説明

照光シート構造体及び操作スイッチ

【課題】照光シートの配置面の性状に拘わらず、導光される光が減衰され難く、所定の放射面領域で強い光を放射させ易い照光シート構造体を提供する。
【解決手段】光源13からの光がシート状の内部を通して導かれて、一方の表面に設けられた所定の放射面領域15から放射される照光シート10と、照光シート10の他方の表面が接触して配置される基体11とを備えた照光シート構造体であり、照光シート10は、光が導かれるシート状のコア層21を備えると共に、コア層の基体11側の面が、コア層21より低い屈折率を有するクラッド層23により被覆されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源からの光を導いて所定の放射面領域から放射する照光シートを備えた照光シート構造体と、この照光シート構造体を用いた操作スイッチとに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源からの光をシート状の内部を通して導き、表面の所定の放射面領域で放射させるように構成された照光シートが種々の分野で提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、導光板内に広がる光の一部を表面側に反射させるための反射パターンが少なくとも一つ設けられたキーパッドが提案されている。ここでは、反射パターンが局部的に設けられているため、一部の表面から光を放射させることが可能となっている。この特許文献1では、導光板内を進む光が外部の空気層との境界で全反射されることで、反射パターン以外の部分で光が外部へ放射され難くなっている。
【0004】
このキーパッドを用いてキーパッドアセンブリを構成するには、ドーム部を備えたスイッチ基板上に導光板を積層し、ドーム部上に反射パターンを配置すると共に、ドーム部に対向する位置にキーボタンを配置する。このキーパッド装置では、導光板により導光された光が反射パターンで乱反射して放射されることで、キーボタンを背面側から照光することができる。
【特許文献1】特開2006−323843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のキーパッドアセンブリ等の構造体では、導光板等の光を導光する層が、基板やドーム等の配置面に直接接触した状態で配置されていた。そのため、配置面に段差、突起等の凹凸や粗面等が存在したり、接着剤等が付着しているような場合、その部位で導光される光の乱反射や吸収が生じて、光が減衰され易く、所定の放射面領域から放射される光が弱くなり易かった。
【0006】
そこで、この発明では、照光シートの配置面の性状に拘わらず、導光される光が減衰され難く、所定の放射面領域で強い光を放射させ易い照光シート構造体を提供することを課題とし、そのような照光シート構造体を用いた操作スイッチを提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の照光シート構造体は、光源からの光がシート状の内部を通して導かれて、一方の表面に設けられた所定の放射面領域から放射される照光シートと、該照光シートの他方の表面が接触して配置される基体とを備えた照光シート構造体において、前記照光シートは、前記光が導かれるシート状のコア層を備えると共に、前記コア層の前記基体側の面が、前記コア層より低い屈折率を有するクラッド層により被覆されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の照光シート構造体は、請求項1に記載の構成に加え、前記コア層の前記基体側とは反対の面が前記クラッド層により被覆されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の照光シート構造体は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記コア層の前記クラッド層により被覆される面が鏡面からなることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の照光シート構造体は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記放射面領域の前記コア層に、該コア層内で導かれた光を乱反射させるための乱反射部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の照光シート構造体は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記照光シートが接触して配置されると共に、該放射面領域の前記コア層と前記クラッド層との界面は、前記凹凸部に対応した凹凸形状を有していることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の照光シート構造体は、請求項1乃至5の何れか一つに記載の構成に加え、前記照光シートが接触して配置される前記基体の配置面は、表面形状変化部を有し、前記クラッド層の厚さは、前記表面形状変化部より厚く形成されると共に、前記表面形状変化部の形状に略対応して変化することで、前記クラッド層とコア層との間の界面が前記表面形状変化部の表面形状より平坦に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の操作スイッチは、表面側から押圧操作が行われる表面操作部と、該表面操作部と対向配置された前記請求項1乃至6の何れか一つに記載された照光シート構造体と、前記照光シートに光を供給する光源とを備えた操作スイッチであり、前記表面操作部は、前記照光シートの前記放射面領域に対応する位置に、前記放射面領域からの光が透過して表面側から視認されるように構成された透光表示部を有し、前記基体部は、前記照光シートの前記放射面領域に対応する位置に、弾性変形可能な中空立体形状を有する弾性ドームが突設され、前記照光シートは、前記基体部の表面に沿って配置され、前記表面操作部に前記押圧操作が行われることにより、前記照光シートの前記放射面領域を介して前記弾性ドームが押圧されて弾性変形するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の照光シート構造体によれば、照光シートの光が導かれるコア層の基体側の面がクラッド層により被覆されているので、コア層が基体の表面や基体上に配置される各種部材に直接接触することがない。また、クラッド層がコア層より低い屈折率を有するので、コア層内を進む光がクラッド層との間の界面で反射されつつ導かれる。そのため、基体や基体上に配置される部材の配置面に、光が乱反射されたり吸収され易い部位が存在していても、コア層内を進む光が乱反射や吸収により減衰され難い。その結果、基体の配置面の性状に拘わらず、所定の放射面領域で強い光を放射させ易い照光シート構造体を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の照光シート構造体によれば、コア層の基体側とは反対の面もクラッド層により被覆されているので、コア層の表面に傷が発生したり、塵埃等が付着することを防止でき、コア層の基体側とは反対の面で光が乱反射や吸収により減衰されることを防止できる。
【0016】
請求項3に記載の照光シート構造体によれば、コア層のクラッド層により被覆される面が鏡面からなるので、コア層内を進む光がクラッド層との界面でより反射され易く、光がより減衰され難くできる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、放射面領域のコア層に、光を乱反射させるための乱反射部が設けられているので、コア層内で導かれた光を放射面領域から確実に放射させ易い。
【0018】
請求項5に記載の照光シート構造体によれば、照光シートが接触して配置される基体の配置面が平坦部と凹凸部を有し、放射面領域が凹凸部に配置され、放射面領域のコア層とクラッド層との界面が凹凸部に対応した凹凸形状を有しているので、放射面領域ではコア層内を反射しつつ進む光のクラッド層との界面に対する入射角を、平坦部に配置された部位と異ならせることができる。そのため、コア層から光を放射し易くでき、放射面領域から放射される光を強くし易い。
【0019】
請求項6に記載の照光シート構造体によれば、基体の配置面に表面形状変化部を有し、クラッド層の厚さが表面形状変化部より厚く形成されると共に、その厚さが表面形状変化部の形状に略対応して変化することで、クラッド層とコア層との間の界面を表面形状変化部の表面形状より平坦に形成されているので、コア層内を反射しつつ進む光のクラッド層との界面に対する入射角が、表面形状変化部に対応する位置で大きく変化し難い。そのため表面形状変化部に対応する位置でコア層から光が放射されることを防止し易く、導光される光の減衰を防止し易い。
【0020】
請求項7に記載の操作スイッチによれば、照光シート構造体が請求項1乃至6の何れか一つに記載されたものであるので、基体の配置面の性状に拘わらず、放射面領域以外の領域における光の減衰を抑えて、放射面領域で強い光を放射させ易い。しかも、基体部に弾性ドームが突設されており、照光シートの放射面領域が弾性ドームに沿って配置されるので、放射面領域でコア層から光を放射し易くでき、放射される光をより強くし易い。そのため、光源からの光を効率よく透光表示部から放射させることができ、光源の数や光量を抑えて効率のよい操作スイッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[実施の形態1]
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【0023】
図1乃至図3は、実施の形態1の照光シート構造体を示す。この照光シート構造体は、各種の表示体のバックライト等に使用されるもので、図示しない表示部の背面側に配置されて所定位置を背面側から照射して、表面側に透過された光を視認させるように使用するものである。
【0024】
この実施の形態1では、図1及び図2に示すように、一方の表面の所定位置に設けられた放射面領域15から光を放射可能な照光シート10と、照光シート10の他方の表面が接触して配置される支持基体11とを備え、支持基体11上に設けられたLED等の光源13からの光を照光シート10に面方向に供給することで、複数の位置に設けられた放射面領域15から光を放射させるように使用されるものである。
【0025】
照光シート10は、図3に示すように、光が内部で導光されるためのシート状のコア層21と、このコア層21の両面を覆うクラッド層22、23とを備え、コア層21とクラッド層22、23とがそれぞれ密着して一体に接合されている。この照光シート10は、支持基体11の配置面11aに沿って配置可能な可撓性を有しており、コア層21の支持基体11側ではクラッド層23の全面が支持基体11の配置面11aに密着している。
【0026】
放射面領域15では、コア層21のクラッド層22側の表面に微細な凹凸からなる粗面21aが形成されることにより、コア層21内で導かれた光を乱反射させるための乱反射部25が設けられている。
【0027】
放射面領域15とは異なる光源13の配置位置には、光源配置孔29が設けられており、LED等の光源13が内部に収容されている。この光源13の配置位置周辺では、クラッド層22の表面に光源13からの光を遮光する遮光層27が設けられている。
【0028】
照光シート10のコア層21は、透明性を有し、光を面方向に透過させて導光する層である。このコア層21は、可視光領域の光の透過率が80%以上の層であることが好ましい。透過率が高い程、導光される光の減衰を抑えることができるからである。
【0029】
コア層21の屈折率は、高い程好ましく、例えば1.3以上とするのが好適である。後述するクラッド層22、23として使用可能な材料の選択の幅を広げられるからである。
【0030】
コア層21を構成する材料としては、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂やエラストマーなどを使用することができる。
【0031】
コア層21の厚さは、コア層21の用途等に応じて適宜選択することができるが、放射面領域15において所望の輝度が確保できる範囲で出来るだけ薄肉に形成されることが好ましい。但し、光源13と対向して光源13からの光が入射される入射面の面積は、光源13の対向する側の光の放射面の面積の少なくとも50%以上とする必要がある。
【0032】
コア層21の支持基体11側であるクラッド層23側の表面は全面で鏡面に形成されていることが好ましく、クラッド層22側の表面も放射面領域15を除いて鏡面に形成されていることが好ましい。鏡面であれば、コア層21内で導光される光がコア層21とクラッド層22、23との界面で乱反射して、放射面領域15以外の領域でコア層21から放射されることを抑制でき、導光性能を向上させ易いからである。
【0033】
この鏡面とは、表面粗さが小さく抑えられている状態である。鏡面は、例えば成形型を用いて成形する場合には、型面の表面粗さを小さく抑えることにより作製することが可能である。この型面の表面粗さとしては、例えば、三次元形状測定装置等により測定される算術平均粗さ(Ra)が0.01〜0.5μmの範囲となるものが好適である。
【0034】
放射面領域15でコア層21のクラッド層22側の表面に形成された粗面21aは、コア層21内を導光された光が乱反射してコア層21の表面から放射可能な範囲であればよく、例えば、コア層21の鏡面を成形型により成形する場合、型面の表面粗さとしては、三次元形状測定装置等により測定される算術平均粗さ(Ra)が1.0μm以上であれば好ましい。
【0035】
一方、照光シート10のクラッド層22、23は、コア層21内を進む光が、コア層21との間の界面で反射されながらコア層21内を導光されるようにするための層である。
【0036】
このクラッド層22、23は、少なくともコア層21の屈折率より小さいことが必要であり、コア層21の屈折率に対して0.1%以上小さくなることが好ましく、特に、1%以上小さくすることが好適である。クラッド層22、23の屈折率が大きい程、コア層21内を導光される光の全反射の条件が狭くなり、導光性能が低下するからである。
【0037】
このクラッド層22、23は、コア層21より透明度が低いものであってもよい。コア層21の表面が鏡面であるため、コア層21内で導かれる光はクラッド層22、23との界面で十分に反射でき、導光される光の反射条件に対する影響が小さいからである。
【0038】
透明性を有するクラッド層22の場合、コア層21内から漏れた光がクラッド層22の一部或いは全体から微弱な光として放射されることがある。その場合、漏れた光を意図的に放射させて意匠性を付与してもよく、また、クラッド層22の外側表面の少なくとも放射面領域15を除く一部或いは全部に、漏れた光を反射させるための金属等の反射被膜や遮光被膜を設けて遮蔽してもよい。反射被膜を設けると、コア層21から漏れた光を再度コア層21に供給することができる。
【0039】
クラッド層22、23を構成する材料としては、接着剤等の他の材料を介在させることなくコア層21と積層一体化できる材料であることが要求される。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂や他の樹脂、エラストマーなどを使用することができる。シリカ等のように多孔質空間内に空気を保持することで見かけの屈折率を小さくできる材料であってもよい。
【0040】
表示体側のクラッド層22の厚さは、コア層21の鏡面に外部から傷等の損傷を防止できる保護機能を確保できる範囲で、出来るだけ薄肉に形成されることが好ましい。クラッド層22はコア層21との界面においてコア層21内で導光される光を反射させるために使用される層であるため、厚さの影響が少ないからである。
【0041】
一方、支持基体11側のクラッド層23の厚さは、支持基体11の配置面11aに形成された表面形状変化部11b、例えば配置面11aに意図的或いは不可避に形成された粗面、突起、若しくは段差、更には配置面11a上に形成された回路や被膜などにおいて、支持基板11の面と直交する方向の高さの変化を出来るだけ吸収可能な厚さとするのが好ましい。例えば、支持基体11の配置面11aに形成される表面形状変化部11bより厚肉に形成してもよい。具体的には、支持基体11がプリント基板の場合、配設される回路表面と基板表面との間の距離より肉厚に形成してもよい。
【0042】
その場合、少なくとも放射面領域15以外の領域においては、クラッド層23の厚さが表面形状変化部11bの形状に略対応して変化することで、クラッド層23とコア層21との間の界面が、表面形状変化部11bの表面形状より平坦に形成されることが好ましい。このようにすれば、コア層21内を反射しつつ進む光のクラッド層23との界面に対する入射角が、表面形状変化部11bの位置で大きく変化することを防止し易く、放射面領域15以外の領域でコア層21から光が放射され難くすることが可能である。
【0043】
なお、これらのクラッド層22、23は、この実施の形態1では、それぞれ全面に渡りコア層21の表面を密着した状態で被覆することが好ましい。コア層21と各クラッド層22,23とが密着せずに隣接した状態で配置されていると、部分的に間に空気層が介在した部分と、コア層21とクラッド層22とが密着した部分とが生じる。すると、クラッド層22、23と空気層との屈折率が異なるため、コア層21内で導かれる光の反射条件が部分的に異なり、その結果、照光シート10の全体で外部に放射される光にムラが生じ易く、放射面領域15以外の領域において、部分的に光が漏洩し易くなるからである。
【0044】
また、照光される表示体が表示体側のクラッド層22と離間して配置されている場合には、クラッド層22の表面はコア層21の表面より粗面であることが好ましい。鏡面に形成されていると、塵埃等の付着が生じ易くなるからである。このクラッド層22の露出される表面を成形型を用いて成形する場合には、型面の表面粗さとしては、例えば、三次元形状測定装置等により測定される算術平均粗さ(Ra)が1.0μmより大きいことが好適である。
【0045】
一方、支持基体11側のクラッド層23の表面は、支持基体11の配置面11aに安定に配置可能であればよく、クラッド層23の表面と配置面11aとの間に間隙が形成されてもよい。また、クラッド層23の表面と配置面11aとの間に接着剤や粘着テープ等が介在されていてもよい。
【0046】
次に、この照光シート10の遮光層27は、光源13からの光がクラッド層22を透過して直接外部に放射されることを防止する層である。
【0047】
この遮光層27は光を確実に遮光できる不透明な層からなり、クラッド層22と共に変形可能なものが好適である。また、遮光層27は不透明であると共に反射効果を備えたものであってもよい。この遮光層27はクラッド層22に印刷等により直接接合されていてもよいが、接着剤や両面粘着テープ等の他の層を介して接合されていてもよい。コア層21に直接接触しないため、コア層21内で導光される光に対する影響がないからである。
【0048】
このような遮光層27としては、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂やエラストマー、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属などを使用することができる。なお、上述のように、クラッド層22から微弱な光として放射されることを防止するために、遮光被膜や反射被膜を設ける場合には、その被膜を遮光層27として用いてもよい。この遮光層27の厚さは、十分な遮光性が得られる範囲で、出来るだけ薄肉に形成されるのが好ましい。
【0049】
この遮光層27は、光源13の直上及びその周囲に配置されるものであって、放射面領域15には存在させないことが要求される。遮光層27の配置される範囲は、光源13からコア層21に供給された光がコア層21とクラッド層22との界面に達した際、略全反射可能となるような入射角となるまでの範囲を覆うように配置されることが好ましい。
【0050】
このような構成を有する照光シート10を製造するには、例えば、予めコア層21を構成可能なコア層形成用シート材を、表面の所定位置に粗面21aを設けると共に残部を鏡面となるようにして作製し、このコア層形成用の鏡面からなる表面にクラッド層22、23を形成可能なペースト等を一方面毎に塗布及び硬化させることで製造することができる。
【0051】
また、コア層21と対向する面の所定位置に粗面を形成して残部を鏡面に形成したクラッド層形成用シートを予め一対作製し、このクラッド層形成用シート間にコア層21を形成可能なペースト等を塗布し、硬化させることで製造してもよい。
【0052】
このような照光シート10では、支持基体11上に配置した状態で、光源13を発光させることで、表面の放射面領域15から光を放射させることができる。
【0053】
ここでは、まず、光源13が発光すると、光がコア層21の光源配置孔29内で点光源から四方に放射され、コア層21及びクラッド層22、23に供給されて入射される。コア層21の面方向に対して大きく交差する方向で入射した光は、コア層21及びクラッド層22、23を透過し、遮光層27に達して遮光される。コア層21の面方向に沿って入射された光は、クラッド層22、23により反射されながらシート状のコア層21の内部を通して導かれる。そして、その光のうちコア層21の乱反射部25に達した光は、粗面により乱反射されることで、クラッド層22を通して放射面領域15から外部に放射される。残部の光は、更にコア層21内を導光され、他の乱反射部25から同様にして外部に放射される。
【0054】
以上のような照光シート構造体によれば、照光シート10の光が導かれるコア層21の支持基体11側の面がクラッド層23により被覆されているので、コア層21が支持基体11の表面や支持基体11上に配置される各種部材に直接接触することがない。また、クラッド層23がコア層21より低い屈折率を有するので、コア層21内を進む光がクラッド層23との間の界面で反射されつつ導かれることができる。そのため、支持基体11や支持基体11上に配置される各種部材の表面の配置面11aに、粗面や凹凸等の光が乱反射され易い表面形状変化部11bや光が吸収され易い部位が存在していても、コア層21内を進む光が乱反射や吸収され難く、導光される光が減衰され難い。その結果、配置面11aの表面性状に拘わらず、所定の放射面領域15で強い光を放射させることができる。
【0055】
また、この照光シート構造体によれば、コア層21の支持基体11側とは反対の表示体側の面がクラッド層22により被覆されているので、コア層21の表面に傷が発生したり、塵埃等が付着することを防止でき、コア層21の表示体側の面で、乱反射が生じて導光性能が低下することを防止し易い。
【0056】
しかも、コア層21のクラッド層22、23により被覆される面が鏡面からなるので、コア層21内を進む光がクラッド層22、23との界面でより反射され易く、光がより減衰され難くできる。
【0057】
また、放射面領域15のコア層21に、光を乱反射させるための乱反射部25が設けられているので、コア層21内で導かれた光を放射面領域15から確実に放射させることが可能である。
【0058】
なお、上記実施の形態1は、この発明の範囲において適宜変更可能である。例えば、上記実施の形態1では、コア層21の光を照射する側となる表示体側の表面に、クラッド層22を設けた例について説明したが、コア層21の表示体側にクラッド層22を設けることなく、コア層21の表面を露出させてもよい。この場合、コア層21の表面が空気層と接することになり、空気層との界面においてコア層21内を進む光が反射されつつ導光されることが可能である。
【0059】
また、上記では、乱反射部25はコア層21のクラッド層22側の表面に形成された粗面21aにより構成したが、コア層21内で導光された光を乱反射させる構成であれば特に限定されるものではない。例えば、コア層21側の表面に形成された粗面であってもよく、コア層21に設けた貫通孔や、コア層21内にフィラーや微粒子等の光分散材を含有させて構成することも可能である。更に、放射面領域15のコア層21内に蓄光材料や燐光材料を含有させることも可能である。
[実施の形態2]
【0060】
図4及び図5は、実施の形態2を示している。
【0061】
この実施の形態2では、実施の形態1の照光シート構造体を操作スイッチとしての携帯電話に使用した例である。
【0062】
この携帯電話は、図4及び図5に示すように、開口部30aを有する筐体30と、筐体30の開口部30aに配置された操作スイッチ用カバー部材としての操作パネル31と、筐体30の内部に操作パネル31と離間して対向配設された基体部32と、基体部32上に配置された照光シート10とを備え、照光シート10及び基体部32からなる照光シート構造体により操作パネル31を背面側から照射可能に構成されている。
【0063】
操作パネル31には、表面側からスイッチ操作としての押圧操作が行われる押圧操作部35が縦横に複数配列して設けられている。また、基体部32には基板33が設けられ、この基板33の操作パネル31の全押圧操作部35と対向する各位置に、図示しない回路と接続されて互いに離間して配置された接点端子37が設けられており、各押圧操作部35と基板33との間には、接点端子37間を離接すると共に押圧操作時の操作感を付与するための凹凸部としての押圧変形部39が設けらている。
【0064】
操作パネル31は、押圧操作部35の操作面31aを有する表面操作部としてのキーシート41と、押圧操作部35への押圧操作で押圧変形部39を押圧可能なプランジャシート43とが、筐体30の開口部30aの外側から順に積層されて、接着剤、両面粘着シート等により接合されている。
【0065】
操作パネル31のキーシート41は、ポリカーボネート、PET等の光を透過可能であると共に弾性変形可能な樹脂により平板状に形成された硬質樹脂シートなどからなる。この実施形態では、キーシート41は、操作パネル31の形状を保持できると共に押圧操作が可能な程度の強度を有している。
【0066】
キーシート41には、筐体30の開口部30aから露出される面に押圧操作部35の操作面31aが設けられており、この操作面31aとは反対側の面に、光を遮断可能な印刷層からなる遮光層41aが設けられている。押圧操作部35等の所定位置には、文字、線図等の各種の形状で遮光層41aを抜くことで、即ち、遮光層41aを存在させないことで、光が透過可能な透光表示部45が形成されている。
【0067】
この透光表示部45は、照光シート10の放射面領域15に対応する位置に配置されており、透光表示部45を透過した光が操作パネル31の表面側から視認されるようになっている。ここでは、透光表示部45に有色の透光性加飾印刷層が設けられており、透光する光が着色されるようになっている。
【0068】
操作パネル31のプランジャシート43は、キーシート41の複数位置の押圧操作部35を含む大きさの平坦なシート形状部43bと、このシート形状部43bの押圧変形部39と対向する面の押圧操作部35に対応する位置にそれぞれ突設された複数のプランジャ部43aとを備えている。
【0069】
このプランジャシート43は、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルの単体若しくはそれらの複合物、シリコーンゴム等から成形されている。シート形状部43bは、操作パネル31を薄肉に形成するために、より薄肉に形成されており、また、キーシート41の弾性変形を阻害し難くするために、キーシート41より大幅に軟質に形成している。このプランジャシート43は、弾性変形を容易にするため、切れ込み(スリット)を設けていてもよい。
【0070】
一方、基体部32の基板33は、硬質のプリント基板やフレキシブルプリント基板等からなり、筐体30に固定して装着されている。この基板33には、図示しない多数の回路が設けられており、接点端子37が押圧操作部35に対応する位置に設けられている。
【0071】
また、基板33の操作パネル31側に設けられた凹凸部としての押圧変形部39は、押圧操作部35及び照光シート10の放射面領域15に対応する位置毎に、弾性変形可能な中空立体形状を有する弾性ドームとしてのメタルドーム47を備えている。メタルドーム47は基板33上に操作パネル31側に向けて凸となるように配置されている。
【0072】
このメタルドーム47は、周縁で接点端子37の一方に常時接触し、中央部で他方の接点端子37と離間した状態で配置され、プランジャ部43aで押圧されることにより、メタルドーム47により接点端子37間が接続されるように構成されている。
【0073】
そして、照光シート10は、メタルドーム47の上面及び基板33上面に沿って配置され、それぞれに密着して固定されている。
【0074】
この状態で照光シート10の放射面領域15がメタルドーム47上に配置されており、コア層21の乱反射部25が操作パネル31の押圧操作部35に対応する位置に配置されている。更に、プランジャシート43のプランジャ部43aの先端が放射面領域15のクラッド層22の一部に当接している。
【0075】
そのため、押圧操作部35が押圧されて変位することで、メタルドーム47と共に照光シート10の放射面領域15が、面と交差する方向に繰り返し変形されて基板33側に変位される構成となっている。
【0076】
このような携帯電話では、基板33に固定された図示しない光源13が発光して、光がコア層21により導光されると、メタルドーム47上の放射面領域15においてコア層21の乱反射部25により乱反射されてクラッド層22の表面から光が放射される。この光により、操作パネル31の押圧操作部35を背面側から、プランジャシート43を透過して透光表示部45が照射される。そして、透光表示部45を透過した光がキーシート41の表面側から視認される。
【0077】
また、押圧操作を行うには、操作パネル31の複数の押圧操作部35の一部をキーシート41の操作面31a側から押圧する。すると、操作パネル31がキーシート41の弾性により弾性変形し、プランジャシート43のプランジャ部43aが下降し、プランジャ部43aにより押圧変形部39が押圧される。そして、照光シート10を介してメタルドーム47が押圧され、照光シート10と共にメタルドーム47が弾性変形され、クリック動作感が得られた状態で、メタルドーム47により接点端子37間が導通され、各種の処理が実行される。
【0078】
以上のような携帯電話によれば、照光シート10及び基体部32からなる照光シート構造体により実施の形態1と同様の作用効果が得られ、基体部32の配置面32aに、粗面や凹凸等などが存在していても、その表面性状に拘わらず、コア層21内で導かれる光が所定の放射面領域15以外の領域で減衰され難くて、所定の放射面領域15で強い光を放射させることができる。
【0079】
しかも、照光シート10の放射面領域15と基板33との間にメタルドーム47が突設されており、照光シート10の放射面領域15がメタルドーム47に沿って配置されているので、放射面領域15でコア層21から光を放射させ易くできる。
【0080】
ここでは、照光シート10の配置面32aが基板33表面からなる平坦部と押圧変形部39のメタルドーム47表面からなる凹凸部とを有しており、照光シート10の放射面領域15が凹凸部に配置されている。そして、この放射面領域15におけるコア層21とクラッド層22、23との境界は、メタルドーム47の表面の形状に対応した凹凸形状を有している。そのため、放射面領域15では、コア層21内を反射しつつ進む光のクラッド層22、23との界面に対する入射角を、平坦部に配置された部位と異ならせることができ、これにより、放射面領域15でコア層21から光を放射させ易くできる。
【0081】
その結果、光源からの光を効率よく透光表示部45から放射させることができ、光源の数や光量を抑えて効率のよい操作スイッチが得られる。
【0082】
なお、上記実施の形態2では、キーシート41として、硬質樹脂シートからなる例について説明したが、例えば、ステンレス鋼等の金属からなる平板状の薄肉シートに、透光表示部45として貫通孔を設け、この貫通孔に透光性樹脂を封入したような複合材料製のシートなど、他の材料からなるものであってもよい。
[実施の形態3]
【0083】
図6及び図7はこの実施の形態3を示す。この実施の形態3は、実施の形態2とは異なる照光シート構造体を操作スイッチとしての携帯電話に使用した例である。
【0084】
ここでは、実施の形態2に比べ、操作パネル31は設けられておらず、代わりに、プランジャシート43上に複数の押し釦49が接合された押し釦シート51が設けられている。この押し釦シート51は上面側から硬質の筐体30により覆われており、各押し釦49は筐体30に多数設けられた釦用開口部30bから押圧操作面51aが露出した状態でそれぞれ押圧可能に配置されている。各押し釦49にはフランジ部49aが設けられ、このフランジ部49aが釦用開口部30bの基体部32側に設けられた拡径部30c内に収容されている。また、押し釦シート51は上面側から筐体30で支持された状態となっている。
【0085】
更に、メタルドーム47が、照光シート10とは別にメタルドーム固定シート48により基板33に固定されている。このメタルドーム固定シート48は、可撓性を有する樹脂フィルムからなり、複数のメタルドーム47を凸面側から基板33と共に連続して密着して覆うことで、各メタルドーム47を固定するものである。このメタルドーム固定シート48は、各メタルドーム47の頂部周囲に対応する位置に開口部48aが設けられており、各メタルドーム47の頂部を露出させている。
【0086】
そして、照光シート10は、押し釦シート51側にクラッド層22が設けられておらず、コア層21の表面が直接露出されている。この場合、クラッド層22より屈折率の小さい空気層にコア層21の表面が接しているため、コア層21内を導光される光はコア層21と空気層との界面とコア層21とクラッド層23との界面とで反射されつつ、導光される。
【0087】
なお、コア層21の乱反射部25は、押し釦49の押圧操作部35に対応する位置に配置されている。
【0088】
その他は、実施の形態2と同様である。
【0089】
このような構成であっても、実施の形態2と同様の作用効果が得られ、例えば、基体部32の配置面32aに、粗面や凹凸等などが存在していても、その表面性状に拘わらず、コア層21内で導かれる光が所定の放射面領域15以外の領域で放射され難くできる。
【0090】
ところで、この実施の形態3では、照光シート10のクラッド層23は、基板33及びメタルドーム47を連続的に覆うメタルドーム固定シート48の表面に接触して配置されている。このような場合であっても、クラッド層23が存在することで、メタルドーム固定シート48の表面粗さが粗い場合やメタルドーム固定シート48がコア層21より屈折率が高い材料から形成されている場合であっても、コア層21内を導光する光の導光性能に全く影響を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】この発明の実施の形態1の照光シート構造体の平面図である。
【図2】同実施の形態1の図1のA−A断面図である。
【図3】同実施の形態1の照光シートの図1のB−B断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2の携帯電話の部分平面図である。
【図5】同実施の形態2の図4のC−C断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3の携帯電話の部分平面図である。
【図7】この発明の実施の形態3の図6のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0092】
10 照光シート
11 支持基体
13 光源
15 放射面領域
21 コア層
22、23 クラッド層
25 乱反射部
27 遮光層
30 筐体
31 操作パネル
32 基体部
33 基板
35 押圧操作部
39 押圧変形部
41 キーシート
43 プランジャシート
45 透光表示部
47 メタルドーム
51 押し釦シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光がシート状の内部を通して導かれて、一方の表面に設けられた所定の放射面領域から放射される照光シートと、該照光シートの他方の表面が接触して配置される基体とを備えた照光シート構造体において、
前記照光シートは、前記光が導かれるシート状のコア層を備えると共に、前記コア層の前記基体側の面が、前記コア層より低い屈折率を有するクラッド層により被覆されていることを特徴とする照光シート構造体。
【請求項2】
前記コア層の前記基体側とは反対の面が前記クラッド層により被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の照光シート構造体。
【請求項3】
前記コア層の前記クラッド層により被覆される面が鏡面からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の照光シート構造体。
【請求項4】
前記放射面領域の前記コア層に、該コア層内で導かれた光を乱反射させるための乱反射部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の照光シート構造体。
【請求項5】
前記照光シートが接触して配置される前記基体の配置面は、平坦部と凹凸部とを有し、
前記放射面領域は、前記凹凸部に配置されると共に、該放射面領域の前記コア層と前記クラッド層との界面は、前記凹凸部に対応した凹凸形状を有していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の照光シート構造体。
【請求項6】
前記照光シートが接触して配置される前記基体の配置面は、前記照光シートの表面形状が変化する表面形状変化部を有し、
前記クラッド層の厚さは、前記表面形状変化部より厚く形成されると共に、前記表面形状変化部の表面形状に略対応して変化することで、前記クラッド層と前記コア層との間の界面が前記表面形状変化部の表面形状より平坦に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の照光シート構造体。
【請求項7】
表面側から押圧操作が行われる表面操作部と、該表面操作部と対向配置された前記請求項1乃至6の何れか一つに記載された照光シート構造体と、前記照光シートに光を供給する光源とを備えた操作スイッチであり、
前記表面操作部は、前記照光シートの前記放射面領域に対応する位置に、前記放射面領域からの光が透過して表面側から視認されるように構成された透光表示部を有し、
前記基体部は、前記照光シートの前記放射面領域に対応する位置に、弾性変形可能な中空立体形状を有する弾性ドームが突設され、
前記照光シートは、前記基体部の表面に沿って配置され、
前記表面操作部に前記押圧操作が行われることにより、前記照光シートの前記放射面領域を介して前記弾性ドームが押圧されて弾性変形するように構成されていることを特徴とする操作スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−234863(P2008−234863A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68802(P2007−68802)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】