説明

照明装置

【課題】光源の保守および点検が容易であるとともに、反射板の反射効率を長期間に亘って一定に保持できる照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置10は、アーク長Lが3mm以下である放電ランプ16と、放電ランプ16から出射された光を所定方向へ反射させるリフレクタ18と、リフレクタ18で反射された光を照射対象12,14へ向けてさらに反射させる反射板20を有する反射装置22とを備えている。そして、反射装置22は、放電ランプ16から離間して配設されており、反射板20には、光触媒を含む防汚層56が形成されている。したがって、反射装置22を高所に配設する場合でも放電ランプ16を低所に配設することができ、また、放電ランプ16から出射された光を反射板20に照射することによって、防汚層56の自浄作用を発揮させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射された光をリフレクタで反射させて反射板に集光し、反射板でさらに反射させて照射対象へ照射する、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
街路灯または庭園灯のような屋外用の照明装置としては、支柱の上端部に光源を取り付けた構造の「ポール灯」が幅広く用いられている。しかし、このような「ポール灯」では、作業者の手が届かない高所に光源が配設されているため、光源の保守および点検が不便である。
【0003】
そこで、従来から光源の保守および点検が容易な屋外用の照明装置が種々開発されており、その一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の照明装置は、支柱の高さ方向の中間部に光源を取り付けるとともに、支柱の上端部に反射板を取り付け、光源から出射された光を反射板で反射させて照射対象へ照射するようにしたものである。
【特許文献1】特開2002−260410号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来の照明装置では、支柱の高さ方向の中間部に光源を取り付けるようにしていたので、光源の保守および点検は容易である。しかし、支柱の上端部に反射板を取り付けていたので、反射板に汚れが付着した場合には、これを洗い落とす作業が困難であり、汚れの蓄積により反射板の反射効率が徐々に低下し、照射対象へ照射される光量が減少するという問題があった。
【0005】
それゆえに、本発明の主たる解決課題は、光源の保守および点検が容易であるとともに、反射板の反射効率を長期間に亘って一定に保持できる、照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明は、「アーク長Lが3mm以下である放電ランプ16と、前記放電ランプ16から出射された光を所定方向へ反射させるリフレクタ18と、前記リフレクタ18で反射された光を照射対象12,14へ向けてさらに反射させる反射板20を有する反射装置22とを備える、照明装置10であって、前記反射装置22は、前記放電ランプ16から離間して配設されており、前記反射板20には、光触媒を含む防汚層56が形成されている、照明装置10」である。
【0007】
本発明によれば、反射装置22と放電ランプ16とを離間して配設するようにしているので、保守および点検における作業性を考慮して放電ランプ16の設置位置を設定するとともに、照射対象12,14に対する光の照射角度を考慮して反射装置22の設置位置を設定することができる。
【0008】
また、放電ランプ16のアーク長Lが3mm以下と短いため、放電ランプ16から出射された光の光路が不所望に広がることはなく、当該光を反射板20に対して無駄なく集光できる。つまり、放電ランプ16のアーク長Lが長い場合には、アーク38(図3)の一端から出射された光と他端から出射された光との間で「光路のズレ」が大きくなるため、全体として光路が不所望に広がることになるが、アーク長Lが短い本発明では、「光路のズレ」を小さくすることができるので、全体として光路の広がりを抑制でき、反射板20に対する集光率を高めることができる。
【0009】
さらに、反射板20には、光触媒を含む防汚層56が形成されているので、放電ランプ16から出射された光が反射板20に当たると、光触媒の浄化作用によって反射板20に付着した汚れが分解される。
【0010】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「照明装置10」において、「前記反射装置22は、前記光を異なる方向へ反射させる複数の前記反射板20を有している」ことを特徴とする。
【0011】
本発明は、複数の反射板20によって光を複数の方向へ照射可能にしたものである。本発明によれば、上述のように、反射板20に対する集光率を高めることができるので、光を複数の方向へ分けて照射するにもかかわらず、各方向において十分な光量を確保できる。
【0012】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した「照明装置10」において、「少なくとも1つの前記反射板20は、前記光を異なる方向へ反射させる複数の反射面20bを有している」ことを特徴とする。
【0013】
本発明は、複数の反射面20bによって光を異なる方向へ反射させるようにしたものである。
【0014】
請求項4に記載した発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載した「照明装置10」において、「前記反射装置22は、前記反射板20の角度を変更する角度変更機構54,20aを備えている」ことを特徴とする。
【0015】
本発明は、光の照射角度を適宜変更可能にしたものである。角度変更機構54,20aは、作業者の手作業によって角度調整されるものの他、サーボモータ等によって自動的に角度調整されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜4に記載した発明によれば、反射装置22と放電ランプ16とを離間して配設するようにしているので、反射装置22を高所に配設する場合でも、放電ランプ16を保守および点検が容易な低所に配設することができる。また、放電ランプ16のアーク長Lが3mm以下と短いため、放電ランプ16から反射装置22までの光路長が長くなった場合でも、光の損失を抑えることができ、光の照射対象12,14において十分な光量を確保できる。
【0017】
また、反射装置22を構成する反射板20においては、光触媒による自浄作用が働くので、反射装置22を高所に配設した場合でも、反射板20に対する汚れの付着を抑制でき、反射板20における光の反射効率を長期間に亘って一定に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明が適用された照明装置10を示す概念図である。この照明装置10は、街路12を照らす「屋外灯」の機能と看板14を照らす「看板照明」の機能とを併有するものであり、光源となる放電ランプ16と、放電ランプ16から出射された光を所定方向へ反射させるリフレクタ18と、リフレクタ18で反射された光を照射対象(街路12または看板14)へ向けてさらに反射させる反射板20を有する反射装置22とを備えている。
【0019】
放電ランプ16は、図2に示すように、球状の発光部24と、発光部24の両端部に設けられた棒状の封止部26とを有する石英ガラス製の放電容器28を備えている。そして、放電容器28における各封止部26の内部には、一端が発光部24の内部へ突出した電極棒30と、一端が外部へ突出したリード棒32と、電極棒30の他端とリード棒32の他端とを電気的に接続するモリブデン箔34とが配設されており、発光部24の内部へ突出した電極棒30の端部には、タングステン等の高融点金属からなる電極36a,36bが設けられている。さらに、発光部24の内部には、0.15mg/mm以上の高圧水銀と、アルゴン等の希ガスと、ヨウ素,臭素,塩素,フッ素等のハロゲンとが封入されている。
【0020】
照明装置10において、放電ランプ16から出射された光をリフレクタ18で反射させて反射装置22の反射板20へ効率よく集光させるためには、光路の広がりを抑える必要がある。しかし、放電ランプ16のアーク長Lが長い場合には、図3中の破線で示すように、アーク38の一端から出射された光と他端から出射された光との間で「光路のズレ」が大きくなり、全体として光路が不所望に広がることになる。そこで、本実施例では、放電ランプ16のアーク長Lを「3mm以下」と短くすることによって「光路のズレ」を小さくし、光路の広がりを抑えて集光率を高めるようにしている。
【0021】
また、照明装置10において、反射板20に形成された防汚層56の自浄作用(後述)を有効に発揮させるためには、放電ランプから出射される光が「波長300〜400nmの紫外線」を含むことが望ましい。そこで、本実施例では、図4のグラフから分かるように、「波長300〜400nmの紫外線」を含む光を出射可能な放電ランプ16を用いるようにしている。
【0022】
リフレクタ18(図2)は、放電ランプ16から出射された光を反射させて反射装置22の2つの反射板20へ照射するものであり、アルミニウム等の金属からなる回転放物線状(放物線を回転させたときにできる形状)のリフレクタ本体40を有している。そして、リフレクタ本体40の内面には、鏡面状の反射面42が形成されており、リフレクタ本体40の中央部には、放電ランプ16の封止部26が挿通される筒状のランプ取付部44が形成されている。
【0023】
なお、リフレクタ本体40の材質は、金属に代えてホウケイ酸ガラス等が用いられてもよく、リフレクタ本体40の形状は、回転放物線状に代えて回転半円状または回転半楕円状等であってもよい。さらに、リフレクタ18における開口部18aの内周形状は、特に限定されるものではなく、円形,楕円形または四角形等のような任意の形状でよい。ただし、リフレクタ本体40の形状については、平行光を反射できる点において、回転放物線状であることが望ましい。
【0024】
放電ランプ16をリフレクタ18に取り付ける際には、放電ランプ16の一方の封止部26がリフレクタ18のランプ取付部44に挿通され、この封止部26とランプ取付部44とがセメント46によって接合される。そして、リフレクタ18の開口部18aには、ホウケイ酸ガラス等のような透光性材料からなる板状のカバー48が取り付けられる。
【0025】
反射装置22は、リフレクタ18から与えられた光を反射させて照射対象(街路12または看板14)へ照射するものであり、図5に示すように、ビル50(図1)の壁面等に取り付けられる板状の取付部材52と、取付部材52に対して回動軸54を介して角度変更可能に取り付けられた2枚の反射板20とによって蝶番状に構成されている。
【0026】
各反射板20は、回動軸54によって回動自在に支持される軸受け部20aを有しており、各反射板20における反射面(光を反射させる面)20bには、光触媒を含む防汚層56が形成されている。反射板20の形状は、特に限定されるものではなく、本実施例のような平板状の他、湾曲板状または球状等であってもよい。
【0027】
反射装置22において、回動軸54と軸受け部20aとの接合部には、不所望に回動されることのないように所定の摩擦力が作用している。したがって、反射板20は、その自重だけで回動されることはないが、外部から力が加えられた際には力の方向へ回動され、傾斜角度α,βが変更されることになる。つまり、本実施例では、回動軸54および軸受け部20aが反射板20の角度を変更する「角度変更機構」として機能する。なお、回動軸54と軸受け部20aとの接合部には、反射板20の回動を禁止するためのストッパーが設けられてもよい。
【0028】
防汚層56は、反射面20bに付着した汚れを光触媒の浄化作用によって分解するものである。この防汚層56は、具体的には、光触媒としての酸化チタン(TiO)を含む薄膜であり、ゾル−ゲル法,真空蒸着法,イオンプレーティング法,CVD法またはスパッタリング法等によって反射板20の反射面20bに形成されている。なお、酸化チタン(TiO)は白色顔料として用いることも可能なため、反射面20bを白色塗装する場合には、酸化チタン(TiO)を含む塗料を反射面20bに塗布するようにしてもよい。
【0029】
光触媒の浄化作用は、最近注目されるようになってきたものであるが、その基本原理は以下の通りである。すなわち、光触媒に所定波長の紫外線を含む光が照射されると、光触媒中の電子がエネルギーを受けて励起され、この電子が空気中へ逃げることによってホール(正孔)が生成される。そして、このホール(正孔)が水分を酸化させることによって活性酸素種が生成され、強い酸化力が生じるようになる。そのため、活性酸素種の近くに有機物の汚れが付着していると、有機物から電子が奪われる(酸化される)ことになり、有機物は最終的には二酸化炭素や水に分解されて除去されることになる。
【0030】
このような浄化作用を発揮する光触媒としては、酸化チタン(TiO),酸化亜鉛(ZnO)または酸化タングステン(WO)等の金属酸化物が知られているが、これらの中でも、酸化力が強く、物性的に安定しており、しかも安価である点において、酸化チタン(TiO)が最も適している。そこで、本実施例では、上述のように、防汚層56に含まれる光触媒として酸化チタン(TiO)を用いるようにしている。
【0031】
また、光触媒の浄化作用は、所定波長の紫外線が照射されることによって発揮されるが、光触媒が酸化チタン(TiO)である場合には、「波長300〜400nmの紫外線」が必要であることが知られている。そこで、本実施例では、上述のように、「波長300〜400nmの紫外線」を含む光(図4)を出射可能な放電ランプ16を用いるようにしている。
【0032】
照明装置10を設置する際には、放電ランプ16とリフレクタ18とによって構成された光源ユニットAを保守および点検が容易な低所に配設するとともに、反射装置22をビル50の壁面等の高所に配設する。このとき、光源ユニットAから出射される光の光軸aが反射装置22における回動軸54の中央を通過するように、光源ユニットAおよび反射装置22の位置関係を調整する。また、反射装置22においては、一方の反射板20で反射された光が街路12へ照射され得るように当該反射板20と光軸aとが成す角度αを調整するとともに、他方の反射板20で反射された光が看板14へ照射され得るように当該反射板20と光軸aとが成す角度βを調整する。
【0033】
照明装置10の点灯スイッチ(図示省略)を入れると、放電ランプ16の電極36a,36b間でアーク放電が発生し、放電ランプ16がアーク長3mm以下の点光源となる。そして、電極36a,36b間で発生した光が放電ランプ16の外部へ出射され、リフレクタ18で反射されて反射装置22へ与えられる。反射装置22においては、2つの反射板20が異なる角度α,βで傾斜しているため、各反射板20に与えられた光は、傾斜角度α,βに応じた方向へ反射され、それぞれ異なる照射対象(街路12または看板14)へ照射される。
【0034】
なお、上述の実施例では、2つの反射板20を有する反射装置22を用いるようにしているが、反射板20の数は適宜変更可能であり、図6に示すように3つであってもよく、1つまたは4つ以上であってもよい。また、少なくとも1つの反射板20には、図7に示すように、異なる反射角度を有する複数の反射面20bを形成するようにしてもよい。
【0035】
そして、各反射板20の傾斜角度は、サーボモータ等によって自動調整できるようにしてもよい。この場合には、回動軸54,軸受け部20aおよびサーボモータ等が「角度変更機構」として機能することになる。
【0036】
また、照明装置10の照射対象は適宜変更可能であり、街路12または看板14のいずれか一方だけを照らすようにしてもよいし、街路,看板,庭園,建物,駐車場または駐車中の自動車等のうちの任意の1つまたは複数を照らすようにしてもよい。
【0037】
また、上述の実施例では、反射装置22をビル50(図1)の壁面等に取り付けるようにしているが、図8〜図10に示すように、反射装置22を地面等に立設される支柱58の上端部に取り付けるようにしてもよいし、橋または高架等の構造物(図示省略)に取り付けるようにしてもよい。
【0038】
図8に示す照明装置60は、支柱58の高さ方向の中間部に光源ユニットA(放電ランプ16およびリフレクタ18)を組み込むとともに、支柱58の上端部に反射装置22を組み込んだものである。この照明装置60において、光源ユニットAから出射された光は、反射装置22の反射板20で反射され、街路,庭園または駐車場等の照射対象へ照射されることになる。
【0039】
図9に示す照明装置62は、照射対象(図9では街路12)に沿って複数の支柱58を配設するとともに、各支柱58の上端部に反射装置22を組み込み、さらに、各支柱58から離れた一箇所に各反射装置22に対応する複数の光源ユニットA(放電ランプ16およびリフレクタ18)を集約的に配設したものである。この照明装置62では、複数の反射装置22に対応する複数の光源ユニットAを一箇所に集約的に配設するようにしているので、光源ユニットAの保守および点検が容易である。
【0040】
図10に示す照明装置64は、照明装置62(図9)の変形であり、少なくとも1つの反射装置22には、複数(図10では2つ)の光源ユニットA(放電ランプ16およびリフレクタ18)が対応している。したがって、複数の光源ユニットAが対応している反射装置22では、複数の光源ユニットAからの光を反射させることができ、照射対象を特に明るく照射することができる。なお、1つの反射装置22に対応する複数の光源ユニットAにおいては、全ての光源ユニットAを同時に点灯させる必要はなく、時間または季節等に応じて任意の数を点灯させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】照明装置を示す概念図
【図2】放電ランプおよびリフレクタを示す断面図
【図3】「光路のズレ」を示す概念図
【図4】放電ランプから出射される光の波長分布を示すグラフ
【図5】反射装置を示す斜視図
【図6】他の反射装置(反射板が3枚)を示す斜視図
【図7】他の反射装置(一方の反射板に反射面が4つ)を示す正面図
【図8】他の照明装置を示す概念図
【図9】他の照明装置を示す概念図
【図10】他の照明装置を示す概念図
【符号の説明】
【0042】
10,62,64… 照明装置
12… 街路
14… 看板
16… 放電ランプ
18… リフレクタ
20… 反射板
20a… 軸受け部
20b… 反射面
22… 反射装置
24… 発光部
26… 封止部
36a,36b… 電極
38… アーク
52… 取付部材
54… 回動軸
56… 防汚層
58… 支柱
A… 光源ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク長が3mm以下である放電ランプと、前記放電ランプから出射された光を所定方向へ反射させるリフレクタと、前記リフレクタで反射された光を照射対象へ向けてさらに反射させる反射板を有する反射装置とを備える、照明装置であって、
前記反射装置は、前記放電ランプから離間して配設されており、前記反射板には、光触媒を含む防汚層が形成されている、照明装置。
【請求項2】
前記反射装置は、前記光を異なる方向へ反射させる複数の前記反射板を有している、請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
少なくとも1つの前記反射板は、前記光を異なる方向へ反射させる複数の反射面を有している、請求項1または2記載の照明装置。
【請求項4】
前記反射装置は、前記反射板の角度を変更する角度変更機構を備えている、請求項1ないし3のいずれかに記載の照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−135219(P2008−135219A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318666(P2006−318666)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(395019281)フェニックス電機株式会社 (43)
【Fターム(参考)】