説明

熱伝達組成物

本発明は、(i)1,3,3,3‐テトラフルオロプロペ‐1‐エン(R‐1234ze,CFCH=CHF);(ii)R‐1243zf(3,3,3‐トリフルオロプロペン)またはR‐1252zf、R‐1252yf、R‐1252ye、R‐1252zeおよびR‐1252zcから選択されるジフルオロプロペン(R‐1252)、およびそれらの混合物を含んでなる第二成分;および(iii)R‐32(ジフルオロメタン)、R‐744(CO)、R‐41(フルオロメタン)、R‐1270(プロペン)、R‐290(プロパン)、R‐161(フルオロエタン)およびそれらの混合物から選択される第三成分を含んでなる、熱伝達組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達組成物、特にR‐134a、R‐152a、R‐1234yf、R‐22、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R507およびR‐404aのような既存の冷媒の代替物として適する熱伝達組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
機械冷却システムおよび関連熱伝達装置、例えばヒートポンプおよび空調システムは周知である。このようなシステムにおいて、冷媒液は周辺ゾーンから熱をうけとり低圧で蒸発する。得られた蒸気は次いで圧縮され、凝縮器へ送られ、そこでそれが凝縮して、第二ゾーンへ熱を放出し、凝縮液は膨張弁を通って蒸発器へ戻され、こうしてサイクルを完了する。蒸気を圧縮して液体を送り出すために要する機械的エネルギーは、例えば電気モーターまたは内燃機関により供給される。
【0003】
適切な沸点および高い気化潜熱を有することに加えて、冷媒で好ましい性質としては、低毒性、不燃性、非腐食性、高安定性および不快臭からの解放がある。他の望ましい性質は、25バール以下の圧力で速やかな圧縮性、圧縮時の低い吐出温度、高い冷却能力、高い効率(高い成績係数)および望ましい蒸発温度で1バール超の蒸発器圧力である。
【0004】
ジクロロジフルオロメタン(冷媒R‐12)は性質の適切な組合せを有し、長年にわたり最も広く用いられた冷媒であった。完全および部分的ハロゲン化クロロフルオロカーボン、例えばジクロロジフルオロメタンおよびクロロジフルオロメタンが地球の保護オゾン層を損なっているという国際的問題のために、それらの製造および使用が厳しく制限され、最終的には完全に廃止されるという一般協定があった。ジクロロジフルオロメタンの使用は1990年代に廃止された。
【0005】
クロロジフルオロメタン(R‐22)は、その低いオゾン破壊係数のために、R‐12の代替物として導入された。R‐22が強力な温室効果ガスであるという問題から、その使用も廃止されつつある。R‐410AおよびR‐407(R‐407A、R‐407BおよびR‐407Cを含む)がR‐22の代替冷媒として導入されてきた。しかしながら、R‐22、R‐410AおよびR‐407はすべて高い地球温暖化係数(GWP、温室温暖化係数としても知られる)を有している。
【0006】
1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(冷媒R‐134a)がR‐12の代替冷媒として導入された。しかしながら、低いオゾン破壊係数を有するにもかかわらず、R‐134aは1300の温室温暖化係数(GWP、地球温暖化係数としても知られる)を有している。それより低いGWPを有するR‐134aの代替物を見つけることが望まれるのである。
【0007】
R‐152a(1,1‐ジフルオロエタン)がR‐134aの代替物として特定されていた。それはR‐134aよりやや効率的であり、120の温室温暖化係数を有している。しかしながら、R‐152aの燃焼性は、例えば自動車空調システムにおいてその安全な使用を行う上で、高すぎると判断されている。特に、空気中におけるその可燃下限は低すぎ、その火炎速度は高すぎ、その点火エネルギーは低すぎるのである。
【0008】
R‐1234yf(2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン)が、ある用途、特に自動車空調またはヒートポンピング用途でR‐134aに置き換わる代替冷媒候補として特定されていた。そのGWPは約4である。R‐1234yfは可燃性であるが、その燃焼特性は自動車空調またはヒートポンピングを含めた一部の用途で許容されると一般的にみなされている。特に、R‐152aと比べた場合、その可燃下限、点火エネルギーおよび火炎速度はすべてR‐152aの場合よりかなり低い。しかしながら、R‐1234yfのエネルギー効率および冷却能力はR‐134aの場合よりかなり低いことがわかり、加えて該流体はシステム配管および熱交換器で高い圧力降下を示すことがわかった。この結論として、R‐1234yfを用いて、R‐134aに匹敵するエネルギー効率および冷却性能を達成するためには、設備の複雑さの増加と配管のサイズの増大が必要とされ、設備に伴う間接的排出の増加に繋がる。更に、R‐1234yfの生産は、R‐134aより(フッ素化および塩素化された)原材料の使用に際して複雑かつ低効率であると思われる。そのように、R‐134aに置き換わるR‐1234yfの採用は、R‐134aの場合より原材料を多く消費し、温室効果ガスの間接的排出を多くもたらすのである。
【発明の開示】
【0009】
本発明に関するタイプの熱伝達装置は本質的に閉鎖系であるが、設備の作動中またはメンテナンス作業中における漏出のために大気への冷媒の損失が生じうる。したがって、ゼロオゾン破壊係数を有する物質で完全および部分的ハロゲン化クロロフルオロカーボン冷媒を置き換えることが重要である。
【0010】
オゾン破壊の可能性に加えて、大気中で有意な濃度のハロカーボン冷媒は地球温暖化(いわゆる温室効果)に関与しているかもしれないと示唆されていた。したがって、ヒドロキシルラジカルのような他の大気成分と反応しうる能力の結果として、または光分解プロセスによる速やかな分解の結果として、比較的短い大気寿命を有する冷媒を用いることが望ましいのである。
【0011】
温室効果ガスの排出に関して、空調または冷却システムを作動した環境影響は、冷媒のいわゆる“直接”GWPに関するのみならず、該システムを作動させる電気または燃料の消費に起因した二酸化炭素の排出を意味する、いわゆる“間接”排出に関しても考慮されねばならない。総等価温暖化影響(TEWI)分析またはライフサイクル炭素排出量(LCCP)分析として知られるものを含めて、この総GWP影響の幾つかの測定基準が開発されてきた。これら測定の双方には、冷媒GWPの効果の評価と、全体温暖化影響に及ぼすエネルギー効率を含む。
【0012】
低燃焼性のような改善された性質を有する代替冷媒を提供する必要性がある。フルオロカーボン燃焼化学は複雑かつ予測不能である。不燃性フルオロカーボンと可燃性フルオロカーボンとの混合が流体の燃焼性を減らすとは、必ずしも限らない。例えば、不燃性R‐134aが可燃性R‐152aと混合されると、該混合物の可燃下限が純粋R‐152aの場合と比べて低下しうる(即ち、該混合物は純粋R‐152aより可燃性となる)ことを、本発明者らは発見した。三元または四元組成物が考えられると、状況はより一層複雑で予測しづらくなる。
【0013】
ほとんどまたは全く修正なく冷却装置のような既存の装置に用いられる代替冷媒を提供する必要性もある。
【0014】
R‐1243zfは低燃焼性冷媒であり、比較的低いGWPを有している。その沸点、臨界温度および他の性質は、R‐134a、R‐410AおよびR‐407のような、それより高いGWP冷媒に代わりうる可能性をそれに与えている。R‐1243zf(HFC1243zfとしても知られる)は3,3,3‐トリフルオロプロペン(CFCH=CH)である。
【0015】
しかしながら、R‐1243zfの性質は、R‐134a、R‐410AおよびR‐407のような既存の冷媒の直接代替物として理想的である、というようなものではない。特に、その能力は低すぎ、これは、一定の圧縮器排気量を有して既存の冷媒用に設計された冷蔵庫または空調システムが、R‐1243zfで装填されかつ同一の操作温度で制御された場合に、さほど冷却できないことを意味している。この欠点がその燃焼性に加わると、単独で用いられた場合に、既存の冷媒の代替物としてその適性にも影響を与える。
【0016】
本発明の主目的は、したがって、低GWPを有しながら、例えば既存の冷媒(例えば、R‐134a、R‐1234yf、R‐152a、R‐22、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R507およびR‐404a)を用いて到達する場合の値の理想的には20%以内、好ましくはこれら値の10%以内またはそれ以下(例えば、約5%)で(“成績係数”として便宜上表示される)能力およびエネルギー効率をなおも有する、既存の冷却使用の代替物として適した、または独自に用いうる熱伝達組成物を提供することである。流体間におけるこの程度の差異は、大したコスト差を伴うことなく、設備およびシステム作動特徴の再設計により通常解決されることが、当業界で知られている。組成物は理想的には低毒性および許容しうる燃焼性も有しているべきである。
【0017】
本発明は、
(i)1,3,3,3‐テトラフルオロプロペ‐1‐エン(R‐1234ze,CFCH=CHF)と、
(ii)R‐1243zf(3,3,3‐トリフルオロプロペン)またはR‐1252zf、R‐1252yf、R‐1252ye、R‐1252zeおよびR‐1252zcから選択されるジフルオロプロペン(R‐1252)、およびそれらの混合物を含んでなる第二成分と、
(iii)R‐32(ジフルオロメタン)、R‐744(CO)、R‐41(フルオロメタン)、R‐1270(プロペン)、R‐290(プロパン)、R‐161(フルオロエタン)およびそれらの混合物から選択される第三成分と
を含んでなる熱伝達組成物の提供により、上記および他の欠点に取り組むものである。
【0018】
これらの組成物は、R‐134a(1,1,1,2‐テトラフルオロエタン)、R‐125(ペンタフルオロエタン)、R‐1234yf(2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン)およびそれらの混合物から選択される第四成分(iv)を含有してもよい。
【0019】
上記の化学物質は、例えばApollo Scientific(UK)から市販されている。
【0020】
別記されない限り、これらの組成物は本発明の組成物と以下で称される。この明細書は、上記された本発明の組成物の範囲内に属する多くの態様について記載している。例えば、本発明の組成物における諸成分の各々に関する化合物と、それら化合物および成分の好ましい量も、本発明の組成物の有利な性質とそれらについて提案される有用性と並んで、詳細に記載されている。ここで記載されているような本発明のこのような特徴は、当業者により理解されるように、適宜に、どのように組み合わせてもよい、と理解されることであろう。
【0021】
本発明の組成物はゼロのオゾン破壊係数を有する。
【0022】
意外にも、本発明の組成物は、低いGWPで、高い燃焼危険性をもたらすことなく、R‐134a、R‐152a、R‐1234yf、R‐22、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R507およびR‐404aのような既存の冷媒の代替物として、使用に際して許容される性質を発揮することがわかった。
【0023】
別記されない限り、ここで用いられている“低温度冷却”とは約−40〜約−80℃の蒸発温度を有する冷却を意味する。“中温度冷却”とは約−15〜約−40℃の蒸発温度を有する冷却を意味する。
【0024】
別記されない限り、GWPのIPCC(気候変動に関する政府間パネル)TAR(第三次評価報告書)値がここでは用いられていた。R‐1243zeのGWPは、公知の大気反応速度データに従い、R‐1234yfおよびR‐1225ye(1,2,3,3,3‐ペンタフルオロプロペ‐1‐エン)から類推して、4とされていた。
【0025】
選択された既存の冷媒混合物のGWPは、これに基づくと、以下の通りである:
R‐407A 1990
R‐407B 2695
R‐407C 1653
R‐404A 3784
R‐507 3850
R‐134a 1300
【0026】
一態様において、本発明の組成物はR‐134a、R‐22、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R‐507またはR‐404aより低いGWPを有している。好都合には、本発明の組成物のGWPは約3500、3000、2500または2000未満である。例えば、GWPは2500、2400、2300、2200、2100、2000、1900、1800、1700、1600または1500未満である。本発明の組成物のGWPは1300未満、好ましくは1000未満、更に好ましくは500、400、300または200未満、特に150または100未満、更には一部の場合に50未満である。
【0027】
好ましくは、本組成物は、本組成物の個別可燃性成分(例えばR‐1243zf)と比べた場合に、低い燃焼危険性のものである。一面において、本組成物は、R‐1243zf単独と比べて、(a)高い可燃下限;(b)高い点火エネルギー;または(c)低い火炎速度のうち1以上を有している。好ましい態様において、本発明の組成物は不燃性である。
【0028】
燃焼性は、2004年付けAddendum 34p通りの試験方法論でASTM標準E‐681を組み入れたASHRAE標準34に従い調べられ、その全内容が参照によりここに組み込まれる。
【0029】
一部の用途において、ASHRAE34方法論により不燃性として処方が分類されることは不要かもしれない;例えば冷却設備装填物を周囲へ漏出させることにより可燃性混合物を作ることが物理的に不可能であれば、適用に際し使用上安全とするほど十分に空気中で可燃限界が下げられる流体を開発することが可能である。別な冷媒を冷媒R‐1234ze(E)に加えた効果が、空気との混合物中でこうして燃焼性を変えていくことにある、と我々は発見したのである。
【0030】
一定圧力下における非共沸(zeotropic)混合物の沸点と露点温度との差異と考えられる温度勾配は、冷媒の特徴をなすものである;流体を混合物で置き換えることが望まれるならば、代替流体で類似したまたは低い勾配を有することが多くの場合に好ましい。一態様において、本発明の組成物は非共沸性である。
【0031】
便宜上、本発明の組成物の(蒸発器における)温度勾配は約15K未満、例えば約10Kまたは5K未満である。
【0032】
有利には、本発明の組成物の体積冷却能力は、それが置き換わる既存の冷媒流体の約15%以内、好ましくは約10%または更には約5%以内である。
【0033】
一態様において、本発明の組成物のサイクル効率(成績係数)は、それが置き換わる既存の冷媒流体の約10%以内、好ましくは約5%以内であるか、または更にはそれが置き換わる既存の冷媒流体より良い。
【0034】
便宜上、本発明の組成物の圧縮器吐出温度は、それが置き換わる既存の冷媒流体の約15K、好ましくは約10Kまたは更には約5K以内であるR‐407B/R‐404A/R‐507の場合)。
【0035】
第一成分(i)は1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze)である。R‐1234zeはE‐およびZ‐幾何異性体で存在している。本発明の組成物ではE‐異性体(R‐1234ze(E)またはトランス‐1234ze)を用いることが好ましい。これは、E‐異性体(約−19℃)と比べてZ‐異性体の比較的高い沸点(約+9℃)が、R‐1234ze(Z)を含有する組成物による既存の冷媒(例えば、R‐134aおよびR‐1234yf)の置き換えに際して、難しさを生じると考えられるからである。
【0036】
本発明の組成物は、典型的には、組成物の合計重量基準で、約5〜約95重量%、例えば約5〜約90%または約5〜約80%または約5〜約70%または約5〜約60%;あるいは約10〜約90%または約10〜約80%または約10〜約70%または約10〜約60%;あるいは約20〜約90%または約20〜約80%または約20〜約70%または約20〜約60%のR‐1234ze(E)を含有している。
【0037】
一面において、本発明の組成物は、約50重量%未満、例として約5〜約50重量%、例えば約10〜約50%または約20〜約50%のR‐1234ze(E)を含有している。
【0038】
一態様において、第二成分はR‐1243zf(3,3,3‐トリフルオロプロペン)である。
【0039】
第二成分(例えば、R‐1243zf)は、組成物の合計重量基準において、約5〜約95重量%、例えば約10〜約95%または約20〜約95%または約30〜約95%;あるいは約10〜約90%または約20〜約90%または約30〜約90%;あるいは約10〜約85%または約20〜約85%または約30〜約85%の量で本発明の組成物中に存在しうる。
【0040】
一面において、本発明の組成物は、約40重量%より多い、例として約40〜約95重量%、例えば約40〜約90%または約20〜約85%の第二成分(例えば、R‐1243zf)を含有している。
【0041】
一態様において、第三成分はR‐32(ジフルオロメタン)である。
【0042】
第三成分(例えば、R‐32)は、組成物の合計重量基準において、約1〜約40重量%、例えば約2〜約40%または約3〜約40%または約5〜約40%;あるいは約1〜約30%または約2〜約30%または約5〜約30%;あるいは約1〜約20%または約2〜約20%または約5〜約20%の量で本発明の組成物中に存在しうる。
【0043】
一面において、本発明の組成物は、約15重量%未満、例として約1〜約15重量%、例えば約2〜約15%または約3〜約15%の第三成分(例えば、R‐32)を含有している。
【0044】
本発明の組成物は、場合により、R‐134a(1,1,1,2‐テトラフルオロエタン)、R‐125(ペンタフルオロエタン)、R‐1234yf(2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン)およびそれらの混合物から選択される第四成分(iv)を含有している。一面において、第四成分はR‐134a、R‐1234yfおよびそれらの混合物から選択される。好ましくは、第四成分はR‐134aである。
【0045】
第四成分(例えば、R‐134aおよび/またはR‐1234yf)は、組成物の合計重量基準において、約1〜約70重量%の量で存在しうる。例えば、本発明の組成物は、組成物の合計重量基準において、約1〜約40重量%または約1〜約50%、例えば約2〜約40%または約3〜約40%または約5〜約40%;あるいは約1〜約25%または約2〜約25%または約5〜約25%;あるいは約1〜約15%または約2〜約15%または約5〜約15%の量で第四成分を含有しうる。
【0046】
一面において、本発明の組成物は、約10重量%未満、例として約1〜約10重量%、例えば約2〜約10%または約3〜約10%の第三成分(例えば、R‐32)を含有している。
【0047】
別な面において、本発明の組成物は、例えば燃焼性を減らすために、第四成分(例えば、R‐134a)を多く含有してもよい。このような組成物は、組成物の合計重量基準で、約40〜約70重量%、約50〜約70%、約40〜約60%または約50〜約60%の第四成分を含有しうる。
【0048】
本発明による組成物は、便宜上実質的にR‐1225(ペンタフルオロプロペン)、便宜上実質的にR‐1225ye(1,2,3,3,3‐ペンタフルオロプロペン)またはR‐1225zc(1,1,3,3,3‐ペンタフルオロプロペン)を含有せず(例えば0.5%以下、好ましくは0.1%以下)、該化合物は毒性問題を伴うことがある。
【0049】
本発明の組成物の諸成分の量は上記された値と異なってもよく、第二および第三成分として用いられる具体的化合物、置き換えられる冷媒と、例えば空調または冷却における組成物の使用のようなファクターに依存する。
【0050】
ここで用いられているように、本組成物で挙げられたすべての%量は、請求項を含めて、別記されない限り、組成物の合計重量を基準にした重量によるものである。
【0051】
便宜上、本発明の組成物は三元系であり、即ちそれらはR‐1243zeと、第二および第三成分(ii)および(iii)で掲載された化合物の各々の1種を含んでなる。一方では、しかしながら、本組成物は4種以上の化合物を含有してもよい。例えば、それらはR‐1243zeと、第二、第三および第四成分(ii)、(iii)および(iv)で掲載された化合物の各々1種を含有してもよい。
【0052】
本発明の好ましい組成物は、R‐1234ze(E)、R‐1243zfおよびR‐32の三元ブレンドである。
【0053】
R‐1243zf、R‐32およびR‐1234ze(E)のブレンドである本発明の組成物は、典型的には:
組成物の合計重量基準で、約5〜95重量%、5〜90%、5〜80%、5〜70%、10〜95%、10〜90%、10〜80%、10〜70%、15〜95%、15〜90%、15〜80%、15〜70%、20〜95%、20〜90%、20〜80%、20〜70%、例えば約15〜約80または90%(例えば、約20〜約70%)のR‐1243zf;
組成物の合計重量基準で、約5〜95重量%、5〜90%、5〜80%、5〜70%、10〜95%、10〜90%、10〜80%、10〜70%、15〜95%、15〜90%、15〜80%、15〜70%、20〜95%、20〜90%、20〜80%、20〜70%、例えば約15〜約80%(例えば、約20〜約70%)のR‐1234ze(E);および
組成物の合計重量基準で、約1〜約20重量%、2〜20%、5〜20%、1〜15%、2〜15%、5〜15%、1〜12%、2〜12%、5〜12%(例えば、約2〜約10または15%)のR‐32;
を含有している。
【0054】
一面において、R‐1243zf、R‐32およびR‐1234ze(E)のブレンドは、典型的には、組成物の合計重量基準で、約15重量%未満のR‐32および約50重量%未満のR‐1234ze(E)を含有し、残部がR‐1243zfである。
【0055】
別な面において、R‐1243zf、R‐32およびR‐1234ze(E)のブレンドは、約5〜約15重量%R‐32、約5〜約95重量%R‐1234ze(E)および約5〜約95重量%R‐1243zfを含有している。このようなブレンドは、約5〜約15重量%R‐32、約5〜約50重量%R‐1234ze(E)および約35〜約90重量%R‐1243zfを含有してもよい。様々な量の各成分を含有している一連のこのようなブレンドが実施例で掲載されている。
【0056】
ここで記載されたR‐1243zf、R‐32およびR‐1234ze(E)のブレンドはいずれも、更に加えて、第四の成分、例えばR‐134aおよび/またはR‐1234yfを含有してよい。
【0057】
本発明の態様は、R‐1243zf、R‐32、R‐134aおよびR‐1234ze(E)の四元ブレンドにも関する。R‐134aは、組成物の合計重量基準において、約1〜約70重量%の量で存在しうる。
【0058】
一面において、R‐1243zf、R‐32、R‐134aおよびR‐1234ze(E)の四元ブレンドは、典型的には、組成物の合計重量基準において、約1〜約20重量%、約2〜約20%、約3〜約20%、約1〜約15%、約2〜約15%、約3〜約15%、約1〜約12%、約2〜約12%、約3〜約12%(例えば、約1〜約10または15%)の量でR‐134aを含有している。
【0059】
例えば、R‐1243zf、R‐32、R‐134aおよびR‐1234ze(E)のブレンドは、組成物の合計重量基準で、約1〜約15重量%R‐32(例えば、約2〜約10%)、約1〜約15重量%R‐134a(例えば、約2〜約10%)、約5〜約95重量%R‐1234ze(E)(例えば、約10〜約90%)および約5〜約95重量%R‐1243zf(例えば、約10〜約90%)を含有しうる。一連のこのような四元ブレンドが実施例で掲載されている。
【0060】
R‐1243zf、R‐32、R‐134aおよびR‐1234ze(E)の好ましいブレンドは、組成物の合計重量基準で、約1〜約15重量%R‐32、約2〜約10重量%R‐134a、約5〜約50重量%R‐1234ze(E)および約25〜約92重量%R‐1243zfを含有しうる。
【0061】
R‐134aに関して考えられた一部の既存技術は、一部の本発明の流体の低燃焼性すら受け入れられないことがある(150未満のGWPを有する本発明の組成物はいずれも、ある程度可燃性であると考えられている)。
【0062】
本発明者らは、R‐1243zfとR‐134aおよびR‐1234yfとR‐134aとの二元混合物の限定不燃性組成物を調べるために、12リットルフラスコ中60℃でASHRAE標準34の方法論を用いてみた。48%/52%(重量基準)R‐134a/R‐1234yf混合物が不燃性であり、79%/21%(重量基準)R‐134a/R‐1243zf混合物が不燃性である、とわかった。R‐1234yf混合物は相当不燃性R‐1243zf混合物より低いGWP(625)を有し、やや高い体積能力も示す。しかしながら、その圧力降下特性とサイクルエネルギー効率はR‐1243zfブレンドより悪くなる。これらの効果を改善しようとすることが望まれるのである。
【0063】
本発明の別な面はR‐32、R‐134a、R‐1234ze(E)およびR‐1243zfの混合物に関し、その全体的環境影響はR‐134a、R‐134a/R‐1234yfの相当不燃性二元混合物またはR‐134a/R‐1243zfの不燃性二元混合物の場合より低く、その組成物は不燃性である。
【0064】
これは、比較的高い量のR‐134aを含有した本発明の四元R‐1243zf/R‐32/R‐134a/R‐1234ze(E)組成物でも達成されうる。例えば、本発明は、組成物の合計重量基準で、約1〜約10重量%(例えば、約2〜約8%)R‐32、約40〜約70重量%(例えば、約50〜約60%)R‐134a、約10〜約40重量%(例えば、約20〜約30%)R‐1234ze(E)および約5〜約40重量%(例えば、約10〜約25%)R‐1243zfを含有した、R‐1243zf/R‐32/R‐134a/R‐1234ze(E)のブレンドを提供する。一連のこのような四元ブレンドが実施例で掲載されている。
【0065】
本発明の熱伝達組成物は既存の設計の設備における使用に適し、既存のHFC冷媒と一緒に現在用いられている潤滑剤の全種類と適合する。それらは、場合により、適切な添加剤の使用により鉱油で安定化または適合化される。
【0066】
好ましくは、熱伝達設備で用いられる場合、本発明の組成物は潤滑剤と組み合わされる。
【0067】
便宜上、潤滑剤は鉱油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン類(PAB)、ポリオールエステル類(POE)、ポリアルキレングリコール類(PAG)、ポリアルキレングリコールエステル類(PAGエステル)、ポリビニルエーテル類(PVE)、ポリ(アルファ‐オレフィン類)およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0068】
有利には、潤滑剤は更に安定剤を含んでなる。
【0069】
好ましくは、安定剤はジエンベース化合物、ホスフェート類、フェノール化合物類およびエポキシド類とそれらの混合物からなる群より選択される。
【0070】
便宜上、本冷媒組成物は更に追加の難燃剤を含んでなる。
【0071】
有利には、追加の難燃剤はトリ(2‐クロロエチル)ホスフェート、(クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2,3‐ジブロモプロピル)ホスフェート、トリ(1,3‐ジクロロプロピル)ホスフェート、リン酸二アンモニウム、様々なハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン、トリフルオロヨードメタン、ペルフルオロアルキルアミン類、ブロモ‐フルオロアルキルアミン類およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0072】
好ましくは、熱伝達組成物は冷媒組成物である。
【0073】
好ましくは、熱伝達装置は冷却装置である。
【0074】
便宜上、熱伝達装置は自動車空調システム、住宅用空調システム、業務用空調システム、住宅用冷蔵庫システム、住宅用冷凍庫システム、業務用冷蔵庫システム、業務用冷凍庫システム、冷却機空調システム、冷却機冷却システムと、業務用または住宅用ヒートポンプシステムからなる群より選択される。好ましくは、熱伝達装置は冷却装置または空調システムである。
【0075】
有利には、熱伝達装置は遠心型圧縮器を内蔵している。
【0076】
本発明は、ここで記載されているような熱伝達装置における本発明の組成物の使用も提供する。
【0077】
本発明の別な面によると、本発明の組成物を含んでなる発泡剤が提供される。
【0078】
本発明の他の面によると、発泡体を形成可能な1種以上の成分と本発明の組成物を含んでなる発泡性組成物が提供される。
【0079】
好ましくは、発泡体を形成可能な1種以上の成分は、ポリウレタン類、熱可塑性ポリマーおよび樹脂、例えばポリスチレンおよびエポキシ樹脂から選択される。
【0080】
本発明の別な面によると、本発明の発泡性組成物から得られる発泡体が提供される。
【0081】
好ましくは、発泡体は本発明の組成物を含んでなる。
【0082】
本発明の他の面によると、スプレーされるべき物質と、本発明の組成物を含んでなる噴射剤とを含んでなる、スプレー用組成物が提供される。
【0083】
本発明の別な面によると、本発明の組成物を凝縮させ、その後、冷却されるべき物品の近くで該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を冷却する方法が提供される。
【0084】
本発明の他の面によると、加熱されるべき物品の近くで本発明の組成物を凝縮させ、その後、該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を加熱する方法が提供される。
【0085】
本発明の別な面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒とバイオマスを接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、バイオマスから物質を抽出する方法が提供される。
【0086】
本発明の他の面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒と物品を接触させることを含んでなる、物品を清浄化する方法が提供される。
【0087】
本発明の別な面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒と水溶液を接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、水溶液から物質を抽出する方法が提供される。
【0088】
本発明の他の面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒と粒状固体マトリックスを接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、粒状固体マトリックスから物質を抽出する方法が提供される。
【0089】
本発明の別な面によると、本発明の組成物を含有している機械的動力発生装置が提供される。
【0090】
好ましくは、機械的動力発生装置はランキンサイクルまたはその変法を用いて熱から仕事を発生するように構成されている。
【0091】
本発明の他の面によると、既存の熱伝達流体を除去して、本発明の組成物を導入する工程を含んでなる、熱伝達装置を改修する方法が提供される。好ましくは、熱伝達装置は冷却装置または(スタティック)空調システムである。有利には、該方法は温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)排出権の割当を得る工程を更に含んでなる。
【0092】
本発明の別な面において、既存の化合物または組成物を含んでなる製品の取扱いから生じる環境影響を減らす方法が提供され、該方法は少なくとも部分的に既存の化合物または組成物を本発明の組成物で置き換えることを含んでなる。好ましくは、この方法は温室効果ガス排出権の割当を得る工程を含んでなる。
【0093】
環境影響とは、我々は製品の取扱いによる温室温暖化ガスの発生および排出を含める。
【0094】
上記のように、この環境影響は、漏出または他の損失から有意な環境影響を有する化合物または組成物の排出を含むのみならず、装置によりその使用期間中に消費されるエネルギーから生じる二酸化炭素の排出も含めて考えられる。このような環境影響は総等価温暖化影響(TEWI)として知られる測定により定量しうる。この測定は、例えばスーパーマーケット冷却システムを含めた、ある固定冷却および空調設備の環境影響の定量化に用いられてきた(例えばhttp://en.wikipedia.org/wiki/Total equivalent warming impact参照)。
【0095】
環境影響は、化合物または組成物の合成および製造から生じる温室効果ガスの排出を含めて、更に考えられる。この場合には、ライフサイクル炭素排出量(LCCP、例えばhttp://www.sae.org/events/aars/presentations/2007papasavva.pdf参照)として知られる測定を行うために、製造時排出がエネルギー消費および直接損失効果に加えられる。LCCPの使用は自動車空調システムの環境影響を評価する際に一般的である。
【0096】
排出権は地球温暖化に関与している汚染物質排出を減らすために与えられ、例えば預託、取引または売却される。それらは二酸化炭素の換算量で便宜上表示される。そのため、1kgのR‐407Aの排出が避けられるとすれば、1×1990=1990kg CO換算の排出権が与えられる。
【0097】
本発明の他の態様において、(i)既存の化合物または組成物を本発明の組成物で置き換え(本発明の組成物は既存の化合物または組成物より低いGWPを有している);および(ii)該置換え工程で温室効果ガス排出権を得ることを含んでなる、温室効果ガス排出権を生み出す方法が提供される。
【0098】
好ましい態様において、本発明の組成物の使用は、既存の化合物または組成物の使用により達成される場合よりも低い総等価温暖化影響および/または低いライフサイクル炭素排出量を有する設備をもたらす。
【0099】
これらの方法は、いずれか適切な製品で、例えば、空調、冷却(例えば、低および中温度冷却)、熱伝達、発泡剤、エアロゾルまたはスプレー用噴射剤、気体誘電体、凍結手術、獣医処置、歯科処置、消火、火炎抑制、溶媒(例えば、フレーバーおよびフレグランスの担体)、クリーナー、エアホーン、ペレットガン、局所麻酔剤および膨張用途の分野で行われる。好ましくは、分野は空調または冷却である。
【0100】
適切な製品の例としては、熱伝達装置、発泡剤、発泡性組成物、スプレー用組成物、溶媒および機械的動力発生装置がある。好ましい態様において、製品は熱伝達装置、例えば冷却装置または空調ユニットである。
【0101】
既存の化合物または組成物は、それに置き換わる本発明の組成物より高い、GWPおよび/またはTEWIおよび/またはLCCPで測定されるような環境影響を有している。既存の化合物または組成物はフルオロカーボン化合物、例えばペルフルオロ‐、ヒドロフルオロ‐、クロロフルオロ‐またはヒドロクロロフルオロ‐カーボン化合物を含んでなるか、またはそれはフッ素化オレフィンを含んでなる。
【0102】
好ましくは、既存の化合物または組成物は冷媒のような熱伝達化合物または組成物である。置き換えられる冷媒の例としては、R‐134a、R‐152a、R‐1234yf、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R507、R‐22およびR‐404Aがある。
【0103】
いかなる量の既存の化合物または組成物も、環境影響を減らせるように置き換えられる。これは、置き換えられる既存の化合物または組成物の環境影響と、本発明の代替組成物の環境影響に依存する。好ましくは、製品中における既存の化合物または組成物は本発明の組成物で完全に置換えられる。
【実施例】
【0104】
本発明の選択された組成物の性能を蒸気圧縮サイクルの理論的モデルで評価した。該モデルでは、流体の関連熱力学的性質を計算するために、各成分の理想ガスエンタルピーの相関と一緒に、混合物の蒸気圧および蒸気液体平衡挙動に関して実験で測定されたデータを用いて、状態のPeng Robinson方程式へ回帰した。該モデルをThe Mathworks Ltd.により英国で発売されたMatlabソフトウェアパッケージで実施した。R‐32およびR‐134aの理想ガスエンタルピーは、パブリックドメイン計測情報、即ちソフトウェアパッケージ REFPROP v8.0で例示されているようなNIST Fluid Properties Databaseから求めた。Polingらによる”The Properties of Gases and Liquids” 5th edition(参照によりここに組み込まれる)で記載されているようなJobackのグループ寄与法に基づく信頼しうる評価技術が、フッ素化オレフィン類に関する理想ガスエンタルピーの温度変動を評価するために用いられた。加えて、R‐1234yfおよびR‐1234ze(E)の理想ガス熱容量をある温度範囲にわたり実験で求めた。Joback予測法がフッ素化プロペン類の熱容量に関して許容しうる正確さを呈したことを、結果は示した。
【0105】
これらの計算は、下記条件を用いて、(例えば)INEOS Fluor“KleaCalc”ソフトウェア(当業者に知られている冷却および空調システムの性能を予測するために有用な他のモデルも用いてよい)で用いられているような標準アプローチに従い行った:
平均蒸発温度: 5℃
平均凝縮温度: 50℃
蒸発器過熱: 10K
凝縮器過冷: 5K
蒸発器圧力降下: 0バール
吸引ライン圧力降下: 0バール
凝縮器圧力降下: 0バール
冷却力: 6kW
圧縮器吸引温度: 15℃
圧縮器等エントロピー効率: 67%
【0106】
吸引ライン条件下における流体の相対的圧力降下特性が、非圧縮性流体圧力降下に関するDarcy-Weisbach方程式を用い、摩擦圧力降下に関するColebrook関係式を用い、以下と仮定して評価された:
一定冷却能力(上記のように6kW)
吸引パイプの有効内径:16.2mm
内部が滑らかと仮定された吸引パイプ
圧縮器吸引温度および圧力で評価されたガス密度
非圧縮性と仮定されたガス
同一温度および圧力でR‐134aの場合に匹敵するとされたガス粘性
【0107】
Darcy-WeisbachおよびColebrook方程式はASHRAE Handbook(2001 Fundamentals Volume)Section 2から引用したが、それは参照によりここに組み込まれる。
【0108】
表1は純粋流体R‐1234yf、R‐134aおよびR‐1243zfの比較性能を示している。
【表1】

【0109】
R‐1243zfおよびR‐1234ze双方の圧力降下および能力特性はR‐134aと比べて悪いことがわかる。
【0110】
本発明の一部の三元R‐32/R‐1234ze(E)/R‐1243zfおよび四元R‐32/R‐1234ze(E)/R‐1243zf/R‐134aブレンドの(上記方法を用いて計算された)性能データが、表2〜9で掲載されている。表2の組成物は不燃性であると考えられる。
【0111】
実施例は例示にすぎず、非制限的である。本発明は請求項により規定されている。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)E‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペ‐1‐エン(R‐1234ze(E))と、
(ii)R‐1243zf(3,3,3‐トリフルオロプロペン)またはR‐1252zf、R‐1252yf、R‐1252ye、R‐1252zeおよびR‐1252zcから選択されるジフルオロプロペン(R‐1252)、およびそれらの混合物を含んでなる第二成分と、
(iii)R‐32(ジフルオロメタン)、R‐744(CO)、R‐41(フルオロメタン)、R‐1270(プロペン)、R‐290(プロパン)、R‐161(フルオロエタン)およびそれらの混合物から選択される第三成分と
を含んでなる熱伝達組成物。
【請求項2】
第二成分がR‐1243zfである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第三成分がR‐32である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物の合計重量基準で、約5〜約95重量%のR‐1234ze(E)を含有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物の合計重量基準で、約5〜約95重量%の第二成分を含有している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の合計重量基準で、約1〜約40重量%の第三成分を含有している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
R‐1234ze(E)、R‐1243zfおよびR‐32のブレンドである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物の合計重量基準で、約5〜約15重量%R‐32、約5〜約95重量%R‐1234ze(E)および約5〜約95重量%R‐1243zfを含有している、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
約5〜約50重量%R‐1234ze(E)および約35〜約90重量%R‐1243zfを含有している、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
R‐134a(1,1,1,2‐テトラフルオロエタン)、R‐125(ペンタフルオロエタン)、R‐1234yf(2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン)およびそれらの混合物から選択される第四成分(iv)を更に含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
第四成分がR‐134aである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
第四成分が、組成物の合計重量基準において、約1〜約70重量%の量で存在している、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
R‐1243zf、R‐32、R‐134aおよびR‐1234ze(E)のブレンドである、請求項10〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物の合計重量基準で、約1〜約15重量%R‐32、約1〜約15重量%R‐134a、約5〜約95重量%R‐1234ze(E)および約5〜約95重量%R‐1243zfを含有している、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
約5〜約50重量%R‐1234ze(E)および約25〜約92重量%R‐1243zfを含有している、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
組成物の合計重量基準で、約1〜約10重量%R‐32、約40〜約70重量%R‐134a、約10〜約40重量%R‐1234ze(E)および約5〜約40重量%R‐1243zfを含有している、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
組成物が1000未満、好ましくは150未満のGWPを有している、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
温度勾配が約15K未満、好ましくは約10K未満である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
組成物が、置き換えようと意図される既存の冷媒の約15%以内、好ましくは約10%以内の体積冷却能力を有している、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
組成物がR‐1243zf単独よりも可燃性が低い、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
組成物が、R‐1243zf単独と比べて、
(a)高い可燃限界、
(b)高い点火エネルギー、および/または
(c)低い火炎速度
を有している、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
不燃性である、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
組成物が、置き換えようと意図される既存の冷媒の約10%以内のサイクル効率を有している、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
組成物が、置き換えようと意図される既存の冷媒の約15K以内、好ましくは約10K以内の圧縮器吐出温度を有している、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
潤滑剤を更に含んでなる、請求項1〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
潤滑剤が、鉱油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン類(PAB)、ポリオールエステル類(POE)、ポリアルキレングリコール類(PAG)、ポリアルキレングリコールエステル類(PAGエステル)、ポリビニルエーテル類(PVE)、ポリ(アルファ‐オレフィン類)およびそれらの組合せから選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
安定剤を更に含んでなる、請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
安定剤が、ジエンベース化合物類、ホスフェート類、フェノール化合物類およびエポキシド類ならびにそれらの混合物から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
追加の難燃剤を更に含んでなる、請求項1〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
追加の難燃剤が、トリ(2‐クロロエチル)ホスフェート、(クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2,3‐ジブロモプロピル)ホスフェート、トリ(1,3‐ジクロロプロピル)ホスフェート、リン酸二アンモニウム、様々なハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン、トリフルオロヨードメタン、ペルフルオロアルキルアミン類、ブロモ‐フルオロアルキルアミン類およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
冷媒組成物である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を含有している、熱伝達装置。
【請求項33】
熱伝達装置における、請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項34】
冷却装置である、請求項32または33に記載の熱伝達装置。
【請求項35】
自動車空調システム、住宅用空調システム、業務用空調システム、住宅用冷蔵庫システム、住宅用冷凍庫システム、業務用冷蔵庫システム、業務用冷凍庫システム、冷却機空調システム、冷却機冷却システムと、業務用または住宅用ヒートポンプシステムからなる群より選択される、請求項34に記載の熱伝達装置。
【請求項36】
圧縮器を内蔵している、請求項34または35に記載の熱伝達装置。
【請求項37】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、発泡剤。
【請求項38】
発泡体を形成可能な1種以上の成分と請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物とを含んでなる発泡性組成物であって、発泡体を形成可能な1種以上の成分が、ポリウレタン類、熱可塑性ポリマーおよび樹脂、例えばポリスチレンおよびエポキシ樹脂と、それらの混合物から選択される、発泡性組成物。
【請求項39】
請求項38に記載の発泡性組成物から得られる、発泡体。
【請求項40】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、請求項39に記載の発泡体。
【請求項41】
スプレーされるべき物質と、請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる噴射剤とを含んでなる、スプレー用組成物。
【請求項42】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を凝縮させ、その後、冷却されるべき物品の近くで該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を冷却する方法。
【請求項43】
加熱されるべき物品の近くで請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を凝縮させ、その後、該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を加熱する方法。
【請求項44】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒とバイオマスを接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、バイオマスから物質を抽出する方法。
【請求項45】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒と物品を接触させることを含んでなる、物品を清浄化する方法。
【請求項46】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒と水溶液を接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、水溶液から物質を抽出する方法。
【請求項47】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒と粒状固体マトリックスを接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、粒状固体マトリックスから物質を抽出する方法。
【請求項48】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を含有している、機械的動力発生装置。
【請求項49】
ランキンサイクルまたはその変法を用いて熱から仕事を発生するように構成されている、請求項48に記載の機械的動力発生装置。
【請求項50】
既存の熱伝達流体を除去して、請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を導入する工程を含んでなる、熱伝達装置を改修する方法。
【請求項51】
熱伝達装置が冷却装置である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
熱伝達装置が空調システムである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
既存の化合物または組成物を含んでなる製品の取扱いから生じる環境影響を減らす方法であって、少なくとも部分的に既存の化合物または組成物を請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物で置き換えることを含んでなる、方法。
【請求項54】
(i)既存の化合物または組成物を請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物で置き換えるが、その際、請求項1〜39のいずれか一項に記載の組成物が既存の化合物または組成物より低いGWPを有していること、および(ii)該置換え工程で温室効果ガス排出権を得ることを含んでなる、温室効果ガス排出権を生み出す方法。
【請求項55】
本発明の組成物の使用が、既存の化合物または組成物の使用により達成される場合よりも低い総等価温暖化影響および/または低いライフサイクル炭素排出量をもたらす、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
空調、冷却、熱伝達、発泡剤、エアロゾルまたはスプレー用噴射剤、気体誘電体、凍結手術、獣医処置、歯科処置、消火、火炎抑制、溶媒、クリーナー、エアホーン、ペレットガン、局所麻酔剤および膨張用途の分野からの製品に行われる、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
製品が熱伝達装置、発泡剤、発泡性組成物、スプレー用組成物、溶媒または機械的動力発生装置から選択される、請求項53または56に記載の方法。
【請求項58】
製品が熱伝達装置である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
既存の化合物または組成物が熱伝達組成物である、請求項53〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
熱伝達組成物が、R‐134a、R‐1234yfおよびR‐152a、R‐22、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R‐507およびR‐404aから選択される冷媒である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
所望により実施例を参照しつつ、実質的にここまでに記載されるような、あらゆる新規の熱伝達組成物。

【公表番号】特表2012−524137(P2012−524137A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505228(P2012−505228)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000774
【国際公開番号】WO2010/119265
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(510127697)メキシケム、アマンコ、ホールディング、ソシエダッド、アノニマ、デ、カピタル、バリアブレ (24)
【氏名又は名称原語表記】MEXICHEM AMANCO HOLDING S.A. DE C.V.
【Fターム(参考)】