説明

照明装置及びその製造方法

【課題】薄形かつ省電力にして液晶表示装置の高輝度化及び表示品質の高度化が可能な照明装置とその製造方法を提供する。
【解決手段】照明装置1Aを、接着剤層3を介して一体に接合されたマイクロレンズアレイ1と発光部材2とから構成する。マイクロレンズアレイ1には、複数のコリメーションレンズ12を所要の配列で形成する。発光部材2には、点状発光源23aをコリメーションレンズ12と同一の配列で形成する。各点状発光源23aを各コリメーションレンズ12の焦点位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライト等として使用される照明装置とその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話やPDA等の小型電子機器に備えられる液晶表示装置のバックライト部として、LEDや冷陰極管を用いる場合に比べてバックライト部の薄形化及び省電力化並びに液晶表示装置の高輝度化に有利であることから、エレクトロルミネセンス素子(以下、本明細書においてはこれを「EL素子」と略称する。)を適用することが検討されている。
【0003】
図6に示すように、従来より知られている一般的なEL素子100は、透明基板101の片面に透明電極102と発光層103と光反射性の下部電極104とをこの順に積層してなる構造を有し、透明電極102と下部電極104の間に所定の電圧を印加することにより発光層103を発光させ、この発光層103から出射された光を透明電極102及び透明基板101を介して素子外に取り出すようになっている。なお、透明基板101はガラスなどの扁平な透光性材料から構成され、透明電極102はITO(インジウム−スズ酸化物)などの透光性導電材料から構成される。また、発光層103はZnS(硫化亜鉛)などの無機発光材料又は有機発光材料から構成され、光反射性の下部電極104はアルミニウムの蒸着膜などをもって構成される。
【0004】
このように、EL素子100は、透明基板101の片面に所要の薄膜又は厚膜102〜104を順次積層してなるので、薄形に形成できるものの、光の取り出し効率及び光の指向性が低いので、このままでは液晶表示装置のバックライト部として好適に用いることができない。即ち、透明基板101としてガラス基板を用い、透明電極102をITOをもって形成した場合、ガラスの屈折率が約1.5であるのに対してITOの屈折率が約2.0であるため、発光層103から出射された光のうち法線とのなす角度が約40度以上の光は、透明基板101と透明電極102との界面で全反射されて素子内に閉じ込められ、熱エネルギーとなって消費されるので、この種のEL素子100における光の取り出し効率は約20%に過ぎず、バックライト部の省電力化の要求に対応し難い。また、この種のEL素子100から出射される光は、法線方向を中心として約±40度の範囲の広がりをもつ拡散光になるため、指向性が低く、液晶表示装置の高輝度化と表示品質の高度化の要求にも対応し難い。
【0005】
かかる問題点を解決するものとして、透明基板の光出射側の表面に複数個の錐状のレンズ素子が発光層と平行に配設された微小レンズアレイ素子を備え、発光層で生じた光を透明基板及び微小レンズアレイ素子の各レンズ素子を通して外部に出射させるものが従来より提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このEL素子は、透明基板の光出射側の表面に複数個の錐状のレンズ素子が発光層と平行に配設された微小レンズアレイ素子を備えたので、発光層から出射された光の全反射を解消又は抑制することができ、光の取り出し効率を高めることができる。
【特許文献1】特開2003−59641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、透明基板の光出射側の表面に円錐状又は角錐状などの錐状のレンズ素子を発光層と平行に配設する構成であるので、発光層から出射された光を発光層ひいては液晶表示装置の法線方向にコリメートする機能を有さず、液晶表示装置に照射される光の指向性を高めることができない。このため、発光層で生じた光を有効に利用することができず、要求されるバックライト部の省電力化を達成することが未だ困難である。また、指向性の高い光を液晶表示装置に均一に照射することができないことから、要求される液晶表示装置の高輝度化及び表示品質の高度化を達成することも困難である。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の不備を解決するためになされたものであり、その目的は、薄形かつ省電力にして液晶表示装置の高輝度化及び表示品質の高度化が可能な照明装置を提供すること、及び、かかる照明装置を容易かつ高精度に製造可能な製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、照明装置に関しては、平面状に配列された複数の点状発光源と、当該複数の点状発光源のそれぞれに対向して配置された複数のコリメーションレンズとを備え、前記点状発光源より出射された発散光を前記コリメーションレンズを通して平行光に変換し、外部に導出するという構成にした。
【0009】
このように、点状発光源に対向してコリメーションレンズを配置し、点状発光源より出射された光を平行光に変換して外部に導出すると、点状発光源より出射された光がコリメーションレンズによって集光されるので、点状発光源より出射された光の無駄が軽減され、光の取り出し効率が高められる。また、このことから、液晶表示装置に照射される光量が増加されると共にその表示面方向の強度分布が均一化される。
【0010】
また、本発明は、前記構成の照明装置において、前記複数の点状発光源が、それぞれ面状に形成されかつ対向に配置された下部電極及び透明電極と、これら下部電極と透明電極との間に介在された複数の点状開口部を有する絶縁膜と、少なくとも前記点状開口部内に充填されかつ当該点状開口部内への充填部分において前記下部電極及び前記透明電極の双方に接する発光層とからなるという構成にした。
【0011】
このように、照明装置を下部電極、透明電極、絶縁膜及び発光層の積層体をもって構成すると、LEDや冷陰極管を用いた照明装置のように拡散板や導光板を備える必要がないので、照明装置の薄形化を図れる。また、絶縁膜に開設された点状開口部と当該点状開口部内に充填された発光層とによって点状発光源を構成すると、慣用的な技術を応用して絶縁膜に微小かつ高精度の点状開口部を開設することができるので、微小な点状発光源を高精度かつ高能率に形成することができる。
【0012】
また、本発明は、前記構成の照明装置において、前記複数のコリメーションレンズとして、透明材料にて形成された基板上に複数のコリメーションレンズが一体に形成されたマイクロレンズアレイを用いるという構成にした。
【0013】
基板上に複数のコリメーションレンズが一体形成されたマイクロレンズアレイは、2P法、射出成型法、ゾルゲル法又はホットエンボス法などによって形成できる。そして、コリメーションレンズとしてマイクロレンズアレイを用いると、複数の点状発光源と複数のコリメーションレンズとのアライメントを1度の作業で行うことができるので、各点状発光源ごとにコリメーションレンズを位置決めして設定する場合に比べて、照明装置の製造を容易化することができ、その低コスト化を図ることができる。
【0014】
また、本発明は、前記構成の照明装置において、前記コリメーションレンズのレンズ径を20μm〜200μm、レンズ高さをレンズ径の1/20〜1/2の範囲とし、かつ前記点状発光源の直径を前記コリメーションレンズのレンズ径の1/10〜1/2の範囲に形成するという構成にした。
【0015】
実験によると、コリメーションレンズのレンズ径、レンズ高さ及び点状発光源の直径と液晶表示装置の輝度及び表示品質との間には相関があり、コリメーションレンズのレンズ径、レンズ高さ及び点状発光源の直径を前記の値に規制したときに液晶表示装置の輝度が高くなり、かつその表示品質も良好なものになった。
【0016】
また、本発明は、前記構成の照明装置において、前記マイクロレンズアレイにおけるコリメーションレンズの配列ピッチに対するレンズ径の比を80%〜95%にするという構成にした。
【0017】
隣接して配置されるコリメーションレンズ間の隙間を大きくすると、電極間で全反射される光量が増加するため、照明装置からの光の取り出し効率が低下する。しかし、マイクロレンズアレイ上にコリメーションレンズを最密配置し、各コリメーションレンズの外縁が接するようにすると、光の回折等が生じ、却って液晶表示装置の輝度が低下する。実験によると、コリメーションレンズの配列ピッチに対するレンズ径の比を前記の値に規制したときに液晶表示装置の輝度が高くなり、かつその表示品質も良好なものになった。
【0018】
一方、本発明は、照明装置の製造方法に関して、第1に、複数の点状発光源が平面状に配列されかつ所要の位置にアライメントマークが形成された発光部材を作製する工程と、複数のコリメーションレンズが一体に形成されかつ前記発光部材に形成されたアライメントマークと対応する位置にこれと位置合わせされるアライメントマークが形成されたマイクロレンズアレイを作製する工程と、前記各アライメントマークを利用して前記各点状発光源と前記各コリメーションレンズを対向に配置する工程と、前記各点状発光源と前記各コリメーションレンズとの位置関係を保持した状態で前記発光部材と前記マイクロレンズアレイを接着により一体化する工程とを含む構成にした。
【0019】
このように、別個に作製される発光部材とマイクロレンズアレイの双方にアライメントマークを形成しておき、これらの各アライメントマークを利用して各点状発光源と各コリメーションレンズとの位置決めを行うと、1回のアライメント作業で全ての点状発光源と各コリメーションレンズとを対向に配置することができるので、この種の照明装置の生産性を高めることができる。また、個々の良品を組み合わせて照明装置を完成できるので、トータルでの製造歩留まりを向上することができる。
【0020】
また、本発明は、照明装置の製造方法に関して、第2に、複数のコリメーションレンズが一体に形成されたマイクロレンズアレイを作製する工程と、前記マイクロレンズアレイの裏面に透明電極を形成する工程と、該透明電極の露出面に感光性樹脂からなる絶縁膜を均一に形成する工程と、前記マイクロレンズアレイの外側から光を照射して前記コリメーションレンズの焦点位置に相当する部分の前記絶縁膜を選択的に露光する工程と、露光後の前記絶縁膜を現像処理して露光部分に点状開口部を開設する工程と、前記点状開口部内を含む前記絶縁膜の露出面に発光層を形成する工程と、該発光層の露出面に下部電極を形成する工程とを含む構成にした。
【0021】
このように、所要のマイクロレンズアレイを作製した後、当該マイクロレンズアレイの裏面に発光部材を作製するに際し、マイクロレンズアレイに一体形成されたコリメーションレンズを利用して絶縁膜に点状発光源の基になる点状開口部を形成すると、コリメーションレンズと点状発光源との位置決めを自己整合的に行うことができるので、各コリメーションレンズと各点状発光源との位置決め精度が高い照明装置を容易に作製することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の照明装置は、点状発光源に対向してコリメーションレンズを配置し、点状発光源より出射された光を平行光に変換して外部に導出するので、点状発光源より出射された光の無駄を低減できて光の取り出し効率を高めることができ、照明装置の省電力化を図ることができる。また、液晶表示装置に照射可能な光量が増加されると共にその強度分布が均一化されるので、液晶表示装置の高輝度化及び表示品質の高度化を図ることができる。
【0023】
本発明の照明装置の製造方法のうち、別個に作製される発光部材とマイクロレンズアレイの双方にアライメントマークを形成しておき、これらの各アライメントマークを利用して各点状発光源と各コリメーションレンズとの位置決めを行う方法は、1回のアライメント作業で全ての点状発光源と各コリメーションレンズとを対向に配置することができるので、この種の照明装置の生産性を高めることができと共に、個々の良品を組み合わせて照明装置を完成できるので、トータルでの製造歩留まりを向上することができる。また、所要のマイクロレンズアレイを作製した後、当該マイクロレンズアレイの裏面に発光部材を作製するに際し、マイクロレンズアレイに一体形成されたコリメーションレンズを利用して絶縁膜に点状発光源の基になる点状開口部を形成する方法は、コリメーションレンズと点状発光源との位置決めを自己整合的に行うことができるので、各点状発光源と各コリメーションレンズとの位置決め精度を飛躍的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〈第1の実施の形態〉
以下、本発明に係る照明装置の第1例を、図1乃至図3に基づいて説明する。図1は第1実施形態に係る照明装置の断面図、図2は第1実施形態に係る照明装置の製造手順を示すフロー図、図3は第1実施形態に係る照明装置の効果を示すグラフ図である。
【0025】
図1に示すように、本例の照明装置1Aは、マイクロレンズアレイ1と、発光部材2と、これらの各部材1,2を接合する接着剤層3とから主に構成されている。
【0026】
マイクロレンズアレイ1は、透光性材料にて形成された基板11上に同じく透光性材料からなる複数のコリメーションレンズ12を一体に形成したもので、使用する透光性材料の種類に応じて、例えば2P法、射出成型法、注型法、ゾルゲル法又はホットエンボス法などによって形成される。基板11は、発光部材2を保護するため、外部雰囲気に対するバリア性を有していることが好ましく、大気中の酸素や水蒸気を透過しない材料にて作製するか、このような材料からなる保護膜をその表面にコーティングすることが好ましい。コリメーションレンズ12は、球面或いはそれに近似した凸状の曲面をもって形成され、細密充填配置又は正方格子状配置などの任意の配置で基板11上に配列される。コリメーションレンズ12のレンズ形状及び基板11上の配列は、点状発光源との関係で適宜設計することができるが、レンズ径(基板11の表面上におけるコリメーションレンズ12の直径)Dを20μm〜200μm、レンズ高さ(基板11の表面からコリメーションレンズ12の頂点までの高さ)Hをレンズ径Dの1/20〜1/2の範囲、コリメーションレンズ12の配列ピッチpに対するレンズ径Dの比D/pを80%〜95%としたときに、高い輝度と良好な液晶表示装置の表示品質が得られた。このマイクロレンズアレイ1の所要の部分には、コリメーションレンズ12と発光部材2に形成される点状発光源とを位置合わせするための例えば十文字状のアライメントマークが印刷やレーザカッティング等の所要の手段で形成される。
【0027】
発光部材2は、EL素子を応用したものであって、基板21と、当該基板21上に形成された面状の下部電極22と、当該下部電極22上に形成された複数の点状開口部23aを有する絶縁膜23と、点状開口部23aの内部を含む前記絶縁膜23上に形成された発光層24と、当該発光層24上に形成された面状の透明電極25とからなる。この発光部材2にも、マイクロレンズアレイ1のアライメントマーク形成位置と対応する位置に、例えば十文字状のアライメントマークが印刷やレーザカッティング等の所要の手段で形成される。
【0028】
基板21は、下部電極22、絶縁膜23、発光層24及び透明電極25の保護部材として機能するもので、所要の剛性を有する板材をもって形成される。基板材料としては、所要の剛性を有するものであれば公知に属する任意の材料をもって形成することができるが、放熱性に優れることから、アルミニウム板などの金属板が特に好適に用いられる。
【0029】
下部電極22は、公知に属する任意の導電材料をもって形成することができるが、光の反射率が高く光の取り出し効率を高められることから、アルミニウムが特に好適に用いられる。なお、基板21がアルミニウム板などの金属板にて形成される場合には、基板21を下部電極22として兼用し、下部電極22の形成を省略することもできる。また、アルミニウム基板上にアルミニウム電極を形成する場合には、これらの間に絶縁膜を介設することもできる。
【0030】
絶縁膜23は、公知に属する任意の絶縁材料をもって形成することができるが、点状開口部23aの開設を容易に行えることから、感光性樹脂をもって形成することが特に好ましい。例えば、ポジ型の感光性樹脂をもって絶縁膜23を形成した場合、点状開口部23aの開設部分を選択的に露光した後、これを現像処理することにより、点状開口部23aを有する絶縁膜23を形成することができる。この点状開口部23aは、マイクロレンズアレイ1に形成された複数のコリメーションレンズ12と同一の配列で形成される。また、その直径は、全反射による光の無駄を抑制して光の取り出し効率を高めるため、コリメーションレンズ12のレンズ径Dの1/10〜1/2の範囲に形成することが好ましい。
【0031】
発光層24は、例えばZnSなどの無機又は有機のエレクトロルミネセンス発光体からなり、前記点状開口部23a内を含む絶縁膜23上に形成される。なお、発光層24は、正孔輸送層や電子輸送層、正孔注入層、電子注入層などからなる多層構造とすることもできる。
【0032】
透明電極25は、ITOをもって発光層24の表面に面状に形成される。このように、点状開口部23aを有する絶縁膜23及び発光層24を介してその表裏両面に下部電極22と透明電極25とを形成すると、点状開口部23a内に充填された発光層24の表裏でのみ発光層24が下部電極22と透明電極25とに接するので、当該点状開口部23a内に充填された発光層24が点状発光源として機能する。したがって、以下の記述においては、点状発光源についても便宜的に符号23aを付与して説明する。
【0033】
接着剤層3に用いる接着剤としては、公知に属する任意の透明接着剤を用いることができるが、各部材に与える熱の影響を小さくできることから、常温接着型の接着剤又はホットメルト接着剤等を用いることが特に好ましい。
【0034】
前記マイクロレンズアレイ1と前記発光部材2とは、これらの各部材1,2に形成されたアライメントマークを利用して相互に位置合わせされ、接着剤層3を介して一体に組み立てられる。
【0035】
以下に本実施形態のより具体的な実施例を例示し、本発明の効果を明らかにする。なお、文中の符号は、実施例に係る照明装置1Aを構成する各部材に対応する図1に表示した各部材の符号を示している。
【0036】
ガラス基板11の片面に透光性樹脂からなる微小な複数のコリメーションレンズ12が2P法により形成されたマイクロレンズアレイ1を作製した。コリメーションレンズ12のレンズ形状は、レンズ径Dが75μmで、レンズ高さHが16μmとし、細密充填配置で隣接するレンズ間のピッチpは80μmとした。レンズ形状と基板厚の設計により、コリメーションレンズ12の集光領域はガラス基板11の裏面側で約20μmの範囲になっている。
【0037】
マイクロレンズアレイ1の作製は、以下の手順で行った。即ち、まず、Si基板上にフォトレジストを塗布した後、フォトリソグラフィ法を用いて円柱状のレジストパターンを形成した。次いで、レジストパターンを有するSi基板を加熱してレジストパターンをリフローさせ、球面状のコリメーションレンズ12を作製した。次いで、これを母型として電鋳によりニッケル金型を作製した。次いで、この金型と鏡面研磨されたガラス基板11との間で透光性樹脂を展伸した後、金型と透光性樹脂との界面を剥離して、コリメーションレンズ12が転写された透光性樹脂層をガラス基板11上に形成した。最後に、ガラス基板11の裏面にマイクロレンズアレイ1側のアライメントマークを印刷により形成した。
【0038】
また、発光部材2の作製は、以下の手順で行った。即ち、まず、図2(a)に示すように、厚さが0.2mmの金属基板21上にAl電極22を真空蒸着法により形成した後、当該Al電極22上にポジ型フォトレジストをスピンコート法により均一に塗布して絶縁膜23を形成した。次いで、当該ポジ型フォトレジストからなる絶縁膜23の表面をフォトマスクにて覆い、フォトマスクの外方から紫外線を照射して、絶縁膜23上のコリメーションレンズ12の焦点位置に相当する部分にドットパターンを露光した。ドットの形状は円形でその直径を20μmとし、ドットパターンの配置及び間隔は、マイクロレンズアレイ1に形成されたコリメーションレンズ12の配置及び間隔と同一にした。次いで、露光済みの絶縁膜23を現像処理し、ドットパターンの露光部を除去して、図2(b)に示すように、絶縁膜23に前記Al電極22に達する点状開口部23aを開設した。次いで、図2(c)に示すように、前記点状開口部23aを有する絶縁膜23上に厚さ100μmの有機発光層24を真空蒸着法により形成し、更に当該有機発光層24上に厚さ50nmのITO層25を真空蒸着法により形成した。最後に、ITO層25の表面に発光部材2側のアライメントマークを印刷により形成した。
【0039】
しかる後に、図2(d)に示すように、マイクロレンズアレイ1側及び発光部材2側のアライメントマークを利用して、コリメーションレンズ12の中心と点状開口部23aの中心部とを合致せしめ、この状態を保持したままマイクロレンズアレイ1と発光部材2とを接着により一体化した。
【0040】
本実施例に係る照明装置は、マイクロレンズアレイを備えないEL素子と比べて約40倍の輝度が得られた。また、特許文献1に記載の照明装置と比べても約10倍の輝度が得られた。さらに、これらの従来装置に比べ適度分布も均一になっており、液晶表示装置のバックライトとして適用した場合、モアレ縞などの表示品質の不良を生じなかった。
【0041】
このように、本実施例に係る照明装置において飛躍的に輝度が向上した理由は、まず第1に、照明装置の発光源をコリメーションレンズ12の集光領域程度の微細な点状発光源23aとし、点状発光源23aから発散してゆく光をコリメーションレンズ12にて収束して指向性の高い光としたことにある。実施例と類似の構造であっても、発光部分の大部分がコリメーションレンズ12の集光領域外にある場合や、発光部分がコリメーションレンズ12の集光領域よりも大きい場合には、特許文献1に記載の照明装置と比べて顕著な効果は得られない。例えば、前記実施例に係るマイクロレンズアレイ1を全面発光のEL素子と組み合わせた場合、特許文献1に記載の照明装置に比べて1.2倍の輝度が得られたに過ぎなかった。
【0042】
理由の第2は、コリメーションレンズ12のレンズ径Dを隣接する2つのコリメーションレンズ12の配列ピッチpよりも小さくし、各コリメーションレンズ12の間にある程度の隙間を設けたことにある。即ち、隣接するレンズ間の隙間の大きさには最適値が存在し、隙間が全くない場合よりもある程度の隙間があった方が高い輝度が得られる。これは、隣接するレンズ間にある程度の隙間がある場合、点状発光源23aから輝度に関与しない浅い角度で出射した光の一部が前記隙間部分からコリメーションレンズ12の側面を介して発光部材2内に侵入し、光反射性の下部電極22で反射した後、再度コリメーションレンズ12により集光されて輝度に有効な角度で出射されるためと推定される。図3は、点状発光源23aの中心軸とコリメーションレンズ12の中心軸とが合致しており、両者の配置、ピッチ及びコリメーションレンズ12の曲率が同一、電極22,25間に印加される直流電圧が同一という条件のもとで、隣接する2つのコリメーションレンズ12の配列ピッチpに対するコリメーションレンズ12のレンズ径Dの比を種々変更したときの輝度の変化を示すグラフであって、この図から明らかなように、D/pが約87%のときに最大の輝度を示す。この試験結果より、D/pは80%〜95%に設定することが特に好ましい。
【0043】
〈第2の実施の形態〉
次に、本発明に係る照明装置の第2例を、図4及び図5に基づいて説明する。図4は第2実施形態に係る照明装置の断面図、図5は第2実施形態に係る照明装置の製造手順を示すフロー図である。
【0044】
図4に示すように、本例の照明装置1Bは、マイクロレンズアレイ1と発光部材2とからなり、発光部材2が、マイクロレンズアレイ1の裏面に形成された透明電極25と、透明電極25の露出面に形成された複数の点状開口部23aを有する絶縁膜23と、点状開口部23aの内部を含む前記絶縁膜23の露出面に形成された発光層24と、発光層24の露出面に形成された下部電極22とからなる。この図から明らかなように、第2実施形態に係る照明装置1Bは、第1実施形態に係る照明装置1Aより接着剤層3と発光部材2の基板21とを省略した構成になっている。その他、各部の構成については、第1実施形態に係る照明装置1Aと同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。
【0045】
以下に本実施形態のより具体的な実施例を例示し、本発明の効果を明らかにする。なお、文中の符号は、実施例に係る照明装置1Bを構成する各部材に対応する図4に表示した各部材の符号を示している。
【0046】
ガラス基板11の片面に透光性樹脂からなる微小な複数のコリメーションレンズ12が2P法により形成されたマイクロレンズアレイ1を作製した。コリメーションレンズ12のレンズ形状は、レンズ径Dが75μmで、レンズ高さHが16μmとし、細密充填配置で隣接するレンズ間のピッチpは80μmとした。レンズ形状と基板厚の設計により、コリメーションレンズ12の集光領域はガラス基板11の裏面側で約20μmの範囲になっている。
【0047】
マイクロレンズアレイ1については、アライメントマークを省略する点を除き、第1実施形態に係る照明装置1Aの場合と同じ製造方法で作製した。
【0048】
一方、発光部材2の作製は、以下の手順で行った。即ち、まず、図5(a)に示すように、マイクロレンズアレイ1の裏面に厚さ30nmのITO層25を真空蒸着法により形成した後、当該ITO層25の裏面にポジ型フォトレジストをスピンコート法により均一に塗布して絶縁膜23を形成した。次いで、図5(b)に示すように、マイクロレンズアレイ1の外側から紫外線を照射して、絶縁膜23上のコリメーションレンズ12の焦点位置にドットパターンを露光した。次いで、露光済みの絶縁膜23を現像処理してドットパターンの露光部を除去し、ITO層25に貫通する点状開口部23aを開設した。最後に、図5(c)に示すように、点状開口部23aを有する絶縁膜23の裏面に厚さ100μmの有機発光層24を真空蒸着法により形成し、更に当該有機発光層24の裏面に厚さ50nmのAl電極22を真空蒸着法により形成した。
【0049】
本実施例に係る照明装置1Bは、第1実施例に係る照明装置1Aと同等の効果を有するほか、コリメーションレンズ12と点状発光源23aとの位置決めが自己整合的に行われるので、各コリメーションレンズ12と各点状発光源との位置決め精度が高い照明装置を容易に作製できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る照明装置の断面図である。
【図2】第1実施形態に係る照明装置の製造手順を示すフロー図である。
【図3】第1実施形態に係る照明装置の効果を示すグラフ図である。
【図4】第2実施形態に係る照明装置の断面図である。
【図5】第2実施形態に係る照明装置の製造手順を示すフロー図である。
【図6】一般的なEL素子の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1A,1B 照明装置
1 マイクロレンズアレイ
2 発光部材
3 接着剤層
11 基板
12 コリメーションレンズ
21 基板
22 下部電極
23 絶縁膜
23a 点状開口部(点状発光源)
24 発光層
25 透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状に配列された複数の点状発光源と、当該複数の点状発光源のそれぞれに対向して配置された複数のコリメーションレンズとを備え、
前記点状発光源より出射された発散光を前記コリメーションレンズを通して概平行光に変換し、外部に導出することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記複数の点状発光源が、それぞれ面状に形成されかつ対向に配置された下部電極及び透明電極と、これら下部電極と透明電極との間に介在された複数の点状開口部を有する絶縁膜と、少なくとも前記点状開口部内に充填されかつ当該点状開口部内への充填部分において前記下部電極及び前記透明電極の双方に接する発光層とからなることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記複数のコリメーションレンズとして、透明材料にて形成された基板上に複数のコリメーションレンズが一体に形成されたマイクロレンズアレイを用いたことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記コリメーションレンズのレンズ径を20μm〜200μm、レンズ高さをレンズ径の1/20〜1/2の範囲とし、かつ前記点状発光源の直径を前記コリメーションレンズのレンズ径の1/10〜1/2の範囲に形成したことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記マイクロレンズアレイにおけるコリメーションレンズの配列ピッチに対するレンズ径の比を80%〜95%にしたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
複数の点状発光源が平面状に配列されかつ所要の位置にアライメントマークが形成された発光部材を作製する工程と、複数のコリメーションレンズが一体に形成されかつ前記発光部材に形成されたアライメントマークと対応する位置にこれと位置合わせされるアライメントマークが形成されたマイクロレンズアレイを作製する工程と、前記各アライメントマークを利用して前記各点状発光源と前記各コリメーションレンズを対向に配置する工程と、前記各点状発光源と前記各コリメーションレンズとの位置関係を保持した状態で前記発光部材と前記マイクロレンズアレイを接着により一体化する工程とを含むことを特徴とする照明装置の製造方法。
【請求項7】
複数のコリメーションレンズが一体に形成されたマイクロレンズアレイを作製する工程と、前記マイクロレンズアレイの裏面に透明電極を形成する工程と、該透明電極の露出面に感光性樹脂からなる絶縁膜を均一に形成する工程と、前記マイクロレンズアレイの外側から光を照射して前記コリメーションレンズの焦点位置に相当する部分の前記絶縁膜を選択的に露光する工程と、露光後の前記絶縁膜を現像処理して露光部分に点状開口部を開設する工程と、前記点状開口部内を含む前記絶縁膜の露出面に発光層を形成する工程と、該発光層の露出面に下部電極を形成する工程とを含むことを特徴とする照明装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−318807(P2006−318807A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141369(P2005−141369)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】