説明

熱伝導性粘着剤

【課題】粘着性および熱伝導性に優れるとともに熱伝導性に優れている金属からなる充填剤が使用された場合であっても電気絶縁性に優れている熱伝導性粘着剤、前記熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層を有する接着性シート、および前記粘着剤が用いられた照明用器具を提供すること。
【解決手段】粘着性樹脂および熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性粘着剤であって、前記熱伝導性充填剤が板状金属粒子であることを特徴とする熱伝導性粘着剤、当該熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層を少なくとも一方の面に有する接着性シート、および発光素子1が実装された基板2および放熱器4を有する照明用器具であって、基板2と放熱器4との間に熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層3が介在することを特徴とする照明用器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性粘着剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、配線基板とヒートシンク、筐体などの放熱性が求められる部材とを接合させるのに好適に使用することができる熱伝導性粘着剤、当該熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層を有する接着性シート、および前記粘着剤が用いられた照明用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱伝導性感圧接着剤には、熱伝導性を向上させるために充填剤が含有されている。接着性および熱伝導性に優れた熱伝導性感圧接着剤として、樹脂成分(重合体)と金属粉などの熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導性感圧接着剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この熱伝導性感圧接着剤には、十分な粘着性を付与するために樹脂成分の量を増やすとともに熱伝導性フィラーの量を減らすと熱伝導性が低下することから、熱伝導性を向上させるために樹脂成分の量を減らすとともに熱導電性フィラーの量を増やすと熱伝導性が向上するが、その半面、粘着性が低下するとともに電気絶縁性が低下するおそれがある。
【0004】
したがって、近年、粘着性および熱伝導性に優れるとともに電気絶縁性にも優れている熱伝導性粘着剤の開発が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4086322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、粘着性および熱伝導性に優れるとともに電気絶縁性にも優れている熱伝導性粘着剤、前記熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層を有する接着性シート、および前記粘着剤が用いられた照明用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1) 粘着性樹脂および熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性粘着剤であって、前記熱伝導性充填剤が板状金属粒子であることを特徴とする熱伝導性粘着剤、
(2) 板状金属粒子の含有率が7〜40質量%である前記(1)に記載の熱伝導性粘着剤、
(3) 板状金属粒子のアスペクト比が10〜100である前記(1)または(2)に記載の熱伝導性粘着剤、
(4) 板状金属粒子の厚さが0.01〜10μmであり、面方向の長さが0.1〜100μmである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱伝導性粘着剤、
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層を少なくとも一方の面に有する接着性シート、および
(6) 発光素子が実装された基板および放熱器を有する照明用器具であって、前記基板と前記放熱器との間に前記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱伝導性粘着剤が介在することを特徴とする照明用器具
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱伝導性粘着剤は、粘着性および熱伝導性に優れ、さらに電気絶縁性にも優れるという効果を奏する。本発明の接着性シートは、前記熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層を有するので、粘着性および熱伝導性に優れ、さらに電気絶縁性にも優れるという効果を奏する。また、本発明の照明用器具は、基板と前記放熱器との間に本発明の熱伝導性粘着剤が介在しているので、発光素子が実装された基板と放熱器との粘着性および熱伝導性に優れ、さらに電気絶縁性にも優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】照明用器具を構成する基板と前記放熱器との間に本発明の熱伝導性粘着剤が介在する照明用器具の一実施態様を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱伝導性粘着剤は、粘着性樹脂および熱伝導性充填剤を含有するものであり、前記熱伝導性充填剤が板状金属粒子であることを特徴とする。
【0011】
なお、本願明細書において、粘着剤は、被着体同士を接合する性質を有するが、その接合の過程で材質に大きな変化がないものを意味する。
【0012】
本発明の熱伝導性粘着剤においては、板状金属粒子を含有している点に1つの大きな特徴がある。当該特徴により、本発明の熱伝導性粘着剤は、粘着性および熱伝導性に優れるとともに電気絶縁性にも優れている。本発明においては、さらに板状金属粒子が特定のアスペクト比を有する場合には、電気絶縁性により一層優れるという利点がある。
【0013】
粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系粘着性樹脂、シリコーン系粘着性樹脂、ウレタン系粘着性樹脂、ビニルアルキルエーテル系粘着性樹脂、ビニルピロリドン系粘着性樹脂、アクリルアミド系粘着性樹脂、セルロース系粘着性樹脂、ゴム系粘着剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの粘着性樹脂は、本発明の目的が阻害されない範囲内で、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
粘着性樹脂のなかでは、粘着性および耐定荷重剥離性に優れており、さらに種々の被着体に使用することができ、汎用性の幅が広いことから、アクリル系粘着性樹脂が好ましく、アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体成分を重合させることによって得られるアクリル系粘着樹脂がより好ましい。
【0015】
なお、前記「アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体成分」は、単量体成分におけるアクリル酸アルキルエステルの含有率が50質量%以上であることを意味する。単量体成分におけるアクリル酸アルキルエステルの含有率は、粘着性を向上させる観点から、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。また、単量体成分におけるアクリル酸アルキルエステルの含有率の上限値は、好ましくは100質量%であるが、耐定荷重剥離性を向上させる観点から、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0016】
アクリル酸アルキルエステルのなかでは、粘着性および耐定荷重剥離性に優れており、種々の被着体に使用することができ、汎用性の幅が広いアクリル系粘着性樹脂を得る観点から、アルキルエステルの炭素数が2〜18であるアクリル酸アルキルエステルが好ましい。好適なアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、ノニルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
単量体成分には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、アクリル酸アルキルエステル以外の単量体が含まれていてもよい。アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、例えば、カルボキシル基を有する単量体、酸性リン酸エステル系単量体、活性水素をもつ基を有する単量体、エポキシ基を有する単量体、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
酸性リン酸エステル系単量体としては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸性リン酸エステル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
活性水素をもつ基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキル基の炭素数が2〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの活性水素をもつ基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0022】
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
窒素原子を有する単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、イミドアクリレート、イミドメタクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
2個以上の重合性二重結合を有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの2個以上の重合性二重結合を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
ハロゲン原子を有する単量体としては、例えば、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ハロゲン原子を有する単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
ビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ビニルエステル系単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
ビニルエーテル系単量体としては、例えば、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエーテル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
単量体成分におけるアクリル酸アルキルエステル以外の単量体の含有率は、粘着性を向上させる観点から、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。また、単量体成分におけるアクリル酸アルキルエステル以外の単量体の含有率の下限値は、好ましくは0質量%であるが、耐定荷重剥離性を向上させる観点から、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
【0030】
単量体成分を重合させる際には、分子量分布の増大やゲル化を抑制する観点から、必要により連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などのメルカプトカルボン酸類;メルカプト酢酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ステアリル、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)などのメルカプトカルボン酸エステル類;エチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、1,2−ジメルカプトエタンなどのアルキルメルカプタン類;2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノールなどのメルカプトアルコール類;ベンゼンチオール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、2−ナフタレンチオールなどの芳香族メルカプタン類;トリス〔(3−メルカプトプロピオニロキシ)エチル〕イソシアヌレートなどのメルカプトイソシアヌレート類;2−ヒドロキシエチルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド類;ベンジルジエチルジチオカルバメートなどのジチオカルバメート類;α−メチルスチレンダイマーなどのダイマー類;四臭化炭素などのハロゲン化アルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの連鎖移動剤のなかでは、入手が容易であること、架橋防止性に優れていること、重合速度の低下の度合いが小さいことなどから、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類、アルキルメルカプタン類、メルカプトアルコール類、芳香族メルカプタン類、メルカプトイソシアヌレート類などのメルカプト基を有する化合物が好ましい。
【0031】
連鎖移動剤の量は、単量体成分の組成、重合温度などの重合条件、目的とする重合体の分子量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得る場合には、単量体成分100質量部あたり、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましい。
【0032】
単量体成分を重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0033】
塊状重合は、例えば、紫外線、電子線、放射線などのエネルギー線の照射や加熱などによって行なうことができる。エネルギー線の照射によって単量体成分の塊状重合を行なう場合には、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中や空気を遮断した雰囲気中でエネルギー線を単量体成分に照射することによって単量体成分を重合させることが好ましい。
【0034】
塊状重合法によって単量体成分を重合させる際には、光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系重合開始剤、ベンゾインエーテル系重合開始剤、ベンジルケタール系重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系重合開始剤、ベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。光重合開始剤の量は、得られる重合体の所望する物性などに応じて適宜設定すればよいが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.03〜20質量部である。
【0035】
単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合、溶媒として、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などの有機溶媒が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、重合条件、単量体成分の組成、得られる重合体の濃度などを考慮して適宜決定すればよい。
【0036】
単量体成分を溶液重合法によって重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。重合開始剤の量は、得られる重合体の所望する物性などに応じて適宜設定すればよいが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.03〜20質量部である。
【0037】
単量体成分を重合させる際の重合条件は、重合方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。重合温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃である。反応時間は、単量体成分の重合反応が完結するように適宜設定すればよい。以上のようにして単量体成分を重合させることにより、アクリル系粘着性樹脂が得られる。
【0038】
なお、「粘着性及び粘着剤技術(Adhesion and Adhesives Technology)」第2版、独国、カール・ハンゼル(Carl Hanzer)社、2002年のアルフォンサス・ポシウス(Alphonsus Pocius)〕著「ダールキスト(Dahlquist)の粘着性判定基準」に、周波数1Hzで測定した粘着性粘着剤の室温弾性率は0.3MPa(107dyne/cm2)未満であることが報告されており、本発明に用いられる粘着性樹脂は、粘着性を高める観点から、この粘着性判定基準、すなわち、周波数1Hzで測定した粘着性樹脂の室温での貯蔵弾性率が0.3MPa(107dyne/cm2)未満であることを満たすものであることが好ましい。また、周波数1Hzにおける粘着性樹脂の25℃での貯蔵弾性率(G’)は、粘着性を高める観点から、好ましくは0.5×106Pa以下、より好ましくは0.3×106Pa以下である。
【0039】
本発明の熱伝導性粘着剤における粘着性樹脂の含有率は、本発明の熱伝導性粘着剤の粘着性および電気絶縁性を向上させる観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは62質量%以上であり、熱伝導性を向上させる観点から、好ましくは93質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、さらに一層好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下である。
【0040】
本発明の熱伝導性粘着剤は、板状金属粒子を含有する。板状金属粒子を構成する金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属をはじめ、アルミニウム、亜鉛、スズなどの典型金属や、鉄、ニッケル、銅、マンガン、銀、白金などの遷移金属が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの金属は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上の合金であってもよい。これらの金属のなかでは、熱伝導性を向上させる観点から、アルミニウム、銀、銅およびそれらの合金が好ましい。
【0041】
板状金属粒子には、必要により、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、シランカップリング処理、チタネート処理、酸化処理、樹脂被覆処理、エネルギー線照射処理、電気化学的処理などをはじめ、ステアリン酸などの飽和脂肪酸やオレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸を板状金属粒子に吸着させる処理などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0042】
板状金属粒子のアスペクト比は、熱伝導性を向上させる観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上であり、粘着性樹脂と板状金属粒子とを混合したときに経時とともに増粘することを抑制する観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは80以下である。
【0043】
なお、板状金属粒子のアスペクト比は、板状金属粒子の面方向の最大長さを当該板状金属粒子の最大厚さで除することによって求められる値である。換言すれば、板状金属粒子のアスペクト比は、式:
〔板状金属粒子のアスペクト比〕
=〔板状金属粒子の面方向の最大長さ〕÷〔板状金属粒子の最大厚さ〕
に基づいて求められる。
【0044】
板状金属粒子の面方向の最大長さおよび最大厚さは、板状金属粒子を走査型電子顕微鏡などによって直接観察し、任意に選択された板状金属粒子について、それぞれの最大長さおよび最大厚さを測定し、測定された個数における平均値として求めることができる。板状金属粒子の測定個数は、特に限定されないが、精度の向上および測定の便宜の観点から、10〜20個程度であることが好ましい。なお、粘着剤層に含まれている板状金属粒子の最大長さおよび最大厚さは、粘着剤層を有機溶媒などの溶媒で溶解させることによって分離された板状金属粒子について測定することによって求めることができる。
【0045】
なお、本明細書において、板状金属粒子の面方向の長さおよび厚さは、便宜上、それぞれ1つの板状金属粒子における面方向の最大長さおよび最大厚さを意味する。
【0046】
板状金属粒子の厚さは、熱伝導性を向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、粘着性樹脂と板状金属粒子とを混合したときに経時とともに増粘することを抑制する観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0047】
板状金属粒子の面方向の長さは、熱伝導性を向上させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、粘着性樹脂と板状金属粒子とを混合したときに経時とともに増粘することを抑制する観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0048】
本発明の熱伝導性粘着剤における板状金属粒子の含有率は、熱伝導性を向上させる観点から、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに一層好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上であり、本発明の熱伝導性粘着剤の粘着性および電気絶縁性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは38質量%以下である。
【0049】
本発明の熱伝導性粘着剤は、粘着性樹脂および板状金属粒子を混合することによって容易に調製することができる。このとき、板状金属粒子が均一に分散された熱伝導性粘着剤を調製する観点から、粘着性樹脂を有機溶媒に溶解させた粘着性樹脂溶液を用いることが好ましい。
【0050】
粘着性樹脂溶液に用いられる有機溶媒は、粘着性樹脂を溶解させるものであればよく、特に限定されない。前記有機溶媒としては、例えば、前記単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合に用いられる有機溶媒のほか、ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、テレビン酸、ミネラルスピリットなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。粘着性樹脂溶液における不揮発分の濃度は、特に限定されないが、通常、10〜70質量%程度である。
【0051】
なお、前記粘着性樹脂が架橋性基(官能基)を有する場合、本発明の熱伝導性粘着剤には、必要により架橋剤を含有させてもよい。架橋剤は、架橋性基を有する粘着性樹脂を架橋させることによって当該粘着性樹脂を硬化させることができる。
【0052】
架橋剤としては、粘着性樹脂が有する架橋性基と反応し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物を用いることができる。架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、多官能エポキシ系架橋剤、シリコーン系架橋剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0053】
ポリイソシアネート系架橋剤としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、前記芳香族ポリイソシアネートの水素添加物などの脂肪族または脂環族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの2量体または3量体、これらのポリイソシアネートとトリメチロールプロパンなどのポリオールとからなるアダクト体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリイソシアネート系架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
ポリイソシアネートは、例えば、「コロネートL」、「コロネートL−55E」、「コロネートHX」、「コロネートHL」、「コロネートHL−S」、「コロネート2234」、「アクアネート200」、「アクアネート210」〔以上、日本ポリウレタン工業(株)製、「コロネート」および「アクアネート」は登録商標〕、「デスモジュールN3400」〔住友バイエルウレタン(株)(現バイエルA.G.社)製、「デスモジュール」は登録商標〕、「デュラネートD−201」、「デュラネートTSE−100」、「デュラネートTSS−100」、「デュラネート24A−100」、「デュラネートE−405−80T」〔以上、旭化成ケミカルズ(株)製、「デュラネート」は登録商標〕、「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」、「MTERT−オレスターNP1200」〔以上、三井化学ポリウレタン(株)製、「タケネート」および「オレスター」は登録商標〕などとして商業的に容易に入手することができる。これらのポリイソシアネートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0055】
多官能エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能エポキシ系架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
シリコーン系架橋剤としては、例えば、信越化学工業(株)製、品番:X−92−122などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。シリコーン系架橋剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
架橋剤のなかでは、ポリイソシアネートの2量体、ポリイソシアネートの3量体、ポリイソシアネートの2官能プレポリマーおよびポリイソシアネートのアダクト体などが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートの2量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(3量体)、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体などがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体がさらに好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体としては、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:デュラネート(登録商標)TSE−100、商品名:デュラネート(登録商標)TSS−100などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0058】
架橋剤の量は、粘着性樹脂が有する架橋性基(官能基)の合計量を1当量としたとき、通常、好ましくは0.1〜2当量、より好ましくは0.3〜1.5当量である。
【0059】
また、本発明においては、架橋促進剤を適量で用いてもよい。架橋促進剤としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、2−エチルヘキサノエート鉛、チタン酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキサノエート鉄、2−エチルヘキサノエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクタン酸錫、オクタン酸ビスマス、テトラn−ブチル錫、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトナートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
なお、本発明の熱伝導性粘着剤には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要により、熱伝導性充填材を含有させてもよい。熱伝導性充填材を板状金属粒子と併用した場合には、本発明の熱伝導性粘着剤を用いて形成される粘着剤層の厚さ方向および面方向のいずれの方向においても熱を逃がすという性質が向上するので、等方性のある熱伝導性を発現させることができる。
【0061】
熱伝導性充填材は、等向性のある熱伝導性を発現させる観点から、球状であることが好ましい。また、熱伝導性充填材の粒子径は、分散安定性および熱伝導性を向上させる観点から、0.001〜100μm、好ましくは0.01〜50μmの範囲内にあることが望ましい。
【0062】
熱伝導性充填材としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの金属酸化物、カーボンブラックなどの無機粉体が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの粉体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
熱伝導性充填材の量は、本発明の熱伝導性粘着剤の固形分100質量部あたり、熱伝導性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、粘着性を向上させる観点から、好ましくは500質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは180質量部以下である。
【0064】
また、本発明の熱伝導性粘着剤には、前記熱伝導性充填材以外にも、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要により、例えば、分散剤、粘着付与剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、沈降防止剤、増粘剤、チクソトロピー付与剤、界面活性剤、消泡剤、静電気防止剤、表面処理剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などの添加剤を適量で含有させてもよい。
【0065】
本発明の熱伝導性粘着剤における不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、塗工性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。粘着剤における不揮発分量は、粘着剤に含まれる溶媒量や添加剤量などを調整することによって調節することができる。溶媒としては、前記粘着性樹脂溶液に用いられる有機溶媒と同様であればよい。
【0066】
本発明の熱伝導性粘着剤の粘度〔東機産業(株)製、品番:TVB−10Mを用い、25℃の温度で回転数12r/mにて測定〕は、塗工性を向上させる観点から、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは500mPa・s以上、さらに好ましくは1000mPa・s以上であり、前記と同様に塗工性を向上させる観点から、好ましくは60000mPa・s以下、より好ましくは40000mPa・s以下、さらに好ましくは20000mPa・s以下である。
【0067】
本発明の熱伝導性粘着剤を基材に塗布する方法としては、例えば、ナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター、ロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーター、コンマコーター、ドクターブレードなどを用いる塗工方法、ディッピングなどの塗工方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。本発明の熱伝導性粘着剤を基材に塗布する際には、本発明の熱伝導性粘着剤を基材に直接塗布してもよく、あるいは離型紙などに塗布した後、この塗布物を基材上に転写させてもよい。このように本発明の熱伝導性粘着剤を塗布した後、乾燥させることにより、基材上に粘着剤層を形成させることができる。
【0068】
基材上に形成された粘着剤層の表面には、例えば、離型紙や離型フィルムを貼着してもよい。このように粘着剤層の表面に離型紙を貼着した場合には、粘着剤層を好適に保護することができる。離型紙は、粘着剤を使用するときに粘着剤層の表面から引き剥がされる。なお、シート状、テープ状などの形状を有する基材の片面に粘着剤層を形成させた場合には、得られる接着性シートの基材の背面に公知の離型剤を塗布し、離型剤層を形成しておけば、粘着剤層を内側にして接着性シートをロール状に巻くことにより、粘着剤層は、基材の背面の離型剤層と接触するので、粘着剤層の表面を保護したり、保存したりすることができる。
【0069】
基材としては、例えば、上質紙、クラフト紙、クレープ紙、グラシン紙などの紙類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、セロファンなどの樹脂からなる基材、織布、不織布、布帛などの繊維製品などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0070】
本発明の熱伝導性粘着剤を基材に塗布した後、乾燥させるが、その乾燥方法としては、例えば、熱風、遠赤外線照射などが挙げられる。
【0071】
本発明の熱伝導性粘着剤の乾燥後の粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、通常、1μm〜5mm程度である。
【0072】
以上説明したように、本発明の熱伝導性粘着剤は、粘着性および熱伝導性に優れ、さらに電気絶縁性にも優れていることから、例えば、本発明の熱伝導性粘着剤を基材の片面または両面に塗布することによって粘着剤層を形成させてもよく、基材を有しない粘着剤層のみを有する接着性シートとして好適に使用することができる。
【0073】
また、本発明の熱伝導性粘着剤は、例えば、発光素子が実装された基板および放熱器を有する照明用器具にも好適に使用することができる。この場合、前記基板と前記放熱器との間に本発明の熱伝導性粘着剤を介在させることができる。以下に、前記照明用器具の一実施態様を図面に基づいて説明する。
【0074】
図1は、基板と前記放熱器との間に本発明の熱伝導性粘着剤が介在する照明用器具の一実施態様を示す概略説明図である。図1に示される照明用器具は、発光素子1、基板2、本発明の熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層3および放熱器4を有する。本発明の照明用器具は、基板2と放熱器4との間に本発明の熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層3が介在しているので、発光素子1が実装された基板2と放熱器4との粘着性および熱伝導性に優れ、さらに電気絶縁性にも優れている。
【0075】
図1において、発光素子1は、基板2の一方表面に配設されている。基板2の他方表面は、本発明の熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層3を介して放熱器4と一体化されている。
【0076】
発光素子1としては、例えば、発光ダイオード(LED)、エレクトロルミネッセンスなどの素子が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。基板2の一方表面に発光素子1が配設されている。基板2の例としては、例えば、プリント配線基板などが挙げられる。また、放熱器4としては、例えば、ヒートシンク、筐体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0078】
実施例1
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗および撹拌機を備えた反応容器内に、酢酸エチル100部(質量部、以下同じ)、n−ブチルアクリレート40部、2−エチルヘキシルアクリレート45.7部、酢酸ビニル10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.3部およびアクリル酸4.0部を入れた後、アゾイソブチロニトリル0.05部を入れ、窒素ガス雰囲気中にて80℃で5時間反応させ、アクリル系粘着性樹脂溶液を得た。得られたアクリル系粘着性樹脂溶液における不揮発分の含有率は50質量%であった。また、このアクリル系粘着性樹脂溶液に含まれているアクリル系粘着性樹脂の周波数1Hzにおける25℃での貯蔵弾性率(G’)は、1.5×104Paであった。
【0079】
なお、粘着性樹脂の周波数1Hzにおける25℃での貯蔵弾性率(G’)は、以下の測定条件にて測定した。
〔貯蔵弾性率(G’)の測定条件〕
・使用機器:レオメトリック社製、品番:ARES−2KFRTNI
・測定モード:動的粘弾性の温度依存性試験、8mmパラレルプレート
・測定温度範囲:−40〜100℃
・昇温速度:5℃/min
・振動周波数:1Hz
【0080】
次に、前記で得られたアクリル系粘着性樹脂溶液180部(樹脂固形分量:90部)と板状アルミニウム粒子のペースト(板状アルミニウム粒子のアスペクト比:40、厚さ:0.25μm、面方向の長さ:10μm)10部(板状アルミニウム粒子の固形分量)とを混合した後、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0081】
前記で得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.33部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層が形成された接着性シートを得た。この接着性シートは、剥離紙を剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートとして用いることができた。
【0082】
実施例2
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液160部(樹脂固形分量:80部)と板状アルミニウム粒子のペースト(板状アルミニウム粒子のアスペクト比:40、厚さ:0.25μm、面方向の長さ:10μm)20部(板状アルミニウム粒子の固形分量)とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0083】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.32部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層が形成された接着性シートを得た。この接着性シートは、剥離紙を剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートとして用いることができた。
【0084】
実施例3
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液140部(樹脂固形分量:70部)と板状アルミニウム粒子のペースト(板状アルミニウム粒子のアスペクト比:40、厚さ:0.25μm、面方向の長さ:10μm)30部(板状アルミニウム粒子の固形分量)とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0085】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.25部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層が形成された接着性シートを得た。この接着性シートは、剥離紙を剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートとして用いることができた。
【0086】
実施例4
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液124部(樹脂固形分量:62部)と板状アルミニウム粒子のペースト(板状アルミニウム粒子のアスペクト比:40、厚さ:0.25μm、面方向の長さ:10μm)38部(板状アルミニウム粒子の固形分量)とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0087】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.22部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層が形成された接着性シートを得た。この接着性シートは、剥離紙を剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートとして用いることができた。
【0088】
実施例5
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液120部(樹脂固形分量:60部)と板状アルミニウム粒子のペースト(板状アルミニウム粒子のアスペクト比:40、厚さ:0.25μm、面方向の長さ:10μm)40部(板状アルミニウム粒子の固形分量)とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0089】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.21部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層が形成された接着性シートを得た。この接着性シートは、剥離紙を剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートとして用いることができた。
【0090】
実施例6
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液140部(樹脂固形分量:70部)と、アクリル樹脂で被覆された板状アルミニウム粒子(アスペクト比:37.5、厚さ:0.40μm、面方向の長さ:15μm)30部とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0091】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.25部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層が形成された接着性シートを得た。この接着性シートは、剥離紙を剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートとして用いることができた。
【0092】
実施例7
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液124部(樹脂固形分量:62部)と板状アルミニウム粒子のペースト(板状アルミニウム粒子のアスペクト比:50、厚さ:0.20μm、面方向の長さ:10μm)38部(板状アルミニウム粒子の固形分量)とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0093】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.22部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層が形成された接着性シートを得た。この接着性シートは、剥離紙を剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートとして用いることができた。
【0094】
実施例8
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液140部(樹脂固形分量:70部)と板状アルミニウム粒子のペースト(板状アルミニウム粒子のアスペクト比:40、厚さ:1.1μm、面方向の長さ:30μm)30部(板状アルミニウム粒子の固形分量)とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0095】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.25部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層が形成された接着性シートを得た。この接着性シートは、剥離紙を剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートとして用いることができた。
【0096】
実施例9
シリコーン系粘着性樹脂〔信越化学工業(株)製、品番:X−40−3240〕の樹脂固形分70部と板状アルミニウム粒子のペースト(板状アルミニウム粒子のアスペクト比:40、厚さ:0.25μm、面方向の長さ:10μm)30部(板状アルミニウム粒子の固形分量)とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0097】
得られた混合溶液100部とシリコーン系架橋剤〔信越化学工業(株)製、品番:X−92−122〕0.5部と白金触媒〔信越化学工業(株)製、品番:CAT−PL−50T〕1.0部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層が形成された接着性シートを得た。この接着性シートは、剥離紙を剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートとして用いることができた。
【0098】
なお、前記シリコーン系粘着性樹脂の周波数1Hzにおける25℃での貯蔵弾性率(G’)を実施例1と同様にして測定したところ、8.0×103Paであった。
【0099】
実施例10
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液186部(樹脂固形分量:93部)と板状アルミニウム粒子のペースト(板状アルミニウム粒子のアスペクト比:40、厚さ:0.25μm、面方向の長さ:10μm)7部(板状アルミニウム粒子の固形分量)とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0100】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.34部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層が形成された接着性シートを得た。この接着性シートは、剥離紙を剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートとして用いることができた。
【0101】
比較例1
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液190部(樹脂固形分量:95部)と板状アルミニウム粒子のペースト(板状アルミニウム粒子のアスペクト比:40、厚さ:0.25μm、面方向の長さ:10μm)5部(板状アルミニウム粒子の固形分量)とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0102】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.34部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層を形成させ、剥離紙から剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートを得た。
【0103】
比較例2
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液100部(樹脂固形分量:50部)と板状アルミニウム粒子のペースト(板状アルミニウム粒子のアスペクト比:40、厚さ:0.25μm、面方向の長さ:10μm)50部(板状アルミニウム粒子の固形分量)とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0104】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.20部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層を形成させ、剥離紙から剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートを得た。
【0105】
比較例3
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液80部(樹脂固形分量:40部)と球状アルミニウム粒子(直径:10μm)60部とを混合し、不揮発分の含有率が65質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0106】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.50部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層を形成させ、剥離紙から剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートを得た。
【0107】
比較例4
実施例1と同様にしてアクリル系粘着性樹脂溶液を調製した後、このアクリル系粘着性樹脂溶液160部(樹脂固形分量:80部)と球状アルミニウム粒子(直径:10μm)20部とを混合し、不揮発分の含有率が40質量%となるように酢酸エチルを添加し、十分に撹拌することにより、混合溶液を得た。
【0108】
得られた混合溶液100部とイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL−55E〕0.32部とを混合することにより、熱伝導性粘着剤を得た。得られた熱伝導性粘着剤を剥離紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕上に塗布し、100℃の雰囲気中で5分間乾燥させることにより、厚さが100μmの粘着剤層を形成させ、剥離紙から剥離することにより、基材を有しない両面に粘着剤層を有する接着性シートを得た。
【0109】
次に、各実施例または各比較例で得られた接着性シートを用いて以下の物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0110】
〔熱伝導性〕
各実施例または各比較例で得られた接着性シートを10枚重ねた後、50mm×120mmの大きさに裁断することにより、試験片を作製した。
【0111】
一方、標準物質としてシリコン、石英ガラスおよびジルコニアを用い、これらの熱伝導率を熱伝導率計〔京都電子工業(株)製、品番:QTM500〕で20±10℃の雰囲気中で測定したところ、シリコンの熱伝導率は0.24W/mK、石英ガラスの熱伝導率は1.41W/mK、ジルコニアの熱伝導率は3.3W/mKであった。
【0112】
次に、各標準物質の上に試験片を接着させ、前記と同様にして熱伝導率を測定し、標準物質と試験片との熱伝導率の偏差をプロットし、内挿法により熱伝導率を求め、以下の評価基準に基づいて熱伝導率を評価した。
[評価基準]
○:熱伝導率が0.8W/mK以上
△:熱伝導率が0.4W/mK以上0.8W/mK未満
×:熱伝導率が0.4W/mK未満
【0113】
〔耐熱保持力〕
各実施例または各比較例で得られた接着性シートの片面に厚さが25μmのポリエステルフィルムを貼り付け、幅25mm、長さ25mmの試験テープを作製した。あらかじめ研磨処理が施されたステンレス鋼板の上に前記で得られた試験テープを載せ、質量が2kgのローラーを1往復させ、両者を一体化させることにより、試験片を作製した。この試験片を70℃の雰囲気中で20分間養生させた後、同条件下で試験片に鉛直方向で質量1kgの荷重を取り付け、保持力試験機〔テスター産業(株)製〕を用いて24時間(1440分間)試験を行ない、試験開始から試験片がステンレス鋼板から剥がれ落ちるまでの時間を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
◎:試験片がステンレス鋼板から剥がれ落ちるまでの時間が1000分間以上
○:試験片がステンレス鋼板から剥がれ落ちるまでの時間が100分間以上1000分間未満
△:試験片がステンレス鋼板から剥がれ落ちるまでの時間が10分間以上100分間未満
×:試験片がステンレス鋼板から剥がれ落ちるまでの時間が10分間未満
【0114】
〔粘着性〕
各実施例または各比較例で得られた接着性シートの片面に厚さが25μmのポリエステルフィルムを貼り付け、幅25mm、長さ50mmの試験テープを作製した。あらかじめ研磨処理が施されたステンレス鋼板の上に前記で得られた試験テープを載せ、質量が2kgのローラーを1往復させ、両者を一体化させることにより、試験片を作製した。この試験片を相対湿度が50%であり、温度が23℃の雰囲気中で20分間養生させた後、この雰囲気中でQC引張試験機〔テスター産業(株)製〕を用いて試験片から接着性シートを300mm/minの引張速度で引き剥がし、そのときの接着力を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
◎:接着力が10N/25mm以上
○:接着力が5N/25mm以上10N/25mm未満
△:接着力が1N/25mm以上5N/25mm未満
×:接着力が1N/25mm未満であるか、または凝集破壊が発生
【0115】
〔耐定荷重剥離性〕
各実施例または各比較例で得られた接着性シートの片面に厚さが25μmのポリエステルフィルムを貼り付け、幅25mm、長さ30mmの試験テープを作製した。前記で得られた試験テープをアルミニウム板上に載せ、2kgローラーを1往復させ、両者を一体化させることにより、試験片を作製した。この試験片を70℃の雰囲気中で10分間養生させ、同条件下で試験片に垂直方向で質量100gの荷重を取り付けて2時間試験を行ない、試験開始から試験片がアルミニウム板から剥がれ落ちるまでの時間を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
○:試験片がアルミニウム板から剥がれ落ちるまでの時間が120分間以上
△:試験片がアルミニウム板から剥がれ落ちるまでの時間が50分間以上120分間未満
×:試験片がアルミニウム板から剥がれ落ちるまでの時間が50分間未満
【0116】
〔電気絶縁性〕
絶縁計〔東亜ディーケーケー(株)製、品番:SME−8331E〕を用い、温度が23±5℃であり、相対湿度が50±10%である雰囲気中でJIS C2151に準じて各実施例または各比較例で得られた接着性シートの体積抵抗率を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
○:体積抵抗率が1×1014Ω・cm以上(絶縁レベル)
×:体積抵抗率が1×1014Ω・cm未満(導電〜帯電防止レベル)
【0117】
【表1】

【0118】
表1に示された結果から、各実施例で得られた熱伝導性粘着剤は、いずれも、×の評価がまったくなく、各比較例で得られた熱伝導性粘着剤と対比して、良好な熱伝導性を有し、耐熱保持力、粘着性、耐定荷重剥離性および電気絶縁性に同時に優れていることがわかる。
【0119】
したがって、各実施例で得られた熱伝導性粘着剤および当該熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層を有する接着性シートは、いずれも、例えば、配線基板とヒートシンク、筐体などの放熱性が求められる部材とを接合させる際に好適に使用することができることがわかる。このように、配線基板と放熱性が求められる部材とを接合させた製品としては、例えば、発光素子が実装された基板および放熱器を有する照明用器具などが挙げられる。
【0120】
実験例
実施例1で得られた熱伝導性粘着剤の固形分100部あたり熱伝導性充填材30部の割合で、熱伝導性充填材として酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、アルミナまたはシリカが添加された熱伝導性粘着剤を調製した。得られた各熱伝導性粘着剤の熱伝導性を調べたところ、いずれも、実施例1で得られた熱伝導性粘着剤よりも熱伝導性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の熱伝導性粘着剤は、接着性シート、発光ダイオード(LED)、エレクトロルミネッセンスなどが用いられた照明用器具、バックライト用照明用器具、太陽電池、リチウムイオン電池などの電池、IC、CPUなどのコンピュータ用部品、モジュールなどの電力制御装置、インバーターなどの電源回路、タッチパネル、電磁シールドなどの用途に使用することが期待される。
【符号の説明】
【0122】
1 発光素子
2 基板
3 粘着剤層
4 放熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性樹脂および熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性粘着剤であって、前記熱伝導性充填剤が板状金属粒子であることを特徴とする熱伝導性粘着剤。
【請求項2】
板状金属粒子の含有率が7〜40質量%である請求項1に記載の熱伝導性粘着剤。
【請求項3】
板状金属粒子のアスペクト比が10〜100である請求項1または2に記載の熱伝導性粘着剤。
【請求項4】
板状金属粒子の厚さが0.01〜10μmであり、面方向の長さが0.1〜100μmである請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性粘着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性粘着剤からなる粘着剤層を少なくとも一方の面に有する接着性シート。
【請求項6】
発光素子が実装された基板および放熱器を有する照明用器具であって、前記基板と前記放熱器との間に請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性粘着剤が介在することを特徴とする照明用器具。

【図1】
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【公開番号】特開2012−97255(P2012−97255A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200095(P2011−200095)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】