説明

熱交換器

【課題】化成処理や下塗り塗膜を施さないアルミニウム又はアルミニウム合金材をフィンの基材とする場合においても、耐食性、親水性に優れたフィン材を有する熱交換器を提供する。
【解決手段】アルミニウム材からなるフィンを有する熱交換器であって、前記フィンの表面には、親水化処理剤により皮膜が形成されており、前記親水化処理剤は、a) 親水性ポリマー、b)下記式(I)で示される金属アルコキシド化合物及び下記式(II)で示される金属アルコキシド化合物から選ばれる少なくともいずれかを含有することを特徴とし、好ましくは前記親水化処理剤が、a)の親水性ポリマーとの結合を生起する触媒、さらにd)コロイダルシリカを含有することを特徴とする。
Z−(OR94 (I)
Al−(OR93 (II)
(ZはSi、Ti又はZrを表す。R9はアルキル基又はアリール基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関し、詳細には、特定の親水化処理剤組成物を使用して製造された、表面が親水化され、耐食性にも優れたフィン材を有する熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機の熱交換器用のフィンの基材としては、軽量性、加工性、熱伝導性に優れたアルミニウム又はアルミニウム合金に化成処理を施したものが一般に使用されている。
空調機の熱交換器は冷房時に発生する凝縮水が水滴となってフィン間に水のブリッジを形成し、空気の通風路を狭めるため通風抵抗が大きくなって電力の損失、騒音の発生、水滴の飛散などの不具合が発生するといった問題がある。かかる現象を防止する方策として、例えば、アルミニウム製フィン材(以下、「フィン材」という)の表面を親水化処理して水滴及び水滴によるブリッジの形成を防止することが行われている。
【0003】
親水化処理方法としては、例えば、(1)アルミニウムの表面処理法として知られているベーマイト処理方法;(2)一般式 mSiO2/nNa2Oで示される水ガラスを塗布する方法(例えば、特公昭55−1347号公報、特開昭58−126989号公報など参照);(3)有機樹脂にシリカ、水ガラス、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、チタニアなどを混合した塗料又はこれらの塗料に界面活性剤を併用した塗料を塗布する方法(例えば、特公昭57−46000号公報、特公昭59−8372号公報、特公昭62−61078号公報、特開昭59−229197号公報、特開昭61−225044号公報など参照);(4)有機−無機(シリカ)複合体樹脂と界面活性剤よりなる塗料を塗布する方法(特開昭59−170170号公報参照);(5)ポリビニルアルコールと特定の水溶性ポリマーと水溶性架橋剤とを組合せて用いる方法(特開平3−26381号公報、特開平1−299877号公報参照);(6)特定の親水性モノマーからなる親水性重合体部分と疎水性重合体部分とからなるブロック共重合体と、金属キレート型架橋剤とを組合せて用いる方法(特開平2−107678号公報、特開平2−202967号公報参照);(7)ポリアクリルアミド系樹脂を用いる方法(特開平1−104667号公報、特開平1−270977号公報参照);(8)ポリアクリル酸ポリマーなどの高分子と、この高分子と水素結合によるポリマーコンプレックスを形成し得るポリエチレンオキサイドやポリビニルピロリドンなどの高分子とを組合せて用いる方法(特開平6−322292号公報参)などが挙げられ、これら方法の中の一部は既に実用化されている。
【0004】
しかしながら、これらの方法で得られる親水化処理皮膜を形成したフィン材は、皮膜が親水性を有することもあって、強い腐食環境下に置かれていると、数ケ月程度で腐食されてしまうといった問題があった。
この問題を解決する方法として、例えば、基材であるアルミニウム又はアルミニウム合金材に化成処理を施す方法が特許文献1に、フィン材にハイドロタルサイト系固溶体及び皮膜形成樹脂による耐食性に優れる下塗り塗膜を形成し、その上に親水化処理剤を塗布して親水性塗膜を形成する方法が特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特公平6−43579号公報
【特許文献2】特開2001−208497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載の技術では、十分に満足できる親水性および耐食性が得られなかった。
従って、本発明の目的は、化成処理や下塗り塗膜を施さないアルミニウム又はアルミニウム合金材をフィンの基材とする場合においても、耐食性、親水性に優れたフィン材を有する熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、親水性グラフトポリマーの特性に着眼し研究を進めた結果、本発明者らは、親水性ポリマーと金属アルコキシドを加水分解、縮重合することにより形成された架橋構造とを備えた表面層が、親水性、耐食性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)アルミニウム材からなるフィンを有する熱交換器であって、前記フィンの表面には、親水化処理剤により皮膜が形成されており、前記親水化処理剤は、a) 親水性ポリマー、b)下記式(I)で示される金属アルコキシド化合物及び下記式(II)で示される金属アルコキシド化合物から選ばれる少なくともいずれかを含有することを特徴とする熱交換器。
【0008】
Z−(OR94 (I)
Al−(OR93 (II)
【0009】
(ZはSi、Ti又はZrを表す。R9はアルキル基又はアリール基を表す。)
【0010】
(2)前記親水化処理剤が、a)の親水性ポリマーとの結合を生起する触媒を含有する前記(1)に記載の熱交換器。
(3)前記親水化処理剤が、さらにd)コロイダルシリカを含有する前記(1)に記載の熱交換器。
(4)a)の親水性ポリマーが、下記一般式(III)及び(IV)から選ばれる少なくともいずれかで表される前記(1)に記載の熱交換器。
【0011】
【化1】

【0012】
式(III)および(IV)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、Xは反応性基(カルボキシル基、その塩、無水カルボン酸基、アミノ、ヒドロキシル、エポキシ基、メチロール、メルカプト、イソシアナート、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和二重結合、エステル結合、テトラゾール基)を表し、AおよびL、L,Lは、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH2、−CON(R2、−COR、−OH、−CO2M、−SO3M、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rは炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表し、Bは式(V)を表す。
【0013】
【化2】

【0014】
式(V)中、R1、R2、L及びYは式(III)および(IV)中のものと同じ。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、親水性ポリマーが、金属アルコキシドを加水分解、縮重合することにより形成された架橋構造を有しており、該親水性ポリマーは、末端で化学結合しているか、または、架橋構造物に化学結合した主鎖に親水性ポリマーが結合しているグラフトポリマー構造を有しているため、親水性ポリマー鎖の運動性が非常に高く、親水性に優れた表面を提供できる。
また、金属アルコキシドを加水分解、縮重合した架橋構造は、架橋密度の高い硬化膜であり、強度に優れた耐久性の良い皮膜を形成し、吸水性および膨潤性の少ない親水層となり、これにより、本発明の熱交換器は、防錆性および温度サイクル特性に優れ、長期間安定に使用可能となる。
さらに本発明では、その親水化処理剤に触媒を使用する場合、親水性層皮膜形成するための乾燥温度を低く設定することが可能であり、熱変形を抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明について詳細に説明する。本発明の熱交換器は、アルミニウム材からなるフィンを有し、前記フィンの表面に、親水性ポリマー鎖を有し、且つ、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシドを加水分解、重縮合して形成された架橋構造を有する親水性被膜(親水性層または親水層ともいう)を備えるものであるが、このような架橋構造を有する親水性層は、後に詳述する金属アルコキシド化合物と、親水性グラフト鎖を形成しうる親水性の官能基を有する化合物とを用いて、適宜、形成することができる。金属アルコキシドのなかでも、反応性、入手の容易性からSiのアルコキシドが好ましく、具体的には、シランカップリング剤に用いる化合物を好適に使用することができる。
【0017】
前記したような金属アルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を、本発明では以下、適宜、ゾルゲル架橋構造と称する。このようなポリマー鎖の片末端が固定されずポリマー鎖の運動性が大きい親水性層は、例えば、(A)シランカップリング基等の反応性基を末端に有する一般式(III)で表される高分子化合物、または、該反応性基を幹ポリマーの側鎖として有する一般式(IV)で表される高分子化合物と、(B)加水分解性の金属アルコキシド化合物とを含有する親水性塗布液組成物(親水化処理剤)を調製し、それを塗布、乾燥して表面親水性層を形成することにより容易に形成し得る。以下に、この好ましい態様である親水性層を形成するための親水性塗布液組成物に含まれる各成分について説明する。
【0018】
〔親水性ポリマー〕
本発明に使用される親水性ポリマーは、親水性基を有し、且つSi、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物と、触媒の作用等により結合を生じる基を有するポリマーである。親水性基としては、好ましくはカルボキシ基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、スルホン酸基、スルホン酸基のアルカリ金属塩、ヒドロキシ基、アミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基等の官能基が挙げられる。これらの基は、ポリマー中のどの位置に存在しても良い。ポリマー主鎖より直接、または連結基を介し結合しているか、ポリマー側鎖やグラフト側鎖中に結合しており、複数個が存在するポリマー構造が好ましい。金属アルコキシド化合物と、触媒の作用等により結合を生じる基としては、カルボキシル基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、無水カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、メチロール基、メルカプト基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和基、エステル基、テトラゾール基などの反応性基が挙げられる。また親水性基、および金属アルコキシド化合物と触媒の作用等により結合を生じる基を有するポリマー構造としては、エチレン性不飽和基(例えばアクリレート基、メタクリレート基、イタコン酸基、クロトン酸基、桂皮酸基、スチレン基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基など)がビニル重合したポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミック酸などのような縮重合したポリマー、ポリウレタンなどのような付加重合したポリマーの他、セルロース、アミロース、キトサンなどの天然物環状ポリマー構造を好ましく挙げることができる。具体的には一般式(III)、(IV)で表される構造を挙げられる。
【0019】
【化3】

【0020】
式(III)および(IV)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、Xは反応性基(カルボキシル基、その塩、無水カルボン酸基、アミノ、ヒドロキシル、エポキシ基、メチロール、メルカプト、イソシアナート、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和二重結合、エステル結合、テトラゾール基)を表し、AおよびL、L,Lは、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH2、−CON(R72、−COR、−OH、−CO2M、−SO3M、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rは炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表し、Bは式(V)を表す。
【0021】
【化4】

【0022】
式(V)中、R1、R2、L及びYは式(III)および(IV)中のものと同じ。
【0023】
本発明で用いられる親水性ポリマーは、反応性基と親水性基を有する。反応性基は、主鎖の一つの末端のみに有する場合や、主鎖に複数個有する場合などがある。
「反応性基」は、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物に反応して化学結合を形成できる官能基を意味する。また、反応性基同士が化学結合を形成してもよい。親水性ポリマーは、水溶性であることが好ましく、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と反応することにより水不溶性になることが好ましい。
化学結合は、通常の意味と同様に、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合を含む。化学結合は、共有結合であることが好ましい。
反応性基は、一般には、ポリマーの架橋剤に含まれる反応性基と同様であり、熱または光により架橋を形成できる化合物である。架橋剤について、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載がある。
【0024】
反応性基の例は、カルボキシル(HOOC−)、その塩(MOOC−、Mはカチオン)、無水カルボン酸基(例えば、無水コハク酸、無水フタル酸または無水マレイン酸から誘導される一価の基)、アミノ(HN−)、ヒドロキシル(HO−)、エポキシ基(例、グリシジル基)、メチロール(HO−CH−)、メルカプト(HS−)、イソシアナート(OCN−)、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和二重結合、エステル結合、テトラゾール基を含む。反応性基としては、アルコキシシリル基が最も好ましい。片末端には、2以上の反応性基を有していてもよい。2以上の反応性基は、互いに異なっていてもよい。
【0025】
親水性ポリマーの繰り返し単位と反応性基との間や、親水性ポリマーの繰り返し単位と主鎖に連結基が介在していることが好ましい。連結基AおよびL、L,Lは、それぞれ独立に単結合または、−O−、−S−、−CO−、−NH−、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、およびそれらの組み合わせから選ばれることが好ましい。連結基は、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−または−S−または−CO−または−NH−を含む組み合わせであることが好ましい。
【0026】
(末端に反応性基を有する親水性ポリマー(III))
片末端に反応性基を有する親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter (Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基(例、カルボキシル)を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
片末端に反応性基を有する親水性ポリマーの質量平均分子量は、100万以下が好ましく、1000乃至100万がさらに好ましく、2000乃至10万が最も好ましい。
【0027】
この一般式(III)で表される高分子化合物は、末端に反応性基を有する親水性ポリマーである。上記一般式(III)において、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R1、R2は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0028】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0029】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12まての分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0030】
AおよびLは単結合又は有機連結基を表す。ここで、AおよびLが有機連結基を表す場合、AおよびLは非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0031】
【化5】

【0032】
また、Yは−NHCOR、−CONH2、−CON(R2、−COR、−OH、−CO2M、−SO3M、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rは、炭素数1〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。また、−CON(R2のように複数のRを有する場合、R同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R1、R2がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0033】
としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。Yとしては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−COOH、−SO3NMe4+、モルホリル基等が好ましい。
【0034】
本発明に好適に用い得るa)親水性ポリマーの具体例(例示化合物1〜例示化合物38)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
上記に例示した親水性ポリマーは、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0040】
【化10】

【0041】
上記式(i)及び(ii)において、A、R1〜R2、L、Yは、上記式(III)と同義である。また、これらの化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
【0042】
(複数個反応性基を有する親水性ポリマー(IV))
上記式(IV)で表される反応性基を複数個有する親水性ポリマーは、金属アルコキシドと反応し得る官能基を有する幹ポリマーに親水性ポリマー側鎖を導入してなる親水性グラフトポリマーを用いることができる。
上記式(IV)において、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、上記式(III)のR1、R2と同様の置換基を表す。L2、L3は、上記式(III)のL1と同義である。Bは、上記式(V)で表され、式(V)中の、R1、R2、L及びYは式(III)および(IV)中のものと同じである。Xは上記式(III)と同義である。
【0043】
この親水性グラフトポリマーは、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いて作成することができる。具体的には、一般的なグラフト重合体の合成方法は、“グラフト重合とその応用”井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、および“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995、に記載されており、これらを適用することができる。
【0044】
グラフト重合体の合成方法としては、基本的に1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)という3つの方法に分けられる。これらの3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に用いる親水性グラフトポリマーを作成することができるが、特に製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。
【0045】
マクロモノマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄他著“マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。本発明に使用されるグラフトポリマーは、まず、前記の方法により合成した親水性のマクロモノマー(親水性ポリマー側鎖の前駆体に相当する)と架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーとを共重合することにより、合成することができる。
【0046】
(親水性マクロモノマー)
本発明で使用される親水性マクロモノマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸、およびその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基もしくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖もしくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。これらのマクロモノマーのうち有用な高分子の重量平均分子量(以下、単に分子量と称する)は400〜10万の範囲であり、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。分子量が400以下では有効な親水性を得がたく、また10万以上では主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が低くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0047】
親水性マクロモノマーと共重合可能でかつ架橋剤と反応し得る官能基(以下、適宜、反応性官能基と称する)を有するモノマーの反応性官能基としては、カルボキシル基あるいはその塩、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、グリシジルなどのエポキシ基、メチール基、(ブロック)イソシアネート基、シランカップリング剤等が挙げられる。一般なモノマーとしては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊〔1981〕、「紫外線硬化システム」加藤清視著、総合技術センター刊〔1989〕、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」加藤清視著、高分子刊行会〔1985〕、「新・感光性樹脂の実際技術」赤松清著、シーエムシー刊行(102−145頁)〔1987〕等に記載されているモノマーが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ、アミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ、アミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、下記式(1)で表される如きフェノール性水酸基含有モノマー、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、N−メチロールメタクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、また、下記式(2)で例示されるようなブロックイソシアネートモノマー等のブロックイソシアネートモノマー、ビニルアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランなどが挙げられる。
【0048】
【化11】

【0049】
これらのグラフトポリマーとしては、重量平均分子量が100万以下のものが好ましく用いられ、分子量1000〜100万、さらに好ましくは2万〜10万の範囲のものである。分子量が100万をこえるものは、親水性被膜形成用塗布液を調製する際に溶媒へ溶解性が悪化したり、塗布液粘度が高くなり、均一な被膜を形成し難いなどハンドリング性に問題がでる懸念があり、好ましくない。
【0050】
上記、親水性ポリマーは、式中Yで表される親水性を発現する親水性官能基を有しており、この官能基の密度が高いほど表面親水性が高くなり好ましい。親水性官能基密度は、親水性ポリマー1g当たりの官能基モル数で表すことができ、1〜30meq/gが好まく、2〜20meq/gがより好ましく、3〜15meq/gが最も好ましい。
【0051】
上記、親水性ポリマーは、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。有機成分である親水性ポリマーは、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマーの粘度が0.1〜100cPs(5%水溶液、25℃測定)、好ましくは0.5〜70cPs、さらに好ましくは1〜50cPsの範囲にあると、良好な膜物性を与える。
【0052】
(金属アルコキシド)
本発明で用いられる金属アルコキシドは、その構造中に加水分解して重縮合可能な官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、金属アルコキシドどうしが重縮合することにより架橋構造を有する強固な架橋皮膜を形成し、さらに、前記親水性ポリマーとも化学結合する。本発明に用いる金属アルコキシドは一般式(I)および(II)の少なくともいずれかで表され、式中、R9はアルキル基又はアリール基を表し、ZはSi、Ti又はZrを表す。R9がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。
【0053】
Z−(OR94 (I)
Al−(OR93 (II)
【0054】
(ZはSi、Ti又はZrを表す。R9はアルキル基又はアリール基を表す。)
【0055】
以下に、一般式(I)で表される加水分解性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。ZがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、等を挙げることができる。
また、ZがTiである場合、即ち、加水分解性化合物中にチタンを含むものとしては、例えば、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、等を挙げることができる。ZがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
【0056】
また、一般式(II)で表される加水分解性化合物の具体例としては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、トリイソプロポキシアルミネート等を挙げることができる。
【0057】
本発明では、皮膜強度を改善するためなどに、下記式(VI)で示す金属アルコキシドを併用してもよい、
【0058】
(Rm−Z−(OR4−m (VI)
【0059】
8は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Z,R9は上記式(I)と同じである。mは1〜2の整数を表す。R8がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。化合物(VI)の具体例としては、トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート、および、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネート等を挙げることができる。
【0060】
〔触媒〕
本発明の親水性層の形成においては、親水化処理剤に、前記式(I)または前記式(II)で示される、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起する触媒等を使用できる。触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などの酸性を示す化合物、あるいは、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などの塩基性化合物が用いられるが、金属錯体からなるルイス酸触媒を好ましく使用できる。特に好ましい触媒は、金属錯体触媒であり、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,St,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0061】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシー4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0062】
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0063】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、アセチルアセトン、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0064】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0065】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol-Gel.Sci.and Tec. 16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0066】
〔無機微粒子〕
本発明の熱交換器の製造に用いる親水化処理剤は得られる親水層の親水性の向上や、皮膜のひび割れ防止、膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、親水層中に安定に分散して、親水層の膜強度を十分に保持し、耐久性の高い親水性に優れる親水性部材を形成することができる。
上述したような無機微粒子の中で、特にコロイダルシリカ分散物が好ましく、市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、親水層の全固形分に対して、80質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0067】
〔その他の成分〕
以下に、本発明の熱交換器のフィン材の表面に親水性被膜を形成するため親水化処理剤に、必要に応じて用いることのできる種々の添加剤について述べる。
【0068】
1)界面活性剤
本発明の熱交換器に用いる親水化処理剤には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0069】
2)酸化防止剤
本発明の熱交換器のフィン材表面に形成された親水性層の安定性向上のため、親水化処理剤(親水性層形成用塗布液)に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0070】
3)溶剤
本発明の熱交換器のフィン材表面への親水性層形成時に、フィン材に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水化処理剤(親水性層形成用塗布液)に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は親水性部材形成時の塗布液全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0071】
4)高分子化合物
本発明の熱交換器のフィン材表面に形成された親水性層の膜物性を調整するため、該親水性層の親水性を阻害しない範囲で、親水化処理剤(親水性層形成用塗布液)に、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0072】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
【0073】
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0074】
〔表面自由エネルギー〕
本発明の熱交換器のフィン材表面に形成された親水性層表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10°以下、さらには5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
【0075】
このような方法で測定した表面自由エネルギーが、70mN/m〜95mN/m、好ましくは72mN/m〜93mN/m、さらに好ましくは75mN/m〜90mN/mの範囲にある親水層が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
【0076】
本発明の熱交換器は、アルミニウム材からなるフィン材の表面に、前記親水化処理剤(親水性塗布液組成物)を塗布し、加熱、乾燥して表面親水性層を形成することで得ることができる。水吸収量の少ない親水層を形成するためには、親水性塗布液組成物を20℃〜90℃で熟成させることが好ましく、25℃〜80℃がさらに好ましく、25℃〜70℃が最も好ましい。熟成時間は、5分〜200時間が好ましく、10分〜150時間がさらに好ましく、30分〜120時間が最も好ましい。また、塗布後の加熱乾燥条件は、加熱温度として30℃〜180℃が好ましく、50℃〜160℃がさらに好ましく、70℃〜150℃が最も好ましい。加熱時間は、20秒〜2時間が好ましく、30秒〜2時間がさらに好ましく、1分〜1時間が最も好ましい。
【0077】
塗布液での熟成によって、金属アルコキシド基の加水分解が進行し、脱水縮合可能な状態にならしめ、熟成が不十分であると、金属アルコキシド基の加水分解が不足し脱水縮合が十分進行せず、強固な架橋膜が形成できない。逆に、熟成条件が強すぎると、金属アルコキシド基の加水分解に続いて、塗布液中で脱水縮合が進行してしまい、塗布液のゲル化が起こり、塗布ができなくなる。親水性層形成のための加熱条件は、主に脱水縮合のプロセスに関与しており、加熱温度と加熱時間が大きくなりすぎると親水性ポリマー成分の分解や、親水層皮膜のひび割れが発生してしまい、また、製造適性の点からも好ましくない。一方、加熱条件が弱いと脱水縮合が不十分で、強固な親水性層を形成できない。
【0078】
本発明では、親水性層へ含まれる水分量を低くすることが重要であるが、親水性層中の水分量は、以下の方法で定量化できる。
すなわち、25℃10%湿度環境の中で1時間調湿した試料の重量(A1)を乾燥時の重量として測定する。次に、25℃90%湿度環境の中で、試料を露点温度(23℃)に設定した金属定板の上にのせ、十分吸水させた後の重量(A2)を測定し、その差(A2)−(A1)を親水性層中の水分量とする。このようにして測定した水分量として、親水性層1m2・1g当たり、0.01g〜3.0gの水分量が好ましく、0.02g〜2.0gの水分量がさらに好ましく、0.05g〜1.0gの水分量が最も好ましい。
【0079】
かくして、耐食性と親水持続性を兼ね備えた熱交換器用フィン材を作成することができるが、本発明は上記の態様に限定されるものでなく、たとえば、フィン材の機械的強度や耐傷性を向上させる目的で、アルミニウムの表面処理を施すこともできる。例えば、既知の陽極酸化皮膜、ベーマイト皮膜、その他の無機系皮膜あるいは有機樹脂系皮膜を形成さえ、その上に本発明の処理剤を適用することもできる。
また親水性層の組成物として、親水性を損なわない範囲でアルミニウムの防食性に寄与するタンニン酸、没食子酸などのフェノール性カルボン酸およびその塩類;フイチン酸、ホスフオン酸、ベンゾトリアゾール、イミダゾール、亜硝酸、クロム酸などの混合物;架橋促進剤としてのモリブデン、バナジウム、亜鉛、ニツケル、コバルト、銅、鉄などのカチオン性化合物および酸素酸塩化合物;あるいは有機配位化合物を混合することができる。
【実施例】
【0080】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
アルカリ脱脂したアルミニウム板(板厚0.3mm)を準備し、該支持体上に、下記組成の親水性層塗布液をバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量0.5g/m2の親水性層を形成して親水性部材を作成した。この親水性部材の表面自由エネルギーは、87mN/mで、非常に親水性の高い表面であった。
【0081】
<親水性層塗布液(1)>
・コロイダルシリカ分散物20質量%水溶液(スノーテックスC) 100g
・下記ゾルゲル調製液 500g
・下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0082】
【化12】

【0083】
<ゾルゲル調製液>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、オルトチタン酸テトラエチル10g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)8gと下記の末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー5gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0084】
<末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーの合成>
三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて窒素気流下、65℃まで加熱し、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻して酢酸エチル1.5L中に投入したところ固体が析出した。その後、濾過を行い、充分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った(収量21g)。GPC(ポリスチレン標準)により、4000の質量平均分子量を有するポリマーであるこを確認した。5%水溶液粘度は2.5Ps、親水性基の官能基密度は、13.4meq/gであった。
【0085】
<評価>
上記親水性部材用の構造体について、以下の評価を行った。
(親水性)
空中水滴接触角の測定(協和界面科学株式会社製DropMaster500で測定)
(耐食性)
JIS−Z−2371塩水噴霧試験法に準じて行った。試験時間は100時間とし、評価した。
【0086】
その結果、水滴接触角は、5°以下で非常に親水性が高かった。耐食性試験では、表面に白サビ、フクレの発生が認められず、耐食性に優れていた。
【0087】
〔実施例2〜3〕
触媒を下記のものに変更した以外は実施例1と同様に親水性層を作成した。得られた親水性部材は、実施例1のものと同等の親水性、耐水性を有していた。
実施例2:エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル(株)製、ALCH)
実施例3:ジルコニウムキレート化合物
撹拌機を備えた反応器に、テトラブトキシジルコニウム50部、アセト酢酸エチル20部を加え、室温で1時間撹拌してジルコニウムキレート化合物を得た。
【0088】
〔実施例4〜6〕
親水性ポリマーを下記のものに変更した以外は実施例1と同様に親水性層を作成した。
得られた親水性部材は、実施例1のものと同等の親水性、耐食性を有していた。
【0089】
実施例4:明細書記載の親水性ポリマー15
実施例5:明細書記載の親水性ポリマー24
実施例6:下記に示す複数個反応性基を有する親水性ポリマー
【0090】
【化13】

【0091】
〔実施例7〕
実施例1記載のアルミニウム板を、下記の通り陽極酸化処理を施して耐傷性を改良したものに置き換え、それ以外は実施例1と同様に、親水性層を形成して親水性部材を作成した。得られた親水性部材は、実施例1のものと同等の親水性、耐食性を有していた。
【0092】
(アルミニウム板の作成)
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
この板を15%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化被膜を設けた後、水洗、乾燥しアルミニウム板とした。
【0093】
〔比較例1〕
実施例1記載の親水性層塗布液(1)を下記光触媒含有の比較用親水性層塗布液(2)に置き換え、ワイヤーバーを用いて塗布し、110℃で20分間乾燥して、塗布量0.5g/m2の親水性層を形成して親水性部材を作成した。得られた親水性部材は20J/cm2の紫外線を照射した後、評価を行った。親水性は実施例1の親水性部材とほぼ同等であったが、耐食性試験では白サビ、変色又はフクレが多数発生し、耐食性に劣っていた。
【0094】
<比較用親水性層塗布液(2)>
・光触媒酸化チタンゾルST-K211(固形分0.2%、石原産業(株)製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材からなるフィンを有する熱交換器であって、前記フィンの表面には、親水化処理剤により皮膜が形成されており、前記親水化処理剤は、a) 親水性ポリマー、b)下記式(I)で示される金属アルコキシド化合物及び下記式(II)で示される金属アルコキシド化合物から選ばれる少なくともいずれかを含有することを特徴とする熱交換器。
Z−(OR94 (I)
Al−(OR9 (II)
(ZはSi、Ti又はZrを表す。R9はアルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項2】
前記親水化処理剤が、a)の親水性ポリマーとの結合を生起する触媒を含有する請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記親水化処理剤が、さらにd)コロイダルシリカを含有する請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
a)の親水性ポリマーが、下記一般式(III)及び(IV)から選ばれる少なくともいずれかで表される請求項1に記載の熱交換器。
【化1】

式(III)および(IV)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、Xは反応性基(カルボキシル基、その塩、無水カルボン酸基、アミノ、ヒドロキシル、エポキシ基、メチロール、メルカプト、イソシアナート、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和二重結合、エステル結合、テトラゾール基)を表し、AおよびL、L,Lは、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH2、−CON(R2、−COR、−OH、−CO2M、−SO3M、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rは炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表し、Bは式(V)を表す。
【化2】

式(V)中、R1、R2、L及びYは式(III)および(IV)中のものと同じ。

【公開番号】特開2007−225174(P2007−225174A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45500(P2006−45500)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】