説明

照明装置

【課題】指向性光源を一対の面状光透過部の端部に配置してこれを光源とする照明構造をとる場合であっても、導光板を使用せずに面状光透過部を面発光させることができる照明装置を提供する。
【解決手段】照明灯具2の一対の光出口である平面形状のレンズ13の内部の両端に、照明光源としてLED17が縦向きに配置される。レンズ13の裏面に、光の拡散機能及び反射機能を併せ持つ光拡散フィルム22を取り付ける。また、一対の光拡散フィルム22は平行に対向する位置に、間隔を空けた状態で取り付ける。LED17の照射光は、一対の光拡散フィルム間で反射し合いながら照射方向に導かれるとともに、光拡散フィルム22の拡散効果により、光の照射方向と垂直に交わる直交方向に拡散されて、レンズ13から面発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射光が指向性を持つ指向性光源を照明光源として持ち、この光源の照射光を面状光透過部に導いて、発光面からの面発光により照明を行う照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いた照明装置としては、例えば照明装置の発光面(面状光透過部)をカバーとしてこの内部に複数のLEDを発光面に対して水平方向に並べて配置し、これらLEDの光(発光部分)を、光の出口である発光面から外部に導出することにより、発光面から光を外部に照射する構成をとるものが主流である。しかし、この照明装置は、LEDが点灯状態をとった際、外部からこの照明装置を観察すると、各々のLEDは、光の照射方向の基軸(照射軸)が発光面から外部に導出する方向とほぼ同方向(即ち、発光面と直交方向)に配置されているために、LEDの発光部分が光の粒(輝点)として見えてしまうので、発光面に光の均一性がなく、点灯の見栄えが悪いという問題があった。
【0003】
通常、発光面からの照射光を均一に見せる対策としては、例えば乳白色の樹脂や磨りガラス等からなるレンズを使用したり、或いはレンズにレンズカットを形成したりするなど、光源からの光を拡散させるための細工が必要となる。しかし、LEDのような指向性のある光源においては、光の指向性が強いが故に、これらの対策を用いても発光面を均一に見せる(面発光させる)のは困難である。その上で、一定以上の光の均一輝度を保つためには、複数のLEDを使用しなければならず、この場合は発光面積が増えれば増えるほど、その分だけより多くのLEDが必要となるので、LEDに要する部品コストが多くかかる問題に繋がってしまう。
【0004】
この問題を解決するための有効な対策として、例えば図11に示すように、LED81(高輝度発光ダイオード)と導光板82とを組み合わせたエッジライト方式を使用した照明装置83(例えば、特許文献1参照)がある。この照明装置83では、導光効果を持つようブラスト成形等で加工した透明度の高い樹脂板からなる導光板82を用い、この導光板82のエッジ部分(端縁部分)にLED81を配置し、このエッジ部分にLED81の光を入射する。そして、LED81の光を導光板82によって拡散させ、この光を発光部84の発光面から均一に見える照射光として出力させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−229022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の導光板82は、樹脂に細かい加工や印刷等が必要となるので、部品コストが総じて高いという現状がある。よって、照明装置83の照射光の均一化を図る際に、このような導光板82を使用すると、LED81の個数は少なく抑えられるものの、今度は導光板82を用意するためのコストが逆にかかり、結局のところ照明装置83の装置コストを低く抑えることには繋がらない現状があった。また、この種の導光板82には、重量が大きいという欠点も存在するので、照射輝度均一化の部品として導光板82を使用すると、照明装置83の重量が重くなる問題にも繋がっていた。
【0007】
本発明の目的は、指向性光源を発光面の端部に配置してこれを光源とする照明構造をとる場合であっても、導光板を使用せずに発光面を面発光させることができる照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するために、請求項1に係る発明では、装置ケースの両面に光出口として一対の面状光透過部を持ち、当該装置ケースの内部において該面状光透過部の端部に、照射光が指向性を持つ指向性光源を配置し、当該指向性光源から前記面状光透過部のもう一方の端部に向かって照射される前記照射光を前記面状光透過部から導出する照明装置において、前記一対の面状光透過部の裏面に、透光性の一対の光調整部材を平行に配置し、前記指向性光源は、複数の光源体から構成され、前記面状光透過部の各端部において一方側に配置された前記指向性光源の各々の前記光源体と、それらと対向するもう一方側に配置された前記指向性光源の各々の前記光源体とは、その前記指向性光源の照射軸方向に対する直交方向において交互に配置されており、かつ、前記指向性光源が、前記一対の光調整部材の間の空間において、その照射軸が該一対の光調整部材と平行になるように配置され、前記一対の光調整部材の前記一対の面状光透過部側には、平行に延びる複数の溝が形成されるとともに前記一対の光調整部材の対向する側は平坦に形成され、前記一対の光調整部材が、自身の該溝の溝方向と前記指向性光源の照射軸方向とが同方向をとる向きで前記装置ケースに取り付けられ、当該一対の光調整部材は、前記指向性光源によって当該光調整部材に入射した照射光を、前記複数の溝により前記指向性光源の照射軸と直交する方向に拡散する拡散効果と、その入射側に折り返す反射効果とを有し、当該一対の光調整部材が持つ互いの反射効果によって、前記照射光を前記面状光透過部の他端まで導く導光効果、及び前記拡散効果の複合効果によって、前記一対の面状光透過部を面全体に亘って光らせる両面発光により照明を行うことを要旨とする。
【0009】
ここで、「光源の照射軸」とは、光源からの配光(光束)分布の中心軸を言い、この照射軸上では、光源から等距離の位置において、単位面積当たりの光束量がおよそ最大となるような性質を有する。なお、この中心軸は、例えば、電球や砲弾型のLEDにおける構造的(幾何学的)な対称軸を必ずしも意味するものではない。
【0010】
この構成によれば、面状光透過部(発光面)に指向性光源が映り込んで見栄えが悪くならないように、一対の面状光透過部の端部に照明光源が配置される。そして、この指向性光源が発光した際、この照射光の一部が光調整部材の拡散効果により指向性光源の照射軸に対して垂直に交わる直交方向に拡散されて、一対の面状光透過部から外部に放射される。また、反射効果をも有する一対の光調整部材を向き合わせて配置することにより生じる導光効果により、この2者間に通した照射光が、その照射方向(照射軸方向)に導かれるので、指向性光源の反射光の多くがケース反対側の端部にまで届くようになる。このため、指向性光源の光が面状光透過部(発光面)に広く行き渡るので、例えば高価な部品である導光板を使用せずとも、一対の面状光透過部を面発光させる両面発光が可能となる。
【0011】
さらに、本発明では、発光部の両端部に面発光の光源を配置したので、発光部の両側をともに明るく照らし出すことが可能となる。このため、例えば光源の照射光の発光方向において片側のみが明るく、もう片側が暗くなってしまうような照明状態をとり難くすることが可能となる。
【0012】
加えて、本発明では、面状光透過部の両端部において一方側に配置された複数の光源体の間が、これらと対向する位置に配置された光源体の光によって照明される。このため、面状光透過部の両端部の一方側に配置された隣同士の光源体の間が、対向する光源によって光が補われるので、面発光の均一化を一層図ることが可能となる。
【0013】
その上、溝の界面における光の屈折及び反射作用により、光調整部材に入射された光が、この光の照射方向(照射軸方向)に対して垂直に交わる直交方向に拡散するという拡散効果によって、光源の照射光がこの直交方向に広がる。また、特に、溝が隣同士のものと等間隔をおいて平行に延びるように規則正しく配置された場合、光が規則正しく反射して他端まで導かれるという導光効果により、光源の照射光を光調整部材の溝方向に沿って遠くまで届かせられる。このため、指向性光源の光が照射方向及びその直交方向の両方向に広がるので、発光面をより一層均一に照明させることが可能となる。
【0014】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の照明装置において、前記一対の光調整部材は、シート状をなしたシート材であることを要旨とする。
この構成によれば、光調整部材の厚さを薄くすることができるので、照明装置の厚さサイズを小さくすることが可能となる。
【0015】
請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2に記載の照明装置において、前記一対の光調整部材に形成された平行に延びる複数の溝は、互いに等間隔の距離をおいて形成されていることを要旨とする。
【0016】
請求項4に係る発明では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明装置において、前記一対の光調整部材に形成された溝は、奥に向かうに従い深さ幅が連続的に小さくなる断面三角形状の穴形状をとり、60度〜120度の間の溝角度が付けられたことを要旨とする。
【0017】
請求項5に係る発明では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の照明装置において、前記一対の光調整部材は、表面側がアクリル系樹脂により形成されるとともに、裏面側がポリエステルフィルム層からなる2重構造をとっていることを要旨とする。
【0018】
請求項6に係る発明では、請求項1〜5のいずれか一項に記載の照明装置において、前記指向性光源は、LEDから構成されることを要旨とする。
請求項7に係る発明では、請求項1〜6のいずれか一項に記載の照明装置において、前記指向性光源の照射光を前記一対の光調整部材によって前記一対の面状光透過部から面発光させる機能単位を複数備えることを要旨とする。
【0019】
この構成によれば、発光面積を大きく取った照明装置にも照明の光源として応用可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、指向性光源を発光部の端部に配置してこれを光源とする照明構造をとる場合であっても、導光板を使用せずに発光面から面発光させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態における照明装置が設置された車内の外観を示す斜視図。
【図2】照明装置の具体的構成を示す分解斜視図。
【図3】照明装置の外観を示す斜視図。
【図4】照明装置の内部構造を示す縦断面図。
【図5】照明装置の光源であるLEDの配置位置を示す模式図。
【図6】光拡散フィルムの外観を示す平面図及びその部分拡大図。
【図7】光拡散フィルムの表面形状を示す拡大斜視図。
【図8】光拡散フィルムで光が拡散及び屈折する状態を示す説明図であり、(a)は入射角が臨界角よりも小さい場合、(b)は入射角が臨界角よりも大きい場合、(c)は入射が臨界角とほぼ同じ値をとる場合の説明図。
【図9】別例における照明装置の一例を示す縦断面図。
【図10】他の別例おける照明装置の一例を示す構成図。
【図11】従来における照明装置の構成例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した照明装置の一実施形態を図1〜図8に従って説明する。
図1に示すように、車両1の車内天井には、車内を照明する器具として照明灯具2が設けられている。この照明灯具2には、照明灯具2の動作モードを切り換える際に操作するスライド式の操作スイッチ3が設けられている。操作スイッチ3は、ドア点灯位置、オン位置、オフ位置の3位置に操作可能であり、操作スイッチ3がドア点灯位置に操作されると、車両ドア4を開けた際に照明灯具2が点灯し、操作スイッチ3がオン位置に操作さると、照明灯具2が常時点灯状態をとり、操作スイッチ3がオフ位置に操作されると、照明灯具2が常時消灯状態をとる。なお、照明灯具2が照明装置に相当する。
【0023】
図2に示すように、照明灯具2には、照明灯具2の本体ケース5の基材部分として長四角平板形状をなしたベース部材6が設けられている。このベース部材6の上面6a側には、ベース部材6を上から閉じる上蓋としてカバー7が例えばネジ8により取り付け固定されている。カバー7におけるネジ8の取り付け先であるネジ取付部9は、カバー7の段差部10に設けられ、この段差部10にネジ用蓋11を取り付けることにより、ネジ取付部9に螺着されたネジ8が外部に露出しないように意匠性が確保されている。なお、本体ケース5が装置ケースに相当する。また、カバー7の外面側が装置ケースの表面、ベース部材6の外面側が装置ケースの裏面に相当し、ベース部材6の上面6aが装置ケースの底面の内面に相当する。
【0024】
図2及び図3に示すように、カバー7には、その中央から反ネジ側端部までの一帯に亘り、本体ケース5の外壁であるカバー上壁を長四角形状に刳り抜くことにより開口部12が形成されている。この開口部12には、照明灯具2の光出口として平面形状(板形状)のレンズ13が取り付けられている。本例の照明灯具2は、レンズ13の表面全域から光を照射させる面発光によって周囲を照明する。レンズ13は、ダイヤカット形状をとり、発光面の面全体が光るように面発光の均一化を補助する。レンズ13は、自身の端縁に形成された複数の引掛部14を、開口部12の周縁に形成された対応する引掛穴15に各々係止することにより、カバー7に組み付けられている。また、本例の照明灯具2は、カバー7側のみから光を照射する片面発光式となっている。なお、レンズ13が面状光透過部に相当する。
【0025】
図2、図4及び図5に示すように、ベース部材6において照明灯具2の幅方向(図2のX軸方向)の両端には、互いに向き合う位置状態で一対の光源ユニット16が取り付けられている。これら光源ユニット16は、照明灯具2の長手方向(図2のY軸方向)に沿って等間隔に配置された複数のLED17,17…と、これらLED17,17…が実装された長細い板形状のLED基板18とからなる。なお、照明灯具2の光源としてLED17を使用するのは、LED17には長寿命であるという利点があるため、光源交換等の作業の手間を省けるからである。また、LED基板18の端部(図2の手前側端部)には、LED17を電機接続するための一対の基板端子19,19(片側のみ図示)が設けられている。なお、光源ユニット16が指向性光源に相当し、LED17が指向性光源における複数の光源体に相当する。
【0026】
これら光源ユニット16,16は、ベース部材6の幅方向両端部に折り曲げ形成された立設片20,20に、例えば接着テープ等によって各々縦向き(垂直方向)に取り付けられている。このため、LED17は、レンズ13の発光面に対して平行方向(以降、図5に示す発光方向Kcと記す)に光を照射する。即ち、LED17の照射軸は、レンズ13の発光面に対して垂直な位置関係となる。なお、発光方向Kcは、LED17の照射軸をとることに加え、照明灯具2の長手方向に対して垂直方向をとることも含む。また、本例の照明灯具2の照明構造は、幅方向端部から照射されるLED17の光を、照明灯具2の高さ方向(図2のZ軸方向)に導いてレンズ13から照明光として引き出す方式である。また、LED17に前述の配置位置をとらせるのは、LED17自体がレンズ13に映り込ませずに、点灯の見栄えをよくするためである。更に、図5に示すように、LED17は、照明灯具2の幅方向(図2のX軸方向)において一方の側に位置するものと、同じ幅方向においてもう一方の側に位置するものが、発光方向Kcに対して垂直に交わる直交方向Khおいて互い違いに配置されている。
【0027】
また、ベース部材6の上面(照明灯具2のケースで見ると内面)には、表面に光反射作用を持つ薄板形状の反射板21が例えば接着テープ等により取り付け固定されている。この反射板21は、対向する一対の光源ユニット16の間に、照明灯具2の高さ方向においてレンズ13と所定距離を開けて配置されている。反射板21は、LED17からの照射光をレンズ13側に反射させるために働くもので、例えばPET(Polyethylene terephthalate)により形成されている。なお、反射板21が反射部材に相当する。
【0028】
図2、図4、図6及び図7に示すように、レンズ13の裏面には、入力光を集光して照射する働きを持つ光拡散フィルム22が取り付けられている。光拡散フィルム22は、例えばプリズムシートとも呼ばれるもので、薄い樹脂シート(樹脂フィルム)により形成されている。更に詳しく言うと、表面側(レンズ13側)がアクリル系樹脂により形成されるとともに、裏面側(反射板21側)がポリエステルフィルム層からなる2重構造をとっている。本例の光拡散フィルム22は、反射板21に対して所定間隔(隙間)を空けた状態で、図2に示すように、自身の周縁に形成された複数の係止舌片23を、引掛穴15,15を連続して繋ぐ開口周縁の切込部24に挿し込むことによりカバー7に取り付けられている。なお、光拡散フィルム22が光調整部材に相当する。
【0029】
図6〜図8に示すように、光拡散フィルム22の表面には、フィルム幅方向(図7のX軸方向)に沿って一帯に亘って延びる線の細い溝25,25…が、フィルム長さ方向(図7のY軸方向)に沿って等間隔に並ぶ配置状態をとって複数形成されている。これら溝25,…は、奥に向かうに従い深さ幅が連続的に小さくなる断面三角形状の穴形状をとり、所定の溝角度θ(例えば、60度〜120度の間の角度)が付けられている。また、隣同士の溝間には、これら溝25,25を切ることによってできる断面三角形状の山部26が複数形成されている。即ち、光拡散フィルム22の表面には、断面三角形状の溝25と山部26が、フィルム長さ方向に沿って交互に形成された形状をとっている。
【0030】
また、図6に示すように、光拡散フィルム22は、自身に切られた溝25の延びる方向(同図の溝方向Mc)がLED17の発光方向Kcと平行方向をとる配置向きをとってカバー7に取り付けられている。更に、図4に示すように、反射板21と光拡散フィルム22との間には、所定間隔を空けて配置することにより空間領域が形成され、この空間領域がLED17の照射光が通る光通過領域27となっている。
【0031】
また、図2に示すように、ベース部材6の内面には、照明灯具2の各種電装部品が実装された基板28がテープ部材29を介して取り付け固定されている。この基板28には、操作スイッチ3がどの位置に操作されたのかを検出するスイッチ回路30が実装されている。操作スイッチ3のスイッチ操作に応じてスイッチ回路30の接点が切り換わると、照明灯具2の動作モードがドア点灯状態、オン状態、オフ状態の3状態のうちのいずれかのモードに入る。
【0032】
また、基板28には、一対の光源ユニット16,16と基板28とを接続する内部配線(図示略)の基板28における接続箇所として内部配線接続回路31が実装されている。また、基板28には、照明灯具2の内部から外部に引き出される外部配線(図示略)の基板28における接続箇所として外部配線接続回路32が実装されている。更に、ベース部材6の底壁には、外部配線の引き出し孔として配線通し孔33が貫設されている。この配線通し孔33には、外部配線を取り付け固定するブッシング34が取り付け可能となっている。
【0033】
さて、この種の光拡散フィルム22において自身の裏面(下面22a:図7参照)から入り込む入射光は、そのときの入射角によって、フィルム22の境界面(図8では境界面35)における光の拡散成分(屈折光)や反射成分(反射光)が変わるという性質がある。ここで、屈折率が大きい媒質から小さい媒質に光が入るときに、入射光が境界面を透過せず、すべて反射する現象を全反射といい、入射角(境界面の垂線に対してなす角度)がある一定の角度以上の場合、全反射がおこる。この角度は、臨界角θxとして知られている。光拡散フィルム22から外面(空気中)側に光が進む場合は、屈折率が大きい媒質(光拡散フィルム22)から小さい媒質(空気)に光が入る場合に相当するため、上述の全反射がおこる場合がある。
【0034】
図8(a)に示すように、境界面35に照射される入射光は、この境界面35の垂線Laに対してなす角度を入射角とすると、臨界角θxよりも小さな入射角α(θx>α)をとる場合、この一部が溝25の境界面35から屈折して上側に屈折角α1の角度をもって抜け出る(光の拡散効果)とともに、入射光の一部が境界面35において同じ入射角αで反射しつつ、この反射光がその照射先である向かい側の境界面36で反射する。
【0035】
また、図8(b)に示すように、境界面35に対する入射光は、臨界角θxよりも大きな入射角β(θx<β)をとる場合、全てが溝25の境界面35で同じ入射角βで以て反射しつつ、この反射光がその照射先である向かい側の境界面36に照射される。そして、この反射光が例えば臨界角θxよりも小さい入射角β1で境界面36に到達したとすると、この反射光は、この一部が溝25の境界面36から屈折して上側に屈折角β2の角度をもって抜け出るとともに、反射光の一部が境界面36で同じβ1の角度で更に反射して、フィルム22の内側に向かって反射される(光の反射効果)。
【0036】
よって、光拡散フィルム22の裏面22aから入射された入射光においてその一部は、この光の拡散効果によってフィルム表面から抜け出る光によって、光拡散フィルム22の表側ではフィルム長さ方向に広がって見える。このため、本例では、図6に示すように、光拡散フィルム22をカバー7に取り付けるに際して、LED17の光の発光方向Kcと光拡散フィルム22の溝方向Mcとを平行方向とすることで、LED17の1本の照射光を光拡散フィルム22により2本の照明光(図7参照)として映し出させている。これにより、光拡散フィルム22の表面側において人の目に見える光の本数が多くなるので、レンズ13の発光面をその長手方向(図3や図7のY軸方向)に広がらせることが可能となる。
【0037】
一方、図8(c)に示すように、境界面35に対する入射光は、臨界角θxと同じ、あるいは僅かに大きい入射角γ(θx≦γ<β)をとる場合、溝25の境界面35において同じ入射角γで全反射するとともに更に境界面36でも全反射して、入射光の全成分がフィルム22の裏面側に抜け出る特性(光の反射効果)がある。よって、本例の光拡散フィルム22では、光の入射角が臨界角θxよりも僅かに大きい場合には、透過光がなく、すべてが全反射することから、反射効率が非常に高いものであるといえる。
【0038】
本例では、光拡散フィルム22の溝25,25…をフィルム幅方向に沿って真っ直ぐに規則正しく切り、図4に示すように、反射板21と光拡散フィルム22とを互いに向き合うように平行(水平)に配置させて、光拡散フィルム22で高反射率を以て反射される光を、これら両者の間で反射を繰り返させることで光通過領域27を作っている。このため、本例は、LED17,17…の照射光を、この光通過領域27に光を通して反射させることによって、LED17の照射光を遠くまで導く特性(光の導光効果)が得られる。よって、LED17の光を照明灯具2の幅方向(図3や図7のX軸方向)においても広がらせることが可能となり、LED17の反対側も明るく光らせることが可能となる。
【0039】
従って、本例においては、複数の細かい溝25,25…が規則正しく並ぶ光拡散フィルム22を使用し、この光拡散フィルム22が持つ光の拡散効果と導光効果とを利用して、LED17の光を照明灯具2の長手方向及び幅方向に広がらせて、レンズ13を面発光させる。このため、エッジライト方式に沿う配置状態をとるLED17の光を、高価な導光板を使用せずに面発光させることが可能となる。また、更に本例では、LED17を照明灯具2を左右で互い違いに配置するので、同じ配置側のLED17,17の間の隙間を、反対側のLED17の光で埋めることが可能となる。よって、レンズ13上での光の発光バランスがよくなり、均一度の高い状態でレンズ13を面発光させることが可能となる。
【0040】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)LED17が縦向きで本体ケース5の端部に配置された方式の照明構造をとる照明灯具2において、レンズ13の裏面に光拡散フィルム22を取り付け、この光拡散フィルム22が持つ溝25の直交方向における光の拡散効果と、光拡散フィルム22及び反射板21の間の領域27を通る光をこれらにより反射し合わせて遠くに導く導光効果とにより、LED17の光をレンズ13の平面方向(X方向およびY方向)に広げる。このため、指向性を持つLED17の光を面状に広げることが可能となるので、この光源を使用してレンズ13を面発光させることができる。
【0041】
(2)照明灯具2の光源であるLED17を、本体ケース5の幅方向両側に配置したので、照明灯具2の幅方向両側を、ともに明るく照らし出すことができる。このため、例えば照明灯具2の幅方向において片側のみが明るく、もう片側が暗くなってしまうような照明状態をとり難くすることができる。
【0042】
(3)照明灯具2の幅方向において一方の側に位置するLED17と、もう一方の側に位置するLED17とが、LED17の発光方向Kcに対して垂直に交わる直交方向Khにおいて互い違いに配置される。このため、照明灯具2の幅方向において同じ側に位置するLED17の隣同士の間の隙間が、対向するLED17の光によって照明される。このため、この隙間の照明が補われるので、レンズ13の面発光の均一化に効果が高くなる。
【0043】
(4)LED17の照射光をレンズ13で面発光させるための部品として、樹脂フィルムの表面上に溝25,25が切られた光拡散フィルム22が使用される。このため、フィルムの表面形状に特徴を持たせるだけで済むこの種の部品により、導光部材を使用しなくてもレンズ13の面発光が可能となるので、実施に際して大幅なコストアップを招くことがない。
【0044】
(5)LED17の照射光をレンズ13で面発光させるための部品として、厚さの薄いシート形状の光拡散フィルム22を使用したので、照明灯具2の厚さサイズを小さく済ますことができる。
【0045】
(6)照明灯具2の灯具種類を、本体ケース5の片面(上面)のみから光が照明される片側照明式とした。このため、照明灯具2の片側にのみ光透過機能を持たせば済むので、照明灯具2の構造を簡素なものとすることができる。
【0046】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ 光調整部材としてシート材からなる光拡散フィルム22を使用した場合、これは必ずしもプリズムシートに限定されず、例えば光拡散シートや集光シートを採用してもよい。また、光調整部材は、必ずしもこの種の樹脂シート材に限るものではなく、例えば樹脂板やガラスを使用してもよい。
【0047】
・ 光調整部材は、必ずしも複数の規則正しく並んだ溝25,25を表面に持つものに限らず、光の拡散機能及び反射機能を持つものであれば、形状や材質は特に限定されない。
【0048】
・ 光拡散フィルム22は、表側がアクリル系樹脂で、裏面側がポリエステルフィルム層からなる2重構造をとるものに限定されず、1層の材質からなるものでもよい。また、2重構造をとる場合、これらの材質はアクリル及びポリエステルフィルムに限定されず、これら以外の材質を使用してもよい。
【0049】
・ 照明灯具2は、必ずしも片面発光式に限定されない。例えば、図9に示すように、例えば反射板21を光調整部材(即ち、光拡散フィルム22)に置き換え、ベース部材6の一部をレンズのような透光性を有する部材とすることにより、本体ケース5の上面及び下面の両方から光が引き出される両面発光式としてもよい。
【0050】
・ 照明灯具2は、例えば図10に示すように、LED17の照射光を光拡散フィルム22と反射板21とで面発光させる機能単位を複数設けてもよい。この場合、照明灯具2が大型化する場合であっても、これに対応することができる。なお、この例においては、組をなすLED17群の間で、図10のように光拡散フィルム22及び反射板21が個別に設けられるものに限らず、複数のLED17の組で1つの光拡散フィルム22及び反射板21が共用されるものでもよい。また、図10では、片面発光式を示しているが、両面発光式としてもよいし、両者の組み合わせでもよい。
【0051】
・ LED17は、本体ケース5の幅方向両側に配置されることに限らず、一方のみに配置されるものでもよい。
・ LED17は、本体ケース5の幅方向において左右で互い違いに配置されることに限らず、同じ位置に並ぶものでもよい。
【0052】
・ 指向性光源は、必ずしもLED17を複数もつものに限らず、1つで高い輝度が得られる場合は、1つのLED17から構成されるものでもよい。
・ 指向性光源は、必ずしも複数配置されたLED17に限定されず、光源から出される光に指向性があるものであれば、どのような種のものを使用してもよい。例えば、ひとつのLEDであっても良いし、あるいは、ライン型の光源としては、アーパーチャー型冷陰極管などであってよい。
【0053】
・ レンズ13は、必ずしも表面が平面になっているものに限らず、表面が若干の丸みを帯びた曲面形状をとっていてもよい。
・ 反射部材は、必ずしも板形状の反射板21に限定されず、光を反射できるものであれば、その形状は特に限定されない。また、反射部材の材質も、樹脂であることに限定されるものではなく、光反射作用を持つもつものであれば、どのようなものを採用してもよい。
【0054】
・ 照明灯具2は、必ずしも車両1の室内灯に使用されることに限らず、種々の灯具に応用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
2…照明装置としての照明灯具、5…装置ケースとしての本体ケース、13…面状光透過部としてのレンズ、16…指向性光源としての光源ユニット、17…指向性光源における複数の光源体としてのLED、21…反射部材としての反射板、22…光調整部材としての光拡散フィルム、26…溝、Kc…発光方向、Kh…直交方向、Mc…溝方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置ケースの両面に光出口として一対の面状光透過部を持ち、
当該装置ケースの内部において該面状光透過部の端部に、照射光が指向性を持つ指向性光源を配置し、
当該指向性光源から前記面状光透過部のもう一方の端部に向かって照射される前記照射光を前記面状光透過部から導出する照明装置において、
前記一対の面状光透過部の裏面に、透光性の一対の光調整部材を平行に配置し、
前記指向性光源は、複数の光源体から構成され、
前記面状光透過部の各端部において一方側に配置された前記指向性光源の各々の前記光源体と、それらと対向するもう一方側に配置された前記指向性光源の各々の前記光源体とは、その前記指向性光源の照射軸方向に対する直交方向において交互に配置されており、
かつ、前記指向性光源が、前記一対の光調整部材の間の空間において、その照射軸が該一対の光調整部材と平行になるように配置され、
前記一対の光調整部材の前記一対の面状光透過部側には、平行に延びる複数の溝が形成されるとともに前記一対の光調整部材の対向する側は平坦に形成され、前記一対の光調整部材が、自身の該溝の溝方向と前記指向性光源の照射軸方向とが同方向をとる向きで前記装置ケースに取り付けられ
当該一対の光調整部材は、前記指向性光源によって当該光調整部材に入射した照射光を、前記複数の溝により前記指向性光源の照射軸と直交する方向に拡散する拡散効果と、その入射側に折り返す反射効果とを有し、
当該一対の光調整部材が持つ互いの反射効果によって、前記照射光を前記面状光透過部の他端まで導く導光効果、
及び前記拡散効果の複合効果によって、前記一対の面状光透過部を面全体に亘って光らせる両面発光により照明を行うことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記一対の光調整部材は、シート状をなしたシート材であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記一対の光調整部材に形成された平行に延びる複数の溝は、互いに等間隔の距離をおいて形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記一対の光調整部材に形成された溝は、奥に向かうに従い深さ幅が連続的に小さくなる断面三角形状の穴形状をとり、60度〜120度の間の溝角度が付けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記一対の光調整部材は、表面側がアクリル系樹脂により形成されるとともに、裏面側がポリエステルフィルム層からなる2重構造をとっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記指向性光源は、LEDから構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記指向性光源の照射光を前記一対の光調整部材によって前記一対の面状光透過部から面発光させる機能単位を複数備えることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−177196(P2010−177196A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50333(P2010−50333)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【分割の表示】特願2009−20192(P2009−20192)の分割
【原出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000144544)レシップ株式会社 (179)
【Fターム(参考)】