熱アニーリングによる電着CIGS膜の硫化及びセレン化
本発明は、光電池応用のための、硫黄を含むI‐III‐VI2型の半導体合金の薄膜を生成するための方法に関する。本方法では、まず、本質的にアモルファスであるI‐III‐VI2の前駆体の薄膜と、少なくとも硫黄を含む薄膜とを含むヘテロ構造体を、基板上に堆積させる。その後、ヘテロ構造体をアニーリングして、前駆体の膜内への硫黄の拡散と、従って硫黄を含む化学量論を有する前駆体の膜のI‐III‐VI2合金の少なくとも部分的な結晶化を促進する。また、セレンの膜を堆積させて、再結晶化プロセスまたはアニーリングを支援してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電池応用のための半導体の薄膜堆積の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
銅インジウムガリウム二セレン化物(copper indium gallium diselenide,CIGS)及び/又は二硫化物(disulfide)と、銅インジウム二セレン化物(copper indium diselenide,CIS)及び/又は二硫化物とは、光電池を製造するために基板上に堆積される。一般的な化学式がCuGaxIn1−xSe2−ySy(ここでxは0から1まで、yは0から2まで)であるこのような化合物は、CIGSSeと称され、次世代の薄膜太陽電池を構成する非常に有力な候補であると考えられている。CIGSSe半導体物質は、1.0から2.5eVまでに設定し得る広い直接バンドギャップを有し、よって、太陽放射の範囲内において、最適な太陽放射の吸収が可能になる。最近、小型のセルに対して、19.5%という記録的な変換効率が得られた。また、CIGSSe化合物は、その組成の化学的性質から、I‐III‐VI2化合物とも称される。ここで、
‐ Cu元素はI族(周期表の1B族)の元素を表し、
‐ In元素及び/又はGa元素は、III族(周期表の3B族)の元素を表し、
‐ Se元素及び/又はS元素はVI族(周期表の6B族)の元素を表す。
【0003】
従って、CIGSのI‐III‐VI2組成程度の単相の範囲では、I族の原子一つ及びIII族の原子一つに対して、VI族の原子が略二つ存在する。
【0004】
光起電力変換用に用いられるCIGS膜は、p型半導体の特性及び優れた電荷輸送特性を有さなければならない。こうした電荷輸送特性は、結晶性の良さによって促進される。従って、CIGS化合物は、太陽電池を製造する応用に対して十分な光起電力特性を有するために、少なくとも部分的には結晶でなければならない。結晶のCIGS化合物は、堆積温度に依存して、黄銅鉱系または閃亜鉛鉱系に対応する結晶構造を有する。このような半導体を製造するプロセスは特許文献1に開示されている。
【0005】
例えばCu(In,Ga)(S,Se)2といった黄銅鉱物質は、CuInSe2に対する1.0eVからCuGaS2に対する2.4eVまでと様々なバンドギャップ幅を有する。最高の効率と市販のモジュールを有する太陽電池は、1.12eVのバンドギャップに対応する25から30%までのGa/(Ga+In)比を有する吸収材から作成される。より広範なバンドギャップを有する吸収材に基づいた太陽電池を用いることは二つの利点を有する。即ち、第一に太陽のスペクトル吸収に対する1.5eVという最適な値に近いという点である。第二に、モジュールの応用において、高電圧及び低電流に対する直列抵抗損失が減少するという点である。
【0006】
CuInSe2吸収材から開始する場合には、インジウム及び/又はセレン原子を、ガリウム及び/又は硫黄原子でそれぞれ置換することによって、バンドギャップ幅を増大させることが可能である。現状において記録的な18%という効率を有するセルは、略30%のインジウム原子をガリウム原子で置換することによって得られる。
【0007】
また、セレン原子の一部を硫黄原子で置換することによってもCuInSe2のバンドギャップを増大させることが可能である。以後、このプロセスを“CuInSe2の硫化プロセス”と称す。
【0008】
金属のまたは二元の前駆体の硫化については報告されている。例えば、非特許文献1ではガラスの軟化点(600℃)未満の高温での、硫黄元素圧力下で硫化が行われる。非特許文献2では、急速加熱処理(rapid thermal process,RTP)を用いて、Cu‐In金属前駆体を、略10℃/sの温度上昇率で600℃で三分間(全アニーリングプラン)アニーリングする。基板は石英チャンバ内に配置され、硫黄元素が基板の傍らに配置される。アニーリング前にチャンバ内が真空にされる。よって、アニーリング中の圧力は、硫黄の飽和圧力である。
【0009】
最適なバンドギャップを有する半導体薄膜を得るための他の硫化法も存在し、例えば、特許文献2が挙げられる。パルス電流法を用いて、前駆体の膜は、CuxInyGazSen(ここで、x、y、zは0から2まで、nは0から3まで)の組成を有する。この段階の後には、真空蒸着によるCu+SeまたはIn+Se元素の膜の堆積段階が続く。最終的なアニーリング段階によって、結果物である膜の一様性及び質が改善される。
【0010】
しかしながら、こうした方法は、プロセスに対する厳しい制約を意味する有毒物質が含まれるか(H2SまたはH2Se雰囲気の使用)、または、バンドギャップ幅を精密に制御することができない。また、真空段階が必要とされる。
【0011】
更には、VI族元素が、CIGS前駆体の近傍で、固体状(例えば、パウダー状の硫黄またはセレン)で用いられると、この元素の非一様性の問題が生じ得る。
【0012】
【特許文献1】国際公開第03/094246号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5730852号明細書
【非特許文献1】V.Alberts、F.D.Dejene、Journal of Physics D: Appl.Phys.、2002年、第35巻、p.2021−2025
【非特許文献2】K.Siemer、J.Klaer、I.Luck、J.Bruns、R.Klenk、D.Brauenig、Solar Energy Materials and Solar Cells、2001年、第67巻、p.159−166
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明によって、従来の硫化法の欠点を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題のため、本発明は、光電池応用のための、硫黄を含むI‐III‐VI2型の半導体合金の薄膜を生成するためのプロセスであり、
a)実質的にアモルファスのI‐III‐VI2前駆体の薄膜と、少なくとも硫黄を含む薄膜とを有するヘテロ構造体を基板上に堆積させ、
b)へテロ構造体を、
‐ 前駆体の薄膜内への硫黄の拡散を促進するためと、
‐ 従って硫黄を含む化学量論を有する前駆体の薄膜のI‐III‐VI2合金の少なくとも部分的な結晶化を促進するために、
アニーリングする、プロセスを提供する。
【0015】
従って、CIGS薄膜内への硫黄の拡散によって、特に硫黄を含む膜の厚さの変更により、所望のバンドギャップ幅を得ることができる。
【0016】
a)段階における“実質的にアモルファス”であるという用語は、CIGS前駆体の膜の形態がアモルファス相によって互いに結合したナノ結晶から成るという事実を意味するものと理解されたい。アニーリング段階後に、このナノ結晶はサイズが大きくなり、一マイクロメートルのオーダのサイズに達し得る。
【0017】
好ましい実施形態において、実行されるアニーリングは、“急速”アニーリングである。典型的には、これは高出力ランプを用いたアニーリングであり得て、その出力は短期間(数十秒未満)で膜に伝えられる。
【0018】
有利な実施例の一つにおいては、少なくとも硫黄を含む薄膜及びセレンの任意の追加の膜を、化学浴析出(chemical bath deposition,CBD)法によって堆積させる。
【発明の効果】
【0019】
従って、本発明により、周知の硫化法またはセレン化法によって引き起こされる問題が解決される。従って、H2SまたはH2Se雰囲気が用いられず、また、基板近傍に配置された粉末状の硫黄またはセレンをも用いられない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明を読むことによって更に明らかになるものである。この説明は、単に例示的なものであり、添付図面を参照して読まれるものである。
【0021】
本発明による製造プロセスのa)段階は、図1から図3に対応する、実質的にアモルファスのI‐III‐VI2前駆体の薄膜と、図7に示されるように少なくとも硫黄を含む薄膜とを備えるヘテロ構造体の堆積を有する。前駆体薄膜の堆積について、初めに説明する。
【0022】
図1はCIGS薄膜の断面図を示し、本発明によるプロセスを用いて、その上に少なくとも硫黄を含む膜が堆積されている。硫黄膜10は、CIGS前駆体20の表面上に堆積される。CIGS前駆体20は、CIGS前駆体20の電気分解及び堆積を促進するために、導電膜30(例えば、モリブデン膜)でコーティングされた基板40(例えばガラス基板)に、電気分解によって堆積される。
【0023】
前駆体膜の堆積は、当業者に周知の方法によって実行され得る。例えば、スクリーン印刷法によるCIGS前駆体の堆積が想定され得る。また、特許文献1に開示されているプロセスを用いて膜を堆積させることもでき、以下において用いられる。
【0024】
CIGS前駆体の薄膜は、予めモリブデンMoでコーティングされたガラス基板S上の膜TFの電着によって、大気温度及び圧力で得られた(図5)。基板Sが初めに、追加の導電膜(例えば、金属膜または酸化物形状の膜、図示せず)でコーティングされることが有利である。更に、光電池の製造において、この導電膜は、特定の応用に対する一つ以上のサブ膜(拡散障壁、ミラー等)の上に存在し得る。
【0025】
図2を参照すると、電着は、溶解状態のインジウム塩、銅塩及びセレン酸化物を含むバスB内で実行される。実質的にCuGaxIn1−xSe2(ここで、xは0から1まで)に対応する一般組成のCIGS薄膜を得るため、バスがガリウム塩を含み得ることは理解されたい。より洗練された変形例においては、硫黄塩を溶液中に加えることが可能であり、CuGaxIn1−xSe2ySy(ここでxは0から1までの間、yは0から2まで)に近い組成物が堆積されるようになる。塩は、電気化学バスB内に沈められた回転型撹拌器M(または櫛型撹拌器(comb stirrer))によって、堆積中に混合される。図2の構成では、バスは棒磁石によって撹拌される。大型の応用では、このシステムを振動ロッド(“櫛”)型攪拌器に置き換えることが有利であり得る。
【0026】
従って、前駆体の電着によって薄膜が得られ、その構成元素は予め良く混合されている。(溶液中の塩及び酸化物の状態での)前駆体の元素の濃度は10−4から10−1mol/lまでである。溶液のpHが1から4までに定められることが好ましい。モリブデン電極(陰極Ca)に印加される電位は、この場合硫酸第一水銀である基準電極REFに対して−0.8Vから−1.9Vまでである(標準水素電極に対して−0.65V)。
【0027】
0.1から3μmまでの厚さの薄膜を、略0.5から4mA/cm2の電流密度で堆積させた。
【0028】
非限定的な実施例によって、以下の濃度を有するバスから前駆体を堆積させる。即ち、[Cu(SO4)]=1.0×10−3mol/l;[In2(SO4)3]=6.0×10−3mol/l;[H2SeO3]=1.7×10−3mol/l;[Na2(SO4)]=0.1mol/lである。本実施例では、バスのpHは2である。前駆体を、硫酸第一水銀の基準電極に対して固定された電位(好ましくは−1V)での陰極反応によって堆積させる。電流密度は−1mA/cm2である。
【0029】
銅及びインジウム及び/又はガリウム塩、更には溶解したセレン酸化物がバスBの溶液中で混合されるという条件では、上述の電着段階で得られるものは、元素が予め良く混合された前駆体である。得られる前駆体膜は密であり、付着性で、一様な形態のものである。その組成は、Cu(25%)/In+Ga(25%)/Se(50%)の化学量論的組成に近い。
【0030】
図3に示されるように、電着段階後に得られた膜は、略アモルファスである(またはアニーリング後の合金と比較して結晶性が低い)が、主にCIGS粒子GRを有するマトリクスから成る(サイズが数十ナノメートルのオーダの結晶性)。
【0031】
“ナノ粒子”という用語は、アニーリング後に意図している合金の物理化学的な性質に近い物理化学的な性質を主に有利に有し、また、数十ナノメートルまでのサイズを有し得る合金の粒子のことを意味するものと理解されたい。
【0032】
従って、膜内の粒子のクラスタは、アニーリング段階中の急激な温度上昇に耐えられる有利に小型のマトリクスを形成する。
【0033】
“マトリクス”という用語は、複数の相PHを有することができる膜の複合性を意味するものと理解されたい。即ち、三元相(CIGSの場合)、二元相(例えば、CuxSe(ここでxは2に近い)や、InxSey(ここでxは2に近く、yは3に近い))、更には、一元相(セレン)である。粒子GRは、最終的な合金(CIGSの場合にはCuInSe2)に対する所望の組成に近い組成を有する。しかしながら、膜内で、粒子GRによって占められている体積は、相PHによって占められている堆積よりも実質的に大きいままである。
【0034】
CIGS薄膜が低温で堆積されると(前駆体の堆積)、結晶度が低く、アモルファスに近いこともある。そこで、CIGSの結晶化及び電荷輸送特性を満足に改善するために、熱を加えることによって、膜をアニーリングしなければならない。このアニーリングは、本プロセスのb)段階に対応するものであり、後述する。しかしながら、追加的で部分的なプレアニーリングを段階a)と段階b)との間に実施してもよく、前駆体薄膜の部分的な結晶化を起こさせる。
【0035】
本発明のプロセスのa)段階の第二段階では、少なくとも硫黄を含む薄膜を堆積させる。好ましい実施例では、CIGS前駆体の膜と共通の界面を有する。更なる実施例では、CIGS前駆体の膜上に直接堆積される。b)段階のアニーリング中に、この硫黄は、CIGS薄膜中のCIGS結晶サイト内に拡散し、セレン原子を置換する。
【0036】
この硫黄を含む薄膜を堆積させる多様な方法が存在する。特に、この薄膜は、化学浴析出(chemical bath deposition,CBD)法によって堆積され得る。このタイプの堆積法について、以下に説明する。
【0037】
チオ硫酸イオンS2O32−を含む溶液を酸性にして、以下の式に従う、初め酸化状態+IIの硫黄の硫黄0と硫黄+IVとへの不均化によって、硫黄元素が形成されるようにする:
S2O32− + H+ → HSO3− + S
【0038】
使用される前駆体は、上述のように、モリブデンでコーティングされたガラス基板上に電着によって堆積させたCu(In,Ga)Se2またはCuInSe2前駆体である。
【0039】
チオ硫酸ナトリウムNa2S2O3の0.1M溶液を用意して、撹拌しながら70℃まで加熱する。例えばリチウム、カリウムまたはアンモニウム塩等の他の塩を用いてもよい。CIGS/Mo/ガラス基板を反応装置(ビーカーまたは晶析装置)内に配置する。反応装置をホットプレート上に配置して、チオ硫酸ナトリウム溶液を前駆体上に注ぐ。使用される溶液の量は、処理される基板の数に依存する。基板上方の溶液の高さは典型的に1cmである。
【0040】
濃縮溶液(例えば10M)から開始する場合には、陽子H+及びチオ硫酸イオンS2O32−の好ましくは等モル混合物に対応する量の酸性溶液(例えば塩酸溶液)が加えられる。溶液は直ちに濁る。その後、典型的には黄色い硫黄コロイドが形成される。溶液は0から70℃まで、好ましくは40から70℃までの温度に維持される。一定の堆積時間後、基板を溶液から取り出し、脱イオン水で洗浄し、アルゴンまたは窒素で乾燥させる。
【0041】
黄色い硫黄の堆積物が得られる。この堆積物は一様であり被覆している。堆積される硫黄の厚さは典型的には数マイクロメートルであるが、堆積時間(浸漬時間)、チオ硫酸溶液の濃度、チオ硫酸溶液の酸性化度に依存する。図7はCBDにより堆積させた硫黄の厚さを示すが、この厚さはXRF(X−ray fluorescence,蛍光X線)によって測定されており、堆積時間及びチオ硫酸溶液の酸性度(最終的な溶液中の陽子濃度対チオ硫酸イオン濃度の比)の関数として示されている。典型的な堆積時間は1分間から30分間までであり得て、アニーリング後の所望の硫化度(つまり、硫黄の割合)に依存する。従って、少なくとも硫黄を含む表面膜がCIGS前駆体の薄膜上に堆積される。アニーリング中の硫黄圧の一様性が粉末状の硫黄源の位置またはチャンバ中のH2S流の流体力学的な型に依存する周知の方法とは異なり、CBD法の場合には、一様性は、アニーリング中の基板の温度の一様性にしか依存しない。
【0042】
30分間という堆積時間によって特徴付けられるより厚い堆積物に対しては、堆積物の厚さは数マイクロメートルである。更に、硫黄堆積物が硫黄のみから成ることが好ましい。硫黄堆積物は化学バスからの種(酸素、ナトリウム)を含み得る。しかしながら、その量は典型的には1%未満である。
【0043】
その後、S/CIGS/Mo/ガラス基板は熱アニーリングプロセスによってアニーリングされる。こうしたプロセスは当業者にとって周知であり、例えば、急速熱処理に関する特許文献1が挙げられ、以下において採用される。
【0044】
多様な種類の熱アニーリングを用いることが可能である。急速熱アニーリングは、本発明によるプロセスを実施する有利な方法の一つとして用いられるものであり、その一実施例を以下に説明する。
【0045】
熱処理は、電着させた前駆体の薄膜TF及び少なくとも硫黄を含む薄膜SFを急速アニーリングすることによって実行可能である。図4に示されるように、膜TF及びSFは、基板Sと共に、試料ホルダSH上に配置される。基板ホルダは光源LAに対して水平面内で移動可能(図4に示されるようにX軸に沿った移動)であることが好ましい。本実施例では、光源は高放射出力のハロゲンランプの列であり、膜TF及びSFの光吸収バンド内であることが有利である。従って、本実施例では、“急速アニーリング”が意味するのは、膜TF及びSFを照射して、表面膜の硫黄が電着された前駆体の薄膜内に拡散するようにし、また、前駆体を結晶化させるようにするということであり、全時間は十秒から数十秒のオーダである。この急速アニーリングは、ランプが固定されたオーブン内で実施され(図4)、その中で薄膜が、直接照射で、略5W/cm2以上の放射出力レベルを受け得る。変形例では、急速アニーリングが、電流ループを用いた誘導加熱によって提供され得る。
【0046】
このアニーリングの効果の現状における一つの解釈は以下の通りである。急速アニーリング中に薄膜に伝えられるエネルギーが、融点の低いVI族元素(Se及びS)を活性化させ、よって、焼結の場合のように、粒子GRの凝集を開始させる。前駆体中のナノ粒子GRは一緒になり、実質的にマイクロメートルサイズであるより粗い粒子を形成する。より高い温度(>500℃)では、前駆体膜中に存在し得る銅/セレン型の二元相自体が溶解し得て、結晶化メカニズムに寄与し得る。急速アニーリング中、過剰なVI族元素及び銅/セレン二元相は、再結晶化及び欠陥の不動態化の重要な役割を果たす。
【0047】
アニーリング作業が、不活性ガス(例えばアルゴンまたは窒素)圧力下の大気圧で実施されることが有利である。この場合、過剰なVI族元素の蒸発率は制限され、再結晶化作用のためにより長時間残存する。本実施例では、薄膜が実際に受ける単位面積当たりの最大出力は、ランプの公称出力、ランプと薄膜との間の光の分散、反射損失や他の要因を考慮すると、25W/cm2である。
【0048】
図6.1は、最大出力で三秒間印加されたパルスを示す。しかしながら、このパルスは、ランプの慣性が原因で、時間の関数としての光出力において、前縁及び後縁を示す。それにも関わらず、このようなパルスでも硫黄が拡散しCIGS薄膜が結晶化することが可能であり、優れた光起電力特性が得られるということが、実験によって示されている。
【0049】
図6.2は、結晶化された膜が得られる平均光出力/アニーリング期間の対に対応する実験点(四角)を示す。上述の三秒間のパルスは、グラフの左側の一番目の点に対応する。破線で境界が示されている領域A、B及びCはそれぞれ、
‐ 出力が高過ぎる出力/期間の対(領域A) ‐ 膜はアニーリング中に劣化する傾向がある;
‐ 膜の十分な結晶化が達成される出力/期間の対(領域B);
‐ 膜が適切にアニーリングされるには出力が不十分である出力/期間の対(領域C)
に対応する。
【0050】
ガラス基板上に堆積させた略一マイクロメートルの厚さの膜に対しては典型的に、十分な結晶化を開始させるために、膜に伝えられる出力は数ワット毎cm2(W/cm2)よりも大きい。30秒未満の期間にわたる典型的には5W/cm2よりも大きな、好ましくは10W/cm2よりも大きな出力が伝えられると、有利なアニーリングが得られる。また、有利なアニーリングは、数十秒未満の期間にわたる15W/cm2よりも大きな出力に対しても達成される。一般的に必要とされる出力レベルは、数W/cm2のオーダである。
【0051】
アニーリング後、薄膜TFは、450℃を超える温度で一時間に近い時間にわたる従来のアニーリング工程後に得られるものと実質的に同程度かまたはそれよりも良い形で、有利に再結晶化される。
【0052】
従って、本発明によって提供される利点の一つに従って、電着された前駆体の予め混合された構造は、再結晶プロセスに対してもともと好都合なものであり、従来のアニーリング工程よりもはるかに短い時間しかいらない。
【0053】
急速熱アニーリングは典型的に、数十秒未満またはそのオーダの期間にわたって実施される。この十分な短い期間によって、硫黄がCIGS膜内に十分に拡散し、また、半導体合金薄膜内の所望の組成を得ることが可能になり、従って、光起電力特性、特に調節されたバンドギャップ幅が与えられる。
【0054】
アニーリング中に、化学浴析出法によって堆積させた硫黄膜からの硫黄原子は、CIGS膜のセレン原子を置換する。CIGS膜内部における硫黄原子でのセレン原子の置換度合い(または硫化度、つまりy=S/(S+Se))は、利用できる硫黄の量、つまりは少なくとも硫黄を含む膜(この膜は例えば化学浴析出法によって堆積される)の相対的な厚さに依存する。従って、アニーリング後の合金中の硫黄の割合は、硫黄を含む膜の相対的な厚さに従って制御される(図8)。“硫黄を含む膜の相対的な厚さ”という表現は、CIGS前駆体膜の厚さに対してのこの膜の厚さを意味するものと理解されたい。
【0055】
この置換度合いが高いほど、アニーリング後の吸収材のバンドギャップは広くなり、その大まかな化学式はCu(Inx,Ga1−x)(SySe1−y)2であり、ここで、0≦x≦1、0≦y≦1である。バンドギャップ幅は硫黄の割合に従って、つまりは膜10の厚さに従って、調節される。
【0056】
堆積段階後の前駆体膜は、この状態では光起電力特性が良くない。実際には、光起電力特性は熱アニーリング処理後に初めて得られるものであり、またこれにより、前駆体内への硫黄の拡散が促進される。薄膜の結晶化によって、光起電力変換のための優れたp型輸送特性が得られる。
【0057】
化学浴析出法によって堆積させる硫黄の量、つまりはアニーリング中の硫化のために利用できる硫黄の量を制御することによって、バンドギャップ幅を調節することが可能である。
【0058】
急速熱アニーリング後には、化学浴析出法によって生じた硫黄堆積物の厚さに依存して、多様な硫化レベルが得られる。硫化レベルは、数パーセント(%)から100%までと様々である(図8)。従来の予想によると硫黄の拡散係数の低い、インジウムの豊富な吸収材に対しても、銅の豊富な吸収材に対しても、高レベルの硫化を得ることができることには留意されたい。
【0059】
従って、CBD法によって堆積させた硫黄の厚さに依存して、つまり、硫黄を含む膜の相対的な厚さに依存して、アニーリング後の吸収材の硫化レベル(硫黄の割合)を制御することが可能であり、つまりはバンドギャップ幅を調節可能であるということが明らかになる。開路電圧は、硫化レベルに依存して400から750mVまでと様々である。
【0060】
【表1】
【0061】
この表で、
‐ EgはeV単位でのギャップまたはバンドギャップ幅であり、
‐ IscはmA/cm2単位での短絡電流であり、
‐ VocはmV単位での開路電圧であり、
‐ SAはアスペクト比であり、
‐ Effは変換効率である。
【0062】
本硫化法を、下記のセレン化法と組み合わせることができる。実際に、化学浴析出法によってS及び/又はSe堆積物を生成することが可能である。このS/Se構造によっておそらく、CIGS膜の硫化を最適化する一方で、CIGS膜が第一温度上昇段階中にセレンがあまりにも急速に減少することを防止することができる。
【0063】
本発明による製造プロセスの他の主な利点は、容易に大型化できるという点である。特に、図9に示されるように、CBDによる硫黄の堆積は30×30cm2の基板上に対して行われた。水平型反応装置210(化学バス220の量を最小化することができる)内において、30×30cm2のCIGS/Mo/ガラス基板上230に、硫黄を堆積させた。
【0064】
硫黄膜の有効厚さを蛍光X線によって測定する。この厚さは、条件に依存して、数ナノメートルから数マイクロメートルまでと様々であり得る。しかしながら、本発明によるプロセスによって堆積させた硫黄の表面膜に対して、図10.1に示されるように30×30cm2の面積にわたって堆積物の一様性を調べてみると、この膜の厚さの分散は5%未満であった(30×30cm2の基板にわたって7.5から8.0μmまでの間)。
【0065】
図10.2は、同じ30×30cm2の基板上における、アニーリング前の本発明によるプロセスによって堆積させた硫黄の厚さと、アニーリング後の膜の硫化レベルとの間に存在する可能性のある相関関係を示す。調査した範囲内においては、硫化レベルは、CBD法によって堆積させた硫黄の厚さに依存していないように見える。即ち、系は確実に飽和を超えている。しかしながら、この飽和の横這い状態が、アニーリング前のCIGS前駆体の組成やアニーリング後の形状等の実験条件に確実に依存するものであることには留意されたい。
【0066】
同じようにして、硫黄の表面膜を電着させたまたは電着させていないCIGS前駆体の表面上に、CBD法によってセレン元素の膜を堆積させることが可能である。この理由は、アニーリング中のCIGS膜の再結晶化の質が、この段階中のSeの分圧に極めて依存することが周知であるからである。原理的には、Se雰囲気を、Se元素の蒸発及び/又はH2Seの導入によって発生させる。この場合、少なくとも硫黄を含むことに加えて、前駆体上に直接堆積させた表面膜はセレンを含む。
【0067】
本発明によって、硫黄の場合と同じ問題、具体的には、固体Seが原因の非一様性、また、セレン化水素が原因の有毒性という問題が解決される。
【0068】
本発明の原理は、Se元素を、亜硫酸(SO32−)または二亜硫酸(S2O52−)媒質中に溶解して、それぞれSeSO32−またはSeS2O52−錯体を形成することである。Seは反応媒質を酸性化することによって放出されるが、これによって、Se元素の析出が制御される。
【0069】
錯化アニオンは重要な役割を果たしているように考えられる。初期の研究によって、亜硫酸イオンSO32−よりも二亜硫酸イオンS2O52−によってより容易にセレンが堆積されることが示されている。
【0070】
硫黄堆積物がCIGS膜の表面上に形成されるチオ硫酸塩錯体S2O32−とは異なり、
酸性化後の溶液中にセレンの析出があっても、セレノ硫酸塩錯体SeSO32−は、付着性のセレン堆積物を生じさせないように考えられる。しかしながら、SeS2O52−錯体に対する試験はより確実なものであることが分かっている。
【0071】
二亜硫酸ナトリウムNa2S2O5の0.1M溶液を準備して、撹拌しながら40〜90℃で加熱する。この準備は、100℃近い温度に対しては還流化でも実行可能である。溶液のpHは、水酸化ナトリウムNaOH等の添加剤を加えることによって、塩基性のpH(好ましく10)にされる。少量(好ましくは0.05mol/l以下)の灰色セレン元素を粉末状で溶液に加える。完全に溶解するまで溶液を撹拌する(略一時間)。
【0072】
上述のように用意した溶液を、反応装置内でCIGS試料上に注ぐ。使用する溶液の量は、処理する基板の数に依存する。セレンの豊富な追加の薄膜の化学浴析出は、0℃から80℃までの温度範囲内で行われる。基板上方の溶液の高さは典型的に1cmである。濃縮溶液(例えば10M)から開示する場合には、陽子H+及び二亜硫酸イオンS2O52−の好ましくは等モル混合物に対応する量の酸性溶液(例えば塩酸溶液)が、加えられる。セレンコロイドが形成される。溶液は直ちに濁り、典型的なクラレット色を呈する。一定の堆積時間後、基板を溶液から取り出し、脱イオン水で洗浄し、アルゴンで乾燥させる。セレンの堆積中に溶液が50から70℃までに維持されていると、得られる堆積物は黒色である(Seの六方晶型)。堆積が室温で行われると、得られる堆積物はオレンジ〜赤である(赤:Seのアモルファス型、オレンジ:単斜晶型またはβ結晶型)。
【0073】
この堆積物は一様であり被覆している。得られるセレン堆積物の厚さは数マイクロメートルにまで及び、基板が溶液中に置かれる堆積時間と、母液の初期濃度とに依存する。典型的な堆積時間は、アニーリング中の所望のセレン化度に応じて、一分間から六十分間までと様々である。
【0074】
溶液中に残存するセレンは、ビーカーの底に堆積し、次に堆積用に再利用可能である。従って、化学浴析出法によるセレンの堆積中にセレンが無駄にならない。
【0075】
セレンの豊富な薄膜を、前駆体と硫黄膜との間に堆積させることが有利であり、アニーリング段階b)中のセレンの拡散を制限する。また、セレンの豊富な追加の薄膜を供給することによって、セレン膜の厚さ及び相対的な割合に従って、バンドギャップ幅を制御することも可能である。
【0076】
従って、CIGS前駆体の薄膜上に堆積させた、硫黄を含む膜とセレンを含む膜とを交互に有する薄膜を生成することが可能であり、これら全てが例えばCBD法によって得られる。更に、セレンと硫黄との両方を制御された割合で含むバスを用いることによって、セレンと硫黄とを両方含む混合膜の同時堆積も想定される。その後、アニーリング段階によって、硫黄とセレンを前駆体の薄膜中に拡散させることが可能である。薄膜が硫黄とセレンとの両方を含む場合には、実質的に全ての硫黄及びセレンがCIGS膜中に拡散するのに十分な短い時間である、数十秒以下のオーダの時間にわたって、アニーリングを行わなければならない。
【0077】
CBD法を用いて、硫黄を含む薄膜、セレンを含む膜、またはこの二つの混合物を含む膜を堆積させるかにより、化学バスは、溶媒中にそれぞれ、硫黄、セレン、または硫黄/セレン混合物のコロイド懸濁液を含み得る。しかしながら、勿論、コロイド状バス中の硫黄及びセレンの割合は、所望のバンドギャップ幅に従って、決められるものである。
【0078】
このような膜(硫黄、セレン、またはこの二つの混合物の膜)を堆積させるために、化学バスが、溶媒中に溶解させた硫黄、セレン、または硫黄/セレン混合物をそれぞれ含む溶液の形状を代わりに取ってもよい。勿論、バス中の硫黄及びセレンの割合は、所望のバンドギャップ幅に従って、決められるものである。
【0079】
また、少なくとも硫黄を含む表面膜は、セレン等の揮発性元素が前駆体から蒸発することを制限する保護膜の形成というアニーリング中の利点も有する。
【0080】
一般的に、本発明によるプロセスによって、前駆体の膜からのセレンの外部拡散を制限することが有利に可能となり、また、前駆体内へのセレンの拡散を促進する。本プロセスによって、所望の化学量論比の最終的な組成を得ることが有利に可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明によるプロセスを用いて少なくとも硫黄を含む膜を堆積させたCIGS薄膜の断面図である。
【図2】CIGS薄膜を電気化学的に堆積させるための装置を概略的に示す。
【図3】アニーリング前のナノスケール前駆体内の構造の概観を概略的に示す。
【図4】電着によって得られた薄膜を照射するための急速アニーリング装置を示す。
【図5】光電池応用に向けたセルの薄膜構造を概略的に示す。
【図6.1】光パルスの期間に膜に伝えられる出力密度の時間プロファイルを例示的に示す。
【図6.2】CIGSに対して、劣化させずに膜を少なくとも部分的に結晶化させることができる平均照射出力密度(縦軸)及び期間(横軸)の対を例示的に示す。
【図7】堆積時間及びチオ硫酸溶液の酸性化レベルの関数として、XRF(X−ray fluorescence,蛍光X線)によって測定した、化学浴析出法によって堆積させた硫黄の厚さを示す。
【図8】堆積させた硫黄の厚さの関数として、アニーリング後の膜の硫化度の変化を示す。
【図9】水平型反応装置内の30×30cm2のCIGS/Mo/ガラス基板上の硫黄の堆積の例を示す。
【図10.1】30×30cm2のCIGS/Mo/ガラス基板の場合における、蛍光X線によって測定した、硫黄の有効厚さを示す。
【図10.2】30×30cm2のCIGS/Mo/ガラス基板の場合における、堆積させた硫黄の厚さの関数としての、アニーリング後の膜の硫化度の変化を示す。
【符号の説明】
【0082】
10 少なくとも硫黄を含む薄膜
20 CIGS前駆体
30 導電膜
40 基板
210 水平型反応装置
220 化学バス
230 CIGS/Mo/ガラス基板
An 陽極
B バス
Ca 陰極
GR CIGS粒子
LA 光源
PH 相
REF 基準電極
S 基板
SF 少なくとも硫黄を含む薄膜
SH 試料ホルダ
TF CIGS前駆体の薄膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電池応用のための半導体の薄膜堆積の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
銅インジウムガリウム二セレン化物(copper indium gallium diselenide,CIGS)及び/又は二硫化物(disulfide)と、銅インジウム二セレン化物(copper indium diselenide,CIS)及び/又は二硫化物とは、光電池を製造するために基板上に堆積される。一般的な化学式がCuGaxIn1−xSe2−ySy(ここでxは0から1まで、yは0から2まで)であるこのような化合物は、CIGSSeと称され、次世代の薄膜太陽電池を構成する非常に有力な候補であると考えられている。CIGSSe半導体物質は、1.0から2.5eVまでに設定し得る広い直接バンドギャップを有し、よって、太陽放射の範囲内において、最適な太陽放射の吸収が可能になる。最近、小型のセルに対して、19.5%という記録的な変換効率が得られた。また、CIGSSe化合物は、その組成の化学的性質から、I‐III‐VI2化合物とも称される。ここで、
‐ Cu元素はI族(周期表の1B族)の元素を表し、
‐ In元素及び/又はGa元素は、III族(周期表の3B族)の元素を表し、
‐ Se元素及び/又はS元素はVI族(周期表の6B族)の元素を表す。
【0003】
従って、CIGSのI‐III‐VI2組成程度の単相の範囲では、I族の原子一つ及びIII族の原子一つに対して、VI族の原子が略二つ存在する。
【0004】
光起電力変換用に用いられるCIGS膜は、p型半導体の特性及び優れた電荷輸送特性を有さなければならない。こうした電荷輸送特性は、結晶性の良さによって促進される。従って、CIGS化合物は、太陽電池を製造する応用に対して十分な光起電力特性を有するために、少なくとも部分的には結晶でなければならない。結晶のCIGS化合物は、堆積温度に依存して、黄銅鉱系または閃亜鉛鉱系に対応する結晶構造を有する。このような半導体を製造するプロセスは特許文献1に開示されている。
【0005】
例えばCu(In,Ga)(S,Se)2といった黄銅鉱物質は、CuInSe2に対する1.0eVからCuGaS2に対する2.4eVまでと様々なバンドギャップ幅を有する。最高の効率と市販のモジュールを有する太陽電池は、1.12eVのバンドギャップに対応する25から30%までのGa/(Ga+In)比を有する吸収材から作成される。より広範なバンドギャップを有する吸収材に基づいた太陽電池を用いることは二つの利点を有する。即ち、第一に太陽のスペクトル吸収に対する1.5eVという最適な値に近いという点である。第二に、モジュールの応用において、高電圧及び低電流に対する直列抵抗損失が減少するという点である。
【0006】
CuInSe2吸収材から開始する場合には、インジウム及び/又はセレン原子を、ガリウム及び/又は硫黄原子でそれぞれ置換することによって、バンドギャップ幅を増大させることが可能である。現状において記録的な18%という効率を有するセルは、略30%のインジウム原子をガリウム原子で置換することによって得られる。
【0007】
また、セレン原子の一部を硫黄原子で置換することによってもCuInSe2のバンドギャップを増大させることが可能である。以後、このプロセスを“CuInSe2の硫化プロセス”と称す。
【0008】
金属のまたは二元の前駆体の硫化については報告されている。例えば、非特許文献1ではガラスの軟化点(600℃)未満の高温での、硫黄元素圧力下で硫化が行われる。非特許文献2では、急速加熱処理(rapid thermal process,RTP)を用いて、Cu‐In金属前駆体を、略10℃/sの温度上昇率で600℃で三分間(全アニーリングプラン)アニーリングする。基板は石英チャンバ内に配置され、硫黄元素が基板の傍らに配置される。アニーリング前にチャンバ内が真空にされる。よって、アニーリング中の圧力は、硫黄の飽和圧力である。
【0009】
最適なバンドギャップを有する半導体薄膜を得るための他の硫化法も存在し、例えば、特許文献2が挙げられる。パルス電流法を用いて、前駆体の膜は、CuxInyGazSen(ここで、x、y、zは0から2まで、nは0から3まで)の組成を有する。この段階の後には、真空蒸着によるCu+SeまたはIn+Se元素の膜の堆積段階が続く。最終的なアニーリング段階によって、結果物である膜の一様性及び質が改善される。
【0010】
しかしながら、こうした方法は、プロセスに対する厳しい制約を意味する有毒物質が含まれるか(H2SまたはH2Se雰囲気の使用)、または、バンドギャップ幅を精密に制御することができない。また、真空段階が必要とされる。
【0011】
更には、VI族元素が、CIGS前駆体の近傍で、固体状(例えば、パウダー状の硫黄またはセレン)で用いられると、この元素の非一様性の問題が生じ得る。
【0012】
【特許文献1】国際公開第03/094246号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5730852号明細書
【非特許文献1】V.Alberts、F.D.Dejene、Journal of Physics D: Appl.Phys.、2002年、第35巻、p.2021−2025
【非特許文献2】K.Siemer、J.Klaer、I.Luck、J.Bruns、R.Klenk、D.Brauenig、Solar Energy Materials and Solar Cells、2001年、第67巻、p.159−166
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明によって、従来の硫化法の欠点を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題のため、本発明は、光電池応用のための、硫黄を含むI‐III‐VI2型の半導体合金の薄膜を生成するためのプロセスであり、
a)実質的にアモルファスのI‐III‐VI2前駆体の薄膜と、少なくとも硫黄を含む薄膜とを有するヘテロ構造体を基板上に堆積させ、
b)へテロ構造体を、
‐ 前駆体の薄膜内への硫黄の拡散を促進するためと、
‐ 従って硫黄を含む化学量論を有する前駆体の薄膜のI‐III‐VI2合金の少なくとも部分的な結晶化を促進するために、
アニーリングする、プロセスを提供する。
【0015】
従って、CIGS薄膜内への硫黄の拡散によって、特に硫黄を含む膜の厚さの変更により、所望のバンドギャップ幅を得ることができる。
【0016】
a)段階における“実質的にアモルファス”であるという用語は、CIGS前駆体の膜の形態がアモルファス相によって互いに結合したナノ結晶から成るという事実を意味するものと理解されたい。アニーリング段階後に、このナノ結晶はサイズが大きくなり、一マイクロメートルのオーダのサイズに達し得る。
【0017】
好ましい実施形態において、実行されるアニーリングは、“急速”アニーリングである。典型的には、これは高出力ランプを用いたアニーリングであり得て、その出力は短期間(数十秒未満)で膜に伝えられる。
【0018】
有利な実施例の一つにおいては、少なくとも硫黄を含む薄膜及びセレンの任意の追加の膜を、化学浴析出(chemical bath deposition,CBD)法によって堆積させる。
【発明の効果】
【0019】
従って、本発明により、周知の硫化法またはセレン化法によって引き起こされる問題が解決される。従って、H2SまたはH2Se雰囲気が用いられず、また、基板近傍に配置された粉末状の硫黄またはセレンをも用いられない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明を読むことによって更に明らかになるものである。この説明は、単に例示的なものであり、添付図面を参照して読まれるものである。
【0021】
本発明による製造プロセスのa)段階は、図1から図3に対応する、実質的にアモルファスのI‐III‐VI2前駆体の薄膜と、図7に示されるように少なくとも硫黄を含む薄膜とを備えるヘテロ構造体の堆積を有する。前駆体薄膜の堆積について、初めに説明する。
【0022】
図1はCIGS薄膜の断面図を示し、本発明によるプロセスを用いて、その上に少なくとも硫黄を含む膜が堆積されている。硫黄膜10は、CIGS前駆体20の表面上に堆積される。CIGS前駆体20は、CIGS前駆体20の電気分解及び堆積を促進するために、導電膜30(例えば、モリブデン膜)でコーティングされた基板40(例えばガラス基板)に、電気分解によって堆積される。
【0023】
前駆体膜の堆積は、当業者に周知の方法によって実行され得る。例えば、スクリーン印刷法によるCIGS前駆体の堆積が想定され得る。また、特許文献1に開示されているプロセスを用いて膜を堆積させることもでき、以下において用いられる。
【0024】
CIGS前駆体の薄膜は、予めモリブデンMoでコーティングされたガラス基板S上の膜TFの電着によって、大気温度及び圧力で得られた(図5)。基板Sが初めに、追加の導電膜(例えば、金属膜または酸化物形状の膜、図示せず)でコーティングされることが有利である。更に、光電池の製造において、この導電膜は、特定の応用に対する一つ以上のサブ膜(拡散障壁、ミラー等)の上に存在し得る。
【0025】
図2を参照すると、電着は、溶解状態のインジウム塩、銅塩及びセレン酸化物を含むバスB内で実行される。実質的にCuGaxIn1−xSe2(ここで、xは0から1まで)に対応する一般組成のCIGS薄膜を得るため、バスがガリウム塩を含み得ることは理解されたい。より洗練された変形例においては、硫黄塩を溶液中に加えることが可能であり、CuGaxIn1−xSe2ySy(ここでxは0から1までの間、yは0から2まで)に近い組成物が堆積されるようになる。塩は、電気化学バスB内に沈められた回転型撹拌器M(または櫛型撹拌器(comb stirrer))によって、堆積中に混合される。図2の構成では、バスは棒磁石によって撹拌される。大型の応用では、このシステムを振動ロッド(“櫛”)型攪拌器に置き換えることが有利であり得る。
【0026】
従って、前駆体の電着によって薄膜が得られ、その構成元素は予め良く混合されている。(溶液中の塩及び酸化物の状態での)前駆体の元素の濃度は10−4から10−1mol/lまでである。溶液のpHが1から4までに定められることが好ましい。モリブデン電極(陰極Ca)に印加される電位は、この場合硫酸第一水銀である基準電極REFに対して−0.8Vから−1.9Vまでである(標準水素電極に対して−0.65V)。
【0027】
0.1から3μmまでの厚さの薄膜を、略0.5から4mA/cm2の電流密度で堆積させた。
【0028】
非限定的な実施例によって、以下の濃度を有するバスから前駆体を堆積させる。即ち、[Cu(SO4)]=1.0×10−3mol/l;[In2(SO4)3]=6.0×10−3mol/l;[H2SeO3]=1.7×10−3mol/l;[Na2(SO4)]=0.1mol/lである。本実施例では、バスのpHは2である。前駆体を、硫酸第一水銀の基準電極に対して固定された電位(好ましくは−1V)での陰極反応によって堆積させる。電流密度は−1mA/cm2である。
【0029】
銅及びインジウム及び/又はガリウム塩、更には溶解したセレン酸化物がバスBの溶液中で混合されるという条件では、上述の電着段階で得られるものは、元素が予め良く混合された前駆体である。得られる前駆体膜は密であり、付着性で、一様な形態のものである。その組成は、Cu(25%)/In+Ga(25%)/Se(50%)の化学量論的組成に近い。
【0030】
図3に示されるように、電着段階後に得られた膜は、略アモルファスである(またはアニーリング後の合金と比較して結晶性が低い)が、主にCIGS粒子GRを有するマトリクスから成る(サイズが数十ナノメートルのオーダの結晶性)。
【0031】
“ナノ粒子”という用語は、アニーリング後に意図している合金の物理化学的な性質に近い物理化学的な性質を主に有利に有し、また、数十ナノメートルまでのサイズを有し得る合金の粒子のことを意味するものと理解されたい。
【0032】
従って、膜内の粒子のクラスタは、アニーリング段階中の急激な温度上昇に耐えられる有利に小型のマトリクスを形成する。
【0033】
“マトリクス”という用語は、複数の相PHを有することができる膜の複合性を意味するものと理解されたい。即ち、三元相(CIGSの場合)、二元相(例えば、CuxSe(ここでxは2に近い)や、InxSey(ここでxは2に近く、yは3に近い))、更には、一元相(セレン)である。粒子GRは、最終的な合金(CIGSの場合にはCuInSe2)に対する所望の組成に近い組成を有する。しかしながら、膜内で、粒子GRによって占められている体積は、相PHによって占められている堆積よりも実質的に大きいままである。
【0034】
CIGS薄膜が低温で堆積されると(前駆体の堆積)、結晶度が低く、アモルファスに近いこともある。そこで、CIGSの結晶化及び電荷輸送特性を満足に改善するために、熱を加えることによって、膜をアニーリングしなければならない。このアニーリングは、本プロセスのb)段階に対応するものであり、後述する。しかしながら、追加的で部分的なプレアニーリングを段階a)と段階b)との間に実施してもよく、前駆体薄膜の部分的な結晶化を起こさせる。
【0035】
本発明のプロセスのa)段階の第二段階では、少なくとも硫黄を含む薄膜を堆積させる。好ましい実施例では、CIGS前駆体の膜と共通の界面を有する。更なる実施例では、CIGS前駆体の膜上に直接堆積される。b)段階のアニーリング中に、この硫黄は、CIGS薄膜中のCIGS結晶サイト内に拡散し、セレン原子を置換する。
【0036】
この硫黄を含む薄膜を堆積させる多様な方法が存在する。特に、この薄膜は、化学浴析出(chemical bath deposition,CBD)法によって堆積され得る。このタイプの堆積法について、以下に説明する。
【0037】
チオ硫酸イオンS2O32−を含む溶液を酸性にして、以下の式に従う、初め酸化状態+IIの硫黄の硫黄0と硫黄+IVとへの不均化によって、硫黄元素が形成されるようにする:
S2O32− + H+ → HSO3− + S
【0038】
使用される前駆体は、上述のように、モリブデンでコーティングされたガラス基板上に電着によって堆積させたCu(In,Ga)Se2またはCuInSe2前駆体である。
【0039】
チオ硫酸ナトリウムNa2S2O3の0.1M溶液を用意して、撹拌しながら70℃まで加熱する。例えばリチウム、カリウムまたはアンモニウム塩等の他の塩を用いてもよい。CIGS/Mo/ガラス基板を反応装置(ビーカーまたは晶析装置)内に配置する。反応装置をホットプレート上に配置して、チオ硫酸ナトリウム溶液を前駆体上に注ぐ。使用される溶液の量は、処理される基板の数に依存する。基板上方の溶液の高さは典型的に1cmである。
【0040】
濃縮溶液(例えば10M)から開始する場合には、陽子H+及びチオ硫酸イオンS2O32−の好ましくは等モル混合物に対応する量の酸性溶液(例えば塩酸溶液)が加えられる。溶液は直ちに濁る。その後、典型的には黄色い硫黄コロイドが形成される。溶液は0から70℃まで、好ましくは40から70℃までの温度に維持される。一定の堆積時間後、基板を溶液から取り出し、脱イオン水で洗浄し、アルゴンまたは窒素で乾燥させる。
【0041】
黄色い硫黄の堆積物が得られる。この堆積物は一様であり被覆している。堆積される硫黄の厚さは典型的には数マイクロメートルであるが、堆積時間(浸漬時間)、チオ硫酸溶液の濃度、チオ硫酸溶液の酸性化度に依存する。図7はCBDにより堆積させた硫黄の厚さを示すが、この厚さはXRF(X−ray fluorescence,蛍光X線)によって測定されており、堆積時間及びチオ硫酸溶液の酸性度(最終的な溶液中の陽子濃度対チオ硫酸イオン濃度の比)の関数として示されている。典型的な堆積時間は1分間から30分間までであり得て、アニーリング後の所望の硫化度(つまり、硫黄の割合)に依存する。従って、少なくとも硫黄を含む表面膜がCIGS前駆体の薄膜上に堆積される。アニーリング中の硫黄圧の一様性が粉末状の硫黄源の位置またはチャンバ中のH2S流の流体力学的な型に依存する周知の方法とは異なり、CBD法の場合には、一様性は、アニーリング中の基板の温度の一様性にしか依存しない。
【0042】
30分間という堆積時間によって特徴付けられるより厚い堆積物に対しては、堆積物の厚さは数マイクロメートルである。更に、硫黄堆積物が硫黄のみから成ることが好ましい。硫黄堆積物は化学バスからの種(酸素、ナトリウム)を含み得る。しかしながら、その量は典型的には1%未満である。
【0043】
その後、S/CIGS/Mo/ガラス基板は熱アニーリングプロセスによってアニーリングされる。こうしたプロセスは当業者にとって周知であり、例えば、急速熱処理に関する特許文献1が挙げられ、以下において採用される。
【0044】
多様な種類の熱アニーリングを用いることが可能である。急速熱アニーリングは、本発明によるプロセスを実施する有利な方法の一つとして用いられるものであり、その一実施例を以下に説明する。
【0045】
熱処理は、電着させた前駆体の薄膜TF及び少なくとも硫黄を含む薄膜SFを急速アニーリングすることによって実行可能である。図4に示されるように、膜TF及びSFは、基板Sと共に、試料ホルダSH上に配置される。基板ホルダは光源LAに対して水平面内で移動可能(図4に示されるようにX軸に沿った移動)であることが好ましい。本実施例では、光源は高放射出力のハロゲンランプの列であり、膜TF及びSFの光吸収バンド内であることが有利である。従って、本実施例では、“急速アニーリング”が意味するのは、膜TF及びSFを照射して、表面膜の硫黄が電着された前駆体の薄膜内に拡散するようにし、また、前駆体を結晶化させるようにするということであり、全時間は十秒から数十秒のオーダである。この急速アニーリングは、ランプが固定されたオーブン内で実施され(図4)、その中で薄膜が、直接照射で、略5W/cm2以上の放射出力レベルを受け得る。変形例では、急速アニーリングが、電流ループを用いた誘導加熱によって提供され得る。
【0046】
このアニーリングの効果の現状における一つの解釈は以下の通りである。急速アニーリング中に薄膜に伝えられるエネルギーが、融点の低いVI族元素(Se及びS)を活性化させ、よって、焼結の場合のように、粒子GRの凝集を開始させる。前駆体中のナノ粒子GRは一緒になり、実質的にマイクロメートルサイズであるより粗い粒子を形成する。より高い温度(>500℃)では、前駆体膜中に存在し得る銅/セレン型の二元相自体が溶解し得て、結晶化メカニズムに寄与し得る。急速アニーリング中、過剰なVI族元素及び銅/セレン二元相は、再結晶化及び欠陥の不動態化の重要な役割を果たす。
【0047】
アニーリング作業が、不活性ガス(例えばアルゴンまたは窒素)圧力下の大気圧で実施されることが有利である。この場合、過剰なVI族元素の蒸発率は制限され、再結晶化作用のためにより長時間残存する。本実施例では、薄膜が実際に受ける単位面積当たりの最大出力は、ランプの公称出力、ランプと薄膜との間の光の分散、反射損失や他の要因を考慮すると、25W/cm2である。
【0048】
図6.1は、最大出力で三秒間印加されたパルスを示す。しかしながら、このパルスは、ランプの慣性が原因で、時間の関数としての光出力において、前縁及び後縁を示す。それにも関わらず、このようなパルスでも硫黄が拡散しCIGS薄膜が結晶化することが可能であり、優れた光起電力特性が得られるということが、実験によって示されている。
【0049】
図6.2は、結晶化された膜が得られる平均光出力/アニーリング期間の対に対応する実験点(四角)を示す。上述の三秒間のパルスは、グラフの左側の一番目の点に対応する。破線で境界が示されている領域A、B及びCはそれぞれ、
‐ 出力が高過ぎる出力/期間の対(領域A) ‐ 膜はアニーリング中に劣化する傾向がある;
‐ 膜の十分な結晶化が達成される出力/期間の対(領域B);
‐ 膜が適切にアニーリングされるには出力が不十分である出力/期間の対(領域C)
に対応する。
【0050】
ガラス基板上に堆積させた略一マイクロメートルの厚さの膜に対しては典型的に、十分な結晶化を開始させるために、膜に伝えられる出力は数ワット毎cm2(W/cm2)よりも大きい。30秒未満の期間にわたる典型的には5W/cm2よりも大きな、好ましくは10W/cm2よりも大きな出力が伝えられると、有利なアニーリングが得られる。また、有利なアニーリングは、数十秒未満の期間にわたる15W/cm2よりも大きな出力に対しても達成される。一般的に必要とされる出力レベルは、数W/cm2のオーダである。
【0051】
アニーリング後、薄膜TFは、450℃を超える温度で一時間に近い時間にわたる従来のアニーリング工程後に得られるものと実質的に同程度かまたはそれよりも良い形で、有利に再結晶化される。
【0052】
従って、本発明によって提供される利点の一つに従って、電着された前駆体の予め混合された構造は、再結晶プロセスに対してもともと好都合なものであり、従来のアニーリング工程よりもはるかに短い時間しかいらない。
【0053】
急速熱アニーリングは典型的に、数十秒未満またはそのオーダの期間にわたって実施される。この十分な短い期間によって、硫黄がCIGS膜内に十分に拡散し、また、半導体合金薄膜内の所望の組成を得ることが可能になり、従って、光起電力特性、特に調節されたバンドギャップ幅が与えられる。
【0054】
アニーリング中に、化学浴析出法によって堆積させた硫黄膜からの硫黄原子は、CIGS膜のセレン原子を置換する。CIGS膜内部における硫黄原子でのセレン原子の置換度合い(または硫化度、つまりy=S/(S+Se))は、利用できる硫黄の量、つまりは少なくとも硫黄を含む膜(この膜は例えば化学浴析出法によって堆積される)の相対的な厚さに依存する。従って、アニーリング後の合金中の硫黄の割合は、硫黄を含む膜の相対的な厚さに従って制御される(図8)。“硫黄を含む膜の相対的な厚さ”という表現は、CIGS前駆体膜の厚さに対してのこの膜の厚さを意味するものと理解されたい。
【0055】
この置換度合いが高いほど、アニーリング後の吸収材のバンドギャップは広くなり、その大まかな化学式はCu(Inx,Ga1−x)(SySe1−y)2であり、ここで、0≦x≦1、0≦y≦1である。バンドギャップ幅は硫黄の割合に従って、つまりは膜10の厚さに従って、調節される。
【0056】
堆積段階後の前駆体膜は、この状態では光起電力特性が良くない。実際には、光起電力特性は熱アニーリング処理後に初めて得られるものであり、またこれにより、前駆体内への硫黄の拡散が促進される。薄膜の結晶化によって、光起電力変換のための優れたp型輸送特性が得られる。
【0057】
化学浴析出法によって堆積させる硫黄の量、つまりはアニーリング中の硫化のために利用できる硫黄の量を制御することによって、バンドギャップ幅を調節することが可能である。
【0058】
急速熱アニーリング後には、化学浴析出法によって生じた硫黄堆積物の厚さに依存して、多様な硫化レベルが得られる。硫化レベルは、数パーセント(%)から100%までと様々である(図8)。従来の予想によると硫黄の拡散係数の低い、インジウムの豊富な吸収材に対しても、銅の豊富な吸収材に対しても、高レベルの硫化を得ることができることには留意されたい。
【0059】
従って、CBD法によって堆積させた硫黄の厚さに依存して、つまり、硫黄を含む膜の相対的な厚さに依存して、アニーリング後の吸収材の硫化レベル(硫黄の割合)を制御することが可能であり、つまりはバンドギャップ幅を調節可能であるということが明らかになる。開路電圧は、硫化レベルに依存して400から750mVまでと様々である。
【0060】
【表1】
【0061】
この表で、
‐ EgはeV単位でのギャップまたはバンドギャップ幅であり、
‐ IscはmA/cm2単位での短絡電流であり、
‐ VocはmV単位での開路電圧であり、
‐ SAはアスペクト比であり、
‐ Effは変換効率である。
【0062】
本硫化法を、下記のセレン化法と組み合わせることができる。実際に、化学浴析出法によってS及び/又はSe堆積物を生成することが可能である。このS/Se構造によっておそらく、CIGS膜の硫化を最適化する一方で、CIGS膜が第一温度上昇段階中にセレンがあまりにも急速に減少することを防止することができる。
【0063】
本発明による製造プロセスの他の主な利点は、容易に大型化できるという点である。特に、図9に示されるように、CBDによる硫黄の堆積は30×30cm2の基板上に対して行われた。水平型反応装置210(化学バス220の量を最小化することができる)内において、30×30cm2のCIGS/Mo/ガラス基板上230に、硫黄を堆積させた。
【0064】
硫黄膜の有効厚さを蛍光X線によって測定する。この厚さは、条件に依存して、数ナノメートルから数マイクロメートルまでと様々であり得る。しかしながら、本発明によるプロセスによって堆積させた硫黄の表面膜に対して、図10.1に示されるように30×30cm2の面積にわたって堆積物の一様性を調べてみると、この膜の厚さの分散は5%未満であった(30×30cm2の基板にわたって7.5から8.0μmまでの間)。
【0065】
図10.2は、同じ30×30cm2の基板上における、アニーリング前の本発明によるプロセスによって堆積させた硫黄の厚さと、アニーリング後の膜の硫化レベルとの間に存在する可能性のある相関関係を示す。調査した範囲内においては、硫化レベルは、CBD法によって堆積させた硫黄の厚さに依存していないように見える。即ち、系は確実に飽和を超えている。しかしながら、この飽和の横這い状態が、アニーリング前のCIGS前駆体の組成やアニーリング後の形状等の実験条件に確実に依存するものであることには留意されたい。
【0066】
同じようにして、硫黄の表面膜を電着させたまたは電着させていないCIGS前駆体の表面上に、CBD法によってセレン元素の膜を堆積させることが可能である。この理由は、アニーリング中のCIGS膜の再結晶化の質が、この段階中のSeの分圧に極めて依存することが周知であるからである。原理的には、Se雰囲気を、Se元素の蒸発及び/又はH2Seの導入によって発生させる。この場合、少なくとも硫黄を含むことに加えて、前駆体上に直接堆積させた表面膜はセレンを含む。
【0067】
本発明によって、硫黄の場合と同じ問題、具体的には、固体Seが原因の非一様性、また、セレン化水素が原因の有毒性という問題が解決される。
【0068】
本発明の原理は、Se元素を、亜硫酸(SO32−)または二亜硫酸(S2O52−)媒質中に溶解して、それぞれSeSO32−またはSeS2O52−錯体を形成することである。Seは反応媒質を酸性化することによって放出されるが、これによって、Se元素の析出が制御される。
【0069】
錯化アニオンは重要な役割を果たしているように考えられる。初期の研究によって、亜硫酸イオンSO32−よりも二亜硫酸イオンS2O52−によってより容易にセレンが堆積されることが示されている。
【0070】
硫黄堆積物がCIGS膜の表面上に形成されるチオ硫酸塩錯体S2O32−とは異なり、
酸性化後の溶液中にセレンの析出があっても、セレノ硫酸塩錯体SeSO32−は、付着性のセレン堆積物を生じさせないように考えられる。しかしながら、SeS2O52−錯体に対する試験はより確実なものであることが分かっている。
【0071】
二亜硫酸ナトリウムNa2S2O5の0.1M溶液を準備して、撹拌しながら40〜90℃で加熱する。この準備は、100℃近い温度に対しては還流化でも実行可能である。溶液のpHは、水酸化ナトリウムNaOH等の添加剤を加えることによって、塩基性のpH(好ましく10)にされる。少量(好ましくは0.05mol/l以下)の灰色セレン元素を粉末状で溶液に加える。完全に溶解するまで溶液を撹拌する(略一時間)。
【0072】
上述のように用意した溶液を、反応装置内でCIGS試料上に注ぐ。使用する溶液の量は、処理する基板の数に依存する。セレンの豊富な追加の薄膜の化学浴析出は、0℃から80℃までの温度範囲内で行われる。基板上方の溶液の高さは典型的に1cmである。濃縮溶液(例えば10M)から開示する場合には、陽子H+及び二亜硫酸イオンS2O52−の好ましくは等モル混合物に対応する量の酸性溶液(例えば塩酸溶液)が、加えられる。セレンコロイドが形成される。溶液は直ちに濁り、典型的なクラレット色を呈する。一定の堆積時間後、基板を溶液から取り出し、脱イオン水で洗浄し、アルゴンで乾燥させる。セレンの堆積中に溶液が50から70℃までに維持されていると、得られる堆積物は黒色である(Seの六方晶型)。堆積が室温で行われると、得られる堆積物はオレンジ〜赤である(赤:Seのアモルファス型、オレンジ:単斜晶型またはβ結晶型)。
【0073】
この堆積物は一様であり被覆している。得られるセレン堆積物の厚さは数マイクロメートルにまで及び、基板が溶液中に置かれる堆積時間と、母液の初期濃度とに依存する。典型的な堆積時間は、アニーリング中の所望のセレン化度に応じて、一分間から六十分間までと様々である。
【0074】
溶液中に残存するセレンは、ビーカーの底に堆積し、次に堆積用に再利用可能である。従って、化学浴析出法によるセレンの堆積中にセレンが無駄にならない。
【0075】
セレンの豊富な薄膜を、前駆体と硫黄膜との間に堆積させることが有利であり、アニーリング段階b)中のセレンの拡散を制限する。また、セレンの豊富な追加の薄膜を供給することによって、セレン膜の厚さ及び相対的な割合に従って、バンドギャップ幅を制御することも可能である。
【0076】
従って、CIGS前駆体の薄膜上に堆積させた、硫黄を含む膜とセレンを含む膜とを交互に有する薄膜を生成することが可能であり、これら全てが例えばCBD法によって得られる。更に、セレンと硫黄との両方を制御された割合で含むバスを用いることによって、セレンと硫黄とを両方含む混合膜の同時堆積も想定される。その後、アニーリング段階によって、硫黄とセレンを前駆体の薄膜中に拡散させることが可能である。薄膜が硫黄とセレンとの両方を含む場合には、実質的に全ての硫黄及びセレンがCIGS膜中に拡散するのに十分な短い時間である、数十秒以下のオーダの時間にわたって、アニーリングを行わなければならない。
【0077】
CBD法を用いて、硫黄を含む薄膜、セレンを含む膜、またはこの二つの混合物を含む膜を堆積させるかにより、化学バスは、溶媒中にそれぞれ、硫黄、セレン、または硫黄/セレン混合物のコロイド懸濁液を含み得る。しかしながら、勿論、コロイド状バス中の硫黄及びセレンの割合は、所望のバンドギャップ幅に従って、決められるものである。
【0078】
このような膜(硫黄、セレン、またはこの二つの混合物の膜)を堆積させるために、化学バスが、溶媒中に溶解させた硫黄、セレン、または硫黄/セレン混合物をそれぞれ含む溶液の形状を代わりに取ってもよい。勿論、バス中の硫黄及びセレンの割合は、所望のバンドギャップ幅に従って、決められるものである。
【0079】
また、少なくとも硫黄を含む表面膜は、セレン等の揮発性元素が前駆体から蒸発することを制限する保護膜の形成というアニーリング中の利点も有する。
【0080】
一般的に、本発明によるプロセスによって、前駆体の膜からのセレンの外部拡散を制限することが有利に可能となり、また、前駆体内へのセレンの拡散を促進する。本プロセスによって、所望の化学量論比の最終的な組成を得ることが有利に可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明によるプロセスを用いて少なくとも硫黄を含む膜を堆積させたCIGS薄膜の断面図である。
【図2】CIGS薄膜を電気化学的に堆積させるための装置を概略的に示す。
【図3】アニーリング前のナノスケール前駆体内の構造の概観を概略的に示す。
【図4】電着によって得られた薄膜を照射するための急速アニーリング装置を示す。
【図5】光電池応用に向けたセルの薄膜構造を概略的に示す。
【図6.1】光パルスの期間に膜に伝えられる出力密度の時間プロファイルを例示的に示す。
【図6.2】CIGSに対して、劣化させずに膜を少なくとも部分的に結晶化させることができる平均照射出力密度(縦軸)及び期間(横軸)の対を例示的に示す。
【図7】堆積時間及びチオ硫酸溶液の酸性化レベルの関数として、XRF(X−ray fluorescence,蛍光X線)によって測定した、化学浴析出法によって堆積させた硫黄の厚さを示す。
【図8】堆積させた硫黄の厚さの関数として、アニーリング後の膜の硫化度の変化を示す。
【図9】水平型反応装置内の30×30cm2のCIGS/Mo/ガラス基板上の硫黄の堆積の例を示す。
【図10.1】30×30cm2のCIGS/Mo/ガラス基板の場合における、蛍光X線によって測定した、硫黄の有効厚さを示す。
【図10.2】30×30cm2のCIGS/Mo/ガラス基板の場合における、堆積させた硫黄の厚さの関数としての、アニーリング後の膜の硫化度の変化を示す。
【符号の説明】
【0082】
10 少なくとも硫黄を含む薄膜
20 CIGS前駆体
30 導電膜
40 基板
210 水平型反応装置
220 化学バス
230 CIGS/Mo/ガラス基板
An 陽極
B バス
Ca 陰極
GR CIGS粒子
LA 光源
PH 相
REF 基準電極
S 基板
SF 少なくとも硫黄を含む薄膜
SH 試料ホルダ
TF CIGS前駆体の薄膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電池応用のための、硫黄を含むI‐III‐VI2型の半導体合金の薄膜を生成するためのプロセスであり、
a)実質的にアモルファスのI‐III‐VI2前駆体の薄膜と、少なくとも硫黄を含む薄膜とを有するヘテロ構造体を基板上に堆積させ、
b)前記へテロ構造体を、
‐ 前記前駆体の薄膜内への硫黄の拡散を促進するためと、
‐ 従って硫黄を含む化学量論を有する前記前駆体の薄膜のI‐III‐VI2合金の少なくとも部分的な結晶化を促進するために、
アニーリングする、プロセス。
【請求項2】
アモルファスまたは僅かに結晶であるI‐III‐VI2前駆体の前記薄膜を電気分解によって堆積させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
追加的で部分的なプレアニーリングを、前記a)段階と前記b)段階との間に提供し、前記I‐III‐VI2前駆体の薄膜の部分的な結晶化を開始させる、請求項1または請求項2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項4】
前記硫黄を含む薄膜の堆積は、化学浴析出法によって前記a)段階において行われる、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記硫黄を含む薄膜は、前記I‐III‐VI2前駆体の薄膜と共通の界面を有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記硫黄を含む薄膜を、前記I‐III‐VI2前駆体の薄膜の上に直接堆積させる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記へテロ構造体は、数W/cm2のオーダの出力で、数十秒間以下のオーダの期間にわたってアニーリングされる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記b)段階中に、前記薄膜の温度を450℃以上に上昇させる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記薄膜に伝えられる出力は5W/cm2よりも大きい、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記薄膜に伝えられる出力は、30秒未満の期間にわたって、10W/cm2よりも大きい、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記前駆体の構成元素を混合しながら、前記a)段階において、前記I‐III‐VI2前駆体の薄膜を堆積させて、アモルファス相によって互いに結合された合金のナノ粒子を含む構造を前記前駆体に生じさせる、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記a)段階において、前記基板及び前記前駆体の薄膜を、チオ硫酸イオンS2O32−を含む溶液が注がれる反応装置内で堆積させる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記a)段階において、陽子H+及びチオ硫酸イオンS2O32−の混合物、好ましくは等モル混合物に対応する量の酸が注がれる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記硫黄を含む膜は、30×30cm2の面積にわたって5%内の幅の実質的に一様な厚さである、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記a)段階において、少なくとも一つのセレンの豊富な追加の薄膜も堆積させる、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記セレンの豊富な追加の薄膜を、セレンの外部拡散を制限するために、前記前駆体と前記硫黄の膜との間に堆積させる、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記セレンの豊富な追加の薄膜を化学浴析出法によって生成する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記セレンの豊富な追加の薄膜を、塩基性pHにする添加剤が加えられる二亜硫酸溶液から作成する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
化学析出は、セレン及び硫黄の両方を含むバス内で行われ、硫黄及びセレンの混合物から成る膜が、制御された割合で堆積される、請求項4または請求項15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
化学バスは溶媒中の硫黄、セレン、または硫黄/セレン混合物のコロイド懸濁液である、請求項4から請求項6及び請求項15から請求項19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
化学バスは溶媒中の硫黄、セレン、または硫黄/セレン混合物の溶液である、請求項4から請求項6及び請求項15から請求項19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記b)段階で得られる合金中の硫黄の割合と、その結果としてのバンドギャップ幅は、少なくとも前記硫黄を含む膜の相対的な厚さに従って制御される、請求項1から請求項21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記b)段階で得られる合金中の硫黄及びセレンのそれぞれの割合と、その結果としてのバンドギャップ幅は、硫黄及びセレンの薄膜のそれぞれの厚さに従って制御される、請求項15から請求項18及び請求項22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項1】
光電池応用のための、硫黄を含むI‐III‐VI2型の半導体合金の薄膜を生成するためのプロセスであり、
a)実質的にアモルファスのI‐III‐VI2前駆体の薄膜と、少なくとも硫黄を含む薄膜とを有するヘテロ構造体を基板上に堆積させ、
b)前記へテロ構造体を、
‐ 前記前駆体の薄膜内への硫黄の拡散を促進するためと、
‐ 従って硫黄を含む化学量論を有する前記前駆体の薄膜のI‐III‐VI2合金の少なくとも部分的な結晶化を促進するために、
アニーリングする、プロセス。
【請求項2】
アモルファスまたは僅かに結晶であるI‐III‐VI2前駆体の前記薄膜を電気分解によって堆積させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
追加的で部分的なプレアニーリングを、前記a)段階と前記b)段階との間に提供し、前記I‐III‐VI2前駆体の薄膜の部分的な結晶化を開始させる、請求項1または請求項2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項4】
前記硫黄を含む薄膜の堆積は、化学浴析出法によって前記a)段階において行われる、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記硫黄を含む薄膜は、前記I‐III‐VI2前駆体の薄膜と共通の界面を有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記硫黄を含む薄膜を、前記I‐III‐VI2前駆体の薄膜の上に直接堆積させる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記へテロ構造体は、数W/cm2のオーダの出力で、数十秒間以下のオーダの期間にわたってアニーリングされる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記b)段階中に、前記薄膜の温度を450℃以上に上昇させる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記薄膜に伝えられる出力は5W/cm2よりも大きい、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記薄膜に伝えられる出力は、30秒未満の期間にわたって、10W/cm2よりも大きい、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記前駆体の構成元素を混合しながら、前記a)段階において、前記I‐III‐VI2前駆体の薄膜を堆積させて、アモルファス相によって互いに結合された合金のナノ粒子を含む構造を前記前駆体に生じさせる、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記a)段階において、前記基板及び前記前駆体の薄膜を、チオ硫酸イオンS2O32−を含む溶液が注がれる反応装置内で堆積させる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記a)段階において、陽子H+及びチオ硫酸イオンS2O32−の混合物、好ましくは等モル混合物に対応する量の酸が注がれる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記硫黄を含む膜は、30×30cm2の面積にわたって5%内の幅の実質的に一様な厚さである、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記a)段階において、少なくとも一つのセレンの豊富な追加の薄膜も堆積させる、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記セレンの豊富な追加の薄膜を、セレンの外部拡散を制限するために、前記前駆体と前記硫黄の膜との間に堆積させる、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記セレンの豊富な追加の薄膜を化学浴析出法によって生成する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記セレンの豊富な追加の薄膜を、塩基性pHにする添加剤が加えられる二亜硫酸溶液から作成する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
化学析出は、セレン及び硫黄の両方を含むバス内で行われ、硫黄及びセレンの混合物から成る膜が、制御された割合で堆積される、請求項4または請求項15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
化学バスは溶媒中の硫黄、セレン、または硫黄/セレン混合物のコロイド懸濁液である、請求項4から請求項6及び請求項15から請求項19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
化学バスは溶媒中の硫黄、セレン、または硫黄/セレン混合物の溶液である、請求項4から請求項6及び請求項15から請求項19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記b)段階で得られる合金中の硫黄の割合と、その結果としてのバンドギャップ幅は、少なくとも前記硫黄を含む膜の相対的な厚さに従って制御される、請求項1から請求項21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記b)段階で得られる合金中の硫黄及びセレンのそれぞれの割合と、その結果としてのバンドギャップ幅は、硫黄及びセレンの薄膜のそれぞれの厚さに従って制御される、請求項15から請求項18及び請求項22のいずれか一項に記載のプロセス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図10】
【公表番号】特表2008−543038(P2008−543038A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512868(P2008−512868)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001149
【国際公開番号】WO2006/125898
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(504462489)エレクトリシテ・ドゥ・フランス (25)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001149
【国際公開番号】WO2006/125898
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(504462489)エレクトリシテ・ドゥ・フランス (25)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】
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