説明

照明システムに関する光学受信器

本発明は、可視光を受信する光学受信器であって、前記可視光は強度変調信号を含む、光学受信器に関する。当該光学受信器は、前記可視光からの前記強度変調信号をフィルタするように構成される光学強度変調フィルタと、フィルタされた前記強度変調信号を検出するように構成される光検出器と、を含む。本発明は、このような光学受信器を含む照明システムにも関する。光学フィルタは、好ましくは、蛍光層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光を受信する光学受信器に関する。より具体的には、本発明は、可視光における強度変調信号を検出するように構成される光検出器を含む光学受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者が特定の部屋又は空間に関する所望な環境を得るのを可能にするために、高度に発達した照明システムが開発されている。
【0003】
このような照明システムの例は、部屋、ロビー又は自動車などの構造物におけるいくつかの光源の配置である。発光ダイオードを含み得るこのような光源は、1つの又は一群の光源を識別するコードを担持する可視光を発する。光源コードは、光源から発される可視光を変調することによって送信される。このような照明システムにおいて、コードを受信する光学受信器は、例えば、遠隔制御装置に実装される、又は、スイッチ若しくはセンサ装置などの別の装置に埋め込まれる。構造物のカメラ位置にカメラを配置すること、及び、光のスポットの画像を記録することは、個別のコードの識別により、照明パターンへどの光源が寄与しているかの識別を可能にする。スポットは、例えば、床、壁又は天井における照らされる領域であり得る。記録される画像から個別のコードを導出する他に、信号処理装置は、光源位置、光強度又は色点などの、関連付けられる光源の1つ以上の特性をも決定し得る。
【0004】
米国特許出願公報第2007/0008258号は、異なる波長の光をそれぞれ発する多重発光要素を含む送信器を有する発光装置、及び、異なる波長のそれぞれに関する光学信号を受信する多重受光要素を含む受光器を有する端末装置、を含む通信システムを開示する。通信システムは、発光機能を有し、高速信号通信の能力を有する。端末装置は、異なる波長を送信することが可能である波長フィルタを含み、これにより、各受光要素は、異なる波長の光を受信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国特許出願公報第2007/0008258号の通信システムは、発光要素から異なる波長の光を検出するために、受光要素に関して波長フィルタを有する光学受信器を必要とする。
【0006】
従来技術において、複雑性が低減された光学受信器及び照明システムに関する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
可視光を受信する光学受信器であって、前記可視光は強度変調信号を含む、光学受信器が提案される。当該光学受信器は、前記可視光からの前記強度変調信号をフィルタするように構成される光学強度変調フィルタと、フィルタされた前記強度変調信号を検出するように構成される光検出器と、を含む。
【0008】
更に、複数の光源によって可視光を発するように構成される照明システムが提案される。当該照明システムは、前記光源に関する識別コードを供給するために、前記可視光に関して変調信号を生成するように構成される変調器を含む。当該照明システムは、前段に記載の光学受信器を含む。
【0009】
可視光からの強度変調信号をフィルタするように構成される光学強度変調フィルタを適用することによって(すなわち、可視光の強度変調の周波数に基づきフィルタするように調節されたフィルタ)、波長フィルタも異なる波長の光学信号を発する光源も必要とされない。結果的に、複雑性が低減された光学受信器及び照明システムが得られる。
【0010】
光学強度変調フィルタは、(例えば、光学強度変調フィルタに加えて波長フィルタ、又は、特定のスペクトル領域の信号のみに応答する材料組成を有する光学強度変調フィルタ、を用いて)バンドパスフィルタ、すなわち、大幅な若しくは狭いスペクトル領域において可視光を通過させることが可能なフィルタ、又は、ローパス若しくはハイパスフィルタ、すなわち、制限されたスペクトル領域においてのみ光を通過させることが可能なフィルタ、であり得る。
【0011】
照明システムにおけるユーザ相互作用機能に関して、高速通信は望ましくあり得るが、低速通信は、センサ又はスイッチにおける埋込み型装置などの、高速応答が必要とされない装置に関しては十分であり得る。請求項2の実施例は、光検出器が実質的に低周波数強度変調信号を受信する光学受信器を提供する。実施例は、アンチ・アライアシングフィルタなどの、高価な電気的フィルタを必要としない。更に、光学受信器に関する最終的な電気増幅器は、低速、低コストな増幅器であり得る。
【0012】
請求項3の実施例は、光学受信器における光学フィルタの簡単且つ安価な実装を提供する。光学フィルタ層は、多重サブ層を含み得る。
【0013】
請求項4乃至6の実施例は、適切な信号対雑音比率を得るために、特に適した光学フィルタ層、すなわち蛍光層を提供する。蛍光層は、100〜300μmの範囲の厚さを有する。層は、好ましくは、蛍光体材料を含むが、蛍光層に関して他の材料は除外されない。蛍光材料層へ入射する光は、蛍光反応を引き起こさせ、反応の変調励起光は、結果的に、光検出器によって検出され得る。特に、蛍光層は、例えば10Hz又はそれより低い、低強度変調周波数を有する信号に反応することが可能であり得る一方で、層は、より高い周波数強度変調に追従することが一般的に可能でなく、これにより、低周波数強度変調信号の選択的な通過を保証する。層の蛍光時間減衰定数を調節することによって、カットオフ周波数は決定され得る。
【0014】
請求項7の実施例は、フォトダイオードのフォト電流が、受信されるフィルタされた信号の適切な尺度であるという有利な点を有する。
【0015】
請求項8の実施例は、例えばフォトダイオードの直流電流などの、光検出器からの非変調信号が、ハイパスフィルタによって効果的にブロックされるという点において有利である。非変調信号は、光検出器によって受信される環境光から生じる。更に、非変調信号は、例えば、高周波数変調信号などの、光学強度変調フィルタによってブロックされていた高周波数強度変調信号から生じ得る。
【0016】
以下に、本発明の実施例は、更に詳細に説明される。しかし、この実施例は、本発明に関する保護の範囲を制限するように解釈されてはならないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施例に従う構造において導入される照明システムの概略図である。
【図2】図2は、低周波数変調信号を有する、光源からの可視光を提供する実施例の概略図である。
【図3】図3は、本発明の実施例に従う光学受信器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、導入された照明システム2を含む、構造物1(この場合、部屋)を示す。照明システム2は、複数の光源3を含み、これらの光源は、光源3から発される光に光源識別コードを含ませるように構成される符号化器(図2参照)を備えられる。光源3は、例えば、高/低圧ガス放電バルブ、無機/有機発光ダイオード、又はレーザダイオードであり得る。可能であれば、いくつかの光源3が、光モジュール4において組み合わせられ得る。
【0019】
照明システムは、更に、構造物1に配置され、光源3から発される光の照明スポット6の画像を記録することを可能にさせるカメラ5を含む。例えばカメラ5に又は照明システム2のマスタ制御器8に組み込まれる信号処理器7は、記録画像から光源識別コードを導出するように構成される。光源識別コードの決定により、光源3を、それらの照明スポット6のフットプリントと相関化させることは可能である。光効果試運転とも知られるこの相関化を実行することは、ユーザが光学受信器(図3参照)を含む遠隔制御装置9を用いて照明環境を直感的に生成するすることを可能にさせる。遠隔制御装置9は、例えばマスタ制御器8などと、例えば無線RFリンクなどを通じてシステムと相互作用する。
【0020】
図2は、低周波数変調を用いて識別コードを有する可視光を符号化するための実施例の概略図である。符号化器20は、光源3に関する光信号生成器21からの駆動信号を、低速コード信号生成器22からの低速コード信号と、合成器23を用いて合成するように構成される。合成器23からの信号は、低周波数強度変調信号24を有する可視光を得るために、光源3の駆動装置(図示されず)へ供給される。好ましくは、低速コード信号は、10Hzより下でクロックされる。有利には、このことは、光変調が人間の目に対して実用的に不可視であるようにさせる。
【0021】
この低速コードは、例えば、スプレッドスペクトル技術を用いて可視光において実装され得る。このような技術は、「符号分割多重化アクセス」(CDM又はCDMA)として知られる。各光源3へ、又は1つ以上の光源3の各群へ、固有コードは、割り当てられる。コードは、直交であり得る、すなわち、コードの自己相関性の値は、2つの異なるコードの相互相関の値よりも相当高くなければならない。遠隔制御装置9におけるカメラ5又は光学受信器などの感知装置は、この場合、異なる光源3による変調光の同時送信間において区別することが可能であり、これにより、感知装置がこれらの送信のそれぞれを識別し得るようにされる。更に、感知装置は、識別された光源3から受信される変調光の発光特性(強度、色点など)を測定し得る。
【0022】
変調光の各感知された放射に関して、光学受信器は、発している光源3の識別性と測定された発光特性の値と含むデータをマスタ制御器8へ転送する。このようなデータを入手すると、マスタ制御器8は、光源3を制御することが可能であり、感知装置の周囲の領域における所望な光効果を満たすために発される光の色点又は強度を変更させる。
【0023】
図3は、例えば遠隔制御装置9又は別の装置などにおいて実装され得る光学受信器30の概略図を与える。
【0024】
光学受信器30は、強度変調可視光24を受信し、可視光から強度変調信号をフィルタするように構成される光学強度変調フィルタ31を含む。フィルタされた光は、その後、光検出器32によって検出される。
【0025】
光学フィルタ31は、光検出器32に又は光検出器32にわたり塗布される1つ又は複数の層として提供される。層は、100〜300μmの範囲の厚さを有し、蛍光体材料などの蛍光材料を含む。このような層は、識別コードを含む可視光24の低速強度変調に応答し、そして、光検出器32へ関連変調信号を提供することが可能である。光学フィルタ31が応答し得ない(例えば環境光などから生じる)非変調信号又は(例えば、可視光24における高速コード信号など)高周波数強度変調は、光検出器32へ直流信号として転送され得る。
【0026】
光検出器32は、光学強度変調フィルタ31からフィルタされた信号を受信するフォトダイオードを含む。フォトダイオードからのフォト電流は、低コスト増幅器33によって増幅され得る。コンデンサ34は、直流信号が増幅されないことを保証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を受信する光学受信器であって、前記可視光は、強度変調信号を含み、当該光学受信器は、
−前記可視光からの前記強度変調信号をフィルタするように構成される光学強度変調フィルタと、
−フィルタされた前記強度変調信号を検出するように構成される光検出器と、
を含む、光学受信器。
【請求項2】
請求項1に記載の光学受信器であって、前記強度変調信号は、10Hz以下の強度変調周波数を有し、前記光学強度変調フィルタは、10Hzより大きい強度変調周波数をフィルタするように構成される、光学受信器。
【請求項3】
請求項1に記載の光学受信器であって、前記光学強度変調フィルタは、前記光検出器に配置される層を含む、光学受信器。
【請求項4】
請求項3に記載の光学受信器であって、前記層は蛍光層を含む、光学受信器。
【請求項5】
請求項4に記載の光学受信器であって、前記蛍光層は蛍光体材料を含む、光学受信器。
【請求項6】
請求項5に記載の光学受信器であって、前記蛍光層の蛍光時間減衰定数は、前記強度変調信号をフィルタするように調節されている、光学受信器。
【請求項7】
請求項1に記載の光学受信器であって、前記光検出器はフォトダイオードを含む、光学受信器。
【請求項8】
請求項1に記載の光学受信器であって、前記光検出器は、コンデンサなどの、ハイパスフィルタに接続される、光学受信器。
【請求項9】
可視光を発するように構成される複数の光源を含む照明システムであって、当該照明システムは、前記光源の1つ以上に関する識別コードを供給するために、前記可視光に関して強度変調信号を生成するように構成される変調器を含み、当該照明システムは、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学受信器を含む、照明システム。
【請求項10】
請求項9に記載の照明システムであって、前記強度変調信号は10Hz以下の強度変調周波数を有する、照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−523319(P2011−523319A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513093(P2011−513093)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052380
【国際公開番号】WO2009/150587
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】