説明

焼結原料の造粒方法

【課題】焼結原料の微粉比率が増加した場合でも、焼結鉱の生産性を安価に向上させることができる焼結原料の造粒方法を提供することを目的とする。
【解決手段】粉鉄鉱石、副原料および炭材を含む焼結原料の一部を造粒して擬似粒子とし、別系統で焼結原料の残りを造粒して擬似粒子とした後、焼結原料の一部を造粒した擬似粒子と焼結原料の残りを造粒した擬似粒子を混合する焼結原料の造粒方法であって、焼結原料の一部を造粒して擬似粒子とするに際し、T.C.(全炭素)を3.5質量%以下、T.Fe(全鉄)を67.5質量%以上含有し、粒子径が10μm以下の比率が20質量%以上である粉体を添加し、粒子径が5mm以上の擬似粒子に造粒することを特徴とする、焼結原料の造粒方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉で使用される焼結鉱の製造において、焼結原料を造粒する方法に関し、さらに詳しくは、焼結原料の微粉比率が増加した場合でも、焼結鉱の生産性を安価に向上させることができる焼結原料の造粒方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉で鉄源として使用される焼結鉱の製造は、一般的に、下記の方法により行われる。粉鉄鉱石、副原料、炭材を予め定められた比率で配合して焼結原料とする。この焼結原料は水分が添加され、混合、調湿および造粒処理が施され、粒子径が2〜4mm程度の擬似的な粒子(以下、「擬似粒子」とも略記する)となる。造粒された焼結原料は焼結機のパレット上に装入され、パレット上で焼結原料充填層(以下、「充填層」とも略記する)を形成する。
【0003】
こうして形成された充填層は、焼結機の点火炉においてその上部表面に着火され、充填層内に存在する炭材の燃焼が開始し、炭材の燃焼部分は燃焼帯を形成する。充填層は下方から吸引されていることから、燃焼帯は充填層の上部から下部に向かって次第に移行する。燃焼帯では、燃焼熱によって周囲の擬似粒子が昇温されて、擬似粒子が部分的に溶融し、その融液により擬似粒子間が架橋されて焼結し、充填層は最終的に焼結ケーキとなる。焼結ケーキは、焼結機から排鉱され、クラッシャーにより所定の粒度に破砕されて焼結鉱となる。
【0004】
近年、良質な粉鉄鉱石が枯渇してきたことから、低品位化して微粉の比率が増加したことや、高品位な粉鉄鉱石の代替として高品位な微粉鉄鉱石の使用量が増加したことに伴い、焼結原料では微粉の比率が増加している。ここでいう高品位な微粉状の鉄鉱石とは、流水中で篩目0.25mmの篩で篩った時の篩下(粒子径が0.25mm以下)の比率が80質量%(以下、mass%とも記す)以上であって、T.Fe(全鉄)が60mass%以上である鉄鉱石を指し、具体的な例としては南米産のペレットフィード粉鉱が挙げられる。このような高品位な微粉状の鉄鉱石を、以下ではペレットフィード粉鉱と称す。
【0005】
さて、焼結鉱の鉄品位は高炉の操業成績に深く関わっており、環境意識の高まりから高炉からの排出されるCO2量の削減が求められる昨今の状況を鑑みると、高品位なペレットフィード粉鉱を多量に使用して高品位な焼結鉱の製造を指向するのが今後の焼結鉱の製造形態であると予想される。しかし、焼結鉱の製造において、ペレットフィード粉鉱の使用量を増加させると焼結原料で微粉比率が増加し、造粒された擬似粒子では、造粒されることなく微粉のまま残留する原料の比率、いわゆる未造粒粉率が増加する。
【0006】
ここで言う未造粒粉率とは、焼結原料を造粒した擬似粒子を空気雰囲気において105℃で2時間乾燥させた後、篩目0.25mmの篩を用いた15秒間の振盪操作による分級で得られる粒子径が0.25mm以下の比率(mass%)である。未造粒粉率は、焼結機で擬似粒子を焼成する際の充填層の通気性と良好な相関を示すことから、焼結鉱の生産性を評価するために用いられる指標である。未造粒粉率が増加すると、造粒された擬似粒子を焼結機のパレット上に装入する際、充填層に形成される空隙が、造粒されることなく残存した微粉で閉塞されるので、充填層の通気性が阻害される。その結果、燃焼帯が上部から下部に向かって移行する速度である焼成速度が低下し、焼結鉱の生産性が悪化する。
【0007】
従来、焼結原料における微粉比率の増加に対しては、例えば非特許文献1で述べられているように、生石灰の添加で対応してきた。しかし、同文献でも述べられているように、生石灰による未造粒粉率を低下させる効果は、生石灰の配合率が2%までは顕著であるが、それを超えて配合しても未造粒粉率の低下量は殆ど変化しない。また、生石灰は、1t当たり5,000〜12,000円と高価なため、その使用量を増加させるのはできる限り抑制したい。
【0008】
そこで、生石灰によらない焼結原料の微粉化に対応する技術開発が行われおり、例えば非特許文献2や特許文献1〜3がある。
【0009】
非特許文献2には、微粉比率の高い豪州産のマラマンバ鉱を造粒し、粒子径が約15mmの擬似粒子であるグリーンボールとし、このグリーンボールを充填層に配置することにより充填層の通気性を確保し、焼結鉱の生産性を向上させるMEBIOS法が提案されている。
【0010】
また、特許文献1では、焼結原料の一部である粉鉄鉱石および炭材を予め混合し、見掛け密度が2.7g/cm3以上で、粒径が5mm以上である高密度の予備造粒物に造粒し、次いで、その予備造粒物に残りの焼結原料を添加し、混合、造粒して焼結機へ供給する焼結原料の造粒方法が述べられている。
【0011】
特許文献2で述べられている焼結原料の造粒方法では、粉鉄鉱石を造粒して粒径2〜5mmφ、圧壊強度100〜150g/5mmφボールのミニペレットを製造するとともに、残りの焼結原料を別系統で混合、調湿、造粒して擬似粒子にする。このミニペレットと擬似粒子とを別々に供給し、焼結材のスローピングプレート上で混合して焼結機へ供給する。
【0012】
特許文献3には、鉄鉱石を含む焼結原料を、ローラープレス破砕機で圧縮破砕した後、バインダーを添加して造粒する焼結原料の事前処理方法が述べられている。特許文献3では、焼結原料をローラープレス破砕機で処理することにより、粒度が45μm以下である超微粒子を大量に得ることができ、造粒時に擬似粒子化を効率よく行うことができるとともに、造粒物の強度が向上するとしている。
【0013】
ここで、特に特許文献2や特許文献3において造粒物の強度が注目されているのは、焼成する際に擬似粒子が崩壊することを懸念してのことである。すなわち、焼結機で充填層を形成した擬似粒子を焼成する際には、充填層の上部から下部に向かって焼成が進行するので、上部が溶融・焼結する間、下部は上部からの荷重に耐える必要がある。このため、強度の低い擬似粒子が充填層の下部に配置されると、上部が溶融・焼結する間に崩壊して空隙率が低下し、充填層の通気性が阻害されて生産性が悪化する危険がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】佐藤武夫、中野皓一郎、黒沢信一、谷中秀臣、長野誠規:浮選、32(1985)p.84−90
【非特許文献2】Eiki KASAI、Sergey KOMAROV、Koichi NUSHIRO、Masanori NAKANO:ISIJ International,Vol.45(2005)p.538−543
【非特許文献3】村瀬徹、平井直兄:鉄と鋼,Vol79(1993),p.1129−1137
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2009−114537号公報
【特許文献2】特開平4−198427号公報
【特許文献3】特開2007−162127号公報
【特許文献4】特開2008−57028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記非特許文献2および前記特許文献1〜3に記載された従来の焼結原料の造粒方法には、それぞれ以下のような問題がある。
【0017】
前記非特許文献2では、具体的な造粒方法が述べられていないことから、前述の未造粒粉率を低下することができる造粒方法について別途検討する必要がある。このため、前記非特許文献2に記載の造粒方法は、焼結鉱の製造に直ちに適用できる方法ではない。
【0018】
前記特許文献1では、高密度の擬似粒子による焼結鉱の強度を改善する焼結原料の造粒方法が述べられているが、例えば前述のペレットフィード粉鉱は高密度なので、該ペレットフィード粉鉱を焼結原料に使用すると、その予備造粒物の見掛け密度を2.7g/cm3以上とすることは容易である。しかし、難造粒性のペレットフィード粉鉱を含む予備造粒物の見掛け密度を2.7g/cm3以上にしたとしても、その予備造粒物が十分に高強度であり、未造粒粉率を低下させることが可能であるとは限らない。
【0019】
前記特許文献2には、圧壊強度の高いミニペレットを製造するためにはパンペレタイザーは不向きで、焼結原料を圧密可塑化混練空間に装入するような造粒設備が必要との記載がある。しかし、そのような造粒設備は一般的に高価なので、同文献に記載の焼結原料の造粒方法では、未造粒粉率の低下を安価に達成することは困難である。
【0020】
前記特許文献3に述べられた焼結原料の造粒方法では、焼結原料をローラープレスで破砕する必要があり、ローラープレスの導入に設備コストを要する。また、バインダーとしてポリアクリル酸系の分散剤や生石灰を添加することが述べられているが、分散剤使用によるコスト悪化が避けられない。さらに、前述の通り、生石灰により未造粒粉率を低下させる効果には上限が存在するという課題がある。これらから、同文献に記載の焼結原料の造粒方法では、未造粒粉率の低下を安価に達成することは困難である。
【0021】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、焼結原料の微粉比率が増加した場合でも、充填層の通気性を確保でき、焼結鉱の生産性を安価に維持することができる焼結原料の造粒方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、ペレットフィード粉鉱の使用量を増加させたのに伴い、焼結原料の微粉比率が増加した場合にも、未造粒粉率の上昇を抑制して充填層の通気性を確保し、焼結鉱の生産性を維持することができる安価な方法を検討した。その結果、本発明者らが先に特許文献4で提案した焼結原料の造粒方法に拠ることが最も効果的であるとの結論に到達した。
【0023】
具体的には、焼結原料の一部をパンペレタイザーによって、一般的な擬似粒子よりも大きい粒子径が5mm以上である擬似粒子(以下、「グリーンボール」とも略記する)に造粒し、別系統で焼結原料の残りを造粒して擬似粒子とした後、グリーンボールと焼結原料の残りを造粒した擬似粒子を混合する焼結原料の造粒方法である。
【0024】
そこでさらに、ペレットフィード粉鉱を多量に使用する場合にグリーンボールの強度を安価に増加できる方法を検討し、粒子径が10μm以下である極微粉がグリーンボールの強度に影響を及ぼすことを知見した。
【0025】
粒子径が10μm以下である極微粉が擬似粒子やグリーンボールの圧壊応力に影響を及ぼすメカニズムは、以下の如くである。焼結原料の造粒では、核粒子と呼ばれる3〜5mm程度の比較的大きな粒子の周囲を、付着粉と呼ばれる1mm以下の、核粒子よりも細かい粒子が取り巻いて、擬似粒子を形成する。核粒子と付着粉を結合するバインダーの役目を担うのは、造粒の過程で添加された水分であり、混合・攪拌・造粒の過程で核粒子と付着粉の間に入り込んで両者を結合する。
【0026】
一方、焼結原料に含まれる粒子径が10μm以下である極微粉は、水分中に懸濁し、水分と共に自由に移動することができるので、水分と一緒に核粒子と付着粉の間に入り込む。こうして、粒子径が10μm以下である極微粉が擬似粒子と付着粉の間を埋めて架橋を形成するので、擬似粒子の強度が増加するのである。このメカニズムによる強度上昇は、通常の焼結鉱を製造するプロセスで造粒される擬似粒子だけでなく、粒径の大きなグリーンボールにおいても発現するのはもちろん、グリーンボールを造粒する焼結原料に核粒子を含まない、例えばペレットフィード粉鉱のみを造粒する場合でも同様に発現する。
【0027】
しかし、粒子径が10μm以下である極微粉の全てが擬似粒子やグリーンボールの強度発現に寄与する訳ではない。例えばC(炭素)を含有する極微粉は、焼結原料に添加しても強度を発現する効果を示さない。なぜなら、Cは水との濡れ性が悪く、水分中に懸濁することが困難だからである。
【0028】
以上の現象を実験から確認した本発明者らは、粒子径が10μm以下である極微粉を含む安価原料の調査を行い、製鉄所内で発生するダスト類に着目した。なぜなら、ダスト類は、製鉄所内で必ず処理されるべきものであり、かつ安価なためである。その結果、鋼板塩酸酸洗廃液から副生する粉状酸化鉄が、T.C.が0mass%かつ粒子径が10μm以下である極微粉を20mass%以上含むことを突き止めた。
【0029】
また、鋼板塩酸酸洗廃液から副生する粉状酸化鉄は、その粒子の形状が角張っているとともに、T.Feに対するFe23の比率が96.5mass%程度(T.Feの含有率は67.5mass%以上)であることから、Cを含有しない高品位材料であり、他の製鉄ダストにみられる品質のばらつきが少ないことに注目した。そして、その粉状酸化鉄を焼結原料の一部に添加してグリーンボールを造粒し、圧縮破壊試験を行ったところ、グリーンボールの圧壊強度が上昇することを見いだした。
【0030】
ここで、鋼板塩酸酸洗廃液から副生する粉状酸化鉄とは、例えば、非特許文献3に解説されているような、熱延鋼板の酸洗プロセスに用いられた鋼板塩酸酸洗廃液を焙焼して得られ、複合酸化物かつ磁性材料であるフェライトの原料に多用される。以下、この鋼板塩酸酸洗廃液から副生する粉状酸化鉄を酸洗スラッジと称す。
【0031】
酸洗スラッジを焼結原料の一部に添加することにより、造粒されたグリーンボールの強度が上昇するのは、下記(a)〜(c)の理由によると思われる。
(a)酸洗スラッジは、粒子径が10μm以下である極微粉を20mass%以上含有することに加え、Cを含有しないことから水との濡れ性が良いこと。
(b)その粒子形状が角張っており、核粒子と付着粉の間に入り込んで架橋を形成したときに極微粉同志が良く絡まること。
(c)T.Feに対するFe23の比率が95mass%以上であることから比重が大きく、一度架橋を形成すると容易に移動しなくなること。
【0032】
なお、酸洗スラッジは、塩酸と同時に副生する酸化鉄粉であるから、塩素を1000ppm程度含む。焼結鉱の製造プロセスにおいて、塩素は容易に塩化物を形成して揮発する。揮発した塩化物は、焼結鉱の製造プロセスで発生した他のダストともに回収されるので、ダスト発生量が増加する。このため、より好適には、脱塩素処理を施した酸洗スラッジを粉体として用いるのがよい。
【0033】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)〜(4)の焼結原料の造粒方法を要旨としている。
【0034】
(1)粉鉄鉱石、副原料および炭材を含む焼結原料の一部を造粒して擬似粒子とし、別系統で焼結原料の残りを造粒して擬似粒子とした後、前記焼結原料の一部を造粒した擬似粒子と前記焼結原料の残りを造粒した擬似粒子を混合する焼結原料の造粒方法であって、前記焼結原料の一部を造粒して擬似粒子とするに際し、T.C.(全炭素)を3.5質量%以下、T.Fe(全鉄)を67.5質量%以上含有し、粒子径が10μm以下の比率が20質量%以上である粉体を添加し、粒子径が5mm以上の擬似粒子に造粒することを特徴とする、焼結原料の造粒方法。
【0035】
(2)前記焼結原料の一部に含まれる粉鉄鉱石の内、少なくとも一つの銘柄をT.Feが60質量%以上含有し、粒子径が0.25mm以下の比率が80質量%以上である粉鉄鉱石とし、該粉鉄鉱石が焼結原料の全部における粉鉄鉱石および副原料の合計量に占める割合を10質量%以上とすることを特徴とする、上記(1)に記載の焼結原料の造粒方法。
【0036】
(3)前記粉体として、鋼板塩酸酸洗廃液を焙焼して得られる粉状酸化鉄を用いることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の焼結原料の造粒方法。
【0037】
(4)前記鋼板塩酸酸洗廃液から得られる粉状酸化鉄が、脱塩素処理されたものであることを特徴とする、上記(3)に記載の焼結原料の造粒方法。
【0038】
本発明において、「副原料」とは、粉鉄鉱石および炭材を除く原料であり、例えば、生石灰やSiO2を含有する原料、MgOを含有する原料が該当する。また、「炭材」とは、フリーカーボンを含有する原料であり、例えば、粉コークス、無煙炭、Cを含有するダスト等が該当する。
【発明の効果】
【0039】
本発明の焼結原料の造粒方法は、焼結原料の一部を造粒して擬似粒子とする際に、粒子径が10μm以下である極微粉を含有する粉体を添加し、粒子径が5mm以上である擬似粒子に造粒することにより、焼結原料の一部を造粒した擬似粒子が高強度となり、焼結原料における微粉比率が増加した場合でも、焼結機のパレット上に装入した際に充填層の通気性を確保し、焼結鉱の生産性を安価に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】焼結鉱の製造プロセスフローの一例を示す図である。
【図2】焼結原料の一部に添加する粉体とグリーンボールの圧壊強度の関係を示す図である。
【図3】焼結原料の一部を別系統で混合して造粒することなく、焼結原料の全部を混合して造粒した場合のペレットフィード粉鉱の配合率と相対生産率の関係を示す図である。
【図4】焼結原料の一部に粉体を添加して造粒した場合のグリーンボールの圧壊強度と相対生産率の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明の焼結原料の造粒方法を図面に基づいて説明する。
【0042】
図1は、焼結鉱の製造プロセスフローの一例を示す図であり、本発明の焼結原料の造粒方法を適用することができる焼結鉱の製造プロセスフローを示す。同図に示す焼結鉱の製造プロセスフローでは、造粒系統Aにおいて、焼結原料の一部である粉鉄鉱石1a、副原料2aおよび炭材3aに水分4および粉体5を添加し、高速攪拌ミキサー6を用いて混合、調湿した後、パンペレタイザー7を用いて造粒し、粒子径が5mm以上の擬似粒子であるグリーンボールとする。一方、造粒系統Bにおいて、焼結原料の残りである粉鉄鉱石1b、副原料2bおよび炭材3bに水分4を添加し、1次ドラムミキサー8および2次ドラムミキサー9を用いて混合、調湿および造粒して擬似粒子とする。
【0043】
造粒系統Aで造粒したグリーンボールと、造粒系統Bで造粒した擬似粒子を、サージホッパー10に至る搬送過程で混合し、焼結機11のパレット上に装入して充填層を形成する。焼結機11のパレット上で充填層を形成したグリーンボールおよび擬似粒子は、焼成されて焼結ケーキとなって焼結機から排出される。排出された焼結ケーキを、図示しないクラッシャーにより所定の粒度に破砕して焼結鉱を得る。
【0044】
本発明の焼結原料の造粒方法は、粉鉄鉱石、副原料および炭材を含む焼結原料の一部を造粒して擬似粒子とし、別系統で焼結原料の残りを造粒して擬似粒子とした後、焼結原料の一部を造粒した擬似粒子と焼結原料の残りを造粒した擬似粒子を混合する焼結原料の造粒方法であって、焼結原料の一部を造粒して擬似粒子とするに際し、T.C.(全炭素)を3.5質量%以下、T.Fe(全鉄)を67.5質量%以上含有し、粒子径が10μm以下の比率が20質量%以上である粉体を添加し、粒子径が5mm以上の擬似粒子に造粒することを特徴とする。
【0045】
粒子径が10μm以下である極微粉は、焼結原料の一部に添加されて造粒される際に、水分中に懸濁し、水分と共に自由に移動することができる。このため、水分と一緒に核粒子と付着粉の間に入り込み、極微粉が擬似粒子と付着粉の間を埋めて架橋を形成するので、造粒されるグリーンボールの強度を増加させる。粉体に含まれる粒子径が10μm以下の比率を20mass%未満とすると、擬似粒子と付着粉の間を極微粉が埋めて形成される架橋の量が不足し、焼結機で焼成する際にグリーンボールが強度不足により充填層で崩壊し、充填層の通気性を阻害する。
【0046】
また、粒子径が10μm以下の極微粉であってもCは水との濡れ性が悪く、水分中に懸濁することが困難であることから、擬似粒子と付着粉の間を極微粉が埋めて架橋を形成しない。このため、粉体に含まれるT.C(全炭素)が3.5mass%を超えると、極微粉による架橋を十分に形成することができないので、焼結機で焼成する際にグリーンボールが強度不足により充填層で崩壊し、充填層の通気性を阻害する。
【0047】
さらに、粉体に含有されるT.Fe(全鉄)が67.5mass%未満であると、Fe23の比率が96.5mass%未満になることを意味し、その分比重が小さくなって架橋を形成した後に容易に移動しなくなる性質が低くなる。
【0048】
これらから、本発明の焼結鉱の造粒方法は、焼結原料の一部に添加する粉体は、T.C.(全炭素)が3.5mass%以下、T.Fe(全鉄)が67.5mass%以上含有し、粒子径が10μm以下の比率が20mass%以上とする。
【0049】
焼結原料の一部を混合して、粒子径が5mm以上の粒子(グリーンボール)とするのは、通常の焼結原料の造粒方法で造粒される擬似粒子は2mm〜4mm程度であり、グリーンボールの粒子径を残りの焼結原料を造粒した擬似粒子より粗大にすることにより、グリーンボールと擬似粒子から形成された充填層に適度に空隙が生まれ、充填層の通気性を確保することができるからである。
【0050】
焼結原料の全部に対するグリーンボールに造粒する焼結原料の一部の比率は、特許文献4に記載されるように、22mass%以下とするのが好ましい。グリーンボールに造粒する焼結原料の一部の比率が22mass%を超えると、焼結機で充填層を形成した際に粒子径が粗大なグリーンボールにより生まれる空隙が過多となり、焼結時間が短縮され、その結果、成品歩留が低下するからである。また、グリーンボールに造粒する焼結原料の一部の比率は、6mass%以下とするのが好ましい。
【0051】
前述の通り、本発明の焼結原料の造粒方法では、粉体に含まれる極微粉が擬似粒子と付着粉の間を埋めて架橋を形成することから、焼結原料の一部を造粒したグリーンボールの強度が増加する。このメカニズムによる強度上昇は、グリーンボールを造粒する焼結原料が核粒子を含まない、後述する実施例に示すように、焼結原料の一部に粉鉄鉱石としてペレットフィード粉鉱のみを配合して造粒する場合でも同様に発現する。
【0052】
このため、本発明の焼結原料の造粒方法は、焼結原料の一部に含まれる粉鉄鉱石の内、少なくとも一つの銘柄をT.Feが60mass%以上含有し、粒子径が0.25mm以下の比率が80mass%以上である粉鉄鉱石とし、該粉鉄鉱石が焼結原料の全部における粉鉄鉱石および副原料の合計量に占める割合を10mass%以上とした場合でも、高強度のグリーンボールに造粒でき、焼結機で焼成する際に充填層の通気性を確保することが可能となる。
【0053】
本発明の焼結原料の造粒方法は、粉体として、鋼板塩酸酸洗廃液を焙焼して得られる粉状酸化鉄(酸洗スラッジ)を用いるのが好ましい。酸洗スラッジは、製鉄所で発生する鋼板塩酸酸洗廃液から副生するダスト類であることから安価であるとともに、前述した(a)〜(c)の理由により造粒されたグリーンボールの強度が上昇するからである。
【0054】
本発明の焼結原料の造粒方法は、酸洗スラッジとして、脱塩素処理されたものを用いるのが好ましい。酸洗スラッジに含まれる塩素が、焼結鉱の製造プロセスで塩化物を形成して揮発し、焼結鉱の製造プロセスで発生した他のダストともに回収され、ダスト発生量が増加するのを抑制するとともに、ダストを回収する際に塩化物が回収装置の配管を腐食するのを緩和するためである。酸洗スラッジは、脱塩処理を施すことにより塩素濃度を100ppm程度に低下させることができる。
【実施例】
【0055】
本発明に係る焼結原料の造粒方法の効果を確認するため、下記に示す試験を行い、本発明の効果を検証した。
【0056】
鍋試験に先立ち、前記図1に示す焼結鉱の製造プロセスフローの造粒系統Aを模擬して造粒された粒子径が5mm以上であるグリーンボール強度について調査した。グリーンボールは、粉鉄鉱石、副原料および炭材を含む焼結原料に水分および粉体を添加し、高速攪拌ミキサーを用いて混合、調湿した後、パンペレタイザーを用いて造粒した。
【0057】
本試験では、焼結原料の粉鉄鉱石は、ペレットフィード粉鉱のみを使用した。難造粒性のペレットフィード粉鉱を主体とするグリーンボールの強度が上昇する条件であれば、他の粉鉄鉱石を使用した場合にも確実に強度上昇が見込まれるからである。
【0058】
本試験でグリーンボールを造粒した際の焼結原料の配合量を表1に示す。また、本試験に用いたペレットフィード粉鉱における、T.Feの含有率および粒子径が0.25mm以下の比率を表2に示す。粉体として焼結原料に添加した製鉄ダストにおける、T.Feの含有率、T.C.の含有率および粒子径が10μm以下の比率(以下、−10μm率とも略記する)を表3に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
表3に示す粉体の−10μm率は、JIS R1629に準拠した方法で測定したものである。
【0063】
表1に示す通り、従来例1では、粒子径が10μm以下である極微粉を含む粉体を焼結原料に添加しなかった。また、本発明例1では、酸洗スラッジを破砕することなく、そのままの粒度で粉体として焼結原料に添加し、本発明例2では、酸洗スラッジを破砕して−10μm率を100mass%にした後、粉体として焼結原料に添加した。比較例1では、−10μm率が55mass%であって、T.C.を4.0mass%含有するダストAを粉体として用いた。比較例2では、−10μm率が18mass%であって、T.C.が0.3mass%含有するダストBを粉体として用いた。
【0064】
パンペレタイザーから排出された粒子径が5mm以上であるグリーンボールを回収して篩目6mmで篩い、篩下から任意にグリーンボールを10個採取して圧壊強度を測定した。
【0065】
図2は、焼結原料の一部に添加する粉体とグリーンボールの圧壊強度の関係を示す図である。粉体を添加しなかった従来例1では、圧壊強度は1.0Nであったが、本発明例1では、−10μm率が20mass%である酸洗スラッジを添加し、圧壊強度は1.5Nになった。本発明例2では、−10μm率が100mass%である破砕した酸洗スラッジを添加し、さらに圧壊強度が上昇して3.0Nになった。
【0066】
一方、比較例1では、−10μm率が55mass%ではあるが、T.C.を4.0mass%含有する製鉄ダストAを添加し、圧壊強度は1.0Nになり、比較例2では、−10μm率が18mass%で、T.C.を0.3mass%含有する製鉄ダストBを添加し、圧壊強度は0.9Nになった。この結果から、高強度のグリーンボールを造粒するためには、焼結原料に添加する粉体は、粒子径が10μm以下の比率が20mass%以上であるとともに、T.C.の含有率が4.0mass%未満であることが必要と判明した。
【0067】
次に、本発明例1、本発明例2および比較例1で造粒したグリーンボールを用い、鍋試験を実施した。鍋試験における焼結原料の配合、添加した粉体の−10μm率およびT.C.含有率、並びに造粒系統Aで造粒したグリーンボールの圧壊強度を表4に示す。
【0068】
【表4】

【0069】
表4に示す通り、従来例Aは、ペレットフィード粉鉱を含まないケースである。比較例Aは、従来法Aに対してペレットフィード粉鉱を10mass%含み、比較例Bは比較例Aに生石灰を1.5mass%を添加したケースである。また、本発明例Aは、表1に示した本発明例1のグリーンボールを使用したケースである。本発明例Bは、表1に示した本発明例2のグリーンボールを使用したケースである。比較例Cは、表1に示した比較例1のグリーンボールを使用したケースである。
【0070】
従来例A、比較例Aおよび比較例Bでは、前記図1に示す焼結鉱の製造プロセスフローの造粒系統Bのみを用い、一般的な焼結鉱の製造プロセスにおける造粒工程を模擬した。具体的には、従来例A、比較例Aおよび比較例Bでは、1次ドラムミキサー8および2次ドラムミキサー9を用い、粉鉄鉱石、副原料および炭材を含む焼結原料の全部に水分を添加し、混合、調湿、造粒して擬似粒子とした。
【0071】
本発明例A、本発明例Bおよび比較例Cでは、前記図1に示す焼結鉱の製造プロセスフローの通り、造粒系統Aで焼結原料の一部をグリーンボールに造粒し、造粒系統Bで残りの焼結原料を擬似粒子に造粒した後、造粒系統Aのグリーンボールと造粒系統Bの擬似粒子を混合した。比較例A〜C並びに本発明例AおよびBで使用されたペレットフィード粉鉱の量は、表4に示す通り、全て10mass%とした。また、いずれのケースでも、造粒系統Bで炭材として粉コークスを外数で4〜4.5mass%の割合で焼結原料に添加して造粒した。
【0072】
造粒系統Bで造粒した擬似粒子、またはこれにグリーンボールを混合した擬似粒子を、高さが500mmで内径が300mmの焼結鍋試験装置に装入し、鍋試験に供した。鍋試験では、鍋下圧力を約20kPaとして吸引しながらLPGバーナーにより1分間着火後、鍋下圧力を9.8kPaで一定として焼成を行い、排ガス温度が最高温度に到達してから3分後に吸引を停止し、試験を終了した。
【0073】
試験終了後、焼結ケーキを直ちに鍋試験装置から取り出し、焼結ケーキの温度が室温に低下するまで放冷した。冷却完了後に、製造された焼結ケーキを2mの高さから4回落下させた後に、篩目が5mmの篩により篩ってその篩上の質量を測定し、焼結鉱の生産性を評価する指標として生産率を求めた。ここで、生産率とは、5mmの篩で篩った篩上の質量を、焼結機の有効面積および焼結時間で除した値を意味し、下記式(1)により算出される。なお、鍋試験の場合には、焼結機の有効面積として焼結鍋の横断面積を使用した。
生産率(t/m2/d)=[粒径が5mm以上の焼結鉱の質量(t)/{焼結機の有効面積(m2)×焼結時間(分)}]×60×24 ・・・・(1)
【0074】
図3は、焼結原料の一部を別系統で混合して造粒することなく、焼結原料の全部を混合して造粒した場合のペレットフィード粉鉱の配合率と相対生産率の関係を示す図である。同図における相対生産率は、従来法Aの生産率を100%としたとき、各試験における生産率(t/m2/d)を百分率で表したものである。ペレットフィード粉鉱を10mass%配合した比較例Aでは相対生産率は93%に低下したが、生石灰1.5mass%を配合した比較例Bでは相対生産率が100%まで回復した。
【0075】
図4は、焼結原料の一部に粉体を添加して造粒した場合のグリーンボールの圧壊強度と相対生産率の関係を示す図である。同図における相対生産率は、従来法Aの生産率を100%としたとき、各試験における生産率(t/m2/d)を百分率で表したものである。本発明例Aでは、圧壊強度が1.5Nであるグリーンボールを配合し、相対生産率が102%まで増加した。さらに、圧壊強度が3.0Nであるグリーンボールを配合した本発明例Bでは、相対生産率が108%まで増加した。しかし、比較例Cでは、圧壊強度が1.0Nであるグリーンボールを配合し、相対生産率が93%に低下した。
【0076】
ペレットフィード粉鉱を配合した本発明例Aおよび本発明例Bで、ペレットフィード粉鉱を配合しなかった従来例Aより生産率が向上したのは、造粒系統Aで製造した高強度のグリーンボールを添加することにより、焼成する際に充填層の通気性が確保され、焼成速度が上昇したためである。一方、同様にペレットフィード粉鉱を配合した比較例Cで相対生産率が93%と従来例Aより低下したのは、圧壊強度の低いグリーンボールが焼成する際に崩壊して空隙を埋めてしまい、通気性が阻害された部分が発生して焼成が不均一になったためである。
【0077】
この結果から、グリーンボールの強度を安価に向上させることにより、従来は造粒が困難であることから焼結鉱の生産率を低下させていたペレットフィード粉鉱の使用量を増加させる場合には、焼結鉱の生産率をペレットフィード粉鉱を配合しない従来例Aよりも向上させるため、グリーンボールの圧壊強度を1.5N以上にするのが好ましいと判断される。
【0078】
以上の試験結果より、本発明の焼結鉱の造粒方法により、焼結原料の一部を造粒する際に、粒子径が10μm以下の比率が20mass%以上であって、T.C.を3.5質量%以下含有する粉体を添加し、粒子径が5mm以上のグリーンボールに造粒し、別系統で焼結原料の残りを造粒して擬似粒子にした後、グリーンボールと焼結原料の残りを造粒した擬似粒子を混合し、焼結鉱を製造すれば、焼結鉱の生産率を向上できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の焼結原料の造粒方法は、焼結原料の一部を造粒して擬似粒子とする際に、粒子径が10μm以下である極微粉を含有する粉体を添加し、粒子径が5mm以上である擬似粒子に造粒することにより、焼結原料の一部を造粒した擬似粒子が高強度となり、焼結原料における微粉比率が増加した場合でも、焼結機のパレット上に装入した際に充填層の通気性を確保し、焼結鉱の生産性を安価に向上させることができる。
【0080】
焼結鉱の製造に本発明の焼結原料の造粒方法を適用すれば、焼結原料に難造粒性であるペレットフィード粉鉱を配合した場合でも、高品位な焼結鉱を安価に製造することができるので、高炉で使用される焼結鉱の製造に極めて有用な技術である。
【符号の説明】
【0081】
1a:粉鉄鉱石、 1b:残りの粉鉄鉱石、 2a:副原料、
2b:残りの副原料、 3a:炭材、 3b:残りの炭材、 4:水分、
5:粉体、 6:高速攪拌ミキサー、 7:パンペレタイザー、
8:1次ドラムミキサー、 9:2次ドラムミキサー、 10:サージホッパー、
11:焼結機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉鉄鉱石、副原料および炭材を含む焼結原料の一部を造粒して擬似粒子とし、別系統で焼結原料の残りを造粒して擬似粒子とした後、前記焼結原料の一部を造粒した擬似粒子と前記焼結原料の残りを造粒した擬似粒子を混合する焼結原料の造粒方法であって、
前記焼結原料の一部を造粒して擬似粒子とするに際し、T.C.(全炭素)を3.5質量%以下、T.Fe(全鉄)を67.5質量%以上含有し、粒子径が10μm以下の比率が20質量%以上である粉体を添加し、粒子径が5mm以上の擬似粒子に造粒することを特徴とする、焼結原料の造粒方法。
【請求項2】
前記焼結原料の一部に含まれる粉鉄鉱石の内、少なくとも一つの銘柄をT.Feが60質量%以上含有し、粒子径が0.25mm以下の比率が80質量%以上である粉鉄鉱石とし、該粉鉄鉱石が焼結原料の全部における粉鉄鉱石および副原料の合計量に占める割合を10質量%以上とすることを特徴とする、請求項1に記載の焼結原料の造粒方法。
【請求項3】
前記粉体として、鋼板塩酸酸洗廃液を焙焼して得られる粉状酸化鉄を用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の焼結原料の造粒方法。
【請求項4】
前記鋼板塩酸酸洗廃液から得られる粉状酸化鉄が、脱塩素処理されたものであることを特徴とする、請求項3に記載の焼結原料の造粒方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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