説明

熱交換器

【課題】ハイブリッド車両のエンジン停止中におけるオイルクーラの放熱性能を確保できる熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器は、エンジン10の冷却水を冷却するエンジン用ラジエータ20と、エンジン用ラジエータ20を流れる冷却水を貯留するラジエータタンク23と、EVモータ50の冷却油を冷却するオイルクーラ60とを備える。オイルクーラ60はラジエータタンク23の内部に配置され、オイルクーラ60内の冷却油とラジエータタンク23内の冷却水との間で熱交換して冷却油は冷却される。ラジエータタンク23には、オイルクーラ60に対して上方の位置から冷却水を外部へ流出させる熱放出経路110が接続されている。熱交換器はさらに、エンジン用ラジエータ20からエンジン10へ流れる冷却水の流量を調節するサーモスタット74を備え、サーモスタット74の閉弁時にも、冷却油は冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関し、特に、エンジンとモータとの少なくともいずれかの動力で走行するハイブリッド車両に用いられる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの冷却水を冷却するためのラジエータに関し、従来、特開2006−118803号公報(特許文献1)には、ラジエータタンクの最上部から上方に向かって連絡通路を形成することでエア抜きする構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−118803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両において、コストダウンのため、オイルクーラをラジエータタンクに内蔵して一体化した構造が採用されている。エンジンとモータとを併用するハイブリッド車両では、エンジンとモータとの両方を駆動源とする走行と、モータのみを駆動源とする走行と、の両方が行なわれるが、モータのみによる走行中、エンジンは停止状態となる。エンジンの停止中にはエンジンの冷却水の温度が上昇しないことから、エンジンの冷却水を冷却するためのラジエータへの冷却水の循環が停止する。そのため、ラジエータタンクに内蔵されたオイルクーラの放熱性能が減少してしまう課題がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、ハイブリッド車両のエンジン停止中におけるオイルクーラの放熱性能を確保できる、熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる熱交換器は、エンジンとモータとの少なくともいずれかの動力で走行するハイブリッド車両に用いられる熱交換器であって、エンジンの冷却水を冷却するためのラジエータと、ラジエータを流れる冷却水を貯留するタンクと、モータの冷却油を冷却するためのオイルクーラと、を備える。オイルクーラはタンクの内部に配置され、オイルクーラ内を流れる冷却油とタンクに貯留された冷却水との間で熱交換することにより、冷却油は冷却される。タンクには、オイルクーラに対して上方の位置から冷却水をタンクの外部へ流出させる経路が接続されている。熱交換器はさらに、ラジエータからエンジンへ流れる冷却水の流量を調節するサーモスタットを備える。サーモスタットの閉弁時にも、冷却油は冷却される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱交換器によると、エンジン用ラジエータタンクに内蔵されたオイルクーラの放熱性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】比較例の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。
【図2】図1に示すラジエータタンクの上端近傍の詳細を示す拡大図である。
【図3】実施の形態1の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。
【図4】実施の形態2の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。
【図5】実施の形態3の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。
【図6】実施の形態4の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。
【図7】実施の形態5の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0010】
図1は、比較例の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。まず、図1を参照して、ハイブリッド車両における、オイルクーラ60を内蔵したラジエータタンク23を備える、従来の熱交換器の構成について説明する。ハイブリッド車両は、第一の駆動源としてのエンジン10と、第二の駆動源としてのEV(Electric Vehicle)モータ50と、を備え、エンジン10とEVモータ50との少なくともいずれかの動力で走行する。
【0011】
エンジン10には、エンジン10を冷却するための冷却水を循環させるための、ウォータポンプ11が設けられている。ウォータポンプ11は、冷却水にエネルギーを与えて、エンジン10とエンジン用ラジエータ20とを含む系統を循環して流れるように、冷却水を移送させる。冷却水は、エンジン10から熱を伝達されて加熱される。加熱された冷却水は、エンジン用ラジエータ20に流れる。冷却水は、エンジン用ラジエータ20において、空気の流れと熱交換することにより、冷却される。これにより、エンジン10で発生する過剰な熱は、エンジン用ラジエータ20において発散され、エンジン10が冷却される。
【0012】
エンジン用ラジエータ20は、ラジエータコアを含む。ラジエータコアは、ハイブリッド車両に走行に伴って発生する走行風、または、ファンによる強制通風による空冷を利用して、エンジン10で加熱された冷却水と空気との熱交換を行ない、冷却水を冷却する。ラジエータコアの左右両側に、樹脂製のラジエータタンク21,23が配置されている。エンジン用ラジエータ20は、ラジエータタンク21,23がラジエータコアの左右両側に配置される、いわゆるクロスフロー型のラジエータである。
【0013】
ラジエータタンク21には、ラジエータタンク21への冷却水の流入口となる入口ポート22が設けられている。ラジエータタンク23には、ラジエータタンク23からの冷却水の流出口となる出口ポート24が設けられている。ラジエータタンク21,23は、エンジン用ラジエータ20を流れる冷却水を貯留する。
【0014】
ウォータポンプ11からエンジン10の内部へ供給される冷却水は、図1中の矢印に示すように、配管16を通ってエンジン10から流出する。冷却水はその後、配管26を経由して入口ポート22からラジエータタンク21へ流入する。冷却水は、ラジエータタンク21からラジエータタンク23へ向かって、ラジエータコア内を図1中の右向き方向に流れ、このとき冷却水は空気と熱交換して冷却される。ラジエータタンク23へ到達した冷却水は、出口ポート24から配管27,28、サーモスタット74、配管79,18を順に経由して流れ、再度ウォータポンプ11に流れる。
【0015】
エンジン10とエンジン用ラジエータ20との間を流れる冷媒の経路には、サーモスタット74が設けられている。サーモスタット74は、開閉可能な弁体を有する。弁体の開度が増加すると、エンジン用ラジエータ20に流入する冷却水の流量が増加する。弁体の開度が減少すると、エンジン用ラジエータ20に流入する冷却水の流量が減少する。弁体は、エンジン10へ流れる冷却水の水温を感知して開閉することにより、エンジン用ラジエータ20で熱交換されて冷却される冷却水の流量を調節する。冷却水の流量調整により、エンジン10は最適に冷却される。
【0016】
エンジン10が暖機運転されるときには、サーモスタット74の弁体は全閉(弁開度0%)とされ、冷却水をエンジン用ラジエータ20に流さなくする。このとき、ウォータポンプ11からエンジン10の内部へ供給される冷却水は、図1に示す配管16,17および18を順に経由して流れ、再度ウォータポンプ11へ流れる。これにより、エンジン10で加熱された冷却水がそのままエンジン10に循環するので、エンジン10の温度が早期に上昇する。
【0017】
冷却水はまた、エンジン10から、ヒータ81、排気再循環装置82などの、エンジン10の補機に供給される。ウォータポンプ11からエンジン10の内部へ供給される冷却水は、図1に示す配管84から配管85,86に分岐する。冷却水は、配管85からヒータ81を流通して配管87へ流れ、また、配管86から排気再循環装置82を流通して配管88へ流れる。その後冷却水は、配管89において再度合流し、配管18を経由して再度ウォータポンプ11へ流れる。
【0018】
図1にはまた、エンジン10用の密閉式リザーブタンク70が図示されている。密閉式リザーブタンク70には、加圧キャップ71が設けられている。加圧キャップ71は、密閉式リザーブタンク70の内部が予め設定された圧力になるまで、図示しないオーバーフローパイプの開口を抑える弁体を備えている。
【0019】
密閉式リザーブタンク70は、配管76を介してエンジン10に連結され、配管77を介してラジエータタンク21に連結され、さらに、配管78を介して、出口ポート24とサーモスタット74との間の配管27,28に連結される。エアが混入する冷却水は、エンジン10から配管76を経由して密閉式リザーブタンク70に回収され、またはラジエータタンク21から配管77を経由して密閉式リザーブタンク70に回収される。密閉式リザーブタンク70の内部で気液分離された冷却水が、配管78を経由して密閉式リザーブタンク70から流出し、配管28、サーモスタット74、配管79,18を順に経由して再度ウォータポンプ11に流れる。
【0020】
上述したエンジン10の冷却系とは別の系統として、インバータの冷却系が設けられている。インバータと冷却水との熱交換を行ないインバータを冷却するインバータ冷却器94は、インバータ用ラジエータ30に接続されている。インバータ冷却器94を流れる冷却水は、ウォータポンプ92によって移送される。インバータ冷却器94において加熱された冷却水は、インバータ用ラジエータ30において、空気の流れと熱交換することにより、冷却される。これにより、インバータで発生する熱がインバータ用ラジエータ30において発散され、インバータが冷却される。
【0021】
インバータ用ラジエータ30は、上述したエンジン用ラジエータ20と連結部40を介して連結されている。エンジン用ラジエータ20とインバータ用ラジエータ30とは、一体構造に設けられている。インバータ用ラジエータ30は、エンジン用ラジエータ20と同様に、ラジエータコアを含み、ラジエータコアにおいて冷却水を冷却する。ラジエータコアの左右両側に、樹脂製のラジエータタンク31,33が配置されている。インバータ用ラジエータ30は、ラジエータタンク31,33がラジエータコアの左右両側に配置される、いわゆるクロスフロー型のラジエータである。
【0022】
ラジエータタンク31には、ラジエータタンク31への冷却水の流入口となる入口ポート32が設けられている。ラジエータタンク33には、ラジエータタンク33からの冷却水の流出口となる出口ポート34が設けられている。
【0023】
インバータの冷却系には、密閉式リザーブタンク90が接続されている。密閉式リザーブタンク90には、加圧キャップ91が設けられている。加圧キャップ91は、密閉式リザーブタンク90の内部が予め設定された圧力になるまで、図示しないオーバーフローパイプの開口を抑える弁体を備えている。エアが混入する冷却水は密閉式リザーブタンク90の内部で気液分離され、冷却水が密閉式リザーブタンク90から流出する。
【0024】
インバータ冷却器94においてインバータから熱伝達されて加熱された冷却水は、配管96を経由して密閉式リザーブタンク90に回収される。密閉式リザーブタンク90で気液分離された冷却水は、配管97を経由して密閉式リザーブタンク90から流出して、ウォータポンプ92へ流れる。ウォータポンプ92により、冷却水は配管36を経由して入口ポート32からラジエータタンク31へ流入する。冷却水は、ラジエータタンク31からラジエータタンク33へ向かって、ラジエータコア内を図1中の右向き方向に流れ、このとき冷却水は空気と熱交換して冷却される。インバータ用ラジエータ30で冷却されラジエータタンク33へ到達した冷却水は、出口ポート34から配管37を経由して再度インバータ冷却器94へ供給され、インバータの冷却に使用される。
【0025】
エンジン10およびインバータの冷却系とは異なるさらに別の系統として、EVモータ50の冷却系が設けられている。EVモータ50を冷却するための冷却油は、オイルポンプ51によって移送される。EVモータ50において加熱された冷却油は、オイルクーラ60において冷却される。EVモータ50で発熱する熱が冷却油を冷媒としてオイルクーラ60へ伝達され、オイルクーラ60において熱が発散される。これにより、EVモータ50が冷却される。
【0026】
EVモータ50から熱伝達されて加熱された冷却油は、配管56を経由してオイルポンプ51へ流れる。オイルポンプ51により、冷却油は配管57を経由してオイルクーラ60へ流入する。オイルクーラ60で冷却された冷却油は、配管58を経由して再度EVモータ50へ流れ、EVモータ50の冷却に使用される。
【0027】
オイルクーラ60は、エンジン用ラジエータ20の左右両側に配置された一対のラジエータタンク21,23のうちの一方の、冷却水の流れの下流側に接続されたラジエータタンク23の内部に配置されている。EVモータ50で加熱された冷却油は、オイルクーラ60へ流入し、オイルクーラ60において周囲の冷却水と熱交換することにより、冷却される。ラジエータコアで冷却された後の冷却水を貯留するラジエータタンク23の内部に、オイルクーラ60が配置される。これにより、オイルクーラ60へ流入する冷却油と、オイルクーラ60の周辺の冷却水との温度差が大きくなるので、冷却油をより効率よく冷却できる。
【0028】
ハイブリッド車両がエンジン10とEVモータ50との両方を動力源として走行する場合、上述したウォータポンプ11とオイルポンプ51とが両方運転する。このとき、オイルクーラ60へ冷却油が流通し、ラジエータタンク23内の冷却水はウォータポンプ11によってエンジン10へ向かって流れる。そのため、エンジン用ラジエータ20で冷却された冷却水が常時オイルクーラ60の周囲に供給されるので、EVモータ50で加熱された冷却油から熱を周囲の冷却水へ放出でき、オイルクーラ60において冷却油を効率的に冷却できる。
【0029】
これに対し、エンジン10を停止し、EVモータ50のみを動力源としてハイブリッド車両を走行させるモータ走行の場合、ウォータポンプ11は停止し、サーモスタット74は閉弁する。ラジエータタンク23への冷却水の供給が停止するため、オイルクーラ60に流れる高温の冷却油からラジエータタンク23内の冷却水への熱伝達によって、ラジエータタンク23内の冷却水の水温が高くなる問題が発生する。
【0030】
図2は、図1に示すラジエータタンク23の上端近傍の詳細を示す拡大図である。図2に示すように、エンジン用ラジエータ20は、冷却水がその内部を流通する複数のチューブ20aと、チューブ20aの周囲に配置された複数のフィン20bとを有する。チューブ20a内を流れる冷却水からフィン20bに熱が伝達され、フィン20bを通り抜けて空気が流通することにより熱が空気へ発散される。このようにエンジン用ラジエータ20は、チューブ20aを流通する冷却水を冷却できる構造を有している。
【0031】
チューブ20aはラジエータタンク23の内部空間に連通している。ウォータポンプ11の運転中には、エンジン用ラジエータ20で冷却され温度の低下した冷却水が、チューブ20aからラジエータタンク23内へ供給されて、オイルクーラ60の周囲にも流れる。
【0032】
一方、ウォータポンプ11の停止中には、オイルクーラ60の周囲において冷却水が滞留する。チューブ20a内の冷却水は温度が低く比重が大きいので、オイルクーラ60内の冷却油により加熱された比重の小さい冷却水の、ラジエータタンク23からチューブ20aへの流出が抑制される。そのため、オイルクーラ60内の高温水とチューブ20a内の低温水との自然対流による入れ替わり現象が損なわれる。かつ、ラジエータタンク23内の冷却水の熱容量は小さい。
【0033】
その結果、オイルクーラ60へ流通する冷却油からオイルクーラ60の周囲の冷却水へ熱が伝達された後、ラジエータタンク23内に高温の冷却水が局所的に滞留してしまう虞がある。特に、温度の高い冷却水の比重が相対的に小さくなることから、ラジエータタンク23内の上部23a付近に高温水が滞留しやすくなる。
【0034】
高温の冷却水がラジエータタンク23内に滞留すると、エンジン用ラジエータ20の耐久性が劣化する。たとえば、エンジン用ラジエータ20に熱応力が発生し、熱歪みを起こし、チューブ20aの破損をもたらす、ラジエータタンク23に用いられるゴム製のシール部材の耐久寿命が劣化する、ラジエータタンク23を形成する樹脂材料の耐久寿命に悪影響を及ぼす、などが考えられる。そのため、高温水の滞留は、エンジン用ラジエータ20の耐久性上好ましくない。かつ、オイルクーラ60の周辺の冷却水の温度が高いと、オイルクーラ60を流通する冷却油とオイルクーラ60回りの冷却水との温度差が小さくなり、オイルクーラ60から冷却水への放熱性能は減少してしまう。
【0035】
以下に述べられる実施の形態の熱交換器は、このような問題を解決しようとするものである。
【0036】
(実施の形態1)
図3は、実施の形態1の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。図1と図3とを比較して、実施の形態1の熱交換器では、ラジエータタンク23に、ラジエータタンク23から熱を放出するための熱放出経路110が接続されている。熱放出経路110は、ラジエータタンク23の外部に配置されている。熱放出経路110へ冷却水が流入する流入口となる入口部111は、ラジエータタンク23の最上部に接続されている。熱放出経路110から冷却水が流出する流出口となる出口部112は、ラジエータタンク23の中央部下寄りに接続されている。
【0037】
入口部111は、オイルクーラ60に対して上方の位置に設けられている。出口部112は、オイルクーラ60に対して下方の位置に設けられている。冷却水は、入口部111からラジエータタンク23の外部へ流出し、熱放出経路110内を流通して、出口部112からラジエータタンク23の内部へ流入する。
【0038】
オイルクーラ60から熱伝達を受けて温度上昇した冷却水は、体積が膨張して比重が小さくなることにより、ラジエータタンク23内を上昇する。入口部111がオイルクーラ60に対し上側に設けられていることにより、水温の高い冷却水は、入口部111から熱放出経路110内へ流入する。冷却水が熱放出経路110を流れるとき、熱放出経路110の外周面から熱が周囲に放出され、冷却水の水温は低下する。ラジエータタンク23から熱放出経路110を形成する配管への熱伝導によっても、ラジエータタンク23の最上部の温度が下げられる。
【0039】
冷却水は非圧縮性流体であるので、ラジエータタンク23内の冷却水が熱放出経路110へ流出した分、熱放出経路110内の冷却水が押し出される。これにより、熱放出経路110から出口部112を経由して冷却水がラジエータタンク23内へ流入し、ラジエータタンク23内の冷却水が入れ替わる。オイルクーラ60の配置に対し冷却水の流れの上流側に熱放出経路110の出口部112を設けることにより、水温の低い冷却水を確実にオイルクーラ60の周囲に供給する。
【0040】
このように、自然対流現象によってラジエータタンク23と熱放出経路110とを循環する冷却水の流れが形成されるので、高温の冷却水がラジエータタンク23内に滞留することを抑制できる。モータ走行中の、エンジン10を停止させウォータポンプ11を停止させサーモスタット74を閉弁させた状態においても、オイルクーラ60の周辺に冷却水の流れを形成できるので、オイルクーラ60の周辺に相対的に温度の低い冷却水を常に供給できる。したがって、オイルクーラ60から冷却水への熱伝達効率の低下を抑制し、オイルクーラ60からの冷却油の放熱性能を確保することができる。かつ、ラジエータタンク23内の冷却水の過熱を抑制できるので、エンジン用ラジエータ20の耐久性の劣化を防止することができる。
【0041】
熱放出経路110への冷却水の流通は、自然対流現象によって行なわれ、冷却水の移送のためのポンプなどの追加の動力源は必要ない。そのため、熱放出経路110へ冷却水を流通させるための構成を簡略化できる。かつ、外部動力を必要とせずに冷却水を循環させることができるので、ハイブリッド車両の燃費の悪化を回避することができる。
【0042】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。実施の形態2では、図3に示す実施の形態1と同様に、ラジエータタンク23から冷却水を流出させるための熱放出経路120が設けられている。熱放出経路120は、入口部121がラジエータタンク23の最上部に接続されている点で、実施の形態1の熱放出経路110と共通の構成を有する。しかし、熱放出経路120は、出口部122が配管26に接続されている点で、実施の形態1の熱放出経路110とは異なっている。
【0043】
ラジエータタンク23の最上部と配管26とを接続する熱放出経路120を設けることにより、実施の形態1と同様に、自然対流現象によってラジエータタンク23と熱放出経路120とを流通する冷却水の流れが形成される。そのため、高温の冷却水がラジエータタンク23内に滞留することを抑制でき、オイルクーラ60の周辺に相対的に温度の低い冷却水を常に供給できる。したがって、オイルクーラ60から冷却水への熱伝達効率の低下を抑制し、オイルクーラ60からの冷却油の放熱性能を確保することができる。
【0044】
実施の形態2では、ラジエータタンク23から熱放出経路120へ流出した冷却水は、配管26、ラジエータタンク21およびエンジン用ラジエータ20を経由して、ラジエータタンク23へ還流する。冷却水の循環経路にエンジン用ラジエータ20が含まれることにより、エンジン用ラジエータ20において冷却された冷却水をラジエータタンク23へ戻すことができる。したがって、より温度の低い冷却水をオイルクーラ60の周囲に供給でき、オイルクーラ60から周辺の冷却水への熱伝達効率をより向上することができるので、冷却油の放熱性能をより高めることができる。
【0045】
(実施の形態3)
図5は、実施の形態3の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。実施の形態3では、図3に示す実施の形態1と同様に、ラジエータタンク23から冷却水を流出させるための熱放出経路130が設けられている。熱放出経路130は、入口部131がラジエータタンク23の最上部に接続されている点で、実施の形態1の熱放出経路110と共通の構成を有する。しかし、熱放出経路130は、出口部132が配管77に接続されている点で、実施の形態1の熱放出経路110とは異なっている。
【0046】
ラジエータタンク23の最上部と配管77とを接続する熱放出経路130を設けることにより、実施の形態1と同様に、自然対流現象によってラジエータタンク23と熱放出経路130とを流通する冷却水の流れが形成される。そのため、高温の冷却水がラジエータタンク23内に滞留することを抑制でき、オイルクーラ60の周辺に相対的に温度の低い冷却水を常に供給できる。したがって、オイルクーラ60から冷却水への熱伝達効率の低下を抑制し、オイルクーラ60からの冷却油の放熱性能を確保することができる。
【0047】
実施の形態3では、ラジエータタンク23から熱放出経路130へ流出した冷却水は、配管77を経由して密閉式リザーブタンク70へ流れる。密閉式リザーブタンク70で気液分離された冷却水が、配管78,27を経由して、ラジエータタンク23へ還流する。冷却水の循環経路に密閉式リザーブタンク70が含まれることにより、冷却水のみをラジエータタンク23へ戻すことができる。したがって、オイルクーラ60の周囲により温度の低い冷却水を供給でき、オイルクーラ60から周辺の冷却水への熱伝達効率をより向上することができるので、冷却油の放熱性能をより高めることができる。
【0048】
ラジエータタンク21から密閉式リザーブタンク70へ向かって冷却水が流れる配管77に熱放出経路130が接続されるので、エンジン10の暖機性を損なうことなく、オイルクーラ60における冷却油の放熱性能を向上することができる。
【0049】
(実施の形態4)
図6は、実施の形態4の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。実施の形態4では、図3に示す実施の形態1と同様に、ラジエータタンク23から冷却水を流出させるための熱放出経路140が設けられている。熱放出経路140は、入口部141がラジエータタンク23の最上部に接続されている点で、実施の形態1の熱放出経路110と共通の構成を有する。しかし、熱放出経路140は、出口部142が配管78に接続されている点で、実施の形態1の熱放出経路110とは異なっている。
【0050】
ラジエータタンク23の最上部と配管78とを接続する熱放出経路140を設けることにより、実施の形態1と同様に、自然対流現象によってラジエータタンク23と熱放出経路140とを流通する冷却水の流れが形成される。そのため、高温の冷却水がラジエータタンク23内に滞留することを抑制でき、オイルクーラ60の周辺に相対的に温度の低い冷却水を常に供給できる。したがって、オイルクーラ60から冷却水への熱伝達効率の低下を抑制し、オイルクーラ60からの冷却油の放熱性能を確保することができる。
【0051】
実施の形態4では、ラジエータタンク23の近傍に延在する配管78に熱放出経路140が接続されるので、熱放出経路140の長さをより小さくすることができる。したがって、熱放出経路140へ冷却水を流通させるための構成をより簡単にすることができ、熱放出経路140の配置計画をより容易にすることができる。
【0052】
密閉式リザーブタンク70から冷却水が流出する経路となる配管78に熱放出経路140が接続されるので、エンジン10の暖機性を損なうことなく、オイルクーラ60における冷却油の放熱性能を向上することができる。
【0053】
(実施の形態5)
図7は、実施の形態5の熱交換器の構成の概略を示す模式図である。実施の形態5では、図5に示す実施の形態3の熱放出経路130に加えて、配管78と配管17とを接続する熱放出経路150が設けられている。熱放出経路150の入口部151は配管78に接続され、熱放出経路150の出口部152は配管17に接続される。
【0054】
これにより、ラジエータタンク23から流出した冷却水を、熱放出経路130、配管77、密閉式リザーブタンク70、配管78、熱放出経路150、配管17,26およびラジエータタンク21を経由させて、エンジン用ラジエータ20へ流すことができる。エンジン用ラジエータ20において冷却された冷却水を、自然循環によってラジエータタンク23へ流入させて、水温の低い冷却水をオイルクーラ60の周囲に供給することができる。
【0055】
または、密閉式リザーブタンク70から流出する冷却水を、熱放出経路150および配管17,18を経由して、ウォータポンプ11へ流すことができる。オイルクーラ60における冷却油の冷却性能を一時的に自然循環時よりも高めたい場合に、ウォータポンプ11を起動させる。したがって、水温の低い冷却水をオイルクーラ60の周辺を経由させて積極的に循環させることができるので、オイルクーラ60から冷却水への熱伝達効率を向上させ、オイルクーラ60からの冷却油の放熱性能をさらに向上させることができる。
【0056】
エンジン10の停止中にはエンジン10を冷却するために冷却水を循環させる必要がないので、ウォータポンプ11は基本的には停止している。停止中のウォータポンプ11を活用して冷却水を移送することにより、新たな熱交換手段を追加することなく、オイルクーラ60の放熱量をさらに増加させることができる。ウォータポンプ11の運転は、冷却油の冷却能力を必要な程度にまで確実に高めることができ、かつ、エンジン10の暖機性を損なうことを防止できる程度の、断続運転とするのがより望ましい。
【0057】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
10 エンジン、11 ウォータポンプ、20 エンジン用ラジエータ、21,23 ラジエータタンク、23a 上部、50 EVモータ、51 オイルポンプ、60 オイルクーラ、74 サーモスタット、110,120,130,140,150 熱放出経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとモータとの少なくともいずれかの動力で走行するハイブリッド車両に用いられる熱交換器であって、
前記エンジンの冷却水を冷却するためのラジエータと、
前記ラジエータを流れる前記冷却水を貯留するタンクと、
前記モータの冷却油を冷却するためのオイルクーラと、を備え、
前記オイルクーラは前記タンクの内部に配置され、前記オイルクーラ内を流れる前記冷却油と前記タンクに貯留された前記冷却水との間で熱交換することにより、前記冷却油は冷却され、
前記タンクには、前記オイルクーラに対して上方の位置から前記冷却水を前記タンクの外部へ流出させる経路が接続されており、
前記ラジエータから前記エンジンへ流れる前記冷却水の流量を調節するサーモスタットをさらに備え、
前記サーモスタットの閉弁時にも前記冷却油は冷却されることを特徴とする、熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−56615(P2013−56615A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195939(P2011−195939)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】