説明

照明装置および前照灯

【課題】赤色に対する良好な演色性(再現性)を有し、かつ低消費電力で発光可能な照明装置を提供する。
【解決手段】ヘッドランプ1は、視感度が低い領域の光あるいは視感度がない領域の光を本質的に含まずに赤色光を照明光として放出する。このため、ヘッドランプ1は、半導体レーザ2a,2bと、発光部7と、拡散部8とを備える。半導体レーザ2aは青紫色または青色の波長でレーザ光を発振し、半導体レーザ2bは赤色の波長でレーザ光を発振する。発光部7は、半導体レーザ2aから出射されたレーザ光により励起されて蛍光を発する蛍光体7bを含む。拡散部8は、半導体レーザ2bから出射されたレーザ光を拡散する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度光源として機能する照明装置および当該照明装置を備えた前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD;Laser Diode)等の励起光源から生じた励起光を、蛍光体を含む発光部に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いる照明装置の研究が盛んになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1は、このような発光装置を開示している。この発光装置は、波長450nm以下のレーザ光を発するGaN系半導体レーザを励起光源として用い、レーザ光で励起されて可視域の蛍光を発する蛍光体を上記半導体レーザと組み合わせている。これにより、蛍光体が青色光、紫外線などの波長450nm以下の短い波長の光により十分に励起されるので、高輝度の発光が得られる。
【0004】
また、従来、白色LEDに代表される励起光源と蛍光体とを組み合わせることにより白色光を放出する光源も開発が進められている。このような光源は、開発当初、青色LEDと黄色蛍光体とを組み合わせた擬似白色光源が主流であった。その後、赤色に対する演色性を向上させるため、黄色蛍光体に改良を加えて赤色領域の発光強度を増すようにしたり、黄色蛍光体に代えて緑色蛍光体および赤色蛍光体の2種類の蛍光体を組み合わせたり、という試みがなされている。
【0005】
例えば、図12は、従来の白色LEDと高演色白色LEDとの発光スペクトルを示している。また、図13は、緑色蛍光体と赤色蛍光体とを組み合わせた白色LEDの発光スペクトルを示している(室温25℃,順方向電流20mA)。
【0006】
図12に示すように、高演色白色LEDは、従来の白色LEDに対して、黄色蛍光体に改良を加えることにより、赤色領域および緑色領域の発光強度を増している。また、図13に示すように、緑色蛍光体と赤色蛍光体とを組み合わせた白色LEDでも、赤色領域および緑色領域の発光強度を増している。
【0007】
一方、人間の目の視感度は、明所視であれば555nm(黄緑色)をピークに、そこから波長が短くなっても長くなっても、感度が小さくなる。図14は、その視感度の特性である視感度曲線を示している。図14の視感度曲線から分かるように、赤色と言われる650nm近傍の視感度はかなり低い。また、そこからさらに波長が長くなればなるほど視感度が低くなる。
【0008】
図12および図13に示す各白色LEDの発光スペクトルから分かるように、各白色LEDから放出される光の中には、ほとんど視感度がない(眼には感じることのできない)700nmやそれ以上の波長域の光が多く含まれている。この目には感じられない光は、励起光源である青色LEDから発せられた可視光(励起光)が蛍光体で波長変換されて不可視光として放出されているものであり、単なるロスとなる。したがって、このようなロスに相当する電力が青色LEDで無駄に消費されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−174346号公報(2000年6月23日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
蛍光体の蛍光スペクトルは、ピーク波長を中心に、ある程度ブロードとなる特性を有している。例えば、高効率蛍光体として実用性の高いCASN蛍光体では、半値幅が90nmである。このため、赤色蛍光体として、例えば630nmや650nmにピークを持つ蛍光スペクトルの蛍光体を選択した場合、視感度が低い700nm以上の波長域の光を含んでしまうのは避けられない。
【0011】
なお、赤色蛍光体の中にも、比較的発光スペクトルが鋭い蛍光体がある。このような蛍光体としては、Mn4+やEu3+を発光中心とする蛍光体が挙げられる。
【0012】
例えば、Eu3+を発光中心とする赤色蛍光体は、5s5p電子で遮蔽された4f−4f遷移に基づく発光を示すので、発光色は母体材料には大きくは依存しない。図15は、このような赤色発光体の発光スペクトルを示している。図15に示すように、発光スペクトルは結晶中でも線状である。
【0013】
しかしながら、このように発光スペクトル幅が狭い蛍光体は、一般的に遷移確率が低く、単一波長発光ではない。このため、視感度が十分に高く、かつ所望の波長だけを効率よく発光させることができない。また、上記の蛍光体は、蛍光寿命が長い(ミリ秒のオーダー)という特性を有する。この蛍光寿命が長いという特性は、強励起されたときの蛍光発光の飽和を誘発するので、典型的な強励起照明であるレーザを励起光源とする照明装置には向かない。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、赤色に対する良好な演色性(再現性)を有し、かつ低消費電力で発光可能な照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る照明装置は、上記の課題を解決するために、青紫色または青色の波長で励起光を発振する第一の光源(励起光源)と、赤色の波長でレーザ光を発振する第二の光源と、前記第一励起光源から出射された励起光により励起されて蛍光を発する蛍光体を含む発光部と、前記第二の光源から出射されたレーザ光を拡散する拡散部とを備えていることを特徴としている。
【0016】
上記構成においては、第一の光源(励起光源)の光と、発光部で発する蛍光と、第二の光源のレーザ光とが混色することにより、白色光が得られる。また、赤色のレーザ光を発振する第二の光源を用いることにより、照明光は、視感度が低い、あるいは視感度がない領域の光を本質的に含まずに、赤色光を含むことができる。このように、発生させた光すべてを可視光とすることができるので、従来の白色LEDと比較してより効率を高めることができる。したがって、赤色に対する良好な演色性(再現性)を有し、かつ低消費電力で発光可能な照明装置を得ることができる。
【0017】
前記照明装置において、前記第二の光源の発振波長が600nm以上かつ675nm以下であることが好ましい。これにより、赤色の視感度を向上させることができる。
【0018】
前記照明装置において、前記発光部は前記拡散部を兼ねており、前記蛍光体は赤色光領域における吸収率が10%以下であることが好ましい。これにより、第二の光源から出射される赤色光はほとんど吸収されることなく蛍光体で拡散されるので、発光点サイズが拡大されて照明装置の外部に蛍光と混色されて出射することができる。
【0019】
この照明装置は、下記の(1)または(2)のように構成されることが好ましい。これにより、蛍光体が赤色励起光に対する良好な拡散材となる。
(1)前記第一の光源(励起光源)の発振波長が400nm以上かつ420nm以下であり、前記蛍光体が青色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせまたは青緑色蛍光体である。
(2)前記第一の光源(励起光源)の発振波長が440nm以上かつ470nm以下であり、前記蛍光体が黄色蛍光体または緑色蛍光体のうち少なくとも一つを含んでいる。
【0020】
また、上記の(1)のように構成される照明装置においては、前記緑色蛍光体がβ−SiAlON:Euであり、前記青緑色蛍光体がCaα−SiAlON:Ce蛍光体であることが好ましく、あるいは前記青色蛍光体がJEM蛍光体であることが好ましい。これらの蛍光体は、蛍光体の赤色光領域における吸収率を10%以下にすることができ、蛍光体として好適である。
【0021】
また、上記の(2)のように構成される照明装置においては、前記黄色蛍光体がYAG:Ce蛍光体であることが好ましく、前記緑色蛍光体がGAL蛍光体であることが好ましく、あるいは前記緑色蛍光体がβ−SiAlON蛍光体であることが好ましい。これらの蛍光体は、蛍光体の赤色光領域における吸収率を10%以下にすることができ、蛍光体として好適である。特に、YAG:Ce蛍光体は、600nm以上の波長域において、その吸収率が1%以下であるので、赤色光をほとんど吸収せずに拡散させることができる。
【0022】
前記発光部が前記拡散部を兼ねる前記照明装置は、2つの光入射面を有するハーフミラーをさらに備え、前記第一の光源が、一方の前記光入射面に前記第一の光源から出射された励起光が入射するように配置され、前記第二の光源が、他方の前記光入射面に前記第二の光源から出射されたレーザ光が入射するように配置され、前記ハーフミラーが、入射した励起光およびレーザ光を前記発光部へ出射する位置に配置されていることが好ましい。この構成によれば、第一の光源から発せられる励起光と第二の光源から発せられるレーザ光とがハーフミラーにおいて完全に重なって発光部へと出射される。
【0023】
照明装置においては、第一の光源および第二の光源と発光部との間に導光部材を設ける場合、導光部材の光路が短くなりがちである。このために第一および第二の光源からの光が完全に混合されない場合、色ムラ(照明光における赤みの強弱)が発生する可能性がある。したがって、ハーフミラーを設けることにより、色ムラの発生を抑えることができる。
【0024】
前記照明装置のいずれかにおいて、前記発光部は、前記蛍光体が分散され、かつ前記蛍光体の屈折率より小さい屈折率を有する封止材を有していることが好ましい。これにより、極めて単色性の強い赤色光が混じった照明光を小型かつ軽量の発光部から発生させることができる。
【0025】
前記照明装置のいずれかにおいて、前記第二の光源が半導体レーザであることが好ましい。これにより、上記のような屈折率の関係により、発光部に含まれる蛍光体が赤色光を吸収せずに拡散だけを行うことができ、かつ、レーザ光を発する光源であることから小型の発光部に無駄なくその光を照射することができる。
【0026】
前記発光部は前記拡散部を兼ねる前記照明装置は、前記発光部から出射する光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡をさらに備え、前記発光部は、前記第一の光源から出射された励起光および前記第二の光源から出射されたレーザ光を受光する受光面を有し、当該受光面が、前記反射鏡と当該反射鏡の開口部とが形成する空間の外側となるように設けられていることが好ましい。
【0027】
前記構成によれば、受光面は、反射鏡と当該反射鏡の開口部とが形成する空間(反射鏡と当該反射鏡の開口部とで囲まれた空間)の外側にあるので、励起光(特に高出力の励起光;例えばレーザ光)をその空間の内部で受光することがない。このため、人体にとって有害な出力レベルの励起光がその空間を伝播して、外部(少なくとも発光部から出射された光の照射方向)に漏れ出てしまうことを防ぐことができる。
【0028】
また、例えば照明装置が何らかの衝撃を受けたときに、励起光が受光面に照射されない事態が生じた場合であっても、当該励起光が、少なくとも前記光の照射方向に直接漏れ出てしまう事態を防ぐことができる。
【0029】
このように、受光面が前記空間の外側となるように発光部を設けることにより、安全性の高い照明装置を実現できる。
【0030】
前記照明装置は、前記第一の光源から出射された励起光および前記第二の光源から出射されたレーザ光を受け取り、前記励起光および前記レーザ光を前記発光部に出射する導光部をさらに備え、前記発光部は、前記導光部から出射された前記励起光および前記レーザを受光する受光面を有し、前記導光部が、前記第一の光源から受け取った励起光および前記第二の光源から受け取ったレーザ光を前記発光部に出射する出射端部を有し、前記受光面および前記出射端部の近傍に、前記出射端部から出射された励起光およびレーザ光のうち、前記受光面に照射されなかった励起光およびレーザ光、ならびに前記受光面にて反射された励起光およびレーザ光の少なくとも一方を遮光する遮光部を備えることが好ましい。
【0031】
前記構成によれば、遮光部を備えているので、例えば照明装置への衝撃により、励起光が受光面に適切に照射されない事態が生じた場合に、当該励起光が外部に漏れ出ることを確実に防ぐことができる。この構成の場合、励起光が、反射鏡と反射鏡の開口部とが形成する空間を伝播することがないので、前記光の照射方向に出射されることを防ぐことができるとともに、それ以外の方向に漏れることも防ぐことが可能である。
【0032】
前記照明装置は、前記第一の光源から出射された励起光および前記第二の光源から出射されたレーザ光を受け取り、前記励起光および前記レーザ光を前記発光部に出射する導光部をさらに備え、前記発光部が、前記導光部から出射された前記励起光および前記レーザを受光する受光面を有し、前記導光部が、前記第一の光源から受け取った励起光および前記第二の光源から受け取ったレーザ光を前記発光部に出射する出射端部を有し、前記受光面と前記出射端部とが近接していることが好ましい。
【0033】
前記構成によれば、発光部の受光面と導光部の出射端部とが近接しており、励起光(特に高出力の励起光)が、反射鏡と反射鏡の開口部とが形成する空間を伝播することがない。このため、例えば照明装置が何らかの衝撃を受けた場合に、人体にとって有害な出力レベルの励起光が受光面に照射されずに、直接外部に漏れ出てしまうという事態を防ぐことができる。それゆえ、安全性の高い照明装置を実現できる。
【0034】
前記照明装置において、前記反射鏡は、前記出射端部が挿入される中空部を有し、前記中空部には、前記発光部に前記励起光および前記レーザ光が照射されることにより、当該発光部にて発生する熱を放散する放熱部材が備えられ、前記受光面と前記出射端部とは、前記放熱部材を介して近接していることが好ましい。
【0035】
受光面と出射端部とが近接すれば、その分、発光部における発熱量が大きくなる(発光部の温度が高くなる)ため、発光部が急速に劣化してしまう可能性がある。
【0036】
前記構成によれば、反射鏡の中空部に放熱部材が備えられ、当該放熱部材を介して出射端部と受光面とが近接している。そのため、受光面に照射される励起光に起因して発光部において発生した熱を、放熱部材を介して反射鏡へと放散させることができるので、発光部の長寿命化を図ることができる。
【0037】
それゆえ、安全性を担保するために受光面と出射端部とを近接させた場合であっても、発光部の温度上昇を抑制することができる。すなわち、安全性が高く、かつ長寿命な照明装置を実現できる。
【0038】
本発明に係る前照灯は、上記のいずれかの照明装置を備えることが好ましい。
【0039】
上記構成において、前照灯は照明装置を備えているので、当該照明装置と同様、赤色に対する良好な演色性(再現性)を有し、かつ低消費電力で発光可能な前照灯を実現することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る照明装置は、上記のように構成されることにより、赤色に対する良好な演色性(再現性)を有し、かつ低消費電力で発光することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係るヘッドランプの概要構成を示す片側断面図である。
【図2】(a)は半導体レーザの回路構成を模式的に示した図であり、(b)は半導体レーザの基本構造を示す斜視図である。
【図3】上記ヘッドランプにおける光源ユニットの他の構成を示す片側断面図である。
【図4】上記ヘッドランプにおける透光性基板および発光部の構成を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る他のヘッドランプの概要構成を示す片側断面図である。
【図6】図5のヘッドランプにおける発光部の構成を示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るさらに他のヘッドランプの概略構成を示す片側断面図である。
【図8】図7のヘッドランプが備える発光部と光ファイバーの出射端部との位置関係を示す図である。
【図9】図1、図5および図7のヘッドランプにおける制御系の構成を示すブロック図である。
【図10】図1、図5および図7のヘッドランプに設けられる赤色の半導体レーザの電流対光出力特性を示すグラフである。
【図11】上記赤色の半導体レーザの発光スペクトルを示すグラフである。
【図12】従来の白色LEDと高演色白色LEDとの発光スペクトルを示すグラフである。
【図13】緑色蛍光体と赤色蛍光体とを組み合わせた白色LEDの発光スペクトルを示すグラフである。
【図14】人間の目の視感度特性を示すグラフである。
【図15】上記赤色蛍光体のうち比較的発光スペクトルが鋭い赤色蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明に係る実施形態について、図1ないし図11を参照して以下に説明する。
【0043】
ここでは、本発明の照明装置の一例として、自動車用のヘッドランプ(前照灯)を例に挙げて説明する。ただし、本発明の照明装置は、自動車以外の車両や移動体(人間、船舶、航空機、潜水艇、ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、その他の照明装置として実現されてもよい。その他の照明装置としては、例えば、サーチライト、プロジェクター、家庭用照明器具を挙げることができる。
【0044】
ヘッドランプは、走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たしていてもよいし、すれ違い用前照灯(ロービーム)の配光特性基準を満たしていてもよい。
【0045】
[第一のヘッドランプの構成]
〔ヘッドランプの全体構成〕
図1は、ヘッドランプ1の概略構成を示す縦断面図である。
【0046】
図1に示すように、第一のヘッドランプとしてのヘッドランプ1は、光源ユニット2(光源)、固定部材5、透光性基板6、ネジ10、反射鏡11、レンズ12、導光部材22および発光部23を備えている。
【0047】
このヘッドランプ1において、光源ユニット2の半導体レーザ2a,2bから出射されたレーザ光が、導光部材22によって発光部23に導かれる。発光部23が半導体レーザ2aから出射されたレーザ光によって励起されて蛍光を発するとともに、当該レーザ光の内、発光部23の励起に寄与しなかったレーザ光が拡散機能を有する発光部23によって拡散される。また、半導体レーザ2aから出射されたレーザ光の一部は、そのまま発光部23を通過する。一方、半導体レーザ2bから出射されたレーザ光が発光部23によって拡散される。これにより、発光部23から放出された蛍光と、発光部23によって拡散された半導体レーザ2aのレーザ光と、発光部23によって放出された蛍光と、発光部23によって拡散された半導体レーザ2bのレーザ光とが混色されて、ヘッドランプ21は白色光を発する。
【0048】
〔光源ユニットの構成〕
光源ユニット2は、レーザ光源装置であり、筐体内に2つの半導体レーザ2a(励起光源),2bを収容している。半導体レーザ2a,2bは、レーザ光を出射する光源として機能する発光素子であり、所定の間隔をおいて配置されている。半導体レーザ2a,2bの固定方法および配線方法については、従来の固定方法および配線方法が利用できるので、ここではその説明を省略する。
【0049】
なお、本実施の形態では、光源ユニット2の光源として半導体レーザ2a,2bを用いる場合について説明するが、光源としては、その他のレーザ光源であってもよいし、LEDであってもよい。光源が半導体レーザである場合には、高出力かつコヒーレント性の高いレーザ光を発光部7に照射できるので発光部7を小さくすることができ、高輝度なヘッドランプ1が得られる。
【0050】
半導体レーザ2a(第一の光源(励起光源))は、1チップに1つの発光点を有しており、青色領域または青紫色領域の波長のレーザ光を発振する。また、半導体レーザ2b(第二の光源)は、1チップに1つの発光点を有しており、赤色領域(波長635nm近傍)の波長のレーザ光を発振する。
【0051】
半導体レーザ2a,2bは、直径9mm、5.6mm、3.8mmなどの金属パッケージ(ステム)に封入されているが、熱抵抗がより小さいパッケージに封入されることが好ましい。また、半導体レーザ2a,2bは、1チップに複数の発光点を有するものであってもよい。
【0052】
なお、図1には、半導体レーザ2a,2bが1つずつ図示されているが、半導体レーザ2a,2bを1つずつではなく、それぞれ複数設けてもよい。これにより、高出力の励起光を得ることができる。
【0053】
〈半導体レーザの構造〉
図2(a)は、半導体レーザ2a,2bの等価回路の構成を示す回路図であり、図2(b)は、半導体レーザ2a,2bの基本構造を示す斜視図である。
【0054】
同図に示すように、半導体レーザ2a,2bは、カソード電極111、基板112、クラッド層113、活性層114、クラッド層115、アノード電極116がこの順に積層された構成である。
【0055】
基板112は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青色〜紫外のレーザ光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましく、赤色のレーザ光を得る為にはGaAsを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板の例として、IV属半導体、III−V属化合物半導体、II−VI属化合物半導体、酸化物絶縁体または窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。IV属半導体としては、Si、Ge、SiCなどが挙げられる。また、III−V属化合物半導体としては、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNが挙げられ、II−VI属化合物半導体としては、ZnTe、ZeSe、ZnS、ZnOなどが挙げられる。さらに、酸化物絶縁体としては、ZnO、Al、SiO、TiO、CrO、CeOなどが挙げられ、窒化物絶縁体としては、SiNなどが挙げられる。
【0056】
アノード電極116は、クラッド層115を介して活性層114に電流を注入する電極である。カソード電極111は、基板112の下部から、クラッド層113を介して活性層114に電流を注入する電極である。
【0057】
なお、電流の注入は、アノード電極116からカソード電極111に順方向バイアスをかけて行う。
【0058】
活性層114は、クラッド層113およびクラッド層115で挟持されている。活性層114およびクラッド層113,115の材料としては、青色〜紫外のレーザ光を得るために、AlInGaNから成る混晶半導体が用いられ、赤色のレーザ光を得るために、AlGaInPから成る混晶半導体が用いられる。一般に、半導体レーザの活性層およびクラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられる。そこで、活性層114およびクラッド層113,115も、そのような構成としてもよい。また、活性層114およびクラッド層113,115は、Zn、Mg、S、Se、Te、ZnOなどのII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
【0059】
また、活性層114は、注入された電流により発光が生じる領域である。活性層114は、クラッド層115およびクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層114内に閉じ込められる。
【0060】
さらに、活性層114には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために、互いに対向して設けられる表側へき開面117および裏側へき開面118が形成されている。この表側へき開面117および裏側へき開面118は鏡の役割を果す。
【0061】
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層114の表側へき開面117および裏側へき開面118(本実施の形態では便宜上表側へき開面117とする)から出射され、レーザ光L0となる。
【0062】
なお、活性層114は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
【0063】
また、表側へき開面117と対向する裏側へき開面118には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されている。表側へき開面117と裏側へき開面118との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面117よりレーザ光L0の大部分を発光点116から照射されるようにすることができる。
【0064】
クラッド層113,115は、n型およびp型それぞれを、III−V属化合物半導体またはII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよい。III−V属化合物半導体としては、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、AlNなどが挙げられ、II−VI属化合物半導体としては、ZnTe、ZeSe、ZnS、ZnOなどが挙げられる。これにより、順方向バイアスをアノード電極116およびカソード電極111に印加することで活性層114に電流を注入できるようになっている。
【0065】
クラッド層113,115および活性層114などの各半導体層は、一般的な成膜手法を用いて形成することができる。このような成膜手法としては、MOCVD(有機金属化学気相成長)法、MBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などが挙げられる。各金属層は、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて形成することができる。
【0066】
〈光源ユニットの他の構成〉
図3は、光源ユニット2の他の構成を示す片側断面図である。
【0067】
光源ユニット2は、図3に示すように構成されてもよい。
【0068】
この光源ユニット2は、ハーフミラー24を含んでいる。ハーフミラー24は、導光部材22の光入射面側に配置されている。半導体レーザ2aは、ハーフミラー24の二つの光入射面の内、一方の光入射面側に配置されている。半導体レーザ2bは、ハーフミラー24の他方の光入射面側に配置されている。
【0069】
上記のように構成される光源ユニット2において、半導体レーザ2aから発せられる光と半導体レーザ2bから発せられる光とがハーフミラー24において完全に重なって、導光部材22へと導かれる。これにより、色ムラ(照明光における赤みの強弱)の発生を抑えることができる。
【0070】
ヘッドランプ1においては、導光部材22の光路が短く、半導体レーザ2a,2bからの光が完全に混合されない場合、色ムラが発生する可能性がある。したがって、図3に示す光源ユニット2は、ヘッドランプ1に好適に用いることができる。
【0071】
〔導光部材の構成〕
導光部材22は、半導体レーザ2a,2bが発振したレーザ光を発光部23へと導く部材である。この導光部材22は、半導体レーザ2a,2bから出射されたレーザ光を入射する入射端部(半導体レーザ2a,2b側)と、入射端部から入射したレーザ光を出射する出射端部(発光部23側)を有している。
【0072】
また、導光部材22は、入射端部に入射したレーザ光を反射する光反射側面で囲まれた囲繞構造を有している。しかも、導光部材22は、出射端部の断面積が入射端部の断面積よりも小さくなるように形成されている。具体的には、導光部材22は、全体が四角錐台形状をなしているが、それ以外の多角錐台形状、円錐台形状、楕円錐台形状など様々な形状に形成されてもよい。
【0073】
この囲繞構造により、導光部材22は、入射端部に入射したレーザ光を、入射端部の断面積よりも小さい断面積を有する出射端部に集光した上で発光部23に出射することができる。このため、発光部23を小さく設計することができる。
【0074】
また、導光部材22は、BK(ボロシリケート・クラウン)7、石英ガラス、アクリル樹脂などの透明素材によって形成される。
【0075】
なお、導光部材22の代わりに光ファイバーや光学レンズ等を用いて、レーザ光を発光部7に集光してもよい。
【0076】
〔固定部材の構成〕
固定部材5は、透光性基板6を固定するための板状の部材であり、中央部分に貫通する導光孔5aを有している。この導光孔5a内には、導光部材3,4の出射端部側が配置されている。また、固定部材5の光源ユニット2側の面には、導光孔5aを覆うように光源ユニット2が取り付けられている。さらに、固定部材5は、ネジ10によって反射鏡11と結合されている。固定部材5の材質は特に問わないが、鉄、銅などの金属を用いることができる。
【0077】
〔透光性基板の構成〕
図4は、ヘッドランプ1における透光性基板6および発光部23の構成を示す平面図である。
【0078】
図4に示すように、透光性基板6は、平板状の部材であり、少なくとも半導体レーザ2a,2bの発振波長のレーザ光に対して透光性を有している。この透光性基板6は、レンズ12側の面に発光部23が接着剤により接合(接着)されている。透光性基板6は、平板状でなく、湾曲した部分を有してもよいが、少なくとも発光部23が接着される部分は、接着の安定性の観点から平面(板状)であることが好ましい。
【0079】
透光性基板6と発光部23との接合は、上記のように接着に限られず、例えば、融着などであってもよい。接着剤としては、いわゆる有機系の接着剤や、ガラスペースト接着剤が好適であるが、これに限定されない。
【0080】
透光性基板6は、発光部23が接合されることにより、発光部23と熱的に(熱エネルギーの授受が可能なように)接続されている。これにより、発光部23を透光性基板6の表面に固定(保持)しつつ、発光部23で発生した熱を透光性基板6から外部に放散するので、発光部23の冷却効率を向上させることができる。
【0081】
透光性基板6は、Al(サファイア)によって形成されている。透光性基板6の材質は、サファイア(Al)の他、マグネシア(MgO)、窒化ガリウム(GaN)、スピネル(MgAl)が好ましい。これらの材質は、熱伝導率(例えば20W/mK以上)および透光性が優れているためである。この点を考慮しなければ、これらの材質に限らず、例えばガラス(石英)などであっても良い。
【0082】
透光性基板6の外形寸法は、発光部23の外形寸法よりも大きいが、発光部23の外形寸法と同程度であってもよい。また、透光性基板6の厚さは、発光部23での発熱を効果的に放熱することを考慮すれば、30μm以上、1.0mm以下が好ましく、より好ましくは、0.2mm以上、1.0mm以下であることがより好ましい。ただし、透光性基板6の厚さが、1.0mmを超えると、発光部23に照射されたレーザ光が、透光性基板6において吸収される割合が大きくなる一方で、放熱効果はさほど向上せず、また部材のコストも上昇してしまう。
【0083】
〔発光部の構成〕
発光部23は、半導体レーザ2aから出射されたレーザ光を受けて蛍光を発するとともに、半導体レーザ2a,2bから出射されたレーザ光を拡散する部材であり、直方体を成すように形成されている。また、発光部23は、直方体に限定されず、例えば円柱形状に形成されてもよい。
【0084】
発光部23は、封止材23aに上記の蛍光を発する蛍光体23bが分散されることにより形成されている。封止材23aは、封止材7aを構成する材料と同じ材料によって構成されている。また、蛍光体23bは、半導体レーザ2bの発振波長域(赤色光領域)における吸収率が10%以下である。
【0085】
赤色光領域における吸収率が10%以下の蛍光体23bとしては、YAG:Ce蛍光体が好適である。YAG:Ce蛍光体は、600nm以上の波長域において、その吸収率が1%以下であり、赤色光をほとんど吸収せずに散乱・拡散だけをさせることができる。その他、後述するGAL発光体(緑色蛍光体)、β−SiAlON:Eu蛍光体(緑色蛍光体)やCaα−SiAlON:Ce蛍光体(青緑色蛍光体)も、赤色領域の吸収率が10%以下である。また、後述するJEM蛍光体(青色蛍光体)については、特性に改善の余地があるが、赤色波長域の吸収率を10%以下にできる。
【0086】
また、発光部23は、拡散機能を有するために、封止材23aと蛍光体23bとの屈折率の差を利用している。具体的には、封止材23aと蛍光体23bとの界面における反射率が所望の値となるように、封止材23aと蛍光体23bとの屈折率の差が設定される。このため、発光部23は、レーザ光を十分に拡散できる堆積(特に厚み)を有するように設計される。これにより、蛍光体23bが、青色レーザ光または青紫色レーザ光に対する良好な散乱・拡散材として機能する。
【0087】
なお、発光部23は、拡散粒子(酸化ジルコミウム、ダイヤモンドなど)を含むことにより、拡散機能を有するように構成されてもよい。
【0088】
〈レーザ光の色と蛍光体の発光色との関係〉
一般に、照明光として用いられる白色光または擬似白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色などで実現できる。このような等色の原理に基づいて、ヘッドランプ1では、半導体レーザ2aから出射されるレーザ光の色と、半導体レーザ2bから出射されるレーザ光の色と、発光部23で発光する光の色とが混色することにより白色光を得ている。
【0089】
半導体レーザ2aとして、青色領域で発振する半導体レーザを用いる場合、蛍光体23bとして黄色蛍光体または緑色蛍光体が用いられる。黄色発光蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長範囲(黄色領域)にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。緑色蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長範囲(緑色領域)にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。これらの蛍光体については、実施例1において詳しく説明する。
【0090】
また、半導体レーザ2aとして、青紫色で発振する半導体レーザを用いる場合、蛍光体23bとして青色蛍光体および緑色蛍光体の組み合わせや青緑色蛍光体が用いられる。ここで、青色蛍光体とは、450nm以上490nm以下の波長範囲(青色領域)にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。青緑色蛍光体とは、490nm以上510nm以下の波長範囲(青緑色領域)にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。これらの蛍光体については、実施例2において詳しく説明する。
【0091】
〈蛍光体の発光原理〉
次に、半導体レーザ2aから発振されたレーザ光による蛍光体23bの発光原理について説明する。
【0092】
まず、半導体レーザ2aから発振されたレーザ光が発光部23に含まれる蛍光体23bに照射されることにより、蛍光体23b内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
【0093】
その後、この励起状態が不安定であるため、蛍光体23b内の電子のエネルギー状態は、一定時間後に元の低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
【0094】
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
【0095】
〈透光性基板および発光部の光学的特性の関係〉
透光性基板6と発光部23との間の界面の反射率Rをできる限り低下させ、レーザ光の発光部23での利用効率を高めることを考慮すれば、透光性基板6と発光部23との屈折率差Δnは、0.35以下であることが好ましい。この場合、反射率Rを1%以下にすることができる。また、屈折率差Δnを0.35以下とする場合、透光性基板6の屈折率を1.65以上、発光部23の屈折率を2.0以下とすることが好ましい。
【0096】
〈発光部の他の構成〉
発光部23は、前述のように拡散機能を有しているが、拡散機能を兼ね備えていなくてもよい。このような発光部としては、図5に示す第二のヘッドランプ21における発光部7を備えることができる。この発光部7を備える場合、発光部7が拡散機能を有していないので、後述するように、拡散機能を備えるために拡散部8が別途必要である。
【0097】
〔反射鏡の構成〕
反射鏡11は、発光部7から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する光学部材である。この反射鏡11は、発光部7からの光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。このため、反射鏡11は、例えば、金属薄膜が形成された曲面形状(カップ形状)を成す反射面を有している。
【0098】
また、反射鏡11は、半球面ミラーに限定されず、楕円面ミラーやパラボラミラーまたはそれらの部分曲面を有するミラーあってもよい。すなわち、反射鏡11は、回転軸を中心として図形(楕円、円、放物線)を回転させることによって形成される曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいるものであればよい。
【0099】
〔レンズの構成〕
レンズ12は、反射鏡11の開口部に設けられており、ヘッドランプ1を密封している。発光部7から出射された蛍光、拡散部8,9で散乱された散乱光、または反射鏡11によって反射された蛍光または散乱光は、レンズ12を通ってヘッドランプ1の前方へ出射される。
【0100】
レンズ12は、凸レンズであっても、凹レンズであってもよい。また、レンズ12は、必ずしもレンズ機能を有する必要はなく、少なくとも、発光部7から出射された蛍光、拡散部8,9で散乱された散乱光、または反射鏡11で反射した蛍光または散乱光を透過する透光性を有していればよい。
【0101】
なお、本発明の照明装置を室内照明器具(例えばシーリングライト)として適用する場合は、レンズ12に前述の拡散部8,9が有する拡散機能を備えていてもよい。このような構成では、拡散部8,9は不要となる。
【0102】
[第二のヘッドランプの構成]
〔ヘッドランプの全体構成〕
図5は、ヘッドランプ21の概略構成を示す縦断面図である。
【0103】
なお、第二のヘッドランプとしてのヘッドランプ21において、前述のヘッドランプ1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同じ符号を付記してその説明を省略する。
【0104】
図5に示すように、第二のヘッドランプとしてのヘッドランプ21は、光源ユニット2、導光部材3,4、固定部材5、透光性基板6、発光部7、拡散部8,9、ネジ10、反射鏡11およびレンズ12を備えている。
【0105】
このヘッドランプ21において、光源ユニット2の半導体レーザ2aから出射されたレーザ光が、導光部材3によって発光部7および拡散部8に導かれ、光源ユニット2の半導体レーザ2bから出射されたレーザ光が、導光部材4によって拡散部9に導かれる。また、発光部7が半導体レーザ2aから出射されたレーザ光によって励起されて蛍光を発するとともに、当該レーザ光が拡散部8によって拡散される。一方、半導体レーザ2bから出射されたレーザ光が拡散部9によって拡散される。これにより、発光部7から放出される蛍光と、拡散部8から放出される光と、拡散部9から放出される光とが混色されて、ヘッドランプ1は白色光を発する。
【0106】
〔導光部材の構成〕
導光部材3は、半導体レーザ2aが発振したレーザ光を発光部7へと導く部材である。この導光部材3は、半導体レーザ2aから出射されたレーザ光を入射する入射端部(半導体レーザ2a側)と、入射端部から入射したレーザ光を出射する出射端部(発光部7側)を有している。
【0107】
一方、導光部材4は、半導体レーザ2bが発振したレーザ光を拡散部9へと導く部材である。この導光部材4は、半導体レーザ2bから出射されたレーザ光を入射する入射端部(半導体レーザ2b側)と、入射端部から入射したレーザ光を出射する出射端部(拡散部9側)を有している。
【0108】
また、導光部材3,4は、入射端部に入射したレーザ光を反射する光反射側面で囲まれた囲繞構造を有している。しかも、導光部材3,4は、出射端部の断面積が入射端部の断面積よりも小さくなるように形成されている。具体的には、導光部材3,4は、全体が四角錐台形状をなしているが、それ以外の多角錐台形状、円錐台形状、楕円錐台形状など様々な形状に形成されてもよい。
【0109】
この囲繞構造により、導光部材3,4は、入射端部に入射したレーザ光を、入射端部の断面積よりも小さい断面積を有する出射端部に集光した上で発光部7および拡散部9に出射することができる。このため、発光部7および拡散部9を小さく設計することができる。
【0110】
また、導光部材3,4は、前述の導光部材22と同様、BK(ボロシリケート・クラウン)7、石英ガラス、アクリル樹脂などの透明素材によって形成される。
【0111】
なお、導光部材3,4の代わりに光ファイバーや光学レンズ等を用いて、レーザ光を発光部7に集光してもよい。
【0112】
〔発光部の構成〕
発光部7は、半導体レーザ2aから出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する部材であり、直方体を成すように形成されている。また、発光部7は、直方体に限定されず、例えば円柱形状に形成されてもよい。この発光部7は、透光性基板6のレンズ12側の面に、拡散部8と拡散部9とともに、前述の発光部23同様に接合(接着)されている。
【0113】
発光部7は、封止材7aに上記の蛍光を発する蛍光体7bが分散されることにより形成されている。あるいは、発光部7は、封止材7aに蛍光体7bが分散されることにより形成される以外に、蛍光体7bを押し固めることにより形成されてもよい。
【0114】
上記の封止材7aとしては、一般的な封止材に用いられる無機ガラスが用いられる。また、封止材7aとしては、上記の無機ガラスに限定されず、いわゆる有機無機ハイブリッドガラスやシリコーン樹脂などの樹脂材料であってもよい。ただし、耐熱性を考慮すれば、封止材7aはガラスから成ることが好ましい。
【0115】
〔拡散部の構成〕
拡散部8は、半導体レーザ2aから発光部7を介することなく外部に出射されるレーザ光や、発光部7を介するが十分に拡散・散乱されなかったレーザ光を拡散・散乱する光学部材である。これにより、拡散部8は、半導体レーザ2aから出射された発光点の非常に小さなレーザ光を、発光点を拡大して外部に出射する。したがって、人体への影響を抑制(例えばアイセーフ化)することができる。
【0116】
拡散部8は、外形が矩形を成すように形成されており、発光部7を取り囲むように設けられ、発光部7と同じ厚みを有している。拡散部8の大きさは、発光部7に照射されないレーザ光の全てが照射される大きさであればよい。また、拡散部8は、発光部7に照射されなかったレーザ光を十分に拡散させ、発光点のサイズを拡大させることができれば、発光部の周囲に同じ厚みで設けられる必要はない。例えば、拡散部8は、発光部7より大きい断面を有し、発光部7のレーザ光入射側と対向する表面に積層されていてもよい。また、拡散部8は、低融点ガラス中に、アエロジルやAlの微粉末(10nm〜5μm程度)が重量比10〜30%程度混合されたものである。拡散部8は、発光部7と同様、透光性基板6に接着(あるいは融着)されている。
【0117】
拡散部9は、半導体レーザ2bから外部に出射されるレーザ光を拡散・散乱する光学部材である。これにより、半導体レーザ2aから出射された発光点の非常に小さなレーザ光を、発光点を拡大して外部に出射するので、人体への影響を抑制(例えばアイセーフ化)することができる。
【0118】
拡散部9は、拡散部8と同じ外形を有しており、発光部7と同じ厚みを有している。また、拡散部8は、発光部7のレーザ光入射側と対向する表面に積層されていてもよい。また、拡散部9は、拡散部8と同じ材料により形成されている。
【0119】
〈安全性対策(アイセーフ化)〉
小さな発光点サイズを有する光源から高いエネルギーを有する光が出射され、当該光が人間の眼に入射した場合、網膜上では、その小さな発光点サイズにまで光源像が絞られる。このため、結像箇所におけるエネルギー密度が極めて高くなってしまうことがある。例えば、レーザ光源(半導体レーザ)から出射されるレーザ光は、スポットサイズが10μm角よりも小さい場合がある。そのような光源から出射されるレーザ光が、直接眼に入射、あるいはレンズや反射鏡といった光学部材を介したとしても小さな発光点が直接見える形で眼に入射すると、網膜上の結像箇所が損傷してしまうことがある。
【0120】
典型的な高出力の半導体レーザにおける発光点サイズは、例えば1μm×10μmである。すなわち、当該半導体レーザの出射面積は10μm=1.0×10−5mmである。このため、半導体レーザが出射する光が、例えば発光点サイズが1mmの光源と同じエネルギーを有する光であったとしても、半導体レーザの場合の網膜上での結像箇所のエネルギー密度は、発光点サイズが1mmの光源の場合よりも10倍も高くなる。
【0121】
これを回避するためには、発光点サイズをある程度の大きさ(有限のサイズ)に拡大させる必要がある。例えば、発光点サイズは1mm×1mm以上であることが好ましい。発光点サイズを拡大させることにより、網膜上での結像サイズを拡大させることができる。これにより、同じエネルギーの光が眼に入射した場合であっても、網膜上のエネルギー密度を低減させることが可能となる。
【0122】
発光点サイズを拡大させるためには、光源そのものの発光点を視認できないようにする必要がある。このため、本実施の形態では、上述のように拡散部8,9および拡散機能を有する発光部23を備えることにより、半導体レーザ2a,2bの発光点サイズを拡大させている。これにより、人体に対する安全性、特に人間の眼に対する安全性を確保している(アイセーフ化)。
【0123】
なお、発光点サイズの拡大については、レーザ光源に限らず、LED光源においても考慮することができる。但し、レーザ光は、LED光源から出射される光よりも単色性、すなわち波長が揃っているため、波長の違いによる網膜上での結像のボケ(いわゆる色収差)がなく、当該光よりも危険である。このため、レーザ光源から出射された光を照明光として利用する照明装置においては発光点サイズの拡大について、適正に考慮することが好ましい。
【0124】
[第三のヘッドランプの構成]
〔ヘッドランプの全体構成〕
図7は、ヘッドランプ31の概略構成を示す縦断面図である。
【0125】
なお、第三のヘッドランプとしてのヘッドランプ31において、前述のヘッドランプ1,21における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同じ符号を付記してその説明を省略する。
【0126】
図7に示すように、ヘッドランプ31は、光源ユニット32、光ファイバー束33、フェルール34、発光部35、反射鏡36、透過フィルタ(光学フィルタ)37、ハウジング38、エクステンション39およびレンズ40を備えている。半導体レーザ2、光ファイバー束32、フェルール34および発光部35によって発光装置の基本構造が形成されている。
【0127】
ヘッドランプ31は、前述のヘッドランプ21における導光部材3,4の代わりに光ファイバー束33(導光部)を備える点でヘッドランプ21とは異なる。光ファイバー束33は、光ファイバー(導光部)33a,33a(導光部)の束であり、光ファイバー33a,32bのそれぞれは、レーザ光が入射する入射端部と、レーザ光を出射する出射端部とを有している。
【0128】
〔光源ユニットの構成〕
光源ユニット32は、レーザ光源装置であり、筐体内に2つの半導体レーザ2a(励起光源),2bと、非球面レンズ32a,32bとを収容している。
【0129】
非球面レンズ32a,32bは、半導体レーザ2a,2bで発振されたレーザ光を収束させ、光ファイバー33a,33bの一方の端部である入射端部に入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ32a,32bとして、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ32a,32bの形状および材質は特に限定されないが、405nm近傍の透過率が高く、かつ、耐熱性のよい材料であることが好ましい。
【0130】
〔光ファイバー束の構成〕
光ファイバー束33は、光ファイバー33a,33bが束ねられることにより構成されている。光ファイバー33a,33bは、それぞれ半導体レーザ2a,2bが発振したレーザ光を発光部35へと導く導光部材である。各光ファイバー33a,33bは、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分としており、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。
【0131】
例えば、光ファイバー33a,33bは、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー33a,33bの構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー33a,33bの長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
【0132】
光ファイバー33a,33bは、それぞれレーザ光が入射する入射端部と、入射端部から入射したレーザ光を出射する出射端部とを有している。光ファイバー33a,33bのそれぞれの出射端部は、後述するように、フェルール34によって、発光部35のレーザ光照射面(受光面)に対して位置決めされている。
【0133】
〔フェルールの構成〕
図8は、光ファイバー束33の各光ファイバー33a,33bの出射端部と発光部35との位置関係を示す図である。
【0134】
図8に示すように、フェルール34は、光ファイバー33a,33bの出射端部を発光部35のレーザ光照射面に対して所定のパターンで保持する。このフェルール34は、光ファイバー33a,33bを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよい。あるいは、フェルール34は、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって光ファイバー33a,33bを挟み込むものでもよい。
【0135】
フェルール34の材質は、特に限定されず、例えばステンレススチールである。
【0136】
なお、フェルール34は、反射鏡36から延出する棒状の部材等によって固定されておればよい。
【0137】
フェルール34が光ファイバー33a,33bの出射端部を位置決めすることにより、光ファイバー33a,33bから出射されるレーザ光がそれぞれ有する光強度分布における最も光強度の大きい部分(最大光強度部分)が、発光部35の互いに異なる部分に対して照射される。この構成により、レーザ光が一点に集中することで、発光部35が著しく劣化することを防止できる。
【0138】
なお、出射端部は、レーザ光照射面に接触していてもよいし、僅かに間隔をおいて配置されてもよい。
【0139】
また、各光ファイバー33a,33bの出射端部を分散させて配置する必要は必ずしもなく、光ファイバー33a,33bの束をひとまとめにしてフェルール34で位置決めしてもよい。
【0140】
〔発光部の構成〕
発光部35は、各光ファイバー33a,33bの出射端部から出射されたレーザ光を受けて白色光(擬似白色光)を発するものであり、前述のヘッドランプ1における発光部23と同等の機能を有する発光部材である。また、ヘッドランプ31の発光部35の形状は直方体であり、横×縦×高さ=3mm×1mm×1mm程度の大きさである。発光部35は、後述する反射鏡36の第1焦点の近傍に配置される。この発光部35は、反射鏡36の中心部を貫いて延びる筒状部の先端に固定されてもよい。この場合には、筒状部の内部に光ファイバー束33を通すことができる。
【0141】
〔反射鏡の構成〕
反射鏡36は、開口部を有し、発光部35から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成し、上記開口部から出射するものである。具体的には、反射鏡36は、発光部35からの光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡36は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材である。
【0142】
また、反射鏡36は、半球面ミラーに限定されず、楕円面ミラーやパラボラミラーまたはそれらの部分曲面を有するミラーあってもよい。すなわち、反射鏡36は、回転軸を中心として図形(楕円、円または放物線)を回転させることによって形成される曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいるものであればよい。
【0143】
〔透過フィルタの構成〕
透過フィルタ37は、上述したものと同様、励起光を遮断し、発光部35から出射される蛍光を透過するものであり、発光部35を保持している。この透過フィルタ37を備えることにより、半導体レーザ2a,2bから放射されたレーザ光が直接的に外部に漏れることを防止できる。
【0144】
〔その他の部材の構成〕
ハウジング38は、ヘッドランプ31の本体を形成しており、反射鏡36等を収納している。光ファイバー束33は、このハウジング38を貫いており、光源ユニット32は、ハウジング38の外部に設置される。半導体レーザ2a,2bがレーザ光の発振時に発熱することにより、光源ユニット32をハウジング38の外部に設置することにより、半導体レーザ2a,2bを効率良く冷却することが可能となる。また、半導体レーザ2a,2bが故障する可能性があることから、半導体レーザ2a,2bを交換しやすい位置に光源ユニット32を設置することが好ましい。これらの点を考慮しなければ、光源ユニット32をハウジング38の内部に収納してもよい。
【0145】
エクステンション39は、反射鏡36の前方の側部に設けられており、ヘッドランプ31の内部構造を隠して見栄えを良くするとともに、反射鏡36と車体との一体感を高めている。このエクステンション39も反射鏡36と同様に金属薄膜がその表面に形成された部材である。
【0146】
レンズ40は、ハウジング38の開口部に設けられており、ヘッドランプ31を密封している。発光部35が発した光は、レンズ40を通ってヘッドランプ31の前方へ出射される。
【0147】
〔光ファイバーの光遮断のための構成〕
図7に示すように、出射端部33rは、レーザ光照射面(受光面)35aに接触していてもよいし、図示はしないが僅かにレーザ光照射面35a間隔を置いて配置されてもよい。ここで、出射端部33rがレーザ光照射面35aと僅かに間隔を置いて配置されている場合、ヘッドランプ31に対する衝撃により、出射端部33rから出射されたレーザ光がレーザ光照射面35aに適切に照射されない可能性がある。この場合、レーザ光が発光部35によってインコヒーレントな光に変換されることなく、反射鏡36から出射されてしまうことになる。例えば、図7において破線で示すように、発光部35が透過フィルタ37に接触するように設けられている場合には、反射鏡36と透過フィルタ37とで囲まれた空間(反射鏡36と反射鏡36の開口部とが形成する空間)中をレーザ光が伝播し、反射鏡36から出射される。
【0148】
つまり、出射端部33rがレーザ光照射面35aと僅かに間隔を置いて配置されている場合には、人体にとって有害な出力レベルのコヒーレントなレーザ光が、ヘッドランプ31の外部(前方)に出射されてしまう可能性がある。特に、半導体レーザ2が出射するレーザ光は高出力であるため、ヘッドランプ31の外部、特に前方に出射されてしまうことを防ぐ必要がある。
【0149】
この点を考慮すれば、出射端部33rとレーザ光照射面35aとは接触している(近接している)か、もしくはレーザ光の光路が覆われていることが好ましい。すなわち、出射端部33rとレーザ光照射面35aとが離間している場合に形成される、その間のレーザ光の光路と、その光路の外の空間(例えば前記反射鏡36と透過フィルタ37とで囲まれた空間)とを空間的に遮断することが好ましい。
【0150】
図7に示すように、反射鏡36の底部には、出射端部33rが挿入される中空部36aが形成されており、その中空部36aの中心に、発光部35のレーザ光照射面35aの中心が位置するように、発光部35が設けられている。また、出射端部33rを保持するフェルール34が中空部36aに挿入されている。つまり、図7に示すように、反射鏡36の中空部36aにおいて、レーザ光照射面35aと出射端部33rとが近接している。
【0151】
レーザ光照射面35aと出射端部33rとが近接することにより、出射端部33rから出射されたレーザ光を確実にレーザ光照射面35aに照射できる。このため、例えばヘッドランプ31が何らかの衝撃を受けた場合に、人体にとって有害な出力レベルのレーザ光がレーザ光照射面35aに照射されずに(すなわちレーザ光がインコヒーレントな光に変換されずに)直接外部に漏れ出てしまうのを防ぐことができる。それゆえ、安全性の高いヘッドランプ31を実現できる。
【0152】
また、反射鏡36と透過フィルタ37とで囲まれる空間(領域)をレーザ光が伝播することを防ぐ目的であれば、レーザ光照射面35aと出射端部33rとが近接していなくてもよい。すなわち、発光部35は、レーザ光照射面35aが、反射鏡36と反射鏡36の開口部とが形成する空間の外側となるように設けられていればよい。なお、前記「空間の外側」は、前記空間の境界面と前記空間の外部とを含む概念である。
【0153】
例えば、図7および図8に示すように、レーザ光照射面35aが、発光部35から出射された光を反射する反射鏡36の反射面と少なくとも同一面(反射鏡36の外部に面した側、すなわち前記空間の外側)となるように、発光部35が設けられている。また、発光部35自体が、反射鏡36の外部であって、ヘッドランプ31の内部に設けられていてもよい。この場合、例えば、中空部36aを延伸した筒(当該筒の材質はレーザ光を遮断する材質)の内部に、発光部35が備えられる。さらに、発光部35の一部が前記空間内に存在し、レーザ光照射面35aが当該空間の外部(中空部36aの内部)に存在してもよい。この場合、レーザ光照射面35aの形状および大きさは、中空部36aの開口面の形状および大きさに一致している。
【0154】
このような構成の場合、発光部35が、高出力のレーザ光を前記空間の内部で受光することがない。すなわち、人体にとって有害な出力レベルのレーザ光が前記空間を伝播して、ヘッドランプ31の光の照射方向に漏れ出てしまうことを防ぐことができる。また、例えばヘッドランプ31が何らかの衝撃を受けたときに、レーザ光がレーザ光照射面35aに照射されない事態が生じた場合であっても、レーザ光が、少なくとも前記光の照射方向に直接漏れ出てしまう事態を防ぐことができる。
【0155】
なお、図7に示すように、中空部36aは、反射鏡36の底部に形成されているが、これに限らず、反射鏡36のどの位置に形成されてもよい。
【0156】
また、発光部35は、中空部36aを完全に覆うように配置されている。これにより、出射端部33rから出射されたレーザ光が反射鏡36と透過フィルタ37とで囲まれる領域に出射され、反射鏡36の開口部から出射されてしまうことを防ぐことができる。このため、中空部36aは、レーザ光照射面35aの大きさ以下(レーザ光照射面35aが3mm×1mmの矩形の場合、中空部36aの開口面は3mm以下)となるように形成されている。なお、発光部35が中空部36aを完全に覆うことができれば、中空部36aの形状は、レーザ光照射面35aと必ずしも同じ形状でなくてよい。
【0157】
なお、前記反射鏡36と透過フィルタ37とで囲まれる空間をレーザ光が伝播することを確実に防ぐためには、図7に示すようにヘッドランプ31を構成することが好ましい。具体的には、(1)発光部35を、透過フィルタ37ではなく反射鏡36に保持し、(2)レーザ光照射面35aと出射端部33rとを近接させ、(3)発光部35が中空部36aを完全に覆うように配置させる。
【0158】
図8に示すように、発光部35とフェルール34とは、放熱部材41を介して設けられている。すなわち、レーザ光照射面35aと出射端部33rとは、放熱部材41を介して近接している。
【0159】
放熱部材41は、発光部35にレーザ光が照射されることにより、発光部35にて発生する熱を放散するものであり、レーザ光照射面35aと接して設けられている。放熱部材41の材質は、透明でかつ熱伝導率が高い材質、例えば窒化ガリウムやマグネシア(MgO)、サファイアなどが用いられる。
【0160】
また、放熱部材41は、板状の部材であり、中空部36aの開口面を覆うように中空部36aの内部に設けられている。放熱部材41の一方の表面(レーザ光出射面)にはレーザ光照射面35aが熱的に結合するように接着され、もう一方の表面(レーザ光受光面)には出射端部33rが接触または近接するように、発光部35と出射端部33rとが配置されている。
【0161】
なお、放熱部材41の形状は、発光部35にて発生する熱を、例えば反射鏡36に放散することができれば、中空部36aの開口面を覆うような形状には限られない。すなわち、レーザ光照射面35aの一部に接する、反射鏡36から延出する棒状、筒状を含む線状の部材であってもよい。
【0162】
例えば、放熱部材41が線状の部材であり、光軸中心から離れた位置(レーザ光照射面35aの端部)にのみ設けられている場合には、必ずしも透明である必要はない。ただし、レーザ光の利用効率の観点からいえば、透明であることが好ましい。また、放熱部材41を筒状として、レーザ光照射面35aの端部にのみ設けた場合であれば、その筒の中を液体、あるいは気体等を流す、あるいは、循環させることで、より放熱効果を高めることも可能である。
【0163】
一般に、蛍光体を含む微小な発光体をハイパワーの励起光で励起すると(すなわち高いパワー密度で発光体を励起すると)、発光体が激しく劣化するという問題が生ずる。このような問題は、本発明の発明者とその仲間たちが見出したものであり、当該発明者とその仲間たちが知る限りにおいて当該問題に明確に触れられた公知文献は無い。
【0164】
発光体を劣化させる原因の1つとして、励起光が照射される当該発光体の照射領域およびその近傍の領域(昇温領域と称する)における温度上昇が挙げられる。この場合、半導体レーザから高出力の励起光(レーザ光)が発光体に照射されると、当該発光体の昇温領域だけが局所的に極めて高温になるため、当該領域が急速に劣化してしまうという問題が生じる。
【0165】
したがって、蛍光体を含む微小な発光体をハイパワーの励起光で励起する構成において、発光体の劣化を防ぎ、明るく長寿命な光源を実現するためには、前記昇温領域における温度上昇を抑制することが望まれている。
【0166】
特に、図7および図8に示すように、レーザ光照射面35aと出射端部33rとが近接している場合には、レーザ光照射面35aと出射端部33rとの間隔がほとんどなくなるため、前記照射領域に対して、より強いレーザ光が照射されることとなる。このため、レーザ光照射面35aにおける前記昇温領域での発熱量が極めて大きくなり、当該昇温領域での温度上昇により発光部35が急速に劣化してしまう可能性がある。
【0167】
図7に示すヘッドランプ31では、中空部36aに放熱部材41を備え、放熱部材41を介して出射端部33rと発光部35とが近接している。そのため、レーザ光照射面35aに照射されるレーザ光に起因して発光部35において発生した熱を、放熱部材41を介して反射鏡36へと放散させることができるので、発光部35の長寿命化を図ることができる。なお、この点を考慮しなければ、放熱部材41を必ずしも備える必要はない。
【0168】
また、ヘッドランプ31は、図8に示すように、遮光部42を備えている。この遮光部42は、レーザ光照射面35aおよび出射端部33rの近傍に、出射端部33rから出射されたレーザ光のうち、レーザ光照射面35aに照射されなかったレーザ光、およびレーザ光照射面35aの表面で反射されたレーザ光の少なくとも一方を遮光する。遮光部42が反射鏡36に接続されることにより、遮光部42および反射鏡36が、少なくともレーザ光照射面35aおよび出射端部33rの近傍を覆う密閉空間を形成している。図8に示す構成では、フェルール34、レーザ光照射面35aおよび放熱部材41を覆う密閉空間を形成している。遮光部42の材質は、レーザ光が有する波長およびその近傍の波長を遮断するものであれば、どのような材質であってもよい。
【0169】
ここで、例えば発光部35が中空部36aの開口面を覆うことにより、反射鏡36と透過フィルタ37とが囲む空間にレーザ光が漏れ出ないようにして、ヘッドランプ31の前方に当該レーザ光が出射されるのを防ぐことはできる。しかし、この構成の場合、例えばヘッドランプ31への衝撃により、レーザ光がレーザ光照射面35aに適切に照射されない事態が生じた場合に、当該レーザ光が、中空部36a(発光部35とフェルール34との接続部)から漏れ出てしまう可能性がある。この場合、使用者が、ヘッドランプ31が収容されている筐体の覆い(自動車であればボンネット)を開けたときに、人体にとって有害な出力レベルのレーザ光が、直接使用者の目に入ってしまうという危険な事態が生じてしまう可能性がある。
【0170】
レーザ光照射面35aと出射端部33rとを近接させてもなお、例えばヘッドランプ31への衝撃により、レーザ光がレーザ光照射面35aに適切に照射されない事態が生じることがある。このような場合でも、遮光部42により、当該レーザ光が、中空部36aから外部に漏れ出ることを確実に防ぐことができる。また、レーザ光照射面35aと出射端部33rとが離間している場合であっても、レーザ光が遮光部42により密閉された空間から出射されてしまう、すなわち中空部36aから外部に漏れ出ることを防ぐことができる。なお、少なくともヘッドランプ31の前方にレーザ光が出射されるのを防ぐことを目的とするのであれば、遮光部42は必ずしも備えていなくてもよい。
【0171】
なお、図8に示すように、遮光部42は、特に、反射鏡36の外部に向かう方向(前記光の照射方向以外の方向)に、レーザ光が中空部36aから漏れ出ることを防ぐために設けられている。しかし、この構成に限らず、遮光部42は、前記光の照射方向に、レーザ光が出射されてしまうことを防ぐために設けられるものであってもよい。
【0172】
すなわち、遮光部42は、例えば図7において破線にて示すように、発光部35(レーザ光照射面35a)が、反射鏡36の内部に設けられている場合に、少なくとも、レーザ光照射面35aと出射端部33rとの間に形成されるレーザ光の光路の近傍を覆うように設けられてもよい。上記の場合、遮光部42は、少なくとも、レーザ光照射面35aとフェルール34とを覆う密閉空間を形成し、その形状は例えば筒状である。また、遮光部42の材質は、レーザ光が有する波長およびその近傍の波長を遮断するとともに、発光部35から出射された光を透過する材質であることが好ましい。
【0173】
このように、遮光部42が反射鏡36の内部に設けられる場合には、レーザ光が、反射鏡36と透過フィルタ37とで囲まれた空間を伝播し、反射鏡36の開口部から出射されてしまうことを防ぐことができる。
【0174】
なお、図7および図8に示す構成では、レーザ光照射面35aと中空部36aの開口面とが略同一の大きさとなっているが、当該開口面は、レーザ光照射面35aよりも小さくてもよい。この場合、レーザ光照射面35aの端部が反射鏡36に直接接続され、反射鏡36により保持される構成であってもよい。
【0175】
[ヘッドランプの制御系の構成]
ヘッドランプ1,21,31に共通して用いられる制御系について説明する。
【0176】
図9は、上記制御系の構成を示すブロック図である。
【0177】
図9に示すように、ヘッドランプ1,21,31は、制御系として、入力部51、出力制御部52および記憶部53を備えている。
【0178】
なお、これらの制御系は、ヘッドランプ1,21,31の構成要素であるが、例えばヘッドランプ1,21,31が取り付けられる車両等の制御系の一部として組み込まれていてもよい。
【0179】
〔入力部の構成〕
入力部51は、半導体レーザ2a,2bの出力変更指示などのユーザ操作を受け付ける部分であり、タッチパッドなどにより構成される。
【0180】
〔出力制御部の構成〕
出力制御部52は、入力部51に入力された出力変更指示を受け付けると、半導体レーザ2a,2bに所定の駆動電圧を印加する。あるいは、出力制御部52は、製造時に設定された駆動電圧を半導体レーザ2a,2bに印加するように、半導体レーザ2a,2bの出力を制御する。出力制御部52は、記憶部53に記憶されている制御プログラムを、例えばRAM(Random Access Memory)で構成される一次記憶部(不図示)に読み出して実行することにより、半導体レーザ2a,2bの出力制御の処理を行う。
【0181】
〔記憶部の構成〕
記憶部53は、出力制御部52が実行する制御プログラムおよび制御プログラムを実行するときに読み出すデータ(半導体レーザ2a,2bに印加する駆動電圧の値など)を記憶する。この記憶部53は、例えばROM(Read Only Memory)フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置によって構成される。
【0182】
なお、上記の一次記憶部は、RAMなどの揮発性の記憶装置によって構成されているが、記憶部53が一次記憶部の機能も備えていてもよい。
[実施例1]
ここで、ヘッドランプ21における半導体レーザ2a,2bおよび発光部23の蛍光体23bに用いられる蛍光体との組み合わせの具体例について説明する。
【0183】
なお、ヘッドランプ1,31における半導体レーザ2a,2bおよび発光部7の蛍光体7bに用いられる蛍光体との組み合わせについても、下記の具体例を適用することができる。
【0184】
本実施形態では、半導体レーザ2aとして、青紫色(波長400nm以上かつ420nm以下)で発振する半導体レーザを用い、半導体レーザ2bとして、赤色で発振する半導体レーザを用いる。赤色で発振する半導体レーザとしては、GaAs基板上に形成されたAlGaInP活性層を有する半導体レーザが好適である。
【0185】
半導体レーザ2aと組み合わされる蛍光体23bとして、青色蛍光体と緑色蛍光体とを組み合わせて用いる。あるいは、上記の青色蛍光体および緑色蛍光体の代わりに青緑色蛍光体を用いてもよい。これらの蛍光体の屈折率はどれも2程度である。また、封止材23aとして、前述のシリコーンや無機ガラスなどの材料のうち、屈折率が1.8程度またはそれ以下の材料を用いる。
【0186】
青色蛍光体としては、例えばJEM蛍光体が好適に用いられる。
【0187】
緑色蛍光体や青緑色蛍光体としては、例えば、各種の窒化物系または酸窒化物系の蛍光体が挙げられる。特に、酸窒化物系の蛍光体は耐熱性に優れ、高い発光効率で安定した材料であるので、耐熱性に優れ、高い発光効率で安定した発光部23を実現できる。
【0188】
例えば、緑色に発光する酸窒化物系蛍光体として、Eu2+がドープされたβ−SiAlON:Eu蛍光体などが挙げられる。また、青緑色に発光する酸窒化物系蛍光体として、Ce3+がドープされたCaα−SiAlON:Ce蛍光体などが挙げられる。β−SiAlON:Eu蛍光体は、青紫色の励起光によりピーク波長が約540nmの強い発光を示す。この蛍光体の発光スペクトル半値幅は約55nmである。また、Caα−SiAlON:Ce蛍光体は、青紫色の励起光によりピーク波長が約510nmの強い発光を示す。
【0189】
上記のα−SiAlONおよびβ−SiAlON(サイアロン)は、酸窒化物蛍光体の中でも、いわゆるサイアロン蛍光体と通称される蛍光体である。サイアロンとは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に置換され、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。サイアロン蛍光体は、窒化ケイ素(Si)に、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、希土類元素などを固溶させて作ることができる。このサイアロン蛍光体にカルシウム(Ca)またはユーロピウム(Eu)を固溶させると、YAG:Ce蛍光体よりも長波長の範囲で発光する特性の良い蛍光体が得られる。
【0190】
上記の構成においては、それぞれ封止材23aと蛍光体23bとの界面における反射率が2.7%となる。一般的な発光部には、レーザ光の散乱という観点で見たときに十分な量の蛍光体が分散されている。したがって、蛍光体23bとして用いられる前記の蛍光体は、赤色レーザ光に対する良好な散乱・拡散材とすることができる。
【0191】
また、青紫色レーザ光と上記の蛍光体とを組み合わせことにより、下記のような二つの効果が得られる。
【0192】
第一の効果は、蛍光体が受ける光が青紫色光であることにより、上述した緑色蛍光体、青緑蛍光体、青色蛍光体のいずれもが、青色光よりも吸収率が高くなるので、蛍光体の外部量子効率(内部量子効率×吸収率)も大きくなることである。
【0193】
第二の効果は、β−SiAlON:Eu蛍光体、Caα−SiAlON:Ce蛍光体およびJEM蛍光体は、安定性および耐熱性が高い酸窒化物蛍光体であるため、励起光としてレーザ光を用いる場合に適していることである。
【0194】
[実施例2]
続いて、ヘッドランプ21における半導体レーザ2a,2bおよび発光部23の蛍光体23bに用いられる蛍光体との組み合わせの他の具体例について説明する。
【0195】
なお、ヘッドランプ1,31における半導体レーザ2a,2bおよび発光部7の蛍光体7bに用いられる蛍光体との組み合わせについても、下記の具体例を適用することができる。
【0196】
本実施形態では、半導体レーザ2aとして、青色(440nm〜470nm)で発振する半導体レーザを用い、半導体レーザ2bとして、赤色で発振する半導体レーザ(実施例1で用いた半導体レーザと同様の半導体レーザ)を用いる。
【0197】
また、半導体レーザ2aと組み合わされる蛍光体23bとして、黄色蛍光体(例えばYAG:Ce蛍光体)とを用いる。あるいは、黄色蛍光体に代えて、緑色で発振するGAL蛍光体(アルミネート系蛍光体)やβ−SiAlON蛍光体を用いてもよい。
【0198】
YAG:Ce蛍光体の屈折率は1.9〜2程度である。さらに、封止材23aとして、一般的な封止材に用いられるシリコーンや無機ガラス材料のうち、屈折率が実施例1と同様の1.8程度またはそれ以下の材料を用いる。あるいは、封止材23aとして、1.7以下の屈折率を有する上記の材料を用いてもよい。
【0199】
YAG:Ce蛍光体とは、Ceで賦活したイットリウム(Y)−アルミニウム(Al)−ガーネット(Garnet)蛍光体である。YAG:Ce蛍光体は、一般に550nm付近(550nmよりも若干長波長側)に発光ピークが存在するブロードな発光スペクトルを有する。
【0200】
YAG:Ce蛍光体としては、例えばIntematix社製のYAG:Ce蛍光体(NYAG4454)が用いられる。このIntematix社製のYAG:Ce蛍光体は、外部量子効率が90%、発光ピーク波長(以下、単に「ピーク波長」という)は558nm(黄色)、色度点はx=0.444、y=0.536であり、430nmから490nmの励起光で良好に励起される。
【0201】
発光部7は、YAG:Ce蛍光体を、封止材7aとしての低融点の無機ガラス(屈折率n=1.760)の内部に分散させて製造される。YAG:Ce蛍光体と低融点の無機ガラス(低融点ガラス)との配合比は、例えば30:100程度である。これに限らず、発光部7でレーザ光を拡散させてそのレーザ光の色成分(例えば青色成分)を利用する場合には、上記の配合比は10:100程度が好ましい。
【0202】
上記の構成においても、それぞれ封止材23aと蛍光体23bとの界面における反射率が2.7%となる。したがって、蛍光体23bとして用いられる前記の蛍光体は、赤色レーザ光に対する良好な散乱・拡散材とすることができる。
【0203】
また、青色レーザ光と上記の蛍光体とを組み合わせことにより、下記のような二つの効果が得られる。
【0204】
前述のCaα−SiAlON:Ce蛍光体やJEM蛍光体は、青色光でほとんど励起されない。しかしながら、β−SiAlON蛍光体は、青紫光より若干(数%程度)効率が低下するものの、青色光で良好に励起することができる。また、GAL蛍光体も、青色光で良好に励起できる。特に、レーザ光を励起光として用いる場合、酸窒化物蛍光体の一種であるβ−SiAlON蛍光体は最適である。また、GAL蛍光体も、信頼性に優れることから、レーザ光を励起光として用いる場合に適している。
【0205】
[ヘッドランプの効果]
最後に、ヘッドランプ1,21,31の効果について説明する。
【0206】
以上のように、ヘッドランプ1,21,31は、励起光源として、青紫色または青色の波長で発振する半導体レーザ2aと、赤色の波長でレーザ光を発振する半導体レーザ2bとを備えている。さらに、ヘッドランプ1,21,31は、半導体レーザ2aからのレーザ光により励起されて蛍光を発する蛍光体7b,23bを含む発光部7,23と、半導体レーザ2bから出射されたレーザ光を拡散する拡散部8(発光部23)とを備えている。
【0207】
上記の構成では、赤色蛍光体を用いることなく、半導体レーザ2bからのレーザ光により赤色光を得ている。これにより、赤色光を得るために赤色蛍光体を用いた従来の場合のように、視感度が低い、あるいは視感度がない領域の光を本質的に含まずに赤色光を照明光として含ませることができる。したがって、赤色の演色性(再現性)がよく、低消費電力で発光するヘッドランプ1,21,31を得ることができる。
【0208】
図10は、赤色半導体レーザの電流対光出力特性を示すグラフである。また、図11は、赤色半導体レーザの発光スペクトルを示すグラフである。
【0209】
図10に示すように、赤色半導体レーザは、5A以上の電流に対してほぼ線形の関係となる出力の光を発する。また、図11に示すように、赤色半導体レーザの光は、635nm近傍だけの光を含み、640nmやそれ以上の光を含んでいないことが分かる。このように、赤色半導体レーザを用いることにより、極めて単色性の強い赤色光を発生させて、発生させた光すべてを可視光とすることができる。したがって、従来の白色LEDと比較してより効率がよい、低消費電力で発光可能な光源を得ることができる。
【0210】
また、半導体レーザ2bの発振波長は600nm以上675nm以下が好ましい。これにより、赤色の視感度を向上させることができる。
【0211】
また、ヘッドランプ21においては、半導体レーザ2bの発振波長において、発光部23の蛍光体23bの吸収率が10%以下であることが好ましい。このような蛍光体23bを用いることで、半導体レーザ2bから放出される赤色光は、発光部23でほとんど吸収されることなく散乱・拡散され、発光点サイズが拡大されてヘッドランプ21の外部に蛍光と混色されて放出される。
【0212】
上記の蛍光体23bとしては、例えば、β−SiAlON:Eu、Caα−SiAlON:Ce蛍光体、JEM蛍光体、YAG:Ce蛍光体、GAL蛍光体またはβ−SiAlON蛍光体を用いることが好ましい。特に、YAG:Ce蛍光体は、600nm以上の波長域において、その吸収率が1%以下であり、赤色光をほとんど吸収せずに散乱・拡散させることができる。
【0213】
なお、YAG:Ce蛍光体を用いる場合、半導体レーザ2aとしては、発振波長が440nm以上、470nm以下の半導体レーザを用いることが好ましい。また、YAG:Ce以外に、アルミネート系蛍光体であるGAL蛍光体を用いてもよい。これにより、半導体レーザ2aの青色領域のレーザ光と、発光部23で発光する光との混色により、擬似白色光が得られる。
【0214】
また、発光部23は、蛍光体23bが分散された封止材23aを有しており、封止材23aの屈折率は蛍光体23bの屈折率よりも小さいことが好ましい。このような屈折率の関係とすることにより、蛍光体23bは、赤色光を吸収せずに散乱・拡散させるだけの散乱体として機能する。
【0215】
[本発明の他の構成]
照明装置は、異なる波長で発振する第一半導体レーザおよび第二半導体レーザと、第一半導体レーザから放出されたレーザ光により励起され蛍光を発する蛍光体を含む発光部とを備える。第一半導体レーザは青紫色または青色の波長で発振し、第二半導体レーザの発振波長域が赤色である。また、蛍光体の赤色光領域における吸収率が10%以下である。第二半導体レーザから放出されたレーザ光が前記蛍光体を含む発光部によって、散乱された後に前記蛍光と混色されて光源の外部に放出される。
【0216】
[付記事項]
なお、前述の実施形態においては、第一励起光源が半導体レーザ2aであったが、第一励起光源は他のレーザ光源であってもよく、レーザ光以外の励起光を発振するLED、有機ELなどの光源であってもよい。
【0217】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明に係る照明装置は、視感度が低い領域の光あるいは視感度がない領域の光を本質的に含まずに赤色光を照明光として含むことにより、赤色に対する良好な演色性(再現性)を有し、かつ低消費電力で発光可能となるので、特に車両用等のヘッドランプなどに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0219】
1 ヘッドランプ(照明装置,前照灯)
2a 半導体レーザ(第一の光源)
2b 半導体レーザ(第二の光源)
7 発光部
7a 封止材
7b 蛍光体
8,9 拡散部
21 ヘッドランプ(照明装置,前照灯)
23 発光部
23a 封止材
23b 蛍光体
31 ヘッドランプ(照明装置,前照灯)
33 光ファイバー束(導光部)
33r 出射端部
35 発光部
35a レーザ光照射面(受光部)
36 反射鏡
36a 中空部
41 放熱部材
42 遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青紫色または青色の波長で励起光を発振する第一の光源と、
赤色の波長でレーザ光を発振する第二の光源と、
前記第一の光源から出射された励起光により励起されて蛍光を発する蛍光体を含む発光部と、
前記第二の光源から出射されたレーザ光を拡散する拡散部とを備えていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記第二の光源の発振波長が600nm以上かつ675nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記発光部は前記拡散部を兼ねており、
前記蛍光体は赤色光領域における吸収率が10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第一の光源の発振波長が400nm以上かつ420nm以下であり、
前記蛍光体が青色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせまたは青緑色蛍光体であることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記緑色蛍光体がβ−SiAlON:Euであり、前記青緑色蛍光体がCaα−SiAlON:Ce蛍光体であることを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記青色蛍光体がJEM蛍光体であることを特徴とする請求項4または5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記第一の光源の発振波長が440nm以上かつ470nm以下であり、
前記蛍光体が黄色蛍光体または緑色蛍光体のうち少なくとも一つを含んでいることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項8】
前記黄色蛍光体がYAG:Ce蛍光体であることを特徴とする請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記緑色蛍光体がGAL蛍光体であることを特徴とする請求項7に記載の照明装置。
【請求項10】
前記緑色蛍光体がβ−SiAlON蛍光体であることを特徴とする請求項7に記載の照明装置。
【請求項11】
2つの光入射面を有するハーフミラーをさらに備え、
前記第一の光源は、一方の前記光入射面に前記第一の光源から出射された励起光が入射するように配置され、
前記第二の光源は、他方の前記光入射面に前記第二の光源から出射されたレーザ光が入射するように配置され、
前記ハーフミラーは、入射した励起光およびレーザ光を前記発光部へ出射する位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項12】
前記第二の光源が半導体レーザであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項13】
前記発光部は、前記蛍光体が分散され、かつ前記蛍光体の屈折率より小さい屈折率を有する封止材を有していることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項14】
前記発光部から出射する光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡をさらに備え、
前記発光部は、前記第一の光源から出射された励起光および前記第二の光源から出射されたレーザ光を受光する受光面を有し、当該受光面が、前記反射鏡と当該反射鏡の開口部とが形成する空間の外側となるように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項15】
前記第一の光源から出射された励起光および前記第二の光源から出射されたレーザ光を受け取り、前記励起光および前記レーザ光を前記発光部に出射する導光部をさらに備え、
前記発光部は、前記導光部から出射された前記励起光および前記レーザを受光する受光面を有し、
前記導光部は、前記第一の光源から受け取った励起光および前記第二の光源から受け取ったレーザ光を前記発光部に出射する出射端部を有し、
前記受光面および前記出射端部の近傍に、前記出射端部から出射された励起光およびレーザ光のうち、前記受光面に照射されなかった励起光およびレーザ光、ならびに前記受光面にて反射された励起光およびレーザ光の少なくとも一方を遮光する遮光部を備えることを特徴とする請求項14に記載の照明装置。
【請求項16】
前記第一の光源から出射された励起光および前記第二の光源から出射されたレーザ光を受け取り、前記励起光および前記レーザ光を前記発光部に出射する導光部をさらに備え、
前記発光部は、前記導光部から出射された前記励起光および前記レーザを受光する受光面を有し、
前記導光部は、前記第一の光源から受け取った励起光および前記第二の光源から受け取ったレーザ光を前記発光部に出射する出射端部を有し、
前記受光面と前記出射端部とが近接していることを特徴とする請求項14または15に記載の照明装置。
【請求項17】
前記反射鏡は、前記出射端部が挿入される中空部を有し、
前記中空部には、前記発光部に前記励起光および前記レーザ光が照射されることにより、当該発光部にて発生する熱を放散する放熱部材が備えられ、
前記受光面と前記出射端部とは、前記放熱部材を介して近接していることを特徴とする請求項16に記載の照明装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の照明装置を備えていることを特徴とする前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−89469(P2013−89469A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229238(P2011−229238)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】