説明

熱エネルギ利用装置及びその運転方法

【課題】蒸発器内に溜まり易い潤滑油を油分離タンクへ移送して、円滑にかつ迅速に起動可能な熱エネルギ利用装置及びその運転方法を提供する。
【解決手段】作動媒体を蒸発させる蒸発器5、潤滑油を作動媒体と分離する油分離タンク6、作動媒体蒸気を膨張させる膨張機1、作動媒体蒸気を凝縮させる凝縮器3、及び作動媒体を循環させる循環ポンプ4を閉ループ状に接続して循環流路20が形成され、膨張機1を前記作動媒体蒸気の膨張により駆動可能に構成し、蒸発器5に供給する加熱媒体として温水が用いられると共に、前記作動媒体として水よりも沸点が低く膨張機1へ給油される潤滑油よりも比重の大きい媒体が用いられ、油分離タンク6に液面計9,10が設けられると共に、この液面計9,10の検知信号に基づいて蒸発器5に温水を送る温水ポンプ13または温水供給弁を制御する制御装置8が設けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張機で回転駆動力を得る熱エネルギ利用装置及びその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策のため、化石燃料の代替エネルギーとして再生可能エネルギーの導入が図られており、その一つとして、蒸気タービンを回転させるほどの熱量を持たない低温の熱源(例えば地熱等)で暖められた加熱媒体(例えば水等)から低沸点の作動媒体の熱サイクルへ熱を移動し、この循環サイクル内で作動媒体を用いた発電を行うバイナリー発電システムが着目されている。バイナリー発電システムは、ランキンサイクルによる動力発生機関を利用して発電を行うもので、作動媒体の蒸発器、スクリュタービン等の膨張機、油セパレータ、凝縮器及び作動媒体ポンプを直列に接続して閉じた作動媒体ループを構成し、前記膨張機で発電機を駆動する発電装置である。
【0003】
そして例えば、スクリュタービンを用いたバイナリー発電システムでは、スクリュタービンや軸受の潤滑に用いる潤滑油は、システムの簡素化を狙って、作動媒体と溶解できる潤滑油を用いている。従って、システムの停止時や運転中の熱源の温度低下時等、潤滑油の温度が低下すれば、作動媒体は所定の割合で潤滑油に溶け込むことになる。そのため、システム停止後、再起動する場合には、スクリュタービンを用いたバイナリー発電システムでは、安定運転を期してスクリュタービンの起動前に媒体循環運転を行い、機器のウオーミングアップを行っていた。
【0004】
そこで先ず、従来技術に係る動力発生機関について、以下添付図6を参照しながら説明する。図6は、従来技術1に係る動力発生機関の運転方法の一実施例を適用した動力発生機関の系統図である。
【0005】
従来技術1に係る動力発生機関の運転方法は、膨張機41、凝縮器42、液ポンプ43、蒸気発生器44及び油分離器45からなり、この油分離器45と前記膨張機41を作動媒体路51及び給油路52により連結した動力発生装置において、前記作動媒体路51及び給油路52に閉塞手段53,54を夫々設け、この両閉塞手段53,54を前記液ポンプ43に連動させるようにしたものである。
【0006】
即ち、前記動力発生機関の起動時には、先ず液ポンプ43を駆動し、次いで給油路52に設けた閉塞手段54を開き、同時にまたはある設定時間の経過後に、作動媒体路51に設けた閉塞手段53を閉じる。その結果、蒸気発生器44内の作動媒体が、搬送手段48により送られた高温媒体により加熱されると共に加圧される一方、油分離器45で分離された潤滑油が、給油孔50a,50bを経て膨張機41へ供給されるので、前記潤滑油が昇温されて、この潤滑油に溶け込んでいた作動媒体を蒸発させて、潤滑油の粘度が高められる。
【0007】
そして、潤滑油の温度が十分に上昇するある設定時間の経過後に、作動媒体路51に設けた閉塞手段53を開いて、膨張機41へ作動媒体を送ることにより、動力発生機関を円滑にかつ迅速に起動することができる
【0008】
一方、運転を停止する場合には、先ず液ポンプ43を停止した後、ある設定時間の経過
後に作動媒体路51に設けた閉塞手段53を閉じると同時に、またはある設定時間の経過
後に、給油路52に設けた閉塞手段54を閉じる。この様に操作することにより、動力発
生機関を円滑にかつ迅速に停止させることができる(特許文献1参照)。
【0009】
更に、従来技術2に係るランキン機関の油分離装置には、膨張機、凝縮器、冷媒ポンプ
、蒸気発生器及び油分離装置よりなるランキン機関において、該油分離装置の油溜部に高
熱源(前記蒸気発生器で発生した蒸気)を導入する熱交換器が設けられている(特許文献
3参照)。その結果、油分離装置内の液冷媒を含有した油から冷媒を蒸発させて、冷媒含
有量の少ない油を膨張機の潤滑系統に給油できる。
【0010】
上記従来技術においては、運転中の蒸気発生器の出口からは通常、気化した作動媒体(冷媒)ガスが出てくる。前記蒸気発生器において、作動媒体の気化に伴って潤滑油が随伴され、作動媒体ガスと潤滑油が油分離装置に入る。しかしながら、システム停止後の機関の温度低下により潤滑油が溶け込んだ作動媒体が生じ、起動の際にそれが蒸発器へ送られると蒸発器内において潤滑油の滞留する量が多くなり、蒸発器における作動媒体の蒸発に寄与する伝熱面積が減少する。
【0011】
ウォーミングアップ時に、蒸発器内の潤滑油は、作動媒体の温度及び圧力が上昇して、作動媒体蒸気となって蒸発器を出るときに随伴されて油分離器へと送られるが、伝熱面積が減少していることにより作動媒体が気化する量が減るため、作動媒体蒸気に随伴される潤滑油量は少ない。従って、暫くの間は潤滑油が蒸発器内に滞留し続ける。そのため、その間の作動媒の蒸発量が制限されることとなり、ウオーミングアップ時間(起動時間)が長くなってしまう。
【0012】
また、熱源の温度が一時低下して運転中に蒸気発生器に供給される加熱媒体(例えば温水)の温度が下がった場合も、蒸発器内において潤滑油の滞留する量が一時的に多くなる。蒸発器内の潤滑油は、加熱媒体の温度が再度上昇すれば、再び作動媒体の温度及び圧力が上昇して、作動媒体蒸気が蒸発器を出るときに随伴されて油分離器へと送られる。しかし、滞留する潤滑油の量が多くなっている蒸発器においては、作動媒体の蒸発に寄与する伝熱面積が減少していることにより作動媒体が気化する量が減るため、作動媒体蒸気に随伴される潤滑油量は少ない。
【0013】
従って、温水温度が再び必要温度まで上昇してきても、暫らくの間は蒸気発生器の伝熱面積が少ない状態が続くため、膨張機が回転軸の軸端において定格出力を出せない状態、即ち低出力の状態が継続される。また、温水温度が少し上がっただけでは、蒸気発生器の蒸発量が少なく、余分に潤滑油を随伴することができないため、低出力が長時間続くことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭60−60209号公報
【特許文献2】特開昭58−32908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、蒸発器内に溜まり易い潤滑油を油分離タンクへ移送して、円滑にかつ迅速に起動可能な熱エネルギ利用装置、乃至は、出力低下を早期に解消可能な熱エネルギ利用装置、及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る熱エネルギ利用装置は、作動媒体を蒸発させる蒸発器、潤滑油を前記作動媒体と分離するための油分離タンク、蒸発した前記作動媒体蒸気を膨張させる膨張機、前記作動媒体蒸気を凝縮させる凝縮器、及び前記作動媒体を循環させる循環ポンプを閉ループ状に順次接続して循環流路が形成され、前記膨張機を前記作動媒体蒸気の膨張により駆動可能に構成して当該膨張機の回転軸から回転駆動力を得る熱エネルギ利用装置である。
【0017】
同時に、この熱エネルギ利用装置が採用した手段は、前記蒸発器に供給する加熱媒体として温水が用いられると共に、前記作動媒体として水よりも沸点が低く前記膨張機へ給油される潤滑油よりも比重の大きい媒体が用いられ、前記油分離タンクに液面計が設けられると共に、この液面計の検知信号に基づいて前記蒸発器に温水を送る温水ポンプまたは温水供給弁を制御する制御装置が設けられてなることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項2に係る熱エネルギ利用装置は、作動媒体を蒸発させる蒸発器、潤滑油を前記作動媒体と分離するための油分離タンク、蒸発した前記作動媒体蒸気を膨張させる膨張機、前記作動媒体蒸気を凝縮させる凝縮器、及び前記作動媒体を循環させる循環ポンプを閉ループ状に順次接続して循環流路が形成され、前記膨張機を前記作動媒体蒸気の膨張により駆動可能に構成して当該膨張機の回転軸から回転駆動力を得る熱エネルギ利用装置である。
【0019】
同時に、この熱エネルギ利用装置が採用した手段は、前記蒸発器に供給する加熱媒体として温水が用いられると共に、前記作動媒体として水よりも沸点が低く前記膨張機へ給油される潤滑油よりも比重の大きい媒体が用いられ、前記油分離タンクに設けられた液面計と、この液面計の検知信号に基づいて前記蒸発器に温水を送る温水ポンプまたは温水供給弁を制御する制御装置であって、前記液面計の検知信号が予め設定された下限値以下となった場合、前記循環ポンプを作動させた状態で、前記温水ポンプを一旦停止または前記温水供給弁を一旦閉止させる一方、前記液面計の検知信号が予め設定された上限値以上となった場合、前記温水ポンプを駆動または前記温水供給弁を開放させる制御装置と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項3に係る熱エネルギ利用装置が採用した手段は、請求項1または2に記載の熱エネルギ利用装置において、前記油分離タンクの内側或いは外側の何れか一方または両方に、電気ヒータ、温水ヒータもしくは蒸気ヒータの何れかが配設されてなることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の請求項4に係る熱エネルギ利用装置が採用した手段は、請求項1乃至3の何れか一つの項に記載の熱エネルギ利用装置において、前記作動媒体がHFC245faからなることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の請求項5に係る熱エネルギ利用装置が採用した手段は、請求項1乃至4の何れか一つの項に記載の熱エネルギ利用装置であって、前記膨張機の回転軸に接続され、当該回転軸からの回転駆動力で駆動する発電機を備えてなることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の請求項6に係る熱エネルギ利用装置の運転方法が採用した手段は、請求項1、3、4または5の何れか一つの項に記載の熱エネルギ利用装置において、前記液面計の検知信号が予め設定された下限値以下である場合、前記蒸発器への温水供給を停止した状態で前記循環ポンプを起動する一方、前記液面計の検知信号が予め設定された上限値以上となった場合、前記蒸発器への温水供給を開始することを特徴とする運転方法である。
【0024】
本発明の請求項7に係る熱エネルギ利用装置の運転方法が採用した手段は、請求項2乃至5に記載の熱エネルギ利用装置において、前記液面計の検知信号が予め設定された下限値以下となった場合、前記循環ポンプを作動させた状態で前記蒸発器への温水供給を一旦停止する一方、前記液面計の検知信号が予め設定された上限値以上となった場合、前記蒸発器への温水供給を再開することを特徴とする運転方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の請求項1に係る熱エネルギ利用装置によれば、特定の関係にある、蒸発器に供給する加熱媒体、作動媒体および膨張機へ給油される潤滑油とを用い、潤滑油を作動媒体と分離するための油分離タンクが高圧側の蒸発器と膨張機の間に配置され、油分離タンクに液面計が設けられると共に、この液面計の検知信号に基づいて蒸発器に温水を送る温水ポンプまたは温水供給弁を制御する制御装置が設けられてなるので、蒸発器内に溜まっている潤滑油を効率的に油分離タンクへ移送できるため、前記熱エネルギ利用装置を円滑にかつ迅速に起動することができる。
【0026】
本発明の請求項2に係る熱エネルギ利用装置によれば、特定の関係にある、蒸発器に供給する加熱媒体、作動媒体及び膨張機へ給油される潤滑油とを用い、潤滑油を作動媒体と分離するための油分離タンクが高圧側の蒸発器と膨張機の間に配置され、油分離タンクに設けられた液面計と、この液面計の検知信号に基づいて蒸発器に温水を送る温水ポンプまたは温水供給弁を制御する制御装置であって、液面計の検知信号が予め設定された下限値以下となった場合、循環ポンプを作動させた状態で、温水ポンプを一旦停止または温水供給弁を一旦閉止させる一方、液面計の検知信号が予め設定された上限値以上となった場合、温水ポンプを駆動または温水供給弁を開放させる制御装置と、を備えている。
【0027】
そのため、油分離タンク内の潤滑油量が減少してきていること、即ち蒸発機内に滞留する潤滑油が多くなってきていることを検知して、蒸発器内の潤滑油を油分離タンクへと移送し、且つ、油分離タンク内の潤滑油量が所定量になったこと、即ち蒸発機内に滞留する潤滑油が減少したことを検知して、作動媒体の蒸発を再開させることができるので、熱エネルギ利用装置の出力低下を早期に解消可能である。
【0028】
また、本発明の請求項3に係る熱エネルギ利用装置によれば、前記油分離タンクの内側或いは外側の何れか一方または両方に、電気ヒータ、温水ヒータもしくは蒸気ヒータの何れかが配設されている。前記油分離タンク内に溜まった作動媒体液は、温度により潤滑油へ溶け込む量が大きく異なり、低温では相当量の作動媒体液が潤滑油に溶け込んでいるが、前記電気ヒータまたは温水ヒータにより分離タンクを昇温すると、前記作動媒体液の潤滑油への溶け込み量が激減し、膨張機への給油を潤滑油リッチにすることができる。
【0029】
更に、本発明の請求項4に係る熱エネルギ利用装置によれば、前記作動媒体がHFC245faからなるので、前記作動媒体が水よりも沸点が低く前記膨張機へ給油される潤滑油よりも比重が大きくなり、温水の温度が低下した際に、前記蒸発器において潤滑油リッチの作動媒体液が蒸発器の上部に集約されるため、その潤滑油リッチの作動媒体液を、油分離タンクに送ることが容易にできる様になる。
【0030】
また更に、本発明の請求項5に係る熱エネルギ利用装置によれば、前記膨張機の回転軸に接続され、当該回転軸からの回転駆動力で駆動する発電機を備えてなるので、熱エネルギ利用装置を円滑にかつ迅速に起動することができる発電装置、或いは出力低下を早期に解消可能な発電装置として使用することができる。
【0031】
そして、本発明の請求項6に係る熱エネルギ利用装置の運転方法によれば、請求項1、3、4または5の何れか一つの項に記載の熱エネルギ利用装置において、前記液面計の検知信号が予め設定された下限値以下となった場合、前記蒸発器への温水供給を停止した状態で前記循環ポンプを起動するので、前記蒸発器の温度と出口圧力が下がり、潤滑油リッチな作動媒体液が蒸発器の出口からあふれ出てくる。つまり、前記作動媒体の比重の方が前記潤滑油より大きいため、前記蒸発器の上方の潤滑油リッチの作動媒体液が油分離タンクにあふれ出ることになる。このあふれ出た潤滑油リッチな作動媒体液を前記油分離タンクで溜め、この油分離タンクの液量が上限値未満に至るまで継続する。
【0032】
一方、前記液面計の検知信号が予め設定された上限値以上となった場合、前記蒸発器への温水供給を開始して熱エネルギ利用装置を起動する。この様な操作により、蒸発器に溜まっていた潤滑油を油分離タンクへ移送可能となり、熱エネルギ利用装置を、円滑にかつ迅速に起動することができるようになる。
【0033】
また、本発明の請求項7に係る熱エネルギ利用装置の運転方法によれば、請求項2乃至5の何れか一つの項に記載の熱エネルギ利用装置において、前記液面計の検知信号が予め設定された下限値以下となった場合、前記循環ポンプを作動させた状態で前記蒸発器への温水供給を一旦停止するので、前記蒸発器の温度と出口圧力が下がり、潤滑油リッチな作動媒体液が蒸発器の出口からあふれ出てくる。つまり、前記作動媒体の比重の方が前記潤滑油より大きいため、前記蒸発器の上方の潤滑油リッチの作動媒体液が油分離タンクにあふれ出ることになる。このあふれ出た潤滑油リッチな作動媒体液を前記油分離タンクで溜め、この油分離タンクの液量が上限値未満に至るまで継続する。
【0034】
一方、前記液面計の検知信号が予め設定された上限値以上となった場合、前記蒸発器への温水供給を再開して通常運転状態に戻す。この様な操作により、蒸発器に溜まっていた潤滑油を油分離タンクへ移送可能となり、蒸発器内における作動媒体液の蒸発に寄与する伝熱面積の減少を早期解消することができるので、熱エネルギ利用装置の出力低下を早期に解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係る熱エネルギ利用装置の模式的系統図を示す。
【図2】本発明の実施の形態に係る油分離タンクのヒータ構成を説明するための図であって、図(a)はタンク内に電気ヒータを配設した模式的断面図、図(b)はタンク外表面に電気ヒータを配設した模式的外形図、図(c)はタンク内に温水もしくは蒸気ヒータを配設した模式的断面図、及び図(d)はタンク外表面に温水もしくは蒸気ヒータを配設した模式的外形図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る制御装置による第1の運転形態(第1実施例)を説明するための制御フローチャートを示す。
【図4】本発明の実施の形態に係る制御装置による第2の運転形態(第2実施例)を説明するための制御フローチャートを示す。
【図5】本発明の実施の形態に係り、温度をパラメータとして潤滑油の作動媒体溶解度と圧力の関係を示す図である。
【図6】従来技術1に係る動力発生機関の運転方法の一実施例を適用した動力発生機関の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施の形態に係る熱エネルギ利用装置及びその運転方法につき、膨張機としてスクリュ膨張機を用いると共に、スクリュ膨張機の回転軸に発電機を接続した態様例を、以下添付図1〜5を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態に係る熱エネルギ利用装置の模式的系統図を示し、図2は本発明の実施の形態に係る油分離タンクのヒータ構成を説明するための図であって、図(a)はタンク内に電気ヒータを配設した模式的断面図、図(b)はタンク外表面に電気ヒータを配設した模式的外形図、図(c)はタンク内に温水もしくは蒸気ヒータを配設した模式的断面図、及び図(d)はタンク外表面に温水もしくは蒸気ヒータを配設した模式的外形図を示す。また、図3は本発明の実施の形態に係る制御装置による第1の運転形態(第1実施例)を説明するための制御フローチャート、図4は本発明の実施の形態に係る制御装置による第2の運転形態(第2実施例)を説明するための制御フローチャート、図5は本発明の実施の形態に係り、温度をパラメータとして潤滑油の作動媒体溶解度と圧力の関係を示す図である。
【0037】
この熱エネルギ利用装置は、作動媒体を蒸発させる蒸発器5、潤滑油を前記作動媒体と分離するための油分離タンク6、蒸発した前記作動媒体蒸気を膨張させるスクリュ膨張機1、前記作動媒体蒸気を凝縮させる凝縮器3、及び前記作動媒体を循環させる循環ポンプ4を、作動媒体循環流路(循環流路)20により閉ループ状に接続し、前記スクリュ膨張機1に発電機2を連結して駆動可能に構成されている。作動媒体循環流路20は、循環ポンプ4の吐出口から蒸発器5及び油分離タンク6を経てスクリュ膨張機1の供給口に至る作動媒体供給流路20aと、スクリュ膨張機1の吐出口から凝縮器3を経て循環ポンプ4の吸込口に至る作動媒体排出流路20bからなる。
【0038】
先ず、本発明の実施の形態に係る熱エネルギ利用装置につき、作動媒体の流れに沿って順次詳細に説明する。
スクリュ膨張機1は、互いに噛み合う雌雄一対のスクリュロータ(図示せず)を備えている。このスクリュロータには、回転軸方向へ延びるロータ軸12が設けられており、膨張機ケーシング11の発電機2側の面を貫通して、発電機2のロータ(図示せず)と連結されている。スクリュ膨張機1には、雌雄一対の前記スクリュロータとそのスクリュロータを収容する膨張機ケーシング11により作動媒体を膨張させる膨張空間が形成されている。
【0039】
スクリュ膨張機1は、スクリュ式以外のロータリー式、スクロール式、ターボ式またはレシプロ式の何れか一つの型式からなる膨張手段と、この膨張手段を収容するケーシングとにより前記作動媒体を膨張させる膨張空間が形成されてなる膨張機でも良い。この様な型式の膨張機は、市販の膨張機を活用することができる。
【0040】
発電機2は、電磁誘導を利用し、図示しないロータと図示しないステータとの相互作用により電気エネルギーを得る装置である。発電機2のロータは、スクリュ膨張機1のケーシング11を貫通して外側に突出した回転軸であるロータ軸12と接続されている。発電機2は、スクリュ膨張機1のロータ軸12が回転駆動することにより、機械的エネルギーを電気エネルギーに変換している。そして、スクリュ膨張機1と発電機2とにより、発電ユニットGが構成されている。
【0041】
図例では、膨張機ケーシング11の外部に発電機2を設けているが、膨張機ケーシング11に対して発電機2のケーシングを延設するように気密的に接続してもよい。これにより、膨張機1からの作動媒体の漏洩を防止することができる様になる。
【0042】
本発明に係る作動媒体は、蒸発器5の一次側に設けられた温水流路23に供給される加熱媒体として温水を用いていることから、水よりも沸点が低い媒体が用いられ、作動媒体の循環し易さを考慮して、出口が上部に設けられている蒸発器5において潤滑油リッチな作動媒体を排出し易くするために、前記膨張機1へ給油される潤滑油よりも比重の大きい媒体が用いられている。特に、可燃性や毒性がない、更にはオゾン破壊係数が0であるという 点 から、HFC245faからなる作動媒体が好ましい。この様な作動媒体には、温度と圧力に応じてタービン油等の潤滑油が溶け込んでいる。
【0043】
スクリュ膨張機1には、油分離タンク6で分離された潤滑油を図示しない軸受、ロータ外周面及び膨張空間に給油するため、油分離タンク6から作動媒体供給流路20aとは別に、給油流路21が接続されている。給油後にスクリュ膨張機1の軸受等から排出された潤滑油は、作動媒体と共にスクリュ膨張機1の排出口から排出され、 凝 縮器3を経て循環ポンプ4に至る作動媒体排出流路20bに送られる。凝縮器3では、スクリュ膨張機1の排出口から作動媒体排出流路20bを経て流入した作動媒体蒸気が、2次側に設けられた冷却水流路22により供給される冷却水との熱交換により冷却されて液化する。
【0044】
循環ポンプ4は、作動媒体排出流路20bにより送流された潤滑油を含む作動媒体液(作動媒体と潤滑油との混合物)を圧送する。循環ポンプ4の吐出口は、ポンプ4により圧送された作動媒体液を蒸発して気化させる蒸発器5と、作動媒体供給流路20aにより接続されている。蒸発器5では、作動媒体供給流路20aを経て蒸発器5の下部より流入した前記作動媒体液は、温水流路23に介設された温水ポンプ13または図示しない温水供給弁により供給される温水と熱交換され、加熱されて気化する。蒸発器5の下流には、蒸発器5の作動媒体蒸気とそれに随伴して蒸発器5の上部より排出される潤滑油の混合物を、作動媒体蒸気と潤滑油とに分離する油分離タンク6が設けられている。蒸発器5の出口は、油分離タンク6の上方部分で作動媒体供給流路20aにより接続されている。
【0045】
油分離タンク6にはヒータ7が設置されている。即ち、このヒータ7は、図2(a)に示す如く油分離タンク6の内側に配設された電気ヒータ7a、または/及び図2(b)に示す如く油分離タンク6の外側に配設された電気ヒータ7aにより構成されている。或いは、このヒータ7は、図2(c)に示す如く油分離タンク6の内側に配設された温水ヒータ7b、または/及び図2(d)に示す如く油分離タンク6の外側に配設された温水ヒータ7bにより構成されている。この温水ヒータ7bは、熱源を蒸気とする蒸気ヒータでも良い。そして、これら電気ヒータ7a、或いは温水もしくは蒸気ヒータ7b等の機器を制御するための制御装置8が設けられている。
【0046】
即ち、電気ヒータ7aは、制御装置8から電源盤14へ送信される起動または停止信号によって加熱開始または停止される一方、温水もしくは蒸気ヒータ7bにおいては、制御装置8から温水もしくは蒸気配管に取り付けられた開閉弁15へ送信される開弁または閉弁信号によって加熱開始または停止される様に構成されている。これらのヒータ7により油分離タンク6乃至はその中で滞留している液が昇温可能となり、後述の如く作動媒体液の潤滑油への溶け込み量が激減して、スクリュ膨張機1への給油を潤滑油リッチにすることができる。
【0047】
従って、油分離タンク6内には、作動媒体蒸気と分離された潤滑油を主体とする油溜り部6aが下方に形成される一方、分離された作動媒体蒸気雰囲気6bが上方に形成される。そのため、油分離タンク6の油溜り部6aは、給油流路21によりスクリュ膨張機1の給油口1aと接続され、作動媒体蒸気雰囲気6bは、作動媒体供給流路20aによりスクリュ膨張機1の作動媒体供給口1bと接続される。
【0048】
更に、本発明の実施の形態に係る熱エネルギ利用装置には、油分離タンク6に、油溜り部6aの下限液位を検知するための下限検知用液面計9、及び油溜り部6aの上限液位を検知するための上限検知用液面計10が設けられると共に、これら上下限検知用液面計9,10の検知信号に基づいて、蒸発器5に温水を送る温水ポンプ13または図示しない温水供給弁を制御する制御装置8が備えられている。
【0049】
尚、下限液位の検知位置は、通常の運転時において膨張機1のロータ軸12の軸端部あるいは同軸12と接続した発電機2での出力低下が問題となること(問題となる程度に蒸発器5に潤滑油が滞留していると判断されること)を判断基準に設定すれば良い。また、上限液位の検知位置は、通常の運転時において膨張機12のロータ軸12の軸端部あるいは同軸12と接続した発電機2での出力が定格出力となることを判断基準に設定すれば良い。
【0050】
[第1実施例]
即ち、図3に示す如く、この熱エネルギ利用装置の起動時には、以下に述べる第1の運転形態に則り制御する制御手段が、制御装置8に収納されている。先ず、運転開始(ステップS0)後、制御装置8から送信される起動信号によって、蒸発器5の温水流路23に介設された温水ポンプ13を起動、または制御装置8から送信される開弁信号によって、温水流路23に介設された図示しない温水供給弁を開弁して、蒸発器5への温水供給を開始する(ステップS1)。
【0051】
そして、油分離タンク6に設けられた下限検知用液面計9が予め設定された下限値以下の信号を検知したとき(ステップS2)、油分離タンク6に配設されたヒータ7が電気ヒータ7aの場合は、制御装置8から電源盤14へ送信される起動信号によって電気ヒータ7aを加熱する一方、ヒータ7が温水もしくは蒸気ヒータ7bの場合は、制御装置8から送信される開弁信号によって、温水もしくは蒸気配管に取り付けられた開閉弁15を開弁して、蒸気ヒータ7bを昇温 する(ステップS3)。
【0052】
次いでまたは同時に、制御装置8から送信される起動信号によって、循環ポンプ4を起動(ステップS4)して作動媒体を循環させる一方、この制御装置8から送信される停止信号によって、蒸発器5の温水流路23に介設された温水ポンプ13を停止、または制御装置8から送信される閉弁信号によって、温水流路23に介設された図示しない温水供給弁を閉弁して、温水供給を停止する(ステップS5)様に構成されている。
【0053】
そして、油分離タンク6に設けられた上限検知用液面計10が予め設定された上限値以上の信号を検知した場合(ステップS6)、制御装置8から送信される起動信号によって、蒸発器5の温水流路23に介設された温水ポンプ13を起動するか、温水流路23に介設された図示しない開閉弁を開弁して、蒸発器5への温水供給を開始(ステップS7)し、定常運転を開始する(ステップS10)。
【0054】
一方、蒸発器5への温水供給が開始(ステップS1)され、下限検知用液面計9が予め設定された下限値を超える信号を検知したとき(ステップS8)は、循環ポンプ4を起動(ステップS9)して作動媒体を循環させ、定常運転を開始(ステップS10)させる様に構成されている。
この熱エネルギ利用装置は、起動運転開始時には上記の如く作動する様に構成されているので、蒸発器5に溜まっていた潤滑油を油分離タンク6へ移送可能となり、円滑かつ迅速に起動可能となる。
【0055】
[第2実施例]
次に、本発明の実施形態に係る熱エネルギ利用装置による別の運転形態を、図4を参照しながら説明する。即ち、この熱エネルギ利用装置の制御装置8には、以下に述べる第2の運転形態に則り制御する制御手段が収納されており、定常運転時には、前記第2の運転形態に則り熱エネルギ利用装置が運転される。第2の運転形態においては、制御装置8によって具現化される作動及び運転方法が第1の運転形態と異なっている。
【0056】
即ち、この熱エネルギ利用装置の定常運転開始(ステップS10)後、油分離タンク6に設けられた下限検知用液面計9が予め設定された下限値以下の信号を検知したとき(ステップS11)、油分離タンク6に配設されたヒータ7が電気ヒータ7aの場合は、制御装置8から電源盤14へ送信される起動信号によって電気ヒータ7aを加熱する一方、ヒータ7が温水もしくは蒸気ヒータ7bの場合は、制御装置8から送信される開弁信号によって、温水もしくは蒸気配管に取り付けられた開閉弁15を開弁して、蒸気ヒータ7bを昇温 する(ステップS12)様に構成されている。
【0057】
次いでまたは同時に、この制御装置8から送信される停止信号によって、蒸発器5の温水流路23に介設された温水ポンプ13を停止、または制御装置8から送信される閉弁信号によって、温水流路23に介設された図示しない温水供給弁を閉弁して、蒸発器5への温水供給を停止する(ステップS13)。またその際、循環ポンプ4の駆動は継続して行われ、作動媒体を循環させる(ステップS14)。
【0058】
一方、油分離タンク6に設けられた上限検知用液面計10が予め設定された上限値以上の信号を検知した場合(ステップS15)、制御装置8から送信される起動信号によって、蒸発器5の温水流路23に介設された温水ポンプ13を起動するか、温水流路23に介設された図示しない開閉弁を開弁して、蒸発器5への温水供給を開始し通常運転状態に戻す(ステップS16)様に構成されている。
【0059】
ここで、上述の「定常運転」とは、熱エネルギ利用装置における起動時の運転(第1の運転形態)以外の定常時の運転を言う。即ち、図3におけるステップS10(定常運転開始)は、図4におけるステップS10(定常運転開始)と同義である。従い、図3の制御フローチャートに係る起動時の運転(第1の運転形態)終了後は、自動的に図4の制御フローチャートに係る定常運転(第2の運転形態)に移行するようにしてもよい。
【0060】
この様な構成をなすことによって、温水供給の停止により蒸発器5内の作動媒体の温度が低下すると共に蒸発器5の出口側の圧力が低下するため、循環ポンプ4によって作動媒体液が蒸発器5へ供給されるのに伴って、蒸発器5の上部に溜まっている潤滑油を油分離タンク6へ移送可能となる。つまり、滞留する潤滑油により作動媒体の気化に寄与する伝熱面積が減少した状態であった蒸発器5において、減少した分の伝熱面積を早期に増加させることができる。これにより減少していた作動媒体蒸気の量が増加し、熱エネルギ利用装置の通常の運転状態(膨張機1乃至これに接続された発電機2の定格出力運転)へ早期に復帰させることができるようになる。
【0061】
次に、以上の構成からなる熱エネルギ利用装置に係る定常時の作動及び定常運転方法について、作動媒体の流れに沿って図4も参照しながら説明する。
スクリュ膨張機1は、油分離タンク6から作動媒体供給流路20aを介して送られた作動媒体蒸気を、図示しないスクリュロータの膨張空間で膨張させた後、作動媒体排出流路20bへ排出する。また、スクリュ膨張機1は、油分離タンク6から給油流路21を介して送られた潤滑油を、図示しないスクリュロータ外周面、ロータ軸を支持する軸受ひいては膨張空間等に供給した後、膨張された作動媒体と共に作動媒体排出口1cから、低圧側の作動媒体排出流路20bへ排出する。
【0062】
本実施の形態において、作動媒体排出口1cから作動媒体排出流路20bへ排出された作動媒体及び潤滑油は、作動媒体が気体状態であり、且つ潤滑油はミスト状(粒状、液体)である混合物となって凝縮器3へ送流される。凝縮器3では、混合物の気体の作動媒体が液化する。そして、凝縮器3から、作動媒体と潤滑油の両方が液体となった混合物が、作動媒体排出流路20bを経て循環ポンプ4に吸引される。循環ポンプ4は、前記液体混合物を昇圧し蒸発器5へ圧送する。
【0063】
蒸発器5では、2次側流路に対して循環ポンプ4により作動媒体供給流路20aを介して圧送された液体混合物が、1次側流路に対して温水配管23に介設された温水ポンプ13により送られた温水と熱交換して昇温する。その結果、前記液体混合物のうち、作動媒体は蒸発して気体状態(蒸気)となるが、潤滑油は蒸発器5に滞留した状態の液状または作動媒体蒸気に随伴した状態のミスト状である。そして、蒸発器5からの作動媒体蒸気と潤滑油の混合物は、作動媒体供給流路20aを介して油分離タンク6へと送られる。
【0064】
油分離タンク6では、この熱エネルギ利用装置の定常運転開始(ステップS10)後、下限検知用液面計9が予め設定された下限値以下の信号を検知したとき(ステップS11)、油分離タンク6に配設されたヒータ7が電気ヒータ7aの場合は、この電気ヒータ7aが、制御装置8から加熱電源14へ送信される起動信号によって加熱開始する一方、ヒータ7が温水もしくは蒸気ヒータ7bの場合は、この温水もしくは蒸気ヒータ7bが、制御装置8から温水もしくは蒸気配管に取り付けられた開閉弁15へ送信される開弁信号によって昇温開始する(ステップS12)。
【0065】
次いでまたは同時に、この制御装置8から送信される停止信号によって、蒸発器5へ温水を送る温水流路23に介設された温水ポンプ13を停止、または制御装置8から送信される閉弁信号によって、温水流路23に介設された図示しない温水供給弁を停止する(ステップS13)と共に、循環ポンプ4の駆動は継続して行われ、作動媒体を循環させる(ステップS14)様に運転する。
【0066】
一方、上限検知用液面計10が予め設定された上限値以上の信号を検知したとき(ステップS15)、制御装置8から送信される起動信号によって、蒸発器5の温水流路23に介設された温水ポンプ13を起動するか、温水流路23に介設された図示しない開閉弁を開弁して、蒸発器5への温水供給を開始し定常運転状態に戻している(ステップS16)。
【0067】
この様な作動及び運転方法をなすことによって、温水供給の停止により蒸発器5内の作動媒体の温度が低下すると共に蒸発器5の出口側の圧力が低下するため、循環ポンプ4によって作動媒体液が蒸発器5へ供給されるのに伴って、蒸発器5の上部に溜まっている潤滑油を油分離タンク6へ移送可能となる。つまり、滞留する潤滑油により作動媒体の気化に寄与する伝熱面積が減少した状態であった蒸発器5において、減少した分の伝熱面積を早期に増加させることができる。これにより減少していた作動媒体蒸気の量が増加し、熱エネルギ利用装置の通常の運転状態(膨張機1乃至これに接続された発電機2の定格出力運転)へ早期に復帰させることができるようになる。
【0068】
油分離タンク6内に溜まった作動媒体蒸気と潤滑油の混合物は、図5に示す如く温度と圧力により潤滑油の作動媒体溶解度(作動媒体の潤滑油への溶解度)が大きく異なり、低温では相当量の作動媒体液が潤滑油に溶け込んでいるが、前記電気ヒータ7aまたは温水もしくは蒸気ヒータ7bにより油分離タンク6を昇温することにより、作動媒体液の潤滑油への溶け込み量が激減し、スクリュ膨張機1への給油を潤滑油リッチにすることができる。
【0069】
その結果、油分離タンク6内には、分離された潤滑油を主体とする油溜り部6aが下方に形成される一方、分離された作動媒体蒸気雰囲気6bが上方に形成される。そして、作動媒体を多少含む潤滑油を、油分離タンク6の油溜り部6aから、給油流路21及び給油口1aを介してスクリュ膨張機1へ供給する一方、作動媒体蒸気を、油分離タンク6の作動媒体蒸気雰囲気6bから、作動媒体供給流路20a及び作動媒体供給口1cを介してスクリュ膨張機1の膨張空間へ供給する。
【0070】
以上説明した通り、本発明の実施形態に係る熱エネルギ利用装置によれば、特定の関係にある、蒸発器に供給する加熱媒体、作動媒体および膨張機へ給油される潤滑油とを用い、潤滑油を作動媒体と分離するための油分離タンクが高圧側の蒸発器と膨張機の間に配置され、前記油分離タンクに設けられた液面計と、この液面計の検知信号に基づいて前記蒸発器に温水を送る温水ポンプまたは温水供給弁を制御する制御装置であって、液面計の検知信号が予め設定された下限値以下となった場合、循環ポンプを作動させた状態で、温水ポンプを一旦停止または温水供給弁を一旦閉止させる一方、液面計の検知信号が予め設定された上限値以上となった場合、温水ポンプを駆動または温水供給弁を開放させる制御装置と、を備えている。
【0071】
その結果、油分離タンク内の潤滑油量が減少してきていること、即ち蒸発機内に滞留する潤滑油が多くなってきていることを検知して、蒸発器内の潤滑油を油分離タンクへと移送し、且つ、油分離タンク内の潤滑油量が所定量になったこと、即ち蒸発機内に滞留する潤滑油が減少したことを検知して、作動媒体の蒸発を再開させることができるので、熱エネルギ利用装置の出力低下を早期に解消可能である。
【0072】
尚、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。上記実施形態では特に記載していないが、本発明の熱エネルギ利用装置においては、膨張機の回転軸に接続される発電機は無くても良い。この場合、熱エネルギ利用装置は、膨張機の回転軸を出力軸とする動力発生装置として好適に利用することができる。この様な動力発生装置は、各種駆動装置の主動力源として利用したり、主動力源で駆動される各種駆動装置において主動力源を補助する補助動力源として利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
S0,S1,S2,・・・・・・,S10:第1の運転形態に係る制御ステップ,
S10,S11,S12,・・・,S17:第2の運転形態に係る制御ステップ,
G:発電ユニット,
1:スクリュ膨張機(膨張機),
1a:給油口, 1b:作動媒体供給口, 1c:作動媒体排出口,
2:発電機,
3:凝縮器, 4:循環ポンプ, 5:蒸発器,
6:油分離タンク, 6a:油溜り部, 6b:作動媒体蒸気雰囲気,
7:ヒータ,
7a:電気ヒータ, 7b:温水もしくは蒸気ヒータ,
8:制御装置,
9:下限検知用液面計, 10:上限検知用液面計,
11:膨張機ケーシング, 12:ロータ軸,
13:温水ポンプ,
14:電源盤, 15:開閉弁,
20:作動媒体循環流路(循環流路),
20a:作動媒体供給流路, 20b:作動媒体排出流路,
21:給油流路, 22:冷却水流路, 23:温水流路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動媒体を蒸発させる蒸発器、潤滑油を前記作動媒体と分離するための油分離タンク、蒸発した前記作動媒体蒸気を膨張させる膨張機、前記作動媒体蒸気を凝縮させる凝縮器、及び前記作動媒体を循環させる循環ポンプを閉ループ状に順次接続して循環流路が形成され、前記膨張機を前記作動媒体蒸気の膨張により駆動可能に構成して当該膨張機の回転軸から回転駆動力を得る熱エネルギ利用装置であって、
前記蒸発器に供給する加熱媒体として温水が用いられると共に、
前記作動媒体として水よりも沸点が低く前記膨張機へ給油される潤滑油よりも比重の大きい媒体が用いられ、
前記油分離タンクに液面計が設けられると共に、この液面計の検知信号に基づいて前記蒸発器に温水を送る温水ポンプまたは温水供給弁を制御する制御装置が設けられてなることを特徴とする熱エネルギ利用装置。
【請求項2】
作動媒体を蒸発させる蒸発器、潤滑油を前記作動媒体と分離するための油分離タンク、蒸発した前記作動媒体蒸気を膨張させる膨張機、前記作動媒体蒸気を凝縮させる凝縮器、及び前記作動媒体を循環させる循環ポンプを閉ループ状に順次接続して循環流路が形成され、前記膨張機を前記作動媒体蒸気の膨張により駆動可能に構成して当該膨張機の回転軸から回転駆動力を得る熱エネルギ利用装置であって、
前記蒸発器に供給する加熱媒体として温水が用いられると共に、
前記作動媒体として水よりも沸点が低く前記膨張機へ給油される潤滑油よりも比重の大きい媒体が用いられ、
前記油分離タンクに設けられた液面計と、
この液面計の検知信号に基づいて前記蒸発器に温水を送る温水ポンプまたは温水供給弁を制御する制御装置であって、前記液面計の検知信号が予め設定された下限値以下となった場合、前記循環ポンプを作動させた状態で、前記温水ポンプを一旦停止または前記温水供給弁を一旦閉止させる一方、前記液面計の検知信号が予め設定された上限値以上となった場合、前記温水ポンプを駆動または前記温水供給弁を開放させる制御装置と、
を備えてなることを特徴とする熱エネルギ利用装置。
【請求項3】
前記油分離タンクの内側或いは外側の何れか一方または両方に、電気ヒータ、温水ヒータもしくは蒸気ヒータの何れかが配設されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の熱エネルギ利用装置。
【請求項4】
前記作動媒体がHFC245faからなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つの項に記載の熱エネルギ利用装置。
【請求項5】
前記膨張機の回転軸に接続され、当該回転軸からの回転駆動力で駆動する発電機を備えてなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つの項に記載の熱エネルギ利用装置。
【請求項6】
前記液面計の検知信号が予め設定された下限値以下である場合、前記蒸発器への温水供給を停止した状態で前記循環ポンプを起動する一方、前記液面計の検知信号が予め設定された上限値以上となった場合、前記蒸発器への温水供給を開始することを特徴とする請求項1、3、4または5の何れか一つの項に記載の熱エネルギ利用装置の運転方法。
【請求項7】
前記液面計の検知信号が予め設定された下限値以下となった場合、前記循環ポンプを作動させた状態で前記蒸発器への温水供給を一旦停止する一方、前記液面計の検知信号が予め設定された上限値以上となった場合、前記蒸発器への温水供給を再開することを特徴とする請求項2乃至5の何れか一つの項に記載の熱エネルギ利用装置の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate