説明

熱分解廃棄物処理システムのための室支持体

本発明の主題は、室の温度が変化する際に、室の移動または湾曲が最小限となるように支持される熱分解室を有する熱分解廃棄物処理システムを対象とする。好ましい解決法は、小さい熱膨張係数を有する材料から作成され、温度の変化と共に室が膨張および収縮することを可能にするように構成された支持体構造を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によって本明細書にその全体が組み込まれている2003年8月21日に出願された米国仮特許出願60/497397号の優先権を主張する。
【0002】
本発明の分野は、熱分解廃棄物処理である。
【背景技術】
【0003】
熱分解は、廃棄物を処理するための知られている方法である。熱分解廃棄物処理システムの例は、米国特許第4759300号明細書、第5653183号明細書、第5868085号明細書、および第6619214号明細書において見ることができる。焼却とは異なり、熱分解は、酸素の不存在下で間接熱を使用する、廃棄物材料の破壊的分解である。酸素の存在下で直接炎で焼却することによる廃棄物の燃焼は、爆発性であることがあり、燃焼室において乱流を生じ、これにより放出気体の再結合が助長される。酸素が豊富な大気における廃棄物の破壊は、変換をはるかにより不完全にし、非常に非効率的であり、有害物質をつくり出す。
【0004】
対照的に、熱分解プロセスは、廃棄物の固体成分を動作温度、圧力、酸素含有量、および他の条件によって決定される割合を有する固体、液体、および気体の混合物に変換するために、最も望ましくは酸素がほぼない大気において(たとえば、実際の真空において)高温を使用する。熱分解後に残留する固体残留物は、一般にチャー(char)と呼ばれる。熱分解の蒸発産物は、酸化を促進するプロセスによってしばしばさらに処理される。このプロセスは、蒸発産物から油および他の粒子物質を排除するために蒸気を「清浄」し、これにより、結果として生じる気体が大気に安全に放出されることが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非常に効率的で、維持が容易であり、安全で信頼性が高く、広範な組成の廃棄物材料で動作することができ、かつ比較的低コストで構築および装備することできる改良された熱分解廃棄物処理システムが、長らく必要とされ、またこれまで利用可能ではなかった。本発明の要旨は、そのような改良された熱分解廃棄物処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、室の温度が変化する際に、室が最小限に移動または湾曲するように支持される細長い熱分解室(レトルト)を有する、熱分解廃棄物処理システム、具体的には連続供給システムを対象とする。本発明が解決しようとする1つの問題は、温度が上昇する際に、レトルトが移動または湾曲する結果として、レトルト供給ねじまたは他の材料移動機構が結合する傾向があることである。好ましい解決法は、小さい熱膨張係数と、温度の変化と共に室が膨張および収縮することを可能にするように構成された構造とを有する材料から作成された支持体構造を使用する。
【0007】
本発明の主題は、一般に、Uを10として、U×10−6/℃より小さい熱(線形)膨張係数を有する少なくとも1つの支持体によって支持される細長い熱分解室を備える熱分解廃棄物処理システムを含む。
【0008】
他の態様は、細長い熱分解室と、室の長手の少なくとも一部に沿って延びる供給機構とを備える熱分解廃棄物処理システムを含む。室は、室が長手方向に膨張することを可能にするが、システムの動作中に供給機構が結合するほどには室が湾曲することを可能にしないように支持される。
【0009】
本発明の様々な目的、特徴、態様、および利点が、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な記述、ならびに同じ参照符号が同じ構成要素を示す添付の図面から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
熱分解室の移動および/または湾曲により、熱分解室内の供給機構は、結合する、またはそうでない場合はより非効率的に作用することがある。それゆえ、室の移動および湾曲を最小限に抑えることが好ましい。そのような移動および湾曲の2つの重要な源は、室を支持するために使用される任意の構造の寸法の変化、および室自体の寸法の変化に由来すると考えられる。図1のシステム100では、サドル支持体180が、温度が変化する際に、室が具体的には長さに沿って膨張および収縮することを可能にするが、室が曲がる、ゆがむ、またはしわになることなどによって室が座屈しないように、熱分解室110を支持する。代替支持方法では、ケーブルによって吊るされたブラケットによって加熱室内において適所に保持されるレトルトを有することが可能であり、またはある他の形態の支持機構を使用する。
【0011】
セラミックサドルの使用が、比較的小さい伝熱係数を有する結果として、追加の利点を提供すると考えられるが、それは、室がサドルと接触する点において室の壁を経て熱が伝達される率を低減することによって、セラミックサドルが、熱分解室の底部外に熱が流出するのを阻止する傾向があるという点においてである。セラミックサドルの使用の他の利点は、室の長手に沿って熱を伝達する可能性がより低いということである。対照的に、スチールのサドルは、室の長手に沿って熱を伝達する可能性がより高い。
【0012】
サドル180(または、使用される支持機構は何でも)は、温度が変化する際に最小限の寸法変化を有するように、低熱膨張係数を有する1つまたは複数の材料を備えることが好ましい。図1に示されるような中心支持体を提供するために使用される場合、サドル180の膨張により、室110の中心部分は、室の端部に対して上方に押されることがある。それゆえ、セラミック材料およびフェノール材料が、サドルおよびブラケットを形成するのに特によく適している。Xを11.5として、X×10−6/℃未満の熱膨張係数を有する材料が有利であると実証されると考えられる。しかし、11、10.5、10、9、7、5、または4に等しいXを有することが、より有利である。
【0013】
代替実施形態が、サドルが支持するレトルト室の異なる長手長さにわたって延びるサドルを有することが可能であり、また2つ以上のサドルを備えることが可能であると考えられる。それゆえ、いくつかの実施形態が、Xを1、5、10、20、30、50、75、90、95、99、および100として、室の長手長さのX%にわたって延びる少なくとも1つのサドルを備えると考えられる。
【0014】
様々な実施形態が、室、その構造、および/または材料、もしくはその組合せを支持する様々な方法を使用することが可能であるが、好ましい実施形態は、細長い熱分解室と、室の長さの少なくとも一部に沿って延びる供給機構とを備える熱分解廃棄物処理システムの創出を容易にし、室は、システムの動作中に、供給機構が結合するように十分には湾曲しないように支持される。結合を生じることがある湾曲の量は、異なる実施形態間において異なるが、多くの場合、室が支持サドル(または他の機構)の少なくとも0.25インチ以内に留まるように湾曲量を低く維持することが十分であると考えられる。システムの動作中、熱分解室は、少なくとも1400度の温度変化を受け、時には動作中に、室は、長さに沿った位置の2つの点間において少なくとも華氏300度だけ温度が異なる可能性があると考えられる。
【0015】
より具体的には、機械的支持体が使用される場合、そのような支持体は、比較的小さい熱膨張係数を有することが好ましい。それゆえ、そのような支持体は、セラミック材料またはフェノール材料、もしくは複合物から形成されることが可能である。使用される支持体のタイプは、変更することが可能であるが、基底サドルの使用が有利であると実証されると考えられる。そのような場合、サドルは、ほぼすべての室を支持するが、室がサドルの長さに沿って膨張および/または収縮することを可能にするように行われることが好ましい。代替として、室を吊るす機構が使用されることが可能である。例として、ブラケット、ハンガ、ケーブル、またはある他の手段が、任意の必要な支持体を提供するように、室の長さに沿って配置されることが可能である。サドル支持体の場合と同様に、室の膨張および/または収縮が提供されるべきである。
【0016】
以上のように、熱分解システムの特定の実施形態および応用分野が開示された。しかし、当業者には、すでに記述された修正の他に、多くのさらなる修正が、本明細書の本発明の概念から逸脱せずに可能であることが明らかなはずである。したがって、本発明の主題は、添付の請求項の精神においてを除いて、制約されるものではない。さらに、明細書および請求項の両方を解釈する際に、すべての用語は、文脈と一貫する最も広範な可能な方式で解釈されるべきである。具体的には、「備える(comprises)」および「備えている(comprising)」という用語は、非排他的に要素、構成要素、またはステップに言及すると解釈されるべきであり、これは、言及される要素、構成要素、またはステップは、明確には言及されていない他の要素、構成要素、またはステップと共に存在する、使用される、または組み合わされることが可能であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】熱分解廃棄物処理システムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い熱分解室を備える熱分解廃棄物処理システムであって、室が、Uを10として、U×10−6/℃未満の熱(線形)膨張係数を有する少なくとも1つの支持体によって支持されるシステム。
【請求項2】
少なくとも1つの支持体が、セラミック材料またはフェノール材料からなる請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの支持体が、室より下に配置される少なくとも1つのサドルを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも1つのサドルが、Xを1、5、10、20、30、50、75、90、95、99、および100として、室の長手長さのX%にわたって延びる請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1つのサドルが、セラミック材料またはフェノール材料からなる請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
室が、少なくとも1つの支持体によって吊るされる請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
室が長手に沿って膨張および収縮することを可能にするように、室が少なくとも1つの支持体によって支持される請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
Uが、7、5、および4のうちの1つである請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
細長い熱分解室、および室の長手の少なくとも一部に沿って延びる供給機構を備える熱分解廃棄物処理システムであって、システムの動作中に供給機構が結合するほどには室が湾曲しないような方式で、室が支持されるシステム。
【請求項10】
システムの動作が、熱分解室が少なくとも300度の温度変化を受けることを含む請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
室が、少なくとも1つのサドルの上にあり、少なくとも1つのサドルに隣接する室の任意の部分が、サドルから少なくとも0.5インチ以内に留まる請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
熱分解室が細長く、時には動作中に、長手に沿って位置する2点間において少なくとも300度だけ温度が異なる請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
熱分解室を使用して廃棄物を処理する方法であって、
室が処理される廃棄物を含む間、室を加熱することと、
室を加熱する間、
Uを10として、U×10−6/℃以下の熱膨張係数を有する1つまたは複数の支持体で室を支持することと、
室の加熱中に供給機構が結合するようには十分湾曲せずに、室が長手方向に膨張することを可能にするような方式で室を支持することとを備える方法。
【請求項14】
1つまたは複数の支持体が、室の下に位置するセラミックサドルを備える請求項13に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2007−502706(P2007−502706A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524082(P2006−524082)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/027154
【国際公開番号】WO2005/022038
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506058325)インターナシヨナル・エンバイロンメンタル・ソリユーシヨンズ・コーポレイシヨン (6)
【Fターム(参考)】