説明

照明装置の製造方法及び画像表示装置の製造方法

【課題】開口率を向上する。
【解決手段】フロントライトの製造工程は、以下の工程を含む。第1基板210に陽極222を形成する工程と、陽極222の上に発光機能層223を形成する工程と、マスクMを位置決めする工程と、位置決めされたマスクMを用いて、第1材料を蒸着させて発光機能層223を覆うように陰極224を形成する工程と、位置決めされたマスクMをそのまま用いて、第2材料を蒸着させて遮光層230を形成する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置の製造方法及び画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子に代わる次世代の発光デバイスとして、有機EL(ElectroLuminescent)素子や発光ポリマー素子などと呼ばれる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下「OLED素子」という)素子が注目されている。
また、OLED素子を用いた照明装置として、反射型液晶装置のフロントライトが知られている。フロントライトは、反射型液晶装置の観察面に貼り付けられて用いられる。フロントライトを用いることで暗い環境下でも画像を表示することが可能となる。
OLED素子は、陽極と、陰極と、これらの電極との間に有機EL材料からなる発光層を挟持して構成される。ここで、陽極を反射型液晶装置の側に設け、陰極を観察面の側に設けると、陰極からの光が観察者に入るため、コントラストが低下してしまう。
そこで、陰極の上に遮光層を設け、遮光層の面積を陰極の面積よりも大きくする技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−156751号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、遮光層の面積を大きくなるので開口率が低下する。このため、外光を反射型液晶装置に十分取り込むことができないといった問題があった。
本発明は、高い開口率を備えた照明装置を製造する方法を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る照明装置の製造方法は、第1面と第2面を有し、前記第1面から光を射出する発光素子と前記発光素子の光が第2面へ射出しないように遮光する遮光層とを備えた照明装置を製造する方法であって、基板上に第1電極を形成する工程と、前記第1電極の上に発光機能層を形成する工程と、マスクを位置決めする工程と、位置決めされたマスクを用いて、第1材料を蒸着させて前記発光機能層を覆うように第2電極を形成する工程と、前記位置決めされたマスクをそのまま用いて、第2材料を蒸着させて前記遮光層を形成する工程とを備える。
【0006】
この発明によれば、第2電極の形成に用いるマスクと、同じマスクを用いて遮光層を形成するから、第2電極と遮光層の面積は同じになる。また、異なるマスクを用いることによる開口位置ずれ及び開口寸法ずれが原理的に発生しない。さらに、遮光層の形成に際して位置決めされたマスクをそのまま用いるので、アライメント公差を無くすことができる。よって、高い開口率の照明装置を製造することが可能となる。
なお、「位置決めされたマスクをそのまま用いて」とは、マスクを基板から着脱しないでとの意味である。
また、発光機能層は、有機EL材料を含むことが好ましい。
【0007】
本発明に係る画像表示装置の製造方法は、第1面と第2面を有し、前記第1面から光を射出する発光素子と前記発光素子の光が第2面へ射出しないように遮光する遮光層とを備えた照明装置と反射型液晶パネルとを備えた画像表示装置を製造する方法であって、前記照明装置と前記反射型液晶パネルとを貼り合わせる工程を備え、前記照明装置を製造する工程は、基板上に第1電極を形成する工程と、前記第1電極の上に発光機能層を形成する工程と、マスクを位置決めする工程と、位置決めされたマスクを用いて、第1材料を蒸着させて前記発光機能層を覆うように第2電極を形成する工程と、前記位置決めされたマスクをそのまま用いて、第2材料を蒸着させて前記遮光層を形成する工程と、有することを特徴とする。
この製造方法によって製造された画像表示装置は、そこに用いられる照明装置の開口率が高いので明るい画像を表示させることが可能となり、さらには、照明装置で消費される電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る画像表示装置1の構成を示す断面図である。
【図2】フロントライト106の第1基板210に形成される発光素子220及び遮光層230の詳細な構造を示す断面図である。
【図3】発光素子220の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】フロントライト106の製造方法を説明するための説明図である。
【図5】フロントライト106の製造方法を説明するための説明図である。
【図6】本実施形態に係る発光部P、陰極222、及び遮光層230の関係を説明するための平面図である。
【図7】陰極223をマスクMを用いて形成し、遮光層230を第2基板260に形成した場合の比較例を示す平面図である。
【図8】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。また、本発明は、以下に述べる各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を変形して得られる各種の変形例や、各実施形態またはその変形例を応用して得られる形態をも技術的範囲に含みうる。なお、各図において共通する部分には同一の符号が付されている。
【0010】
<画像表示装置>
図1は本発明の実施形態に係る画像表示装置1の構成を示す断面図である。画像表示装置1は、反射型液晶パネル101と照明装置としてのフロントライト106とを備える。
反射型液晶パネル101は、表示基板201と、表示基板201上に形成された複数のTFT(薄膜トランジスタ)202と、TFT202を覆って表示基板201上に形成された絶縁層203と、その上に形成された光反射性の複数の画素電極204とを有する。画素電極204は、絶縁層203に形成されたコンタクトホールを介して、対応するTFT202と電気的に接続されている。
【0011】
また、対向基板207の表示基板201と対向する面には共通電極206が形成される。対向基板207と表示基板201とは所定の間隙を持って貼り合わせてある。この間隙には、液晶205が充填されている。一方、対向基板207の他方の面(表示基板201と対向しない面)には、偏光板208が形成される。
そして、偏光板208上に形成された接着層209によって、反射型液晶パネル101とフロントライト106とが接着される。
【0012】
フロントライト106は、接着層209上に設けられた透明な第1基板210と第1基板上に形成された複数の発光素子220と、発光素子220の上に形成された遮光層230と、外気や水分等から発光素子220を保護するために第1基板210と対向して設けられた透明な第2基板260とを備える。発光素子220は第1基板210側の第1面へ向けて光を射出し、遮光層230は、第2基板260側の第2面から発光素子220からの光が射出しないように設けられる。
【0013】
第1基板210および第2基板260は、例えばガラスで形成される。発光素子220の発光には、各液晶素子LCへ向かう光が含まれており、これらの光は、第1基板210を透過し、各液晶素子LCへ入射する。また、液晶素子LCには、第2基板260を透過して当該液晶素子LCへ向かう外光が入射する。
【0014】
遮光層230は、発光素子220から第2基板260へ向かう光の遮断を目的として設けられている。また、遮光層230としては、第2基板260から入射した外光(直接光)を反射しないものが好ましい。遮光層230、この事情と上記の目的とに応じた材料、具体的には光反射率の低い材料(例えばクロム、酸化クロム、あるいは酸化亜鉛)を用いて形成されている。
【0015】
図2に、フロントライト106の第1基板210に形成される発光素子220及び遮光層230の詳細な構造を示す。第1基板210には隔壁221が形成されている。隔壁14は、絶縁性の透明材料、例えばアクリル、ポリイミドなどにより形成されている。
【0016】
発光素子220は、陽極222、発光機能層223及び陰極224を有する。陽極222は及び発光機能層223は、隔壁221の内側に形成される。発光機能層223は、少なくとも発光層を含み、発光層は正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から形成されている。発光機能層223を構成する他の層として、電子ブロック層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層および正孔ブロック層の一部または全部を備えていてもよい。
図3に、発光素子220の構造の一例を模式的に示す。この例の発光素子220は、ITOで形成された陽極222と、その上に形成された正孔注入層301と、その上に形成された正孔輸送層302と、その上に形成された発光層303と、その上に形成された電子輸送層304と、その上に形成された電子注入層305と、その上に形成された陰極224とを有する。
【0017】
正孔注入層301は、銅フタロシアニン薄膜であり、その膜厚は約10nmである。正孔輸送層302は、例えばNPD薄膜であり、その膜厚は約30nmである。発光層303は、例えば低分子白色発光材料の薄膜であり、その膜厚は約20nmである。電子輸送層304は、例えばアルミキノリノール錯体(tris(8-hydroxyquinoline)aluminum)の薄膜であり、その膜厚は約20nmである。電子注入層305は、例えばフッ化リチウム薄膜であり、その膜厚は約10nmである。陰極224は、アルミニウム薄膜であり、その膜厚は約150nmである。
【0018】
説明を図2に戻す。陰極224は、隔壁221を乗り越えて配線240に至るように形成される。陰極224と配線240とが重なる部分がコンタクト領域Cとなる。そして、遮光層230が陰極224の上に形成される。本実施形態では、陰極224の形と遮光層230の形が同一となり、遮光層230が陰極224からずれることなく重なる。
【0019】
<フロントライトの製造方法>
次に、フロントライト106の製造方法について説明する。まず、図4(A)に示すように、無アルカリガラスなどのガラスまたはプラスチックで形成された基板210を準備し、発光素子220に給電して発光させるための配線240を形成する。
【0020】
続いて、図4(B)に示すように、基板210上に陽極222を形成する。例えば、スパッタリングによってITOの膜を50nmの一様な厚さに基板210の全面に形成した後にオーブンで焼結する。そして、そのITO膜上にフォトリソグラフィーの手法で露光により所要の部分にレジストを形成し、例えばBHF(フッ酸/フッ化アンモニウム水溶液)のようなITOエッチャントによってエッチングすることによって、図示の陽極222のパターニングを行い、レジストを剥離する。
【0021】
次に、図4(C)に示すように、隔壁221を格子状に形成する。例えば隔壁221の材料となるアクリルまたはポリイミドに感光性材料を混合して、フォトリソグラフィーの手法で露光により隔壁221をパターニングし、ベークする。次に、図4(D)に示すように、隔壁222に内側に発光機能層223を形成する。発光機能層223は、例えば、陽極222に近い方から遠い方に向けて、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層が並んでいる。これらの層の形成には蒸着が使用される。より具体的には、蒸着装置のチャンバ内に基板210を収容して、チャンバ内を真空にした状態で蒸着材料を気化させて、蒸着行う。
【0022】
次に、図4(E)に示すように陰極224を形成する位置にマスクMを位置決め行う。この位置決めには、チャンバ内に設けられたアライメント機構が用いられる。基板210は、チャンバ内に設けられた保持機構によって保持されている。アライメント機構は、基板210に対するマスクMの位置を精密に決めることができる。
【0023】
この後、図5(A)に示すように陰極224の材料を気化させて、マスクMを介して蒸着を行う。この結果、図5(B)に示すように所定の厚さの陰極224を形成することができる。これに続いて、位置決めされているマスクMをそのまま用いて、すなわち、マスクMを第1基板210から着脱することなく保持し、図5(C)に示すように、遮光層230の材料を気化させて、マスクMを介して蒸着を行う。この結果、図5(D)に示すように所定の厚さの遮光層230を形成することができる。
こうして、製造された第1基板210を、所定の間隙をあけて第2基板260と貼り合わせることにより、フロントライト106を製造できる。そして、フロントライト106と反射型液晶パネル101とを貼り合わせることで、画像表示装置1を製造することができる。
【0024】
このように本実施形態では、陰極224の形成に用いるマスクMを、遮光層230の形成にも用いたので、陰極223と遮光層230が完全に重なる。ここで、隔壁221の内側を発光部Pとしたとき、図6は、本実施形態に係る発光部P、陰極222、及び遮光層230の関係を説明するための平面図である。図7は、陰極223をマスクMを用いて形成し、遮光層230を第2基板260に形成した場合の比較例である。
この例では、発光部Pが縦30μm、横30μmで形成される。また、陰極224を形成する際に用いるマスクMの開口部のサイズを縦60μm・横75μmであるとする。
【0025】
位置ばらつきは、開口寸法、開口位置、及び装置のアライメント精度がばらつくことによって生じる。マスク蒸着の場合、開口寸法ばらつきが±3μm程度、開口位置ばらつきが±8μm程度、アライメント精度のばらつきが±5μm程度、見込まれる。この場合、ばらつきを二乗和の根として考えると、位置ばらつきは±10μm程度になる。
したがって、±10μm程度は陰極223が形成される位置がばらつくことになる。このため、比較例において遮光層230は少なくとも左右上下に10μmは陰極223が形成される領域よりも広げる必要がある。さらに、他の要因により±5μm程度のばらつきを見込む必要がある。このため、陰極223の交差は±15μmとなる。
よって、図7に示すように陰極224が形成される可能性がある領域Xは縦90μm・横105μmとなる。ここで、遮光層230を高い精度で形成する方法として、第2基板260上にブラックマトリクスとして形成する方法がある。この場合の位置ばらつきは±5μm程度となる。よって、陰極224を完全に遮光層230で覆う場合には、遮光層230を縦100μm・横115μmの領域Yに形成する必要がある。
仮に、発光部Pのピッチを300μmとすれば、フロントライト106の開口率は87%となる。
【0026】
これに対して、図6に示す本実施形態では、マスク蒸着に交差があったとしても、同一のマスクMを位置決め(アライメント)を変更することなく用いて、陰極223と遮光層230とを形成する。具体的には、陰極223の形成を行ったマスクMを基板210から着脱すること無く遮光層230を形成する。
このため、同一のマスクMを使用することで、個々のマスクを生じる開口位置ずれ、開口寸法ずれを無くすことができる。くわえて、マスクMを基板210から着脱しないので、蒸着装置のアライメント公差も無くすことができる。
この結果、縦100μm・横115μm必要であった遮光層230を形成する領域Yが、縦60μm・横75μmで足りるので、開口率を95%まで上げることができる。よって、本実施形態によれば、開口率の高いフロントライト106を得ることができる。
【0027】
<応用例>
次に、本発明に係るフロントライト106を利用した電子機器について説明する。図8は、以上に説明した画像表示装置1を採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、フロントライト106を備えた反射型液晶パネル101と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。このパーソナルコンピュータ2000は、開口率の高いフロントライト106を備えるので、明るい画面を表示させることができる。
【0028】
図9に、実施形態に係るフロントライト106及び反射型液晶パネル101を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、反射型液晶パネル101に表示される画面がスクロールされる。
【0029】
図10に、実施形態に係るフロントライト106及び反射型液晶パネル101を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置10を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が表示される。
【0030】
なお、本発明に係るフロントライト106を適用した電子機器としては、図8から図10に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【符号の説明】
【0031】
1……画像表示装置、105……反射型液晶パネル、106……フロントライト、210……第1基板、222……陽極(第1電極)、223……発光機能層、224……陰極、230……遮光層、M……マスク。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面を有し、前記第1面から光を射出する発光素子と前記発光素子の光が第2面へ射出しないように遮光する遮光層とを備えた照明装置の製造方法であって、
基板上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上に発光機能層を形成する工程と、
マスクを位置決めする工程と、
位置決めされたマスクを用いて、第1材料を蒸着させて前記発光機能層を覆うように第2電極を形成する工程と、
前記位置決めされたマスクをそのまま用いて、第2材料を蒸着させて前記遮光層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする照明装置の製造方法。
【請求項2】
前記発光機能層は、有機EL材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の照明装置の製造方法。
【請求項3】
第1面と第2面を有し、前記第1面から光を射出する発光素子と前記発光素子の光が第2面へ射出しないように遮光する遮光層とを備えた照明装置と反射型液晶パネルとを備えた画像表示装置の製造方法であって、
前記照明装置と前記反射型液晶パネルとを貼り合わせる工程を備え、
前記照明装置を製造する工程は、
基板上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上に発光機能層を形成する工程と、
マスクを位置決めする工程と、
位置決めされたマスクを用いて、第1材料を蒸着させて前記発光機能層を覆うように第2電極を形成する工程と、
前記位置決めされたマスクをそのまま用いて、第2材料を蒸着させて前記遮光層を形成する工程と、
を有することを特徴とする画像表示装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−244828(P2010−244828A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91842(P2009−91842)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】