでいない焼結体板よりも高強度であるので、割れを伴うことなく焼結体板1に貫通穴15を形成して焼結体板11(図2および図3参照)を提供することができる。貫通穴15の一例としては、たとえば図4に示すネジ穴25が挙げられる。さらに、本発明に係る焼結体板1は、TiO2を添加物として含んでいない焼結体板よりも耐熱衝撃性に優れる。よって、高温下においても焼結体板1が割れることを防止できる。
【0027】
<貫通穴15が形成された焼結体板11>
図2および図3において、焼結体板11は、焼結体板1に4つの貫通穴15が形成されたものである。以下では、焼結体板1とは異なる点を主に示す。
【0028】
焼結体板11は、厚みW1を有し、縦の長さがLl1であり横の長さがLs1である矩形(ただし、Ll1>Ls1)を平面形状として有している。厚みW1は10mm以下であることが好ましく、上記Ll1は1000mm以下であることが好ましく、上記Ls1は600mm以下であることが好ましい。
【0029】
各貫通穴15は、焼結体板11の厚み方向に貫通しており、直径D1を有している。上記Ll1および上記Ls1の大きさにも依るが、直径D1は10mm以下であることが好ましく、5mm以上10mm以下であればさらに好ましい。直径D1が10mmを超えると、貫通穴15の形成時に焼結体板11の割れを招くことがある。詳細には、貫通穴15の形成時には、貫通穴15の形成位置に力が付与されるので、この位置には応力が発生する。直径D1が10mm以下であるときには、焼結体板11における貫通穴15の占有割合がそれほど高くない。よって、生じた応力は、焼結体板11のうち応力が生じなかった部分、つまり焼結体板11のうち貫通穴15の形成時に力が付与されなかった部分へ逃げる。これにより、貫通穴15の形成に起因する焼結体板11の割れが防止される。しかし、直径D1が10mmを越えると、焼結体板11における貫通穴15の占有割合が高くなるため、焼結体板11において応力が生じていない部分が狭くなる。そのため、応力を逃がすことが難しくなり、応力の集中を招く。よって、焼結体板11の割れを招くことがある。
【0030】
上記Ll1および上記Ls1の大きさにも依るが、各貫通穴15は貫通穴15に対応する焼結体板11の側面から10mm以上離れた位置に形成されることが好ましく、貫通穴15に対応する焼結体板11の側面から50mm以上100mm以下離れた位置に形成されていればさらに好ましい。別の言い方をすると、図2に示すL1は10mm以上であることが好ましく、50mm以上100mm以下であればさらに好ましい。ここで、貫通穴15に対応する焼結体板11の側面とは、各貫通穴15から最も近くに位置する焼結体板11の側面であり、図2中におけるL1とは、焼結体板11の側面と各貫通穴15の淵部との最短距離である。
【0031】
焼結体板11の側面と各貫通穴15の淵部との最短距離L1が10mm未満であれば、貫通穴15の形成時に焼結体板11の割れを招くことがある。詳細には、上記L1が10mm未満であれば、貫通穴15と貫通穴15に対応する焼結体板11の側面との間に存在する焼結体板11の部分が狭くなる。そのため、貫通穴15の形成時に焼結体板11に生じた応力は、貫通穴15に対応する焼結体板11の側面へ向かう方向に逃げ難くなる。このように応力を十分に逃がすことが難しくなるため、応力の集中を招き、よって、焼結体板11の割れを招くことがある。
【0032】
図2および図3に示すように複数の貫通穴15が焼結体板11に形成されている場合には、隣り合う貫通穴15の間隔Lb1は50mm以上であることが好ましく、100mm以上500mm以下であることがさらに好ましい。ここで、隣り合う貫通穴15の間隔Lb1とは、一方の貫通穴15の淵部から他方の貫通穴15の淵部までの最短距離である。隣り合う貫通穴15の間隔Lb1が50mm未満であれば、隣り合う貫通穴15の間に存在する焼結体板11の部分が狭くなる。そのため、貫通穴15の形成時に焼結体板11に生じた応力は、隣に位置する貫通穴15へ向かう方向に逃げ難くなる。このように応力を十分に逃がすことが難しくなるため、応力の集中を招き、よって、焼結体板11の割れを招くことがある。
【0033】
これにより、釘などの固定具を貫通穴15に挿通させることができるので、釘などの固定具を介して焼結体板11を任意の部材などに固定できる。
【0034】
なお、貫通穴15の形状は、図2および図3に示す形状に限定されず、貫通穴15内に設けられる固定具の外形に合わせて決定されれば良い。たとえば、貫通穴15の横断面形状は、図2に示す円形に限定されず、楕円形であっても良いし、多角形であっても良い。また、貫通穴15は、図3に示すように寸胴に形成されていても良いし、テーパー状に形成されていても良い。さらには、貫通穴15の貫通方向の途中に段差部が設けられていても良い。
【0035】
<ネジ穴25が形成された焼結体板21>
図4において、焼結体板21は、ネジ穴25が形成されているという点を除いては焼結体板11と略同一の構成を有している。よって、ネジをネジ穴25に挿通させることができるので、ネジを介して焼結体板21を任意の部材などに固定できる。
【0036】
<加熱用調理具31>
図5、図6(a)および図6(b)において、本発明に係る加熱用調理具31は、たとえば電磁誘導加熱(IH(Induction Heating))クッキングヒータ用ホットプレートである。加熱用調理具31をIHクッキングヒータ用ホットプレートとして使用するときには、加熱用調理具31には電源コード(不図示)が接続されており、この電源コードのプラグをコンセントに挿入すれば加熱用調理具31が加熱される。
【0037】
この加熱用調理具31は、厚みW2を有し、また縦の長さがLs2であり横の長さがLl2である矩形(ただし、Ll2>Ls2)の角部にR加工が施されてなる形状を平面形状として有している。ここで、厚みW2は10mm以下であることが好ましく、5mm以上10mm以下であればさらに好ましい。上記Ll2は1000mm以下であることが好ましく、600mm以上900mm以下であればさらに好ましい。また、上記Ls2は600mm以下であることが好ましく、200mm以上500mm以下であればさらに好ましい。これにより、加熱用調理具31の実用化を図ることができる。
【0038】
加熱用調理具31には、4つの貫通穴35が形成されている。なお、貫通穴35の直径D2、加熱用調理具31の側面と各貫通穴35の淵部との最短距離L2、および隣り合う貫通穴35の間隔Lb2については、それぞれ、貫通穴15の直径D1、焼結体板11の側面と各貫通穴15の淵部との最短距離L1、および隣り合う貫通穴15の間隔Lb1と同様のことが言える。また、加熱用調理具31には、貫通穴35の一例として図4に示すネジ穴が形成されていても良い。
【0039】
なお、加熱用調理具31は、IHクッキングヒータ用ホットプレートに限定されず、高温下において使用される調理具であれば良く、高温下において使用され且つ任意の部材などに固定された状態で使用されることが好ましい調理具であっても良い。
【実施例】
【0040】
以下には、本発明の実施例を示す。実施例1〜5および比較例1〜4では、TiO2の含有量および焼結温度をそれぞれ変えて、TiO2を含む焼結体板を作製した。作製された焼結体板に対して、3点曲げ強度およびかさ比重を求め、さらに熱衝撃試験を行った。また、比較例5〜10では、TiO2に変えてCaOをコージェライト粉末に添加して焼結体板を作成し、作製された焼結体板に対して3点曲げ強度およびかさ比重を求め、さらに熱衝撃試験を行った。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0041】
<実施例1の焼結体板の作製>
まず、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムおよび酸化ケイ素をそれぞれ2:2:5となるように粉末状態で秤量してから混合し、その後、所定の温度で焼結させた。これにより、コージェライト粉末を得た。得られたコージェライト粉末にTiO2粉末を添加して、TiO2の含有量が1.0wt%である混合粉を得た。
【0042】
次に、プレス機を用いて、得られた混合粉をそれぞれ成形した。このようにして得られた各成形体を電気炉内で大気圧下で焼結させた。なお、焼結温度は表1〜表3に示す通りである。このようにして、実施例1の焼結体板を得た。
【0043】
<実施例2〜5および比較例1〜4の焼結体板の作製>
TiO2の含有量を表1〜表3に示す数値に変えたことを除いては上記実施例1の焼結体板の作製方法にしたがって、実施例2〜5および比較例1〜4の焼結体板を作製した。
【0044】
<3点曲げ強度の測定>
実施例1〜5および比較例1〜4の各焼結体板を断面が4mm×3mmであり長さが40mmである棒状に切断した。切断は、湿式切断機により行なった。各試験片に対してJIS R 1601に準拠して3点曲げ強度を10回測定し、それぞれの測定値の平均値を算出した。表1にはその平均値(単位はMPaである)を記す。なお、3点曲げ強度の測定の支持具には、直径6mmの丸棒を使用した。また、以下では、「3点曲げ強度」を単に「曲げ強度」と記すことがある。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示されるように、実施例1〜5では、比較例1〜4に比べて大きな曲げ強度値を示した。特にTiO2の含有量が3.0wt%近傍であるとき、最大の曲げ強度値を示した。図7には、焼結温度が1350℃であるときのTiO2の含有量と焼結体板の曲げ強度値との実験結果を示している。一方、比較例2〜4では、比較例1と略同一の曲げ強度値を示した。焼結体板は、TiO2の含有量が1.0wt%以上5.0wt%以下であれば、TiO2の含有量が1.0wt%未満である場合およびTiO2の含有量が5.0wt%を越える場合に比べて、大きな曲げ強度値を示すことが明らかである。
【0047】
また、実施例1〜5のそれぞれでは、焼結温度が1300℃以上1400℃以下である場合には、焼結温度が1250℃または1450℃である場合に比べて、非常に大きな曲げ強度値を示した。このことは図8からも明らかである。図8には、TiO2の含有量が2.0wt%であるときの焼結温度と焼結体板の曲げ強度値との実験結果を示している。よって、TiO2の含有量が1.0wt%以上5.0wt%以下であり且つ焼結温度が1300℃以上1400℃以下であれば、曲げ強度値が非常に大きな焼結体板が得られることが明らかとなった。
【0048】
<かさ比重>
実施例1〜5および比較例1〜4の各焼結体板を用いて断面が4mm×3mmであり長さが40mmである棒状の試験片(3点曲げ強度の試験片と同形)を各々10サンプル準備した。得られた棒状の各試験片に対してかさ比重を求めた。具体的には、各実施例および各比較例において、10個の試験片の質量およびその体積を測定してかさ比重を算出し、その平均値を求めた。表2には得られた平均値(単位はg/cm3である)を記す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示されるように、実施例1〜5では、比較例1〜4に比べて大きなかさ比重値を示した。一方、比較例2〜4では、比較例1と略同一のかさ比重値を示した。このことから、焼結体板は、TiO2の含有量が1.0wt%以上5.0wt%以下であれば、TiO2の含有量が1.0wt%未満である場合およびTiO2の含有量が5.0wt%を越える場合に比べて、大きなかさ比重値を示すことがわかった。
【0051】
また、実施例1〜5のそれぞれでは、焼結温度が1300℃以上1400℃以下である場合には、焼結温度が1250℃または1450℃である場合に比べて、非常に大きなかさ比重値を示した。よって、TiO2の含有量が1.0wt%以上5.0wt%以下であり且つ焼結温度が1300℃以上1400℃以下であれば、かさ比重値が非常に大きな焼結体板が得られることが明らかとなった。
【0052】
表1の曲げ強度の結果と考え合わせると、曲げ強度値が大きな材料ほど、かさ比重値が大きいという傾向が見られた。かさ比重値が大きいことは、焼結体板がより緻密であることを示している。よって、TiO2の含有量が1.0wt%以上5.0wt%以下であれば、緻密な焼結体板が得られるので曲げ強度値が大きくなるということが示唆された。さらに、TiO2の含有量が1.0wt%以上5.0wt%以下であり且つ焼結温度が1300℃以上1400℃以下であれば、かさ比重値の非常に大きな焼結体板が得られるので焼結体板の曲げ強度値が非常に大きくなるということが示唆された。
【0053】
<熱衝撃試験>
上記湿式切断機を用いて、実施例1〜5および比較例1〜4の各焼結体板を100mm(縦)×100mm(横)×5mm(厚み)の板状に切断した。このようにして得られた板状の各試験片に対して熱衝撃試験を行なった。具体的には、まず、電気炉を用いて、各試験片を520℃に加熱した。次に、加熱された各試験片を電気炉から取り出して各試験片の温度が520℃からほとんど下がらないうちに水槽内に投入した。その後、水槽内から各試験片を取り出して、各試験片の割れの有無を目で確認した。結果を表3に示す。なお、表3における「無」は試験片が割れなかったことを示しており、「有」は試験片が割れたことを示している。
【0054】
【表3】

【0055】
なお、水槽には1枚の試験片が十分に浸水可能な量(20l)の水を入れており、その水の温度は20℃であった。
【0056】
表3に示されるように、実施例1〜5では、比較例1〜4に比べて試験片に割れが確認される確率が低かった。
【0057】
また、実施例1〜5の各実施例において焼結温度が1300℃以上1400℃以下であれば、試験片には割れが全く確認されなかった。
【0058】
<比較例5〜10>
TiO2に変えてCaOを添加したことを除いては焼結体板の作製方法と同様の方法にしたがって、比較例5〜10における焼結体板を作製した。得られた比較例5〜10の焼結体板に対して、上述の方法にしたがって、3点曲げ強度およびかさ比重を求めるとともに熱衝撃試験を行った。その結果を表4に記す。
【0059】
【表4】

【0060】
表4から分かるように、CaOの含有量が増加すると、焼結体板のかさ比重値は大きくなり、また焼結体板の曲げ強度値は大きくなった。しかし、比較例5〜10では、実施例1〜5よりも、特に実施例1〜5のそれぞれにおいて焼結温度が1300℃以上1400℃以下である場合よりも、かさ比重値は小さく、また曲げ強度値は小さかった。そのため、比較例5〜10における焼結体板に対して熱衝撃試験を行なうとその焼結体板が割れたと考えられる。このことから、焼結助剤としては、TiO2を用いることが好ましいといえる。
【0061】
以上のことから、TiO2の含有量が1.0wt%以上5.0wt%以下であれば、かさ比重の大きな焼結体板が得られ、焼結体板の曲げ強度値が大きくなり、耐熱衝撃性に優れた焼結体板が得られることが明らかとなった。また、TiO2の含有量が1.0wt%以上5.0wt%以下であり且つ焼結温度が1300℃以上1400℃以下であれば、かさ比重の非常に大きな焼結体板が得られ、焼結体板の曲げ強度値が非常に大きくなり、耐熱衝撃性に非常に優れた焼結体板が得られることが明らかとなった。
【0062】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 焼結体板、11 焼結体板、15 貫通穴、21 焼結体板、25 ネジ穴、31 加熱用調理具、35 貫通穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コージェライトを主成分として含み、
1.0wt%以上5.0wt%以下のTiO2をさらに含む焼結体板。
【請求項2】
コージェライト粉末とTiO2粉末との混合粉を1300℃以上1400℃以下で焼結して得られた請求項1に記載の焼結体板。
【請求項3】
直径が10mm以下であり、厚み方向に貫通する穴が形成された請求項1または2に記載の焼結体板。
【請求項4】
前記穴は、焼結体板側面から10mm以上離れた位置に形成されている請求項3に記載の焼結体板。
【請求項5】
前記穴は、2つ以上形成されており、
隣り合う穴の間隔は、50mm以上である請求項3または4に記載の焼結体板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の焼結体板を含む加熱用調理具。
【請求項7】
一辺の長さが600mm以下であり他辺の長さが1000mm以下である矩形の平面形状を有し、且つ10mm以下の厚みを有する電磁誘電加熱クッキングヒーター用トッププレートである請求項6に記載の加熱用調理具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−224515(P2012−224515A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93928(P2011−93928)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】