説明

熱交換装置

【課題】伝熱管の温度差による変形を防止し、耐火材製内壁の割れを防止する。
【解決手段】高温通路Hを取り囲む垂直筒状伝熱壁11は、同心状をなす垂直筒状耐火材製内壁21および断熱材製外壁22よりなる。内壁21外面にこれの周方向に間隔をおいて複数の外向き条溝51が形成させている。外壁22内面に、各外向き条溝51と相対させられた内向き条溝52が形成されている。外向き条溝51および内向き条溝52の相対するもの同士間のスペース53に、低温通路Lを形成する伝熱管13が通されている。外壁22に、内向き条溝52のなす列の外側を通ってのびた固定リング41が埋設されている。各伝熱管13は、固定リング41に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉における廃棄物の焼却処理および焼却炉から排出される灰を溶融処理する過程で発生する高温の燃焼ガス(排ガス)の熱エネルギーを空気と熱交換することにより回収し、熱エネルギーの有効利用を図る熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の熱交換装置としては、高温通路形成用筒状壁体が、耐火材製内壁およびこれの外面を空気層を介して取り囲んでいる断熱材製外壁よりなり、空気層に、内壁軸方向にのびた低温通路形成用金属製伝熱管が通されているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような構造において、熱交換時に発生する耐火材と伝熱管との間の熱膨張差の問題はないが、耐火材と伝熱管との間に空気層があり、熱伝達効率が悪いという問題がある。
【0004】
また、他の熱交換装置としては、高温通路形成用筒状壁体が、耐火材製内壁および断熱材製外壁よりなる二重壁構造によって形成されており、内壁外面および外壁内面の双方に、切欠が互いに相対させられるように形成されており、双方の切欠の合体によって形成されたスペースに、内壁軸方向にのびた低温通路形成用金属製伝熱管が通されているものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
このような構造において、内壁および外壁の温度差に基づいて、伝熱管の内面側と外面側で温度差が発生し、そのために伝熱管に歪みが生じる。その結果、この歪みを吸収しきれずに耐火材が割れ、耐火材の割れ目から高温ガス(排ガス)が侵入して伝熱管を腐食させるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−41681号公報
【特許文献2】特開平10−325527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、伝熱管の熱膨張による内向き変形を拘束して、耐火材の割れを防止することができる熱交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による熱交換装置は、高温通路を取り囲む垂直筒状伝熱壁が、同心状をなす垂直筒状耐火材製内壁および断熱材製外壁よりなり、内壁外面にこれの周方向に間隔をおいて複数の外向き条溝が形成させており、外壁内面に、各外向き条溝と相対させられた内向き条溝が形成されており、外向き条溝および内向き条溝の相対するもの同士間スペースに、低温通路を形成する伝熱管が通されており、外壁に、内向き条溝のなす列の外側を通ってのびた固定リングが埋設されており、各伝熱管は、固定リングに連結されているものである。
【0009】
この発明による熱交換装置では、伝熱管がその熱膨張によって内向きに変形しようとしても、これを、固定リングが拘束する。したがって、伝熱管の変形による耐火材製内壁の割れを防止することができる。
【0010】
さらに、各伝熱管外面からこれの半径方向外向きに連結ロッドが突出させられており、連結ロッドは、これの軸方向の移動を自在とするように固定リングに貫通させられてその外方に突出させられており、その突出端部に、連結ロッドの内向き移動を位置調節自在に規制する位置決めストッパが取付られていると、伝熱管の変形量および固定リングの変形量に対応して、伝熱管に対する固定リングの引っ張りによる拘束力を調節することができる。
【0011】
また、固定リングは、垂直筒状周壁を有しており、周壁の下縁部に切欠が形成されており、連結ロッドは、ボルトよりなり、ボルトの頭部頂面は、伝熱管外面に固着されており、ボルトの軸部は、その雄ねじを周壁の外方に突出させるように切欠に通されており、位置決めストッパは、雄ねじにねじはめられたダブル・ナットよりなると、ボルトおよびナットよりなるシンプルな構造でもって、伝熱管の拘束力を調節することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、伝熱管の熱膨張による内向き変形を防止して、耐火材製内壁の割れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明による熱交換装置の垂直縦断面図である。
【図2】同熱交換装置の伝熱壁の一部拡大水平横断面図である。
【図3】同熱交換装置の固定リング周辺の断面図である。
【図4】図3に示す部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照すると、熱交換装置は、内側に高温ガスHが流される垂直筒状伝熱壁11と、伝熱壁11外面に被覆されている金属製垂直筒状ケーシング12と、伝熱壁11の軸線を中心とする円周上に等間隔で一列に並ぶように伝熱壁11に貫通させられかつ内部に低温ガスLが流される複数の金属製垂直状伝熱管13とよりなる。
【0015】
伝熱壁11は、同心状をなす二重壁構造よりなるものであって、伝熱管13を高温ガスHの腐食成分から保護するための耐火材製内壁21と、伝熱管13を保温するための断熱材製外壁22とよりなる。
【0016】
ケーシング12外面の上端部を円環状排気ヘッダ31が、その下端部を円環状給気ヘッダ32がそれぞれ取り囲んでいる。排気ヘッダ31に、伝熱管13の上端が排気連絡管33によって接続されている。排気ヘッダ31に、伝熱管13の下端が給気連絡管34によって接続されている。
【0017】
全ての伝熱管13の高さの中程を水平状固定リング41が取り囲んでいる。固定リング41は、各伝熱管13の外側を通って外壁22に埋設されている。
【0018】
図2に示すように、内壁21外面の伝熱管13貫通箇所には、内壁21軸方向にのびた横断面輪郭半円弧状の外向き条溝51が形成されている。一方、外向き条溝51に対応して、外壁22外面の伝熱管13貫通箇所には、外壁22軸方向にのびた横断面輪郭半円弧状の外向き条溝52が形成されている。対応する外向き条溝51および外向き条溝52は、相対させられかつ合体させられて1つの横断面輪郭円形状の管挿通孔53を形成している。管挿通孔53に対応する伝熱管13が間隙をおいて通されている。その間隙は、伝熱管13の熱膨張によって耐火材が割れることを防止するためのもので、具体的には、例えば、大きさ5mm程度のものである。
【0019】
図3および図4に、固定リング41の周方向の一部およびこれに隣接する1つの伝熱管13が詳細に示されている。
【0020】
固定リング41は、横断面逆L字状のもので、水平状頂壁61および垂直状周壁62よりなる。周壁62の下縁部には、逆U字状切欠63が形成されている。切欠63は、これに隣接させられた伝熱管13の半径方向外側に位置させられている。
【0021】
同伝熱管13外面からこれの半径方向外向きに連結ロッド71が突出させられている。連結ロッド71には位置決めストッパ72が備えられている。
【0022】
連結ロッド71は、ボルトよりなる。ボルト71の頭部頂面は、伝熱管13外面の対応か所に溶接により固着されている。ボルト71の軸部は、切欠63に通されている。ボルト71の軸部雄ねじは、周壁62の外方に突出させられている。位置決めストッパ72は、雄ねじにねじはめられたダブル・ナットよりなる。
【0023】
冷間時において、周壁62およびダブル・ナット72間には引張代調整隙間Cが生じさせられている。
【0024】
熱間時において、伝熱管13の温度が上昇し、伝熱管13の内外温度差によって、伝熱管13が内向きに変形させられようとすると、これを、固定リング41が拘束することにより、伝熱管13の変形が防止される。
【0025】
一方、伝熱管13の熱が固定リング41に伝達されると、固定リング41は熱膨張させられる。この場合、固定リング41によって、伝熱管13は外向きに引っ張られる。この引っ張りにより、伝熱管13には応力が作用させられる。伝熱管13の応力が許容値を超えないように、引張代調整隙間Cを大小に変化させることにより、伝熱管13には作用させられる応力の大小が調整される。
【0026】
上記熱交換器において、固定リング41有無の2つのケースについて、熱解析および熱変形解析を行った。
【0027】
a) 固定リング有のケース(本願発明)
排ガス温度:890〜900℃
空気温度:給気ヘッダの温度 390〜400℃、排気ヘッダの温度 500〜510℃
伝熱管温度:上段内面側(耐火材側) 607℃
上段外面側(断熱材側) 591℃(温度差16℃)
中段内面側(耐火材側) 585℃
中段外面側(断熱材側) 563℃(温度差21℃)
下段内面側(耐火材側) 562℃
下段外面側(断熱材側) 535℃(温度差27℃)
伝熱管の半径方向外面側(断熱材側)への変位量:上段 1.96mm
中段 2.66mm
下段 1.39mm
b) 固定リング無のケース(従来)
排ガス温度:890〜900℃
空気温度:給気ヘッダの温度 390〜400℃、排気ヘッダの温度 470〜480℃
伝熱管温度:上段内面側(耐火材側) 595℃
上段外面側(断熱材側) 547℃(温度差48℃)
中段内面側(耐火材側) 574℃
中段外面側(断熱材側) 519℃(温度差55℃)
下段内面側(耐火材側) 551℃
下段外面側(断熱材側) 489℃(温度差62℃)
伝熱管の半径方向外面側(断熱材側)への変位量:上段 1.06mm
中段 −0.23mm
下段 0.82mm
伝熱管の上段〜下段の温度差を比較すると、「a) 固定リング有のケース」では、16〜27℃であり、「b) 固定リング無のケース」では、48〜62℃であり、前者のケースの方が温度差が少なくなるように改善されている。
【0028】
伝熱管の中段の半径方向外面側への変位量は、「a) 固定リング有のケース」では、2.66mmであり、「b) 固定リング無のケース」では、−0.23mm(半径方向内面側へ変位)である。前者のケースの方が、伝熱管の中段が、固定リング41で引張られることにより、伝熱管が半径方向外面側へ大きく熱変形させられている。これにより、耐火材の割れが防止されことが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明による熱交換装置は、伝熱管の温度差による変形を防止し、耐火材製内壁の割れを防止できることを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0030】
11 伝熱壁
13 伝熱管
21 内壁
22 外壁
41 固定リング
51 外向き条溝
52 内向き条溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温通路を取り囲む垂直筒状伝熱壁が、同心状をなす垂直筒状耐火材製内壁および断熱材製外壁よりなり、内壁外面にこれの周方向に間隔をおいて複数の外向き条溝が形成させており、外壁内面に、各外向き条溝と相対させられた内向き条溝が形成されており、外向き条溝および内向き条溝の相対するもの同士間スペースに、低温通路を形成する伝熱管が通されており、外壁に、内向き条溝のなす列の外側を通ってのびた固定リングが埋設されており、各伝熱管は、固定リングに連結されている熱交換装置。
【請求項2】
各伝熱管外面からこれの半径方向外向きに連結ロッドが突出させられており、連結ロッドは、これの軸方向の移動を自在とするように固定リングに貫通させられてその外方に突出させられており、その突出端部に、連結ロッドの内向き移動を位置調節自在に規制する位置決めストッパが取付られている請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
固定リングは、垂直筒状周壁を有しており、周壁の下縁部に切欠が形成されており、連結ロッドは、ボルトよりなり、ボルトの頭部頂面は、伝熱管外面に固着されており、ボルトの軸部は、その雄ねじを周壁の外方に突出させるように切欠に通されており、位置決めストッパは、雄ねじにねじはめられたダブル・ナットよりなる請求項2に記載の熱交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−19635(P2013−19635A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154705(P2011−154705)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】