説明

熱交換杭及びその設置方法

【課題】一般の杭施工と同様の方法で杭体を沈設でき、熱交換用管材の折り返し部を拡径された下杭の上部に設置することで、杭体と掘削孔の壁間に熱交換用管材を配置するための空間が確保され、回転沈設時にも大きな抵抗を受けない構造とした他、熱交換媒体供給用の管と熱交換媒体取出用の管を離間して設置できるよう位置決め部材を設けてショートサーキットが生じないようにした熱交換杭およびその設置方法を提供する。
【解決手段】先端部近傍に拡径部2を有する杭体1の軸部3外周囲に、不凍液などの熱交換媒体を上下方向で循環できるよう杭長手方向に延設したU字型管4を、杭周方向に複数組並べて取り付けた熱交換杭。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既製杭に特別な加工を施すことなく利用することができ、且つ熱交換率の優れた熱交換杭およびその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎として使用する既製杭を地中熱交換器として利用することが従来から知られている。このような既製の基礎杭を利用した地中熱交換器としては、既製杭の中空部に水(不凍液)を充填して取水・排水を繰り返す方式(例えば、特許文献1,2)、既製杭の中空部に管を挿入して循環する方式(例えば、特許文献3,4)、又は既製杭の外周囲に管を巻き付け循環する方式(例えば、特許文献5,6,7)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2528737公報
【特許文献2】特開2005−336815号公報
【特許文献3】特開平11−336008号公報
【特許文献4】特開2003−148079号公報
【特許文献5】特開2009−85556号公報
【特許文献6】特開2003−206528号公報
【特許文献7】特開2007−107200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、中空部に水等を充填する方式では、地震等によって杭体が損傷した場合に充填液が周囲地盤に漏れだし、環境を破壊する。また中空部内の管内で熱交換媒体を循環する方式では、間接的な熱交換であるため熱交換効率が良くない。一方、既製杭の外周囲に管を巻き付け循環する方式は、管材が直接周囲地盤と接触するため熱交換効率の向上が期待できるが、施工時に管材が損傷すれば熱交換媒体が漏れ出てしまう他、杭を継ぐ場合には管材をも連結させる必要が生じ、施工が困難であるといった諸問題点があった。
【0005】
特許文献6では、こうした問題点に鑑み、杭施工が終了した後、該杭体を案内ガイドとして熱交換用の管が取り付けられたリング状ユニットを後挿入することを提案している。しかし、この場合下方部の杭周固定液の比重が重くなり、なかなか挿入できないことになりかねない。
【0006】
また特許文献7では、底部用既製杭の側部の下側に折り返し部を形成した熱交換用管材を固定し、底部用既製杭を掘削孔内に降下しながら熱交換用管材を杭体側部に沿わせつつ施工する設置方法が提案されている。このようにすれば、巻回された熱交換用管材を往復一対のものとして準備するだけで施工が容易となるが、底部用既製杭の側部に熱交換用管材の折り返し部が形成されるため、回転沈設時には熱交換用管材の折り返し部が直接抵抗を受けることになり、保護材を強固に形成する必要がでてくる。
【0007】
さらに、上記従来の熱交換用管材の設置構造では、熱交換媒体供給用の管と熱交換媒体取出用の管が近接した構造となっており、相互に熱交換を行ってしまう(ショートサーキット)おそれがあった。
【0008】
本発明は、上記のような従来の諸問題点を解決するために成されたもので、一般の杭施工と同様の方法で杭体を沈設でき、熱交換用管材の折り返し部を拡径された下杭の上部に設置することで、杭体と掘削孔の壁間に熱交換用管材を配置するための空間が確保され、回転沈設時にも大きな抵抗を受けない構造とした他、熱交換媒体供給用の管と熱交換媒体取出用の管を離間して設置できるよう位置決め部材を設けてショートサーキットが生じないようにした熱交換杭およびその設置方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、先端部に拡径部を有する杭体の軸部外周囲に、不凍液等の熱交換媒体を上下方向で循環できるよう杭長手方向に延設したU字型管を、杭周方向に複数組並べて取り付けたことを特徴とする熱交換杭としている。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記先端部に拡径部を有する杭体の上部にバンドを装着し、該バンドに装着した位置決め部材により前記U字型管の熱交換媒体供給用の管と熱交換媒体取出用の管とを離間して設置したことを特徴とする熱交換杭としている。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記U字型管の折返部を、杭先端側の軸部に装着した固定バンドに引き込みワイヤーを介して連結するとゝもに、前記固定バンドに温度計測用センサーを装着し、該温度計測用センサーに一端を固定したリード線の他端部を前記U字型管に沿わせて杭体の上方に延設したことを特徴とする熱交換杭としている。
【0012】
請求項4の発明は、予め掘削した掘削孔内に所定量のセメントミルクを充填し、請求項1乃至請求項3記載の熱交換杭を下杭としてその上部に軸部同径のストレート杭を順次接続しながら前記掘削孔内に建て込み、杭体と周囲地盤との間がセメントミルクで充填されたことを特徴とする熱交換杭の設置方法としている。
【0013】
本発明の請求項5は、前記杭体の接続方法が無溶接継手部材による接続であり、該無溶接継手部に装着した位置決め部材により前記U字型管の熱交換媒体供給用の管と熱交換媒体取出用の管とを離間して設置することを特徴とする熱交換杭の設置方法としている。
【0014】
本発明の請求項6は、前記U字型管の上端部を、フーチング下部から地表部まで保護管で覆って杭頭側フーチングコンクリートと縁切りしたフーチング部に設置するとゝもに、地表部に位置する複数組の前記U字型管の上端部を接続ユニットで相互に連結することを特徴とする熱交換杭の設置方法としている。
【0015】
本発明の請求項7は、杭頭位置が地表部下にある熱交換杭を掘削孔内に設置する方法であって、先端部に拡径部を有する熱交換杭の杭頭に雇い杭を連結するとゝもに、該雇い杭の上部に装着した固定部材により前記U字型管の上部を固定した状態で雇い杭と杭体とを回転させ、前記先端部に拡径部を有する熱交換杭を掘削孔内に設置することを特徴とする熱交換杭の設置方法としている。
【0016】
本発明の請求項8は、杭頭位置が地表部下にある熱交換杭を掘削孔内に設置する方法であって、杭沈設機の回転ロッドの上部に環状部材を装着するとゝもに、該環状部材に装着した固定部材により前記U字型管の上部を固定した状態で前記回転ロッドと杭体とを回転させ、前記先端部に拡径部を有する熱交換杭を掘削孔内に設置することを特徴とする熱交換杭の設置方法としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1は、先端部に拡径部を有する杭体の軸部外周囲に、不凍液等の熱交換媒体を上下方向で循環できるよう杭体に密着させたU字型管を、杭周方向に複数組並べて取り付けた熱交換杭としているから、杭体にU字型管(熱交換媒体管材)を取り付けた状態で掘削孔内に熱交換杭を沈設する際、熱交換媒体管材は直接摩擦抵抗を受けることがなく、回転沈設等によっても損傷するおそれが少ない。従って、特にU字型管の先端部(折り返し部)を補強する必要も生じない。
【0018】
本発明の請求項2は、前記先端部に拡径部を有する杭体の上部にバンドを取り付け、該バンドに前記U字型管の熱交換媒体供給用の管と熱交換媒体取出用の管とを離間して設置する位置決め部材を装着した構成であるから、熱交換媒体供給用の管と熱交換媒体取出用の管は離間して設置され、ショートサーキットが生じない。
【0019】
本発明の請求項3は、前記U字型管の折返部を、杭先端側の軸部で杭体に装着した固定バンドに引き込みワイヤーを介して連結するとゝもに、前記固定バンドに温度計測用センサーを装着し、該温度計測用センサーに一端を固定したリード線の他端部を前記熱交換媒体用の管に沿わせて杭体の上方に延設したことを特徴とする熱交換杭であるから、下杭となる拡径杭の軸部下方に複数組の熱交換媒体用管材が固定され、順次上部に接続する杭体を接続しながら前記管材を杭体軸部に沿わせて設置できる。また、同時に温度計測用センサーのリード線が熱交換媒体用の管に沿わせてあるため、施工と同時にリード線を取り出すことができる。
【0020】
本発明の請求項4は、予め掘削した掘削孔内に所定量のセメントミルクを充填し、請求項1乃至請求項3記載の熱交換杭を下杭としてその上部に軸部同径のストレート杭を順次接続しながら前記掘削孔内に建て込み、杭体と周囲地盤との間がセメントミルクで充填されたことを特徴とする熱交換杭の設置方法としているから、掘削孔の内壁と杭体軸部の外周との間に熱交換媒体用管材の設置スペースが確保される。したがって、杭体にU字型管(熱交換媒体用管材)を取り付けた状態で掘削孔内に熱交換杭を沈設する際に、熱交換媒体用管材は直接摩擦抵抗を受けることがなく、回転沈設等によっても損傷するおそれが少ない。従って、特にU字型管の先端部(折り返し部)を補強する必要も生じない。
【0021】
本発明の請求項5は、前記杭体の接続方法が無溶接継手であり、該無溶接継手部に前記U字型管を固定するための位置決め部材が装着され、該位置決め部材により前記U字型管の熱交換媒体供給用の管と熱交換媒体取出用の管とを離間して設置することを特徴とする熱交換杭の設置方法としているから、別に杭体に熱交換媒体用管材の位置決め部材を設ける必要がないといった利点がある。
【0022】
本発明の請求項6は、前記U字型管の上端部をフーチング下部から地表部まで保護管で覆って杭頭側フーチングコンクリートと縁切りして設置するとゝもに、複数組のU字型管の上端部を相互に接続ユニットで連結することを特徴とする熱交換杭の設置方法としているから、地表面付近の温度による影響が少なくなる。また杭施工後の根切り作業によっても熱交換媒体用の管材が損傷するおそれがない利点がある。
【0023】
本発明の請求項7は、杭頭位置が地表部下にある熱交換杭を掘削孔内に設置する方法であって、先端部に拡径部を有する熱交換杭の杭頭に雇い杭を連結するとゝもに、該雇い杭の上部に装着した固定部材により前記U字型管の上部を固定した状態で雇い杭と杭体とを回転させ、前記先端部に拡径部を有する熱交換杭を掘削孔内に設置することを特徴とする熱交換杭の設置方法である。
【0024】
また、本発明の請求項8は、杭頭位置が地表部下にある熱交換杭を掘削孔内に設置する方法であって、杭沈設機の回転ロッドの上部に環状部材を装着するとゝもに、該環状部材に装着した固定部材により前記U字型管の上部を固定した状態で前記回転ロッドと杭体とを回転させ、前記先端部に拡径部を有する熱交換杭を掘削孔内に設置することを特徴とする熱交換杭の設置方法であり、U字型管の上部はこのU字型管を固定した杭体と同時に回転する雇い杭又は回転ロッドに設置される。したがって、最終沈設の回転において、U字型管にねじれが生じることなく設置できるといった利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。図1は本発明の第1実施例に係る熱交換杭A1とその設置状態を示したものであり、図中1は熱交換杭A1を構成する先端部に拡径部2を有する杭体である。このように、先端部に拡径部を有する杭体はST杭と称されており(JIS A5373)、先端部の拡径部2の外径はこの拡径部2の上方に連なる杭体1の軸部3の外径に対して100mmから200mm程度大きくなっている。
【0026】
このST杭は下杭として使用され、先端部の閉塞断面積が大きいことから支持力上有利となる。このST杭の構造としてはPHCくいやPRCくい等があり、又ST杭の特殊な形状として拡径部に杭周方向の溝を設けたものもあるが、本発明では上記いづれの杭であっても使用できる。なお、ST杭の代わりに下杭として短尺の節杭を継いでも同様の効果を奏する。
【0027】
4は杭体1の軸部3にあってその外周面に密着させて設置したU字型管で、不凍液等の熱交換媒体を杭体1の上下方向で循環できるよう杭長手方向に延設したものであり、熱交換媒体供給用の管4Aと熱交換媒体取出用の管4Bとからなる一対の管材がその先端部の折り返し部において継ぎ手部材4Cを介してU字状に連結された構成のものである。
【0028】
この熱交換媒体用の管材であるU字型管4は、軽量で耐久性に優れかつフレキシブルな素材であれば、樹脂製,金属製,金属補強樹脂製のいずれであってもかまわない。実施例では、高密度ポリエチレン(PE100)製の市販品「U−ポリパイ」(株式会社イノアック製)を使用した。
【0029】
5は杭先端側の軸部3に装着した前記U字型管4の固定バンドで、拡径部2との境界軸部に装着されたこの固定バンド5と、不凍液等の熱交換媒体を杭体1の上下方向で循環できるよう杭長手方向に延設した前記U字型管4の先端部の継ぎ手部材4Cとは、引き込みワイヤー6を介して連結されている。
【0030】
この実施例において、前記U字型管4は杭体1の軸部3の外周囲にあって杭周方向に90度間隔で4個並べて配設されており、各U字型管4の下端部はその継ぎ手部材4Cの部分で前記引き込みワイヤー6を介して前記固定バンド5に連結されている。しかし、前記U字型管4は任意の角度間隔で任意の個数を装着してもよい。
【0031】
7A,7Bは前記U字型管4の位置決め部材で、先端部に拡径部2を有する杭体1の軸部3にあって、その外周に巻いて取り付けたリング状のバンド7に装着されており、この位置決め部材7A,7Bで前記U字型管4を構成する熱交換媒体供給用の管4Aと熱交換媒体取出用の管4Bとを互いに離間した状態で固定されている。これにより、熱交換媒体供給用の管4Aと熱交換媒体取出用の管4Bはショートサーキットが生じない。
【0032】
上記リング状のバンド7および位置決め部材7A,7Bの素材は、使用されるU字型管4の素材に応じて決定する。実施例では、U字型管4の素材と同じ高密度ポリエチレン製のものを使用しており、軸部3の外周囲に巻いて固定したバンド7の表面に装着した位置決め部材7A,7Bは、U字型管4の熱交換媒体供給用の管4Aと熱交換媒体取出用の管4Bをそれぞれ装着できるワンタッチ装着式の凹型突起からなる構成としたものである。
【0033】
8は前記固定バンド5に装着した温度計測センサーで、この温度計測用センサー8に一端を固定したリード線(図示せず)の他端部は、前記U字型管4の熱交換媒体取出用の管5Bに沿わせて杭体1の杭頭部まで延長され、前記固定バンド5付近における地熱温度を地上部で計測が可能な構成としている。
【0034】
図2は本発明における第2の実施例に係る熱交換杭A2とその設置状態を示したものである。この第2の実施例に示す熱交換杭A2では、杭の接続方法として無溶接継手部9を用いて下杭となるこの熱交換杭A2の上に中杭10,上杭11をそれぞれ接続したものである。この熱交換杭A2では、前記第1実施例の熱交換杭A1と異なってU字型管4の位置決め部材としてバンド7は使用せず、前記無溶接継手部9に前記位置決め部材7A,7Bを直接装着した構造としている。
【0035】
具体的には、無溶接継手部材9の外周面に、U字型管4の熱交換媒体供給用の管4Aと熱交換媒体取出用の管4Bをそれぞれ固定できる前記第1実施例の場合と同様の位置決め部材7A,7B、すなわち、ワンタッチ装着式の凹型突起を備えた構造としたものであり、該凹型突起内に熱交換媒体用の管4A,管4Bをそれぞれ押し込んで嵌め込むことで、両管4A,4Bを離間させて杭体A2,10,11にそれぞれ固定する。その他の施工手順は前記第1実施例と同じである。
【0036】
図3は、図1および図2に示す第1および第2実施例に示す熱交換杭A1,A2の施工手順を示したものである。上記の構成からなる熱交換杭A1,A2をあらかじめ工場または現場サイトにて用意する。前記U字型管4を杭体1へ装着する手順の他は先端拡大根固め工法の施工手順と同じであり、特に変わりがない。
【0037】
まず、熱交換杭A1,A2にあっては、図3の(イ)に示すように、拡径部2の杭径に応じた径の掘削孔12を所定の深度まで掘削する。この際、掘削孔12の先端部には所定長だけ拡径した拡大孔13を掘削する。次いで、この拡大孔13の拡大根固め部に根固め液14を、また該拡大孔13の上方の掘削孔12の杭周部に周辺固定液15をそれぞれ所定量充填する。
【0038】
その後、図3(ロ)に示すように、前記掘削孔12内に下杭となる上記熱交換杭A1,A2を建て込むが、この際に、熱交換杭A1,A2の四方に装着されたU字型管4を四方にかつ引き込み可能に配置して、施工の邪魔にならないようにする。例えば、熱交換杭A1,A2を回転させながら掘削孔12内に沈設する場合は、後述する図4に示すように、回転キャップ16を回転ロッド17に装着して、この回転ロッド17の周囲にU字型管4を束ねて、U字型管4と杭体A1,A2をともに回転させれば良い。
【0039】
つぎに、杭を溶接等によって接続する場合は、管材を傷めないように溶接作業を行い、接続後に管材を杭体周囲に沿わせて上部杭を沈設する。必要に応じ、中杭10,上杭11にもU字型管4の位置決め部材7A,7Bを装着して、熱交換媒体供給用の管4Aと熱交換媒体取出用の管4Bとが相互に接触しないように設置する。
【0040】
このように、所定長の接続杭10,11をU字型管4と密着させ位置決めした状態で沈設した後(図3図ロ参照)、図6に示すように、熱交換媒体供給用の管4Aと熱交換媒体取出用の管4Bのそれぞれを杭頭21から地表部Gまで保護管18で覆って埋め戻し、別の場所の杭を施工する。全ての位置の杭施工が終了した後、フーチング下深度までの土砂を掘削(根切り)し、コンクリートを打設してフーチング19を構築する。そして、地表部Gから突出したU字型管4の先端部を相互に接続ユニット20で連結する。
【0041】
図6はU字型管4の先端部の処理方法を図示したものである。U字型管4を杭頭21から地表部Gまで保護管18で覆って埋め戻し、熱交換媒体供給用の管4Aおよび熱交換媒体取出用の管4Bをそれぞれ接続ユニット20で連結する。全ての位置の杭施工が終了した後、フーチング下深度までの土砂を掘削(根切り)し、フーチングコンクリートを打設する。
【0042】
しかし、施工場所によっては杭頭位置が地表部Gから数メートル下にある場合がある。このような場合には、図4に示すよう、オーガモータ22と回転キャップ16とを繋ぐ回転ロッド17にジャイロ型の環状部材23を取り付け、上部杭に沿って上方に延びるU字型管4の熱交換媒体供給用の管4A及び熱交換媒体取出用の管4Bのそれぞれを、前記環状部材23の固定部23A,23Bで固定する。或いは、図5に示すように、回転ロッド17に中堀りのような杭径に近いヤットコ24を取り付け、該ヤットコ24の外周に巻いたパイプ固定バンド25により上記管4A,4Bの上方部を固定する。
【0043】
このように、上部杭に沿って上方に延びるU字型管4の熱交換媒体供給用の管4A及び熱交換媒体取出用の管4Bをそれぞれ、上方で固定することで、回転でねじれることがなく、施工後に地上部で管4A,4Bを外すことも容易に行えるといった利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る熱交換杭とその上に接続した上部杭を掘削孔内に沈設した状態 の説明側面図である。
【図2】本発明の他の実施例の熱交換杭とその上に接続した上部杭を掘削孔内に沈設 した状態の説明側面図である。
【図3】本発明に係る熱交換杭とその上に接続した上部杭を掘削孔内に沈設する施工 工程の状態を示す説明側面図である。
【図4】杭頭位置が地盤面の下にある場合の杭の沈設方法を示す図で、U字型管の上 端部を回転ロッドに環状部材を介して固定した状態の側面図である。
【図5】杭頭位置が地盤面の下にある場合の杭の沈設方法を示す図で、U字型管の上 端部を雇い杭に設置したパイプ固定バンドを介して固定した状態の側面図で ある。
【図6】杭頭から地表部まで突出するU字型管の先端部の処理方法を示す部分拡大断 面説明図である。
【符号の説明】
【0045】
A1,A2 熱交換杭
1 杭体
2 拡径部
3 軸部
4 U字型管
4A 熱交換媒体供給用の管
4B 熱交換媒体取り出用の管
4C 継ぎ手部
4D 上端部
5 固定バンド
6 引き込みワイヤー
7 バンド
7A,7B 位置決め部材
8 温度計測センサー
9 無溶接継ぎ手部
10 中杭
11 上杭
12 掘削孔
13 拡大孔
14 根固め液
15 周辺固定液
16 回転キャップ
17 回転ロッド
18 保護管
19 フーチング
20 接続ユニット
21 杭頭
22 オーガモーター
23 環状部材
23A 固定部
24 雇い杭
25 パイプ固定バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部付近に拡径部を有する杭体の軸部外周囲に、不凍液等の熱交換媒体を上下方向で循環できるよう杭長手方向に延設したU字型管を、杭周方向に複数組並べて取り付けたことを特徴とする熱交換杭。
【請求項2】
前記先端部付近に拡径部を有する杭体の上部にバンドを装着し、該バンドに装着した位置決め部材により前記U字型管の熱交換媒体供給用の管と熱交換媒体取出用の管とを離間して設置したことを特徴とする請求項1記載の熱交換杭。
【請求項3】
前記U字型管の折返部を、杭先端側の軸部に装着した固定バンドに引き込みワイヤーを介して連結するとゝもに、前記固定バンドに温度計測用センサーを装着し、該温度計測用センサーに一端を固定したリード線の他端部を前記U字型管に沿わせて杭体の上方に延設したことを特徴とする請求項1又は2記載の熱交換杭。
【請求項4】
予め掘削した掘削孔内に所定量のセメントミルクを充填し、請求項1乃至請求項3記載の熱交換杭を下杭として、その上部に軸部同径のストレート杭を順次接続しながら前記掘削孔内に建て込み、杭体と周囲地盤との間がセメントミルクで充填されたことを特徴とする熱交換杭の設置方法。
【請求項5】
前記杭体の接続方法が無溶接継手部材による接続であり、該無溶接継手部に装着した位置決め部材により前記U字型管の熱交換媒体供給用の管と熱交換媒体取出用の管とを離間して設置することを特徴とする請求項4記載の熱交換杭の設置方法。
【請求項6】
前記U字型管の上端部を、フーチング下部から地表部まで保護管で覆って杭頭側フーチングコンクリートと縁切りしたフーチング部に設置するとゝもに、地表部に位置する複数組の前記U字型管の上端部を接続ユニットで相互に連結することを特徴とする請求項4又は5記載の熱交換杭の設置方法。
【請求項7】
杭頭位置が地表部下にある熱交換杭を掘削孔内に設置する方法であって、先端部に拡径部を有する熱交換杭の杭頭に雇い杭を連結するとゝもに、該雇い杭の上部に装着した固定部材により前記U字型管の上部を固定した状態で雇い杭と杭体とを回転させ、前記先端部に拡径部を有する熱交換杭を掘削孔内に設置することを特徴とする請求項4,5又は6記載の熱交換杭の設置方法。
【請求項8】
杭頭位置が地表部下にある熱交換杭を掘削孔内に設置する方法であって、アースオーガー機の回転ロッドの上部に環状部材を装着するとゝもに、該環状部材に装着した固定部材により前記U字型管の上部を固定した状態で前記回転ロッドと杭体とを回転させ、前記先端部に拡径部を有する熱交換杭を掘削孔内に設置することを特徴とする請求項4,5又は6記載の熱交換杭の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−57824(P2012−57824A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198702(P2010−198702)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(591014042)株式会社久米設計 (16)
【出願人】(308025923)前田製品販売株式会社 (16)
【Fターム(参考)】