熟度判定装置
【課題】ノイズ振動を低減し、被検体の振動を精度よく得ることができる、持ち運び可能な小型の熟度判定装置を提供する。
【解決手段】発振源6により被検体20に振動を与え、歪を電気信号に変換する検出素子を備える振動センサ7が被検体20の振動により歪むことにより被検体20の振動を検出し、発振源6が配置された第1のアーム9及び振動センサ7が配置された第2のアーム10が、被検体20をアーム間で挟めるように同時に平行移動し、アームの移動量を取得することにより直径計測部8は被検体20の直径を算出する。そして、振動センサ7により検出された振動を解析して第2次共鳴周波数を検出し、第2次共鳴周波数と直径計測部8により計測された直径とに基づいて弾性率を算出し、熟度を判定する。
【解決手段】発振源6により被検体20に振動を与え、歪を電気信号に変換する検出素子を備える振動センサ7が被検体20の振動により歪むことにより被検体20の振動を検出し、発振源6が配置された第1のアーム9及び振動センサ7が配置された第2のアーム10が、被検体20をアーム間で挟めるように同時に平行移動し、アームの移動量を取得することにより直径計測部8は被検体20の直径を算出する。そして、振動センサ7により検出された振動を解析して第2次共鳴周波数を検出し、第2次共鳴周波数と直径計測部8により計測された直径とに基づいて弾性率を算出し、熟度を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物などの熟度を判定する熟度判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、果実等の収穫の時期や熟度は、色や大きさの変化の観察、食味等の経験に基づく人間の感覚によって判断されていた。しかし、正確な判断ができるまでには、多年の経験を必要とするため、人材の育成に多くの時間を要するとともに人件費等の経費がかかるという問題があった。また、人間の感覚による判断では、ミスが発生する虞があった。
【0003】
そこで、果実等の収穫の時期や熟度を判定するための、客観性の高い装置が提案されている。例えば、本件出願人らは、被検体に振動を与えた際に検出した被検体の振動を周波数分析し、被検体の弾性率と比例関係を示す共鳴周波数を検出することにより果実の熟度を判定する技術を提案している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−236587号公報
【特許文献2】特開平9−274022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された技術では、振動をレーザドップラー法で測定しているため、その装置は大型なものとなってしまう。
【0006】
また、振動の検出にマイクロフォンを用いることが提案されているが(例えば、特許文献2参照。)、得られた振動に外音のノイズ振動が含まれてしまうため、共鳴周波数を検出することが困難であった。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、ノイズ振動を低減し、被検体の振動を精度よく得ることができる、持ち運び可能な小型の熟度判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明に係る熟度判定装置は、被検体に振動を与える発振源と、歪を電気信号に変換する検出素子を備え当該検出素子が上記被検体の振動により歪むことにより被検体の振動を検出する振動センサと、当該被検体の直径を取得する取得部と、上記振動センサにより検出された振動を解析して第2次共鳴周波数を検出し、当該第2次共鳴周波数と上記直径に基づいて上記被検体の弾性率を算出し、当該弾性率に基づいて上記被検体の熟度を判定する解析判定部とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
振動センサが歪を電気信号に変換する検出素子を備え、検出素子が被検体の振動により歪むことにより被検体の振動を検出するため、外音によるノイズ振動を排除し、被検体の振動を精度よく、安定して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体例として示す熟度判定装置は、被検体を加振して得られる振動を解析し、被検体の弾性率と比例関係を示す2次共鳴周波数を検出することにより弾性率を算出し、その弾性率に基づいて被検体の熟度等を判定するものである。
【0011】
図1は、熟度判定装置1の全体構成を模式的に示すブロック図である。この熟度判定装置1は、被検体の直径及び振動を測定する測定部2と、測定された直径及び振動に基づいて弾性率を算出し、熟度を判定する解析判定部3と、判定結果を表示する表示部4と、各構成部を統括的に制御する制御部5とを備えて構成されている。
【0012】
測定部2は、図2に示すように被検体20に振動を与える発振源6と、被検体20の振動を検出する振動センサ7と、被検体20の直径を計測する直径計測部8とを有している。発振源6は第1のアーム9に設けられている。この第1のアーム9には被検体との接触を検知する接触センサ61がさらに設けられている。振動センサ7は第2のアーム10に設けられている。そして、第1のアーム9又は第2のアーム10がスライダ11を移動する。
【0013】
発振源6は、打撃によって被検体20に振動を与える。振動を与える方法は、被検体20の種類により選択する必要がある。例えば、被検体20がスイカやメロンのように重さがあるものは、共鳴を生じさせるのに大きな振動を与えなけばならないため、打撃により振動を与えることが好ましい。
【0014】
図3は、打撃により振動を与える場合の発振源6を示す模式図である。この発振源6は、発振ヘッド21が被検体20を打撃することにより、被検体20に振動を与えている。この発振ヘッド21の先端は、被検体を傷つけないように衝撃吸収材22で覆われている。また、発振ヘッド21の2度叩き防止と、発振ヘッドアーム23への振動伝播を抑えるために、発振ヘッド21と発振ヘッドアーム23とは高分子ゲルシート等の衝撃吸収材24を介して固定されている。これにより、発振による機構全体へのノイズ振動を軽減することができるとともに、被検体20に打撃を与えた後も、発振ヘッド21を被検体20に接触させ続ける、いわゆる突き通し手法を実現することができる。
【0015】
また、発振源6には被検体20を挟んで固定するための接触プレート25が設けられている。この接触プレート25は、図4に示すように突起30により被検体20と点接触している。この接触プレート25と被検体20との接触面積が大きくなると、振動の吸収率が大きくなるため、被検体20との接触は、被検体20を挟むことができる2点接触であることが好ましい。また、発振ヘッド21は、接触している2点間の中心を通過し、被検体20に打撃を与えることが好ましい。
【0016】
発振スイッチ26は、ハブスライダ27と一体化されており、このハブスライダ27により発振ヘッド起動ハブ28が回転する。この発振ヘッド起動ハブ28が回転することにより発振ヘッドアーム23が駆動し、発振力生成用バネ29がたわむ。
【0017】
被検体20に振動を与える場合、発振スイッチ26を下方にスライドさせる。すると、発振スイッチ26と一体化されているハブスライダ27が下がるとともに、発振ヘッド起動ハブ28が回転する。これにより、発振ヘッドアーム23が被検体20から遠ざかる方向に傾き、発振力生成用バネ29がたわむことにより、加振力が蓄えられる。さらに発振スイッチ26を下方に下げると発振力生成用バネ29の反発力により発振ヘッド21が被検体20に打撃を与える。
【0018】
なお、図3に示す発振源6は、人手による加振動作を起動する機構の例であるが、モータとカム等の駆動機構を用いて自動的に加振するようにしてもよい。
【0019】
打撃による加振力には、被検体20に共鳴振動を生じさせる強さが必要である。加振力が小さい場合、振動は被検体20の内部を伝播し減衰するのみで、被検体20に十分な共鳴振動を生じさせることができない。この加振エネルギーPは重量をm、速度をvとすると(1)式で表される。
【0020】
【数1】
【0021】
加振エネルギーを大きくするためには、発振ヘッド21の重量を大きくするか、又は加振速度を大きくする必要がある。しかし逆に被検体20に与えた打撃に対する反力が大きくなり、発振側の第1のアーム9への振動が衝撃吸収材を大きくしても吸収しきれない場合が発生する。そこで、被検体20に打撃力を効率よく与えるために、力積(力×時間)を大きくする。具体的には、被検体20に発振ヘッド21が打撃により接触した後も、被検体に接触し続ける、いわゆる突き通しを行うことで打撃力を持続的に与えるようにする。これにより、発振ヘッド21を重くしなくても、被検体20の内部に打撃力を浸透させ、被検体20に自励振動を生じさせることができる。
【0022】
振動センサ7は、発振源6と振動センサ7とが一体化した筐体の構造上、正確な被検体20の振動解析が困難となる。これは、発振源側からの振動の回り込み等の振動と、被検体20から振動センサ7が受けた振動とが、振動センサ7と第2のアーム10に伝播することにより、振動センサ7と第2のアーム10自身の共振振動が、被検体20の振動に重畳されてしまうためである。したがって、振動センサ7は、外音などのノイズの影響を受けず、被検体20の振動を精度よく検出できる構造とする必要がある。
【0023】
そこで、振動センサ7は、図5に示すようにプレート型の圧電素子等の歪を電気信号に変換する検出素子51を備えている。これにより、外音の影響を排除することができる。
【0024】
また、プレート型の検出素子51に点接触用突起52を設け、被検体20との接触面積を極力小さくし、被検体20の振動の解像度を向上させている。被検体との接触面積が大きい場合は、検出素子面の変位が重畳され、非線形性要素が加わってしまうため、振動解析が困難となる。
【0025】
さらに、検出素子51の背面には剛性の高い金属などからなる検出素子受け53を設けている。これにより、検出素子51の歪みを極力防止している。この検出素子51の面歪みが大きくなると、本来の振動に対し異なった周波数の振動信号が取り出されてしまう。
【0026】
さらにまた、検出素子51と検出素子受け53との間に薄い振動増幅シート54を挟んでいる。これにより、プレート型の検出素子51が大きく歪むことを防止するとともに、被検体20の振動には変位が生じるようにしている。これは、直接、検出素子51を検出素子受け53に取り付けると、殆ど変位を生じ無くなるためである。
【0027】
また、高分子ゲルシート等の衝撃吸収材55を検出素子受け53とホルダ56の間に設置し、且つ検出素子受け53が直接ホルダ56に接触しないように検出素子受け53を衝撃吸収材55で保持する。これにより振動センサ7の筐体からの振動や検出素子51からの振動を第2のアーム10に伝播させないようにすることができる。
【0028】
このような構造を有する振動センサ7により、振動ノイズの影響を最小限に低減させるとともに精度よく振動を検出することができる。また、このような振動センサ7を備えることにより、持ち運び可能な小型な熟度判定装置1を提供することが可能となる。
【0029】
直径計測部8は、第1のアーム9又は第2のアーム10をスライドさせ、被検体20を挟むことにより被検体の直径を計測する。具体的には、発振源6と振動センサ7と間の距離を測定することにより、被検体20の直径を算出する。
【0030】
例えば、図2に示した測定部2において、発振源6が配置された第1のアーム9及び振動センサ7が配置された第2のアーム10が、被検体20をアーム間で挟めるように同時に平行移動する。この際、直径計測部8は、アームの移動量を取得することにより被検体20の直径を算出することができる。
【0031】
図6は、図1に示す解析判定部3の構成を示すブロック図である。解析判定部3は、上述した測定部2から取得した振動波形を増幅する増幅部71と、振動波形のノイズを除去するフィルタ72と、振動波形のアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部73と、振動波形の所定領域を抽出する波形抽出部74と、抽出された振動波形を高速フーリエ変換するFFT(Fast Fourier Transform)演算部75と、高速フーリエ変換された信号より2次共鳴周波数を検出する検出部76と、被検体の直径を演算する直径演算部77と、被検体の直径に基づいて2次共鳴周波数を補正する補正部78と、2次共鳴周波数より弾性率を算出して熟度を判別する判定部79とを備えている。
【0032】
入力された振動波形は、増幅部71によりA/D変換部73の入力ゲインに適合するように増幅され、フィルタ72により高周波成分のノイズが除去され、A/D変換部73にてアナログ信号からデジタル信号に変換される。この振動波形には、被検体の振動だけでなく、測定部2の加振機構、受振機構、筐体等の振動が含まれている。そこで、信号抽出部74は、このような振動波形から所定の時間領域を抽出する。具体的には、例えば、図7(A)に示す振動波形から図7(B)に示すようにtC1及びtC2を除去し、2次共鳴周波数の検出に有効な時間領域tvを抽出する。
【0033】
抽出する時間領域tvは、被検体によって振動波形の持続時間及び単位時間あたりの減衰比が異なるため、被検体の種類毎に設定する。例えば、リンゴの振動波形は、持続時間が短く、単位時間あたりの減衰率が大きい。一方、スイカの振動波形は、持続時間が長く、単位時間あたりの減衰率が小さい。このような特徴に基づいて時間領域tvを設定することにより、振動波形に含まれている測定部2の加振機構、受振機構、筐体等のノイズ振動を低減させることができる。
【0034】
信号抽出部74により抽出処理された振動波形は、FFT演算部75で高速フーリエ変換され、周波数成分が解析される。図8(A)は、抽出処理した振動波形を高速フーリエ変換した波形を示す図であり、図8(B)は、抽出処理していない振動波形を高速フーリエ変換した波形を示す図である。図8(A)及び図8(B)を比べれば解るように、抽出処理により破線で示す2次共鳴周波数の波形のピークが強調されるため、検出部76は2次共鳴周波数を高感度に検出することができる。
【0035】
抽出処理して求められた各次数の共鳴周波数は、被検体に応じて固有の値を持つ。1次共鳴周波数は、加えた振動に対し、被検体の一部を振動させる周波数である。また、2次共鳴周波数は、加振により被検体全体が共鳴し、被検体が伸縮する自励振動の周波数である。そして、この周波数の高さと弾性率が比例する。つまり、2次共鳴周波数は、被検体である果実が熟し、弾性率が低くなるにつれて、低周波数側にシフトする。
【0036】
直径演算部77は、被検体の質量mを、例えば、単位体積あたりの平均密度係数ρと直径計測部8により計測した直径dを用いて(2)式により近似する。
【0037】
【数2】
【0038】
また、被検体の弾性率は、質量mと2次共鳴周波数f2を用いて次式により算出されることが知られている。
【0039】
【数3】
【0040】
本実施の形態では、被検体の弾性率推移、すなわち、弾性率の相対値を求めれば良いため、弾性率は次式で表すことができる。
【0041】
【数4】
【0042】
さらに、補正部78は、直径演算部77で直径より近似された質量を用いて弾性率を補正する。これは、2次共鳴周波数f22が被検体の質量mに反比例するからである。
【0043】
判定部79は、このようにして算出された弾性率のデータに基づいて被検体の熟度を判定する。この判定は、被検体の種類毎に蓄積された弾性率に基づいて行われ、弾性率の経時変化に基づいて収穫時期を判定することができる。例えば、弾性率が1日に0.1ずつ減少する果実の場合、測定した弾性率から収穫に適した弾性率までの差を算出し、その差を0.1で割ることにより収穫時期を判定する。
【0044】
解析判定部3は、上述の処理をすることにより、精度の高い熟度判定を行うことができ、例えば果実の開花時期から収穫時期を判定する場合、生育個体差による時期のズレが生じるが、本法は収穫直前の生育状況を把握できる為、より確実に果実の収穫時期を提供することができる。
【0045】
表示部4は、LCD(Liquid Crystal Display)などからなり、解析判定部3で解析や判定された情報を表示する。また、測定部2により測定された各種データを表示する。例えば、熟度を15段表示し、9〜13段を適熟として表示する。また、1日あたりの弾性率の変化値を基に求めた収穫時期を何日後又は日付で表示する。
【0046】
上述した各構成部は制御部5により統括的に処理される。
【0047】
次に、熟度判定装置1の動作を図2に示す測定部2の構成及び図9に示すフローチャートを参照して説明する。
【0048】
まず、測定開始前に、ステップS1において制御部5は各構成部の状態チェックを行い、演算処理等のための変数などの初期化を行う。例えば、電源投入直後の場合、アームを最も閉じた状態にスライドさせ、直径を求めるための初期化を行う。その後、アームを被検体20を挟める程度までスライドさせて開く。
【0049】
ステップS2において第1のアーム9及び受振側の第2のアーム10をスライドさせ(ステップS2)、被検体20を挟む。
【0050】
ステップS3において接触センサ61が被検体20を挟んだことを検出すると、制御部5は、発振開始動作を受け付ける状態となる。
【0051】
ステップS4で発振開始操作を検出すると、ステップS5以降の動作を開始する。ステップS5では、アームの移動量から被検体20の直径を求める。
【0052】
次に、発振源6を動作させ、被検体20に対し振動を与える(ステップS6)。振動センサ7は、被検体20の振動を検知し電気信号に変換する。電気信号に変換された振動信号は解析判定部3に入力される(ステップS7)。解析判定部3では、熟度を判定する被検体20の2次共鳴周波数の検出を容易にするため、振動信号から2次共鳴周波数を含む時間軸方向の抜き出し処理を行う(ステップS8)。そして、FFT解析し、振動信号の周波数成分を解析する(ステップS9)。また、ステップS5で得た被検体20の直径から質量補正を行い、被検体20の弾性率を求める(ステップS10)。
【0053】
解析判定部3は、ステップ10において求められた弾性率に基づいて適熟の判定を行う(ステップS11)。表示部4は、ステップS11において判定された結果や被検体の測定データを表示する(ステップS12)。その後、測定部2における発振側の第1のアーム9と受振側の第2のアーム10を予め規定した位置までスライドさせ、アームを開いた状態とし、次の測定を行えるように準備を行う(ステップS13)。
【0054】
このような動作により、自動測定可能な熟度判定装置1が実現される。
【0055】
また、図10に示すように、熟度判定装置1は、いわゆるパーソナルコンピュータなどの計算機80と情報を通信するため、イーサーネット、USB(Universal Serial Bus)及び、フラッシュメモリカードなどの標準規格化されたインターフェイス81を備えている。また、測定部2にて測定された、被検体20の直径、FFT演算結果、2次共鳴周波数、弾性率、判定結果などの情報を被検体別に識別名やコードを付加して保存するデータ蓄積部82、及び解析判定部3にて判定された熟度などの判定データを保存する判定データ保存部83を備えている。
【0056】
これにより、熟度判定装置1は、インターフェイス81を介して計算機80に接続し、計算機80に保存されたデータの読出し、消去などの操作が行うことができる。したがって、インターフェイス81を介して接続した計算機80から、上述した2次共鳴周波数検出前処理の有効時間領域、弾性率、熟度判定などのデータを判定データ保存部83に取り込むことにより、新たな被検体の品種追加が可能となる。
【0057】
また、計算機80は、読み出したデータを解析し、継続的な測定による弾性率推移の傾向による収穫時期の推定、振動による共鳴周波数の詳細解析による新たな被検体の品種データの取得などを行うことができる。
【0058】
図11乃至図13は、計算機80に表示されるGUI(Graphical User Interface)に基づく画面の一例を示すものである。
【0059】
図11に示すGUIに基づく画面100では、熟度判定装置1からのデータを取得する操作を行うことができる。接続ボタン101は、予めイーサーネットなどのインターフェイスを介して接続された熟度判定装置1と論理的に接続することができる。この接続ボタン101を選択し、接続プログラムを実行すると、熟度判定装置内のデータ蓄積部82に蓄積した測定データの一覧を、画面100の測定装置データ一覧102に表示することができる。そして、データ転送ボタン103を実行することにより、熟度判定装置103から計算機80にデータが転送され、計算機データ一覧104に表示される。また、削除ボタン105を選択し、削除プログラムを実行することによって、熟度判定装置内に蓄積したデータを削除することができる。
【0060】
図12に示すGUIに基づく画面200は、画面100に示す個別データの領域を選択することにより切り替えられる。この画面200に基づいてユーザは、計算機80に取り込んだ被検体の各データを表示することができる。この画面200のデータ一覧201から所望の識別コードを選択することにより、その被検体の測定データ及び経時データを表示することができる。測定データ表示領域202では、日時別に識別された識別コードが表示された経時データ一覧203から所望の識別データを選択することにより、測定判定結果表示領域204にその識別データの弾性率などの測定結果が表示されるとともにFFT解析の結果がFFT解析結果領域205に表示される。これによりユーザはデータ分析を容易に行うことができる。
【0061】
また、図13に示すGUIに基づく画面300は、画面200に示す経時データの領域を選択することにより切り替えられる。この画面300の経時データ領域301には、データ一覧302にて選択された所望のデータの経時変化が経時変化表示領域303にグラフとして表示される。これにより、ユーザは、弾性率の経時変化を確認することができる。この経時変化表示領域303には収穫時期に妥当となる弾性率の領域を示す収穫時期判定領域304が示される。この収穫時期判定領域304は、弾性率の経時変化に基づいて設定される。また、経時データ領域301には推定収穫時期に関する判定結果を表示する判定表示領域305が設置されており、収穫計画を容易に行うことができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、被検体の熟度を判定し、収穫時期を推定することとしたが、これに限らず、被検体の適熟時期、つまり食べ頃も判定することができる。この場合、熟度判定装置にプリンタなどを備えるようにして、食べ頃などを表示したシールを出力し、被検体に貼るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】熟度判定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態における測定部の構成を示す模式図である。
【図3】発振源の一例を示す模式図である。
【図4】発振源の一例を示す模式図である。
【図5】振動センサの構成を示す模式図である。
【図6】解析判定部の構成を示すブロック図である。
【図7】解析判定部における信号処理を説明するための図である。
【図8】解析判定部における信号処理を説明するための図である。
【図9】本実施の形態における熟度判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】熟度判定装置の他の構成を示すブロック図である。
【図11】表示装置に表示される画面の一例を示す図である。
【図12】表示装置に表示される画面の一例を示す図である。
【図13】表示装置に表示される画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 熟度判定装置、 2 測定部、 3 解析判定部、 4 表示部、 5 制御部、 6 発振源、 7 振動センサ、 8 距離計測部、 9 第1のアーム、 10 第2のアーム、11 スライダ、 51 検出素子、 52 点接触用突起、 53 検出素子受け、 54 振動増幅シート、 55 振動吸収材、 56 ホルダ
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物などの熟度を判定する熟度判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、果実等の収穫の時期や熟度は、色や大きさの変化の観察、食味等の経験に基づく人間の感覚によって判断されていた。しかし、正確な判断ができるまでには、多年の経験を必要とするため、人材の育成に多くの時間を要するとともに人件費等の経費がかかるという問題があった。また、人間の感覚による判断では、ミスが発生する虞があった。
【0003】
そこで、果実等の収穫の時期や熟度を判定するための、客観性の高い装置が提案されている。例えば、本件出願人らは、被検体に振動を与えた際に検出した被検体の振動を周波数分析し、被検体の弾性率と比例関係を示す共鳴周波数を検出することにより果実の熟度を判定する技術を提案している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−236587号公報
【特許文献2】特開平9−274022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された技術では、振動をレーザドップラー法で測定しているため、その装置は大型なものとなってしまう。
【0006】
また、振動の検出にマイクロフォンを用いることが提案されているが(例えば、特許文献2参照。)、得られた振動に外音のノイズ振動が含まれてしまうため、共鳴周波数を検出することが困難であった。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、ノイズ振動を低減し、被検体の振動を精度よく得ることができる、持ち運び可能な小型の熟度判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明に係る熟度判定装置は、被検体に振動を与える発振源と、歪を電気信号に変換する検出素子を備え当該検出素子が上記被検体の振動により歪むことにより被検体の振動を検出する振動センサと、当該被検体の直径を取得する取得部と、上記振動センサにより検出された振動を解析して第2次共鳴周波数を検出し、当該第2次共鳴周波数と上記直径に基づいて上記被検体の弾性率を算出し、当該弾性率に基づいて上記被検体の熟度を判定する解析判定部とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
振動センサが歪を電気信号に変換する検出素子を備え、検出素子が被検体の振動により歪むことにより被検体の振動を検出するため、外音によるノイズ振動を排除し、被検体の振動を精度よく、安定して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体例として示す熟度判定装置は、被検体を加振して得られる振動を解析し、被検体の弾性率と比例関係を示す2次共鳴周波数を検出することにより弾性率を算出し、その弾性率に基づいて被検体の熟度等を判定するものである。
【0011】
図1は、熟度判定装置1の全体構成を模式的に示すブロック図である。この熟度判定装置1は、被検体の直径及び振動を測定する測定部2と、測定された直径及び振動に基づいて弾性率を算出し、熟度を判定する解析判定部3と、判定結果を表示する表示部4と、各構成部を統括的に制御する制御部5とを備えて構成されている。
【0012】
測定部2は、図2に示すように被検体20に振動を与える発振源6と、被検体20の振動を検出する振動センサ7と、被検体20の直径を計測する直径計測部8とを有している。発振源6は第1のアーム9に設けられている。この第1のアーム9には被検体との接触を検知する接触センサ61がさらに設けられている。振動センサ7は第2のアーム10に設けられている。そして、第1のアーム9又は第2のアーム10がスライダ11を移動する。
【0013】
発振源6は、打撃によって被検体20に振動を与える。振動を与える方法は、被検体20の種類により選択する必要がある。例えば、被検体20がスイカやメロンのように重さがあるものは、共鳴を生じさせるのに大きな振動を与えなけばならないため、打撃により振動を与えることが好ましい。
【0014】
図3は、打撃により振動を与える場合の発振源6を示す模式図である。この発振源6は、発振ヘッド21が被検体20を打撃することにより、被検体20に振動を与えている。この発振ヘッド21の先端は、被検体を傷つけないように衝撃吸収材22で覆われている。また、発振ヘッド21の2度叩き防止と、発振ヘッドアーム23への振動伝播を抑えるために、発振ヘッド21と発振ヘッドアーム23とは高分子ゲルシート等の衝撃吸収材24を介して固定されている。これにより、発振による機構全体へのノイズ振動を軽減することができるとともに、被検体20に打撃を与えた後も、発振ヘッド21を被検体20に接触させ続ける、いわゆる突き通し手法を実現することができる。
【0015】
また、発振源6には被検体20を挟んで固定するための接触プレート25が設けられている。この接触プレート25は、図4に示すように突起30により被検体20と点接触している。この接触プレート25と被検体20との接触面積が大きくなると、振動の吸収率が大きくなるため、被検体20との接触は、被検体20を挟むことができる2点接触であることが好ましい。また、発振ヘッド21は、接触している2点間の中心を通過し、被検体20に打撃を与えることが好ましい。
【0016】
発振スイッチ26は、ハブスライダ27と一体化されており、このハブスライダ27により発振ヘッド起動ハブ28が回転する。この発振ヘッド起動ハブ28が回転することにより発振ヘッドアーム23が駆動し、発振力生成用バネ29がたわむ。
【0017】
被検体20に振動を与える場合、発振スイッチ26を下方にスライドさせる。すると、発振スイッチ26と一体化されているハブスライダ27が下がるとともに、発振ヘッド起動ハブ28が回転する。これにより、発振ヘッドアーム23が被検体20から遠ざかる方向に傾き、発振力生成用バネ29がたわむことにより、加振力が蓄えられる。さらに発振スイッチ26を下方に下げると発振力生成用バネ29の反発力により発振ヘッド21が被検体20に打撃を与える。
【0018】
なお、図3に示す発振源6は、人手による加振動作を起動する機構の例であるが、モータとカム等の駆動機構を用いて自動的に加振するようにしてもよい。
【0019】
打撃による加振力には、被検体20に共鳴振動を生じさせる強さが必要である。加振力が小さい場合、振動は被検体20の内部を伝播し減衰するのみで、被検体20に十分な共鳴振動を生じさせることができない。この加振エネルギーPは重量をm、速度をvとすると(1)式で表される。
【0020】
【数1】
【0021】
加振エネルギーを大きくするためには、発振ヘッド21の重量を大きくするか、又は加振速度を大きくする必要がある。しかし逆に被検体20に与えた打撃に対する反力が大きくなり、発振側の第1のアーム9への振動が衝撃吸収材を大きくしても吸収しきれない場合が発生する。そこで、被検体20に打撃力を効率よく与えるために、力積(力×時間)を大きくする。具体的には、被検体20に発振ヘッド21が打撃により接触した後も、被検体に接触し続ける、いわゆる突き通しを行うことで打撃力を持続的に与えるようにする。これにより、発振ヘッド21を重くしなくても、被検体20の内部に打撃力を浸透させ、被検体20に自励振動を生じさせることができる。
【0022】
振動センサ7は、発振源6と振動センサ7とが一体化した筐体の構造上、正確な被検体20の振動解析が困難となる。これは、発振源側からの振動の回り込み等の振動と、被検体20から振動センサ7が受けた振動とが、振動センサ7と第2のアーム10に伝播することにより、振動センサ7と第2のアーム10自身の共振振動が、被検体20の振動に重畳されてしまうためである。したがって、振動センサ7は、外音などのノイズの影響を受けず、被検体20の振動を精度よく検出できる構造とする必要がある。
【0023】
そこで、振動センサ7は、図5に示すようにプレート型の圧電素子等の歪を電気信号に変換する検出素子51を備えている。これにより、外音の影響を排除することができる。
【0024】
また、プレート型の検出素子51に点接触用突起52を設け、被検体20との接触面積を極力小さくし、被検体20の振動の解像度を向上させている。被検体との接触面積が大きい場合は、検出素子面の変位が重畳され、非線形性要素が加わってしまうため、振動解析が困難となる。
【0025】
さらに、検出素子51の背面には剛性の高い金属などからなる検出素子受け53を設けている。これにより、検出素子51の歪みを極力防止している。この検出素子51の面歪みが大きくなると、本来の振動に対し異なった周波数の振動信号が取り出されてしまう。
【0026】
さらにまた、検出素子51と検出素子受け53との間に薄い振動増幅シート54を挟んでいる。これにより、プレート型の検出素子51が大きく歪むことを防止するとともに、被検体20の振動には変位が生じるようにしている。これは、直接、検出素子51を検出素子受け53に取り付けると、殆ど変位を生じ無くなるためである。
【0027】
また、高分子ゲルシート等の衝撃吸収材55を検出素子受け53とホルダ56の間に設置し、且つ検出素子受け53が直接ホルダ56に接触しないように検出素子受け53を衝撃吸収材55で保持する。これにより振動センサ7の筐体からの振動や検出素子51からの振動を第2のアーム10に伝播させないようにすることができる。
【0028】
このような構造を有する振動センサ7により、振動ノイズの影響を最小限に低減させるとともに精度よく振動を検出することができる。また、このような振動センサ7を備えることにより、持ち運び可能な小型な熟度判定装置1を提供することが可能となる。
【0029】
直径計測部8は、第1のアーム9又は第2のアーム10をスライドさせ、被検体20を挟むことにより被検体の直径を計測する。具体的には、発振源6と振動センサ7と間の距離を測定することにより、被検体20の直径を算出する。
【0030】
例えば、図2に示した測定部2において、発振源6が配置された第1のアーム9及び振動センサ7が配置された第2のアーム10が、被検体20をアーム間で挟めるように同時に平行移動する。この際、直径計測部8は、アームの移動量を取得することにより被検体20の直径を算出することができる。
【0031】
図6は、図1に示す解析判定部3の構成を示すブロック図である。解析判定部3は、上述した測定部2から取得した振動波形を増幅する増幅部71と、振動波形のノイズを除去するフィルタ72と、振動波形のアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部73と、振動波形の所定領域を抽出する波形抽出部74と、抽出された振動波形を高速フーリエ変換するFFT(Fast Fourier Transform)演算部75と、高速フーリエ変換された信号より2次共鳴周波数を検出する検出部76と、被検体の直径を演算する直径演算部77と、被検体の直径に基づいて2次共鳴周波数を補正する補正部78と、2次共鳴周波数より弾性率を算出して熟度を判別する判定部79とを備えている。
【0032】
入力された振動波形は、増幅部71によりA/D変換部73の入力ゲインに適合するように増幅され、フィルタ72により高周波成分のノイズが除去され、A/D変換部73にてアナログ信号からデジタル信号に変換される。この振動波形には、被検体の振動だけでなく、測定部2の加振機構、受振機構、筐体等の振動が含まれている。そこで、信号抽出部74は、このような振動波形から所定の時間領域を抽出する。具体的には、例えば、図7(A)に示す振動波形から図7(B)に示すようにtC1及びtC2を除去し、2次共鳴周波数の検出に有効な時間領域tvを抽出する。
【0033】
抽出する時間領域tvは、被検体によって振動波形の持続時間及び単位時間あたりの減衰比が異なるため、被検体の種類毎に設定する。例えば、リンゴの振動波形は、持続時間が短く、単位時間あたりの減衰率が大きい。一方、スイカの振動波形は、持続時間が長く、単位時間あたりの減衰率が小さい。このような特徴に基づいて時間領域tvを設定することにより、振動波形に含まれている測定部2の加振機構、受振機構、筐体等のノイズ振動を低減させることができる。
【0034】
信号抽出部74により抽出処理された振動波形は、FFT演算部75で高速フーリエ変換され、周波数成分が解析される。図8(A)は、抽出処理した振動波形を高速フーリエ変換した波形を示す図であり、図8(B)は、抽出処理していない振動波形を高速フーリエ変換した波形を示す図である。図8(A)及び図8(B)を比べれば解るように、抽出処理により破線で示す2次共鳴周波数の波形のピークが強調されるため、検出部76は2次共鳴周波数を高感度に検出することができる。
【0035】
抽出処理して求められた各次数の共鳴周波数は、被検体に応じて固有の値を持つ。1次共鳴周波数は、加えた振動に対し、被検体の一部を振動させる周波数である。また、2次共鳴周波数は、加振により被検体全体が共鳴し、被検体が伸縮する自励振動の周波数である。そして、この周波数の高さと弾性率が比例する。つまり、2次共鳴周波数は、被検体である果実が熟し、弾性率が低くなるにつれて、低周波数側にシフトする。
【0036】
直径演算部77は、被検体の質量mを、例えば、単位体積あたりの平均密度係数ρと直径計測部8により計測した直径dを用いて(2)式により近似する。
【0037】
【数2】
【0038】
また、被検体の弾性率は、質量mと2次共鳴周波数f2を用いて次式により算出されることが知られている。
【0039】
【数3】
【0040】
本実施の形態では、被検体の弾性率推移、すなわち、弾性率の相対値を求めれば良いため、弾性率は次式で表すことができる。
【0041】
【数4】
【0042】
さらに、補正部78は、直径演算部77で直径より近似された質量を用いて弾性率を補正する。これは、2次共鳴周波数f22が被検体の質量mに反比例するからである。
【0043】
判定部79は、このようにして算出された弾性率のデータに基づいて被検体の熟度を判定する。この判定は、被検体の種類毎に蓄積された弾性率に基づいて行われ、弾性率の経時変化に基づいて収穫時期を判定することができる。例えば、弾性率が1日に0.1ずつ減少する果実の場合、測定した弾性率から収穫に適した弾性率までの差を算出し、その差を0.1で割ることにより収穫時期を判定する。
【0044】
解析判定部3は、上述の処理をすることにより、精度の高い熟度判定を行うことができ、例えば果実の開花時期から収穫時期を判定する場合、生育個体差による時期のズレが生じるが、本法は収穫直前の生育状況を把握できる為、より確実に果実の収穫時期を提供することができる。
【0045】
表示部4は、LCD(Liquid Crystal Display)などからなり、解析判定部3で解析や判定された情報を表示する。また、測定部2により測定された各種データを表示する。例えば、熟度を15段表示し、9〜13段を適熟として表示する。また、1日あたりの弾性率の変化値を基に求めた収穫時期を何日後又は日付で表示する。
【0046】
上述した各構成部は制御部5により統括的に処理される。
【0047】
次に、熟度判定装置1の動作を図2に示す測定部2の構成及び図9に示すフローチャートを参照して説明する。
【0048】
まず、測定開始前に、ステップS1において制御部5は各構成部の状態チェックを行い、演算処理等のための変数などの初期化を行う。例えば、電源投入直後の場合、アームを最も閉じた状態にスライドさせ、直径を求めるための初期化を行う。その後、アームを被検体20を挟める程度までスライドさせて開く。
【0049】
ステップS2において第1のアーム9及び受振側の第2のアーム10をスライドさせ(ステップS2)、被検体20を挟む。
【0050】
ステップS3において接触センサ61が被検体20を挟んだことを検出すると、制御部5は、発振開始動作を受け付ける状態となる。
【0051】
ステップS4で発振開始操作を検出すると、ステップS5以降の動作を開始する。ステップS5では、アームの移動量から被検体20の直径を求める。
【0052】
次に、発振源6を動作させ、被検体20に対し振動を与える(ステップS6)。振動センサ7は、被検体20の振動を検知し電気信号に変換する。電気信号に変換された振動信号は解析判定部3に入力される(ステップS7)。解析判定部3では、熟度を判定する被検体20の2次共鳴周波数の検出を容易にするため、振動信号から2次共鳴周波数を含む時間軸方向の抜き出し処理を行う(ステップS8)。そして、FFT解析し、振動信号の周波数成分を解析する(ステップS9)。また、ステップS5で得た被検体20の直径から質量補正を行い、被検体20の弾性率を求める(ステップS10)。
【0053】
解析判定部3は、ステップ10において求められた弾性率に基づいて適熟の判定を行う(ステップS11)。表示部4は、ステップS11において判定された結果や被検体の測定データを表示する(ステップS12)。その後、測定部2における発振側の第1のアーム9と受振側の第2のアーム10を予め規定した位置までスライドさせ、アームを開いた状態とし、次の測定を行えるように準備を行う(ステップS13)。
【0054】
このような動作により、自動測定可能な熟度判定装置1が実現される。
【0055】
また、図10に示すように、熟度判定装置1は、いわゆるパーソナルコンピュータなどの計算機80と情報を通信するため、イーサーネット、USB(Universal Serial Bus)及び、フラッシュメモリカードなどの標準規格化されたインターフェイス81を備えている。また、測定部2にて測定された、被検体20の直径、FFT演算結果、2次共鳴周波数、弾性率、判定結果などの情報を被検体別に識別名やコードを付加して保存するデータ蓄積部82、及び解析判定部3にて判定された熟度などの判定データを保存する判定データ保存部83を備えている。
【0056】
これにより、熟度判定装置1は、インターフェイス81を介して計算機80に接続し、計算機80に保存されたデータの読出し、消去などの操作が行うことができる。したがって、インターフェイス81を介して接続した計算機80から、上述した2次共鳴周波数検出前処理の有効時間領域、弾性率、熟度判定などのデータを判定データ保存部83に取り込むことにより、新たな被検体の品種追加が可能となる。
【0057】
また、計算機80は、読み出したデータを解析し、継続的な測定による弾性率推移の傾向による収穫時期の推定、振動による共鳴周波数の詳細解析による新たな被検体の品種データの取得などを行うことができる。
【0058】
図11乃至図13は、計算機80に表示されるGUI(Graphical User Interface)に基づく画面の一例を示すものである。
【0059】
図11に示すGUIに基づく画面100では、熟度判定装置1からのデータを取得する操作を行うことができる。接続ボタン101は、予めイーサーネットなどのインターフェイスを介して接続された熟度判定装置1と論理的に接続することができる。この接続ボタン101を選択し、接続プログラムを実行すると、熟度判定装置内のデータ蓄積部82に蓄積した測定データの一覧を、画面100の測定装置データ一覧102に表示することができる。そして、データ転送ボタン103を実行することにより、熟度判定装置103から計算機80にデータが転送され、計算機データ一覧104に表示される。また、削除ボタン105を選択し、削除プログラムを実行することによって、熟度判定装置内に蓄積したデータを削除することができる。
【0060】
図12に示すGUIに基づく画面200は、画面100に示す個別データの領域を選択することにより切り替えられる。この画面200に基づいてユーザは、計算機80に取り込んだ被検体の各データを表示することができる。この画面200のデータ一覧201から所望の識別コードを選択することにより、その被検体の測定データ及び経時データを表示することができる。測定データ表示領域202では、日時別に識別された識別コードが表示された経時データ一覧203から所望の識別データを選択することにより、測定判定結果表示領域204にその識別データの弾性率などの測定結果が表示されるとともにFFT解析の結果がFFT解析結果領域205に表示される。これによりユーザはデータ分析を容易に行うことができる。
【0061】
また、図13に示すGUIに基づく画面300は、画面200に示す経時データの領域を選択することにより切り替えられる。この画面300の経時データ領域301には、データ一覧302にて選択された所望のデータの経時変化が経時変化表示領域303にグラフとして表示される。これにより、ユーザは、弾性率の経時変化を確認することができる。この経時変化表示領域303には収穫時期に妥当となる弾性率の領域を示す収穫時期判定領域304が示される。この収穫時期判定領域304は、弾性率の経時変化に基づいて設定される。また、経時データ領域301には推定収穫時期に関する判定結果を表示する判定表示領域305が設置されており、収穫計画を容易に行うことができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、被検体の熟度を判定し、収穫時期を推定することとしたが、これに限らず、被検体の適熟時期、つまり食べ頃も判定することができる。この場合、熟度判定装置にプリンタなどを備えるようにして、食べ頃などを表示したシールを出力し、被検体に貼るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】熟度判定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態における測定部の構成を示す模式図である。
【図3】発振源の一例を示す模式図である。
【図4】発振源の一例を示す模式図である。
【図5】振動センサの構成を示す模式図である。
【図6】解析判定部の構成を示すブロック図である。
【図7】解析判定部における信号処理を説明するための図である。
【図8】解析判定部における信号処理を説明するための図である。
【図9】本実施の形態における熟度判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】熟度判定装置の他の構成を示すブロック図である。
【図11】表示装置に表示される画面の一例を示す図である。
【図12】表示装置に表示される画面の一例を示す図である。
【図13】表示装置に表示される画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 熟度判定装置、 2 測定部、 3 解析判定部、 4 表示部、 5 制御部、 6 発振源、 7 振動センサ、 8 距離計測部、 9 第1のアーム、 10 第2のアーム、11 スライダ、 51 検出素子、 52 点接触用突起、 53 検出素子受け、 54 振動増幅シート、 55 振動吸収材、 56 ホルダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に振動を与える発振源と、
歪を電気信号に変換する検出素子を備え当該検出素子が上記被検体の振動により歪むことにより被検体の振動を検出する振動センサと、
当該被検体の直径を取得する取得部と、
上記振動センサにより検出された振動を解析して第2次共鳴周波数を検出し、当該第2次共鳴周波数と上記直径に基づいて上記被検体の弾性率を算出し、当該弾性率に基づいて上記被検体の熟度を判定する解析判定部と
を備えることをすることを特徴とする熟度判定装置。
【請求項2】
上記振動センサは、上記被検体に接触する突起を備え、
上記検出素子は、上記突起を介して被検体の振動を検出することを特徴とする請求項1記載の熟度判定装置。
【請求項3】
上記解析判定部は、上記振動センサにより検出された振動から所定の時間領域の振動を抽出し、解析することを特徴とする請求項1記載の熟度判定装置。
【請求項4】
上記発振源は、上記被検体を打撃する打撃手段であることを特徴とする請求項1記載の熟度判定装置。
【請求項5】
上記打撃手段は、上記被検体に振動を与える発振ヘッドを備え、
上記発振ヘッドは、当該発振ヘッドを駆動する軸に衝撃吸収材を介して固定されていることを特徴とする請求項4記載の熟度判定装置。
【請求項6】
上記発振源が設けられた第1のアームと、上記振動センサが設けられた第2のアームと、上記第1のアームと上記第2のアームとを平行移動させるスライダとを備え、
上記取得部は、上記第1のアーム及び/又は上記第2のアームがスライダを移動し、上記被検体を挟むことにより当該被検体の直径を計測することを特徴とする請求項1記載の熟度判定装置。
【請求項7】
上記弾性率の経時変化に基づいて収穫時期を判定する収穫時期判定手段と、
上記収穫時期を表示する収穫時期表示手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の熟度判定装置。
【請求項1】
被検体に振動を与える発振源と、
歪を電気信号に変換する検出素子を備え当該検出素子が上記被検体の振動により歪むことにより被検体の振動を検出する振動センサと、
当該被検体の直径を取得する取得部と、
上記振動センサにより検出された振動を解析して第2次共鳴周波数を検出し、当該第2次共鳴周波数と上記直径に基づいて上記被検体の弾性率を算出し、当該弾性率に基づいて上記被検体の熟度を判定する解析判定部と
を備えることをすることを特徴とする熟度判定装置。
【請求項2】
上記振動センサは、上記被検体に接触する突起を備え、
上記検出素子は、上記突起を介して被検体の振動を検出することを特徴とする請求項1記載の熟度判定装置。
【請求項3】
上記解析判定部は、上記振動センサにより検出された振動から所定の時間領域の振動を抽出し、解析することを特徴とする請求項1記載の熟度判定装置。
【請求項4】
上記発振源は、上記被検体を打撃する打撃手段であることを特徴とする請求項1記載の熟度判定装置。
【請求項5】
上記打撃手段は、上記被検体に振動を与える発振ヘッドを備え、
上記発振ヘッドは、当該発振ヘッドを駆動する軸に衝撃吸収材を介して固定されていることを特徴とする請求項4記載の熟度判定装置。
【請求項6】
上記発振源が設けられた第1のアームと、上記振動センサが設けられた第2のアームと、上記第1のアームと上記第2のアームとを平行移動させるスライダとを備え、
上記取得部は、上記第1のアーム及び/又は上記第2のアームがスライダを移動し、上記被検体を挟むことにより当該被検体の直径を計測することを特徴とする請求項1記載の熟度判定装置。
【請求項7】
上記弾性率の経時変化に基づいて収穫時期を判定する収穫時期判定手段と、
上記収穫時期を表示する収穫時期表示手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の熟度判定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−300724(P2006−300724A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122722(P2005−122722)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(302006658)株式会社シーライブ (5)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(302006658)株式会社シーライブ (5)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
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