説明

熱処理用治具の監視方法、及び熱処理用治具の監視装置

【課題】熱処理用バスケットのライフサイクルを把握可能な熱処理用バスケットの監視方法、及び熱処理用バスケットの監視装置の提供。
【解決手段】熱処理用バスケット10にワークを収容して熱処理工程に用いられる熱処理用バスケット10の管理システムにおいて、熱処理用バスケット10に識別プレートである第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bを備え、熱処理用バスケット10の通過を検出するセンサ26と、センサ26からの信号をトリガーとして熱処理用バスケット10を側面から撮影するカメラ30と、カメラ30で撮影した画像の画像データDを保存する保存端末31と、保存端末31から画像データDを有線又は無線にて送られる閲覧用端末34と、を備え、熱処理用バスケット10の画像データDを、閲覧用端末34に識別プレートである第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bに示されるグループ毎に閲覧可能に保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理用治具の寿命を管理するシステムに関し、具体的には熱処理用治具の損耗を監視することでバケットの交換時期を把握する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品等を熱処理するにあたり、熱処理用治具を用いて焼入炉に入れ、熱処理することは一般的に行われている。熱処理用治具にはバスケット状の形状をしたものを用いるケースが多い。熱処理をするにあたって、焼入炉の温度は必要とされる処理によって異なるが、通常700℃以上であり、耐熱性を考慮すると金属製のバケットを用いて焼き入れすることが望ましい。そして、通常用いられるのはステンレス製や、耐熱鋳鋼製の熱処理用バスケットが多い。
【0003】
しかし、いくらステンレス製の熱処理用バスケットに耐熱性があるとはいえ、繰り返し焼入炉を通過すると熱サイクルによって変形してしまい、熱処理用バスケットとして用いることが困難になってくる。この手の熱処理用バスケットは、ワークを大量に熱処理する事を目的として用いられている場合が多く、積み重ねて使用される。このため、変形してしまうと積み重ねることが困難になってしまう。
また、構造上、溶接を用いて製作されることになるが、熱サイクルによって溶接部分が外れ、熱処理用バスケットとしての機能を果たさなくなる虞もある。
【0004】
したがって、熱処理用バスケットがある程度変形してきたところで、熱処理用バスケットを交換する必要がある。
従来は、作業者が熱処理用バスケットの状態を目視で確認して交換するようなシステムが多かったが、扱う熱処理用バスケットの数が多くなると確認作業も大変であるし、全ての熱処理用バスケットを確実にチェックできるかという点も問題となる。このような問題を解決する為に特許文献1のような技術が開示されている。
【0005】
特許文献1には、熱処理用バスケットの管理方法についての技術が開示されている。
特許文献1の熱処理用バスケットにはペグと呼ばれる認識タグが取り付けられており、ペグに設けられた穴の有無を検出することで熱処理用バスケットの固体認識をする。そして、熱処理用バスケットはグループ化されて管理される。
グループ化されて管理される熱処理用バスケットは、加工ラインに用いられており熱処理工程ラインで熱処理炉に入れられるので、熱処理炉を通過する回数をチェックしておき規定回数を超えた熱処理用バスケットは人手で検査される。検査では熱処理用バスケットの歪みを確認し、許容範囲を超えたら交換する。
このように熱処理用バスケットの管理を行うことで、熱処理用バスケットの取り扱いを自動化している。
【0006】
【特許文献1】特開2000−280152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には以下に説明する課題があると考えられる。
特許文献1の熱処理用バスケットを通過回数で管理する方法は、事前に熱処理用バスケットの耐熱試験を行い、歪みが発生するまでの回数をある程度把握しておく必要がある。
あまり回数の既定値を小さく設定すると、検査の手間が増大して自動化の意味が無くなる。一方、回数の既定値を大きく設定すると、検査する前に歪みが大きくなり問題が発生する虞がある。
【0008】
このため、適切な回数を設定する為にはある程度の試験が必要であり、熱処理用バケットの設計変更が必要になった場合等には、試験をやり直す必要がある。
大規模な工場ではこのような試験を行い、自動化する事にはメリットがあるが、規模の小さな工場ではこのような試験を行うことは難しい。また、人手は極力かけたくない為、定期的に熱処理用バスケットの全数の歪みをチェックすることは困難である。
このような事情はバスケット形状に限らず、熱処理用治具全般に言えることであり、熱による変形は熱処理用治具にとっては好ましくない。
【0009】
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、熱処理用治具のライフサイクルを把握可能な熱処理用治具の監視方法、及び熱処理用治具の監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明による熱処理用治具の監視方法は以下のような特徴を有する。
(1)金属製のワークを熱処理用治具に収容し、前記熱処理用治具を熱処理炉に投入して熱処理する熱処理工程で、前記熱処理用治具の監視を行う熱処理用治具の監視方法において、
前記熱処理工程の一部に配置される前記熱処理用治具の通過を検出するセンサによる検出信号をトリガーとして、前記熱処理用治具を側面から撮影装置を用いて撮影し、前記撮影装置で撮影した画像の画像データを保存端末に移動し、前記保存端末から前記画像データを有線又は無線にて閲覧用端末に送信し、前記熱処理用治具の前記画像データを、前記閲覧用端末に前記熱処理用治具に備えられる識別プレートで区別されるグループ毎に閲覧可能に保存することを特徴とする。
【0011】
(2)(1)に記載の熱処理用治具の監視方法において、
前記閲覧用端末に表示される前記画像データは、前記識別プレートで区別されるグループ毎に並べて閲覧可能であることを特徴とする。
【0012】
また、前記目的を達成する為に、本発明による熱処理用治具の監視装置は以下のような特徴を有する。
(3)熱処理用治具にワークを収容して熱処理工程に用いられる熱処理用治具の監視装置において、
前記熱処理用治具の通過を検出するセンサと、前記センサからの信号をトリガーとして前記熱処理用治具を側面から撮影する撮影装置と、前記撮影装置で撮影した画像の画像データを保存する保存端末と、前記保存端末から前記画像データを有線又は無線にて送られる閲覧用端末と、を備え、前記熱処理用治具の前記画像データを、前記閲覧用端末に前記熱処理用治具に設けられた識別プレートに示されるグループ毎に閲覧可能に保存されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このような特徴を有する本発明による熱処理用治具の監視方法により、以下のような作用、効果が得られる。
まず、(1)に記載される発明は、金属製のワークを熱処理用治具に収容し、熱処理用治具を熱処理炉に投入して熱処理する熱処理工程で、熱処理用治具の監視を行う熱処理用治具の監視方法において、熱処理工程の一部に配置される熱処理用治具の通過を検出するセンサによる検出信号をトリガーとして、熱処理用治具を側面から撮影装置を用いて撮影し、撮影装置で撮影した画像の画像データを保存端末に保存し、保存端末から画像データを有線又は無線にて閲覧用端末に移動し、熱処理用治具の画像データを、閲覧用端末に熱処理用治具に備えられる識別プレートで区別されるグループ毎に閲覧可能に保存するものである。
【0014】
このように、熱処理用治具の画像データを閲覧用端末に保存しておくことで、熱処理用治具の変化を画像で確認することが可能となり、熱処理用治具のライフサイクルを把握することができる。
熱処理用治具の歪みの進行具合を把握できるので、事前に熱処理用治具の寿命予測ができ、予備の熱処理用治具をストックする数を少なくする事が可能となる。
また、この管理システムを用いれば、熱処理用治具の歪みが目視で確認できる為、熱処理用治具の設計に画像データを役立てることが可能である。
【0015】
また、(2)に記載される発明は、(1)に記載の熱処理用治具の監視方法において、閲覧用端末に表示される画像データは、識別プレートで区別されるグループ毎に並べて閲覧可能であるので、熱処理用治具の歪みの確認を目視で行う際に、歪みを容易に把握することが可能となる。
熱処理用治具は、撮影装置を用いて同じ場所で撮影されるため、ほぼ同じ大きさの熱処理用治具を画像データにすることができる。
この画像データをグループ毎に並べて閲覧可能とすることで、熱処理用治具の歪みの進行具合を視覚的に把握しやすくなる。
【0016】
このような特徴を有する本発明による熱処理用治具の監視装置により、以下のような作用、効果が得られる。
まず、(3)に記載される発明は、熱処理用治具にワークを収容して熱処理工程に用いられる熱処理用治具の監視装置において、熱処理用治具の通過を検出するセンサと、センサからの信号をトリガーとして熱処理用治具を側面から撮影する撮影装置と、撮影装置で撮影した画像の画像データを保存する保存端末と、保存端末から画像データを有線又は無線にて送られる閲覧用端末と、を備え、熱処理用治具の画像データを、閲覧用端末に熱処理用治具に設けられた識別プレートに示されるグループ毎に閲覧可能に保存されるものである。
【0017】
このように、閲覧用端末に熱処理用治具の画像データがグループ毎に保存されていることで、熱処理用治具の経時変化を把握できる。そして、歪みが許容量を超えている場合には熱処理用治具の交換をするタイミングであると判断が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の熱処理用バスケットの監視システムの概略図を示す。なお、図1では熱処理工程の一部を簡略化して示している。
熱処理工程には洗浄機21、焼入炉23、焼戻炉25が備えられている。そして、洗浄機21にワークが収められた熱処理用バスケット10を搬送する、第1搬送コンベア20が接続され、洗浄機21と焼入炉23の間には第2搬送コンベア22が、焼入炉23と焼戻炉25の間には第3搬送コンベア24が設けられている。
【0019】
そして、第2搬送コンベア22の脇には撮影装置であるカメラ30と接続される保存端末31が用意されている。保存端末31には記憶メディア32が備えられており、ネットワーク回線33を通じて閲覧用端末34にカメラ30で撮影されたデジタル画像データ35を転送する。なお、ネットワーク回線33でデータを移動するのにセキュリティ的な問題がある、或いはインフラ整備などの問題がある場合は、記録メディアを介してデジタル画像データ35を移動させればよい。
閲覧用端末34には、デジタル画像データ35を保存し、閲覧できる閲覧ソフトが組み込まれている。閲覧用端末34は保存端末31とは別の場所に設置されていることが望ましく、本実施形態の場合は保存端末31の設置現場から離れた事務所内に設置されているものとする。
【0020】
また、保存端末31にはセンサ26が備えられており、第2搬送コンベア22を通過する熱処理用バスケット10のグループであるバスケットグループ15を確認している。センサ26は、バスケットグループ15の通過を確認した後、カメラ30でバスケットグループ15を撮影するトリガーの働きをしている。
図2に、熱処理用バスケット10の斜視図を示す。
熱処理用治具である熱処理用バスケット10は、ステンレス製のカゴであり、丸棒を溶接して枠を作り、カゴを形成するように金網が張られている。サイズは長辺が500mm程度、短辺が400mm程度、高さが100mm程度である。もっとも、熱処理用バスケット10のサイズは設計事項であり、熱処理用バスケット10の内部に入れるワークの大きさや焼入炉23の大きさなどによって決定される為、このサイズに限定されるものではない。なお、用いられる鋼材は丸棒でなくともフラットバーやアングル材などでも良い。また、耐熱性を考慮してステンレス材を使用しているが、耐熱鋳鋼等の耐熱性のある部材を用いても良い。
【0021】
熱処理用バスケット10の側面には、第1識別プレート10aと第2識別プレート10bが備えられている。熱処理用バスケット10は長方形であり、短辺方向の両辺に第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bが備えられている。
第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bは熱処理用バスケット10の側面に溶接されており、表面に設けられた穴の数及び位置の組み合わせによって、熱処理用バスケット10の識別を行うものである。
熱処理用バスケット10は基本的には4つ1組でバスケットグループ15として用いられる。熱処理用バスケット10は、常に4段積みにして同じ組で用いられるため、第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bはバスケットグループ15を識別する為に用いられる。つまり、同時に用いる4つの熱処理用バスケット10にはそれぞれ同じパターンの穴が第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bに開けられている。
【0022】
なお、本実施形態の熱処理用バスケット10及び第2識別プレート10bは1組で用いられ、1枚当たり3つの穴が空けられる。そして、穴がないもの、穴が1つ空いているもの、穴が2つ空いているもの、穴が3つ空いているもの、の組み合わせを用いて、第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bで64のバスケットグループ15を認識できる構成となっている。
穴の数を増やしたり、第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bのような識別プレートの数を増やしたりすることで、更に組み合わせを増やすことも可能である。
【0023】
本実施形態は上記構成であるので、以下に説明するような作用を示す。
図3に、バスケットグループ15の側面図を示す。また、図4に、複数回使用された後のバスケットグループ15の側面図を示す。図4は250回、焼入炉23を通過させた状態である。
まず、熱処理用バスケット10にワークを詰めた後、4つ一組としてバスケットグループ15として図3に示すように4段積みにする。便宜上、一番上の熱処理用バスケット10を第1バスケット10A、その下の熱処理用バスケット10を第2バスケット10B、その下の熱処理用バスケット10を第3バスケット10C、その下の熱処理用バスケット10を第4バスケット10Dとする。
【0024】
この際、熱処理用バスケット10は必ず同じペアとなるように積まれる。すなわち、バスケットグループ15として用いられる熱処理用バスケット10は4つともいつも一緒に運用される。よって、熱処理用バスケット10に取り付けられた第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bが示す数字は、第2バスケット10B、第3バスケット10C、第4バスケット10Dのそれぞれ全て同じとしている。
なお、第1バスケット10Aには第1識別プレート10a及び第2バスケット10Bが取り付けられていないが、同じ組の第2バスケット10B乃至第4バスケット10Dと一緒に運用される。
【0025】
バスケットグループ15は、第1搬送コンベア20から投入されて洗浄機21でまず洗浄される。
熱処理用バスケット10の内部につめられたワークを洗浄することで、焼き入れの失敗を低減させる目的がある。
そして、洗浄機21から第2搬送コンベア22に移動されたバスケットグループ15は、センサ26を遮ることで保存端末31に信号を伝え、カメラ30によって撮影される。
カメラ30によって撮影された画像データDは、保存端末31に接続される記憶メディア32に一旦保管され、定期的にネットワーク回線33を通じて閲覧用端末34に転送される。
【0026】
その後、バスケットグループ15は焼入炉23を通過して焼き入れされ、第3搬送コンベア24によって焼戻炉25に運ばれていく。
ワークに求められる仕様によって、焼き入れの方法は異なるが、凡そこのような手順でワークの焼き入れが行われる。
ワークの熱処理が行われる間、ワークは熱処理用バスケット10の中に入れられたままであり、熱処理用バスケット10は、焼入炉23や焼戻炉25、或いは洗浄機21及び、焼戻炉25の後工程の洗浄工程などを経る為、過酷な環境に晒されることになる。
【0027】
閲覧用端末34に送られた画像データDは、順次、閲覧用端末34に接続されている図示しない記憶手段に保管されていく。この際に、画像データDは焼入炉23を何回通過したかを把握できるように回数や日付、バスケットグループ15のナンバーと共に保存される。
バスケットグループ15は、熱処理用バスケット10に取り付けられた第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bによって判断される。なお、バスケットグループ15には都合3セットの第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bが取り付けられているが、これらの全てを照合して、何グループ目かを判断している。
【0028】
閲覧用端末34に保存された画像データDは、バスケットグループ15毎に閲覧が可能であり、日付や焼入炉23を通過した回数が確認できるようになっている。
図5に、閲覧用端末での閲覧イメージを示す。
図5に示すように、画像データDを並べて表示できる機能によって、熱処理用バスケット10の歪みの経時変化を確認することが可能となる。左上のものが1回目通過時のバスケットグループ15であり、その隣が2回目通過時のもの。右下のものが250回通過時のバスケットグループ15の画像データDである。
画像データDの配置は任意に選択可能となっており、選択したものを並べて表示することができるように構成されている。
【0029】
もちろん、経時変化を確認する為に、1回目の画像と重ねて表示する機能を持たせたり、画像処理して輪郭検出したものを重ねる機能を持たせたりしても良い。
閲覧用端末34で熱処理用バスケット10の様子をバスケットグループ15毎に確認し、歪みが規定値よりも大きくなった段階で、バスケットグループ15ごと交換すれば、熱処理用バスケット10が使用不能になる前に交換が可能である。
【0030】
本実施形態は上記構成及び上記作用を示すので、以下に説明する効果を奏する。
まず、第1の効果として、熱処理用バスケットのライフサイクルを把握することが可能になる点が挙げられる。
本実施形態の熱処理用バスケット10の管理システムは、熱処理用バスケット10にワークを収容して熱処理工程に用いられる熱処理用バスケット10の管理システムにおいて、熱処理用バスケット10に識別プレートである第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bを備え、熱処理用バスケット10の通過を検出するセンサ26と、センサ26からの信号をトリガーとして熱処理用バスケット10を側面から撮影するカメラ30と、カメラ30で撮影した画像の画像データDを保存する保存端末31と、保存端末31から画像データDを有線又は無線にて送られる閲覧用端末34と、を備え、熱処理用バスケット10の画像データDを、閲覧用端末34に識別プレートである第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bに示されるグループ毎に閲覧可能に保存するものである。
【0031】
このように画像データDを閲覧用端末34に保存しておくことで、現場にて熱処理用バスケット10を確認しなくても、閲覧用端末34で熱処理用バスケット10の状態を確認できる。
このため、熱処理用バスケット10に歪みが生じてきたことを確認した段階で、バスケットグループ15の予備を用意し、熱処理用バスケット10が歪んで使えなくなってしまった時点で交換することが可能である。
また、熱処理用バスケット10の変形していく様子を画像データDによって履歴として確認ができる為、大まかな寿命が把握可能となる。
【0032】
大規模工場は、熱処理用バスケット10の予備を多数用意しておいて、歪みが発生した段階で交換すると言うことが可能であるが、中小規模の工場は資金的に予備の熱処理用バスケット10を多数ストックするというわけにはいかない。
このため、熱処理用バスケット10の状態を把握できることで、熱処理用バスケット10の交換時期の予測が可能となる。
【0033】
また、第2の効果として、画像データDで確認するので視覚的に確認しやすいという点が挙げられる。
本実施形態では、閲覧用端末34に表示される画像データDは、第1識別プレート10a及び第2識別プレート10bによって区別されるグループ毎に並べて閲覧可能であるので、熱処理用バスケット10の歪みの確認を目視で行う際に、歪みを容易に把握することが可能となる。
バスケットグループ15はカメラ30によって撮影され、その映像は画像データDとして保存されるが、カメラ30の位置は固定であり、バスケットグループ15についても第2搬送コンベア22上の定位置で撮影される為にほぼ同じ位置で撮影が可能になる。
センサ26からの信号をトリガーとしてカメラ30で撮影するため、画像データDにはほぼ同じ位置で定点観測されることになる。
【0034】
したがって、図5に示されるような状態で配置されていることで、歪みの経時変化が認識しやすくなる。画像データDを重ねればバスケットグループ15の位置はほぼ同じ位置にあるため、人間の目で認識する際に差異を発見しやすいのである。
もっとも、前述したように画像処理によって1回目通過の画像を以降の画像と重ねて歪みを見やすくしてもよいし、画像データDにスケールを重ねたり格子状の線を重ねたりすることで、歪みを認識しやすくするようにしても良い。
【0035】
この他の効果として、閲覧用端末34により遠隔地で熱処理用バスケット10の様子を確認できる点が挙げられる。
記憶メディア32を備える保存端末31は、ネットワーク回線33に接続されて閲覧用端末34に画像データDを送っている。従って、現場には最小限のシステムを設置しておき、遠隔地に設置された閲覧用端末34での熱処理用バスケット10の状態の把握が可能となる。
一般的に焼入炉23や焼戻炉25の付近は高温となるうえ、現場に配置するシステムは防塵対策などが必要とあって、閲覧用端末34の設置環境としては好ましくない。
したがって、閲覧用端末34にネットワーク回線33を介して画像データDが送られるシステムにしておけば、遠隔地で熱処理用バスケット10の状態の把握が可能となる。そうすれば、閲覧用端末34を現場に設置する必要がない為、閲覧しやすく閲覧用端末34に防塵対策や耐熱対策を図る必要もなくなる。
【0036】
熱処理工程を有する工場では、熱処理用バスケット10の発注を他社に任せるケースが多く、熱処理用バスケット10の寿命を把握しきれていないことが多い。一方、熱処理用バスケット10のメーカーも現場によって必要とされる熱処理用バスケット10の大きさ、形状が異なる為、寿命を把握することは困難である。
したがって例えばメーカーに閲覧用端末34を配置して、熱処理用バスケット10の様子を確認し、歪みの進行具合を把握しておくことで、必要なときにメーカー側から交換時期が近いことを通報すると共に、熱処理用バスケット10の製造をすることができると言うメリットがある。また、このような保守メンテ契約を結ぶといったビジネスモデルも、考えられる。
【0037】
また、この管理システムの最大の特徴は熱影響による経時変化の把握が可能という点である。すなわち、熱処理システムの特性によって熱処理用バスケット10の消耗が部分的に大きい場合などには、その傾向を判断して熱処理用バスケット10の補強をすることが可能である。また、熱処理用バスケット10に寿命向上を目的として設計変更を行った場合、熱処理用バスケット10の変更による効果が目視で確認できるため、以降の設計に役立てることも可能である。
【0038】
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
例えば、本実施形態で説明する熱処理用バスケット10の形状や材質を変更することを妨げない。本実施形態では熱処理用治具として汎用性の高いカゴ形状の熱処理用バスケット10を用いて説明しているが、熱処理に用いるその他の形状の治具であっても本実施形態のシステムを適用することは可能である。また、第1識別プレート10a及び第2識別プレート10b等、識別プレートの数や表示形式を変更することを妨げない。
更に、図1で説明した熱処理工程はあくまで一例であるので、レイアウトや熱処理の順序などを変更することは設計事項である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態の、熱処理用バスケットの監視システムの概略図である。
【図2】本実施形態の、熱処理用バスケットの斜視図である。
【図3】本実施形態の、バスケットグループの側面図である。
【図4】本実施形態の、複数回使用された後のバスケットグループの側面図である。
【図5】本実施懈怠の、閲覧用端末での閲覧イメージである。
【符号の説明】
【0040】
10 熱処理用バスケット
10A 第1バスケット
10B 第2バスケット
10C 第3バスケット
10D 第4バスケット
10a 第1識別プレート
10b 第2識別プレート
15 バスケットグループ
20 第1搬送コンベア
21 洗浄機
22 第2搬送コンベア
23 焼入炉
24 第3搬送コンベア
25 焼戻炉
26 センサ
30 カメラ
31 保存端末
32 記憶メディア
33 ネットワーク回線
34 閲覧用端末
35 デジタル画像データ
D 画像データ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のワークを熱処理用治具に収容し、前記熱処理用治具を熱処理炉に投入して熱処理する熱処理工程で、前記熱処理用治具の監視を行う熱処理用治具の監視方法において、
前記熱処理工程の一部に配置される前記熱処理用治具の通過を検出するセンサによる検出信号をトリガーとして、前記熱処理用治具を側面から撮影装置を用いて撮影し、
前記撮影装置で撮影した画像の画像データを保存端末に保存し、
前記保存端末から前記画像データを閲覧用端末に移動し、
前記熱処理用治具の前記画像データを、前記閲覧用端末に前記熱処理用治具に備えられる識別プレートで区別されるグループ毎に閲覧可能に保存することを特徴とする熱処理用治具の監視方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理用治具の監視方法において、
前記閲覧用端末に表示される前記画像データは、前記識別プレートで区別されるグループ毎に並べて閲覧可能であることを特徴とする熱処理用治具の監視方法。
【請求項3】
熱処理用治具にワークを収容して熱処理工程に用いられる熱処理用治具の監視装置において、
前記熱処理用治具の通過を検出するセンサと、
前記センサからの信号をトリガーとして前記熱処理用治具を側面から撮影する撮影装置と、
前記撮影装置で撮影した画像の画像データを保存する保存端末と、
前記保存端末から前記画像データを有線又は無線にて送られる閲覧用端末と、を備え、
前記熱処理用治具の前記画像データを、前記閲覧用端末に前記熱処理用治具に設けられた識別プレートに示されるグループ毎に閲覧可能に保存されることを特徴とする熱処理用治具の監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−107256(P2010−107256A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277478(P2008−277478)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(591128394)ニムラ鋼機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】