説明

熱処理装置

【課題】複数の熱電素子からなる熱電モジュールを備えた熱処理装置のエネルギー効率を向上可能な熱処理装置を提供する。
【解決手段】熱源3を有する熱処理装置1であって、熱源3からの輻射線Lの少なくとも一部を反射する反射部20と、前記反射部20が前記輻射線Lの一部を吸収することによって発生する熱を電力に変換する熱電モジュール9とを備える。さらには、前記熱電モジュール9は、前記熱源2及び前記反射部20を収納する水冷ジャケット2と前記反射部20との間に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源を有する熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抵抗加熱炉や連続炉等の工業炉(熱処理装置)には、複数の熱電素子からなる熱電モジュールを備えるものがある。このような熱電モジュールは、高温側と低温側との温度差によって起電力を発生するP型発電素子とN型発電素子とが交互に複数接続されることによって構成されている。
このような熱電モジュールを備える工業炉によれば、工業炉内部の熱の一部を電力に変換することが可能となるため、エネルギー効率の良い工業炉となる。
【特許文献1】特開昭59−198883号公報
【特許文献2】特開昭60−34084号公報
【特許文献3】特開平8−64874号公報
【特許文献4】特開2005−33894号公報
【特許文献5】特開2005−79347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のような工業炉では、配管の接続部等の温度上昇を抑止したい箇所に熱源からの輻射線が照射されないように、輻射線の一部を反射板(反射部)で反射することが提案されている。これによって、温度上昇を抑止したい箇所に輻射線が照射されることを抑止でき、当該箇所の温度上昇を抑止することができる。
また、効率的な熱処理を実現するために、熱源からの輻射線を反射板によって熱源に戻すことも提案されている。これによって、エネルギーを熱源に戻すことができ、効率的な加熱を行うことができる。
そして、このような反射板は、熱電モジュールが配置されていない箇所に設置されることとなる。
【0004】
しかしながら、反射板に入射する輻射線は、その全てが反射されるわけではなく、一部が反射板に吸収される。そして、このように輻射線の一部が反射板に吸収されることによって熱が発生し、エネルギー損失が生じる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、熱源を有する熱処理装置におけるさらなるエネルギー効率の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、熱源を有する熱処理装置であって、熱源からの輻射線の少なくとも一部を反射する反射部と、上記反射部が上記輻射線の一部を吸収することによって発生する熱を電力に変換する熱電モジュールとを備えることを特徴とする。
【0007】
このような特徴を有する本発明によれば、反射部が輻射線の一部を吸収することによって発生する熱が熱電モジュールによって電力に変換される。
【0008】
また、本発明においては、上記熱源及び上記反射部を収納する水冷ジャケットを備え、上記熱電モジュールは、上記水冷ジャケットと上記反射部との間に設置されるという構成を採用することができる。
【0009】
また、本発明においては、上記反射部が、上記熱源に向けて上記輻射線を反射するという構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明においては、上記熱源が、熱処理対象物が内部にて加熱処理される加熱室であるという構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明においては、上記熱源が、加熱処理された熱処理対象物であるという構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反射部が輻射線の一部を吸収することによって発生する熱が熱電モジュールによって電力に変換される。つまり、従来、無駄となっていたエネルギーを用いて電力を生成することができる。
したがって、本発明によれば、熱源を有する熱処理装置における、さらなるエネルギー効率の向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る熱処理装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
(第1実施形態)
本第1実施形態では、本発明を抵抗加熱炉(熱処理装置)に適用した場合について説明する。
図1は、本実施形態の抵抗加熱炉1の概略構成を模式的に示した断面図である。この図に示すように、本実施形態の抵抗加熱炉1は、最外殻として構成される水冷ジャケット2と、水冷ジャケット2の内部に収納されるとともに断熱材3aによって覆われた加熱室3と、水冷ジャケット2の一方側から加熱室3の内部に連通されるガス供給管4と、水冷ジャケット2の他方側から加熱室3の内部に連通される廃ガス管5と、水冷ジャケット2及び加熱室3を貫通して設置される電気ヒータ6とを備えている。
【0015】
このような本実施形態の抵抗加熱炉1においては、加熱室3の内部にワークX(熱処理対象物)を載置し、さらに水冷ジャケット2と加熱室3との間の空間7を真空雰囲気あるいは所定のガス雰囲気にした状態で、電気ヒータ6を駆動する。この際、ガス供給管4から所定ガスを加熱室3に供給することによって、ワークXが所定ガス雰囲気で加熱処理される。なお、所定ガスは、廃ガス管5を介して加熱室3から外部に排気される。
【0016】
そして、本実施形態の抵抗加熱炉1では、ユニット化された複数の熱電モジュール8が水冷ジャケット2の内壁部2aに設置されている。熱電モジュール8は、周知のP型熱電素子とN型熱電素子とが基板上に交互に配列されるとともに互いに直列に接続されたものである。そして、熱電モジュール8は、図1に示すように、一方側(高温側)を炉内(加熱室3側)に向け、他方側(低温側)を水冷ジャケット2の内壁部2aに接触して設置されている。
【0017】
各熱電モジュール8は、ダイオード等の逆流防止器10を備えた電力回収ライン11を介して蓄電装置12と接続されている。蓄電装置12は、電力供給ライン13を介して制御装置14と接続されている。そして、制御装置14は、蓄電装置12から供給される電力を用いて動作する。
【0018】
また、本実施形態の抵抗加熱炉1では、水冷ジャケット2とガス供給管4との接続部A、水冷ジャケット2と廃ガス管5との接続部B、及び、水冷ジャケット2と電気ヒータ6との接続部C1,C2に、加熱室3からの輻射線Lが照射されることを抑止する反射部20が設置されている。
反射部20は、接続部Aと加熱室3との間に設置され接続部Aへ向かう輻射線Lを反射する反射板21と、接続部Bと加熱室3との間に設置され接続部Bへ向かう輻射線Lを反射する反射板22と、接続部C1と加熱室3との間に設置され接続部C1に向かう輻射線Lを反射する反射板23と、接続部C2と加熱室3との間に設置され接続部C2に向かう輻射線Lを反射する反射板24と、から構成されている。
【0019】
そして、本実施形態の抵抗加熱炉1は、反射部20と水冷ジャケット2との間に設置される熱電モジュール9を有している。この反射部20と水冷ジャケット2との間に設置される熱電モジュール9は、上述の熱電モジュール8と同様の構成を有しており、また熱電モジュール8と同様に電力回収ライン11を介して蓄電装置12と接続されている。
反射部20は、上述のように加熱室3からの輻射線Lを反射するが、入射される輻射線Lを100%反射することはできず、入射される輻射線Lの一部を吸収する。このように反射部20が輻射線Lを吸収すると、反射部20から熱が発生する。そして、この熱が、熱電モジュール9によって電力に変換される。
すなわち、反射部20と水冷ジャケット2との間に設置される熱電モジュール9は、反射部20が輻射線Lの一部を吸収することによって発生する熱を電力に変換するものである。
【0020】
このような本実施形態の抵抗加熱炉1が動作すると、上述のようにワークXが加熱処理され、これに伴って加熱室3から輻射線Lが水冷ジャケット2の内壁部2aに向けて射出される。すなわち、本実施形態の抵抗加熱炉1においては、加熱室3が熱源となっている。
【0021】
加熱室3から水冷ジャケット2の内壁部2aに向けて射出された輻射線Lのうち、水冷ジャケット2とガス供給管4との接続部Aに向かう輻射線Lは、反射板21によって反射される。これによって、接続部Aが高温化することを抑止することができる。
また、水冷ジャケット2と廃ガス管5との接続部Bに向かう輻射線Lは、反射板22によって反射される。これによって、接続部Bが高温化することを抑止することができる。
また、水冷ジャケット2と電気ヒータ6との接続部C1に向かう輻射線Lは、反射板23によって反射される。これによって、接続部C1が高温化することを抑止することができる。
また、水冷ジャケット2と電気ヒータ6との接続部C2に向かう輻射線Lは、反射板24によって反射される。これによって、接続部C2が高温化することを抑止することができる。
【0022】
そして、本実施形態の抵抗加熱炉1においては、輻射線Lを反射部20(反射板21〜24)が反射する際に、輻射線Lの一部を吸収することによって反射部20から発生した熱が、各反射部20と水冷ジャケット2との間に設置された熱電モジュール9によって電力に変換される。
【0023】
従来の抵抗加熱炉においては、反射部20が輻射線Lの一部を吸収することによって発生した熱は再利用されることなく損失されていた。これに対して、本実施形態の抵抗加熱炉1は、従来損失されていた熱が熱電モジュール9によって電力に変換されるため、さらなるエネルギー効率の向上を実現することが可能となる。
【0024】
そして、熱電モジュール9において発電された電力は、電力回収ライン11を介して蓄電装置12に送電され、蓄電装置12において一時的に蓄電される。そして、蓄電装置12に一時的に蓄電された電力は、適宜電力供給ライン13を介して制御装置14に供給され、制御装置14の動作のために消費される。
【0025】
なお、接続部A,B,C1,C2以外の箇所に向かう輻射線Lは、水冷ジャケット2の内壁部2aに設置された複数の熱電モジュール8によって、電力に変換される。そして、熱電モジュール8によって発電された電力も、熱電モジュール9によって発電された電力と同様に、蓄電装置12に送電された後に制御装置14に供給され、制御装置14の動作のために消費される。
【0026】
このような本実施形態の抵抗加熱炉1によれば、上述のように、輻射線Lの一部が反射部20によって吸収されることによって発生する熱が、熱電モジュール9によって電力に変換されるため、さらなるエネルギー効率の向上を実現することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態の抵抗加熱炉1によれば、熱電モジュール9は、高温側を加熱室3側に向け、低温側を水冷ジャケット2の内壁部2aに接触して設置されている。このため、高温側と低温側との間に大きな温度差が生じ、より効率的に電力を生成することが可能となる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の部分については、同一符合を付し、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0029】
本第2実施形態では、本発明を連続炉に適用した例について説明する。
図2は、本第2実施形態の連続炉30を模式的に示した断面図である。この図に示すように、本実施形態の連続炉30は、加熱することによってワークXの温度を上昇させる昇温部31と、昇温部31によって昇温されたワークXを、温度を保持した状態で所定ガス雰囲気に晒すことによってガス処理する保持部32と、保持部32によってガス処理されたワークXを水冷板34によって冷却する冷却部33とを有している。そして、昇温部31と保持部32と冷却部33とは連接されており、ワークXは、ベルトコンベア等の搬送部35によって昇温部31、保持部32、冷却部33の順に搬送される。
【0030】
このような連続炉30においては、ワークXが加熱された状態で搬送されるため、常にワークXから輻射線Lが射出される。すなわち、本実施形態の連続炉30においては、ワークX(熱処理対象物)が熱源となっている。
【0031】
昇温部31の内部には、ワークXから射出される輻射線Lを再度ワークXに戻るように、ワークXに向けて反射する複数の反射部20が設置されている。そして、反射部20と昇温部31の内壁部31aとの間には、複数の熱電モジュール9が設置されている。
【0032】
また、保持部32の内部にも、ワークXから射出される輻射線Lを再度ワークXに戻るように、ワークXに向けて反射する複数の反射部20が設置されている。そして、反射部20と保持部32の内壁部32aとの間にも、複数の熱電モジュール9が設置されている。
【0033】
冷却部33には、反射部20が設置されておらず、冷却部33の内壁部33aに熱電モジュール8が複数設置されている。
【0034】
このような構成を有する本実施形態の連続炉30では、昇温部31及び保持部32においては、ワークXから射出された輻射線Lが反射部20によってワークXに向けて反射される。つまり、ワークXから放出されたエネルギーが再度ワークXに供給される。このため、ワークXの昇温及び保温を効率的に行うことができる。
また、上記第1実施形態と同様に、反射部20は、入射される輻射線Lを100%反射することができないため、一部が反射部20に吸収される。これによって、反射部20が熱を発生する。本実施形態の連続炉30は、反射部20と内壁部32a,33aとの間に熱電モジュール9を備えているため、反射部20において発生した熱を電力に変換することができる。
よって、本実施形態の連続炉30は、さらなるエネルギー効率の向上を実現することが可能となる。
【0035】
また、冷却部33では、ワークXから射出された輻射線Lは、熱電モジュール8によって電力に変換される。
そして、熱電モジュール9及び熱電モジュール8によって発電された電力は、上記第1実施形態と同様に、蓄電装置12(図2においては不図示)に一時的に蓄電された後、制御装置14(図2においては不図示)の動作によって消費される。
【0036】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る熱処理装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0037】
例えば、上記実施形態においては、本発明の熱処理装置の一例として、抵抗加熱炉や連続炉を挙げて説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、輻射線を射出する熱源を有する熱処理装置全般に適用することができる。
【0038】
また、上記第1実施形態においては、水冷ジャケット2とガス供給管4との接続部A、水冷ジャケット2と廃ガス管5との接続部B、及び、水冷ジャケット2と電気ヒータ6との接続部C1,C2に輻射線Lが照射されることを反射部20を用いて抑止する構成とした。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、反射部20によって任意の箇所に輻射線Lが照射されることを抑止する構成とすることができる。
この場合であっても、反射部20が輻射線Lを吸収することによって発生する熱を電力に変換する熱電モジュール9が、反射部20の近傍に設置されることとなる。
【0039】
また、例えば、熱電モジュール9の高温側の表面を鏡面とすることによって、熱電モジュール9の高温側の表面に反射部20の機能を持たせることもできる。このような場合には、熱電モジュール9及び反射部20を一体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態である抵抗加熱炉1の概略構成を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態である連続炉30の概略構成を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1……抵抗加熱炉(熱処理装置)、2……水冷ジャケット、3……加熱室(熱源)、9……熱電モジュール、20……反射部、30……連続炉(熱処理装置)、X……ワーク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源を有する熱処理装置であって、
熱源からの輻射線の少なくとも一部を反射する反射部と、
前記反射部が前記輻射線の一部を吸収することによって発生する熱を電力に変換する熱電モジュールと
を備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記熱源及び前記反射部を収納する水冷ジャケットを備え、前記熱電モジュールは、前記水冷ジャケットと前記反射部との間に設置されることを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記反射部は、前記熱源に向けて前記輻射線を反射することを特徴とする請求項1または2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記熱源は、熱処理対象物が内部にて加熱処理される加熱室であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記熱源は、加熱処理された熱処理対象物であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の熱処理装置。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−32341(P2008−32341A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207952(P2006−207952)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】