説明

熱交換器

【課題】 伝熱管から管板に熱が伝導することを最小限に抑制し、管板の交換頻度を低減させる。
【解決手段】 一対の管板11間に多数の伝熱管12が、その両端部が一対の管板11にそれぞれ形成された貫通孔11aに挿入されて並設されるとともに、該伝熱管12の両端部外周面と、管板11の貫通孔11a内周面との間に、これらの伝熱管12および管板11に接合された管状のカラー13が設けられ、伝熱管12の両端部の少なくとも一方の内側には、インサート管14の一端部が挿入され、該一端部の外周面には、カラー13の内周面の全域に伝熱管12を介して対向するように断熱材14aが設けられ、伝熱管12およびインサート管14の内部に高温流体Hを通過させながら、一対の管板11同士の間に低温流体Lを通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の管板間に多数の伝熱管が並設された熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の熱交換器としては、例えば下記特許文献1および2に示されるような、一対の管板間に多数の伝熱管が、その両端部が前記一対の管板にそれぞれ形成された貫通孔に挿入されて並設された構成が知られている。この熱交換器は、例えば汚泥焼却設備やガスタービン設備等に設けられ、従来から、前記伝熱管の内部に高温流体を通過させながら、前記一対の管板同士の間に低温流体を通過させて用いられている。
【0003】
このような熱交換器においては、高温の前記伝熱管から低温の前記管板に熱が伝導されて、該管板が熱劣化し易いという問題があった。
このような問題を解決するための手段として、従来から、前記伝熱管の外周面のうち、前記管板の貫通孔内周面と対向する部分と、該管板の貫通孔内周面との間に、管状のカラーを、その内周面を伝熱管の外周面と非接触にした状態で、伝熱管および管板に接合して設けることがなされている。なお、カラーは、その一方の端部と伝熱管の外周面とが接合され、かつカラーの外周面と前記管板の表面における前記貫通孔の開口周縁部とが接合されて設けられている。
これにより、伝熱管から管板への伝熱経路の最小限化が図られ、管板が高温となることを抑制できるようになっている。
【特許文献1】特開平9−42889号公報
【特許文献2】実開平5−34475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが前記従来の熱交換器では、前記カラーを設け、その内周面と伝熱管の外周面とを非接触にすることにより、伝熱管から管板への伝熱経路の最小限化を図ったとしても、前記のように、カラーは伝熱管および管板に接合されているので、各接合部を介して管板に伝熱管の熱が伝導すること自体に変わりはなく、管板の熱劣化を効果的に抑制することはできなかった。このため、一般に管板は定期的に交換する必要があった。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたもので、伝熱管から管板に熱が伝導することを最小限に抑制し、管板の交換頻度を低減させることができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の熱交換器は、一対の管板間に多数の伝熱管が、その両端部が前記一対の管板にそれぞれ形成された貫通孔に挿入されて並設されるとともに、該伝熱管の両端部外周面と、前記管板の貫通孔内周面との間に、これらの伝熱管および管板に接合された管状のカラーが設けられ、前記伝熱管の両端部の少なくとも一方の内側には、インサート管の一端部が挿入され、該一端部の外周面には、前記カラーの内周面の全域に前記伝熱管を介して対向するように断熱材が設けられたことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、前記断熱材が、伝熱管を介してカラーの内周面の全域に対向しているので、この熱交換器が、前記伝熱管の内部に高温流体を通過させながら、前記一対の管板同士の間に低温流体を通過させて用いられると、伝熱管の外周面のうち、内側に断熱材が位置されていない部分、つまり高温流体の熱が前記断熱材を介さずに直接伝導された部分に、カラーの内周面が対向することを回避することが可能になる。したがって、伝熱管からカラーに伝導する熱量が低減され、カラーの温度が高温になることを抑制することが可能になり、このカラーに接合された管板が高温になることを抑えることができ、この管板の長寿命化を図ることができるとともに、その交換頻度を低減させることができる。
【0008】
さらに、この断熱材が、伝熱管ではなくインサート管に設けられているので、前記断熱材が熱により劣化する等して、これを交換する必要が生じた場合に、その交換時間を最小限に抑制することができる。すなわち、その一端部外周面に新しい断熱材が設けられた他のインサート管を予め用意しておくことにより、交換時に、熱劣化した断熱材を有するインサート管ごと前記伝熱管から取り外した後に、前記他のインサート管を前記伝熱管の内側に挿入して取り付けるようにすることが可能になる。
【0009】
また、前記インサート管の一端部の外周面には、径方向外方へ突出した鍔部が設けられ、前記インサート管は、前記伝熱管の内側に、前記鍔部の端面と前記伝熱管の端部開口面とが当接された状態で挿入されてもよい。
この場合、伝熱管に対するインサート管の管軸方向における位置決めを容易かつ高精度にすることが可能になり、前記インサート管の取り付け時間をかけることなく前記の作用効果を容易に実現することができるとともに、前記インサート管の交換に要する時間を最小限に抑えることができる。
【0010】
さらに、前記インサート管の一端における外周面には、径方向外方へ突出して前記断熱材を支持するストッパー部材が設けられてもよい。
この場合、熱交換器の使用時およびインサート管の交換時に、前記断熱材がインサート管から外れて、前記伝熱管の内側に嵌り込むことを回避することが可能になり、前記インサート管の交換に要する時間を最小限に抑えることができるとともに、伝熱管に高温流体が流れないあるいは流れ難くなるといった不具合が発生することを回避することができる。
【発明の効果】
【0011】
伝熱管から管板に熱が伝導することを最小限に抑制し、管板の交換頻度を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1および図2に基づいて本発明の一実施形態を説明する。なお、図2は、図1の熱交換器10において、二点鎖線で囲まれた伝熱管12等の上側部分を示すものである。以下、この上側部分の詳細を説明する。
本実施形態の熱交換器10では、一対の管板11間に多数の伝熱管12が、その両端部が一対の管板11、11にそれぞれ形成された貫通孔11aに挿入されて並設されている。なお、この管板11は例えばステンレス鋼により形成されている。
【0013】
さらに、伝熱管12の両端部外周面と、管板11の貫通孔11a内周面との間に、これらの伝熱管12および管板11に接合された管状のカラー13が設けられている。このカラー13は、管板11の前記裏面11eから突出し、かつ伝熱管12の端部開口面12aよりも管板11側にその上端部が位置されるとともに、その内周面が伝熱管12の外周面と非接触とされ、かつ外周面が管板11の貫通孔11aの内周面と接触された状態で、伝熱管12および管板11に溶接により接合されて設けられている。すなわち、カラー13は、その前記上端部と伝熱管12の外周面とが溶接接合され、かつカラー13の外周面と管板11の前記裏面11eにおける貫通孔11aの開口周縁部とが溶接接合されて設けられている。なお、カラー13はステンレス鋼により形成されている。
【0014】
そして、本実施形態では、伝熱管12の両端部の内側には、各端部開口面12aからその内部に向けて、インサート管14の下端部が挿入されている。伝熱管12の内部に挿入されるインサート管14の下端部の外周面には、その管軸方向における全長に亙って、断熱材14aが設けられている。この断熱材14aは、例えばセラミックバルクフェルトにより形成されるとともに、その管軸方向における大きさは、カラー13の管軸方向における大きさよりも大きくされている。
【0015】
また、インサート管14の下端部外周面における上端には、径方向外方へ突出した鍔部14bが設けられている。この鍔部14bは平面視円環状とされ、その内側にインサート管14の下端部が挿入されている。そして、鍔部14bの、インサート管14の下端(伝熱管12の管軸方向内方端)側に向く一方の端面と反対側の他方の端面と、このインサート管14の外周面とが接合されている。また、断熱材14aの上端と、鍔部14bの前記一方の端面とが当接されている。
【0016】
さらに、インサート管14の下端外周面には、径方向外方へ突出して断熱材14aを下方から支持するストッパー部材14cが設けられている。このストッパー部材14cの、インサート管14の外周面から径方向外方へ向けた突出量は、断熱材14aの径方向における厚さ以下とされ、ストッパー部材14cおよび断熱材14aの外径は、伝熱管12の内径以下とされている。また、鍔部14bの外径は、伝熱管12の内径より大きく外径以下とされている。
【0017】
以上の構成において、インサート管14が、その下端部が伝熱管12の端部開口面12aからその内部に向けて挿入されて、伝熱管12に配設されると、鍔部14bの前記一方の端面と伝熱管12の端部開口面12aとが当接されるようになっている。また、カラー13の内周面の全域に伝熱管12を介して断熱材14aが対向する構成とされている。本実施形態では、カラー13の前記上端部と、伝熱管12の外周面とが溶接接合された部分も、伝熱管12を介して断熱材14aと対向している。さらに、断熱材14aの前記下端が、カラー13の下端よりも下方に位置されている。
【0018】
そして、伝熱管12およびインサート管14の内部に高温流体Hを通過させながら、一対の管板11同士の間に低温流体Lを通過させるようになっている。
なお、図1に示す熱交換器10において、伝熱管12等の下側部分は、前述した上側部分とは上下の勝手が反対とされている。
また、前記一対の管板11のうち高温側の管板11、すなわち伝熱管12において、管板11同士の間を通過する低温流体Lにより冷却される前の高温流体Hが内部に位置される一方の端部が挿入される管板11の上面11e側には、断熱材11bが配設されている。
【0019】
以上説明したように本実施形態による熱交換器10によれば、断熱材14aが、伝熱管12を介してカラー13の内周面の全域に対向しているので、伝熱管12の外周面のうち、内側に断熱材14aが位置されていない部分、つまり高温流体Hの熱が断熱材14aを介さずに直接伝導された部分に、カラー13の内周面が対向することを回避することが可能になる。したがって、伝熱管12からカラー13に伝導する熱量が低減され、カラー13の温度が高温になることを抑制することが可能になり、このカラー13に接合および接触された管板11が高温になることを抑えることができ、この管板11の長寿命化を図ることができるとともに、その交換頻度を低減させることができる。
【0020】
さらに、この断熱材14aが、伝熱管12ではなくインサート管14に設けられているので、断熱材14aが熱により劣化する等して、これを交換する必要が生じた場合に、その交換時間を最小限に抑制することができる。すなわち、その下端部外周面に新しい断熱材14aが設けられた他のインサート管14を予め用意しておくことにより、交換時に、熱劣化した断熱材14aを有するインサート管14ごと伝熱管12から取り外した後に、前記他のインサート管14を伝熱管12の内側に挿入して取り付けるようにすることが可能になる。
【0021】
また、インサート管14の下端部外周面における上端には、径方向外方へ突出した鍔部14bが設けられ、該鍔部14bの前記一方の端面と伝熱管12の端部開口面12aとが当接されているので、伝熱管12に対するインサート管14の管軸方向における位置決めを容易かつ高精度にすることが可能になり、インサート管14の取り付け時間をかけることなく前記の作用効果を容易に実現することができるとともに、インサート管14の交換に要する時間を最小限に抑制することができる。
【0022】
さらに、インサート管14の下端外周面には、径方向外方へ突出して断熱材14aを下方から支持するストッパー部材14cが設けられているので、熱交換器10の使用時およびインサート管14の交換時に、断熱材14aがインサート管14から外れて、伝熱管12の内側に嵌り込むことを回避することが可能になり、インサート管14の交換に要する時間を最小限に抑制することができるとともに、伝熱管12に高温流体Hが流れないあるいは流れ難くなるといった不具合が発生することを回避することができる。
【0023】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、前記実施形態では、一対の管板11の互いに対向する表面11dと反対側の裏面11eから突出した位置に、伝熱管12の端部開口面12aが位置された構成を示したが、これに代えて、一対の管板11の前記裏面11eに、伝熱管12の端部開口面12aを位置させてもよい。
【0024】
また、前記実施形態では、インサート管14の下端部外周面における上端に、鍔部14bを設けた構成を示したが、該鍔部14bを設けなくてもよい。
さらに、インサート管14の下端外周面に、径方向外方へ突出して断熱材14aを下方から支持するストッパー部材14cを設けた構成を示したが、該ストッパー部材14cを設けない構成においても適用可能である。
さらにまた、前記実施形態のように、伝熱管12等を縦向きにした熱交換器10に代えて、伝熱管12等を横向きにした構成においても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
伝熱管から管板に熱が伝導することを最小限に抑制し、管板の交換頻度を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態として示した熱交換器の要部概略断面図である。
【図2】図1の熱交換器において、A部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 熱交換器
11 管板
11a 貫通孔
12 伝熱管
12a 伝熱管の端部開口面
13 カラー
14 インサート管
14a 断熱材
14b 鍔部
14c ストッパー部材
H 高温流体
L 低温流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の管板間に多数の伝熱管が、その両端部が前記一対の管板にそれぞれ形成された貫通孔に挿入されて並設されるとともに、該伝熱管の両端部外周面と、前記管板の貫通孔内周面との間に、これらの伝熱管および管板に接合された管状のカラーが設けられ、
前記伝熱管の両端部の少なくとも一方の内側には、インサート管の一端部が挿入され、該一端部の外周面には、前記カラーの内周面の全域に前記伝熱管を介して対向するように断熱材が設けられたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載の熱交換器において、
前記インサート管の一端部の外周面には、径方向外方へ突出した鍔部が設けられ、前記インサート管は、前記伝熱管の内側に、前記鍔部の端面と前記伝熱管の端部開口面とが当接された状態で挿入されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器において、
前記インサート管の一端における外周面には、径方向外方へ突出して前記断熱材を支持するストッパー部材が設けられていることを特徴とする熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−329585(P2006−329585A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157474(P2005−157474)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】