説明

照明装置およびこれを備えた読取装置

【課題】光源が発する光の利用効率を向上させるとともに迷光の発生を抑制することができ、さらに、迷光が撮像装置に入射することで発生する白飛びを確実に防止することができるようにする。
【解決手段】光源11を保持する基板12と導光体13との間に介在するスペーサー52を備え、このスペーサーは、これを貫通して光源から出射された光を導光体の入射面15に入射させる開口部53を有し、この開口部が、基板側から導光体側に向かって次第に内径が大きくなるテーパー形状に形成されたものとする。特に、スペーサーは、光透過性を有する材料で形成されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の読取面を照明する照明装置およびこれを備えた読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原稿の画像を読み取る読取装置では、原稿の読取面を照明装置で照明して、その反射光をイメージセンサに受光させて画像信号を出力させるようになっている。この読取装置に設けられる照明装置では、従来、蛍光管を用いたものが一般的であったが、近年、省エネルギーなどの観点から、光源にLED素子を用いたものが普及しつつある。
【0003】
このような光源にLED素子を用いた照明装置では、LED素子が点光源となることから、原稿の読取面で均一な照度分布が得られるように工夫する必要があり、例えば、LED素子を導光体を用いて線光源として機能させる技術が知られている(特許文献1参照)。この技術では、小数のLED素子で均一な照度分布を得ることができる。また、LED素子を一方向に複数並べて配置する技術が知られている(特許文献2参照)。ここでは、集光効果のあるレンズ状の樹脂キャップをLED素子に設けて、端部での光量不足を解消することで、均一な照度分布を得るようにしている。
【0004】
また、種類が異なる複数のLED素子、すなわち白色光、赤外光および紫外光をそれぞれ発するLED素子を設けて、それらを用途に応じて使い分けるようにした技術が知られている(特許文献3参照)。ここでは、モニタを用いた操作者の目視による確認などのための通常の用途では白色LED素子を点灯し、パスポートなどで背景画像上に文字が記載された原稿の文字認識を行う場合には赤外LED素子を点灯し、パスポートなどで偽造防止用の蛍光インクで描かれた画像を取得する場合には紫外LED素子を点灯するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−146868号公報
【特許文献2】特開2004−177851号公報
【特許文献3】特開2010−200187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、読取装置では、照明装置から出射された光が、原稿の読取面での反射光の光路を折り曲げるミラーや原稿台などで反射することで迷光となることが避けられないが、この迷光が撮像装置に入射すると、読取画像内に輝度が部分的に高くなる部分が現れる。特に、カメラに入射する迷光の光量が大きくなると、イメージセンサの出力が飽和レベルに達する、いわゆる白飛びが発生し、この白飛びを起こした部分では階調情報が消失するため、画像処理で改善することが難しく、白飛びを防止することができる構成が望まれる。
【0007】
ここで、特許文献3に開示されたように、多数のLED素子を1枚の基板上に配置する構成とすると、工数を削減して製造コストを低減することができるが、この従来技術では、単に照明装置を原稿台に近接して配置しているだけであるため、読取面での照度分布が不均一になる上に、LED素子から出射された光が多方向に放射されることで、LED素子が発する光の利用効率が低下するとともに迷光が発生するという問題が生じる。
【0008】
これに対して、特許文献1に開示されたように導光体を設ける構成や、特許文献2に開示されたような樹脂キャップを設ける構成を、前記のLED素子を基板上に配置した構成に適用すると、読取面での照度分布を改善することができるが、照明装置から出射された光が多方向に放射されることを確実に抑制するものではないため、光の利用効率の低下および迷光の発生の問題を十分に解決することができない。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、光源が発する光の利用効率を向上させるとともに迷光の発生を抑制することができ、さらに、迷光が撮像装置に入射することで発生する白飛びを確実に防止することができるように構成された照明装置およびこれを備えた読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の照明装置は、光源と、この光源を保持する基板と、前記光源から出射された光を所定の方向に導く導光体と、この導光体および前記基板の間に介在する中間支持体と、を備え、この中間支持体は、これを貫通して前記光源から出射された光を前記導光体の入射面に入射させる開口部を有し、この開口部が、前記基板側から前記導光体側に向かって次第に内径が大きくなるテーパー形状に形成された構成とする。
【0011】
また、本発明の読取装置は、前記の照明装置と、原稿が載置される透明な原稿台と、この原稿台を介して前記照明装置により照明された前記原稿の読取面を撮像する撮像装置と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、中間支持体の開口部がテーパー形状をなすため、光源が発する光を集光させることができ、これにより光源が発する光の利用効率を向上させるとともに迷光の発生を抑制することができる。そして、中間支持体は、光を集光する部材と、導光体を基板に支持させる部材とを兼用し、導光体を、基板上の光源と干渉することなく、基板に対して安定に支持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る読取装置1を示す全体斜視図
【図2】読取装置1の要部を示す側面図
【図3】照明装置5の断面図
【図4】照明基板12の正面図
【図5】スペーサー14を照明基板12に取り付けた状態を示す正面図
【図6】スペーサー14および導光体13を照明基板12に取り付けた状態を示す正面図
【図7】スペーサー14を前面側(導光体13側)から見た斜視図
【図8】第1実施形態に係るスペーサー14における光の進行状況を示す模式的な断面図
【図9】第1実施形態に係る読取装置1での迷光の状況を示す側面図
【図10】第2実施形態に係るスペーサーにおける光の進行状況を示す模式的な断面図
【図11】波長に応じた透過率を樹脂別にグラフで示す特性図
【図12】第2実施形態に係る読取装置での迷光の状況を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、光源と、この光源を保持する基板と、前記光源から出射された光を所定の方向に導く導光体と、この導光体および前記基板の間に介在する中間支持体と、を備え、この中間支持体は、これを貫通して前記光源から出射された光を前記導光体の入射面に入射させる開口部を有し、この開口部が、前記基板側から前記導光体側に向かって次第に内径が大きくなるテーパー形状に形成された構成とする。
【0015】
これによると、中間支持体の開口部がテーパー形状をなすため、光源が発する光を集光させることができ、これにより光源が発する光の利用効率を向上させるとともに迷光の発生を抑制することができる。そして、中間支持体は、光を集光する部材と、導光体を基板に支持させる部材とを兼用し、導光体を、基板上の光源と干渉することなく、基板に対して安定に支持させることができる。
【0016】
また、第2の発明は、前記中間支持体は、光透過性を有する材料で形成された構成とする。
【0017】
これによると、開口部の内周面で透過する光の割合を増やして、開口部の内周面で拡散反射する光の割合を大幅に減らすことができる。そして、撮像装置に入射して白飛びを発生させる迷光は、主に拡散反射による散乱光が原因となることから、拡散反射する光の割合を減らすことで、迷光による白飛びを防止することができる。
【0018】
また、第3の発明は、前記中間支持体は、光の透過率が80%以上となる材料で形成された構成とする。
【0019】
これによると、開口部の内周面で拡散反射する光の割合を十分に減らして、迷光による白飛びを確実に防止することができる。
【0020】
この場合、光の透過率は波長に応じて異なるため、用いられる光源が発する光の波長で透過率が80%以上となる材料を選定すればよい。例えば、白色光を発する光源のみの場合には、白色光の透過率が80%以上となる材料を選定すればよい。特に、紫外光を発する光源を含む複数種類の光源を有する場合には、光の透過率が最も低くなる紫外光の透過率を基準にして材料を選定すればよい。
【0021】
また、第4の発明は、前記中間支持体は、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびシクロオレフィン系樹脂のいずれかで形成された構成とする。
【0022】
これによると、光の透過率が最も低くなる紫外光の場合でも、光の透過率が80%以上となるため、紫外光を発する光源を備えた構成でも、迷光による白飛びを確実に防止することができる。
【0023】
また、第5の発明は、前記導光体は、1方向に長い棒状に形成され、前記光源は、前記導光体の長手方向に並んで前記基板上に複数配置され、前記中間支持体は、前記導光体の略全長に渡って延在するように設けられて、前記開口部が、複数の前記光源ごとに開設された構成とする。
【0024】
これによると、複数の光源ごとに集光効率を高めることができる。そして、集光効率を高める部材を複数の光源ごとに設ける構成と比較して、部品点数を削減して製造コストを低減することができる。
【0025】
また、第6の発明は、前記の照明装置と、原稿が載置される透明な原稿台と、この原稿台を介して前記照明装置により照明された前記原稿の読取面を撮像する撮像装置と、を備えた構成とする。
【0026】
これによると、原稿台に原稿を載置するだけで原稿を読み取ることができるため、ユーザの利便性を高めることができ、特にパスポートなどのように複数枚のシートを綴じ合わせてできた原稿(帳票)を読み取る場合に好適である。
【0027】
また、第7の発明は、前記原稿の読取面での反射光を反射して前記撮像装置に導くミラーをさらに備えた構成とする。
【0028】
これによると、原稿の読取面での反射光の光路をミラーで折り曲げることで、読取装置の小型化を図ることができる。一方、ミラーは、白飛びを発生させる迷光の原因となる、すなわち、正規の角度範囲から外れて導光体から出射された光が、ミラーおよび原稿台で反射されることで迷光となり、この迷光が撮像装置に入射することで白飛びが発生するが、中間支持体のテーパー形状の開口部により集光効率が高められることで、正規の角度範囲から外れて出射される光を低減することができるため、撮像装置に入射する迷光の発生を抑制して白飛びを防止することができる。
【0029】
また、第8の発明は、前記撮像装置および前記照明装置は、光透過性を有する材料で形成された前記中間支持体を透過してその側面から外部に放射される光が前記撮像装置の画角内に入らないように配置された構成とする。
【0030】
これによると、中間支持体の側面から外部に漏れる光が直接、撮像装置に入射することを避けることができ、これにより中間支持体の側面から漏れる光で白飛びが発生することを防止することができる。このため、中間支持体を透過する光が側面から漏れることを防止する手段を設ける必要がなく、製造コストを削減することができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る読取装置1を示す全体斜視図である。この読取装置1は、ハウジング2と、パスポートなどの原稿3が載置される原稿台4と、この原稿台4に載置された原稿3の読取面3aを照明する照明装置5と、照明装置5により照明された原稿3の読取面3aを撮像するカメラ(撮像装置)6と、原稿3の読取面3aでの反射光をカメラ6に導くミラー7と、照明装置5およびカメラ6の制御に係る部品が実装されたメイン基板8と、を備えている。
【0033】
図2は、読取装置1の要部を示す側面図である。照明装置5およびカメラ6は、ハウジング2の一方の側壁に近接して配置され、照明装置5の上方にカメラ6が配置されている。原稿台4は透明なガラス板で構成され、ハウジング2の上面に設けられており、この原稿台4の下方にはミラー7が配置されている。ミラー7は、反射面7aをカメラ6側に向けて傾斜した状態で設けられている。カメラ6は、ミラー7に対向するように下方に傾けた状態で設けられている。照明装置5は、原稿台4に対向するように上方に傾けた状態で設けられている。
【0034】
このように構成された読取装置1では、照明装置5から出射された光が原稿台4に入射して、原稿台4に載置された原稿3の読取面3aを照明し、原稿3の読取面3aでの反射光が、ミラー7で反射されてカメラ6に入射する。このように原稿3の読取面3aでの反射光の光路をミラー7で折り曲げることで、読取装置1の小型化を図ることができる。
【0035】
図3は、照明装置5の断面図である。図4は、照明基板12の正面図である。図5は、スペーサー14を照明基板12に取り付けた状態を示す正面図である。図6は、スペーサー14および導光体13を照明基板12に取り付けた状態を示す正面図である。図7は、スペーサー14を前面側(導光体13側)から見た斜視図である。
【0036】
図3に示すように、照明装置5は、LED素子(光源)11と、このLED素子11を保持する照明基板12と、LED素子11から出射された光を所定の方向に導く導光体13と、この導光体13および照明基板12の間に介在するスペーサー(中間支持体)14と、を備えている。
【0037】
導光体13は、図4〜図6に示すように、1方向に長い棒状をなし、長手方向が略水平となるように互いに平行して上下に2つ並べて設けられている。この2つの導光体13は、図2に示したように、原稿台4における照明領域を分担し、原稿台4に近い上側の導光体13が、照明装置5に近い照明領域を担当し、原稿台4から遠い下側の導光体13が、照明装置5から遠い照明領域を担当する。この導光体13は、アクリル樹脂(PMMA)などの光透過性を有する樹脂材料で形成されている。
【0038】
また、導光体13は、図3に示したように、LED素子11に対向する側に入射面15を有し、入射面15と相反する側に出射面16を有している。入射面15は、LED素子11の光軸に対して直交する平面状に形成されている。なお、ここでは図示しないが、入射面15にはプリズムが形成されており、これにより導光体13の長手方向の光量分布を最適化することができる。
【0039】
一方、出射面16は、導光体13の長手方向に直交する平面で切断した断面が円弧状をなすように形成されている。これにより、図2に示したように、出射面16から出射する光を所定の角度範囲に制限し、特に導光体13から出射された光をミラー7に入射させないようにすることができる。なお、後に詳しく説明するが、導光体13から出射された光がミラー7に入射すると、迷光となってミラー7および原稿台4で反射されることでカメラ6に入射して、読取画像に白飛びを発生させる。
【0040】
図4に示したように、LED素子11は、照明基板12上に、導光体13の長手方向に並んで複数配置されており、上側のLED素子列を構成するLED素子11を覆うように上側の導光体13が配置され、下側のLED素子列を構成するLED素子11を覆うように下側の導光体が13配置される。
【0041】
特に本実施形態では、LED素子11として、白色光を発する白色LED素子11wlと、赤外光を発する赤外LED素子11irと、紫外光を発する紫外LED素子11uvとの3種類の光源が設けられている。赤外LED素子11irには、例えばピーク波長が850nmとなるものが用いられ、紫外LED素子11uvには、例えばピーク波長が365nmとなるものが用いられる。なお、ここでは適宜に、白色LED素子11wl、赤外LED素子11ir、および紫外LED素子11uvをまとめてLED素子11と記載する。
【0042】
これらのLED素子11は、用途に応じて使い分けるようにしており、モニタを用いた操作者の目視による確認などのための通常の用途では、白色LED素子11wlを点灯する。パスポートなどで背景画像上に文字が記載された原稿の文字認識を行う場合には、赤外LED素子11irを点灯する。これにより、背景画像を写り難くして文字認識の精度を高めることができる。パスポートなどで偽造防止用の蛍光インクで描かれた画像を取得する場合には、紫外LED素子11uvを点灯する。
【0043】
LED素子11は、それ自体の配光特性や、白色光、赤外光および紫外光の屈折率の違いなどを考慮して、最適な光量分布が得られるように、導光体13の長手方向に直交する方向に位置をずらして配置されている。なお、LED素子11は、中心線を中心にして左右対称に配置されている。また、導光体13の長手方向の中央部に対応する位置にはLED素子11が配置されておらず、導光体13の中央部分は光学的な機能を有しない。
【0044】
図3に示したように、スペーサー14は、照明基板12との間に所定の間隔をおいて導光体13を照明基板12に支持させるものであり、概ね平板状をなし(図7参照)、導光体13の略全長に渡って延在するように設けられている(図5参照)。このスペーサー14は、ポリカーボネート樹脂などの樹脂材料で形成され、白色に着色されている。
【0045】
このスペーサー14には、LED素子11から出射された光を導光体13の入射面に入射させる開口部21が、スペーサー14を厚さ方向に貫通するように開設されている。この開口部21は、照明基板12側から導光体13側に向かって次第に内径が大きくなるテーパー形状をなすように形成されている。特に、本実施形態では、開口部21が、スペーサー14の厚さ方向、すなわちLED素子11の光軸方向の中心線を中心とした略円錐台形状(すり鉢形状)をなし、複数のLED素子11ごとに開設されている(図5参照)。これにより、LED素子11が発する光を所定の角度範囲に集めて導光体13に入射させることができる。また、開口部21の内周面には鏡面仕上げが施されており、これにより開口部21の内周面での拡散反射を抑えるようにしている。
【0046】
LED素子11は、チップ状の表面実装型のものであり、配線パターンが形成された照明基板12上に半田付けされ、照明基板12の主面から突出した状態で設けられている。特に白色LED素子11wlおよび赤外LED素子11irは、半球形状のレンズ部が照明基板12の主面から大きく突出している。このため、照明基板12と導光体13との間にスペーサー14を設けることで、照明基板12上に実装されたLED素子11が導光体13と干渉することなく、導光体13を照明基板12に安定に支持させることができる。
【0047】
なお、スペーサー14の照明基板12側の面は、LED素子11の近傍が凹設され、スペーサー14は、LED素子11の近傍を除いた部分で照明基板12に当接する。また、白色LED素子11wlおよび赤外LED素子11irでは、レンズ部が開口部21の内部に収容されるようになっている。
【0048】
図3に示したように、照明基板12とスペーサー14とは、ねじ31により互いに締結される。このねじ31は、照明基板12の取付孔32と、図7に示したように、スペーサー14の長手方向の両端部に設けられた取付孔33とに挿入される。また、図3に示したように、スペーサー14の照明基板12側に突出する突起34を、照明基板12の取付孔35に嵌合させることで、スペーサー14が照明基板12に位置決めされる。これにより、スペーサー14は、長手方向の端部に2点ずつの合計4点で照明基板12と連結される。
【0049】
一方、スペーサー14と導光体13とは、ねじ36により互いに締結される。このねじ36は、図5に示したように、スペーサー14の長手方向の両端部に設けられた取付孔37と、図6に示したように、導光体13の長手方向の両端部に設けられた取付孔38とに挿入される。また、スペーサー14と導光体13とは、長手方向の中央部においてねじ39により互いに締結される。このねじ39は、導光体13に設けられた取付孔40と、図5に示したように、スペーサー14に設けられた取付孔41とに挿入される。これにより、導光体13は、長手方向の両端部と中央部との3点でスペーサー14と連結される。
【0050】
図8は、第1実施形態に係るスペーサー14における光の進行状況を示す断面図である。図9は、第1実施形態に係る読取装置1での迷光の状況を示す側面図である。
【0051】
図8に示すように、LED素子11が発する光の大半は、導光体13の入射面15に直接入射し、出射面16から正規の角度範囲で出射される。LED素子11が発する光の一部は、開口部21の内周面に入射するが、この開口部21の内周面には鏡面仕上げが施されているため、開口部21の内周面に入射した光は鏡面反射し、このとき、開口部21がテーパー形状をなすため、鏡面反射した光は、矢印Aで示すように、正規の角度範囲で出射面16から出射される。
【0052】
このようにスペーサー14の開口部21がテーパー形状をなすため、LED素子11が発する光を集光させることができ、これによりLED素子11が発する光の利用効率を向上させることができる。
【0053】
また、開口部21の内周面では、鏡面反射とともに拡散反射が生じ、この拡散反射による散乱光が発生するが、この散乱光は、矢印B,Cで示すように、正規の角度範囲から外れた方向で導光体13から出射される。この正規の角度範囲から外れた光は、図9に示すように、ミラー7に入射し、ここで反射されて迷光となる。この迷光は、原稿台4で反射された後に再度ミラー7で反射されてカメラ6に入射する。
【0054】
このようにして迷光がカメラ6に入射すると、読取画像内に輝度が部分的に高くなる部分が現れる。特に、カメラ6に入射する迷光の光量が大きくなると、イメージセンサの出力が飽和レベルに達する、いわゆる白飛びが発生する。この白飛びを起こした部分では階調情報が消失するため、画像処理で改善することが難しい。以下に説明する第2実施形態は、このような迷光による白飛びの問題を解決するものである。
【0055】
なお、白飛びとは、通常、白色光で照明した場合に画素の明度(輝度)が上限値となる場合を示すが、これと同様の状態が赤外光および紫外光でも発生し、ここでは、赤外LED素子11irおよび紫外LED素子11uvをそれぞれ点灯させて原稿の読み取りを行った際に、イメージセンサの出力が飽和レベルに達して、赤外光および紫外光による読取画像において画素の輝度(明度)が上限値となる状態も白飛びと称する。
【0056】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係るスペーサー52における光の進行状況を示す断面図である。なお、以下で特に言及しない点は第1実施形態と同様である。
【0057】
第2実施形態に係る照明装置51では、スペーサー(中間支持体)52が、光透過性を有する材料で形成されている。このスペーサー52を形成する材料には、光の透過率が80%以上となる樹脂を使用するとよく、具体的には、アクリル樹脂、特にメタクリル樹脂(PMMA)や、ポリカーボネート樹脂およびシクロオレフィン系樹脂が好適である。このスペーサー52の材料については、後に詳しく説明する。
【0058】
開口部53の内周面には、第1実施形態の開口部21と同様に、鏡面仕上げが施されており、これにより開口部53の内周面での拡散反射を抑えるようにしている。このため、LED素子11が発する光が開口部53の内周面に入射すると、主に鏡面反射が起き、このとき、開口部53がテーパー形状をなすため、鏡面反射した光は、矢印Aで示すように、正規の角度範囲で導光体13から出射される。
【0059】
また、スペーサー52が、光透過性を有する樹脂材料で形成され、空気より大きい屈折率を有するため、開口部53の内周面で全反射は起こらず、開口部53の内周面に入射した光の一部が反射し、残部が、矢印B,Cで示すように、開口部53の内周面から透過してスペーサー52の内部に進む。さらに、開口部21の内周面では拡散反射も起きるが、矢印Dで示すように、拡散反射による散乱光の一部は、開口部53の内周面から透過してスペーサー52の内部に進む。
【0060】
ここで、前記のように、開口部53の内周面での拡散反射による散乱光が、カメラ6に入射する迷光の主な原因となるため(図8,図9参照)、開口部53の内周面から透過してスペーサー52の内部に進む光(透過成分)の割合を高めて、開口部53の内周面で拡散反射する光(反射成分)の割合を低くすると、カメラ6に入射する迷光を抑制することができる。
【0061】
一方、反射は入射角に依存せず、物質の透過率に依存する。すなわち、透過成分と反射成分の割合は、スペーサー52を形成する物質の透過率により定まる。そこで、スペーサー52に透過率の高い材料を採用すると、透過成分の割合を高めて反射成分の割合を低く抑えることができ、これによりカメラ6に入射する迷光を抑制することができる。また、反射は鏡面反射と拡散反射との2種類に分けられるが、開口部53の内周面の表面性状を良くする(平滑にする)ことで鏡面反射の割合を大きく、拡散反射の割合を小さくすることが出来、前述と同様に迷光の主な原因となる拡散反射による散乱光を抑制することが出来る。
【0062】
なお、開口部53の内周面で鏡面反射する光の大半は、正規の角度範囲で導光体13から出射されるが、鏡面反射による光が正規の角度範囲から外れた方向に進んで迷光の原因となることもある。しかしながら、鏡面反射により迷光となる光の割合はもともと低い上に、鏡面反射が複雑に繰り返されることで迷光となることから、鏡面反射の過程で光が大きく減衰するため、鏡面反射による迷光は問題にはならない。
【0063】
次に、スペーサー52を形成する樹脂材料について説明する。
【0064】
図11は、波長に応じた透過率を樹脂別にグラフで示す特性図である。ここでは、メタクリル樹脂(PMMA)、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、およびABS樹脂の透過率を示す。なお、各樹脂は、着色剤や紫外線吸収剤を含まない透明なものである。
【0065】
光の透過率は波長により異なる。本実施形態では、光源に、白色LED素子11wl、赤外LED素子11irおよび紫外LED素子11uvが用いられているが、白色光、赤外光および紫外光のうち、紫外光の領域で透過率が最も低くなる。一方、前記のように、迷光の原因となる拡散反射による散乱光を抑えるには、光の透過率を高める必要があるため、スペーサー52の材料に要求される透過率の条件は、紫外光で最も厳しくなる。すなわち、紫外光で透過率の条件を満足することができれば、白色光および赤外光でも十分な透過率を得ることができる。
【0066】
そこで、スペーサー52の材料の選定にあたっては、紫外光の透過率を基準にして材料を選定する。紫外LED素子には、種々のピーク波長を有するものがあるが、ここでは波長が365nmの紫外光で透過率の条件を判断する。波長が365nmとなる紫外光の透過率は、メタクリル樹脂で約85%、シクロオレフィン系樹脂で約90%、ポリカーボネート樹脂で約80%、ナイロン樹脂で約70%、ABS樹脂で約55%となっている。
【0067】
ここで、スペーサー52を数種類の樹脂で形成して白飛びの発生状況を調べる実験を行い、この実験での白飛びの発生状況に基づいて、スペーサー52に要求される透過率の条件について検討した。
【0068】
実験では、メタクリル樹脂、ナイロン樹脂およびABS樹脂でそれぞれ形成されたスペーサー52ごとに、波長が365nmの紫外光での白飛びの発生状況を調べた。具体的には、原稿台にクリアファイルに挟んだトレーシングペーパーを載置し、カメラで撮像して読取画像を取得し、読取画像内で白飛びを起こしている画素を調べた。
【0069】
この実験により、透過率が約85%となるメタクリル樹脂では、読取画像内に白飛びを起こしている画素が全く検出されなかった。一方、透過率が約70%となるナイロン樹脂や、透過率が約55%となるABS樹脂では、読取画像内に白飛びを起こしている画素が検出された。
【0070】
この実験結果から、波長が365nmとなる紫外光の透過率を約85%以上とすれば、白飛びを完全に防止することができる。また、白飛びの発生状況を考慮すると、透過率を80%以上とすれば、白飛びの発生を抑制する上で実用上十分な効果を得ることができる。
【0071】
この透過率の条件に基づいてスペーサー52を形成する樹脂材料を選定すると、波長が365nmとなる紫外光の透過率が80%以上を満足する樹脂は、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂であり、これらの樹脂でスペーサー52を形成すると、白色光、赤外光および紫外光のいずれでも白飛びの発生を抑制することができる。
【0072】
なお、ここでは、透過率の条件が最も厳しくなる紫外光を基準にしてスペーサー52を形成する樹脂材料を選定したが、これは、紫外光を発する光源を有する場合であり、紫外光を発する光源を有しない場合、例えば白色光を発する光源のみの場合には、白色光を基準にしてスペーサー52を形成する樹脂材料を選定する、すなわち白色光で透過率が80%以上となる材料を選定すればよい。
【0073】
このように、光の透過率が80%以上となる材料をスペーサー52に用いることで、迷光に起因する白飛びを解消することができ、これにより文字認識などのソフトウェア処理の精度を高めることができる。また、迷光を完全になくすことができず、読取画像内に輝度が高くなる部分が現れる場合もあるが、迷光の光量を、カメラ6のイメージセンサの出力が飽和レベルに達しない程度に抑えることができ、この場合、読取画像内の高輝度部分でも階調情報が消失していないため、画像処理で改善することができることから、特に問題にはならない。
【0074】
この他、スペーサー52の材料にアクリル樹脂を用いると、アクリル樹脂は加工性に優れているため、開口部53の内周面の鏡面仕上げ工程で研磨の精度を高めることができるので、開口部53の内周面における拡散反射の割合を低くすることができ、これにより集光率を高めて光の利用効率を向上させることができる。
【0075】
図12は、第2実施形態に係る読取装置での迷光の状況を示す側面図である。図10に示したように、開口部53の内周面で反射せずにスペーサー52の内部を透過する光は、図12に示すように、最終的にスペーサー52の側面から外部に抜けるため、迷光の原因となることが考えられる。
【0076】
しかしながら、カメラ6はミラー7に向けて配置されており、スペーサー52の側面から放射された光は、カメラ6の画角α内に入らないため、直接カメラ6に入射しない。また、照明装置51における光が出射される側にミラー7が位置することから、スペーサー52の側面から放射された光はミラー7にも入射しないため、ミラー7および原稿台4で反射されてカメラ6に入射することもない。
【0077】
また、スペーサー52を透過して外部に抜ける光は、原稿を照明する用途に利用されないことから、結果的に無駄になるため、光の利用効率を低下させる要因になるが、このデメリットは、迷光を低減して白飛びを解消するメリットに勝るものではない。
【0078】
なお、本実施形態では、図4に示したように、白色光、赤外光および紫外光をそれぞれ発する3種類の光源(白色LED素子11wl、赤外LED素子11ir、紫外LED素子11uv)を有する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記の3種類の光源のいずれか1種類または2種類、あるいはその他の種類の光源を有する構成も可能である。この場合、複数種類の光源が発する光のうち、透過率が最も低くなる光を基準にスペーサー52の材料を選定すればよい。
【0079】
また、本実施形態では、図2に示したように、原稿3の読取面3aでの反射光の光路をミラー7で折り曲げることで、読取装置1の小型化を図るようにしたが、ミラー7を設けない構成も可能である。ただし、前記のように、正規の角度範囲から外れた方向で導光体13から出射される光がミラー7で反射されることで、カメラ6に入射する迷光が発生することが多いため、迷光による白飛びの問題を解決する第2実施形態による構成は、特にミラー7を設けた場合に有効となる。
【0080】
また、本実施形態では、中間支持体(スペーサー52)の全体を、光透過性を有する材料で形成する構成としたが、本発明では、開口部の内周面に入射した光が中間支持体の内部に進んで、開口部の内周面側にほとんど戻らないようにすればよく、このような状態とするには、少なくとも開口部の内周面から所定の範囲に渡る部分を、光透過性を有する材料で形成する構成とすればよい。
【0081】
また、本発明では、光源(白色LED素子11wl、赤外LED素子11ir、紫外LED素子11uv)の波長は特に限定されないが、特に、紫外光は、スペーサーを形成する樹脂材料を劣化させることから、樹脂材料の劣化を招かない波長のものを採用するとよく、例えば波長が315nmの紫外光はアクリル樹脂の劣化が顕著になるため、スペーサーにアクリル樹脂を用いる場合には、紫外LED素子には波長が365nmの紫外光を発するものを用いるとよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明にかかる照明装置およびこれを備えた読取装置は、光源が発する光の利用効率を向上させるとともに迷光の発生を抑制することができ、さらに、迷光が撮像装置に入射することで発生する白飛びを確実に防止することができる効果を有し、原稿の読取面を照明する照明装置およびこれを備えた読取装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 読取装置
3 原稿、3a 読取面
4 原稿台
5 照明装置
6 カメラ
7 ミラー、7a 反射面
11 LED素子(光源)
11wl 白色LED素子
11ir 赤外LED素子
11uv 紫外LED素子
12 照明基板
13 導光体
14 スペーサー(中間支持体)
15 入射面
16 出射面
21 開口部
51 照明装置
52 スペーサー(中間支持体)
53 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
この光源を保持する基板と、
前記光源から出射された光を所定の方向に導く導光体と、
この導光体および前記基板の間に介在する中間支持体と、を備え、
この中間支持体は、これを貫通して前記光源から出射された光を前記導光体の入射面に入射させる開口部を有し、この開口部が、前記基板側から前記導光体側に向かって次第に内径が大きくなるテーパー形状に形成されたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記中間支持体は、光透過性を有する材料で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記中間支持体は、光の透過率が80%以上となる材料で形成されたことを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記中間支持体は、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびシクロオレフィン系樹脂のいずれかで形成されたことを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記導光体は、1方向に長い棒状に形成され、
前記光源は、前記導光体の長手方向に並んで前記基板上に複数配置され、
前記中間支持体は、前記導光体の略全長に渡って延在するように設けられて、前記開口部が、複数の前記光源ごとに開設されたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の照明装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明装置と、
原稿が載置される透明な原稿台と、
この原稿台を介して前記照明装置により照明された前記原稿の読取面を撮像する撮像装置と、を備えたことを特徴とする読取装置。
【請求項7】
前記原稿の読取面での反射光を反射して前記撮像装置に導くミラーをさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の読取装置。
【請求項8】
前記撮像装置および前記照明装置は、光透過性を有する材料で形成された前記中間支持体を透過してその側面から外部に放射される光が前記撮像装置の画角内に入らないように配置されたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−89288(P2013−89288A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225508(P2011−225508)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】