説明

照準望遠鏡

【課題】 照準望遠鏡の照準精度を安定に維持することができるように、照準の調整角度を大きくすることができると共に、軽快にズーミングを行えるズーミング機構を有する照準望遠鏡を提供する。
【解決手段】 照準望遠鏡1の鏡胴2の外周に回動自在に設けたズーム環5と、該ズーム環5の内周面に備えた環状ギヤ5Aと、該環状ギヤ5Aと同芯に且つ前記鏡胴2の内周に回動自在に設けた円周状ギヤ6と、前記環状ギヤ5Aと該円周状ギヤ6との間に介在して前記環状ギヤ5Aの回動を前記円周状ギヤ6に伝動するように設けた仲介ギヤ7と、前記鏡胴2内に回動自在に備えたカム筒9に前記円周状ギヤ6の回動を伝動する伝動機構13とからなるズーミング機構を有する照準望遠鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照準望遠鏡の照準精度を安定に維持するとともに、軽快にズーミングを行えるズーミング機構を有する照準望遠鏡を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、照準望遠鏡のズーミング機構においては、鏡胴の外に位置したズーム環の回動を鏡胴内に位置したカム筒に伝動させるために、鏡胴に円弧状の開口溝を設けている。しかも、この開口溝は、照準望遠鏡の光軸を中心軸として広角(例えば角度300度前後)の円弧状に開口している。更に、この開口溝は、ズーム系レンズと接眼レンズとの間に位置し、且つ光軸と直交する方向に位置しているので、鏡胴に衝撃等の外力が作用したときに開口溝のところで強度が低下しているという問題点があった。
【0003】
この従来の問題点を解決した照準望遠鏡としては、図6及び図7に示すように、広角の開口溝を必要としないズーミング機構を備えた照準望遠鏡が本願発明者によって提案されている(特許文献1参照)。この照準望遠鏡51は、鏡胴52に連結させた筒体53にズーム環54を装着して鏡胴52に対し回動自在にさせるとともに、ズーム環54の内周面に環状ギヤ55を備え、且つ鏡胴52内に回動自在に備えたカム筒56の外周面に円周状ギヤ58を設ける一方、筒体53の小穴59に仲介ギヤ57を回動自在に設け、この仲介ギヤ57を環状ギヤ55と円周状ギヤ58との間に介在させることにより、ズーム環54の回動が仲介ギヤ57を介してカム筒56に伝達されて照準望遠鏡51のズーミングを行うように構成している。
【特許文献1】特許第2920592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の照準望遠鏡51は、カム筒56を偏向させて照準を調整する照準調整機構60を有するから、照準調整時にカム筒56を偏向させると、カム筒56の外周面に設けた円周状ギヤ58と仲介ギヤ57の噛み合いが変化する。そのため、カム筒56の偏向角度を大きく設けると、円周状ギヤ58と仲介ギヤ57の噛み合いがきつくなったり外れたりして軽快にズーミングを行うことができなくなる場合があり、照準の調整角度を大きくすることが困難であるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、照準望遠鏡の照準精度を安定に維持することができるように、照準の調整角度を大きくすることができると共に、軽快にズーミングを行えるズーミング機構を有する照準望遠鏡を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、ズーミング機構を有する照準望遠鏡であって、該照準望遠鏡の鏡胴外周に回動自在に設けたズーム環と、該ズーム環の内周面に備えた環状ギヤと、該環状ギヤと同芯に且つ前記鏡胴内周に回動自在に設けた円周状ギヤと、前記環状ギヤと該円周状ギヤとの間に介在して前記環状ギヤの回動を前記円周状ギヤに伝動するように設けた仲介ギヤと、前記鏡胴内に回動自在に備えたカム筒に前記円周状ギヤの回動を伝動する伝動機構とからなるズーミング機構を有する照準望遠鏡を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、前記伝動機構が、前記カム筒に設けた溝部と、前記円周状ギヤに設けた突起部とからなり、該突起部が前記溝部に変位可能に係合してある請求項1に記載の照準望遠鏡を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記カム筒を上下又は/及び左右に偏向させて照準を調整する照準調整機構を備えた請求項1又は2に記載の照準望遠鏡を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記照準調整機構が、前記カム筒を回動自在に支持するように設けた内筒と、該内筒の外周に設けたR環と、R環を上下左右方向に偏向可能に支持するように設けたR環支持部材を有する請求項3に記載の照準望遠鏡を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る照準望遠鏡によれば、ズーミング機構を有する照準望遠鏡であって、該照準望遠鏡の鏡胴外周に回動自在に設けたズーム環と、該ズーム環の内周面に備えた環状ギヤと、該環状ギヤと同芯に且つ前記鏡胴内周に回動自在に設けた円周状ギヤと、前記環状ギヤと該円周状ギヤとの間に介在して前記環状ギヤの回動を前記円周状ギヤに伝動するように設けた仲介ギヤと、前記鏡胴内に回動自在に備えたカム筒に前記円周状ギヤの回動を伝動する伝動機構とからなるズーミング機構を有することにより、環状ギヤと円周状ギヤを同芯に設けてあるから、環状ギヤと仲介ギヤ及び仲介ギヤと円周状ギヤの噛み合いを略一定に保つことができ、略一定のトルクでズーム環を操作して円周状ギヤに回動を伝動することができる。また、伝動機構によって円周状ギヤの回動をカム筒に伝動するようにしてあるから、確実にカム筒を回動させることができ、軽快かつ確実にズーミングを行うことができる効果がある。
【0011】
また、本発明は、前記伝動機構が、前記カム筒に設けた溝部と、前記円周状ギヤに設けた突起部とからなり、該突起部が前記溝部に変位可能に係合してある請求項1に記載の構成を有することにより、照準調整のためにカム筒を大きく偏向させた場合でも、カム筒に設けた溝部と円周状ギヤに設けた突起部とが変位可能に係合するから、円周状ギヤの回動をカム筒に確実に伝動してズーミングを行うことができる効果がある。
【0012】
また、本発明は、前記カム筒を上下又は/及び左右に偏向させて照準を調整する照準調整機構を備えた請求項1又は2に記載の構成を有することにより、照準望遠鏡の照準精度を安定に維持することができる効果がある。
【0013】
また、本発明は、前記照準調整機構が、前記カム筒を回動自在に支持するように設けた内筒と、該内筒の外周に設けたR環と、R環を上下左右方向に偏向可能に支持するように設けたR環支持部材を有する請求項3に記載の構成を有することにより、R環とR環支持部材によってカム筒を偏向可能に支持するから、カム筒を大きく偏向させることができ、近くから遠方まで照準の調整範囲を広くすることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図1乃至図5に示す実施例に基づいて説明する。
図中の符号1は本発明に係る照準望遠鏡であり、照準望遠鏡1のズーミング機構は、鏡胴2の外周に回動自在に設けたズーム環5と、該ズーム環5の内周面に備えた環状ギヤ5Aと、該環状ギヤ5Aと同芯に且つ前記鏡胴2の内周に回動自在に設けた円周状ギヤ6と、前記環状ギヤ5Aと該円周状ギヤ6との間に介在して前記環状ギヤ5Aの回動を前記円周状ギヤ6に伝動するように設けた仲介ギヤ7と、前記鏡胴2内に回動自在に備えたカム筒9に前記円周状ギヤ6の回動を伝動する伝動機構13とから構成してある。
【実施例1】
【0015】
図1及び図2に示すように、鏡胴2は、鏡胴本体2Aと、鏡胴本体2Aに連設した筒体2Bとからなる。筒体2Bには略十字状の小穴3を設けてあり、仲介ギヤ7はその軸を照準望遠鏡1の光軸Nと平行にして小穴3に横設して回動自在に設けてあり、仲介ギヤ7の歯部の一部は筒体2Bの外周面と内周面とから僅かに突出するように構成してある。
【0016】
図示の実施例において、ズーム環5は、鏡胴2の筒体2Bの外周に回動自在に設けてある。また、環状ギヤ5Aは、ズーム環5の内周の螺子部に螺合して設け、ギヤ押え5Bによってズーム環5に固設してあると共に、筒体2Bに設けた仲介ギヤ7と歯合してあり、ズーム環5を回転操作すると仲介ギヤ7が回動するように構成してある。
【0017】
図1及び図2に示すように、円周状ギヤ6は、ギヤ部6Aと、光軸N方向に延設した摺動面6Bと、内周方向に突設した突起部6Cとからなる。摺動面6Bは、筒体2Bの内周に環状ギヤ5Aと同芯に設けた摺動面2Cと摺動して、円周状ギヤ6を環状ギヤ5Aと同芯に且つ筒体2Bに対して回動自在に設けてある。また、円周状ギヤ6は、筒体2Bに設けた仲介ギヤ7と歯合してあり、仲介ギヤ7を介して環状ギヤ5Aの回動が円周状ギヤ6に伝動するように構成してある。この構成により、環状ギヤ5Aと円周状ギヤ6は常に同芯の状態で回動させることができ、環状ギヤ5Aと仲介ギヤ7及び仲介ギヤ7と円周状ギヤ6の噛み合いを略一定に保つことができる。
【0018】
図1乃至図4に示すように、鏡胴本体2A内では、カム筒9を鏡胴本体2Aに内設した内筒8に回動自在に覆設してある。カム筒9には溝部9Cを設けてあり、円周状ギヤ6に設けた突起部6Cがこの溝部9Cに変位可能に係合して、カム筒9に円周状ギヤ6の回動を伝動する伝動機構13を構成している。この構成により、照準調整のためにカム筒9を偏向しても突起部6Cと溝部9Cの係合を維持することができ、円周状ギヤ6の回動をカム筒9に伝動することができる。
なお、伝動機構は図示の実施例に限られず、カム筒9の外周に突起部を設け、円周状ギヤ6の内周に溝部を設け、突起部が溝部に変位可能に係合した構成にすることも可能である。
【0019】
カム筒9の周側面には、2本の螺旋状のカム孔9A,9Bを光軸Nに対しやや急傾斜をなす角度で設けてある。
また、内筒8内には、光軸Nと平行に案内孔8Aを設けてあり、ズーム系レンズ10A,10Bをその支持具11A,11Bを介して移動可能に設けてある。支持具11Aのネジ12Aは、カム孔9Aと案内孔8Aの重なり合い部分に挿通してあり、カム筒9が回動したときのカム孔9Aと案内孔8Aの重なり合い部分の移動に従ってズーム系レンズ10Aが移動するようにしてある。同様に、支持具12Bのネジ12Bは、カム孔9Bと案内孔8Aとの重なり合い部分に挿通してある。
【0020】
上記構成のズーミング機構により、ズーム環5の回動は仲介ギヤ7を介して円周状ギヤ6に伝動され、更に円周状ギヤ6の回動は伝動機構13を介してカム筒9に伝動される。カム筒9の回動は、ネジ12A,12Bと支持具11A,11Bとを介して、ズーム系レンズ10A,10Bの光軸Nと平行な移動に変換されて、照準望遠鏡1のズーミングが作用する。かつ、ズーム環5の回動角度には制限がないから、カム筒9のカム孔9A,9Bは光軸Nに対して急傾斜の角度に設けることができ、ズーム環5を小さなトルクで軽快に回動させることができる。
【0021】
図1、図4及び図5に示すように、鏡胴本体2Aの略中央には、照準望遠鏡1を銃身に装着したときの銃身の向きと照準望遠鏡1の光軸Nとを実際の射撃状態に照準調整するための照準調整機構20を設けてある。
【0022】
図示の実施例において、照準調整機構20は、カム筒9を回動自在に支持するように設けた内筒8と、該内筒8の外周に設けたR環24と、R環24を上下左右方向に偏向可能に支持するように筒体2Bに設けたR環支持部材25とからなる内筒支持機構26を有している。R環24は、球体をその中心を挟んだ平行な2平面で切り出した形状をなし、内筒8の接眼部4側の端部に設けてある。R環支持部材25は、筒体2Bに固設した割環25Aとこの割環25Aの内周に螺合して設けた押え環25Bとからなり、割環25Aと押え環25BでR環24を挟持するようにしてある。なお、内筒支持機構26は、伝動機構13における内筒8の変位を小さくすることができるように、伝動機構13の近傍に設けてあることが好ましい。
【0023】
また、照準調整機構20は、偏角調整する左右照準調整環21と、抑角調整可能な上下照準調整環22と、光軸Nに対して左右照準調整環21及び上下照準調整環22と対向する位置に設けたコイルバネ23とからなる。内筒8の対物レンズ14側端部には、中間レンズ15を有する支持筒体16を連設してあり、左右照準調整環21及び上下照準調整環22を廻してこの支持筒体16を押圧操作し、内筒8を内筒支持機構26を中心に上下及び左右に偏向させることができるようにしてある。内筒8を偏向させることにより、内筒8に設けたズーム系レンズ10A,10B及びカム筒9も偏向させて照準を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明照準望遠鏡の一実施例のズーミング機構を示す一部縦断側面図。
【図2】その一実施例の要部を示す一部欠切斜視図。
【図3】その一実施例の内部を示す一部欠切斜視図。
【図4】その一実施例を示す一部欠切斜視図。
【図5】その一実施例のA−A線断面図。
【図6】従来の照準望遠鏡のズーミング機構を示す一部縦断側面図。
【図7】従来の照準望遠鏡のB−B線断面図。
【符号の説明】
【0025】
1 照準望遠鏡
2 鏡胴
2A 鏡胴本体
2B 筒体
2C 摺動面
3 小穴
4 接眼部
5 ズーム環
5A 環状ギヤ
5B ギヤ押え
6 円周状ギヤ
6A ギヤ部
6B 摺動面
6C 突起部
7 仲介ギヤ
8 内筒
8A 案内孔
9 カム筒
9A,9B カム孔
9C 溝部
10A,10B ズーム系レンズ
11A,11B 支持具
12A,12B ネジ
13 伝動機構
14 対物レンズ
15 中間レンズ
16 支持筒体
20 照準調整機構
21 左右照準調整環
22 上下照準調整環
23 コイルバネ
24 R環
25 R環支持部材
25A 割環
25B 押え環
26 内筒支持機構
51 照準望遠鏡
52 鏡胴
53 筒体
54 ズーム環
55 環状ギヤ
56 カム筒
57 仲介ギヤ
58 円周状ギヤ
59 小穴
N 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズーミング機構を有する照準望遠鏡であって、該照準望遠鏡の鏡胴外周に回動自在に設けたズーム環と、該ズーム環の内周面に備えた環状ギヤと、該環状ギヤと同芯に且つ前記鏡胴内周に回動自在に設けた円周状ギヤと、前記環状ギヤと該円周状ギヤとの間に介在して前記環状ギヤの回動を前記円周状ギヤに伝動するように設けた仲介ギヤと、前記鏡胴内に回動自在に備えたカム筒に前記円周状ギヤの回動を伝動する伝動機構とからなるズーミング機構を有する照準望遠鏡。
【請求項2】
前記伝動機構が、前記カム筒に設けた溝部と、前記円周状ギヤに設けた突起部とからなり、該突起部が前記溝部に変位可能に係合してある請求項1に記載の照準望遠鏡。
【請求項3】
前記カム筒を上下又は/及び左右に偏向させて照準を調整する照準調整機構を備えた請求項1又は2に記載の照準望遠鏡。
【請求項4】
前記照準調整機構が、前記カム筒を回動自在に支持するように設けた内筒と、該内筒の外周に設けたR環と、R環を上下左右方向に偏向可能に支持するように設けたR環支持部材を有する請求項3に記載の照準望遠鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−10810(P2006−10810A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184684(P2004−184684)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(391004023)株式会社ハッコー商事 (1)
【Fターム(参考)】